(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005097
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】超音波検査装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/11 20060101AFI20230111BHJP
G01N 29/48 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G01N29/11
G01N29/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106805
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】505204114
【氏名又は名称】東芝検査ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 賢典
(72)【発明者】
【氏名】松本 真
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AB05
2G047AB07
2G047BA03
2G047BC03
2G047BC07
2G047CA01
2G047EA11
2G047GB02
2G047GG28
2G047GG33
2G047GG47
2G047GH06
2G047GH13
(57)【要約】
【課題】重ね抵抗溶接の接合部の溶接状態の健全性を高い信頼性で判定することができる超音波探傷検査のデータ処理技術を提供する。
【解決手段】超音波検査装置は、複数の板状材35(35
1,35
2)を重ね合わせた被検査体30の重ね抵抗溶接における超音波探傷検査のエコー波25(25a,25b,25c)をデータ取得する取得部15と、エコー波25から被検査体30の底面36に対応する位置における第1ピークを検出する第1検出部11と、このエコー波25に基づいて板状材35(35
1,35
2)の重ね合わせ面が溶融凝固37しているか熱圧着38しているかを判定する判定部17と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状材を重ね合わせた被検査体の重ね抵抗溶接における超音波探傷検査のエコー波をデータ取得する取得部と、
前記エコー波から前記被検査体の底面に対応する位置における第1ピークを検出する第1検出部と、
前記エコー波に基づいて前記板状材の重ね合わせ面が溶融凝固しているか熱圧着しているかを判定する判定部と、を備える超音波検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波検査装置において、
前記判定部は、前記第1ピークの強度の減衰比に基づいて前記判定を実施する超音波検査装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の超音波検査装置において、
前記エコー波から前記重ね合わせ面に対応する位置における第2ピークを検出する第2検出部を備え、
前記判定部は、前記第1ピークと前記第2ピークとの強度の比率に基づいて前記判定を実施する超音波検査装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波検査装置において、
前記板状材の重ね合わせ面のうち接触面における前記エコー波の第3ピークを検出する第3検出部を備える超音波検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波検査装置において、
前記被検査体を平面視した領域を区画した複数の画素の各々に対応する前記エコー波を関連付けする関連付部と、
前記第1ピークが検出された前記画素を第1発色させ、前記第3ピークが検出された前記画素を第3発色させる画像生成部と、を備える超音波検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波検査装置において、
前記被検査体で重ね合わされる板状材が3枚以上である場合、前記第3発色する前記画素は、異なる前記接触面のそれぞれに応じてさらに色分けされる超音波検査装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の超音波検査装置において、
前記画像生成部は、前記熱圧着が検出された前記画素を第2発色させる超音波検査装置。
【請求項8】
複数の板状材を重ね合わせた被検査体の重ね抵抗溶接における超音波探傷検査のエコー波をデータ取得するステップと、
前記エコー波から前記被検査体の底面に対応する位置における第1ピークを検出するステップと、
前記エコー波に基づいて前記板状材の重ね合わせ面が溶融凝固しているか熱圧着しているかを判定するステップと、を含む超音波検査方法。
【請求項9】
コンピュータに、
複数の板状材を重ね合わせた被検査体の重ね抵抗溶接における超音波探傷検査のエコー波をデータ取得するステップ、
前記エコー波から前記被検査体の底面に対応する位置における第1ピークを検出するステップ、
前記エコー波に基づいて前記板状材の重ね合わせ面が溶融凝固しているか熱圧着しているかを判定するステップ、を実行させる超音波検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、重ね抵抗溶接における探傷データ処理に係る超音波検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
重ね抵抗溶接(スポット溶接等)は、重ね合わせた2枚以上の板状材を電極棒で挟んで加圧しつつ電流を流し、その接触面に発生する抵抗熱により、この挟まれた部分の金属を溶融凝固させて接合する技術である。そして、この溶融凝固させた接合部(通称:ナゲット)の溶接状態や溶接欠陥の有無を非破壊検査するために、超音波による探傷検査が広く実施されている。
【0003】
超音波は、その伝播し易さを表す音響インピーダンスの差が大きい界面で反射するという性質を持つ。このため、重ね合わされた板状材の界面のうち非接合の界面は、音響インピーダンスの差が大きいため、超音波は通過せずに反射する。一方において接合された界面は、音響インピーダンスの差が小さいため、超音波は反射せずに通過する。これにより、健全なナゲットが形成されているか否かの判断は、表面から超音波を入射させ底面からのエコー波が検出されたか否かに基づいて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、音響インピーダンスの差が小さく超音波が通過する界面であっても、重ね合わせ面が溶融凝固ではなく単に熱圧着しているに過ぎないケースもある。そのような熱圧着した界面が広く存在する接合部は、溶接状態が不健全であるといえるが、正確に判断することが困難であった。
【0006】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、重ね抵抗溶接の接合部の溶接状態の健全性を高い信頼性で判定することができる超音波検査技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る超音波検査装置において、複数の板状材を重ね合わせた被検査体の重ね抵抗溶接における超音波探傷検査のエコー波をデータ取得する取得部と、前記エコー波から前記被検査体の底面に対応する位置における第1ピークを検出する第1検出部と、前記エコー波に基づいて前記板状材の重ね合わせ面が溶融凝固しているか熱圧着しているかを判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態により、重ね抵抗溶接の接合部の溶接状態の健全性を高い信頼性で判定することができる超音波検査技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る超音波検査装置の構成図。
【
図2】第1実施形態で適用される被検査体の断面図。
【
図3】重ね合わせ面のうち溶融凝固した部位を通過したエコー波を検出したグラフ。
【
図4】重ね合わせ面のうち熱圧着した部位を通過したエコー波を検出したグラフ。
【
図5】重ね合わせ面のうち接触面を反射したエコー波を検出したグラフ。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る超音波検査装置の構成図。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る超音波検査装置の構成図。
【
図8】(A)第3実施形態で適用される被検査体の断面図、(B)被検査体の溶接部において接触面の周縁を表示した検査画面、(C)さらに熱圧着の周縁を表示した検査画面。
【
図9】各実施形態に係る超音波検査方法及び超音波検査プログラムのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る超音波検査装置10Aの構成図である。
図2は、第1実施形態で適用される被検査体30の断面図である。このように超音波検査装置10Aは、複数の板状材35(35
1,35
2)を重ね合わせた被検査体30の重ね抵抗溶接における超音波探傷検査のエコー波25(25a,25b,25c)をデータ取得する取得部15と、エコー波25から被検査体30の底面36に対応する位置における第1ピーク21(21
1,21
2,21
3…)を検出する第1検出部11と、このエコー波25に基づいて板状材35(35
1,35
2)の重ね合わせ面が溶融凝固37しているか熱圧着38しているかを判定する判定部17と、を備えている。
【0011】
重ね抵抗溶接は、スポット溶接、プロジェクション溶接、シーム溶接等のように、重ね合わせた2枚以上の板状材35(351,352)を電極棒で挟んで加圧しつつ電流を流し、その接触面に発生する抵抗熱により、この挟まれた部分の金属を溶融凝固させて接合する技術である。なお、本実施形態に適用される板状材35の材質は金属である場合の他に、絶縁性を示す樹脂材料等も含まれる。また板状材35の形態も二次元的な平面板である場合の他に、三次元的な立体板である場合も含まれる。
【0012】
超音波探傷検査を実施する装置は、超音波を送受信する複数の小型の圧電素子を二次元配列させたフェーズドアレイ方式が好適に採用される。このフェーズドアレイ方式による超音波探傷検査は、配列させた複数の圧電素子で超音波を送受信することにより、アレイプローブを動かすことなく、被検査体30の任意の位置におけるエコー波25をデータ取得することができる。
【0013】
さらにこのフェーズドアレイ方式では、複数の圧電素子で受信された超音波信号を開口合成処理することにより、検出感度及び空間分解能に優れたエコー波25を得ることができる。ここで開口合成処理とは、被検査体30の内部の3次元画像化領域をメッシュで区画し、それぞれのメッシュにおいて、全て圧電素子で受信した電気信号を、対応させた伝播時間データに従って合成処理する技術である。
【0014】
また超音波探傷検査の方式は、上述したフェーズドアレイ方式に限定されるものではなく、単眼方式を採用することもできる。単眼方式が採用される場合は、被検査体30の表面でプローブ走査して探傷試験することになる。
【0015】
図3は重ね合わせ面のうち溶融凝固37した部位を通過したエコー波25aを検出したグラフである。
図4は重ね合わせ面のうち熱圧着38した部位を通過したエコー波25bを検出したグラフである。
図5は重ね合わせ面のうち接触面39を反射したエコー波25cを検出したグラフである。
【0016】
超音波は、その伝播し易さを表す音響インピーダンスの差が大きい界面で反射するという性質を持つ。このため、重ね合わされた板状材35(351,352)の界面のうち非接合の接触面39は、空気層が介在して音響インピーダンスの差が大きいため、超音波は通過せずに反射する。一方において溶融凝固37や熱圧着38した部位は、空気層が介在しないために、超音波は反射せずに通過する。
【0017】
取得部15は、複数の板状材35の重ね合わせ方向を伝播するエコー波25をデータ取得する。そして取得部15は、被検査体30の平面視における任意で複数のポイントP(Pa,Pb,Pc…)において受信されるエコー波25を取得することができる。つまりエコー波25は、受信したポイントPにおける深さ方向の被検査体30の重ね合わせ面の状態を反映している。
【0018】
第1検出部11は、被検査体30の底面36に対応する位置における第1ピーク21(211,212,213…)をエコー波25から検出する。深さ方向に溶融凝固37や熱圧着38が形成されているポイントP(Pa,Pb)のエコー波25(25a,25b)は、被検査体30の表面34と底面36の間を繰り返し反射する。このため第1ピーク21(211,212,213…)は、表面34と底面36の距離間隔(w1+w2-s1-s2)に対応する時間間隔t1で検出される。ここで、w1,w2は板状材35(351,352)の厚さを表し、s1,s2は溶接用電極による打痕部の深さを表している。
【0019】
表面34と底面36の距離間隔(w1+w2-s1-s2)と、第1ピーク21の時間間隔t1とは、被検査体30における超音波の伝播速度Vとして次式で表される。ここでw1,w2,s1,s2,Vは、他の計測手段により得られる既知の量であるため、第1ピーク21の時間間隔t1を予め計算しておくことができる。
2×(w1+w2-s1-s2)=V×t1
【0020】
第1検出部11では、設定した閾値(図示略)を超え、かつ時間間隔t1であるエコー波25のピークを、第1ピーク21(211,212,213…)として検出する。このような第1ピーク21が検出されるポイントP(Pa,Pb)では、底面36からのエコー波25に由来するものであるために、その深さ方向には溶融凝固37又は熱圧着38が形成されていることになる。
【0021】
なお
図5に示すように、接触面39からのエコー波25cの第3ピーク23(23
1,23
2,23
3…)の時間間隔t
3は、底面36からのエコー波25a,25bの第1ピーク21(21
1,21
2,21
3…)の時間間隔t
1とは異なる。よって、ピークが時間間隔t
1以外で検出されるエコー波25は、接触面39もしくは溶接欠陥(図示略)からの反射に由来するものであるといえる。
【0022】
判定部17は、エコー波25の第1ピーク21(21
1,21
2,21
3…)の強度の減衰比に基づいて板状材35(35
1,35
2)の重ね合わせ面が溶融凝固37しているか熱圧着38であるかを判定する。ここで
図3において、溶融凝固37を通過したエコー波25aの第1ピーク21を結んだ稜線26を一点鎖線で示している。そして
図4において、熱圧着38を通過したエコー波25bの第1ピーク21を結んだ稜線27を二点鎖線で示している。
【0023】
二つの稜線26,27を対比すると、エコー波25bは、熱圧着38を通過することで、繰り返し反射する第1ピーク21の強度の減衰比が大きくなることが判る。なお第1ピーク21の強度の減衰比は、複数の第1ピーク21(211,212,213…)に基づいたり、指定した二本の第1ピーク21に基づいたりして演算することができる。なお、溶融凝固37であるか熱圧着38であるかを識別する減衰比の閾値は、破壊試験結果等を参照して予め実験的に決定したり、エコー波25を取得するポイントPを少しずつ移動して演算される減衰比の変化の不連続点をサーチしたりすることで決定することができる。
【0024】
表示部18は、重ね抵抗溶接を実施した被検査体30の表面34の指定したポイントPにおける深さ方向の溶接状態に関する情報を表示する。つまり、指定したポイントPの深さ方向に位置する重ね合わせ面が、溶融凝固37しているか熱圧着38しているかもしくは接触面39になっているかを表示して、検査員に認識させることができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に
図6、
図2及び
図4を参照して本発明における第2実施形態について説明する。
図6は本発明の第2実施形態に係る超音波検査装置10Bの構成図である。なお、
図6において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0026】
このように超音波検査装置10Bは、超音波探傷検査のエコー波25(25a,25b,25c)をデータ取得する取得部15と、エコー波25から被検査体30の底面36に対応する位置における第1ピーク21(211,212,213…)を検出する第1検出部11と、エコー波25から重ね合わせ面に対応する位置における第2ピーク22(221,222,223…)の強度を検出する第2検出部12とを備え、判定部17はこのエコー波25の第1ピーク21の強度と第2ピーク22の強度との比率に基づいて板状材35(351,352)の重ね合わせ面が溶融凝固37しているか熱圧着38しているかを判定する。
【0027】
第2検出部12は、被検査体30の熱圧着38に対応する位置における第2ピーク22(22
1,22
2,22
3…)をエコー波25から検出する。つまり第2検出部12では、第1ピーク21(21
1,21
2,21
3…)から時間間隔t
2である第2ピーク22(22
1,22
2,22
3…)をエコー波25bから検出する。深さ方向に溶融凝固37が形成されているポイントP
aでは、エコー波25aは途中で部分反射することがない。このためこのポイントP
aでは、
図3に示すように、表面34と底面36の間の繰り返し反射である第1ピーク21(21
1,21
2,21
3…)の間で第2ピーク22は検出されず、ノイズ波形しか検出されない。
【0028】
他方において、深さ方向に熱圧着38が形成されているポイントP
bでは、エコー波25bは部分反射する。このためこのポイントP
bでは、
図4に示すように、隣り合う第1ピーク21(21
1,21
2,21
3…)の間の熱圧着38に対応する位置に、第2ピーク22がノイズ波形に重畳して検出される。
【0029】
判定部17は、複数のうちいずれか一つの第1ピーク21の強度と複数のうちいずれか一つの第2ピーク22の強度との比率に基づいて、板状材35(351,352)の重ね合わせ面が溶融凝固37しているか熱圧着38であるかを判定する。これは、第2ピーク22の強度は、ノイズ波形と比べて僅差であるため、第2ピーク22を特定するための閾値をそれ単独で設定することは困難なためである。なお、強度比率を演算するために選択される第1ピーク21及び第2ピーク22は予め固定されている。
【0030】
熱圧着38を通過しないエコー波25a(
図3)と通過するエコー波25b(
図4)を対比すると、エコー波25bは、熱圧着38を通過することで、対応する位置に形成される第2ピーク22の強度が大きくなることが判る。なお、溶融凝固37であるか熱圧着38であるかを識別する強度比率の閾値は、破壊試験結果等を参照して予め実験的に決定したり、エコー波25を取得するポイントPを少しずつ移動して演算される強度比率の変化の不連続点をサーチしたりすることで決定することができる。
【0031】
(第3実施形態)
次に
図7及び
図8(A)(B)並びに
図2~
図5を参照して本発明における第3実施形態について説明する。
図7は本発明の第3実施形態に係る超音波検査装置10Cの構成図である。
図8(A)は第3実施形態で適用される被検査体30の断面図である。
図8(B)は被検査体30の溶接部において接触面39の周縁を表示した検査画面である。なお、
図7において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0032】
このように超音波検査装置10Cは、超音波探傷検査のエコー波25(25a,25b,25c)をデータ取得する取得部15と、エコー波25から被検査体30の底面36に対応する位置における第1ピーク21(21
1,21
2,21
3…)を検出する第1検出部11と、このエコー波25に基づいて板状材35(35
1,35
2,35
3)の重ね合わせ面が溶融凝固37しているか熱圧着38(38
1,38
2)しているかを判定する判定部17とを備えている。なお第3実施形態の超音波検査装置10Cにおいて、第2実施形態(
図6)で説明したように、第2検出部12で第2ピーク22(22
1,22
2,22
3…)の強度を検出し、重ね合わせ面が溶融凝固37しているか熱圧着38しているかを判定してもよい。
【0033】
そして超音波検査装置10Cは、さらに、板状材35の重ね合わせ面のうち接触面39(391,392)におけるエコー波25cの第3ピーク23(231,232,233…)を検出する第3検出部13と、被検査体30を平面視した領域40を区画した複数の画素の各々に対応するエコー波25を関連付けする関連付部28と、第1ピーク21が検出された画素を第1発色41させ、第3ピーク23が検出された画素を第3発色43(431,432)させる画像生成部29と、を備えている。
【0034】
ここで
図8(A)に示すように、被検査体30の重ね合わされる板状材35(35
1,35
2,35
3)が3枚以上である場合、第3発色43(43
1,43
2)する画素は、異なる接触面39(39
1,39
2)のそれぞれに応じてさらに色分けされている。
【0035】
第3検出部13は、板状材35の重ね合わせ面のうち空気層が介在する接触面39(391,392)におけるエコー波25cの第3ピーク23(231,232,233…)を検出する。なお重ね合わされる板状材35がn枚である場合、接触面39の数はn-1となる。このため、いずれの接触面39であるかを特定するのに必要となる第3ピーク23の時間間隔tの数も、n-1となる。
【0036】
関連付部28は、領域40を区画した複数の画素の各々を上述したポイントPとみなし、対応するエコー波25に関連付ける。このため取得部15は、領域40を区画した複数の画素の各々に対応するエコー波25を取得することになる。
【0037】
画像生成部29は、第1ピーク21が検出された画素を第1発色41させる。これにより、
図8(B)に示すように、被検査体30の上面視において、溶融凝固37もしくは熱圧着38が形成されている重ね合わせ面の領域は第1発色41で表示される。そして、第1発色41で表示された領域の画素のエコー波25aをさらに解析することで、熱圧着38であるか否かを判定できる。
【0038】
ここで、被検査体30の上面視において、表面34を持つ板状材351で接触面391が形成されている重ね合わせ面の領域は、第3発色432で表示される。さらにこの表面34を持つ板状材351で熱圧着381又は溶融凝固37が形成され、かつ二層目の板状材352で接触面392が形成されている重ね合わせ面の領域は、第3発色431で表示される。そして、第1発色41及び第3発色431で表示された領域の画素のエコー波25a,25bをさらに解析することで、熱圧着38(381,382)であるか否かを判定できる。
【0039】
図8(C)はさらに熱圧着38(38
1,38
2)の周縁を表示した検査画面である。このように画像生成部29は、熱圧着38(38
1,38
2)がされた画素を第2発色42(42
1,42
2)させることができる。そして、表示部18は、重ね抵抗溶接を実施した被検査体30を上面視した領域40の構成画素における深さ方向の溶接状態に関する情報を表示する。つまり、溶接部の領域40を上面から透視して、溶融凝固37しているか熱圧着38しているかもしくは接触面39になっているかの平面情報を表示して、検査員に認識させることができる。
【0040】
図9は、各実施形態に係る超音波検査方法及び超音波検査プログラムのフローチャートである(適宜、
図8参照)。まず、複数の板状材35(35
1,35
2,35
3)を重ね合わせた被検査体30の重ね抵抗溶接における超音波探傷検査のエコー波25(25a,25b,25c)をデータ取得する(S11)。そして、これらエコー波25から被検査体30の底面36に対応する位置における第1ピーク21(21
1,21
2,21
3…)(
図3,
図4)を検出する(S12;Yes)。被検査体30を平面視した領域40を区画した複数の画素のうち、判定したエコー波25に関連付けした画素を第1発色41させる(S13)。
【0041】
さらに、このエコー波25に基づいて板状材35(351,352,353)の重ね合わせ面が溶融凝固37しているか熱圧着38しているかを判定する(S16)。そして、熱圧着38と判定された場合は、画素を第2発色42させる(S17)。この判定は、エコー波25の第1ピーク21(211,212,213…)の強度の減衰比や、板状材35(351,352,353)の重ね合わせ面に対応する位置における第2ピーク22(221,222,223…)の強度に基づいて行われる。
【0042】
そして、第1ピーク21(211,212,213…)が検出されない場合(S12;No)、接触面39(391,392)におけるエコー波25cの第3ピーク23(231,232,233…)を検出する(S14)。なお重ね合わされる板状材35が3枚以上で接触面39が複数ある場合、第3ピーク23の時間間隔tに基づいて、第3ピーク23がいずれの接触面39からのエコー波25cであるかが特定される。
【0043】
そして、判定したエコー波25に関連付けした画素を第3発色43(431,432)させる(S15)。さらに、このエコー波25に基づいて板状材35(351,352,353)の重ね合わせ面が溶融凝固37しているか熱圧着38しているかを判定する(S16)。そして、熱圧着38と判定された場合は、画素を第2発色42させる(S17)。
【0044】
次に別の画素に関連付けしたエコー波25に関し、上述した(S11)から(S17)の処理を繰り返し、領域40を区画した全ての画素に対してデータ処理を行う(S18;Yes,No)。
【0045】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の超音波検査装置によれば、被検査体を構成する板状材の重ね合わせ面が溶融凝固しているか熱圧着しているかを判定ることにより、重ね抵抗溶接の接合部の溶接状態の健全性を高い信頼性で判定することが可能となる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0047】
以上説明した超音波検査装置は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、プロセッサを搭載した通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。さらにこの超音波検査装置は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【0048】
またデータ処理プログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。さらにこのプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10(10A,10B,10C)…超音波検査装置、11…第1検出部、12…第2検出部、13…第3検出部、15…取得部、17…判定部、18…表示部、21…第1ピーク、22…第2ピーク、23…第3ピーク、25(25a,25b,25c)…エコー波、26…第1稜線、27…第2稜線、28…関連付部、29…画像生成部、30…被検査体、34…表面、35…板状材、36…底面、37…溶融凝固、38…熱圧着、39…接触面、40…領域、41…第1発色、42…第2発色、43…第3発色。