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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050911
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】積層フィルム及び包装材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20230404BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230404BHJP
   B32B 9/00 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
B32B27/32 102
B65D65/40 D
B32B9/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161269
(22)【出願日】2021-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山崎 敦史
(72)【発明者】
【氏名】柏 充裕
(72)【発明者】
【氏名】中野 麻洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄也
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB51
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AB10C
4F100AB11C
4F100AC00D
4F100AC00H
4F100AC04D
4F100AC04H
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK16D
4F100AK21D
4F100AK69D
4F100AT00
4F100BA05
4F100BA15
4F100CA30D
4F100CA30H
4F100EH202
4F100EH462
4F100EH662
4F100EH66C
4F100EJ102
4F100EJ10B
4F100EJ122
4F100EJ12B
4F100EJ382
4F100EJ38A
4F100EJ38B
4F100EJ552
4F100EJ55B
4F100EJ652
4F100EJ65B
4F100GB15
4F100JD03C
4F100JD04C
4F100JL11
4F100JL16
(57)【要約】
【課題】ポリプロピレンフィルムを主体とした環境負荷が少ないほぼ単一の樹脂種から構成されたラミネート構成を形成することができるフィルムであるとともに、包装材料に求められるガスバリア性や接着性、さらには加工適性等の必要性能を有する積層フィルムを提供することを課題として掲げた。
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(A)の一方の表面に表面層(B)、基材層(A)のその他の表面に表面層(C)を有し、さらに前記表面層(B)の上に無機薄膜層(D)が積層され、さらに無機薄膜層(D)の上に有機樹脂層(E)が積層された積層フィルムであり、下記(a)~(d)の要件を満足することを特徴とする積層フィルム。
(a) 前記有機樹脂層(E)の付着量が0.10g/m2以上0.50g/m2以下であること。
(b) 前記積層フィルムの有機樹脂層側表面を試験力0.1mNで測定したときのマルテンス硬さが248 N/mm2以下であること。
(c)前記積層フィルムのヘイズが6%以下であること。
(d) 前記積層フィルムの23℃×65%RH環境下における酸素透過度が10mL/m・d・MPa以下であること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(A)の一方の表面に表面層(B)、基材層(A)のその他の表面に表面層(C)を有し、さらに前記表面層(B)の上に無機薄膜層(D)が積層され、さらに無機薄膜層(D)の上に有機樹脂層(E)が積層された積層フィルムであり、下記(a)~(d)の要件を満足することを特徴とする積層フィルム。
(a) 前記有機樹脂層(E)の付着量が0.10g/m以上0.50g/m以下であること。
(b) 前記積層フィルムの有機樹脂層側表面を試験力0.1mNで測定したときのマルテンス硬さが248 N/mm2以下であること。
(c)前記積層フィルムのヘイズが6%以下であること。
(d) 前記積層フィルムの23℃×65%RH環境下における酸素透過度が10mL/m・d・MPa以下であること。
【請求項2】
40℃×90%RH環境下における水蒸気透過度が1g/m・d以下であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記積層フィルムの23℃×80%RH環境下における酸素透過度が15mL/m・d・MPa以下、であることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記積層フィルム上の有機樹脂層の2μm四方における算術平均粗さが2.0~8.0nmの範囲内であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
積層フィルム厚みが9μm~200μmである請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の積層フィルムの片面にオレフィン系シーラント層を積層してなる包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性積層フィルムに関する。更に詳しくは、製造上、及び、廃棄時の環境負荷が少なく、かつ、優れたガスバリア性能と包装用材料として十分な接着強度を兼ね備えるガスバリア性コートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、欧州はじめ世界各国において、使い捨てプラスチック使用削減に向けた規制が強化されている。その背景には、資源循環への国際的な意識の高まりや新興国におけるごみ問題の深刻化がある。そのため、食品、医薬品等に求められるプラスチック製包装材料についても、3R(recycle, reuse, reduce)の観点から環境対応型の製品が求められている。
【0003】
前述の環境に優しい包装材料に求められる性能として、(1)リサイクル可能な材料から成ること、(2)各種ガスを遮断し賞味期限を延長できるガスバリア性能を有すること、(3)環境負荷が少ないラミネート構成にすること(例えば有機溶剤を使用しないことや材料の使用量自体が少ないこと、モノマテリアル化によるリサイクルが可能であること)等が挙げられる。
【0004】
近年、前記(2)、(3)を可能とするために、ポリプロピレンフィルムの使用に注目が集まっている。ポリプロピレンフィルムは、食品や様々な商品の包装用、電気絶縁用、表面保護用フィルムなど広範囲な用途で汎用的に用いられる。ポリプロピレンフィルムはその分子構造から高い水蒸気バリア性を発現することが可能である。さらに、表基材フィルムと貼り合わせるシーラントとしては、ポリプロピレン系やポリエチレン系のヒートシール樹脂が一般的であることから、例えば表基材にポリプロピレンフィルム、シーラントに未延伸ポリプロピレンシートを用いることで、ガスバリア性を有しつつ包材全体としてのモノマテリアル化が達成でき、リサイクルしやすい等、環境にやさしい包材設計が可能となる。
【0005】
しかし、前記(2)のガスバリア性に関し、ポリプロピレンフィルムは水蒸気バリア性を有するものの、例えば一般的にするに水蒸気バリア性が優れるとされる透明無機蒸着ポリエステルフィルムに比べると十分な値ではなく、また酸素バリア性に関しては非常に悪いという問題点があった。これに対し、ポリプロピレンフィルムにポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリルなど一般に酸素バリア性が比較的高いと言われる高分子樹脂組成物を積層させたフィルムが使用されてきた(例えば、特許文献1~3参照)。
【0006】
しかしながら、上記のポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体の高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性コートフィルムは湿度依存性が大きいため、高湿下においてガスバリア性の低下が見られた。またポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリルは、湿度依存性が低いが、絶対値としてのバリア値が不十分であること、さらには廃棄・焼却の際に有害物質が発生する危険性が高いという問題があった。
【0007】
ビニルアルコール系樹脂の湿度依存性を改善する方法として、ビニルアルコール系樹脂にシラン系架橋剤を混合した塗布層を積層したガスバリア性コートフィルムが提案されている。この場合、ビニルアルコール系樹脂がシラノール基により架橋しているため、湿度依存性が低く、良好なガスバリア性を示す。(例えば、特許文献4、5参照)
【0008】
しかしながら、これらのガスバリア性コートフィルムは、架橋させるために十分な加熱処理が必要で、基材がポリプロピレンフィルムの場合、機械特性の劣化や加工時の熱ジワにより包装材料として十分な特性を満足できない他、加工時の加熱処理の際、多くの熱エネルギーが必要なため、環境負荷の観点でも好ましくなかった。さらに、水蒸気バリア性能に関しては未だ不十分であった。
【0009】
一方、バリア性能をさらに向上させる手段として、ビニルアルコール系樹脂に特定の粒径およびアスペクト比の無機層状粒子を含有する樹脂層を積層したガスバリア性コートフィルムが提案されている。この場合、樹脂層中に分散して存在する無機層状粒子によって気体分子の迂回効果が生じ、良好なガスバリア性を示す。(例えば、特許文献6、7参照)
【0010】
しかし、これらのガスバリア性コートフィルムは、無機層状粒子が塗膜に均一分散されていないことが多く、結果的に基材フィルムとの接着性を阻害し、ラミネート強度が低下することがあった。また、酸素バリア性、水蒸気バリア性とも向上させることについては、十分満足できる性能は得られていなかった。
【0011】
前述のバリアコート層はいずれも、十分なバリア性能を発現させるため、少なくとも0.5μm以上の膜厚を積層する必要があった。コート層の膜厚が厚いと、リサイクルが困難になる可能性があり、また単一素材によるモノマテリアル化の観点からもふさわしくなかった。さらに、印刷等の加工工程においても、コートムラや凹凸による印刷不良の課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000-52501号公報
【特許文献2】特開平4-359033号公報
【特許文献3】特開2003-231221号公報
【特許文献4】特開平4-345841号公報
【特許文献5】特開2006-95782号公報
【特許文献6】特開平9-111017号公報
【特許文献7】特開2005-35167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1~3では、バリア性能が不十分であることに加え、環境に配慮した設計は検討されていなかった。特許文献4、5ではポリプロピレンフィルムに適切にコート加工することについて検討がなされておらず、また水蒸気バリア性についても十分議論されていなかった。特許文献6では接着性の改良や水蒸気バリア性について検討されていなかった。特許文献7では酸素バリア性について検討されていなかった。また、いずれの文献でもコート層の薄膜化による加工性改善や環境への配慮はなされておらず、ラミネート構成とする際の接着剤層の薄膜化による環境への配慮もなされていなかった。
つまり、前記の環境に優しい包装材料に求められる性能としての(1)リサイクルできる材料を構成材料として含むこと、(2)各種ガスを遮断し賞味期限を延長できるガスバリア性能を有すること、(3)リサイクルしやすく環境負荷が少ないラミネート構成にすること(モノマテリアル化) の3点をいずれも満足する材料は、従来はなかった。
【0014】
本発明は、かかる従来技術の問題点を背景になされたものである。
すなわち、本発明の課題はポリプロピレンフィルムを主体とした環境負荷が少ないほぼ単一の樹脂種から構成されたラミネート構成を形成することができるフィルムであるとともに、包装材料に求められるガスバリア性や接着性、透明性、さらには加工適性等の必要性能を有する積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、要求される性能に合わせた所定の無機薄膜層とコート層をポリプロピレンフィルム上に積層することでガスバリア性能を大きく向上させ、さらには環境負荷の少ない、接着力の向上した高い品位のフィルムを提供できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層(A)の一方の表面に表面層(B)、基材層(A)のその他の表面に表面層(C)を有し、さらに前記表面層(B)の上に無機薄膜層(D)が積層され、さらに無機薄膜層(D)の上に有機樹脂層(E)が積層された積層フィルムであり、下記(a)~(d)の要件を満足することを特徴とする積層フィルム。
(a) 前記有機樹脂層(E)の付着量が0.10g/m以上0.50g/m以下であること。
(b) 前記積層フィルムの有機樹脂層側表面を試験力0.1mNで測定したときのマルテンス硬さが248 N/mm2以下であること。
(c)前記積層フィルムのヘイズが6%以下であること。
(d) 前記積層フィルムの23℃×65%RH環境下における酸素透過度が10mL/m・d・MPa以下であること。
2.40℃×90%RH環境下における水蒸気透過度が1g/m・d以下であることを特徴とする、1に記載の積層フィルム。
3.前記積層フィルムの23℃×80%RH環境下における酸素透過度が15mL/m・d・MPa以下、であることを特徴とする、1または2に記載の積層フィルム。
4.前記積層フィルム上の有機樹脂層の2μm四方における算術平均粗さが2.0~8.0nmの範囲内であることを特徴とする、1~3のいずれかに記載の積層フィルム。
5.積層フィルム厚みが9μm~200μmである1~4のいずれかに記載の積層フィルム。
6.前記1~5のいずれかに記載の積層フィルムの片面にオレフィン系シーラント層を積層してなる包装材料。
【発明の効果】
【0017】
本発明者らは、かかる技術によって、環境に配慮しつつ、包装材料に求められるバリア性や接着性、加工性等の必要性能を有する積層フィルムを提供することが可能となった。特に、ラミネート加工品の接着力を向上させることが出来、接着剤層の厚みを抑えても十分な接着力を発現することが出来るため、使用する接着剤の消費も抑えられて、さらなる環境負荷低減にもつながる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
[基材フィルム層]
本発明で基材フィルムとして用いるプロピレン系樹脂延伸フィルムは、二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムとして、公知の二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを使用することが可能であり、その原料、混合比率などは特に限定されない。例えばポリプロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)であるほか、プロピレンを主成分としてエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセンなどのα-オレフィンから選ばれる1種又は2種以上とのランダム共童合体やブロック共重合体など、あるいはこれらの重合体を2種以上混合した混合体によるものであってもよい。また物性改質を目的として酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤など、公知の添加剤が添加されていてもよく、例えば石油樹脂やテルペン樹脂などが添加されていてもよい。
【0019】
また、本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、あるいは二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが積層された積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の積層体の種類、積層数、積層方法などは特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
【0020】
本発明において、基材フィルムを構成するポリプロピレン樹脂としては、実質的にコモノマーを含まないプロピレン単独重合体が好ましく、コモノマーを含む場合であっても、コモノマー量は0.5モル%以下であることが好ましい。コモノマー量の上限は、より好ましくは0.3モル%であり、さらに好ましくは0.1モル%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率が小さくなり、耐熱性が向上する。なお、結晶性を著しく低下させない範囲内において、微量であればコモノマーが含まれていてもよい。
【0021】
基材フィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、プロピレンモノマーのみから得られるプロピレン単独重合体を含むことが好ましく、プロピレン単独重合体であっても、頭-頭結合のような異種結合を含まないことが最も好ましい。
【0022】
基材フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のキシレン可溶分の下限は、現実的な面から、好ましくは0.1質量%である。キシレン可溶分の上限は好ましくは7質量%であり、より好ましくは6質量%であり、さらに好ましくは5質量%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率がより小さくなり、耐熱性が向上する。
【0023】
本発明において、ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)の下限は0.5g/10分であることが好ましい。MFRの下限は、より好ましくは1.0g/10分であり、さらに好ましくは2.0g/10分であり、特に好ましくは4.0g/10分であり、最も好ましくは6.0g/10分である。上記範囲であると機械的負荷が小さく、押出や延伸が容易となる。MFRの上限は20g/10分であることが好ましい。MFRの上限は、より好ましくは17g/10分であり、さらに好ましくは16g/10分であり、特に好ましくは15g/10分である。上記範囲であると延伸が容易となったり、厚み斑が小さくなったり、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく熱収縮率がより小さくなり、耐熱性が向上する。
【0024】
前記基材フィルムは耐熱性の点から、長手方向(MD方向)もしくは横方向(TD方向)の一軸延伸フィルムでも良いが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。本発明では、少なくとも一軸に延伸することで、従来のポリプロピレンフィルムでは予想できなかった高温での熱収縮率が低い、高度な耐熱性を具備したフィルムを得ることができる。延伸方法としては、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等を良好とする点から逐次二軸延伸法が好ましい。
【0025】
逐次二軸延伸法としては、ポリプロピレン樹脂を単軸または二軸の押出機で樹脂温度が200℃以上280℃以下となるようにして加熱溶融させ、Tダイよりシート状にし、10℃以上100℃以下の温度のチルロール上に押出して未延伸シートを得る。ついで、長手方向(MD方向)に120℃以上165℃以下で、3.0倍以上8.0倍にロール延伸し、引き続き、テンターで予熱後、横方向(TD方向)に155℃以上175℃以下温度で4.0倍以上20.0倍以下に延伸することができる。さらに、二軸延伸後に165℃以上175℃以下の温度で1%以上15%以下のリラックスを許しながら、熱固定処理を行うことができる。
【0026】
本発明で用いる基材フィルムは、ハンドリング性(例えば、積層後の巻取り性)を付与するために、フィルムに粒子を含有させてフィルム表面に突起を形成させることが好ましい。フィルムに含有させる粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の耐熱性高分子粒子が挙げられる。透明性の点から、フィルム中の粒子の含有量は少ないことが好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。さらに、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。また、フィルムには必要に応じて各種機能を付与するために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、色素、滑剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、無機または有機の充填剤などを含有させてもよい。
【0027】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外でも、基材フィルムの機械特性、及び、前記ガスバリア性コート層上に積層されるインキ層や接着層との接着性向上などを目的に本発明の目的を損なわない範囲において、フィルムに含有させても良い。例えば、前記と異なるポリプロピレン樹脂、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体であるランダムコポリマーや、各種エラストマー等が挙げられる。
【0028】
本発明において、基材フィルムの厚みは各用途に合わせて任意に設定されるが、下限は2μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは4μm以上である。一方、厚みの上限は300μm以下が好ましく、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下である。厚みが薄い場合には、ハンドリング性が不良になりやすい。一方、厚みが厚い場合にはコスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生しやすくなる。
【0029】
本発明の基材として用いるポリプロピレンフィルムのヘイズは内容物の視認性の観点より、透明性があることが好ましいく、具体的には6%以下が好ましく、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは4%以下である。ヘイズは、例えば延伸温度、熱固定温度が高すぎる場合、冷却ロール(CR)温度が高く延伸原反シートの冷却速度が遅い場合、低分子量が多すぎる場合に悪くなる傾向があるので、これらを調節することにより、前記範囲内に制御することができる。ここでヘイズの評価はJIS K7136に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH2000)を用いた。
【0030】
また本発明における基材フィルム層には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、表面粗面化処理が施されてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などが施されてもよい。バリア性の安定化を図る目的でアンカーコート処理を施すのは好適である。ただし、アンカーコート層にはポリウレタンやポリエステル等のポリオレフィン以外の樹脂を用いるのが一般的であるため、モノマテリアルの観点からはアンカーコート処理を行う場合は付着量が少なくなるよう制御することが好ましい。
アンカーコート層の付着量は0.01~0.50g/mとすることが好ましい。これにより、塗工においてアンカーコート層を均一に制御することができるため、結果としてコートムラや欠陥の少ない膜となる。アンカーコート層の付着量は、好ましくは0.05g/m以上、より好ましくは0.10g/m以上であり、好ましくは0.47g/m以下、より好ましくは0.45g/m以下である。アンカーコート層の付着量が0.50g/mを超えると、ガスバリア性は向上するが、膜厚が厚いことで積層フィルム中の含水率が高くなる虜がある。また、加工性という点では膜厚が厚いことでブロッキングが発生するおそれもある。さらには、フィルムのリサイクル性や製造コストの面においても悪影響を及ぼす懸念がある。
【0031】
[無機薄膜層]
本発明のガスバリア性積層フィルムは、前記基材フィルム層の表面に無機薄膜層を有する。無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20~70質量%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20質量%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70質量%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてガスバリア性が低下する虞がある。また、Al濃度が100質量%の場合、水蒸気バリア性能は良好となるが、単一材料であることから表面が平滑な傾向があり、滑り性が悪く加工上の不具合(シワ・ニキビ等)が生じやすくなる。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
【0032】
無機薄膜層の膜厚は、通常1~100nm、好ましくは5~50nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、100nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0033】
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)等、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiOとAlの混合物、あるいはSiOとAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm~5mmである。加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却等は、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0034】
[有機樹脂層]
本発明においては、基材フィルムのガスバリア性能や接着性を向上させる目的として有機樹脂層を有する。ただし、本発明では、有機樹脂層を設けることで工程が増えることによるコストアップや、膜厚によってはリサイクルが困難になる等の、環境への負荷が生じることに留意して設計する必要がある。
【0035】
有機樹脂層の付着量は0.10~0.50(g/m)とすることが好ましい。有機樹脂層が薄いことからリサイクル利用の際の異物低減等に寄与できる。有機樹脂層の付着量は、下限は好ましくは0.15(g/m)以上、より好ましくは0.20(g/m)以上、さらに好ましくは0.25(g/m)以上であり、上限は好ましくは0.45(g/m)以下、より好ましくは0.40(g/m)以下、さらに好ましくは0.35(g/m)以下である。有機樹脂層の付着量が0.50(g/m)を超えると、ガスバリア性は向上するが、有機樹脂層内部の凝集力が不充分となり、また有機樹脂層の均一性も低下するため、コート外観にムラ(ヘイズ上昇、白化)や欠陥が生じたり、ガスバリア性・接着性を充分に発現できない場合がある。また、加工性という点では膜厚が厚いことでブロッキングが発生するおそれもある。さらには、フィルムのリサイクル性に悪影響を及ぼす懸念がある。一方、有機樹脂層の膜厚が0.10(g/m)未満であると、充分なガスバリア性および層間密着性が得られないおそれがある。
【0036】
本発明の積層フィルムの表面に形成する有機樹脂層に用いる樹脂組成物としては、一般に酸素バリア性が比較的高いと言われる高分子樹脂組成物を用いることができる。例えばポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリルなどがある。ポリビニルアルコール系重合体は、ポリビニルアルコール単位を主要構成成分とするものであり、水素結合構造による高い凝集性によるバリア性能の大幅な向上が期待できる。ポリビニルアルコール系重合体の重合度、鹸化度は、目的とするガスバリア性及びコーティング水溶液の粘度などから定められる。重合度については、水溶液粘度が高いことやゲル化しやすいことから、コーティングが困難となり、コーティングの作業性から2600以下が好ましい。鹸化度については、90%未満では高湿下での十分な酸素ガスバリア性が得られず、99.7%を超えると水溶液の調整が困難で、ゲル化しやすく、工業生産には向かない。従って、鹸化度は90~99.7%が好ましく、さらに好ましくは93~99%である。また、本発明では加工性や生産性を損なわない範囲において、エチレンを共重合したポリビニルアルコール系重合体、シラノール変性したポリビニルアルコール系重合体など、各種共重合または変性したポリビニルアルコール系重合体も使用できる。
【0037】
本発明の有機樹脂層には無機層状化合物を含有することが好ましい。無機層状化合物が存在することで、気体に対する迷路効果が期待でき、ガスバリア性が向上する。材料としては、スメクタイト、カオリン、雲母、ハイドロタルサイト、クロライト等の粘土鉱物(その合成品を含む)を挙げることができる。具体的には、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、金雲母、タルク、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、バーミキュライト、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができる。さらに無機層状化合物として鱗片状シリカ等も使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、特にスメクタイト(その合成品も含む)が水蒸気バリア性の向上効果が高いことから好ましい。
【0038】
また無機層状化合物としては、その中に酸化還元性を有する金属イオン、特に鉄イオンが存在するものが好ましい。さらに、このようなものの中でも、塗工適性やガスバリア性の点からはスメクタイトの1種であるモンモリロナイトが好ましい。モンモリロナイトとしては、従来からガスバリア剤に使用されている公知のものが使用できる。
例えば、下記一般式:
(X,Y)2~3Z4O10(OH)2・mH2O・(Wω)
(式中、Xは、Al、Fe(III)、又はCr(III)を表す。Yは、Mg、Fe(II)、Mn(II)、Ni、Zn、又はLiを表す。Zは、Si、又はAlを表す。Wは、K、Na、又はCaを表す。H2Oは、層間水を表す。m及びωは、正の実数を表す。)
これらの中でも、式中のWがNaであるものが水性媒体中でへき開する点から好ましい。
【0039】
無機層状化合物の大きさや形状は、特に制限されないが、粒径(長径)としては5μm以下が好ましく、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。粒径が5μmより大きいと、分散性に劣り、結果、有機樹脂層の塗工性やコート外観が悪化する恐れがある。一方、そのアスペクト比としては50~5000、より好ましくは100~4000、さらに好ましくは200~3000である。
【0040】
本発明では、原子間力顕微鏡を用いた視野角2μm四方における有機樹脂層の算術平均粗さが2.0~8.0nmであることが好ましい。これにより、有機樹脂層の均一性を保ち安定したバリア性能を発現できるとともに、主に無機層状粒子の配位に由来する表面凹凸の形成により、接着性・耐ブロッキング性を高めることができる。算術平均粗さは、好ましくは2.5nm以上、より好ましくは3.0nm以上、さらに好ましくは3.5nm以上であり、好ましくは7.5nm以下、より好ましくは7.0nm以下、さらに好ましくは6.5nm以下である。算術平均粗さが8.0nmを超えると、表面が粗くなりすぎ有機樹脂層の均一性も低下するため、コート外観にムラや欠陥が生じることで、印刷適性や接着性、バリア性が低下する場合がある。一方、算術平均粗さが2.0nm未満であると、表面が平坦すぎるため、接着性や印刷時のインキ転移性等が低下するおそれがある。また、後述する耐ブロッキング性も悪化し、フィルムをロール状に巻き取った場合にブロッキングが発生するおそれがある。
算術平均粗さの値を前記の所定の数値範囲とするには、前述の材料を使用して前述の所定の付着量とし、さらには材料の配合比を前述の適性範囲とし、後述の塗工液の希釈条件、乾燥・熱処理条件と組み合わせることが必要である。
【0041】
本発明では、積層フィルムの有機樹脂層側表面を試験力0.1mNで測定したときのマルテンス硬さは248N/mm以下であることが好ましく、より好ましくは245N/mm以下であり、さらに好ましくは240N/mm以下であり、特に好ましくは235N/mm以下であり、最も好ましくは230N/mm以下である。ただし、加工中のロールへの巻付きやロール自身のブロッキング等が起こる懸念がある為、160N/mmを下回らないものが望ましい。
マルテンス硬さが248N/mmを超える場合、表面が硬く、加工において樹脂表面の追従性が悪くなり、密着力が低下し、ラミネートフィルムのデラミ等の不具合が起こる可能性が大きくなる。
マルテンス硬さの値を前記の所定の数値範囲とするには、前述の材料を使用して前述の所定の付着量の範囲とすることが必要である。
【0042】
本発明の有機樹脂層には、膜の凝集力向上および耐湿熱接着性を向上させる目的で、ガスバリア性や生産性を損なわない範囲で、各種の架橋剤を配合してもよい。架橋剤としては、例えば、ケイ素系架橋剤、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物等が例示できる。その中でも、ケイ素系架橋剤を配合することにより、特に無機薄膜層との耐水接着性を向上させる観点から、ケイ素系架橋剤が特に好ましい。その他に架橋剤として、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物等を併用してもよい。ただし、リサイクル性を重視する場合には架橋剤は配合しないことが好ましい。
【0043】
本発明では、有機樹脂層積層後のフィルムヘイズは内容物の視認性の観点より、10%以下あることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。ヘイズが10%より大きいと、透明性が大きく悪化することに加え、表面の凹凸にも影響を与える懸念があり、後の印刷工程等での外観不良につながるおそれがある。なお、ヘイズは有機樹脂層の組成比や溶媒条件、膜厚等で調整ができる。ここでヘイズの評価はJIS K7136に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH2000)を用いた。
【0044】
有機樹脂層用樹脂組成物の塗工方式は、フィルム表面に塗工して層を形成させる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常のコーティング方法を採用することができる。
【0045】
有機樹脂層を形成する際には、有機樹脂層用樹脂組成物を塗布した後、比較的低温で予備乾燥しまず溶媒を揮発させ、その後高温で本乾燥させると、均一な膜が得られるため好ましい。予備乾燥の温度は80~110℃が好ましく、より好ましくは85~105℃、さらに好ましくは90~100℃である。予備乾燥温度が80℃未満であると、有機樹脂層に乾燥不足が生じるおそれがある。また、予備乾燥温度が110℃より大きいと、有機樹脂層が濡れ広がる前に乾燥が進行してしまい、外観不良のおそれがある。
【0046】
一方、本乾燥温度は110~140℃が好ましく、より好ましくは115~135℃、さらに好ましくは120~130℃である。本乾燥温度が110℃未満であると、有機樹脂層の造膜が進行せず凝集力および接着性が低下し、結果としてバリア性にも悪影響を与えるおそれがある。140℃を超えると、フィルムに熱がかかりすぎてしまいフィルムが脆くなったり、熱収縮によるシワが大きくなるおそれがある。
【0047】
予備乾燥の好ましい乾燥時間は3.0~10.0秒、より好ましくは3.5~9.5秒、さらに好ましくは4.0~9.0秒である。また、本乾燥の好ましい乾燥時間は3.0~10.0秒、より好ましくは3.5~9.5秒、さらに好ましくは4.0~9.0秒である。ただし、乾燥の条件は、熱媒の方式や乾燥炉の吸排気状況によっても変わるため注意が必要である。また、乾燥とは別に、できるだけ低温領域、具体的には40~60℃の温度領域で1~4日間の追加の熱処理を加えることも、有機樹脂層の造膜を進行させるうえで、さらに効果的である。
【0048】
[包装材料]
本発明の積層フィルムを包装材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成した積層体とすることが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、有機樹脂層上に設けられるが、基材フィルム層の外側(有機樹脂層形成面の反対側の面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が充分に発現できるものであればよいが、オレフィン系のHDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。この中でも耐久性、シール強度、価格、モノマテリアル化の観点から汎用性が高いLLDPEまたはポリプロピレン樹脂が特に好ましい。シーラント層の厚みは20~100μmが好ましく、さらに好ましくは30~90μm、より好ましくは40~80μmである。厚みが20μmより薄いと十分なシール強度が得られないことや、腰感がなく取り扱いづらい可能性がある。一方、厚みが100μmを超えると腰感が強く袋としての取り扱い性が低下する他、価格も高額になる恐れがある。
【0049】
[接着剤層]
本発明で用いられる接着剤層は、汎用的なラミネート用接着剤が使用できる。たとえば、ポリ(エステル)ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリエチレンイミン系、エチレン-(メタ)アクリル酸系、ポリ酢酸ビニル系、(変性)ポリオレフィン系、ポリブタジェン系、ワックス系、カゼイン系等を主成分とする(無)溶剤型、水性型、熱溶融型の接着剤を使用することができる。この中でも、耐熱性と、各基材の寸法変化に追随できる柔軟性を考慮すると、ウレタン系またはポリエステル系が好ましい。上記接着剤層の積層方法としては、たとえば、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、キスコート法、ダイコート法、ロールコート法、ディップコート法、ナイフコート法、スプレーコート法、フォンテンコート法、その他の方法で塗布することができ、十分な接着性を発現するため、乾燥後の塗工量は1~8g/m2が好ましい。より好ましくは2~7g/m、さらに好ましくは3~6g/mである。塗工量が1g/m未満であると、全面で貼り合せることが困難になり、接着力が低下する。また、8g/m以上を超えると、膜の完全な硬化に時間がかかり、未反応物が残りやすく、接着力が低下する。従来の一般的なポリプロピレンフィルムを用いる場合、十分な接着力を発現する為には厚みが2~3μm程度の接着剤層を必要であったが、本発明品ではこの3分の1~2分の1の接着剤層厚みでも同等以上の接着力を発現することが出来る。すなわち、本発明品を用いれば、使用する接着剤を少なく抑えることが可能となる。
【0050】
さらに、本発明の積層フィルムには、基材フィルム層とヒートシール性樹脂層との間またはその外側に、印刷層や他のプラスチック基材および/または紙基材を少なくとも1層以上積層してもよい。
【0051】
印刷層を形成する印刷インクとしては、水性および溶媒系の樹脂含有印刷インクが好ましく使用できる。ここで印刷インクに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が例示される。印刷インクには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥等公知の乾燥方法が使用できる。
【0052】
本発明の積層体は、23℃×65%RH条件下における酸素透過度が10mL/m・d・MPa以下となることが、良好なガスバリア性を発現する点で好ましい。さらに、前述の有機樹脂層成分・付着量等を制御することで、好ましくは5mL/m・d・MPa以下、より好ましくは3mL/m・d・MPa以下とすることができる。酸素透過度が10mL/m・d・MPaを超えると、高いガスバリア性が要求される用途に対応することが難しくなる。
【0053】
本発明の積層体は、40℃×90%RH条件下における水蒸気透過度がいずれも3g/m・d以下であることが、良好なガスバリア性を発現する点で好ましい。さらに、前述の有機樹脂層成分・付着量を制御することで、好ましくは2g/m・d以下、より好ましくは1g/m・d以下とすることができる。水蒸気透過度が3g/m・dを超えると、高いガスバリア性が要求される用途に対応することが難しくなる。
本発明の積層体は、23℃×80%RH条件下における酸素透過度が15mL/m・d・MPa以下となることが、良好なガスバリア性を発現する点で好ましい。さらに、前述の有機樹脂層成分・付着量を制御することで、好ましくは10mL/m・d・MPa以下、より好ましくは5mL/m・d・MPa以下とすることができる。酸素透過度が15mL/m・d・MPaを超えると、高いガスバリア性が要求される用途に対応することが難しくなる。
【0054】
本発明の積層体は、23℃×65%RH条件下におけるラミネート強度がいずれも1.0N/15mm以上であることが好ましく、より好ましくは1.5N/15mm以上、さらに好ましくは2.0N/15mm以上である。ラミネート強度が1.0N/15mm未満であると、屈曲負荷やシール時の熱によって剥離が生じ、バリア性が劣化したり、内容物が漏れ出たりするおそれがある。さらに、手切れ性が悪化するおそれもある。
【実施例0055】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。
【0056】
(1)積層フィルムの厚み
JIS K7130-1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
【0057】
(2) 積層フィルムのヘイズ
JISK7136に準じてヘイズメーターNDH-2000(日本電色工業製)を用いて測定した。
【0058】
(3) 有機樹脂層の付着量
各実施例および比較例において、基材フィルム上に有機樹脂層を積層した段階で得られた各積層フィルムを試料とし、この試料から100mm×100mmの試験片を切り出し、エタノールによる有機樹脂層の拭き取りを行い、拭き取り前後のフィルムの質量変化から付着量を算出した。
【0059】
(1)マルテンス硬さ(N/mm2)の測定方法
得られた積層フィルムを約2cm角に切り取り、厚さが約1mmのガラス板上に、測定面である有機樹脂層側面の反対面を粘着剤にて固定した後、23℃、50%RHの雰囲気下で12時間放置して調湿した。この試料について、ダイナミック超微小硬度計(島津製作所製の「DUH-211」を用いて、ISO14577-1(2002)に準拠した方法により、下記測定条件で測定した。測定はフィルムの位置を変えて10回行い、最大と最小を除いた8点の平均値を求めた。
<測定条件>
(設定)
・測定環境:温度23℃・相対湿度50%
・試験モード:負荷-除荷試験
・使用圧子:稜間角115度、三角錐圧子
・圧子弾性率:1.140×106N/mm
・圧子ポアソン比 :0.07
・Cf-Ap,As補正:あり
・試験力:0.10mN
・負荷速度:0.0050mN/sec
・負荷保持時間:5sec
・除荷保持時間:0sec
マルテンス硬さは、試験力-押し込み深さ曲線にて、試験力50%Fと90%F(F=0.10mN)間での深さが試験力の平方根に比例する傾き(m)から下記式(1)より求めた。

マルテンス硬さ HMs=1/(26.43×m2) ・・・・(1)
【0060】
(6) 有機樹脂層の算術平均粗さの測定方法
積層フィルムの表面粗さの測定は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(株式会社島津製作所製「SPM9700」)を使用して(カンチレバー:オリンパス社から提供されるOMCL―AC200TSを使用、観察モード:位相モード)実施した。詳しくは、フィルム表面の視野角2μm四方においてSPM画像を得た。得られた画像において、SPM付属のソフトウエアの機能である傾き補正を使用し、X方向・Y方向・Z方向の傾き補正を行った後、算術平均粗さの値を算出した。算術平均粗さは、断面曲線から所定の波長より長い表面うねり成分を高域通過フィルタで除去した粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、その抜き取り部分の平均線の方向にX軸を縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(X)で表したときに、次の式によって求められる値を二次元に拡張した値とした。

Ra=1/L∫L0 |f(x)|dx L:基準長さ
【0061】
(7) 酸素透過度の評価方法
各実施例および比較例において、基材フィルム上に有機樹脂層を積層した段階で得られた各積層フィルムを試料とし、JIS-K7126 B法に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX-TRAN(登録商標)1/50」)を用い、温度23℃、湿度65%RHと温度23℃、湿度80%RHの2条件の雰囲気下で酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、基材フィルム側から有機樹脂層側に酸素が透過する方向で行った。
【0062】
(8)水蒸気透過度の評価方法
各実施例および比較例において、基材フィルム上に有機樹脂層を積層した段階で得られた各積層フィルムを試料とし、JIS-K7129 B法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W 3/33MG」)を用い、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、基材フィルム側から有機樹脂層側に水蒸気が透過する方向で行った。
【0063】
(9)積層フィルムの耐ブロッキング性評価
各実施例および比較例において、基材フィルム上に有機樹脂層を積層した段階で得られた各積層フィルムを試料とし、巾15mm、長さ200mmの短冊状にカットした試料を2セット準備して、片側の試料の有機樹脂層面に水1滴(約0.02g)を滴下した後、もう一方の試料の有機樹脂層面を合わせるように重ね合わせ、ガラス板で挟み込み、40℃保温で24時間乾燥して、水分を蒸発させたあと、2枚の短冊を剥離して、フィルムの付着状態を確認した。剥離する際にフィルムが切れるほど付着しているものは×判定、フィルムが切れずにスムーズに剥離できたものは〇判定とした。
【0064】
(10)有機樹脂層の溶媒揮発性評価
各実施例および比較例において、基材フィルム上に有機樹脂層を積層した段階で得られた各積層フィルムを試料とし、有機樹脂層をペーパータオルで軽く押さえた時に、ペーパータオルに有機樹脂層が付着してしまうものを溶媒揮発が不十分として×判定、ペーパータオルに有機樹脂層が付着しないものを溶媒揮発が十分として〇判定とした。
【0065】
(11)有機樹脂層の外観評価
各実施例および比較例において、基材フィルム上に有機樹脂層を積層した段階で得られた各積層フィルムを試料とし、目視確認で有機樹脂層の抜けやスジ、ムラ等が分かるものを外観不良として×判定、上記がないものを外観良好として〇判定とした。
【0066】
[ラミネート積層体の作製]
実施例、比較例で得られた積層体の上に、エステル系接着剤(東洋モートン株式会社製TM569/CAT10L)を塗布した後、未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡製P1128;厚み30μm;CPPとする)を60℃に加熱した金属ロール上でドライラミネートし、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用のラミネートガスバリア性積層体を得た。
なお、前記接着剤の乾燥処理後の厚みが3μmになるよう塗布したものをラミネート積層体A、乾燥処理後の厚みが1.5μmなるよう塗布したものをラミネート積層体B、乾燥処理後の厚みが0.8μmなるよう塗布したものをラミネート積層体Cとした。
【0067】
(12) ラミネート強度の評価方法
上記で作製したラミネート積層体A~Cを幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン社製「テンシロンUMT-II-500型」)を用いてラミネート強度(常態)を測定した。なお、ラミネート強度の測定は、引張速度を200mm/分とし、実施例および比較例で得られた各積層フィルムの積層フィルム層とヒートシール性樹脂層とを剥離角度90度で剥離させたときの強度をそれぞれ測定した。
【0068】
[無機薄膜層]
以下に各実施例及び比較例で使用する無機薄膜層の作製方法を記す。なお、実施例1~7、及び比較例1~4、8で使用し、表2に示した。なお、比較例5~7には無機薄膜層を積層しなかった。
【0069】
(無機薄膜層M-1の形成)
無機薄膜層M-1として、基材フィルム層上に酸化アルミニウムの蒸着を行った。基材フィルム層への酸化アルミニウムを蒸着する方法は、フィルムを連続式真空蒸着機の巻出し側にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させフィルムを巻き取る。この時、連続式真空蒸着機を10-4Torr以下に減圧し、冷却ドラムの下部よりアルミナ製るつぼに純度99.99%の金属アルミニウムを装填し、金属アルミニウムを加熱蒸発させ、その蒸気中に酸素を供給し酸化反応させながらフィルム上に付着堆積させ、厚さ10nmの酸化アルミニウム膜を形成した。
【0070】
(無機薄膜層M-2の形成)
無機薄膜層M-2として、基材フィルム層上に、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm~5mm程度の粒子状SiO(純度99.9%)とA1(純度99.9%)とを用いた。このようにして得られたフィルム(無機薄膜層/有機樹脂層含有フィルム)における無機薄膜層(SiO/A1複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。またこの複合酸化物層の組成は、SiO/A1(質量比)=60/40であった。
【0071】
以下に本実施例及び比較例で使用する塗工液の詳細を記す。なお、実施例1~6、及び比較例1~8で使用し、表2に示した。
【0072】
[ポリビニルアルコール樹脂溶液(A)]
精製水90質量部に、完全けん化ポリビニルアルコール樹脂(日本合成化学社製、商品名:GポリマーOKS8049Q、(けん化度99.0%以上、平均重合度450)、10質量部を加え、攪拌しながら80℃に加温し、その後約1時間攪拌させた。その後、常温になるまで冷却し、これにより固形分10%のほぼ透明なポリビニルアルコール溶液(PVA溶液)を得た。
【0073】
[無機層状化合物分散液(B)]
無機層状化合物であるモンモリロナイト(商品名:クニピアF、クニミネ工業社製)5質量部を精製水95質量部中に攪拌しながら添加しホモジナイザーにて1500rpmの設定にて充分に分散した。その後、23℃にて1日間保温し固形分5%の無機層状化合物分散液を得た。
[EVOH樹脂溶液(C)]
精製水40質量部、イソプロピルアルコール50質量部を混合した混合液にエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂(クラレ社製、商品名:L171B、(エチレン含有率27mol%)、10質量部を加え、攪拌しながら80℃に加温し、その後約1時間攪拌させた。その後、常温になるまで冷却し、これにより固形分10%のEVOH溶液を得た。
【0074】
[実施例1の有機樹脂層に用いる塗工液1]
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(有機樹脂層用樹脂組成物)を作成した。
イオン交換水 20.00質量%
イソプロピルアルコール 15.00質量%
ポリビニルアルコール樹脂溶液(A) 35.00質量%
無機層状化合物分線液(B) 30.00質量%
【0075】
[実施例2、3、6、7比較例3~5、8の有機樹脂層に用いる塗工液2]
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(有機樹脂層用樹脂組成物)を作成した。
イオン交換水 15.00質量%
イソプロピルアルコール 15.00質量%
ポリビニルアルコール樹脂溶液(A) 30.00質量%
無機層状化合物分線液(B) 40.00質量%
【0076】
[実施例4の有機樹脂層に用いる塗工液3]
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(有機樹脂層用樹脂組成物)を作成した。
イオン交換水 10.00質量%
イソプロピルアルコール 15.00質量%
ポリビニルアルコール樹脂溶液(A) 25.00質量%
無機層状化合物分線液(B) 50.00質量%
【0077】
[実施例5、比較例7の有機樹脂層に用いる塗工液4]
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(有機樹脂層用樹脂組成物)を作成した。
イオン交換水 27.50質量%
イソプロピルアルコール 15.00質量%
EVOH樹脂溶液(C) 42.50質量%
無機層状化合物分線液(B) 15.00質量%
【0078】
[比較例1の有機樹脂層に用いる塗工液5]
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(有機樹脂層用樹脂組成物)を作成した。
イオン交換水 35.00質量%
イソプロピルアルコール 15.00質量%
ポリビニルアルコール樹脂溶液(A) 50.00質量%
【0079】
[比較例2の有機樹脂層に用いる塗工液6]
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(有機樹脂層用樹脂組成物)を作成した。
イオン交換水 30.00質量%
イソプロピルアルコール 15.00質量%
ポリビニルアルコール樹脂溶液(A) 45.00質量%
無機層状化合物分線液(B) 10.00質量%
【0080】
[比較例6の有機樹脂層に用いる塗工液7]
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液(有機樹脂層用樹脂組成物)を作成した。
イオン交換水 35.00質量%
イソプロピルアルコール 15.00質量%
EVOH樹脂溶液(C) 50.00質量%
【0081】
(フィルムへの塗工液のコート(有機樹脂層の積層))
上記調製した塗工液をグラビアロールコート法によって、無機薄膜層が積層された面または、無機薄膜層を積層していないものは基材フィルムのコロナ処理面上に塗布し、90℃×4秒で予備乾燥した後、130℃×4秒で本乾燥させ、有機樹脂層を得た。乾燥後の有機樹脂層Eの付着量は表2に示す通りであった。その後、40℃2日間の後加熱処理を施した。有機樹脂層を構成する塗工液、および前記の本乾燥の温度と後加熱処理条件を、各実施例、比較例で表2に示したように変更した。
【0082】
以上のようにして、基材フィルムの上に有機樹脂層を備えた積層フィルムを作製した。
基材は実施例1~6、比較例1~7には基材層(A)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を用いた。また、表面層(B)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-2を43.2重量%、表1に示すエチレン共重合ポリプロピレン重合体PP-4を52.0重量%、アンチブロッキング剤含有マスターバッチFTX0627Gを4.8重量%の割合で配合したものを使用した。このとき、表面層(B)を構成するポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(g/10分)は5.1であった。
表面層(C)には、表1に示すポリプロピレン単独重合体PP-1を93.6重量%、アンチブロッキング剤含有マスターバッチFTX0627Gを6.4重量%の割合で配合したものを使用した。
基材層(A)は45mm押出機、表面層(B)は25mm押出機、表面層(C)は20mm押出機を用いて、それぞれ原料樹脂を250℃で溶融し、Tダイからシート状に共押し出しし、30℃の冷却ロールに表面層(B)が接触するよう冷却固化した後、135℃で縦方向(MD)に4.5倍に延伸した。次いでテンター内で、フィルム幅方向(TD)両端をクリップで挟み、173℃で予熱後、164℃で幅方向(TD)に8.2倍に延伸し、幅方向(TD)に6.7%緩和させながら、171℃で熱固定した。
こうして、表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の構成の二軸配向ポリプロピレン系フィルムを得た。
【0083】
二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面層(B)の表面を、ソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取った。得られたフィルムの厚みは20μm(表面層(B)/基材層(A)/表面層(C)の厚みが1.3μm/17.7μm/1.0μm)であった。また、表面層(B)のマルテンス硬さが248N/mm以下である二軸配向ポリプロピレン系フィルムを用いた。得られた積層フィルムについて、評価を実施した。結果を表2に示す。
また、実施例7には実施例1の基材の表面層(B)上にアンカーコート層として下記に示す塗工液1を用いて、グラビアロールコート法によって塗布後、130℃で10秒間乾燥させたものを用いた。この時のアンカーコート層の付着量は0.40g/mであった。
【0084】
[塗工液1]
シランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM-603」)0.25質量部をアセトン1.48質量部溶解した溶液に、イソシアネート;メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(三井化学社製「タケネートD-110N」:固形分75%)を4.07質量部混合させ、10分間マグネチックスターラ―を用いて撹拌した。得られた調合液をメチルエチルケトン69.55質量部および1-メトキシ-2-プロパノール(以下PGM)14.03質量部で希釈し、さらにポリエステル樹脂(DIC社製;DF-COAT GEC-004C:固形分30%)を10.62質量部添加し、目的の塗工液1を得た。
比較例8には東洋紡株式会社製パイレンフィルムP2102、厚み20μmのフィルムを用いた。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2A】
【0087】
【表2B】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本願発明によれば、ポリプロピレンフィルムを主体とした環境負荷が少ないほぼ単一の樹脂種から構成されたラミネート構成を形成することができるフィルムであるとともに、包装材料に求められるガスバリア性や接着性の必要性能を有する積層フィルムを提供することが可能となった。しかも、本発明の積層フィルムは加工工程が少なくかつ加工性に優れ容易に製造できるので、経済性と生産安定性の両方に優れており、均質な特性のガスバリア性フィルムを提供することができる。