(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050947
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ラベル付き樹脂容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65C 3/06 20060101AFI20230404BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20230404BHJP
B65C 9/38 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B65C3/06
B29C49/42
B65C9/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161330
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】内橋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】三藤 義之
【テーマコード(参考)】
3E095
4F208
【Fターム(参考)】
3E095AA07
3E095BA01
3E095DA59
3E095FA12
4F208AF16
4F208AG07
4F208AH55
4F208LA01
4F208LB01
4F208LG04
4F208LG22
4F208LW02
4F208LW43
(57)【要約】
【課題】ラベル貼付品質の不良を抑制できる、ラベル付き樹脂容器の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、ラベル付き樹脂容器の製造方法であって、冷却工程と加温工程と貼付工程とを備え、前記冷却工程は、ブロー成形後の樹脂容器を冷却し、前記加温工程は、前記冷却工程の後に前記樹脂容器を温めるものであり、前記貼付工程は、前記加温工程の後に前記樹脂容器の表面にラベルを貼り付ける、方法が提供される。前記加温工程は、60℃以下の温風を前記樹脂容器の周囲に導くことで前記樹脂容器を温めてもよい。前記冷却工程は、15℃以下の冷風を前記樹脂容器の表面に当ててもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル付き樹脂容器の製造方法であって、
冷却工程と加温工程と貼付工程とを備え、
前記冷却工程は、ブロー成形後の樹脂容器を冷却し、
前記加温工程は、前記冷却工程の後に前記樹脂容器を温めるものであり、
前記貼付工程は、前記加温工程の後に前記樹脂容器の表面にラベルを貼り付ける、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記加温工程は、60℃以下の温風を前記樹脂容器の周囲に導くことで前記樹脂容器を温める、方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法であって、
前記冷却工程は、15℃以下の冷風を前記樹脂容器の表面に当てる、方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の方法であって、
前記貼付工程は、乾燥固化型接着剤で前記ラベルを前記樹脂容器の表面に貼り付ける、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル付き樹脂容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラベル付き樹脂容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラベル付き樹脂容器の製造過程で、貼付工程後のラベルに、予期しない不良が発生した。本発明者は、発生原因が判然としないなかで様々な試行錯誤を伴う鋭意検討を行ったところ、ラベル貼付品質の不良を抑制する方法を見出した。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ラベル貼付品質の不良を抑制できる、ラベル付き樹脂容器の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ラベル付き樹脂容器の製造方法であって、冷却工程と加温工程と貼付工程とを備え、前記冷却工程は、ブロー成形後の樹脂容器を冷却し、前記加温工程は、前記冷却工程の後に前記樹脂容器を温めるものであり、前記貼付工程は、前記加温工程の後に前記樹脂容器の表面にラベルを貼り付ける、方法が提供される。
【0007】
本発明者は、ブロー成形後の樹脂容器に冷却と加温とを施してからラベル貼付を行うことで良好なラベル貼付品質が得られることを見出し、本発明の完成に到った。本発明により貼付工程後のラベルに不良が発生することを抑制できる。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記加温工程は、60℃以下の温風を前記樹脂容器の周囲に導くことで前記樹脂容器を温める。
好ましくは、前記冷却工程は、15℃以下の冷風を前記樹脂容器の表面に当てる。
好ましくは、前記貼付工程は、乾燥固化型接着剤で前記ラベルを前記樹脂容器の表面に貼り付ける。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ラベル付き樹脂容器の製造装置を表す図である。
【
図2】
図2Aはラベル付き樹脂容器の一例の上面図であり、
図2Bはラベル付き樹脂容器の一例をラベル側から視た図であり、
図2Cはラベル付き樹脂容器の一例を取手側から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.製造装置
図1には、実施形態の製造方法を適用可能な製造装置1が示される。製造装置1は、ブロー成形機2と、コンベア3と、冷却エリア4aと、開放部4bと、加温エリア4cと、リーク検査器5と、ウエイトチェッカ6と、ラベル貼付装置7と、整列機8とを備える。ブロー成形機2は、インジェクションブロー成形機でもよく、ダイレクトブロー成形機でもよい。コンベア3は、ブロー成形機2で成形された樹脂容器本体を搬送する。コンベア3での搬送の過程で、樹脂容器は、冷却エリア4aから整列機8までを上記列挙した順番に通過する。
【0012】
図2A~
図2Cは、実施形態における樹脂容器本体11の一例である。樹脂容器本体11は、口部12と胴部13と取手部14とを備える。胴部13の側面13aには、ラベル19が貼り付けられる。樹脂容器本体11の詳細は、後ほど説明する。
【0013】
冷却エリア4aは、一例としてスポットクーラである。スポットクーラにより、冷却風を樹脂容器本体11に当ててもよい。これに限られず、冷却エリア4aの閉空間内の雰囲気温度を一定冷温に調節する任意の装置が使用されてもよく、例えば空調機や低温恒温槽などが用いられてもよい。開放部4bは、一例として、アクリル板等の任意の板材で囲まれた常温エリアである。実施の形態では
図1の破線枠の部位4b1が開放されている。加温エリア4cは、一例として温風機の温風を樹脂容器本体11の周囲に導く。
【0014】
リーク検査器5とウエイトチェッカ6は、樹脂容器本体11のリーク検査と重量検査とを行う。ラベル貼付装置7は、樹脂容器本体11の表面(具体的には一例として側面13a)にラベル19を貼り付ける。整列機8は、ラベル貼付け後の樹脂容器本体11を整列して保管する。
【0015】
2.ラベル付き樹脂容器の構成
一例として樹脂容器本体11は
図2Aに示すように平面視楕円形状であり、下側部分が楕円筒であり、上側部分の略半分が取手部14となっている。実施形態では、一例として、胴部13の側面のうち楕円長軸に沿う緩やかな側面13aに、ラベル19が貼り付けられる。
図2A~
図2Cに示す樹脂容器本体11の口部12に図示しないキャップが装着されることで、樹脂容器が提供される。
【0016】
樹脂容器本体11の材料は、一例として、ポリオレフィンを含むポリオレフィン層である。ポリオレフィン層を構成する樹脂中のポリオレフィンの含有量は、例えば、50~100質量%であり、具体的には例えば、50、60、70、80、90、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、プロピレンと他のオレフィン(エチレン等)の共重合体(ランダム共重合体又はブロック共重合体。以下、ランダム共重合体を「ランダムポリプロピレン」と称する。)、環状ポリオレフィン(COP)及びその混合物などが挙げられる。異なるマスターバッチが添加されることで複数色の樹脂容器本体11が提供されてもよい。
【0017】
樹脂容器本体11の容量(より具体的には胴部13の容量)は、特に限定されないが、例えば、1.0~5.0リットルであり、好ましくは、2.0~4.0リットルである。樹脂容器本体11の容量は、具体的には例えば、1.0、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0リットルであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
口部12の肉厚DAは、例えば1.5mm以上であり、例えば1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。対して、胴部13はブロー成形によって膨らむ箇所でもあり、薄肉になる。胴部13の肉厚DBは、例えば1mm以下であり、例えば0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。口部12と胴部13の肉厚比DA/DBは、例えば1.5以上であり、例えば1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上記肉厚DA、DBそれぞれは、最小肉厚又は最大肉厚で規定してもよく、或いは平均肉厚で規定してもよく、平均肉厚の場合には各部位について周方向に沿う複数箇所の肉厚から算術平均を求めてもよい。
【0019】
ラベル19の接着剤は、一例として、エマルション形又はラテックス形でもよく、具体的にはアクリル樹脂系エマルション形あるいはゴム系ラテックス形でもよく、或いは乾燥固化型であってもよい。ただしこれに限定されず、他の任意の接着剤でもよく、例えば溶剤形又は反応形や、あるいは反応硬化型の接着剤が用いられてもよい。
【0020】
樹脂容器本体11に各種の変形が可能である。
図2Aに相当する平面視形状は、楕円形に限らず、円や矩形や多角径(角部が丸みを帯びてもよい)でもよい。高さ方向の任意位置から口部に向かって先細りとなっていてもよい。取手部14が省略されてもよい。
【0021】
3.製造方法
図1の製造装置1を用いて、本発明の一実施形態の製造方法について説明する。本実施形態の方法は、冷却工程と加温工程と貼付工程とを備える。以下、詳細に説明する。
【0022】
3-1.冷却工程
冷却工程は、ブロー成形機2でブロー成形された後の樹脂容器本体11を、冷却エリア4aで冷却する。実施形態の冷却工程は、一例として、スポットクーラで15℃以下の冷気(冷風)を樹脂容器本体11の表面に当てる。冷気を当てる「表面」は、樹脂容器本体11における外部に露出した任意の平面、曲面、端面又は凸凹面を含む。冷気を当てる表面は、胴部13の面に限らず、口部12の上端面や周側面(雄ネジ部)を含んでもよく、取手部14の表面を含んでもよい。実施の形態では一例として、樹脂容器本体11の上方から、口部12や取手部14に向けて冷風を当てる。冷気温度は任意であるが、例えば、5℃~25℃であり、好ましくは、10℃~15℃である。冷気温度は、具体的には例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
樹脂容器本体11が冷却エリア4a内で冷却される時間を、単に冷却時間とも称す。冷却時間は、例えば、30秒~150秒であり、好ましくは、60秒~90秒であり、具体例として70秒(1分10秒)である。冷却時間は、具体的には例えば、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150秒であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
冷却工程の冷却終了時つまり冷却エリア4a出口における、樹脂容器本体11の表面温度(冷却終了時温度)は、例えば10~25℃であり、例えば15~20℃程度でもよい。冷却終了時温度は、具体的には例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
実施形態の冷却工程において、樹脂容器本体11には熱履歴(つまり温度低下履歴あるいは冷却履歴)が与えられる。冷却工程による熱履歴は、「冷却工程開始時(冷却エリア4a入口)における樹脂容器本体11の表面温度を、上記数値範囲で規定される冷却時間で、上記数値範囲で規定される冷却終了時表面温度まで低下させる」というものでもよい。
【0026】
スポットクーラは一例であり、冷却の方法に限定はない。包括的には、任意の冷却手段を使用してもよく、具体的手段として例えば冷気と樹脂容器本体11とを接触させてもよい。冷気との接触態様は冷風を直接当ててもよく、或いは樹脂容器本体11の周囲に冷気を導くことで直接には冷風を当てずに冷やしてもよい。任意の冷媒を使用することができ、一例として低温気体を所定風速で樹脂容器本体11の表面に当ててもよい。あるいは、樹脂容器本体11の表面に冷気を直接当てるのではなく、空調機や低温恒温槽などを用いて樹脂容器本体11を低温雰囲気に晒すことで樹脂容器本体11の表面が冷気と接するようにしてもよい。
【0027】
3-2.加温工程
加温工程は、冷却工程の後に樹脂容器本体11を加温エリア4cで温める。実施形態の加温工程は、一例として、加温エリア4cで、60℃以下の温風(一例として50℃の加温空気)を樹脂容器本体11の周囲に導くことで、樹脂容器本体11を温める。実施の形態では一例として、樹脂容器本体11の上方に温風の吹出口を設け、吹出口から下方に温風を吹き出させる。このとき温風が下方から左右方向に風向きを変えるようにしながら温風を樹脂容器本体11の周囲に誘導してもよく、吹出口からの温風が樹脂容器本体11に直接当たらないようにしてもよい。温風が導かれた加温エリア4c内が加温空気で満たされ、樹脂容器本体11の表面が加温空気に晒される。加温エリア4cにおける温風の温度は任意であるが、例えば、35℃~70℃であり、好ましくは、50℃~60℃である。温風の温度は、具体的には例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、樹脂容器本体11を再加熱しすぎると融化、軟化又は変形等のおそれがあるため、これを避ける観点で上限温度を規定してもよく、例えば60℃等を上限温度としてもよい。
【0028】
樹脂容器本体11が加温エリア4c内で加温される時間を、単に加温時間とも称す。加温時間は、例えば、30秒~180秒であり、好ましくは、60秒~90秒であり、具体例は110秒(1分50秒)である。加温時間は、具体的には例えば、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180秒であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
加温工程の加温終了時つまり加温エリア4c出口における、樹脂容器本体11の表面温度(加熱終了時温度)は、例えば30~50℃であり、例えば35~40℃程度でもよい。加熱終了時温度は、具体的には例えば30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。加温終了時温度は、必ずしも常温と同じでなくともよい。
【0030】
実施形態の加温工程において、樹脂容器本体11には熱履歴(温度上昇履歴)が与えられる。加温工程による熱履歴は、「加温工程開始時(加温エリア4c入口)における樹脂容器本体11の表面温度を、上記数値範囲で規定される加温時間で、上記数値範囲で規定される加温終了時表面温度まで上昇させる」というものでもよい。
【0031】
上記加温工程は例示であり、加温の方法に限定はない。包括的には、任意の加温手段を使用してもよく、具体的手段として例えば加温気体と樹脂容器本体11とを接触させてもよい。加温気体との接触態様は、温風を直接当ててもよく、或いは樹脂容器本体11の周囲に温風を導くことで直接には加温気体を当てずに加温してもよい。任意の熱媒体や熱流体を使用することができる。一例として任意の加温気体を所定風速で樹脂容器本体11の表面に直接に当ててもよい(つまり温風を直接に当ててもよい)。あるいは、恒温槽などの内部において無風又は低風速状態で樹脂容器本体11を高温雰囲気に晒すことで、樹脂容器本体11の表面に加温気体が接するようにしてもよい。加温気体は、空気や他のガス(例えば不活性ガス等)等の任意の気体を加熱したものでもよい。
【0032】
3-3.貼付工程
貼付工程は、加温工程の後に樹脂容器本体11の表面にラベル19を貼り付ける。ラベル19を貼り付ける「表面」は、樹脂容器本体11の胴部13の任意の部位を指しているが、実施形態では一例として胴部13の側面13aである。実施形態の貼付工程は、一例として、乾燥固化型接着剤でラベル19を樹脂容器本体11の表面に貼り付ける。
【0033】
以上説明した実施形態の方法によればラベル貼付品質の不良を抑制できる。これにより、貼付工程後のラベル19に不良(例えば剥がれやシワ等)が発生することを抑制できる。この不良抑制効果は、ラベル貼付前に冷却工程と加温工程とによる熱履歴が加わることで、樹脂容器本体11の表面状態が改質されることによるものと考えられる。
【0034】
また、実施形態の加温工程では、温風の温度を60℃以下とすることで、樹脂容器本体11の変形等を抑制しつつラベル貼付不良を抑制できる。
【0035】
また、実施形態の冷却工程では、冷却エリア4aで15℃以下の冷気を当てることで樹脂容器本体11を急冷することができ、これにより口部12の収縮を抑制することもできる。口部12の収縮が大きいと
図2Aの平面視において口部12の真円度が低下する問題があるが、実施形態によれば口部収縮を小さくできる利点がある。なお樹脂材料(例えばマスターバッチの種類)によって収縮率の違いがみられるが、急冷を施すことで、樹脂材料の違いによらずに口部収縮を抑制しつつ樹脂容器本体11を早期冷却できる利点がある。
【0036】
実施形態によれば、冷却工程によってブロー成形直後の高温の樹脂容器本体11を冷ますことで、ブロー成形工程からラベル貼付工程まで時間を短縮できる利点もある。実施形態の方法によれば、高湿度雰囲気において低温の樹脂容器本体11の表面に生じうる結露を抑制できる利点もある。
【0037】
なお、各エリアの通過時間は、次のように設定してもよい。
図1の例では、冷却エリア4aは加温エリア4cよりも短く設計されている。コンベア3の搬送速度一定とした場合において、冷却エリア4a内の冷却時間が加温エリア4c内の加温時間よりも短くなる。他の例として、逆に冷却エリア4a内の冷却時間のほうが長くされてもよく、あるいは冷却時間と加温時間とが同じでもよい。
【0038】
なお、上述したスポットクーラや温風機において、送風方向や送風強度は様々に変形できる。例えば温風機は、コンベア3が搬送する樹脂容器本体11に対して任意の方向から温風を送出してもよい。コンベア3の上の樹脂容器本体11に対してその上方と下方と水平方向と斜め上方と斜め下方とのうち任意の一つ又は2つ以上の方向から、温風を送出してもよい。水平方向や斜め上下方向に温風を送出する場合は、一例として、樹脂容器本体11の側面13a、特にラベル19の貼付領域を中心に温風を当ててもよい。あるいは、具体的には、コンベア3の進行方向を樹脂容器本体11の前方とみなした場合に、樹脂容器本体11の前後左右の任意の一つ以上の方向から温風を送出してもよい。温風の強さつまり風速に限定はないが、一例として、樹脂容器本体11の表面に付着した異物等を吹き飛ばせる程度の強さでもよい。上記送風方向や送風強度等のバリエーションは、スポットクーラの冷気についても同様に適用してもよい。
【0039】
なお、開放部4bで規定された常温エリアでは積極的な冷却や加熱が行われず、部位4b1を介して開放部4bの外側との通気を生じさせることができる。開放部4bにより、冷風が加温エリア4cに伝わりにくくなり且つ加温気体(温風)が冷却エリア4aに伝わりにくくなる効果がある。常温エリアは、冷却エリア4aと加温エリア4cとの間の温度域に収まる。開放部4b内の常温雰囲気は、一例として、15℃~35℃などでもよく、或いは15℃~25℃などでもよく、20℃~30℃などでもよい。他の例の常温範囲は、上限が35℃であって、下限が冷却エリア4a内の温度を上回る所定温度であってもよい。また、開放部4bを省略して冷却エリア4aと加温エリア4cとを連結させてもよい。
【実施例0040】
【0041】
表1は、
図1の製造装置1を用いて製造した樹脂容器本体11(ラベル貼付け前)について、冷却条件および加温条件を異ならしめた試験結果である。ブロー成形機2で樹脂容器本体11をダイレクトブロー成形した。樹脂材料はポリエチレンを用いた。ブロー成形機2から取り出された樹脂容器本体11は、口部12が約100℃、胴部13が約40℃~50℃であった。なお、ブロー成形機2出口と冷却エリア4a入口との間のコンベア3上で、樹脂容器本体11の放熱が生じた。なお、口部12は、キャップをはめるためにある程度剛性が必要であり、肉厚が大きくなる傾向にある。対して、胴部13はブロー成形によって膨らむ箇所でもあり、薄肉になる。実施例では、一例として、口部12の肉厚D
Aは1.5mmであり、胴部13の肉厚D
Bは1mmであり、口部12と胴部13の肉厚比D
A/D
Bは1.5である。口部12は樹脂量が多いため、冷めづらく、口部12が高温となる。
【0042】
冷却条件について述べる。冷却エリア4aに入ると、樹脂容器本体11に比較例A1~A3、比較例Bおよび実施例でそれぞれ異なる冷却が施された。冷却有無に記載した「急冷」と「徐冷」との違いを述べる。「急冷」という冷却態様は、低温冷気によって樹脂容器本体11が急速に冷やされていくもので、冷却速度(つまり時間経過に対する樹脂容器本体11の温度低下量)が相対的に大きいものである。実施例では12℃の冷風を当てることで急冷を行っている。これに対し「徐冷」という冷却態様は、常温~50℃程度の温風を樹脂容器本体11の周囲に導くことで樹脂容器本体11が緩やかに冷まされていくもので、急冷よりも冷却速度が小さい。各々の冷却時間は、比較例A1,A2の冷却時間tA1、tA2が最も長く、実施例の冷却時間tEが元も短い。各冷却時間の長さの関係は「tE<tA3<tB<tA1=tA2」である。
【0043】
加温条件について述べる。比較例A1~比較例Bの「加温なし」のサンプルは、加温エリア4cの加温なし(温風機オフ)の状態で搬送され、そのままラベル貼付装置7に搬送された。実施例の「加温有り」のサンプルでは、加温エリア4cにおいて、樹脂容器本体11の上方に設けた吹出口から左右に風向きを変えつつ温風を誘導することで、吹出口からの温風が樹脂容器本体11に直接当たらないようにしながら、樹脂容器本体11の周囲に温風が導かれる。加温工程の後の樹脂容器本体11が、ラベル貼付装置7に搬送された。加温気体の温度は約50℃とした。ラベル貼付装置7では、アクリルエマルション型の乾燥固化型接着剤でラベル19が貼り付けられた。
【0044】
比較例A1、A2では、冷却工程でいずれも冷却(急冷)が行われ、冷却時間tA1、tA2は全サンプル中で最長とされ、具体的には4分37秒であった。これにより冷却終了時点(つまり冷却エリア4a出口時点)で、口部12および胴部13が約12℃まで冷やされた。その後、加温なしで搬送され、その搬送過程で常温雰囲気に晒されることで樹脂容器本体11の温度が上がり、ラベル貼付装置7でラベル貼付工程が行われた。なおブロー成形機2からラベル貼付装置7に至る搬送に要した時間は、7分2秒であった。比較例A1、A2の違いは、ラベル貼付工程の後に整列機8に整列した樹脂容器本体11の保管条件である。比較例A1は、保管温度約30℃~35℃であり、湿度が高かった。比較例A2は、保管温度約20℃であり、湿度は60%であった。
【0045】
比較例A3では、冷却工程で冷却(急冷)が行われ、冷却時間tA3は中程度とされた。つまり冷却時間tA3は、tA1,tA2より短くかつ実施例の冷却時間tEよりは長くされた。冷却終了時点の胴部13の温度は推定で約20℃付近であった。その後、加温なしで搬送され、その搬送過程で常温雰囲気に晒されることで樹脂容器本体11の温度が上がり、ラベル貼付装置7で貼付工程が行われた。
【0046】
比較例Bでは、冷却工程で冷却(徐冷)が行われ、冷却時間tBは中程度とされた。冷却終了時点で、口部12の温度が約50℃であり、胴部13の温度が約37~38℃であった。その後、加温なしで搬送され、ラベル貼付装置7で貼付工程が行われた。
【0047】
実施例では、冷却工程で冷却(急冷)が行われ、最短の冷却時間tEとされた。具体的には、冷却時間tEは1分10秒であった。冷却終了時点の胴部13の温度は推定で約20~25℃であった。その後、加温エリア4cでの加温が施された。加温時間(加温エリア4cの通過に要した時間)は、1分50秒であった。加温工程直後の口部温度は約50℃であり、胴部温度は約37~38℃程度であった。加温後の樹脂容器本体11がさらにコンベア3で搬送され、ラベル貼付装置7で貼付工程が行われた。なおブロー成形機2からラベル貼付装置7に至る搬送に要した時間は、7分2秒であった。
【0048】
評価は「○良好」と「△中間」と「×不良」の三段階である。結果をみると、実施例ではラベル品質が評価○であり、しかも「口部収縮」についても評価○であった。口部収縮が小さいほど真円度が保たれて評価は良好であり、口部収縮が大きいと口部12が楕円等になって「×不良」となる。比較例サンプルは、何れか一方の評価が×であった。なおラベル品質の不良は、貼付け後のラベルの剥がれやシワ等であった。実施例の結果から、加温をすることでラベル品質が良好になることが分かり、また冷却態様を急冷とすることで口部収縮の状態が良好になることも分かった。急冷且つ加温有りの実施例で、口部収縮とラベル品質とを両立できた。
【0049】
さらに、実施例では、成形サイクルを早くするために、金型内の冷却時間を短くし、金型での冷却が完了する前に樹脂容器本体11を金型から取り出して、金型の外で冷却(冷却工程)を行っている。この実施例において成形サイクルを早くしつつ成形品質とラベル品質を両立できることが確認できた。より詳しく述べると、一般的なブロー成形では、金型内で賦形した後に、ある程度の温度まで冷却させてから取り出しを行っており、成形サイクルの中でも冷却時間に時間を要する欠点がある。また、他のラベル貼付方法として、実施の形態のような成形後の後貼方法以外にも、金型内にラベルを取付けて一体成形するインモールドと呼ばれる方法もある。このインモールドでも、金型内にラベルをセットする工程が増えるので成形サイクルが長くなりやすい欠点があり、また専用の取り付け設備が必要となる欠点がある。これらと比較すると、実施例では、金型内の冷却時間を短くし、冷却完了前に金型からの取り出しを行っており、その後に金型外で冷却(冷却工程)を行っている。これに加温工程を組み合わせることで、上記の良好なラベル品質等も達成できている。以上のように、実施例によれば、成形サイクル短縮と成形品質とラベル貼付品質確保とを両立する効果が確認できた。
【0050】
口部収縮の評価基準は、以下の通りである。口部12のネジ径37.2mm±0.4mmという規格に適合したものが評価○である。規格から外れたものが×である。
【0051】
ブロー成形後24時間経過した樹脂容器本体11についてラベル浮きを確認した。ラベル品質の評価基準は、以下の通りである。縦方向のラベル浮き(
図2Bの紙面縦方向に沿うラベル19の浮き)が生じやすい傾向があった。
〇:浮き無し、もしくは、浮き幅5mm×長さ5mm未満
△:浮き幅5mm×長さ5mm~幅5mm×長さ20mm
×:浮きの幅5mm×長さ20mm以上