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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050941
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20230404BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
E02F9/00 M
B60K11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161321
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】岡島 一道
(72)【発明者】
【氏名】村井 洋介
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3D038AA06
3D038AB04
3D038AC14
(57)【要約】
【課題】冷却対象流体の温度上昇を抑制しながら、熱交換器の清掃を行うことが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】油圧ショベル1は、熱交換器ユニット36と、複数の冷却ファン51a、51b、51cと、コントローラ66と、を備える。熱交換器ユニット36は、少なくとも1つの熱交換器を有する。複数の冷却ファン51a、51b、51cは、熱交換器ユニット36を冷却する。コントローラ66は、コントローラ66は、少なくとも1つの冷却ファンを正回転から逆回転に変更する際の回転が停止するときに、他の少なくとも1つの冷却ファンが正回転または逆回転しているように制御しながら複数の冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱交換器を有する熱交換部と、
前記熱交換部を冷却する複数の冷却ファンと、
少なくとも1つの前記冷却ファンを正回転から逆回転に変更する際の回転が停止するときに、他の少なくとも1つの前記冷却ファンが正回転または逆回転しているように制御しながら前記複数の冷却ファンを正回転から逆回転に変更するコントローラと、を備えた、
作業機械。
【請求項2】
前記冷却ファンは、電動ファンである、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、少なくとも1つの前記冷却ファンに正回転から逆回転に変更する制御信号を送信した後、所定時間の経過後に、他の少なくとも1つの前記冷却ファンに正回転から逆回転に変更する制御信号を送信する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、前記複数の冷却ファンを、1つずつ順番に正回転から逆回転に変更する、
請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記熱交換器において熱交換される冷却対象流体の温度を検出する温度センサを更に備え、
前記コントローラは、前記温度センサの値が所定値以下の場合に、前記複数の冷却ファンを正回転から逆回転に変更する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記熱交換部は、前記熱交換器としてアフタークーラを有する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
前記熱交換部は、複数の前記熱交換器として、ラジエータと、オイルクーラを更に有する、
請求項6に記載の作業機械。
【請求項8】
前記コントローラは、空気の吸引方向に沿って視た場合において前記アフタークーラに重畳している面積が最も大きい前記冷却ファンを、前記複数の冷却ファンのうち最も遅く前記正回転から前記逆回転に変更する、
請求項6に記載の作業機械。
【請求項9】
運転者によって操作され、前記コントローラに操作信号を送信する逆回転スイッチを更に備え、
前記コントローラは、前記操作信号を受信すると、前記複数の冷却ファンを正回転から逆回転に変更する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項10】
少なくとも1つの熱交換器を有する熱交換部と、熱交換部を冷却する複数の冷却ファンとを備えた作業機械の制御方法であって、
少なくとも1つの前記冷却ファンを正回転から逆回転に変更する際の回転が停止するときに、他の少なくとも1つの前記冷却ファンが正回転または逆回転しているように制御しながら前記複数の冷却ファンを正回転から逆回転に変更する、
作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械には、各種流体(冷媒等)を冷却するために複数の熱交換器を有する熱交換器ユニットと、熱交換器ユニットに冷却風を供給する冷却ファンが設けられている。熱交換器ユニットには、例えば、エンジンの冷却水が通るラジエータ、油圧アクチュエータを作動させるための作動油が通るオイルクーラ、圧縮された空気が通るアフタークーラ等が配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
作業機械が動作する現場では埃や塵が多量に浮遊している場合が多いため、特許文献1に示す作業機械では、冷却ファンの回転により熱交換器ユニットに運ばれて付着した塵や埃を、冷却ファンを逆回転させることによって吹き飛ばしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-84520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷却ファンを正回転から逆回転に変更して熱交換器の清掃を行う際、冷却ファンの回転が瞬間的にゼロになるため、冷媒や圧縮空気等の冷却対象流体の温度が上昇するおそれがある。そのため、エンジンが稼働しているときには、冷却ファンの逆回転による熱交換器の清掃を行い難かった。
【0006】
本開示は、冷却対象流体の温度上昇を抑制しながら、熱交換器の清掃を行うことが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様にかかる作業機械は、熱交換部と、複数の冷却ファンと、コントローラと、を備える。熱交換部は、少なくとも1つの熱交換器を有する。複数の冷却ファンは、熱交換部を冷却する。コントローラは、少なくとも1つの冷却ファンを正回転から逆回転に変更する際の回転が停止するときに、他の少なくとも1つの冷却ファンが正回転または逆回転しているように制御しながら複数の冷却ファンを正回転から逆回転に変更する。
【0008】
本開示の第2の態様にかかる作業機械の制御方法は、少なくとも1つの熱交換器を有する熱交換部と、熱交換部を冷却する複数の冷却ファンとを備えた作業機械の制御方法であって、少なくとも1つの冷却ファンを正回転から逆回転に変更する際の回転が停止するときに、他の少なくとも1つの冷却ファンが正回転または逆回転しているように制御しながら複数の冷却ファンを正回転から逆回転に変更する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の態様によれば、冷却対象流体の温度上昇を抑制しながら、熱交換器の清掃を行うことが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルを示す斜視図である。
図2】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの平面図である。
図3】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの後部を示す斜視図である。
図4】本開示の実施形態にかかる冷却ユニットを熱交換器ユニット側から視た斜視図である。
図5】本開示の実施形態にかかる冷却ユニットを冷却ファンユニット側から視た斜視図である。
図6】本開示の実施形態にかかる冷却ユニットを油圧ショベルの左側から視た正面図である。
図7図6のBB´間の矢視断面図である。
図8】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの制御に関する構成を示すブロック図である。
図9】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの制御動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示にかかる作業機械の一例としての油圧ショベルについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0012】
<構成>
(油圧ショベル1の概要)
図1は、本実施の形態の油圧ショベル1の構成を示す模式図である。
【0013】
油圧ショベル1(作業機械の一例)は、車両本体2と、作業機3と、を有する。車両本体2は、図1に示すように、走行体11と、旋回体12を有している。走行体11は、一対の走行装置11a、11bを有する。各走行装置11a、11bは、履帯11c、11dを有している。エンジン33(後述の図2参照)からの駆動力によって走行モータが回転して履帯11c、11dが駆動されることによって油圧ショベル1が走行する。
【0014】
旋回体12は、走行体11上に載置されている。旋回体12は、図示しない旋回装置によって上下方向に沿った軸を中心として走行体11に対して旋回可能に構成されている。旋回体12の前部左側位置には、オペレータが運転時に着座する運転席としてのキャブ31が設けられている。キャブ31の内部には、運転席、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。
【0015】
尚、本実施の形態において断りなき場合、前後左右はキャブ31内の運転席を基準として説明する。運転席が正面に正対する方向を前方向(矢印Xf参照)とし、前方向に対向する方向を後方向(矢印Xb参照)とする。運転席が正面に正対したときの側方方向の右側、左側をそれぞれ右方向(矢印Yr参照)、左方向(矢印Yl参照)とする。また、本明細書において「高さ方向」、「鉛直方向」および「水平方向」は、特段記載のない限り、車両本体2が傾斜せずに水平な状態での方向を示している。
【0016】
作業機3は、旋回体12の前部中央位置に取り付けられている。作業機3は、図1に示すように、ブーム21、アーム22、掘削バケット23を有する。ブーム21の基端部は、旋回体12に回動可能に連結されている。また、ブーム21の先端部はアーム22の基端部に回動可能に連結されている。アーム22の先端部は、掘削バケット23に回動可能に連結されている。掘削バケット23は、その開口が旋回体12の方向(後方)を向くことができるようにアーム22に取り付けられている。掘削バケット23が、このような向きに取り付けられた油圧ショベル1は、バックホウと呼ばれている。
【0017】
ブーム21、アーム22および掘削バケット23のそれぞれに対応するように油圧シリンダ24~26(ブームシリンダ24、アームシリンダ25およびバケットシリンダ26)が配置されている。これらの油圧シリンダ24~26が駆動されることによって作業機3が駆動される。これにより、掘削等の作業が行われる。
【0018】
旋回体12のキャブ31の後側には、エンジンルーム32が配置されている。図2は、エンジンルーム32の内部構成を示す油圧ショベル1の平面図である。図3は、油圧ショベル1を後方から視た斜視図である。旋回体12は、エンジン33と、油圧ポンプ34と、冷却ユニット35と、を更に有する。エンジンルーム32は、キャブ31の後部側に配置されている。
【0019】
図2および図3に示すように、エンジンルーム32は、エンジン33、油圧ポンプ34、および冷却ユニット35を収容する。冷却ユニット35、エンジン33および油圧ポンプ34は、左側から右側に向かって順に並んで配置されている。エンジン33は、駆動力を発生する。エンジン33は、ディーゼルエンジン等の内燃機関である。油圧ポンプ34は、エンジン33に接続される。油圧ポンプ34は、エンジン33によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ34から吐出された作動油は、上述した油圧シリンダ24~26等の油圧アクチュエータに供給される。
【0020】
冷却ユニット35は、冷媒や圧縮空気等の各種冷却対象流体を冷却する。冷却ユニット35の左側におけるエンジンルーム32の側壁には、吸気口32aが配置されている。吸気口32aには、ネットが配置されている。油圧ポンプ34の右側におけるエンジンルーム32の側壁には、排出口32bが配置されている。排出口32bには、ネットが配置されている。冷却ユニット35は、複数の冷却ファン51a、51b、51c(後述する)を有している。冷却ファン51a、51b、51cが正回転すると、図2の矢印Aに示すように、吸気口32aから外部の空気がエンジンルーム32内に取り込まれる。エンジンルーム32内に取り込まれた空気は、エンジン33および油圧ポンプ34を順に通過して排出口32bから外部に排出される。
【0021】
(冷却ユニット35)
図4は、冷却ユニット35の斜視図である。図4は、冷却ユニット35を油圧ショベル1の左側から視た斜視図である。図5は、冷却ユニット35の斜視図である。図5は、冷却ユニット35を油圧ショベル1の右側から視た斜視図である。
【0022】
冷却ユニット35は、図2および図5に示すように、熱交換器ユニット36(熱交換部の一例)と、冷却ファンユニット37と、を有する。熱交換器ユニット36は、各種冷却対象流体を冷却する複数の熱交換器(後述する)を有する。冷却ユニット35は、熱交換器ユニット36に冷却風を供給する。
【0023】
熱交換器ユニット36は、冷却ユニット35の左側に配置されている。熱交換器ユニット36は、冷却ユニット35の吸気口32a側に配置されている。吸気口32aから排出口32bに向かって、熱交換器ユニット36、冷却ファンユニット37、エンジン33、および油圧ポンプ34の順に配置されている。
【0024】
(熱交換器ユニット36)
熱交換器ユニット36は、図4に示すように、オイルクーラ41と、アフタークーラ42と、ラジエータ43と、エアコンコンデンサ44と、燃料クーラ45とを有する。これらオイルクーラ41、アフタークーラ42、ラジエータ43、エアコンコンデンサ44、および燃料クーラ45の各々は、熱交換器の一例である。
【0025】
オイルクーラ41には、油圧シリンダ24~26等の油圧アクチュエータを作動させるための作動油が供給される。作動油はオイルクーラ41を通過しながら冷却される。オイルクーラ41は、熱交換器ユニット36の前部に配置されている。油圧ショベル1の左右方向に沿って視て、オイルクーラ41は、上下方向に長い略矩形状である。
【0026】
アフタークーラ42には、図示しない過給機によって外気が取り込まれて圧縮された圧縮空気が供給される。アフタークーラ42はエンジン33に接続される。圧縮空気は、アフタークーラ42を通過しながら冷却され、エンジン33に送られる。アフタークーラ42は、オイルクーラ41の後側に配置されている。油圧ショベル1の左右方向に沿って視て、アフタークーラ42は、上下方向に長い略矩形状である。アフタークーラ42は、オイルクーラ41よりも高く形成されている。
【0027】
ラジエータ43には、エンジン33の冷却水が供給される。供給された冷却水は、ラジエータ43を通過しながら冷却され、エンジン33に向かって排出される。ラジエータ43は、アフタークーラ42の後側に配置されている。油圧ショベル1の左右方向に沿って視て、ラジエータ43は、上下方向に長い略矩形状である。ラジエータ43は、アフタークーラ42と概ね同じ高さに形成されている。
【0028】
オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43は、油圧ショベル1の前側から後側に向かって順に並んで配置されている。
【0029】
エアコンコンデンサ44には、キャブ31の空調に用いられるエアコンの冷媒が供給される。供給された冷媒は、エアコンコンデンサ44を通過しながら冷却され、エアコンに向かって排出される。エアコンコンデンサ44は、オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43の左側に配置されている。エアコンコンデンサ44は、オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43の吸気口32a側に配置されている。エアコンコンデンサ44は、上下方向において、オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43の略中央に配置されている。エアコンコンデンサ44は、前後方向において、オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43に亘って配置されている。
【0030】
燃料クーラ45には、エンジン33の燃料が供給される。燃料は燃料クーラ45を通過しながら冷却され、エンジン33に供給される。燃料クーラ45は、アフタークーラ42およびラジエータ43の左側に配置されている。燃料クーラ45は、アフタークーラ42およびラジエータ43の吸気口32a側に配置されている。燃料クーラ45は、アフタークーラ42からラジエータ43に亘って配置されている。燃料クーラ45は、エアコンコンデンサ44の下側に配置されている。
【0031】
フレーム46は、オイルクーラ41、アフタークーラ42およびラジエータ43を支持する。フレーム46は、並んで配置されたオイルクーラ41、アフタークーラ42およびラジエータ43の周縁部分を囲むように配置されている。エアコンコンデンサ44は、オイルクーラ41の前縁部に配置されたフレーム46の前部分46aと、ラジエータ43の後縁部に配置されたフレーム46の後部分46bに固定されている。燃料クーラ45は、フレーム46の後部分46bと、オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43の下縁部に配置されたフレーム46の下部分46cに固定されている。
オイルクーラ41に供給される作動油、アフタークーラ42に供給される圧縮空気、ラジエータ43に供給される冷却水、エアコンコンデンサ44に供給される冷媒、および燃料クーラ45に供給される燃料の少なくとも1つは、冷却対象流体の一例に相当する。
【0032】
(冷却ファンユニット37)
冷却ファンユニット37は、図5に示すように、複数の冷却ファン51a、51b、51cと、シュラウド52と、を有している。複数の冷却ファン51a、51b、51cは、シュラウド52に回転可能に支持されている。
【0033】
図6は、冷却ユニット35を、油圧ショベル1の左側から視た(空気の吸引方向に沿って視た)図である。図7は、図6のBB´間の矢視断面図である。図6では、オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43と、冷却ファン51a、51b、51cとの位置関係を示すために、エアコンコンデンサ44および燃料クーラ45は二点鎖線で示し、エアコンコンデンサ44および燃料クーラ45の後方を実線で示す。
【0034】
冷却ファン51a、51b、51cは、電動ファンである。冷却ファン51a、51b、51cは、熱交換器ユニット36の右側に配置されている。冷却ファン51a、51b、51cは、オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43に所定間隔を空けて対向するように配置されている。
【0035】
シュラウド52は、フレーム46に取り付けられている。シュラウド52は、対向面53と、側面部54とを含む。対向面53は、オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43に所定間隔を空けて対向するように配置されている。対向面53には、冷却ファン51a、51b、51cが配置されている。側面部54は、対向面53の周縁と、オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43の周縁部との間を繋ぐ。側面部54は、オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43の周縁部に設けられたフレーム46に固定されている。側面部54は、オイルクーラ41、アフタークーラ42、およびラジエータ43と、対向面53との間に形成された空間S(図7参照)の前側、後側、上側および下側を覆っている。図7に示すように、側面部54のうち対向面53の前端から熱交換器ユニット36に向かって形成されている前部分54aが、フレーム46の前部分46aに固定されている。また、側面部54のうち対向面53の後端から熱交換器ユニット36に向かって形成されている後部分54bが、フレーム46の後部分46bに固定されている。図5に示すように、側面部54のうち対向面53の下端から熱交換器ユニット36に向かって形成されている下部分54cが、フレーム46の下部分46cに固定され、側面部54のうち対向面53の上端から熱交換器ユニット36に向かって形成されている上部分54dが、フレーム46の上部分46dに固定される。このように、冷却ファン51a、51b、51cが配置されている対向面53と熱交換器ユニット36の間が、側面部54によって囲まれることによって、冷却ファン51a、51b、51cの回転による冷却風が効率よく熱交換器ユニット36に供給される。
【0036】
図6に示すように、冷却ファン51a、51b、51cは上方から下方に向かって順に配置されている。冷却ファン51aは、アフタークーラ42とラジエータ43に対向して配置されている。冷却ファン51bは、オイルクーラ41とアフタークーラ42に対向して配置されている。冷却ファン51cは、アフタークーラ42とラジエータ43に対向して配置されている。ここで、冷却ファン51a、51b、51cのうちアフタークーラ42と重畳している面積が最も大きいのは、冷却ファン51bである。冷却ファン51aと冷却ファン51cのアフタークーラ42と重畳する面積は概ね同じである。
【0037】
冷却ファン51a、51b、51cが正回転すると、図2の矢印Aに示すように、外部の空気が吸気口32aから吸引され、エンジンルーム32の内部に供給される。吸気口32aから吸引された空気は、熱交換器ユニット36を通過し、各々の熱交換器において冷却対象流体を冷却して、エンジン33および油圧ポンプ34を通過して、排出口32bを通ってエンジンルーム32から排出される。
【0038】
このような冷却ファン51a、51b、51cの正回転によって、周囲の塵や埃が吸気口32aのメッシュに付着し、吸気口32aを通り抜けた塵や埃が熱交換器ユニット36に付着する。吸気口32aおよび熱交換器ユニット36に付着した塵や埃を吹き飛ばすために、冷却ファン51a、51b、51cを逆回転する逆転制御が実行される。冷却ファン51a、51b、51cを逆回転することによって、吸気口32aおよび熱交換器ユニット36の清掃が行われる。図7において、逆回転した際の空気の流れる方向が、矢印Cで示されている。
【0039】
(油圧ショベル1の制御構成)
次に、本実施の形態の油圧ショベル1の制御に関する構成について説明する。図8は、油圧ショベル1の制御に関する構成を示すブロック図である。
【0040】
油圧ショベル1は、作動油温度センサ61と、アフタークーラ温度センサ62と、水温センサ63と、エンジンオイル温度センサ64と、逆回転スイッチ65と、コントローラ66と、を更に有する。
【0041】
作動油温度センサ61は、オイルクーラ41を通る作動油の温度を検出し、検出値v1をコントローラ66に送信する。作動油温度センサ61は、オイルクーラ41の入口における作動油の温度を検出する。なお、これに限らず、作動油温度センサ61は、オイルクーラ41の出口における作動油の温度を検出してもよく、更に入口と出口の双方における作動油の温度を検出してもよい。
【0042】
アフタークーラ温度センサ62は、アフタークーラ42を通る空気の温度を検出し、検出値v2をコントローラ66に送信する。アフタークーラ温度センサ62は、アフタークーラ42の出口における空気の温度を検出する。なお、これに限らず、アフタークーラ温度センサ62は、アフタークーラ42の入口における空気の温度を検出してもよく、更に入口と出口の双方における空気の温度を検出してもよい。
【0043】
水温センサ63は、ラジエータ43を通る冷却水の温度を検出し、検出値v3をコントローラ66に送信する。水温センサ63は、ラジエータ43の入口における冷却水の温度を検出する。なお、これに限らず、水温センサ63は、ラジエータ43の出口における冷却水の温度を検出してもよく、更に入口と出口の双方における冷却水の温度を検出してもよい。
【0044】
エンジンオイル温度センサ64は、エンジン33のオイルパンに配置されている。エンジンオイル温度センサ64は、エンジンオイルの温度を検出し、検出値v4をコントローラ66に送信する。
【0045】
逆回転スイッチ65は、キャブ31の内側に配置されている。逆回転スイッチ65は、例えば、タッチパネルに表示されてもよいし、押しボタン式のスイッチであってもよい。逆回転スイッチ65は、冷却ファン51a、51b、51cを逆回転させて、吸気口32aおよび熱交換器ユニット36を清掃するために、運転者によって操作される。運転者が逆回転スイッチ65を操作すると、コントローラ66に操作信号osが送信される。
【0046】
コントローラ66は、プロセッサおよび記憶装置を含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、操作信号osを受信すると、プログラムに従って、検出値v1~v4に基づいて、冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更する逆回転制御を実行する。
【0047】
記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよび/またはRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。記憶装置は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置は、逆回転制御を行うか否かを判定するための、第1閾値、第2閾値、第3閾値、および第4閾値を記憶する。第1閾値は、作動油温度センサ61の検出値v1に対して設定されている。第2閾値は、アフタークーラ温度センサ62の検出値v2に対して設定されている。第3閾値は、水温センサ63の検出値v3に対して設定されている。第4閾値は、エンジンオイル温度センサ64の検出値v4に対して設定されている。第1閾値、第2閾値、第3閾値、および第4閾値の少なくとも1つは、所定値の一例に相当する。
【0048】
コントローラ66は、逆回転スイッチ65の操作による操作信号osを受信すると、各冷却対象流体の温度に基づいて冷却ファン51a、51b、51cを逆回転可能か否か判定する。
【0049】
コントローラ66は、各々の検出値と各々の検出値に対して設定された閾値を比較して全ての検出値が閾値以下の場合に、逆回転制御を実行する。具体的には、コントローラ66は、作動油温度センサ61の検出値v1が第1閾値以下であり、アフタークーラ温度センサ62の検出値v2が第2閾値以下であり、水温センサ63の検出値v3が第3閾値以下であり、エンジンオイル温度センサ64の検出値v4が第4閾値以下である場合に、逆回転制御を実行する。
【0050】
第1閾値、第2閾値、第3閾値、および第4閾値は、冷却ファン51a、51b、51cの逆回転による温度上昇を考慮して設定されている。冷却ファンが逆回転する場合の風量は、正回転する場合の風量よりも少ないため、正回転と比較して逆回転では熱交換器ユニット36を通る冷却対象流体の温度が上昇する。第1閾値、第2閾値、第3閾値、および第4閾値は、各々の閾値に、正回転から逆回転への変更における温度上昇を加えても通常通りエンジン33を駆動することができる温度に設定されている。
【0051】
コントローラ66は、操作信号osを受信し、冷却ファン51a、51b、51cを逆回転可能と判断した場合、冷却ファン51a、冷却ファン51c、および冷却ファン51bの順に正回転から逆回転に変更する。
【0052】
具体的には、コントローラ66は、冷却ファン51aに逆回転指令信号rs1を送信し、第1所定時間が経過した後に、冷却ファン51cに逆回転指令信号rs2を送信し、第2所定時間が経過した後に、冷却ファン51bに逆回転指令信号rs3を送信する。第1所定時間は、冷却ファン51aに逆回転指令信号rs1を送信してから、冷却ファン51aが一定の回転数で安定して逆回転するまでの間に設定されている。第2所定時間は、冷却ファン51cに逆回転指令信号rs2を送信してから、冷却ファン51cが一定の回転数で安定して逆回転するまでの間に設定されている。第1所定時間と第2所定時間は同じ時間に設定してもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
コントローラ66は、逆回転指令信号rs3を冷却ファン51bに送信してから第3所定時間が経過すると、冷却ファン51b、冷却ファン51c、および冷却ファン51aの順に逆回転から正回転に戻す。この第3所定時間は、冷却ファン51bに逆回転指令信号rs3を送信してから、冷却ファン51bが一定の回転数で安定して逆回転するまでの時間に少なくとも設定されている。なお、全ての冷却ファン51a、51b、51cが逆回転している時間は、第3所定時間を変更することによって調整することができる。例えば、第3所定時間を長くすることによって、全ての冷却ファン51a、51b、51cが逆回転している時間を長く設定することができる。逆回転指令信号rs1、rs2、rs3は、制御信号の一例に相当する。
【0054】
冷却ファン51a、51b、51cを逆回転から正回転に戻す際には、コントローラ66は、冷却ファン51bに正回転指令信号ps1を送信し、第4所定時間が経過した後に、冷却ファン51cに正回転指令信号ps2を送信する。続いて、コントローラ66は、正回転指令信号ps2を送信して第5所定時間が経過した後に冷却ファン51aに正回転指令信号ps3を送信する。
【0055】
第4所定時間は、冷却ファン51aに正回転指令信号ps1を送信してから、冷却ファン51aが逆回転から一定の回転数で安定して正回転するまでの時間に設定されている。第5所定時間は、冷却ファン51cに正回転指令信号ps2を送信してから、冷却ファン51cが逆回転から一定の回転数で安定して正回転するまでの間に設定されている。
【0056】
上述のように、アフタークーラ42と対向する面積が最も大きい冷却ファン51bが複数の冷却ファン51a、51b、51cのうち最も遅いタイミングで正回転から逆回転に変更されている。ここで、アフタークーラ42は、外気を取り込んで圧縮した圧縮空気を冷却しているため、ラジエータ43やオイルクーラ41等の閉回路を構成している冷媒と比較して冷却ファン51a、51b、51cの停止により温度が上昇しやすい。このため、アフタークーラ42を通る空気の温度上昇の抑制によって、エンジン33の駆動時であっても冷却ファン51a、51b、51cの逆回転による清掃を行うことが可能となる。
【0057】
そのため、本実施形態では、アフタークーラ42に送り込む風量が多い冷却ファン51aを他の冷却ファン51a、51cと比べて最後まで正回転することによって、アフタークーラ42を通る圧縮空気の温度上昇を抑制している。
【0058】
また、冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に戻す際には、冷却ファン51bを最初に正回転に戻すことによって、早いタイミングでアフタークーラ42に送り込む風量を多くできるため、アフタークーラ42を通る圧縮空気の温度上昇をより抑制している。
【0059】
<動作>
次に、本実施形態の油圧ショベル1の逆回転制御の動作について説明する。図9は、本実施形態の油圧ショベル1の逆回転制御の動作を示すフロー図である。
【0060】
運転者が逆回転スイッチ65を操作すると、ステップS10において、コントローラ66は、逆回転スイッチ65から送信される操作信号osを受信する。
【0061】
次に、ステップS20において、コントローラ66は、作動油温度センサ61の検出値v1が、第1閾値以下であるか否かを判定する。ステップS20において、検出値v1が第1閾値以下であると判定されない場合、制御は終了する。ステップS20において、検出値v1が第1閾値以下と判定された場合、制御はステップS30に進む。
【0062】
ステップS30において、コントローラ66は、アフタークーラ温度センサ62の検出値v2が、第2閾値以下であるか否かを判定する。ステップS30において、検出値v2が第2閾値以下であると判定されない場合、制御は終了する。ステップS30において、検出値v2が第2閾値以下である判定された場合、制御はステップS40に進む。
【0063】
ステップS40において、コントローラ66は、水温センサ63の検出値v3が、第3閾値以下であるか否かを判定する。ステップS40において、検出値v3が第3閾値以下であると判定されない場合、制御は終了する。ステップS40において、検出値v3が第3閾値以下である判定された場合、制御はステップS50に進む。
【0064】
ステップS50において、コントローラ66は、エンジンオイル温度センサ64の検出値v4が、第4閾値以下であるか否かを判定する。ステップS50において、検出値v4が第4閾値以下であると判定されない場合、制御は終了する。ステップS50において、検出値v4が第4閾値以下である判定された場合、制御はステップS60に進む。
【0065】
ステップS60において、コントローラ66は、冷却ファン51aに逆回転指令信号rs1を送信する。冷却ファン51aは逆回転指令信号rs1を受けて、正回転から逆回転に回転方向を変更する。
【0066】
逆回転指令信号rs1を送信してから第1所定時間が経過した後、ステップS70において、コントローラ66は、冷却ファン51cに逆回転指令信号rs2を送信する。冷却ファン51cは逆回転指令信号rs2を受けて、正回転から逆回転に回転方向を変更する。
【0067】
逆回転指令信号rs2を送信してから第2所定時間が経過した後、ステップS80において、コントローラ66は、冷却ファン51bに逆回転指令信号rs3を送信する。冷却ファン51bは逆回転指令信号rs3を受けて、正回転から逆回転に回転方向を変更する。
【0068】
次に、逆回転指令信号rs3を送信してから第3所定時間が経過した後、ステップS90において、コントローラ66は、冷却ファン51bに正回転指令信号ps1を送信する。冷却ファン51bは正回転指令信号ps1を受けて、逆回転から正回転に回転方向を変更する。
【0069】
次に、正回転指令信号ps1を送信してから第4所定時間が経過した後、ステップS100において、コントローラ66は、冷却ファン51cに正回転指令信号ps2を送信する。冷却ファン51cは正回転指令信号ps2を受けて、逆回転から正回転に回転方向を変更する。
【0070】
次に、正回転指令信号ps2を送信してから第5所定時間が経過した後、ステップS120において、コントローラ66は、冷却ファン51cに正回転指令信号ps3を送信し、制御が終了する。冷却ファン51aは正回転指令信号ps3を受けて、逆回転から正回転に回転方向を変更する。
以上のように、冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更することによって、熱交換器ユニット36の清掃を行い、付着した塵や埃を吹き飛ばすことができる。
【0071】
(特徴)
(1)
本実施形態の油圧ショベル1(作業機械の一例)は、熱交換器ユニット36(熱交換部の一例)と、複数の冷却ファン51a、51b、51cと、コントローラ66と、を備える。熱交換器ユニット36は、少なくとも1つの熱交換器を有する。複数の冷却ファン51a、51b、51cは、熱交換器ユニット36を冷却する。コントローラ66は、少なくとも1つの冷却ファンを正回転から逆回転に変更する際の回転が停止するときに、他の少なくとも1つの冷却ファンが正回転または逆回転しているように制御しながら複数の冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更する。
【0072】
このように、複数の冷却ファン51a、51b、51cのうち少なくとも1つの冷却ファンを正回転から逆回転に変更する際の回転が停止するときに、他の冷却ファンが正回転または逆回転しているように制御しながら、全ての冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更する。
【0073】
これにより、全ての冷却ファン51a、51b、51cが同時に停止することなく、正回転から逆回転に変更できるので、熱交換器ユニット36の冷却対象流体の温度上昇を抑制することが可能となる。そのため、冷却対象流体の温度上昇を抑制しながら、熱交換器の清掃を行うことができる。また、冷却対象流体の温度上昇を抑制できるため、エンジン33の稼働中であっても熱交換器の清掃を行うことができる。
【0074】
(2)
本実施の形態の油圧ショベル1では、冷却ファン51a、51b、51cは、電動ファンである。
【0075】
このように電動ファンを用いることによって正回転から逆回転への回転方向の変更を容易に行うことが可能となる。また、電動ファンは比較的小型であるため、複数個配置することができる。そのため、熱交換器の清掃を行う際に複数の電動ファンを制御することによって、冷却風が停止するタイミングの発生を防ぐことができる。
【0076】
(3)
本実施の形態の油圧ショベル1では、コントローラ66は、少なくとも1つの冷却ファン51aに正回転から逆回転に変更する逆回転指令信号rs1を送信した後、第1所定時間(所定時間の一例)の経過後に、他の少なくとも1つの冷却ファン51cに正回転から逆回転に変更する逆回転指令信号rs2を送信する。また、少なくとも1つの冷却ファン51bに正回転から逆回転に変更する逆回転指令信号rs2を送信した後、第2所定時間(所定時間の一例)の経過後に、他の少なくとも1つの冷却ファン51bに正回転から逆回転に変更する逆回転指令信号rs3を送信する。
【0077】
例えば、第1所定時間を、冷却ファン51aが正回転から一定の回転数で安定して逆回転するまでの時間に設定することができる。また、第2所定時間を、冷却ファン51cが正回転から一定の回転数で安定して逆回転するまでの時間に設定することができる。
【0078】
これにより、所定の冷却ファンが逆回転し始め、回転数が安定してから、他の冷却ファンの停止タイミングが発生するため、全ての冷却ファンが同時に停止するタイミングが発生することを防止できる。
【0079】
(4)
本実施の形態の油圧ショベル1では、コントローラ66は、複数の冷却ファン51a、51b、51cを、1つずつ順番に正回転から逆回転に変更する。
【0080】
これにより、1つずつ順番に全ての冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更することができる。
【0081】
(5)
本実施の形態の油圧ショベル1は、作動油温度センサ61と、アフタークーラ温度センサ62と、水温センサ63と、エンジンオイル温度センサ64と、を更に備える。作動油温度センサ61は、オイルクーラ41において熱交換される冷却対象流体の温度を検出する。アフタークーラ温度センサ62は、アフタークーラ42において熱交換される冷却対象流体の温度を検出する。水温センサ63は、ラジエータ43において熱交換される冷却対象流体の温度を検出する。コントローラ66は、作動油温度センサ61の検出値v1が第1閾値以下、アフタークーラ温度センサ62の検出値v2が第2閾値以下、水温センサ63の検出値v3が第3閾値以下、且つエンジンオイル温度センサ64の検出値v4が第4閾値以下の場合に、複数の冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更する。
【0082】
全ての冷却ファン51a、51b、51cを逆回転させた状態では、全ての冷却ファン51a、51b、51cを正回転した状態よりも冷却風の風量が少なくなる。そのため、冷却対象流体の温度は上昇する。この温度上昇分を考慮した温度に各々の閾値を設定することによって、熱交換器ユニット36の冷却対象流体の温度が逆回転させることが可能な状態であるか否か判定した上で正回転から逆回転に変更する制御を行うことができる。
【0083】
(6)
本実施の形態の油圧ショベル1では、熱交換器ユニット36は、熱交換器としてアフタークーラ42を有する。
【0084】
アフタークーラ42は、外気を取り込んで圧縮した圧縮空気を冷却しているため、ラジエータ43やオイルクーラ41等の閉回路を構成している冷却対象流体と比較して冷却ファン51a、51b、51cの停止により温度が上昇しやすい。本実施形態の油圧ショベル1では、冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更する際に、全て冷却ファンが同時に停止するタイミングが発生しないため、アフタークーラ42を通る圧縮空気の温度上昇を抑制することができる。これにより、エンジン33の稼働中であってもアフタークーラ42の清掃を行うことが可能となる。
【0085】
(7)
本実施の形態の油圧ショベル1では、熱交換器ユニット36は、複数の熱交換器として、ラジエータ43と、オイルクーラ41を更に有する。
【0086】
これにより、ラジエータ43とオイルクーラ41に対しても、冷却対象流体の温度上昇を抑制して清掃を行うことができる。
【0087】
(8)
本実施形態の油圧ショベル1では、コントローラ66は、空気の吸引方向に沿って視た場合においてアフタークーラ42に重畳している面積が最も大きい冷却ファン51bを、複数の冷却ファン51a、51b、51cのうち最も遅く正回転から逆回転に変更する。
【0088】
アフタークーラ42がラジエータ43およびオイルクーラ41よりも冷却対象流体が温度上昇しやすいため、アフタークーラ42に多く風を送っている冷却ファン51bを最後に逆回転させることによって、アフタークーラ42の温度上昇を抑えることができる。
【0089】
(9)
本実施形態の油圧ショベル1は、逆回転スイッチ65を更に備える。逆回転スイッチ65は、運転者によって操作され、コントローラ66に操作信号osを送信する。コントローラ66は、操作信号osを受信すると、複数の冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更する。
これにより、運転者が所望するタイミングで熱交換器ユニット36を清掃することができる。
(10)
本実施形態の油圧ショベルの制御方法は、少なくとも1つの熱交換器を有する熱交換器ユニット36と、熱交換器ユニット36を冷却する複数の冷却ファン51a、51b、51cとを備えた油圧ショベルの制御方法であって、ステップS60~ステップS80において、少なくとも1つの冷却ファンを正回転から逆回転に変更する際の回転が停止するときに、他の少なくとも1つの冷却ファンが正回転または逆回転しているように制御しながら複数の冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更する。
【0090】
このように、少なくとも1つの冷却ファンを正回転から逆回転に変更する際の回転が停止するときに、他の少なくとも1つの冷却ファンが正回転または逆回転しているように制御しながら、全ての冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更する。
【0091】
これにより、全ての冷却ファン51a、51b、51cが同時に停止することなく、正回転から逆回転に変更できるので、熱交換器ユニット36における冷却対象流体の温度上昇を抑制することが可能となる。そのため、冷却対象流体の温度上昇を抑制しながら、熱交換器の清掃を行うことができる。また、冷却対象流体の温度上昇を抑制できるため、エンジン33の稼働中であっても熱交換器の清掃を行うことができる。
【0092】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0093】
(A)
上記実施形態の油圧ショベル1では、冷却ファン51a、冷却ファン51cおよび冷却ファン51bを1つずつ順番に正回転から逆回転に変更しているが、これに限られるものではない。例えば、2つの冷却ファンを同時に正回転から逆回転に変更し、その後に残り1つの冷却ファンを正回転から逆回転に変更してもよい。具体的には、例えば、冷却ファン51aと冷却ファン51cに同時に逆回転指令信号を送信することで、冷却ファン51aと冷却ファン51cが同時に正回転から逆回転に変更される。そして冷却ファン51a、51cの逆回転が一定の回転数となり安定してから、冷却ファン51bに逆回転指令信号を送信することで、冷却ファン51bが正回転から逆回転に変更される。
【0094】
また、1つの冷却ファンを正回転から逆回転に変更し、その後に残り2つの冷却ファンを同時に正回転から逆回転に変更してもよい。具体的には、例えば、冷却ファン51aに逆回転指令信号を送信することで、冷却ファン51aが正回転から逆回転に変更される。そして冷却ファン51aの逆回転が一定の回転数となり安定してから、冷却ファン51bと冷却ファン51cに同時に逆回転指令信号を送信することで、冷却ファン51bと冷却ファン51cが同時に正回転から逆回転に変更される。
【0095】
(B)
上記実施形態の油圧ショベル1では、3つの冷却ファン51a、51b、51cが配置されているが、3つに限らなくてもよく、2つ若しくは4つ以上の冷却ファンが設けられていてもよい。
【0096】
4つ以上の冷却ファンが設けられている場合、複数の冷却ファンを複数のグループに分けて、グループ単位で順番に正回転から逆回転に変更してもよい。複数のグループの各々に含まれる冷却ファンの数は同じでも異なっていてもよい。また、グループには必ずしも複数の冷却ファンが含まれる必要はなく、1つの冷却ファンだけが含まれていてもよい。
【0097】
(C)
上記実施形態の油圧ショベル1では、冷却ファン51aを冷却ファン51cよりも先に逆回転させているが、冷却ファン51aと冷却ファン51cは、アフタークーラ42を重畳する面積が概ね同じであるため、どちらを先に逆回転させてもよい。また、正回転に戻す際も、冷却ファン51aと冷却ファン51cのうちいずれを先に戻してもよい。
【0098】
(D)
上記実施形態の油圧ショベル1では、作動油温度センサ61の検出値v1が第1閾値以下、アフタークーラ温度センサ62の検出値v2が第2閾値以下、水温センサ63の検出値v3が第3閾値以下、且つエンジンオイル温度センサ64の検出値v4が第4閾値以下の場合に、複数の冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更する逆回転制御を行っているが、これに限られるものではない。例えば、エンジンオイル温度センサ64の検出値v4が第4閾値以下であるかの判定が行われなくてもよい。また、上述した温度の検出値が閾値以下であるか否かの判定が全て行われなくてもよいが、少なくともアフタークーラ温度センサ62の検出値v2が第2閾値以下であるか否かの判定は行う方が好ましい。アフタークーラ42は外部の空気を取り込んで圧縮した圧縮空気を冷却しているため、冷却ファン51a、51b、51cの停止による温度上昇が顕著となる。このため、アフタークーラ42の冷却対象流体である圧縮空気の温度を検出し、閾値以上であるか否かの判定を行う方が好ましい。
【0099】
(E)
上記実施形態の油圧ショベル1では、冷却ファン51a、51b、51cを逆回転させている間は、作動油温度センサ61の検出値、アフタークーラ温度センサ62の検出値、水温センサ63、およびエンジンオイル温度センサ64の検出値を用いた温度上昇の監視が行われていないが、温度上昇の監視が行われていてもよい。
【0100】
例えば、作動油温度センサ61の検出値v1に対して第5閾値が設定され、アフタークーラ温度センサ62の検出値v2に対して第6閾値が設定され、水温センサ63の検出値v3に対して第7閾値が設定され、エンジンオイル温度センサ64の検出値v4に対して第8閾値が設定される。
【0101】
そして、ステップS60~ステップS80の途中であっても、作動油温度センサ61の検出値が第5閾値以上になった場合、アフタークーラ温度センサ62の検出値が第6閾値以上になった場合、水温センサ63の検出値が第7閾値以上になった場合、またはエンジンオイル温度センサ64の検出値が第4閾値以上になった場合に、コントローラ66は、冷却ファン51a、51b、51cの逆回転を正回転に戻してもよい。
【0102】
(F)
上記実施形態では、運転者が逆回転スイッチ65を操作することによって送信される操作信号を受信すると、コントローラ66は温度の判定を行った後に、冷却ファン51a、51b、51cを逆回転させる制御を行っているため、逆回転スイッチ65の操作がトリガーとなっているが、これに限られるものではない。例えば、コントローラ66内または別にタイマーが設けられており、所定時間ごとに、コントローラ66は、検出値v1~v4が各々の閾値以下であるか否かを判定し、閾値以下である場合、逆回転制御を実行してもよい。
【0103】
(G)
上記実施形態の油圧ショベル1では、冷却ファン51a、51b、51cを正回転から逆回転に変更させた後に正回転に戻しているが、これに限らない。例えば、冷却ファン51a、51b、51cを逆回転させた後に、エンジン33を停止する場合には、冷却ファン51a、51b、51cを逆回転させずに停止させてもよい。
【0104】
(H)
上記実施の形態では、作業機械の一例として油圧ショベルを用いて説明したが、これに限らなくてもよく、ブルドーザ、ホイールローダ、ダンプ、フォークリフト等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本開示によれば、冷却対象流体の温度上昇を抑制しながら、熱交換器の清掃を行うことが可能な効果を有し、作業機械等に有用である。
【符号の説明】
【0106】
1 :油圧ショベル
36 :熱交換器ユニット
51a :冷却ファン
51b :冷却ファン
51c :冷却ファン
66 :コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9