IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特開2023-50950作業機械の制御装置および作業機械の制御方法
<>
  • 特開-作業機械の制御装置および作業機械の制御方法 図1
  • 特開-作業機械の制御装置および作業機械の制御方法 図2
  • 特開-作業機械の制御装置および作業機械の制御方法 図3
  • 特開-作業機械の制御装置および作業機械の制御方法 図4
  • 特開-作業機械の制御装置および作業機械の制御方法 図5
  • 特開-作業機械の制御装置および作業機械の制御方法 図6
  • 特開-作業機械の制御装置および作業機械の制御方法 図7
  • 特開-作業機械の制御装置および作業機械の制御方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050950
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】作業機械の制御装置および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/30 20190101AFI20230404BHJP
   B60L 58/40 20190101ALI20230404BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230404BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20230404BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20230404BHJP
【FI】
B60L58/30
B60L58/40
H01M8/04 Z
H01M8/04537
H01M8/04858
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161335
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 翔太
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA03
5H125AC07
5H125AC12
5H125BC05
5H125BD02
5H125EE33
5H125EE51
5H127AB04
5H127AB11
5H127AB29
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127BB02
5H127DB69
5H127DC45
5H127FF04
(57)【要約】
【課題】作業機械に搭載された複数の燃料電池を効率よく運転する。
【解決手段】負荷率決定部は、作業機械の必要電力に基づいて、複数の燃料電池それぞれの負荷率を決定する。運転指示部は、複数の燃料電池それぞれを、決定した負荷率で運転させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池を備える作業機械の制御装置であって、
前記作業機械の必要電力に基づいて、前記複数の燃料電池それぞれの負荷率を決定する負荷率決定部と、
前記複数の燃料電池それぞれを、決定した前記負荷率で運転させる運転指示部と
を備える作業機械の制御装置。
【請求項2】
前記負荷率決定部は、
前記作業機械の必要電力に基づいて、前記複数の燃料電池のエネルギーロスの合計が最小となるように、前記複数の燃料電池それぞれの負荷率を決定する
請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項3】
前記負荷率決定部は、
前記複数の燃料電池のうち少なくとも1個の燃料電池を運転させないように、前記複数の燃料電池それぞれの負荷率を決定する
請求項1又は請求項2に記載の作業機械の制御装置。
【請求項4】
前記必要電力は、少なくともダンプボディの操作量基づいて決定される
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の作業機械の制御装置。
【請求項5】
前記負荷率決定部は、
前記複数の燃料電池のうちN個の燃料電池を最大効率点に係る負荷率で運転させ、1個の燃料電池に前記必要電力と前記N個の燃料電池の出力電力との差の電力を出力させ、残りの燃料電池を運転させないパターン、および
前記複数の燃料電池のうちN個の燃料電池それぞれに、前記必要電力をNで除算した電力を出力させ、残りの燃料電池を運転させないパターン
を含む複数のパターンについて前記負荷率を演算し、前記複数の燃料電池のエネルギーロスの合計が最小となるパターンに基づいて、前記複数の燃料電池それぞれの負荷率を決定する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の作業機械の制御装置。
【請求項6】
電力範囲ごとに前記電力範囲内の電力を出力するときにエネルギーロスが最小となる、前記複数の燃料電池それぞれの負荷率のパターンを関連付けたパターンデータを記憶する記憶部を備え、
前記負荷率決定部は、前記パターンデータにおいて前記必要電力が含まれる電力範囲に関連付けられたパターンに基づいて、前記複数の燃料電池それぞれの負荷率を決定する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の作業機械の制御装置。
【請求項7】
前記複数の燃料電池の使用状況を特定する状況特定部と、
前記負荷率決定部は、前記複数の燃料電池のうち、一部の燃料電池を運転させない場合に、前記使用状況に基づいて前記複数の燃料電池のうち運転させないものを決定する
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の作業機械の制御装置。
【請求項8】
前記作業機械は、バッテリをさらに備え、
前記複数の燃料電池が出力する電力と、前記必要電力との差の電力を、前記バッテリに出力させるバッテリ制御部を備える
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の作業機械の制御装置。
【請求項9】
複数の燃料電池を備える作業機械の制御方法であって、
前記作業機械の必要電力に基づいて、前記複数の燃料電池それぞれの負荷率を決定するステップと、
前記複数の燃料電池それぞれを、決定した前記負荷率で運転させるステップと
を備える作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の制御装置および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料に代えて、クリーンなエネルギーを作業機械の動力とするために、作業機械に燃料電池を搭載することが検討されている。作業機械のように大型の機械を燃料電池によって稼働させるためには、複数の燃料電池(燃料電池モジュール)を並列に搭載することが考えられる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/064010号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、燃料電池は、負荷率によって効率が変化することが知られている。そのため、作業機械の稼働に必要な電力を、並列に搭載した燃料電池に均等に出力させる場合、必ずしも効率よく燃料電池を運転できるとは限らない。
本開示の目的は、作業機械に搭載された複数の燃料電池を効率よく運転することができる作業機械の制御装置および作業機械の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、作業機械の制御装置は、複数の燃料電池を備える作業機械の制御装置であって、前記作業機械の必要電力に基づいて、前記複数の燃料電池それぞれの負荷率を決定する負荷率決定部と、前記複数の燃料電池それぞれを、決定した前記負荷率で運転させる運転指示部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、作業機械に搭載された複数の燃料電池を効率よく運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る運搬車両を模式的に示す側面図である。
図2】第1の実施形態に係る運搬車両の動力系および駆動系の構成を示す概略ブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図4】燃料電池の負荷率と効率との関係の一例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図7】第2の実施形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
図8】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第1の実施形態〉
《運搬車両の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る運搬車両10を模式的に示す斜視図である。運搬車両10は、鉱山などの作業現場を走行して積荷を運搬するダンプトラックである。運搬車両10は、運転者による運転操作によらずに無人で稼働する無人ダンプトラックでもよいし、運転者による運転操作に基づいて稼働する有人ダンプトラックでもよい。
運搬車両10は、ベッセル(ダンプボディ)11と、車体12と、走行装置13とを備える。
【0009】
ベッセル11は、積荷が積載される部材である。ベッセル11の少なくとも一部は、車体12よりも上方に配置される。ベッセル11は、ダンプ動作及び下げ動作する。ダンプ動作及び下げ動作により、ベッセル11は、ダンプ姿勢及び積載姿勢に調整される。ダンプ姿勢とは、ベッセル11が上昇している姿勢をいう。積載姿勢とは、ベッセル11が下降している姿勢をいう。
【0010】
ダンプ動作とは、ベッセル11を車体12から離隔させてダンプ方向に傾斜させる動作をいう。ダンプ方向は、車体12の後方である。実施形態において、ダンプ動作は、ベッセル11の前端部を上昇させて、ベッセル11を後方に傾斜させることを含む。ダンプ動作により、ベッセル11の積載面は、後方に向かって下方に傾斜する。
【0011】
下げ動作とは、ベッセル11を車体12に接近させる動作をいう。実施形態において、下げ動作は、ベッセル11の前端部を下降させることを含む。
【0012】
排土作業を実施する場合、ベッセル11は、積載姿勢からダンプ姿勢に変化するように、ダンプ動作する。ベッセル11に積荷が積載されている場合、積荷は、ダンプ動作により、ベッセル11の後端部から後方に排出される。積込作業が実施される場合、ベッセル11は、積載姿勢に調整される。
【0013】
車体12は、車体フレームを含む。車体12は、ベッセル11を支持する。車体12は、走行装置13に支持される。
【0014】
走行装置13は、車体12を支持する。走行装置13は、運搬車両10を走行させる。走行装置13は、運搬車両10を前進又は後進させる。走行装置13の少なくとも一部は、車体12よりも下方に配置される。走行装置13は、一対の前輪と一対の後輪とを備える。前輪は操舵輪であり、後輪は駆動輪である。
【0015】
動力系14は、水素と酸素とを反応させて走行装置13を駆動するための動力を発生する。走行装置13を駆動することは、走行装置13の後輪を回転させることを含む。
【0016】
図2は、第1の実施形態に係る運搬車両10の動力系14および駆動系15の構成を示す概略ブロック図である。動力系14は、水素タンク141、水素供給装置142、燃料電池143、バッテリ144、DCDCコンバータ145を備える。なお、動力系14は、複数の燃料電池143を備える。第1の実施形態では、燃料電池143の数をM個とする。Mは自然数である。
水素供給装置142は、水素タンク141の水素を燃料電池143に供給する。燃料電池143は、水素供給装置142から供給される水素と外気に含まれる酸素とを電気化学反応させて電力を発生する。バッテリ144は、燃料電池143において発生した電力を蓄える。DCDCコンバータ145は、制御装置16(図3参照)からの指示に従って接続される燃料電池143またはバッテリ144から電力を出力させる。動力系14は、M+1個のDCDCコンバータ145を備える。
【0017】
動力系14が出力した電力は、母線Bを介して駆動系15へ出力される。駆動系15は、インバータ151と、ポンプ駆動モータ152と、油圧ポンプ153と、ホイストシリンダ154と、インバータ155と、走行駆動モータ156とを有する。インバータ151は、母線Bからの直流電流を三相交流電流に変換してポンプ駆動モータ152に供給する。ポンプ駆動モータ152は、油圧ポンプ153を駆動する。油圧ポンプ153から吐出された作動油は、図示しない制御弁を介してホイストシリンダ154に供給される。作動油がホイストシリンダ154に供給されることにより、ホイストシリンダ154が作動する。ホイストシリンダ154は、ベッセル11をダンプ動作又は下げ動作させる。インバータ155は、母線Bからの直流電流を三相交流電流に変換して走行駆動モータ156に供給する。走行駆動モータ156が発生した回転力は、走行装置13の後輪に伝達される。
【0018】
《制御装置16の構成》
図3は、第1の実施形態に係る制御装置16の構成を示す概略ブロック図である。制御装置16は、状況特定部161、操作量取得部162、必要電力決定部163、負荷率決定部164、分担決定部165、運転指示部166を備える。
【0019】
図4は、燃料電池143の負荷率と効率との関係の一例を示す図である。負荷率とは燃料電池の定格電流に対する出力電流の割合である。図4に示すように、各燃料電池143は、個体ごとに効率が最大となる負荷率が定まっており、負荷率が最大効率点より高くなるほど、または最大効率点より低くなるほど、その効率が低下する。第1の実施形態に係る制御装置16は、動力系14が備えるM個の燃料電池143の全体の効率が高くなるように、動力系14を制御する。
【0020】
状況特定部161は、M個の燃料電池143それぞれの使用状況を特定する。具体的には、状況特定部161は、燃料電池143の出力端それぞれに設けられた電流計から電流値を取得し、一定時間(例えば、1時間)における平均を求めることで使用状況を特定する。電流値の平均が大きいほど燃料電池143の直近の使用負荷が高いことを示す。なお、他の実施形態に係る状況特定部161は、電流値以外の物理量に基づいて使用負荷を特定してもよい。例えば、他の実施形態に係る状況特定部161は、燃料電池143の出力電力に基づいて使用負荷を特定してもよいし、燃料電池143の冷却水の出口温度に基づいて使用負荷を特定してもよい。なお、燃料電池143は、反応によって熱を生じるため、出口温度が高いほど燃料電池143の直近の使用負荷が高いことを示す。
また状況特定部161は、母線Bに供給される電力を検出する。
【0021】
操作量取得部162は、図示しない運搬車両10の操作装置からベッセル11および走行装置13の操作量を示す操作信号を取得する。
必要電力決定部163は、操作量取得部162が取得した操作量に基づいて、ベッセル11および走行装置13の操作のためにM個の燃料電池143から出力すべき電力である必要電力を決定する。例えば、予めベッセル11と走行装置13のそれぞれについて、操作量と必要電力との関係を示す電力決定関数を求めておき、必要電力決定部163は、電力決定関数に取得した操作量を代入することで、必要電力を決定してよい。なお、必要電力は、必ずしもベッセル11および走行装置13の稼働に要する全電力でなくてよい。例えば、動力系14が、燃料電池143に一定の電力を出力させ、操作量の変動を主にバッテリ144に吸収させる場合や、バッテリ144に一定の電力を出力させ、操作量の変動を主に燃料電池143に吸収させる場合などには、ベッセル11および走行装置13の稼働に要する全電力からバッテリ144の出力分を減じた部分を、必要電力として算出する。
【0022】
負荷率決定部164は、必要電力決定部163が決定した必要電力に基づいて、第1の運転パターンと第2の運転パターンのうち、エネルギーロスが最小となるパターン、すなわち最も燃料電池143全体の効率が高いパターンを決定する。
【0023】
第1の運転パターンは、以下の条件でM個の燃料電池を運転させるパターンである。
・N個の燃料電池143を、最大効率点に係る負荷率で運転させる。ただし、Nは、N≦M-1を満たす自然数である。
・1個の燃料電池143に、必要電力とN個の燃料電池143の出力電力との差の電力を出力させる。
・残りの(M-N-1)個の燃料電池を運転させない。
【0024】
第2の運転パターンは、以下の条件でM個の燃料電池を運転させるパターンである。
・N個の燃料電池143に、必要電力をNで除算した電力を出力させる。ただし、Nは、N≦Mを満たす自然数である。
・残りの(M-N)個の燃料電池を運転させない。
【0025】
分担決定部165は、状況特定部161によって特定された各燃料電池143の使用状況に基づいて、各燃料電池143の負荷率の分担を決定する。具体的には、分担決定部165は、直近の使用負荷が高い燃料電池143を運転させず、直近の使用負荷が低い燃料電池143を優先的に運転させるよう、分担を決定する。
【0026】
運転指示部166は、分担決定部165が決定した分担および負荷率決定部164が決定した運転パターンに従って、燃料電池143に接続されたDCDCコンバータ145に運転指示を出力する。また運転指示部166は、状況特定部161が特定した母線の電力と必要電力決定部163が決定した必要電力との差の電力を出力させる運転指示を、バッテリ144に接続されたDCDCコンバータ145に出力する。つまり、運転指示部166は、バッテリ制御部の一例である。
【0027】
《制御装置16の動作》
図5は、第1の実施形態に係る制御装置16の動作を示すフローチャートである。第1の実施形態に係る制御装置16は、所定の燃料電池制御周期(例えば数十msec)ごとに、図5に示す燃料電池143の制御処理を実行する。
まず制御装置16の状況特定部161は、各燃料電池143に設けられたセンサから状態量を取得することで、各燃料電池143の使用状況(使用負荷)を特定する(ステップS1)。次に、操作量取得部162は、図示しない操作装置からベッセル11および走行装置13の操作量を示す操作信号を取得する(ステップS2)。必要電力決定部163は、操作量取得部162が取得した操作量に基づいて、ベッセル11および走行装置13の操作に必要な電力を決定する(ステップS3)。
【0028】
次に、負荷率決定部164は、ステップS3で決定した必要電力を、各燃料電池143の最大効率点に係る電力で除算した商の整数部Nと、剰余Vを特定する(ステップS4)。なお、燃料電池143の定格出力は既知であることから、負荷率決定部164は、定格出力に最大効率点に係る負荷率を乗算することで、最大効率点に係る電力を求めることができる。
【0029】
負荷率決定部164は、商の整数部Nが燃料電池143の数Mより大きいか否かを判定する(ステップS5)。商の整数部Nが燃料電池143の数Mより大きい場合(ステップS5:YES)、負荷率決定部164は、ステップS3で決定した必要電力を燃料電池143の数Mで除算した商Vを、出力電力として特定する(ステップS6)。そして、運転指示部166は、各燃料電池143に接続されたDCDCコンバータ145に、ステップS6で特定した出力電力Vを出力させる運転指示を出力する(ステップS7)。つまり、負荷率決定部164は、燃料電池143の運転パターンを、N=Mとする第2の運転パターンに決定する。
【0030】
他方、商の整数部Nが燃料電池143の数M以下の場合(ステップS5:NO)、負荷率決定部164は、ステップS4で求めた商の整数部Nと剰余Vとに基づいて、N個の燃料電池143を最大効率点で動作させ、1個の燃料電池にVの電力を出力させる場合のエネルギーロスを算出する(ステップS8)。つまり、負荷率決定部164は、第1の運転パターンについてのエネルギーロスを算出する。
【0031】
次に、負荷率決定部164は、ステップS3で決定した必要電力をステップS4で求めたNで除算した商Vを特定する(ステップS9)。負荷率決定部164は、商Vについて小数点以下の値も計算する。負荷率決定部164は、ステップS4で求めたNとステップS9で求めたVとに基づいて、N個の燃料電池143にVの電力を出力させる場合のエネルギーロスを算出する(ステップS10)。つまり、負荷率決定部164は、最大効率点を超える負荷率で燃料電池143を運転させる第2の運転パターンについてのエネルギーロスを算出する。
【0032】
次に、負荷率決定部164は、ステップS4で求めたNに基づいて、ステップS3で決定した必要電力を(N+1)で除算した商Vを特定する(ステップS11)。負荷率決定部164は、商Vについて小数点以下の値も計算する。負荷率決定部164は、ステップS4で求めたNとステップS11で求めたVとに基づいて、(N+1)個の燃料電池143にVの電力を出力させる場合のエネルギーロスを算出する(ステップS12)。つまり、負荷率決定部164は、最大効率点未満の負荷率で燃料電池143を運転させる第2の運転パターンについてのエネルギーロスを算出する。
【0033】
負荷率決定部164は、ステップS8、ステップS10、ステップS12で算出した運転パターンのうちエネルギーロスが最も小さくなるものを、燃料電池143の運転パターンに決定する(ステップS13)。分担決定部165は、ステップS1で特定した燃料電池143の負荷に基づいて、負荷が小さい燃料電池143ほど高い負荷率を分担するように、各燃料電池143の負荷率を決定する(ステップS14)。具体的には、負荷率決定部164がステップS8の第1の運転パターンに決定した場合、分担決定部165は、使用負荷が低い下位N個を最大効率点で運転させ、使用負荷が高い上位(M-N-1)個を運転させず、残りの1つに電力Vを出力させることを決定する。負荷率決定部164がステップS10の第2の運転パターンに決定した場合、分担決定部165は、使用負荷が低い下位N個に電力Vを出力させ、残りを運転させないことを決定する。負荷率決定部164がステップS12の第2の運転パターンに決定した場合、分担決定部165は、使用負荷が低い下位N+1個に電力Vを出力させ、残りを運転させないことを決定する。
【0034】
なお、分担決定部165は、負荷率決定部164が決定した運転パターンおよび稼働させる燃料電池143の個数Nが前回の決定時と同じであるならば、各燃料電池143の分担を変えず、負荷率のみを変更する。これにより、頻繁な分担の変更が生じることを防ぐことができる。
【0035】
運転指示部166は、分担決定部165が決定した分担および負荷率決定部164が決定した運転パターンに従って、燃料電池143に接続されたDCDCコンバータ145に運転指示を出力する(ステップS15)。
【0036】
なお、制御装置16は、上記の燃料電池143の制御処理と並行して、燃料電池制御周期と同等の周期で、バッテリ144に接続されたDCDCコンバータ145に、母線Bの電力と必要電力との差の電力を出力させる運転指示を出力する。燃料電池143の出力は、瞬時に変化するのではなく、遷移に数秒程度の時間を要する。上記のように、母線Bの電力と必要電力との差をバッテリ144に吸収させることで、母線Bに供給される電力を安定させることができる。
【0037】
このように、第1の実施形態に係る制御装置16は、運搬車両10の必要電力に基づいて、複数の燃料電池143のエネルギーロスの合計が最小となるように、複数の燃料電池143それぞれの負荷率を決定する。これにより、制御装置16は、複数の燃料電池143に必要電力を出力させつつ、かつ複数の燃料電池143全体を高効率に運用することができる。
【0038】
また、第1の実施形態に係る制御装置16は、第1の運転パターンと第2の運転パターンとのうちエネルギーロスが最小のものに基づいて複数の燃料電池143を制御する。これにより、制御装置16は複数の燃料電池143それぞれの負荷率を変数とする複雑な最適化問題を解くことなく、少ない計算量で燃料電池143の運転パターンを決定することができる。なお、他の実施形態においては、制御装置16は、第1の運転パターンおよび第2の運転パターンに加えて、またはこれらの何れかに代えて、他の運転パターンを含めて計算を行ってもよい。
【0039】
また、第1の実施形態に係る制御装置16は、複数の燃料電池143のうち一部の燃料電池143を運転させない場合に、複数の燃料電池143の使用負荷が大きいものを、運転させない燃料電池に決定する。これにより、複数の燃料電池143で負荷を分散させることができる。
【0040】
また、第1の実施形態に係る運搬車両10は、バッテリ144を備え、制御装置16は、複数の燃料電池143が出力する電力と、必要電力との差の電力を、バッテリ144に出力させる。これにより、燃料電池143の出力の切り替わりによる母線Bの負荷の変動を、バッテリ144に吸収させることができる。
【0041】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態に係る制御装置16は、必要電力を供給可能な複数の運転パターンについてエネルギーロスを求め、エネルギーロスが最小になる運転パターンを特定する。これに対し、第2の実施形態では、予め最適化計算等によりエネルギーロスが最小となる運転パターンを求め、必要電力から運転パターンを決定するためのパターンテーブルを制御装置16に記憶させておき、制御装置16がパターンテーブルに基づいて運転パターンを特定する。
【0042】
《制御装置16の構成》
図6は、第2の実施形態に係る制御装置16の構成を示す概略ブロック図である。第2の実施形態に係る制御装置16は、第1の実施形態の構成に加え、さらに記憶部167を備える。記憶部167は、電力範囲ごとに、その電力範囲内の電力を出力するときにエネルギーロスが最小となる運転パターンを関連付けたパターンテーブルを記憶する。運転パターンは、第1の実施形態のように第1の運転パターンと第2の運転パターンの何れかであってもよいし、これとは異なるパターンが含まれていてもよい。またパターンテーブルには、運転させる燃料電池143の台数Nも記録されている。これにより、負荷率決定部164は、パターンテーブルにおいて、必要電力決定部163が決定した必要電力を含む電力範囲に関連付けられた運転パターンを読み出すことで、エネルギーロスが最小になる運転パターンを特定することができる。
【0043】
《制御装置16の動作》
図7は、第2の実施形態に係る制御装置16の動作を示すフローチャートである。第2の実施形態に係る制御装置16は、所定の燃料電池制御周期(例えば数十msec)ごとに、図7に示す燃料電池143の制御処理を実行する。
まず制御装置16の状況特定部161は、各燃料電池143に設けられたセンサから状態量を取得することで、各燃料電池143の使用状況を特定する(ステップS21)。次に、操作量取得部162は、図示しない操作装置からベッセル11および走行装置13の操作量を示す操作信号を取得する(ステップS22)。必要電力決定部163は、操作量取得部162が取得した操作量に基づいて、ベッセル11および走行装置13の操作に必要な電力を決定する(ステップS23)。
【0044】
次に、負荷率決定部164は、記憶部167が記憶するパターンテーブルから、ステップS23で決定した必要電力が含まれる電力範囲に関連付けられた運転パターンを特定する(ステップS24)。負荷率決定部164は、特定した運転パターンに従って、運転させる燃料電池143および各燃料電池143の負荷率を決定する(ステップS25)。
【0045】
分担決定部165は、ステップS21で特定した燃料電池143の負荷に基づいて、負荷が小さい燃料電池143ほど高い負荷率を分担するように、各燃料電池143の負荷率を決定する(ステップS26)。運転指示部166は、分担決定部165が決定した分担および負荷率決定部164が決定した運転パターンに従って、燃料電池143に接続されたDCDCコンバータ145に運転指示を出力する(ステップS27)。
【0046】
なお、制御装置16は、上記の燃料電池143の制御処理と並行して、燃料電池制御周期と同等の周期で、バッテリ144に接続されたDCDCコンバータ145に、母線Bの電力と必要電力との差の電力を出力させる運転指示を出力する。燃料電池143の出力は、瞬時に変化するのではなく、遷移に数秒程度の時間を要する。上記のように、母線Bの電力と必要電力との差をバッテリ144に吸収させることで、母線Bに供給される電力を安定させることができる。
【0047】
このように、第2の実施形態に係る制御装置16は、第1の運転パターンと第2の運転パターンとのうちエネルギーロスが最小のものに基づいて複数の燃料電池143を制御する。これにより、制御装置16は複数の燃料電池143それぞれの負荷率を変数とする複雑な最適化問題を解くことなく、少ない計算量で燃料電池143の運転パターンを決定することができる。なお、他の実施形態においては、制御装置16は、第1の運転パターンおよび第2の運転パターンに加えて、またはこれらの何れかに代えて、他の運転パターンを含めて計算を行ってもよい。
【0048】
また、第2の実施形態に係る制御装置16は、パターンテーブルにおいて必要電力が含まれる電力範囲に関連付けられたパターンに基づいて、複数の燃料電池143それぞれの負荷率を決定する。パターンテーブルとは、電力範囲ごとに、電力範囲内の電力を出力するときにエネルギーロスが最小となる、複数の燃料電池143それぞれの負荷率のパターンを関連付けたであり、パターンデータの一例である。これにより、制御装置16は、少ない計算量で適切に燃料電池143の負荷率を決定することができる。
【0049】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
上述した実施形態に係る制御装置16は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、制御装置16の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで制御装置16として機能するものであってもよい。このとき、制御装置16を構成する一部のコンピュータが運搬車両10の内部に搭載され、他のコンピュータが運搬車両10の外部に設けられてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、作業機械の例として、運搬車両10であるダンプトラックについて説明したが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る作業機械は、油圧ショベルやホイールローダなどの他の作業機械であってよい。
【0051】
上述した実施形態では、制御装置16は予め定められた運転パターンから、燃料電池143のエネルギーロスが最小となる運転パターンを選択するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置16は、最適化計算等によってオンラインでエネルギーロスが最小となる運転パターンを演算してもよい。
【0052】
〈コンピュータ構成〉
図8は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ50は、プロセッサ51、メインメモリ53、ストレージ55、インタフェース57を備える。
上述の制御装置16は、コンピュータ50に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ55に記憶されている。プロセッサ51は、プログラムをストレージ55から読み出してメインメモリ53に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ51は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ53に確保する。プロセッサ51の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0053】
プログラムは、コンピュータ50に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ50は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ51によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0054】
ストレージ55の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ55は、コンピュータ50のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース57または通信回線を介してコンピュータ50に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ50に配信される場合、配信を受けたコンピュータ50が当該プログラムをメインメモリ53に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ55は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0055】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ55に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…運搬車両 11…ベッセル 12…車体 13…走行装置 14…動力系 141…水素タンク 142…水素供給装置 143…燃料電池 144…バッテリ 145…DCDCコンバータ 15…駆動系 151…インバータ 152…ポンプ駆動モータ 153…油圧ポンプ 154…ホイストシリンダ 155…インバータ 156…走行駆動モータ 16…制御装置 161…状況特定部 162…操作量取得部 163…必要電力決定部 164…負荷率決定部 165…分担決定部 166…運転指示部 167…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8