(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050965
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】水素製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20230404BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C01B3/04 A
B01J35/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161361
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】籔内 真
(72)【発明者】
【氏名】深谷 直人
(72)【発明者】
【氏名】古田 太
(72)【発明者】
【氏名】早川 純
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BB04B
4G169BC12A
4G169BC22A
4G169BC25A
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC35A
4G169BC40A
4G169BC42A
4G169BC44A
4G169BC50A
4G169BC56A
4G169BC71A
4G169BD02A
4G169BD08A
4G169HA01
4G169HB01
4G169HF01
(57)【要約】
【課題】水素製造装置において、太陽光の紫外光から可視光鵜を含み赤外光までの広い範囲の波長成分を高効率に活用することにより、トータルの光活用効率を従来よりも高める。
【解決手段】光触媒を有し、水から水素を生成する水素製造装置において、太陽光を波長分離する波長分離部と、この波長分離部にて分離された赤外光を可視光に変換する赤外光変換部と、波長分離部にて分離された紫外光を可視光に変換する紫外光変換部とを備えたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒を有し、水から水素を生成する水素製造装置において、
太陽光を波長分離する波長分離部と、
前記波長分離部にて分離された赤外光を可視光に変換する赤外光変換部と、
前記波長分離部にて分離された紫外光を可視光に変換する紫外光変換部と、
を有することを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の水素製造装置であって、
前記波長分離部は、前記太陽光のうち赤外光を透過し、可視光と紫外光とを反射することを特徴とする水素製造装置。
【請求項3】
請求項2記載の水素製造装置であって、
前記紫外光変換部は、前記波長分離部で反射された前記可視光と前記紫外光のうち前記可視光を反射して前記紫外光を可視光に波長変換して出射させることを特徴とする水素製造装置。
【請求項4】
請求項2記載の水素製造装置であって、
前記紫外光変換部は、前記波長分離部で反射された前記可視光と前記紫外光との波長を分離して出射させることを特徴とする水素製造装置。
【請求項5】
請求項1記載の水素製造装置であって、
前記波長分離部は前記太陽光の波長を赤外光と可視光と紫外光とに分離することを特徴とする水素製造装置。
【請求項6】
光を照射することにより水から水素ガスを生成する光触媒と、
内部に水を流すパイプと、
太陽光を波長分離する波長分離部と、
前記波長分離部で太陽光を波長分離して得られた可視光を前記光触媒に集光して照射する第1の光学系と、
前記波長分離部で太陽光を波長分離して得られた紫外光を可視光に変換して前記光触媒に集光して照射する第2の光学系と、
前記波長分離部で太陽光を波長分離して得られた赤外光を可視光に変換して前記光触媒に集光して照射する第3の光学系と
を有することを特徴とする水素製造装置。
【請求項7】
請求項6記載の水素製造装置であって、
内部に水を流す第1のパイプと内部に水を流す第2のパイプを更に有し、前記光触媒の一部には水素ガス用の助触媒が形成されており、前記光触媒の他の部分には酸素ガス用の助触媒が形成されており、前記水素ガス用の助触媒が形成された側の前記光触媒は前記第1のパイプの内部に配置され、前記酸素ガス用の助触媒が形成された側の前記光触媒は前記第2のパイプの内部に配置されていることを特徴とする水素製造装置。
【請求項8】
請求項6記載の水素製造装置であって、
前記光触媒は前記パイプの内部に配置されていることを特徴とする水素製造装置。
【請求項9】
請求項8記載の水素製造装置であって、
前記パイプの内部に配置された前記光触媒の一部には水素ガス用の助触媒が形成されており、前記光触媒の他の部分には酸素ガス用の助触媒が形成されていることを特徴とする水素製造装置。
【請求項10】
請求項8記載の水素製造装置であって、
前記パイプの内部に配置された前記光触媒の一部には水素ガス用の助触媒が形成され、前記パイプの内部で前記光触媒と離れた位置に対向電極が配置され、前記パイプの内部において前記光触媒と前記対向電極との間はイオン交換膜で仕切られていることを特徴とする水素製造装置。
【請求項11】
可視光を照射することにより水の中で水素ガスを生成する光触媒と、
太陽光に含まれる可視光と前記太陽光の前記可視光以外の光から生成した可視光とを前記光触媒に照射する光照射部と、
前記光照射部から前記太陽光に含まれる可視光と前記生成した可視光とが照射された前記光触媒で発生した水素ガスを前記水から分離する水・ガス分離機構部と
を備えることを特徴とする水素製造装置。
【請求項12】
請求項11記載の水素製造装置であって、
前記光照射部は、
波長分離部で前期太陽光を波長分離して得られた可視光を前記光触媒に集光して照射する第1の光学系と、
前記波長分離部で前記太陽光を波長分離して得られた紫外光を紫外光変換部で可視光に変換して前記光触媒に集光して照射する第2の光学系と、
前記波長分離部で前記太陽光を波長分離して得られた赤外光を赤外光変換部で可視光に変換して前記光触媒に集光して照射する第3の光学系と
を有することを特徴とする水素製造装置。
【請求項13】
請求項12記載の水素製造装置であって、
内部に水を流す第1のパイプと内部に水を流す第2のパイプを更に有し、前記光触媒の一部には水素ガス用の助触媒が形成され、前記光触媒の他の部分には酸素ガス用の助触媒が形成されており、前記水素ガス用の助触媒が形成された側の前記光触媒は前記第1のパイプの内部に配置され、前記酸素ガス用の助触媒が形成された側の前記光触媒は前記第2のパイプの内部に配置されていることを特徴とする水素製造装置。
【請求項14】
請求項12記載の水素製造装置であって、
内部に水を流すパイプを更に有し、前記光触媒は前記パイプの内部に配置され、前記パイプの内部に配置された前記光触媒の一部には水素ガス用の助触媒が形成されており、前記光触媒の他の部分には酸素ガス用の助触媒が形成されていることを特徴とする水素製造装置。
【請求項15】
請求項12記載の水素製造装置であって、
内部に水を流すパイプを更に有し、前記光触媒は前記パイプの内部に配置され、前記パイプの内部に配置された前記光触媒の一部には水素ガス用の助触媒が形成され、前記パイプの内部で前記光触媒と離れた位置に対向電極が配置され、前記パイプの内部において前記光触媒と前記対向電極との間はイオン交換膜で仕切られていることを特徴とする水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を光で分解して水素ガスを製造する水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒に代表される太陽光により水を分解し、高効率に水素を生成する技術は、CO2排出を伴わない安価で蓄積可能なエネルギーキャリア生産技術として、水素発電や脱化石燃料を実現する水素自動車などの環境社会インフラ実現にむけた、再生可能エネルギー事業、環境事業としての応用が期待されている。
【0003】
また、太陽光の高効率活用技術が発展すれば、環境影響の大きい化学物質を分解する光触媒を適用することにより、有用材料の生産などに応用できることから、物質生成システムなど周辺産業への広がりも期待される。
【0004】
太陽光により水を分解して水素を生成することに関する技術として、特許文献1には、水の完全分解反応に関して高い活性を有する接合型Zスキーム触媒、及びこのような触媒
を利用する水素の製造方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽光により水を分解して水素を生成する場合に必要とされる太陽光エネルギーの高効率利用技術として、光触媒反応が活性となる照射光の周波数領域を、従来の紫外光領域で活性となる材料(NaTaO3:280nm、TiO2:400nm近辺)から、より太陽光スペクトルの光強度の強い可視光領域に活性領域を持つ材料(400~700nm)の開発が進められている。
【0007】
しかし、太陽光のスペクトルは、紫外光のみならず、赤外光にも大きく広がっており、これらのエネルギーは活用されていない。さらに、1000nm以上の赤外光は水の分解に必要とされる1.23V未満のエネルギーなため、そのままでは水分解には利用できない。このように、光触媒を有する水素製造装置では、光活用効率を向上させることができていなかった。
【0008】
特許文献1においても、太陽光の紫外光から赤外光に亘る広い波長領域の光を有効に利用することについては触れられていない。
【0009】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決して、太陽光の紫外光から可視光を含み赤外光までの広い範囲の波長成分を高効率に活用し、トータルの光活用効率を従来よりも高めた水素製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、光触媒を有し、水から水素を生成する水素製造装置を、太陽光を波長分離する波長分離部と、この波長分離部にて分離された赤外光を可視光に変換する赤外光変換部と、波長分離部にて分離された紫外光を可視光に変換する紫外光変換部とを備えて構成した。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明では、水素製造装置を、光を照射することにより水から水素ガスを生成する光触媒と、内部に水を流すパイプと、太陽光を波長分離する波長分離部と、この波長分離部で太陽光を波長分離して得られた可視光を光触媒に集光して照射する第1の光学系と、波長分離部で太陽光を波長分離して得られた紫外光を可視光に変換して光触媒に集光して照射する第2の光学系と、波長分離部で太陽光を波長分離して得られた赤外光を可視光に変換して光触媒に集光して照射する第3の光学系とを備えて構成した。
【0012】
さらに、上記課題を解決するために、本発明では、水素製造装置を、可視光を照射することにより水の中で水素ガスを生成する光触媒と、太陽光に含まれる可視光と太陽光の可視光以外の光から生成した可視光とを光触媒に照射する光照射部と、光照射部から太陽光に含まれる可視光と生成した可視光とが照射された光触媒で発生した水素ガスを水から分離する水・ガス分離機構部とを備えて構成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、太陽光の紫外光から可視光を含み赤外光までの広い範囲の波長成分を高効率に活用してトータルの光活用効率を従来よりも高めた水素製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1に係る水素製造装置の平面図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る水素製造装置の平面図である。
【
図6】実施例2に係る水素製造装置において、実施例1の
図4のC部の詳細に相当する斜視図である。
【
図7】実施例2の変形例において
図6に対応する斜視図である。
【
図8】本発明の実施例3に係る水素製造装置の平面図である。
【
図11】実施例3の変形例2に係る水素製造装置の平面図である。
【
図12】本発明の実施例4に係る水素製造装置の平面図である。
【
図15】本発明の実施例5に係る水素製造装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、太陽光の波長スペクトルを効率よく光触媒の活性範囲に変換して光触媒上に集光する光学系と各種機能とを融合させるときの課題を解決する構成を採用することにより、水から水素を効率よく分離精製可能にした水素製造装置に関するものである。
【0016】
すなわち、本発明では、水素製造装置において、太陽光のエネルギレベルがピークになる可視光領域(波長:400nm~700nm)に活性領域を持つ光触媒(例えば、TiO2、 LaTiO2、 TaON、Y2Ti2O5S2、RhドープしたSrTiO3、ZnRh2O4, Sm2Ti2O2S5、CuAgZnSnS4など)を用いて、太陽光のうち紫外光領域の波長成分の光と、赤外光領域の波長成分の光とをそれぞれ波長変換して可視光領域の波長を有する光に変換して太陽光からの可視光と一緒に前記光触媒に照射することにより、水から水素を効率よく分離精製可能にしたものである。
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。
【0018】
ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【実施例0019】
本発明の第1の実施例に係る水素製造装置について、
図1乃至4を用いて説明する。
図1には、第1の実施例に係る水素製造装置10の全体構成に係る平面図を示し、
図1におけるA―A´断面の矢視図を
図2に示す。
【0020】
図1及び
図2に示した構成において、101はレンズA、201は反射鏡、301は波長分離フィルタ、401は赤外光変換部、402はレンズB、501は紫外光変換部、601は光触媒、602は助触媒(水素用)、603は助触媒(酸素用)、604は基板、701は水素ガス生成側のパイプ、702は酸素ガス生成側のパイプ、703は水と水素ガス又は酸素ガスとを分離する水・ガス分離機構部である。
【0021】
本実施例に係る水素製造装置10は、
図1に示した中央の線M-M´に対して左右の部分で対称な構成になっている。以下の説明では、
図1及び
図2の主に左側の構成について説明するが、右側の構成についても同様である。
【0022】
図1及び
図2に示した構成において、レンズA:101は広い波長透過性を有する石英フレネルレンズである。ただし、レンズA:101は石英フレネルレンズに限らず、凸形レンズ、又は非線形局面を有するレンズなどで構成してもよい。レンズA:101に入射した太陽光は、レンズA:101よりも小さな表面積でレンズA:に対して傾いて設置されている反射鏡201の表面に集光される。
【0023】
反射鏡201は凹面鏡または非線形曲面で形成された反射鏡で、レンズA:101で集光された太陽光を反射して波長分離フィルタ301の表面に集光させる。波長分離フィルタ301は、赤外光を透過して、それよりも波長が短い可視光及び紫外光を反射する。
【0024】
波長分離フィルタ301を透過した赤外光は赤外光変換部401に入射する。赤外光変換部401は、赤外光が入射するとそれよりも波長が短い可視光を発する材料(例えば、Siなどからなる一辺の長さ約200ナノメートル、高さ500ナノメートル程度の四角形ナノピラーを400ナノメートル間隔で多数平面上に並列配置させたフォトニック結晶体の表面や、直径500ナノメートル程度の円形ナノホールを同様に敷き詰めたもの、あるいは、これに電圧印加することで半導体の性質を変え、反射光の波長を調整しうる構造を備えたフォトニック結晶体の表面、又は赤外光照射で可視光を発する蛍光剤(光アップコンバージョン材料)など)を基材上に形成した構成で形成されている。すなわち、赤外光が入射することにより、赤外光変換部401からは可視光が発生する。
【0025】
なお、赤外光変換部401において、入射した赤外光から可視光を発生させるために赤外光変換部401を加熱する必要がある場合には、赤外光変換部401を内部に加熱手段を備えた構成とすればよい。
【0026】
赤外光が入射した赤外光変換部401で発生した可視光は、レンズB:402に入射する。
図2で点線Bで囲んだ領域を拡大した図を、
図3に示す。波長分離フィルタ301を透過した赤外光は赤外光変換部401に入射し、赤外光変換部401で発生した可視光は、レンズB:402に入射して、光触媒601とその両端部に形成された助触媒(水素用)602と助触媒(酸素用)603の表面に集光される。
【0027】
赤外光変換部401は、波長分離フィルタ301を透過した赤外光をより多く入射させるとともに、発生した可視光をより多くレンズB:402に入射させるために、波長分離フィルタ301及びレンズB:402に対して傾いて設置されている。
【0028】
一方、波長分離フィルタ301に入射した太陽光のうち波長分離フィルタ301を透過しなかった可視光及び紫外光は、波長分離フィルタ301で反射されて紫外光変換部501に入射する。紫外光変換部501は基材の表面に、紫外光照射で蛍光(可視光)を発する蛍光剤が塗布されている。
【0029】
紫外光変換部501に入射した可視光及び紫外光のうち可視光は、紫外光変換部501の表面で反射して光路が変換され、紫外光変換部501により光触媒601とその両端部に形成された助触媒(水素用)602と助触媒(酸素用)603の表面に集光される。一方、紫外光が紫外光変換部501に入射することにより紫外光変換部501の基材の表面に塗布された蛍光剤から蛍光(可視光)が発生し、その一部は光触媒601とその両端部に形成された助触媒(水素用)602と助触媒(酸素用)603の表面に集光される。
【0030】
図2において点線Cで囲んだ光触媒601を含む部分の詳細を、
図4に示す。光触媒601とその一方の端部に形成された助触媒(水素用)602及び他方の端部に形成された助触媒(酸素用)603は、基板604の上に形成されている。光触媒601の助触媒(水素用)602が形成されている側の端部は、基板604と一緒に、内部を水が流れる水素ガス生成側のパイプ701の中に入っている。一方、光触媒601の助触媒(酸素用)603が形成されている側の端部は、基板604と一緒に、内部を水が流れる酸素ガス生成側のパイプ702の中に入っている。この状態で、助触媒(水素用)602と助触媒(酸素用)603との間には、電位差が生じる。
【0031】
光触媒601及び基板604と水素ガス生成側のパイプ701及び酸素ガス生成側のパイプ702の間には、水素ガス生成側のパイプ701又は酸素ガス生成側のパイプ702の中を流れる水が外部に漏れないようにするために、図示していないシール部材でシールされている。
【0032】
助触媒は光触媒との組み合わせで材料が決定される。例えば、ドープされたSrTiO3では、酸素を発生する陽極側にIrO3、BiVO4、CoO、やCoOOHなどを用い、水素を発生する陰極側は光触媒材料そのものでよい。また、WO3では陽極側にPO3、陰極側はWO3を用いる。また、TaONは陽極側にNiO、陰極側はWO3を担持したTaONを用いる。LaTiONでは陽極にLaTiO2、陰極にはPt担持したLaTiO2、Y2Ti2O2S5では陽極側にIrO2、陰極側にRhまたはCr2O3被覆した上に形成したRhを用いる。等が挙げられており、ここに記載した以外にも、適切な組み合わせを選定し用いるものとする。
【0033】
図4に示したような構成で、光触媒601とその両端部に形成された助触媒(水素用)602と助触媒(酸素用)603は、レンズA:101に入射した太陽光のうち赤外光から変換されてレンズB:402で集光された可視光と、レンズA:101に入射した太陽光のうち紫外光変換部501で紫外光から変換された可視光と紫外光変換部501で反射された可視光が入射してこれらの可視光により照射される。
【0034】
これらの可視光が照射された光触媒601とその両端部に形成された助触媒(水素用)602と助触媒(酸素用)603では、水素ガス生成側のパイプ701の内部において水が分解されて水素ガスが発生し、酸素ガス生成側のパイプ702の内部において水が分解されて酸素ガスが発生する。
【0035】
水素ガス生成側のパイプ701の内部で発生した水素ガスは、水と一緒に流れて水・ガス分離機構部703において水から水素ガスが分離され、水素ガスが回収される。一方、酸素ガス生成側のパイプ702の内部で発生した酸素ガスは、水と一緒に流れて水・ガス分離機構部703において水から酸素ガスが分離され、酸素ガスが回収される。
【0036】
水素発生電極側の電位はほとんどゼロであるが、触媒の種類によっては、水の電位よりも低いと反応が極端に遅くなるか止まってしまう場合があるため、0.5V未満の弱い外部電圧を付加する機構を設ける場合を含めるものとする。また、反応を促進するため、水は添加物により電解質溶液にしている場合も含むものとする。
【0037】
本実施例によれば、水素製造装置10に入射する太陽光のうち、そのままでは光触媒を活性化させることができず水素ガスの生成に寄与しない赤外光と紫外光の成分をそれぞれ可視光に変換して用いることにより、水素製造装置10における太陽光の利用効率を向上させることができるようになった。
実施例1においては、光触媒601の両側の水素ガス生成側のパイプ701と酸素ガス生成側のパイプ702とは互いに分離して配置されていた。これに対して、本実施例においては、水素ガス生成側のパイプ701-1と酸素ガス生成側のパイプ702-1とを中間部710で連結して、光触媒601全体を水の中に入れる構成となっている。
このような構成とすることにより、水素ガス生成側のパイプ701-1の中を流れる水と酸素ガス生成側のパイプ702-1の中を流れる水とが互いに混じり合ってしまう。しかし本実施例では、中間部710とその下側の光触媒601との間隔を狭く設定することで、互いのパイプの中を流れる水が混じり合う量を少なくした。これにより水素ガス生成側のパイプ701-1の側に流れ込む酸素ガスの量及び酸素ガス生成側のパイプ702-1の側に流れ込む水素ガスの量を小さくすることができ、水・ガス分離機構部703で分離される水素ガス及び酸素ガスの収量の低減は、無視することができる程度に小さくすることができる。
本実施例によれば、光触媒601全体を水の中に入る構成なので、実施例1の構成のような光触媒601と水素ガス生成側のパイプ701及び酸素ガス生成側のパイプ702との間の水漏れを防ぐような構成を必要としない分、構成を簡素化することができる。
イオン交換膜607は、対イオンを透過する性質を有するものである。水素ガス生成側のパイプ701-2と酸素ガス生成側のパイプ702-2との間をこのイオン交換膜607で仕切ることにより、水素ガス生成側のパイプ701-2と酸素ガス生成側のパイプ702-2とにおいて、酸素と水素を分離して生成することができる。