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特開2023-50933連結装置、農作業機及び作物の生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050933
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】連結装置、農作業機及び作物の生産方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 59/042 20060101AFI20230404BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A01B59/042 Z
A01C11/02 301D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161307
(22)【出願日】2021-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000231981
【氏名又は名称】日本甜菜製糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川本 靖信
(72)【発明者】
【氏名】木村 直樹
【テーマコード(参考)】
2B041
2B060
【Fターム(参考)】
2B041AA09
2B041AA11
2B041AB05
2B041AC06
2B041BA08
2B041CA03
2B041CA14
2B041CC08
2B041CC12
2B041CC16
2B041CD02
2B041CD03
2B041CD04
2B041DC04
2B060AA06
2B060AD03
2B060AE01
2B060BA04
2B060CA02
2B060CA09
(57)【要約】
【課題】農作業機と走行機または対地作業機との連結及び切り離しが容易な連結装置を提供する。
【解決手段】リンク機構71(支持手段)に設けられた引張コイルばね(付勢手段)により、走行機側の着脱機構50(走行機側連結部51)を上方向へ付勢したので、引張コイルばねのばね力に抗して走行機側の着脱機構50を押し下げることにより、連続鉢苗移植機1を持ち上げたり移動させたりすることなく、農作業機側被嵌合部33に走行機側嵌合部53を嵌合させることが可能であり、延いては連続鉢苗移植機1(農作業機)と走行機とを容易に連結又は切り離すことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業機と走行機または対地作業機とを連結させる農作業機用連結装置であって、
農作業機側連結部と、前記走行機または対地作業機に設けられて前記農作業機側連結部を着脱する着脱機構とからなり、
前記農作業機側連結部は、上部係合部材と、下部係合部材と、前記上部係合部材と前記下部係合部材との間に設けられる農作業機側被嵌合部とを備え、
前記着脱機構は、走行機側連結部と、該走行機側連結部を上下方向へ揺動可能に支持する支持手段とを備え、
前記走行機側連結部は、前記農作業機側被嵌合部に嵌合され、かつ、前記農作業機に当接させることで前記農作業機側連結部に対する揺動動作を制限する当接部材を有する走行機側嵌合部を備えることを特徴とする連結装置。
【請求項2】
請求項1に記載の連結装置であって、
前記着脱機構は、前記走行機側連結部を上方向へ付勢する付勢手段を備えることを特徴とする連結装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の連結装置であって、
前記走行機側連結部の上部には、前記上部係合部材が係合される切欠き状の上部被係合部が設けられることを特徴とする連結装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の連結装置であって、
前記当接部材の上端と下端との間には、L字状の切欠き部が形成され、
前記切欠き部の上側及び下側には、上部当接部及び下部当接部が設けられ、
前記切欠き部の底部及び角部には、前記下部係合部材が係合される下部被係合部が形成されることを特徴とする連結装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の連結装置であって、
前記農作業機側連結部は、前記上部係合部材よりも下方に設けられた緊締具を有し、
前記走行機側連結部には、前記緊締具の先端係止部を係止する被係止部が設けられることを特徴とする連結装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の連結装置であって、
前記支持手段は、平行リンク機構を構成し、上下に間隔をあけて配置された一対の横リンクの一端が、前記着脱機構に設けられたブラケットに連結され、前記一対の横リンクの他端が、前記走行機側連結部が取り付けられる縦リンクに連結され、
一方の横リンクの一端は、前記ブラケットに形成された角度調整長孔に挿通された角度調整支軸に接続されることを特徴とする連結装置。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の連結装置を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項8】
請求項7に記載の農作業機を用いて苗を移植することを特徴とする作物の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機と走行機又は走行機に装着された対地作業機とを連結させる連結装置、該連結装置により走行機又は走行機に装着された対地作業機に連結された農作業機、及び該農作業機を用いた作物の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、側枠に設けた四節リンク支持杆を四節リンクの後部リンクとし、四節リンクの先端リンクを溝上げ機(走行機)の作業機取付装置に連接した接地型連続集合鉢体苗移植機(農作業機)が開示されている。特許文献1に記載の移植機は、圃場の凹凸により溝上げ機が上下動しても、ソリ状底板を圃場の凹凸に追従させることができる。一方、特許文献1に記載の移植機は、圃場の始端部と終端部とに移植不能領域を生じる問題がある。つまり、圃場の始端部では、移植機を溝上げ機に連結した状態にて圃場に深溝を形成することができないことから移植機の長さ相当分の移植不能領域が発生し、圃場の終端部では、移植機を溝上げ機に連結した状態にて溝上げ機を進行させて移植作業ができないことから移植機と溝上げ機の全長を合わせた長さ相当分の移植不能領域が発生する。
【0003】
当該移植不能領域は、移植機と溝上げ機とを切り離し、溝上げ機で溝を形成した後、切り離された移植機により溝に苗(連続集合鉢体)が移植される。そこで、移植機(農作業機)と溝上げ機(走行機)との速やかな連結及び切り離しを可能とする連結装置が必要となる。このような連結装置として、特許文献2には、移植機本体のハンドルに設けられる連結フックと、台車のビームに設けられて連結フックが係合される連結ユニットと、からなる連結装置が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献2に記載の連結装置(以下「従来の連結装置」と称する)では、移植機本体と台車とを切り離す場合、台車側の連結ユニットの連結フレームを押し下げて移植機本体側の連結フックとの係合を解除した後、連結フレームがコイルばねの上方への付勢により跳ね上がってT字形状の連結フックに再び係合することを防ぐために、連結フレームを手で押さえながら移植機本体又は台車を前後方向に一定距離移動させる必要がある。よって、台車を二人の作業者で操作するため問題にはならないが、当該連結装置を特許文献1に記載の移植機(農作業機)と溝上げ機(走行機)との連結に用いる場合、一人の作業者で連結を解除するのは困難である。また、従来の連結装置では、その連結態様が、連結フックを連結フレームの先端部の切欠きに係合させるだけで、台車と移植機本体とが連結されるものであり、硬い圃場に植え付ける際には、移植機の溝切部が硬い圃場から受ける反力により、連結フックと連結フレームとの係合部分を支点として移植機本体が揺動するため、移植機の植付け姿勢が安定せず、一定の植付け深度を維持することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3310723号公報
【特許文献2】特許第5035126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、農作業機と走行機又は走行機に装着された対地作業機との連結及び切り離しが容易な連結装置、該連結装置により走行機又は走行機に装着された対地作業機に連結された農作業機、及び該農作業機を用いた作物の生産方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の連結装置は、農作業機と走行機または対地作業機とを連結させる農作業機用連結装置であって、農作業機側連結部と、前記走行機または対地作業機に設けられて前記農作業機側連結部を着脱する着脱機構とからなり、前記農作業機側連結部は、上部係合部材と、下部係合部材と、前記上部係合部材と前記下部係合部材との間に設けられる農作業機側被嵌合部とを備え、前記着脱機構は、走行機側連結部と、該走行機側連結部を上下方向へ揺動可能に支持する支持手段とを備え、前記走行機側連結部は、前記農作業機側被嵌合部に嵌合され、かつ、前記農作業機に当接させることで前記農作業機側連結部に対する揺動動作を制限する当接部材を有する走行機側嵌合部を備えることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の農作業機は、請求項1乃至6に記載の連結装置を備えることを特徴とする。
本発明の請求項8に記載の作物の生産方法は、請求項7に記載の農作業機を用いて苗を移植することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、農作業機と走行機又は対地作業機との連結及び切り離しが容易な連結装置、該連結装置により走行機又は走行機に装着された対地作業機に連結された農作業機、及び該農作業機を用いた作物の生産方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る連結装置を介して走行機に連結された連続鉢苗移植機(農作業機)の右側面図である。
図2図1における連結装置を拡大して示す図である。
図3】本実施形態に係る連結装置の斜視図である。
図4】本実施形態に係る連結装置における農作業機側連結部の説明図である。
図5】本実施形態に係る連結装置におけるリンク機構の右側面図である。
図6】本実施形態に係る連結装置におけるリンク機構の角度調整機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を添付した図を参照して説明する。
便宜上、連続鉢苗移植機1(農作業機)の進行方向(図1における「右方向」)を前方向と称する。また、連続鉢苗移植機1の幅方向(図1における「視線方向」)を左右方向と称する。ここで、図1は、連続鉢苗移植機1の右側面図である。
【0011】
図1に示されるように、連続鉢苗移植機1は、後側の下面を接地面とする機台2を有する。機台2上には、前側(図1における右側)から順に、鉢苗載置部3、鉢苗案内部4、及び鉢苗繰出部5が設けられる。ここで、鉢苗載置部3、鉢苗案内部4、及び鉢苗繰出部5は、従来構造がそのまま用いられる。よって、ここでは、明細書の記載を簡潔にすることを目的に、個々の詳細な説明を省略する。
【0012】
機台2の前端部には、取付板6を介してスタンド7が設けられる。スタンド7は、一般構造用角形鋼管からなり、鉛直線に対して前傾(本実施形態では約25度)されている。スタンド7の上端側開口には、一般構造用角形鋼管からなるハンドルステー8が挿入される。ハンドルステー8の上端部には、左右方向へ延びる棒状のハンドル9が設けられる。ハンドル9の圃場(図示省略)からの高さは、ハンドルステー8の、スタンド7からの突出長さを変えることで複数段階に調節することができる。
【0013】
スタンド7の下端側開口には、一般構造用角形鋼管からなる車輪ステー11が挿入される。車輪ステー11の下端部には、車輪12が設けられる。車輪12の車軸13には、車輪ステー11の下端部と、車輪ステー11に対して平行をなす補助ステー14の下端部とが接続される。そして、補助ステー14とスタンド7に設けられたプレート15との、締結部材16による締結位置を変えることで、車輪ステー11の、スタンド7からの突出長さを複数段階に調節することにより、車輪12を圃場(深溝)に接地させる。
【0014】
連続鉢苗移植機1(農作業機)は、本実施形態に係る連結装置21により、トラクタ又は深溝形成機等の走行機又は対地作業機(以下「走行機」と称する、図示省略)に連結される。図1又は図2に示されるように、連結装置21は、農作業機側連結部31と、走行機に設けられて農作業機側連結部31を着脱する着脱機構50とにより構成される。着脱機構50は、農作業機側連結部31に連結可能な走行機側連結部51と、走行機側連結部51を上下方向へ揺動可能に支持するリンク機構71(支持手段)とを備える。
【0015】
農作業機側連結部31は、走行機側連結部51の走行機側嵌合部53(図3参照)が嵌合される農作業機側被嵌合部33を備える。図2図3に示されるように、農作業機側被嵌合部33は、連続鉢苗移植機1のスタンド7に取り付けられた板金部材からなる農作業機側連結部材32に構成される。農作業機側連結部材32は、チャンネル状に形成されて走行機側が開口する向きでスタンド7に固定される固定部34と、固定部34の左右両端から走行機側に向かって延びる一対の板からなる農作業機側被嵌合部33とを有する。図4に示されるように、農作業機側被嵌合部33の先端部(開口部)は、走行機側嵌合部53を受け入れ易くするため開いている。
【0016】
図2図4に示されるように、農作業機側連結部31は、農作業機側被嵌合部33の上部に架設された上部係合軸35(上部係合部材)と、農作業機側被嵌合部33の下部に架設された下部係合軸36,37(下部係合部材)とを備える。上部係合軸35は、スタンド7から一定距離だけ離れた位置に配置される。下部係合軸36は、スタンド7に略接するように配置される。下部係合軸37は、スタンド7に垂直な平面のうち、下部係合軸36が配置された平面上に配置され、かつ、スタンド7からの距離が上部係合軸35と同一となる位置に配置される。即ち、上部係合軸35と下部係合軸37との軸線を含む平面は、スタンド7に平行である。なお、上部係合軸35及び下部係合軸36,37は、同一径のピンからなる。
【0017】
一方、走行機側嵌合部53は、リンク機構71の縦リンク72に取り付けられた走行機側連結部材52に構成される。走行機側連結部材52は、左右対称に形成される。図2図3に示されるように、走行機側連結部材52は、角形鋼管からなり、縦リンク72にボルト固定される固定部54と、固定部54に接合された板金部材の対向する一対の側板からなる走行機側嵌合部53とを有する。図2に示されるように、走行機側連結部51は、連続鉢苗移植機1(農作業機)のスタンド7の前側面の、農作業機側被嵌合部33の内側上部に設けられた上部被当接部38に当接される上部当接部58(当接部材)と、同じく農作業機側被嵌合部33の内側下部に設けられた下部被当接部39に当接される下部当接部59(当接部材)とを有する。
【0018】
上部当接部58及び下部当接部59は、固定部54に接合された板金部材の底板の上部及び下部に形成される。上部当接部58と下部当接部59との間には、固定部54に接合された板金部材を側面視(図2参照)で直角三角形に切り欠いて形成したL字状の切欠き部60が設けられる。走行機側連結部51は、走行機側嵌合部53(板金部材の一対の側板)の上端部をV字状に切り欠くことで形成され、農作業機側連結部31の上部係合軸35が係合される上部被係合部55を有する。また、走行機側連結部51は、切欠き部60の底部61及び角部62に形成され、農作業機側連結部31の下部係合軸36及び下部係合軸37が係合される下部被係合部56を有する。
【0019】
連結装置21は、農作業機側連結部31の上部係合軸35が走行機側連結部51の上部被係合部55に係合され、かつ、農作業機側連結部31の下部係合軸36及び下部係合軸37が走行機側連結部51の下部被係合部56(切欠き部60の底部61及び角部62)に係合されることにより、走行機側連結部51の上部当接部58及び下部当接部59が農作業機側連結部31の上部被当接部38及び下部被当接部39に当接される。
【0020】
図2図3に示されるように、農作業機側連結部31は、既製のトグル型ファスナ40(緊縛具)を有する。ファスナ40は、農作業機側連結部材32の下部被当接部39における下部当接部59が当接する部位よりも下方に取り付けられたファスナ本体41と、走行機側連結部材52の固定部54(鋼管)に固定され、ファスナ本体41の先端係止部42を係止する被係止部材43(被係止部)とからなる。ファスナ40を締め付けることにより、上部被当接部38及び下部被当接部39と走行機側連結部51の上部当接部58及び下部当接部59との間に締結力(面圧)を発生させることができる。なお、ファスナ40が発生する締結力は、一端が先端係止部42に接続された引張コイルばねのばね力により調節することができる。
【0021】
このように、連結装置21は、農作業機側連結部31の上部係合軸35(上部係合部材)と締め付けられたファスナ40とによる走行機側連結部材52の上下方向からの挟み込みにより、農作業機側連結部31と走行機側連結部51との上下方向(連続鉢苗移植機1のスタンド7に沿う方向)への相対移動を阻止し、かつ、ファスナ40を締め付けて農作業機側連結部31の上部被当接部38及び下部被当接部39と走行機側連結部51の上部当接部58及び下部当接部59との間に締結力(面圧)を発生させることにより、農作業機側連結部31と走行機側連結部51との前後方向への相対移動を阻止する。
【0022】
図5に示されるように、リンク機構71は、4本の支軸75乃至78が平行四辺形の頂点に配置される。支軸75は縦リンク72の上部を左右方向へ貫通し、支軸77は縦リンク72の下部を左右方向へ貫通する。また、支軸76はブラケット82の上部を左右方向へ貫通し、支軸78はブラケット82の下部を左右方向へ貫通する。支軸75の両端部と支軸76の両端部とは左右一対の横リンク73,73により連結される。支軸77の両端部と支軸78の両端部とは左右一対の横リンク74,74により連結される。横リンク73,73と横リンク74,74とは、上下に間隔をあけて配置される。このリンク機構71により、縦リンク72は、姿勢(図5では垂直姿勢)を保ちながら上下方向へ移動可能である。
【0023】
リンク機構71は、縦リンク72、延いては走行機側連結部材52を上方向へ付勢する引張コイルばね79(付勢手段)を有する。引張コイルばね79は、前端が、ブラケット82を左右方向へ貫通するピン80に接続され、後端が、縦リンク72の下部に接続される。引張コイルばね79のばね力、即ち、走行機側連結部材52の付勢力は、ピン80を挿通するピン挿通孔81を選択することで調節可能である。なお、縦リンク72の上端には、引張コイルばね79のばね力に抗して縦リンク72(走行機側連結部材52)を押し下げるための把手86が設けられる。
【0024】
リンク機構71は、縦リンク72の可動域を制限する可動域制限機構83を有する。可動域制限機構83は、横リンク74,74の扇形の後端部に形成された長孔84,84と、両端が長孔84,84に係合され、縦リンク72を左右方向へ貫通するピン85とを有する。ピン85は、支軸75,77間に配置される。長孔84,84は、支軸77を中心とする円弧に沿って延びる。
【0025】
図6に示されるように、リンク機構71は、走行機に取り付けられるブラケット82に対する後傾角度を調整する角度調整機構88を有する。角度調整機構88は、ブラケット82の上部後側に形成されて支軸78を中心とする円弧に沿って延びる角度調整長孔89,89と、角度調整長孔89,89に挿通されるパイプ状の角度調整支軸90とを有する。角度調整支軸90には、リンク機構71の支軸76が挿通される。ブラケット82の側板間には、前後方向へ延びる連接部材91が設けられる。連接部材91の後端部には、角度調整支軸90を挿通させる挿通孔92が形成される。
【0026】
ブラケット82の取付板87には、前後方向へ延びるねじ軸93が挿通される。ねじ軸93は、取付板87に接合された軸受94に回転可能に支持される。ねじ軸93の後端部(軸受94から突き出た部分)は、連接部材91の前端(図6における右端)に形成されたねじ孔96に螺合される。連接部材91の挿通孔92とねじ孔96との間には、ねじ軸93との干渉を回避する切欠き95が形成される。
【0027】
角度調整機構88は、図5に示される縦リンク72が略垂直の状態で、ねじ軸93の前端に設けられたクランク状のハンドル97を操作してねじ軸93を反時計回り方向へ回転させると、連接部材91が後退(図6における左方向へ移動)する。これにより、角度調整支軸90及び該角度調整支軸90に挿通された支軸76が角度調整長孔89,89に沿って後方向(図6における左方向へ移動)へ移動し、縦リンク72は、支軸77を中心に図5における反時計回り方向へ回動することで後傾する。
【0028】
一方、縦リンク72が後傾した状態で、ハンドル97を操作してねじ軸93を時計回り方向へ回転させると、連接部材91が前進(図6における右方向へ移動)する。これにより、角度調整支軸90及び該角度調整支軸90に挿通された支軸76が角度調整長孔89,89に沿って前方向(図6における右方向へ移動)へ移動し、縦リンク72は、支軸77を中心に図5における時計回り方向へ回動することで角度が起きる。
【0029】
次に、本実施形態に係る連結装置21により走行機に連結された連続鉢苗移植機1(農作業機)を用いた作物の生産方法を説明する。
まず、圃場(図示省略)の始端部において、連続鉢苗移植機1を切り離した状態で、例えば、走行機に装着された深溝形成機を用いて、連続鉢苗移植機1の全長に相当する長さの深溝を形成する。次に、形成された深溝に連続鉢苗移植機1を接地させた後、当該連続鉢苗移植機1と走行機とを連結装置21により連結する。
【0030】
連続鉢苗移植機1と走行機とを連結するには、まず、走行機側の着脱機構50の把手86を操作して引張コイルばね79(付勢手段)のばね力(付勢力)に抗して走行機側連結部51を押し下げ、走行機側連結部51の上部被係合部55の高さが、農作業機側連結部31の上部係合軸35(係合部材)の高さよりも低い状態を維持する。この状態で、連続鉢苗移植機1を走行機に近づけ、上部係合軸35が上部被係合部55の直上に位置したとき、走行機側の着脱機構50を引張コイルばね79のばね力(付勢力)により押し上げることにより、農作業機側連結部31の上部係合軸35を走行機側連結部51の上部被係合部55に係合させるとともに、走行機側嵌合部53を農作業機側被嵌合部33(農作業機側連結部材32の一対の板間)に嵌合させる。
【0031】
このとき、走行機側連結部材52には斜辺部63が垂直(鉛直)に配置されたL字状(直角三角形)の切欠き部60が形成されているので、走行機側連結部材52が農作業機側連結部31の下部係合軸36,37(下部係合部材)に干渉することがなく、走行機側の着脱機構50を円滑に押し上げることが可能である。走行機側の着脱機構50を押し上げて走行機側連結部51の上部被係合部55に農作業機側連結部31の上部係合軸35を係合させ、かつ、走行機側連結部51の下部被係合部56(切欠き部60の底部61及び角部62)に農作業機側連結部31の下部係合軸36及び下部係合軸37を係合させると、走行機側連結部51の上部当接部58及び下部当接部59が農作業機側連結部31の上部被当接部38及び下部被当接部39(スタンド7の前側面)に当接される。
【0032】
この状態で、トグル型ファスナ40(緊縛具)を締め付ける。これにより、農作業機側連結部31の上部係合軸35(上部係合部材)と締め付けられたファスナ40とによる走行機側連結部材52の上下方向からの挟み込みにより、農作業機側連結部31と走行機側連結部51との上下方向への相対移動が阻止され、かつ、ファスナ40を締め付けることで農作業機側連結部31の上部被当接部38及び下部被当接部39と走行機側連結部51の上部当接部58及び下部当接部59との間に締結力(面圧)が発生し、農作業機側連結部31と走行機側連結部51との前後方向への相対移動が阻止される。その結果、農作業機側連結部31と走行機側連結部51との、即ち、連続鉢苗移植機1(農作業機)と走行機との強固な連結が実現する。
【0033】
次に、連続鉢苗移植機1の育苗箱(図示省略)から一条の連続鉢苗を引き出し、その先端部を、圃場の深溝の底部に予め形成した植付溝内に植付けて固定する。この状態で、走行機を前進させて連続鉢苗移植機1を前方向へ移動させると、連続鉢苗移植機1の移動に伴い、深溝の底部には、溝切部17により植付溝が形成される。同時に、連続鉢苗は、鉢苗載置部3上の育苗箱から順次引き出され、鉢苗案内部4、鉢苗繰出部5を通過して、植付溝へ繰り出される。
【0034】
ここで、本実施形態では、圃場(深溝の底部)の傾斜面又は凹凸面上を連続鉢苗移植機1が移動するとき、連結装置21の着脱機構50に構成されたリンク機構71(支持手段)を介して連続鉢苗移植機1を上下移動させることにより、連続鉢苗移植機1は、植付面に対して平行を維持した状態で、走行機によりけん引される。なお、植付溝へ繰り出された連続鉢苗は、一対の培土板18,18(図1に右側の培土板18のみ表示)により掻き寄せられた周囲の土が一対の鎮圧ローラ19,19(図1に右側の鎮圧ローラ19のみ表示)により鎮圧されることにより、深溝の底部に固定される。
【0035】
圃場の終端部では、連続鉢苗移植機1(農作業機)と走行機とを切り離した後、切り離された連続鉢苗移植機1を移動させずにそのままの姿勢で圃場上に停止させておく。そして、走行機を単独で前進させることにより、深溝形成機等により圃場の終端位置まで深溝を形成する。次に、形成された深溝に、切り離された連続鉢苗移植機1により連続鉢苗を移植する。
【0036】
ここで、連続鉢苗移植機1(農作業機)と走行機とを切り離すには、まず、農作業機側連結部31のファスナ40(緊縛具)による緊縛を解放する。次に、着脱機構50の把手86を操作して、引張コイルばね79のばね力に抗して走行機側の着脱機構50を押し下げる。これにより、走行機側連結部51の上部被係合部55と農作業機側連結部31の上部係合軸35(上部係合部)との係合が解除され、同時に、走行機側連結部51の下部被係合部56(切欠き部60の底部61及び角部62)と農作業機側連結部31の下部係合軸36及び下部係合軸37(下部係合部)との係合が解除される。その結果、連結装置21による連続鉢苗移植機1と走行機との連結が解消される。
【0037】
この状態で、連続鉢苗移植機1を後退又は連続鉢苗移植機1の前方部を左右のいずれかの方向へ少なくとも農作業機側連結部31の左右方向の幅分移動させると、走行機側連結部51の上部当接部58及び下部当接部59から、農作業機側連結部31の上部被当接部38及び下部被当接部39(スタンド7の前側面)が離れ、連続鉢苗移植機1と走行機とが切り離される。
【0038】
なお、連結装置21による連結時に、走行機の昇降装置(図示省略)により着脱機構50(リンク機構71)のブラケット82を上昇させると、着脱機構50のリンク機構71が形成する平行四辺形が変形し、可動域制限機構83のピン85が長孔84の前端に当接して、当該平行四辺形がそれ以上に変形しないリンク機構71の下限に到達する。このリンク機構71の下限の状態から、昇降装置によりブラケット82をさらに上昇させることにより、連続鉢苗移植機1を圃場から浮かせることが可能であり、連続鉢苗移植機1を圃場から浮かせることにより、走行機を圃場で容易に旋回させることができる。これにより、連続鉢苗移植機1(農作業機)と走行機とを連結装置21により連結させた状態で、走行機を旋回(方向転換)させることができる。
【0039】
本実施形態は、以下の作用効果を奏する。
従来の連結装置では、圃場の始端部及び終端部において、一人の作業者による農作業機と走行機との連結又は切り離しは煩雑な作業であった。
【0040】
これに対し、本実施形態に係る連結装置21は、走行機側の着脱機構50を上げ下げし、かつ、連続鉢苗移植機1の前方部を左右のいずれかの方向へ少なくとも農作業機側連結部31の左右方向の幅分移動させることで連続鉢苗移植機1(農作業機)と走行機とを連結又は切り離すことができるので、一人の作業者であっても、連続鉢苗移植機1と走行機とを容易に連結又は切り離すことが可能である。
【0041】
本実施形態に係る連結装置21では、リンク機構71(支持手段)に設けられた引張コイルばね79(付勢手段)により、走行機側の着脱機構50(走行機側連結部51)を上方向へ付勢したので、引張コイルばね79のばね力に抗して走行機側の着脱機構50を押し下げることにより、連続鉢苗移植機1を持ち上げたり移動させたりすることなく、農作業機側被嵌合部33に走行機側嵌合部53を嵌合させることが可能であり、延いては連続鉢苗移植機1(農作業機)と走行機とを容易に連結又は切り離すことができる。
【0042】
また、移植時には、引張コイルばね79のばね力(押し上げ力)が、走行機側連結部51を介して連続鉢苗移植機1(農作業機)の前端部に作用するので、連続鉢苗移植機1の車輪12が圃場を押し付ける力を軽減することができる。これにより、車輪12が柔軟な圃場(深溝の底部)に沈む(めり込む)ことを防止することが可能であり、植付け深度を安定させることができる。
【0043】
さらに、移植時には、連続鉢苗移植機1(農作業機)が圃場(深溝の底部)の傾斜面または凹凸面上を移動するとき、着脱機構50のリンク機構71(支持機構)により農作業機側被嵌合部33(農作業機側連結部材32)が上下方向へ揺動する。これにより、連続鉢苗移植機1は、植付け面に対して平行な姿勢を維持することが可能であり、連続鉢苗の植付け深度を安定させることができる。
【0044】
本実施形態に係る連結装置21は、着脱機構50のリンク機構71に設けられた引張コイルばね79のばね力を連続鉢苗移植機1(農作業機)の後端部に作用させることができるので、連続鉢苗移植機1の鎮圧ローラ19,19が圃場を押し付ける力を軽減することができる。これにより、鎮圧ローラ19,19が膨軟な圃場(深溝の底部)に沈む(めり込む)ことを防止することが可能であり、連続鉢苗の植付け深度を安定させることができる。
【0045】
また、従来の連結装置では、その連結態様が、連結フックを連結フレームの先端部の切欠きに係合させるだけで、台車と移植機本体とが連結されるものであり、硬い圃場に植え付ける際には、移植機の溝切部が硬い圃場から受ける反力により、連結フックと連結フレームとの係合部分を支点として移植機本体が揺動するため、移植機の植付け姿勢が安定せず、一定の植付け深度を維持することが困難であった。
【0046】
これに対し、本実施形態に係る連結装置21では、農作業機側連結部31の上部係合軸35(係合部材)とトグル型ファスナ40(緊縛具)の部位との少なくとも2箇所において、走行機側連結部51を上下から挟み込むようにして農作業機側連結部31に固定し、かつ、走行機側連結部51の上部当接部58及び下部当接部59を連続鉢苗移植機1(農作業機)の上部被当接部38及び下部被当接部39(スタンド7の前側面)に当接させるとともに、走行機側連結部51の下部被係合部56(L字状の切欠き部60の底部61及び角部62)に農作業機側連結部31の下部係合軸36及び下部係合軸37(下部係合部)に当接させたので、農作業機側連結部31と走行機側連結部51との連結が極めて強固である。よって、連続鉢苗移植機1の溝切部17が硬い圃場から受けた反力による連結部位に生じる連続鉢苗移植機1の上下のブレ等の揺動が抑制されるので、連続鉢苗移植機1の植付け姿勢を安定させることができる。その結果、硬い圃場から受ける反力に抗して溝切部17を圃場へ差し込むことが可能であり、連続鉢苗の植付け深度を安定させることができる。
【0047】
本実施形態に係る連結装置21では、トラクタ等の走行機が装備する昇降装置により連結装置21を介して連続鉢苗移植機1(農作業機)を持ち上げて圃場から浮かせることにより、連続鉢苗移植機1を切り離すことなく、走行機を圃場で旋回させることができる。
【0048】
本実施形態に係る連結装置21では、着脱機構50のハンドル97を操作してねじ軸93を回転させることにより、リンク機構71(支持手段)の縦リンク72の前後方向の角度を調整することができる。これにより、走行機側連結部51の上部当接部58及び下部当接部59の当接面の傾斜角度を調整することが可能であり、延いては、連続鉢苗移植機1(農作業機)の取付角度(スタンド7の傾斜角度)を調整することができる。これにより、圃場の硬さに応じて連続鉢苗移植機1の圃場に対する接地角度を調整することが可能であり、連続鉢苗の植付け深度を調整することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 連続鉢苗移植機(農作業機)、21 連結装置、31 農作業機側連結部、33 農作業機側被嵌合部、35 上部係合軸(上部係合部材)、36,37 下部係合軸(下部係合部材)、50 着脱機構、51 走行機側連結部、53 走行機側嵌合部、58 上部当接部(当接部材)、59 下部当接部(当接部材)、71 リンク機構(支持手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6