(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050997
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】搬送カート配車支援装置および方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230404BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161411
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】寧 鋭
(72)【発明者】
【氏名】久継 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】
より搬送カートの使用方法、特に、移動経路に即した配車支援を可能とすることを課題とする。
【解決手段】
上記の課題を解決するために、本発明における複数の搬送カート5から利用者に対して、配車を行うための搬送カート配車支援装置1は、前記複数の搬送カート5それぞれの位置および充電率を記憶する記憶部18と、利用者からの配車要求を受け付ける入力部11と、各搬送カート5について前記配車要求に応じた、搬送カート5が自律走行を行う自律走行経路を特定する経路特定部12と、各搬送カート5の前記自律走行経路の走行距離を示す自律走行距離を、前記位置を用いて算出する距離算出部13と、前記自律走行距離および前記充電率に基づいて、配車する搬送カート5を決定する配車決定部14を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送カートから利用者に対して、配車を行うための搬送カート配車支援装置において、
前記複数の搬送カートそれぞれの位置およびエネルギー残量を記憶する記憶部と、
利用者からの配車要求を受け付ける入力部と、
各搬送カートについて前記配車要求に応じた、搬送カートが自律走行を行う自律走行経路を特定する経路特定部と、
各搬送カートの前記自律走行経路の走行距離を示す自律走行距離を、前記位置を用いて算出する距離算出部と、
前記自律走行距離および前記エネルギー残量に基づいて、配車する搬送カートを決定する配車決定部を有する搬送カート配車支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送カート配車支援装置において、
前記経路特定部は、前記自律走行経路における前記搬送カートの帰還場所を、前記エネルギー残量に応じて特定する搬送カート配車支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送カート配車支援装置において、
前記経路特定部は、前記エネルギー残量に応じて、前記搬送カートの集積場所もしくは前記搬送カートの一時保管場所のいずれかを、前記帰還場所として特定する搬送カート配車支援装置。
【請求項4】
請求項2に記載の搬送カート配車支援装置において、
前記記憶部は、前記位置および前記エネルギー残量を更新して記憶し、
前記経路特定部は、配車された前記搬送カートの自律走行の際に、更新された前記位置および前記エネルギー残量を用いて、前記帰還場所を動的に特定する搬送カート配車支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送カート配車支援装置において、
前記経路特定部は、決定された帰還場所を、配車された前記搬送カートの自律走行の際に変更する搬送カート配車支援装置。
【請求項6】
請求項1に記載の搬送カート配車支援装置において、
さらに、前記搬送カートの需要量についての利用予測を行う利用予測部を有し、
前記経路特定部は、前記利用予測に応じた、搬送カートが自律走行を行う自律走行経路を予測し、
前記距離算出部は、予測された前記自律走行経路の自律走行距離を、前記位置を用いて予測し、
前記配車決定部は、予測された前記自律走行距離および前記エネルギー残量に応じて、前記搬送カートの配置場所を決定する搬送カート配車支援装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の搬送カート配車支援装置において、
さらに、算出された前記自律走行距離および前記エネルギー残量を用いて、前記複数の搬送カートのそれぞれにおける、前記自律走行経路の帰還場所までの自律走行可能性を示す自律走行評価値を算出する自律走行評価値算出部を有し、
前記配車決定部は、算出された当該自律走行評価値に応じて、配車する搬送カートを決定する搬送カート配車支援装置。
【請求項8】
請求項1に記載の搬送カート配車支援装置において、
前記経路特定部は、あらかじめ指定された経由地点を巡回する配車要求に応じて、複数の搬送カートのエネルギー残量に応じた帰還できる条件に基づいて、前記自律走行経路を分割自律走行経路に分割し、前記複数の搬送カートそれぞれを前記分割自律走行経路に割り当てることで、前記複数の搬送カートが分担して前記自律走行経路を巡回することを可能とする搬送カート配車支援装置。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送カート配車支援装置において、
前記経路特定部は、前記分割自律走行経路に、所定の順序で前記複数の搬送カートそれぞれを割り当てて配車を行う処理と、前記分割自律走行経路に、並行して前記複数の搬送カートそれぞれを割り当てて配車を行う処理を選択的に実行する搬送カート配車支援装置。
【請求項10】
請求項7に記載の搬送カート配車支援装置において、
さらに、前記搬送カートの需要量および前記搬送カートの稼働範囲内におけるエレベーターの稼働状況データに基づいて前記エレベーターの需要量についての利用予測を行う利用予測部を有し、
前記自律走行評価値算出部は、前記エレベーターの需要量に応じた自律走行評価値を算出し、
前記配車決定部は、前記搬送カートの需要量が比較的多い時間帯以前で前記エレベーターの需要量が比較的少ない時間帯を配車時間として特定し、前記搬送カートの需要量が比較的多い時間帯に前記搬送カートの需要量が比較的多い利用場所に近接する帰還場所を配車場所として特定する搬送カート配車支援装置。
【請求項11】
搬送カート配車支援装置を用いて、複数の搬送カートから利用者に対して、配車を行うための搬送カート配車支援方法において、
記憶部に、前記複数の搬送カートそれぞれの位置およびエネルギー残量を記憶しておき、
入力部により、利用者からの配車要求を受け付け、
経路特定部により、各搬送カートについて前記配車要求に応じた、搬送カートが自律走行を行う自律走行経路を特定し、
距離算出部により、各搬送カートの前記自律走行経路の走行距離を示す自律走行距離を、前記位置を用いて算出し、
配車決定部により、前記自律走行距離および前記エネルギー残量に基づいて、配車する搬送カートを決定する搬送カート配車支援方法。
【請求項12】
請求項11に記載の搬送カート配車支援方法において、
前記経路特定部により、前記自律走行経路における前記搬送カートの帰還場所を、前記エネルギー残量に応じて特定する搬送カート配車支援方法。
【請求項13】
請求項12に記載の搬送カート配車支援方法において、
前記経路特定部により、前記エネルギー残量に応じて、前記搬送カートの集積場所もしくは前記搬送カートの一時保管場所のいずれかを、前記帰還場所として特定する搬送カート配車支援方法。
【請求項14】
請求項12に記載の搬送カート配車支援方法において、
前記記憶部に、前記位置および前記エネルギー残量を更新して記憶し、
前記経路特定部により、配車された前記搬送カートの自律走行の際に、更新された前記位置および前記エネルギー残量を用いて、前記帰還場所を動的に特定する搬送カート配車支援方法。
【請求項15】
請求項14に記載の搬送カート配車支援方法において、
前記経路特定部により、決定された帰還場所を、配車された前記搬送カートの自律走行の際に変更する搬送カート配車支援方法。
【請求項16】
請求項11に記載の搬送カート配車支援方法において、
搬送カート配車支援装置は、さらに、前記搬送カートの需要量についての利用予測を行う利用予測部を有し、
前記経路特定部により、前記利用予測に応じた、搬送カートが自律走行を行う自律走行経路を予測し、
前記距離算出部により、予測された前記自律走行経路の自律走行距離を、前記位置を用いて予測し、
前記配車決定部により、予測された前記自律走行距離および前記エネルギー残量に応じて、前記搬送カートの配置場所を決定する搬送カート配車支援方法。
【請求項17】
請求項11乃至16のいずれかに記載の搬送カート配車支援方法において、
さらに、搬送カート配車支援装置は、自律走行評価値算出部を有し、
前記自律走行評価値算出部により、算出された前記自律走行距離および前記エネルギー残量を用いて、前記複数の搬送カートのそれぞれにおける、前記自律走行経路の帰還場所までの自律走行可能性を示す自律走行評価値を算出し、
前記配車決定部により、算出された当該自律走行評価値に応じて、配車する搬送カートを決定する搬送カート配車支援方法。
【請求項18】
請求項11に記載の搬送カート配車支援方法において、
前記経路特定部により、あらかじめ指定された経由地点を巡回する配車要求に応じて、複数の搬送カートのエネルギー残量に応じた帰還できる条件に基づいて、前記自律走行経路を分割自律走行経路に分割し、前記複数の搬送カートそれぞれを前記分割自律走行経路に割り当てることで、前記複数の搬送カートが分担して前記自律走行経路を巡回することを可能とする搬送カート配車支援方法。
【請求項19】
請求項18に記載の搬送カート配車支援方法において、
前記経路特定部により、前記分割自律走行経路に、所定の順序で前記複数の搬送カートそれぞれを割り当てて配車を行う処理と、前記分割自律走行経路に、並行して前記複数の搬送カートそれぞれを割り当てて配車を行う処理を選択的に実行する搬送カート配車支援方法。
【請求項20】
請求項17に記載の搬送カート配車支援方法において、
前記搬送カート配車支援装置は、さらに、前記搬送カートの需要量および前記搬送カートの稼働範囲内におけるエレベーターの稼働状況データに基づいて前記エレベーターの需要量についての利用予測を行う利用予測部を有し、
前記自律走行評価値算出部により、前記エレベーターの需要量に応じた自律走行評価値を算出し、
前記配車決定部により、前記搬送カートの需要量が比較的多い時間帯以前で前記エレベーターの需要量が比較的少ない時間帯を配車時間として特定し、前記搬送カートの需要量が比較的多い時間帯に前記搬送カートの需要量が比較的多い利用場所に近接する帰還場所を配車場所として特定する搬送カート配車支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行が可能な移動体、その中でも特に、商品等の積載物を積載する台車や搬送カート(以下、単に搬送カート)の配車を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動運転や運転支援技術の開発がなされ、これに伴い、自律走行が可能な移動体の配車技術も提案されている。ここで、移動体においては、燃料や電気といったエネルギーを用いて、動力を発生している。このため、移動体のエネルギー量を考慮して、配車を行う必要がある。このような、エネルギーを考慮した配車として、特許文献1が提案されている。
【0003】
特許文献1は、「配車サービスで用いる自律走行車両の稼働率を上げることと走行中の電欠を防ぐこととを両立させる」ことを課題としている。この課題に対応するために、特許文献1には、「利用者から配車要求を受け付け、受け付けた配車要求に合致した自律走行車両40を複数の自律走行車両40の中から選択して配車する配車システムである。本発明に係る配車システムで用いる複数の自律走行車両40には、外部より充電できる車載電池43をエネルギー源とする複数の電池搭載車両40が含まれる。これら複数の電池搭載車両40のそれぞれは、車載電池の充電率が低下したら充電ステーション50にて充電を行う。この充電を計画する手段として、本発明に係る配車システムは充電計画部22を備える。充電計画部22は、充電ステーション50における車載電池43の上限充電率を時間帯によって変化させる。」ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、特許文献1では、時間帯によって、充電ステーションでの上限充電率を変えている。このように、時間帯によって一律に上限充電帯を変更すると、その時間帯の特性に合わない使用方法使用する場合には、充電不足や長すぎる充電時間となる移動体が生じる恐れがある。そこで、本発明では、より移動体の使用方法、特に、移動経路に即した配車支援を可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記の課題を鑑み、予定の移動経路および搬送カート(移動体)のエネルギー残量に応じて、配車支援を行う。
【0007】
より具体的には、複数の搬送カートから利用者に対して、配車を行うための搬送カート配車支援装置において、前記複数の搬送カートそれぞれの位置およびエネルギー残量を記憶する記憶部と、利用者からの配車要求を受け付ける入力部と、各搬送カートについて前記配車要求に応じた、搬送カートが自律走行を行う自律走行経路を特定する経路特定部と、各搬送カートの前記自律走行経路の走行距離を示す自律走行距離を、前記位置を用いて算出する距離算出部と、前記自律走行距離および前記エネルギー残量に基づいて、配車する搬送カートを決定する配車決定部を有する搬送カート配車支援装置である。
【0008】
また、本発明には、搬送カート配車支援装置を用いた搬送カート配車支援方法も含まれる。さらに、搬送カート配車支援装置をコンピュータとして機能させるプログラムやこのプログラムを格納した記憶媒体も、本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より移動体の使用方法、特に、移動経路に即した配車支援を可能とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の実施形態を集合住宅(マンション)に適用した例を示す図である。
【
図1B】本発明の実施形態を商業施設に適用した例を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1および2における配車支援処理を実行するための搬送カート配車支援システムのシステム構成図である。
【
図3】本発明の実施例1および2における搬送カート配車支援装置のハードウエア構成図である。
【
図4】本発明の実施例1および2における搬送カートの構成図である。
【
図5】実施例1における配車支援処理の処理フローを示すシーケンス図である。
【
図6】実施例2における配車支援処理の処理フローを示すフローチャートである。
【
図7】実施例1および2で用いられる搬送カート管理情報を示す図である。
【
図8】実施例2で用いられる利用実績情報を示す図である。
【
図9】実施例1で用いられる利用者情報を示す図である。
【
図10】実施例1および2で用いられる配車テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に説明する。本実施形態では、移動体の一種である搬送カートを例に説明する。この搬送カートは、エネルギーの一種として電気(蓄電池)を用いて、自律走行可能である。また、本実施形態では、搬送カートを、予定の移動経路とエネルギーの一種である充電量に応じた配車支援を行う。また、本実施形態は、様々な状況に適用できる。例えば、
図1Aは、本実施形態を集合住宅(マンション)に適用した例を示す図である。
【0012】
図1Aにおいて、マンション100には、搬送カート5用の充電ステーション101や充電ステーションを有する駐車場102が設けられている。これら、充電ステーション101や駐車場102が、搬送カート5を保管する集積場所(帰還場所)として管理されている。そして、利用者200は、駐車場102やエントランス・宅配ロッカーから荷物を運ぶために、複数の搬送カート5が利用できるようになっている。なお、充電ステーションには、充電機器6が設けられ、搬送カート5に対し充電可能である。
【0013】
そして、荷物の所有者である住民である利用者200が、エントランスや駐車場102などから、買い物した商品や宅配などの小包といった荷物を、搬送カート5に積載して自室まで運ぶ。買い物を行った場合、利用者200は、店舗から駐車場102まで自家用車201に載せて、マンション100まで帰宅する。また、インターネットショッピングなどで宅配サービスを利用した場合、利用者200は、エントランスに設置された宅配ボックスから荷物を取り出し、搬送カート5で自宅まで荷物を運ぶ。以降、搬送カート5は、集積場所(帰還場所)に自律走行で帰還することになる。なお、本実施形態のマンション100には、管理人が駐在しているものとする。
【0014】
また、マンション100の各階には、使用された搬送カート5を一時的に保管する一時保管場所が設けられている。この一時保管場所は、各階にかぎらず、また、充電機器6を設けてもよいし、設けなくともよい。
【0015】
また、
図1Bは、本実施形態を商業施設(スーパーマーケットやショッピングモール等)に適用した例を示す図である。
図1Bにおいて、商業施設300には、搬送カート5用の充電ステーション302や充電ステーションを有する駐車場303が設けられている。これら、充電ステーション302や駐車場303が、搬送カート5を保管する集積場所(帰還場所)として管理されている。また、利用者200は、出入口301から商業施設300に入場し、充電ステーション302の搬送カート5に積載する。そして、利用者200は、レジ304で会計を行い、会計済の商品を搬送カート5に乗せて、駐車場303まで運ぶ。以降、搬送カート5は、集積場所(帰還場所)に自律走行で帰還することになる。なお、本実施形態の商業施設300には、搬送カート5を管理する管理人が在席しているものとする。なお、本例でもなお、充電ステーションには、充電機器6が設けられ、搬送カート5に対し充電が可能である。
【0016】
以上の
図1Aおよび
図1Bに示す例において、搬送カート5を、利用者200に利用しやすい配車を実現するために、後述の実施例1および2を行う。なお、以上の実施形態では、搬送カート5の集積場所を、充電ステーション(101、302)として説明したが、充電ステーションでなくともよい。つまり、集積場所には、充電機器6は必須ではない。
【0017】
また、本実施形態には、配車要求があった場合における配車処理を行う実施例1と、搬送カートの利用実績に応じた事前配車処理を行う実施例2を含む。以下、各実施例を、図面を参照して説明する。
【実施例0018】
実施例1は、配車要求があった場合における配車処理を行う。以下、実施例1について、構成、処理フローの順で説明する。
<構成>
以下、本実施例の構成について説明するが、実施例1と2の構成はほぼ共通し、共用可能であるため、まとめて説明する。
図2は、実施例1および2における配車支援処理を実行するための搬送カート配車支援システムのシステム構成図である。
図2において、搬送カート配車支援システムは、搬送カート配車支援装置1、利用者端末2、管理人装置3、搬送カート5および充電機器6が、ネットワーク4を介して接続されている。以下、これら各装置の概要をまず説明し、その詳細については処理フローを説明する際に後述する。なお、搬送カート配車支援装置1や搬送カート5については、その詳細を別途説明する。
【0019】
まず、搬送カート配車支援装置1は、本実施例の主たる処理を行うもので、サーバといったコンピュータで実現される。そして、搬送カート配車支援装置1は、入力部11、経路特定部12、距離算出部13、配車決定部14、利用予測部15、自律走行評価値算出部16、出力部17および記憶部18を有する。ここで、入力部11や出力部17は、配車支援に関する情報を入出力する。なお、記憶部18は、搬送カート配車支援装置1とは別構成で構成してもよい。
【0020】
次に、利用者端末2は、利用者200が利用する端末であり、スマートフォン、タブレット、PCなどで実現される。利用者端末2は、搬送カート5の配車やその利用のための本人確認、認証に用いられるプログラム(いわゆるアプリ)に従って、後述の処理を実行する。
【0021】
次に、管理人装置3は、管理人300が利用するコンピュータであり、配車の状況の確認や搬送カート5の位置を確認できる機能を有する。
【0022】
次に、搬送カート5は、荷物を積載し、車輪等を有し、利用者200の操作により荷物を搬送する。そして、本実施例の搬送カート5は、通信機能の他、自走機能を有する。
【0023】
次に、充電機器6は、いわゆる充電スタンドのように、搬送カート5の蓄電池に充電を行う機器である。ここで、充電ステーションには、これら充電機器6を複数設置されることが望ましい。充電機器6は、搬送カート5と有線あるいは非接触充電技術で接続し、搬送カート5に搭載されている蓄電池を充電する。あるいは、搬送カート5に搭載する蓄電池に対して直接接続して充電してもよい。この場合、充電ステーションは搬送カートに搭載する蓄電池の交換を行う機構を備えてもよく、あるいは管理人などの人手で蓄電池の交換を行ってもよい。 最後に、ネットワーク4は、上述の各装置を接続するものであり、インターネットで実現可能であるが、各種情報を送受信できればよい。このため、ネットワーク4の少なくとも一部をマンション100や商業施設300のローカルネットワークで実現してもよい。また、
図2では、利用者端末2や搬送カート5は無線通信を行っており、他は有線通信を行っているが、これに限定されない。さらに、充電機器6は、ネットワーク4と接続していなくともよい。
【0024】
次に、
図3は、実施例1および2における搬送カート配車支援装置1のハードウエア構成図である。搬送カート配車支援装置1は、ネットワークI/F81(ネットワークインタフェース)、処理装置82、主記憶装置83および補助記憶装置84を有し、これらはバスのような通信路で互いに接続されている。ここで、ネットワークI/F81は、ネットワーク4と接続し、
図2における入力部11および出力部17に該当する。
【0025】
次に、処理装置82は、CPUのようなプロセッサで実現され、後述するプログラムに従って、処理を実行する。また、主記憶装置83は、RAM(Random Access Memory)などで実現され、プログラムが処理装置82の処理に従って展開される。また、補助記憶装置84は、ROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)といったストレージで実現される。なお、これら主記憶装置83や補助記憶装置84は、
図2の記憶部18に相当する。
【0026】
そして、補助記憶装置84は、経路特定プログラム841、距離算出プログラム842、配車決定プログラム843、利用予測プログラム844、自律走行評価値算出プログラム845、搬送カート管理情報846、利用実績情報847、利用者情報848および配車テーブル849を記憶している。これらのうち、各プログラムは、ネットワーク4や他の記憶媒体を介して、搬送カート配車支援装置1に配布されることになる。このように、各プログラムは、記憶媒体に格納されることになる。また、各プログラムは一体で構成してもよい。また、各プログラムはネットワーク4で接続された他の情報機器で実行し、実行結果のみをネットワーク4を介して、主記憶装置83や補助記憶装置84に転送してもよい。
【0027】
ここで、各プログラムと同様の処理を実行する
図2に示す各部は、以下のとおりである。
経路特定部12:経路特定プログラム841
距離算出部13:距離算出プログラム842
配車決定部14:配車決定プログラム843
利用予測部15:利用予測プログラム844:
自律走行評価値算出部16:自律走行評価値算出プログラム845
また、搬送カート管理情報846は、搬送カート5ごとの、その位置および充電率を少なくとも含む搬送カートの状況を示す情報である。実施例1および2では、搬送カート管理情報846は、さらに、集積場所である帰還場所や利用履歴を含む。なお、利用履歴については、実施例2のみで用い、本実施例では省略することも可能である。また、充電率は、蓄電池における(絶対)充電残量や電圧等のエネルギー残量の一種であり、充電率の代わりもしくはこれと合わせて利用してもよい。
【0028】
次に、利用実績情報847は、日時、つまり、時間帯ごとに、各搬送カート5の利用実績を示す情報である。この利用実績としては、利用された経路を含む。また、この経路には、自律走行した自律走行経路と利用者による手動走行経路を分けて管理してもよい。なお、利用実績情報847は、実施例2でのみ用い、実施例1は省略可能である。
【0029】
次に、利用者情報848は、利用者200に関する情報であり、当該利用者200の搬送カート5の経路、利用場所に関する情報を示す。なお、利用者情報848は、実施例1のみで利用し、実施例2では省略してもよい。
【0030】
最後に、配車テーブル849は、搬送カート5ごとに、その配車状況を示す情報である配車状況としては、時間帯ごとのスケジュールでその予定を示すことが望ましい。なお、これら各情報の詳細は、各実施例のフローチャートを用いて処理フローと共に説明する。
【0031】
次に、
図4は、実施例1および2における搬送カート5の構成図である。搬送カート5は、かご部51、車輪52-1、52-2およびグリップ部53を主構成としている。かご部51は、荷物を積載する。また、車輪52-1、52-2は、利用者200の動作若しくは後述する駆動部57の動力により、搬送カート5を移動させる。また、グリップ部53は、利用者200により、搬送カート5を移動させるために握られる部分である。なお、本実施例では、かごを有するいわゆるカートで説明するが、実施例1および2は台車などの荷物を搬送する機能を有する装置に適用できる。
【0032】
また、搬送カート5は、リーダ54、通信部55、制御部56および駆動部57を有し、これらはバスなどの通信路を介して互いに接続されている。そして、リーダ54は、利用者端末2と近距離無線通信により接続され、各種情報を送受信する。また、通信部55は、無線通信によりネットワーク4と通信を行う。
【0033】
制御部56は、プログラムや専用回線により、搬送カート5の移動や通信などを制御すする。例えば、制御部56は、リーダ54と利用者端末2の通信により、搬送カート5を利用可能な状態とする。このために、例えば、制御部56が、搬送カート5のロックを解除する。このロックには、搬送カート5の図示しないブレーキをかけることや駆動部57の停止が含まれる。また、その名のとおり、搬送カート5の図示しない鍵をかけることも含まれる。なお、本実施例においては、通常では、搬送カート5は利用可能な状態とし、搬送カート5を利用可能な状態への制御については、配車処理(予約)がなされると、ロックを掛け、予約者以外が利用できない構成とする。この場合、予約者に限定してロックを解除できるようにする。
【0034】
また、駆動部57は、制御部56からの制御信号に従って、車輪52-1、52-2を駆動することで、自走機能を実現する。ここで、駆動部57には、モーターのような動力源と、蓄電池を含む。そして、蓄電池には、充電機器6から充電される。なお、充電機器6が、ネットワーク4と接続されている場合、充電機器6から搬送カート5の充電率を含む充電結果を通知しても良い。
【0035】
また、制御部56は、図示しないGPS機能といった位置把握機能により、搬送カート5の位置を特定する。また、制御部56は、蓄電池に対する充電率を検知する。そして、制御部56は、これら位置や充電率を、通信部55を用いて、ネットワーク4を介して、搬送カート配車支援装置1に適宜通知する。
【0036】
なお、リーダ54および制御部56の機能は、搬送カート5の帰還場所に設けられたカート管理装置で実現してもよい。この場合、本人確認がなされた場合、搬送カート5に設置されたロック(例えば、チェーンロック)が外れ、利用可能となる。さらに、リーダ54は、ICカードから本人情報を読み取って、制御部56がロックを解除する構成としてもよい。また、リーダ54の代わりに、暗号コードやパスコードを受け付ける構成を設けてもよい。また、マンション100の共有部分の鍵あるいは電子キーを受け付ける構成を設けてもよい。
【0037】
また更に、制御部56は、マンション100の地図情報を記憶し、これに基づき自律走行のための制御信号を出力する。この結果、搬送カート5は、自律走行が可能になるが、このために、図示しないセンサを設けることが望ましい。
【0038】
以上で、実施例1および2の構成を終わり、引き続き、本実施例の処理フローを、これで用いられる情報を参照して説明する。
<処理フロー>
以下、本実施例の処理フローについて説明するが、搬送カート配車支援装置1の処理主体については、
図2に示す各部を用いる。
図5は、本実施例における配車支援処理の処理フローを示すシーケンス図である。
図5において、まず、ステップS1において、利用者端末2は、利用者200からの入力に応じて、搬送カート配車支援装置1に配車要求を通知する。配車要求には、少なくとも利用者200を識別する利用者識別情報、利用時間および利用開始場所を含む。なお、配車要求には、荷物の搬送先などの利用終了場所を含めてもよい。なお、配車要求は予定を事前予約する形で登録しておいてもよく、また利用したい時刻に配車要求を発生させてもよい。
【0039】
次に、ステップS2において、搬送カート配車支援装置1の入力部11が、配車要求を受信する。次に、ステップS3において、経路特定部12が、配車要求に応じた搬送カート5の利用開始場所(出発地)および利用終了場所(目的地)を特定する。ここで、利用開始場所は、利用者200が荷物を積載する場所であり、
図1Aの駐車場102、エントランスホール・宅配ロッカーや
図1Bの出入口301、レジ304やサッカー台などが主に想定される。ただし、マンション100においては自宅である自室を出発地とする場合もある。この利用開始場所は、配車要求に含まれる情報を流用できる。
【0040】
また、利用終了場所は、荷物を下ろす場所などで搬送カート5の利用を終了する場所である。この例としては、
図1Aの自室(部屋)や
図2の駐車場303などが想定される。なお、マンション100において自室を出発地とする場合には、利用終了場所は駐車場102やエントランスホール、ゴミ収集場なども想定される。利用終了場所の特定は、配車要求に含まれる場合はこれを流用できる。但し、配車要求に利用終了場所が含まれない場合には、経路特定部12は、利用者識別情報を用いて、これを特定する。この特定について、以下説明する。経路特定部12は、利用者識別情報をキーに、利用者情報848を検索する。利用者情報848を、
図9に示す。利用者情報848は、利用者ごとに、その氏名、部屋番号、利用者識別情報および駐車場の有無を含む。また、駐車場102の有無に加えて駐車場102の位置を特定する情報を含めてもよい。これにより、より正確に利用開始場所および利用終了場所を特定することができる。ここで、経路特定部12は、配信要求に含まれる利用者識別情報に該当するレコードを、利用者情報848から特定する。そして、経路特定部12は、利用開始場所が自室、つまり、自宅以外である場合に、特定されたレコードの部屋番号の示す部屋を利用終了場所とする。あるいは、経路特定部12は、利用開始場所が自宅である場合に、エントランスホール、ゴミ捨て場、駐車場102など移動先候補となる場所のいずれかを利用終了場所とする。このとき、例えば、利用者200の自宅からもっとも移動距離が長い場所を利用終了場所とする。あるいは、利用者の過去の利用実績から統計的に利用終了場所を推定してもよい。また、
図9は、
図1Aのマンション100の例であり、
図1Bの商業施設の場合、利用者情報848として自家用車の有無を記録する。この場合、経路特定部12は、自家用車を有する利用者の場合、駐車場303を利用終了場所として特定する。また、利用者情報848は、自家用車の有無に加えて、駐車場の位置情報を駐車場と自動車の少なくとも一方に設置されたセンサあるいは利用者200による入力、あるいは利用者端末2に記録された位置情報から得て保持してもよい。この場合、駐車場303の位置として、実際に自動車が止まっている位置まで特定できる。また、経路特定部12は、自家用車を有さない利用者の場合、出入口301を利用終了場所として特定する。あるいは、商業施設の周辺に公共交通の駅や停車場がある場合には、駅や停車場を利用終了場所として特定してもよい。さらに、利用者識別情報にあらかじめ利用者が利用する交通手段を含めることで、より高精度で利用終了場所を特定することができる。
【0041】
次に、ステップS4において、経路特定部12が、搬送カート5がバッテリーの電気を利用して自律走行を行う自律走行経路を、地図情報を用いて特定する。このために、経路特定部12は、ステップS2で特定された利用開始場所および利用終了場所を用いる。この自律走行経路は、集積場所等から利用開始場所までの経路および利用終了場所から帰還する集積場所等の帰還場所までの経路である。なお、この地図情報は、搬送カート配車支援装置1が保持することが望ましい。
【0042】
自律走行経路の算出方法の例を示す。(1)マンション100での荷物の持ち出しの場合、利用者200の自室(例えば、5F)を利用開始場所となる。この場合、充電ステーション(あるいは搬送カート5が現に所在している場所)から5Fの当該利用者200の自室前までの経路(あるいは5Fに共有の搬送カート5の停留場がある場合は、前記停留場までの経路でも良い)と、利用終了場所の候補地の中で帰還場所である充電ステーションから最も遠い駐車場を利用終了場所の候補として、ここから帰還場所までの経路を合わせた2区間が自律走行経路とする。(2)駐車場102の呼び出しの場合、帰還場所である充電ステーションから最も遠い駐車位置を利用開始場所とする。
【0043】
あるいは利用者情報848に利用者の駐車位置情報が含まれる場合など駐車位置まで特定できる場合は、利用者の駐車位置情報に基づいて利用開始場所をより詳細に特定する。また、この場合利用終了場所は利用者情報848に含まれる当該利用者の部屋番号によって特定される部屋位置や当該階床の共有のカート停留場となる。この場合も充電ステーション(あるいは搬送カート5の現に所在する場所)から利用開始場所と、利用終了場所から充電ステーション(あるいは帰還すべき場所)を合わせた2区間が自律走行経路となる。なお、本実施例では(1)および(2)において、利用開始場所から利用終了場所は、利用者が搬送カートを手動で移動させることを前提としている。そのため、自律走行を行うのが、充電ステーション(あるいは搬送カート5が現に所在する場所)から利用開始場所と、利用終了場所から充電ステーション(あるいは搬送カート5が帰還すべき場所)の2区間に限定される。ただし、自律走行経路の算出方法はこれに限定されない。例えば、複数種類の搬送カート5などの移動体が運用されるマンション100においては、移動体の種類毎に異なる自律走行経路を特定する。例えば、荷物運搬時も自律走行を行う移動体においては、前記2区間に加えて、利用開始場所と利用終了場所間の移動経路を含めた全経路を自律走行経路とする。
【0044】
例えば、各部屋の玄関でゴミを回収し、ゴミ収集場までゴミを自律走行で運搬するサービスを提供する移動体の場合には、充電ステーションから利用開始場所である部屋前、部屋前から利用終了場所であるゴミ収集場、利用終了場所のゴミ収集場から帰還場所である充電ステーションまでの3区間ともに自律走行経路として特定する。
【0045】
さらに、移動体のサービスに応じて経由地点を設定し、各経由地点までの移動も加味した自律走行経路としてもよい。例えば、各階のゴミ収集場があり、各階のゴミ収集場のゴミを1Fなど特定階のゴミ収集場に集約する働きをする移動体の場合は、移動体は充電ステーションから利用開始場所である最上階のゴミ収集場へ移動した後、最上位のゴミ収集場から経由地点であるゴミを集約する階床のゴミ収集場所まで移動し、次の経由地点である最上階から1階床下の階床のゴミ収集場所へ移動し、さらにゴミを集約する階床のゴミ収集場所まで移動する。このように順にすべての階床のゴミ収集場を巡回し、最後に帰還場所である充電ステーションに帰還する。この間の経路はすべて自律走行経路として特定する。なお、このようなサービスを行う場合、階床の巡回順序は前記に限定しない。例えば、最下階から上の階に順次巡回してもよく、また各階のゴミ収集所のゴミの量などによって巡回する順序を決めてもよい。また、各階を必ず1回のみ経由するとは限らず、ゴミの量によって経由する回数をあらかじめ予測してゴミの量が多い階床は、移動体の積載量とゴミの量から経由回数を推定し、それに合わせて当該階床を複数階経由するような自律走行経路を特定してもよい。
【0046】
また、1台の移動体ですべてを行う必要はなく、例えば、半分の階床を巡回した段階で移動体のエネルギーが不足した場合には、エネルギー不足の前記移動体は充電ステーションへ帰還するように制御し、他の移動体を帰還するエネルギー不足の前記移動体がまだ巡回していない階床を順次巡回するように制御をおこなってもよい。また、あらかじめ巡回経路を分割し、複数の移動体にそれぞれ担当する巡回階床の経路を算出して割り当て、各移動体が並行して巡回するように自律走行経路を特定してもよい。つまり、経路特定部12が、エネルギー残量に応じた帰還できる条件に基づいて、自律走行経路を分割自律走行経路に分割し、複数の移動体それぞれを分割された分割自律走行経路に割り当てることで、複数の移動体が分担して自律走行経路を巡回することを可能とする。
【0047】
さらに、経路特定部12は、分割自律走行経路に、所定の順序で移動体のそれぞれを割り当てて配車を行う処理と、分割自律走行経路に、並行して複数の移動体それぞれを割り当てて配車を行う処理を選択的に実行する構成としてもよい。このことで、つまり、所定の順序の配車と並行的な配車を選択可能となる。
【0048】
次に、ステップS5において、距離算出部13は、特定された自律走行経路の距離を示す自律走行距離を、地図情報を用いて算出する。このことで、バッテリーの電気の消費量を推定できる。
【0049】
次に、ステップS6において、配車決定部14が、配車要求に含まれる利用時間における空きカートを配車テーブル849から検索する。
図10に、配車テーブル849を示す。配車テーブル849は、搬送カート5ごとに、帰還場所(集積場所)とスケジュールが記録されている。スケジュールは、時間帯ごとに、配車(予約)状況が記録される。ここで、配車決定部14は、配車要求に含まれる利用時間のスケジュールが「(空き)」の搬送カート5を空きカートとして抽出する。なお、帰還場所はあらかじめ定められた位置を継続的に利用してもよく、あるいは状況に合わせて各搬送カート5の帰還場所を動的に変更してもよい。また、スケジュールは固定の時間帯ではなく、利用開始時刻と利用終了時刻によって個別に定めてもよい。
【0050】
次に、ステップS7において、配車決定部14が、ステップS6で検索された空きカートの位置および充電率を、搬送カート管理情報846から用いて特定する。
図7は、本実施例で用いられる搬送カート管理情報846を示す図である。搬送カート管理情報846は、搬送カート5ごとの、その位置および充電率を少なくとも含む搬送カートの状況を示す情報であり、本実施例では、さらに、集積場所である帰還場所や利用履歴を含む。さらに複数種類の移動体が運用される状況においては、移動体の種類別ごとに搬送カート管理情報846のテーブルを保持する。あるいは搬送カート管理情報846に移動体の種類を特定する情報を追加してもよい。
【0051】
次に、ステップS8において、配車決定部14が、ステップS6で検索された空きカートについて、その充電率や位置に基づいてソートする。具体的には、配車決定部14は、充電率の多い順や利用開始位置に近い順でソートする。つまり、配車決定部14は、配車の優先順にソートする。このため、充電率や位置以外の情報を用いもよいし、これらを組み合わせてソートしてもよい。また、複数種類の移動体がある環境においては、利用者の用途を特定できる情報を配車用途に含めることで、前記用途に適さない移動体をソートから除外してもよい。これによって用途に適した移動体のみを選択することができる。
【0052】
次に、ステップS9において、自律走行評価値算出部16が、ソートされた順位の最も高い空きカートの自律走行評価値を算出する。この自律走行評価値とは、ステップS5で算出された自律走行距離を、該当の空きカートが完走できる可能性を示す指標である。このために、自律走行評価値算出部16は、該当の空きカートの充電率での自律走行可能な距離を、予め定められた計算式で算出する。そして、自律走行評価値算出部16は、これと算出された自律走行距離を比較して、自律走行評価値を算出する。ここで、自律走行評価値は、自律走行経路を走行した場合、充電率が0となる場合に1とし、まったく自律走行できない場合を0とし、自律走行が可能な距離に応じてその値を配分することが想定できる。
【0053】
なお、自律走行評価値の算出は、この例に限らず、統計処理などを用いて算出してもよい。なお、本実施例では、自律走行評価値算出部16が自律走行評価値を算出したが、配車決定部14で実行してもよい。また、自律走行評価値算出部16を配車決定部14に設けてもよい。
【0054】
また、自律走行評価値にほかの要素を含めてもよい。例えば、搬送カート5が移動するときに、可動範囲内のエレベーター、例えば、マンション100に設置されたエレベータを利用する場合に、エレベーターの稼働状況を自律走行評価値に含めてもよい。このために、自律走行評価値算出部16は、エレベーター稼働量(例えば、稼働率、稼働回数、稼働距離など)が高い場合は自律走行評価値を低くし、エレベーター稼働量が低い場合に自律走行評価値を高くする。つまり、自律走行評価値算出部16は、エレベーター稼働率に応じた自律走行評価値を算出する。このことによって、後述するステップS10において、配車決定部14が、エレベーター稼働率が低い配車を積極的に行うことができるようになる。
【0055】
次に、ステップS10において、配車決定部14が、自律走行評価値を用いて、ステップS4で特定された自律走行経路を該当の空きカートが自律走行可能かを判定する。ここでは、自律走行評価値が所定値と比較して判定することが望ましい。つまり、配車決定部14は、所定値以上の場合に可能と判定し、それ未満である場合には不可と判定する。この判定の結果、可能な場合(YES)、ステップS11に遷移する。また、不可の場合(NO)、ステップS9に戻り、ソート順が次の空きカートに対して、自律走行評価値算出部16が自律走行評価値を算出する。そして、自律走行可能と判定されるまで、ステップS9およびS10を繰り返す。なお、自律走行可能な空きカートがない場合には、配車決定部14は、出力部17を用いて、利用者端末2に搬送カート5の利用が不可と通知することが望ましい。利用者200への通知は、利用不可と合わせて、予測される利用可能な時刻を通知し、予約を受けてけるインターフェースを提供してもよい。予測される利用可能時間は、次に空き搬送カートがある時間帯あるいは、過去の利用履歴をもとに現在稼働中の利用が終了する見込み時間を利用してもよい。
【0056】
また、自律走行可能な空きカートがない場合には、自律走行経路の帰還場所を、利用終了場所により近い一時保管場所に帰還する経路に変更して、配車決定部14が、自律走行評価値算出部16に自律走行評価値を算出するようにしてもよい。これにより、帰還に必要な距離を削減し、次の配車要求により早く対応できることが可能となる。なお、利用者が利用を終えて、自律走行で帰還する操作を行った段階で、次の配車要求を受けられるように割り込みを認めるように処理してもよい。また、自律走行経路の帰還場所は、自律走行評価値に応じて定めてもよい。また、所在位置から利用開始場所までの移動と、利用終了場所から帰還場所までの移動のいずれかのみを自律走行経路とする条件で再評価してもよい。この場合、自律走行経路以外の移動は利用者によって手動で走行させる。
【0057】
次に、ステップS11において、出力部17が、該当の搬送カート5に対して、配車指示を送信する。この配車指示には、ステップS3で特定された利用開始場所や配車要求に含まれる利用時間を少なくとも含み、利用終了場所、帰還場所や配車を要求する利用者の利用者識別情報を含めてもよい。なお、帰還場所については、搬送カート5ごとに定めておき、本通知から省略してもよい。
【0058】
この通知は、配車要求の利用時間を検知した際に実行してもよいし、予約情報として当該利用時間を含む配車指示の送信を実行してもよい。
【0059】
また、ステップS11においては、配車決定部14は、配車テーブル849の該当のスケジュールに配車されたことを記録する。また、配車決定部14は、搬送カート管理情報846の利用履歴に配車実績を記録することが望ましい。
【0060】
次に、ステップS12において、搬送指示を受領した搬送カート5は利用開始場所(出発地に自律走行、つまり、移動を開始する。このために、まず、搬送カート5の通信部55が、配車指示を受信する。次に、制御部56が、利用時間を検知すると、利用開始場所への自律走行を制御する制御信号を出力する。そして、駆動部57が車輪52-1、52-2を駆動し、搬送カート5が利用開始場所へ移動する。
【0061】
この結果、利用者200は、利用開始場所で荷物を搬送カート5に積載し、利用終了場所まで手動走行により搬送カート5を走行させ、荷物を搬送する。そして、荷物を搬送し終わると、搬送カート5は再度自律走行、つまり、帰還場所までの自律走行を開始する。
【0062】
また、自律走行の際には、ステップS13で、搬送カート5から自身の充電率および走行位置を、搬送カート配車支援装置1に通知する。この通知は、周期的に適宜行うことが望ましい。また、本ステップでは、制御部56が、制御部56が充電率および走行位置を検知し、通信部55を用いて通知する。なお、搬送カート5が充電率および走行位置などの情報を搬送カート配車支援装置1に通知するのは、自律走行時に限定しない。利用者によって手動走行が行われている場合においても充電率および走行位置を通知してもよい。これにより、搬送カート配車支援装置1は継続的に搬送カート5の最新の状態を取得することができる。また、自律走行あるいは手動走行の走行状態も併せて送信することで、各走行状態で実際に利用された経路を利用履歴として蓄積することができる。これにより、利用終了場所を統計的により精緻に推定することが可能となる。
【0063】
次に、ステップS14において、搬送カート配車支援装置1の自律走行評価値算出部16が、ステップS13で通知された充電率および走行位置を用いて、ステップS13で算出された自律走行評価値を更新する。このために、入力部11がステップS13で通知された充電率および走行位置を周期的に受け付け、記憶部18のこれらの情報が更新され、本ステップではこれを用いる。
【0064】
これは、天候やステップS13では想定できない事態(車輪の空転など)等で、自律走行できる距離が変化することを想定し、最新の状況に対応するための本ステップを実行する。より具体的には、自律走行評価値算出部16は、距離算出部13を用いて、ステップS5で算出された自律走行距離と通知された位置を用いて、現在以降に必要となる自律走行距離を算出する。そして、自律走行評価値算出部16は、この自律走行距離と通知された充電率を用いて、自律走行評価値を算出する。このことで、自律走行評価値が更新されることになる。また、搬送カート5にエネルギー回生システムが搭載されている場合には、手動走行によってエネルギーが回生されて、帰還時において当初よりも充電率が上昇することもある。このときも、再評価を行うことでより精緻に自律走行可能な距離を算出することができる。
【0065】
次に、ステップS15において、配車決定部14が、更新された自律走行評価でも自律走行が可能かを判定する。これは、ステップS10と同様に判定される。この判定の結果、可能な場合(YES)、本処理を終了する。また、不可の場合(NO)、配車決定部14が、自律走行不可対応処理を実行する。この処理には、(1)帰還場所の変更、(2)自律走行が不可であることの通知を実行する。この(1)(2)については、一方のみを実行してもよいし、両方を実行してもよい。
【0066】
ここで、(1)については、配車決定部14が、ステップS10で説明したような、帰還場所を一時保管に変更することになる。また、(2)については、配車決定部14が出力部17を用いて、帰還場所への帰還が困難であることを、利用者端末2や管理人装置3に通知する。
【0067】
そして、ステップS18やS19では、利用者端末2や管理人装置3が、搬送カート5が帰還困難であることを受信する。この結果、利用者200や管理人が、搬送カート5を手動で帰還することが可能となる。なお、利用者端末2や管理人装置3は、ステップS16での通知で、搬送カート5の位置を受信することが望ましい。なお、利用者端末2への通知は、直前に利用した利用者に対して手動返却を促すのに加えて、次に配車要求を行った利用客に対して帰還困難となっている搬送カート5の利用を促すように通知を行ってもよい。例えば、部屋前への配車を希望する利用者に対して、1Fから配車を行う搬送カート5と、同一階床で帰還困難となり一時保管されている搬送カート5の両方を利用可能搬送カートとして提示してもよい。この場合、手動走行する手間は発生するが、同一階床に一時保管されている搬送カートのほうがより早く利用できる可能性が高い。そのため、選択肢を提供することで利用者の利便性がより向上する。さらに、帰還困難となっている搬送カート5を利用した場合あるいは帰還を手動で行った場合に、料金の割引やポイントなどを含む報奨を利用者に与えることで、利用者に帰還困難となった搬送カート5を利用することを促進してもよい。報奨として与えるポイントは、利用料金の割引などに使用できるポイントの他に、複数の利用者の予約が重複したときに優先的に利用できる権利などに利用できるポイントであっても良い。
【0068】
以上で、本実施例の説明を終了する。ここで、搬送カート5の場合、自律走行経路がある程度固定化されている。この経路としては、例えば、商業施設300の場合、買い物後の駐車場から返却場所といった返却経路が含まれる。また、集積場所(帰還場所)から予約場所への移動も利用者の部屋や商業施設300の出入口301など固定的である。本実施例では、この特性を利用して、自律走行経路を精度よく特定できる。これに加え、ステップS13、S14のように、自律走行の際に適宜、自律走行経路を更新するので、自律走行評価値の精度も向上できる。
次に、ステップS22~ステップS31である利用予測を、利用予測部15が、以下のように各部を用いて行う。これら各ステップは、利用予測部15自身が行ってもよいし、各部が独立して行ってもよい。
まず、ステップS22において、経路特定部12が、利用実績情報847に基づいて、搬送カート5の各時間帯の利用開始場所(出発地)および利用終了場所(目的地)を予測する。このために、利用予測部15は、予測される配車要求を予測する。これは、利用実績をそのまま流用してもよいし、AI等を用いて配車要求を予測することで実現できる。例えば、利用実績を基にAIや統計処理を用いて、各時間帯における各利用開始場所と利用終了場所間の移動の発生確率を推定し、発生確率が一定以上の地点間の移動は発生するものとして予測される配車要求を作成することで実現する。そして、経路特定部12は、予測される配車要求を用いて、ステップS3と同様の処理で搬送カート5の利用開始場所(出発地)および利用終了場所(目的地)を予測する。
次に、ステップS23において、利用予測部15が、利用実績情報847に基づいて、各時間帯に各帰還場所(充電ステーションや一時保管場所)に配分すべき搬送カート5の台数を予測する。各帰還場所の配分は、例えば、次の時間帯に予測される配車要求の利用開始場所への移動が発生するとして、各帰還場所を出発地として配車要求の利用開始場所を目的地とする移動距離の総和が最小となるように配分する。さらに、次の配車要求の利用終了場所から帰還できるか否か充電量を考慮して配分してもよい。あるいは、発生する需要量が均等になるように、備えられたあるいは利用可能な搬送カート5の台数を基準として、階床をグルーピングし、各階床グループに属する充電ステーションや一時保管場所に搬送カート5を一台ずつ配分するようにしてもよい。本ステップでは、すべての搬送カート5を所定の充電ステーションに帰還させるのではなく、需要発生量に合わせて少なくとも一部を次回の配車の移動距離が短くなるように一時保管場所に帰還させるように帰還場所を配分することが特徴である。これにより、搬送カート5の移動距離を削減することができる。特にマンションにおいては、エレベーターが移動のボトルネックとなることがあるため、エレベーター搭乗をできるだけ減らすことで、搬送カート5の配車に要する時間を削減するとともに、通常の住民の階床間移動の妨げになることを防ぐことができる。
次に、ステップS24において、経路特定部12が、自律走行経路を、ステップS4と同様の処理で予測する。次に、ステップS25において、距離算出部13が、予測された自律走行経路の距離を示す自律走行距離を、ステップS5と同様の処理で予測する。
次に、ステップS26において、配車決定部14が、空きカートを、ステップS6と同様の処理で予測する。次に、ステップS27において、配車決定部14が、ステップS26で予測された各空きカートの位置および充電率を予測する。このために、配車決定部14は、利用実績情報847を用いて、予測時間までの走行距離を推定し、その充電率や位置を予測することになる。
次に、ステップS28において、配車決定部14が、ステップS26で予測された各空きカートを1台抽出する。そして、ステップS29において、自律走行評価値算出部16が、ステップS9と同様の処理により、抽出された空きカートの自律走行評価値を推定する。
次に、ステップS30において、配車決定部14が、自律走行評価値に基づいて、抽出された空きカートの保管場所(帰還場所)を決定する。このために、充電率が多い搬送カート5ほど、ステップS23で推定された配分台数が多い保管場所に割り当てる。なお、本実施例では、1台ずつステップS30を実行するが、各空きカートについてステップS29を実行し、その後にステップS30を実行してもよい。また、保管場所に割り当ては、自律走行評価値以外を用いて決定してもよい。予測される搬送カート5の需要量(利用予測)に応じて、その台数が定まるようにできればよい。
そして、ステップS31において、配車決定部14が、ステップSS26で予測された空きカートで、ステップS28以降について未処理のものがないかを判定する。この結果、有る場合には、ステップS28に戻る。無い場合には、本処理フローを終了する。
なお、利用予測部15は、エレベーターの需要量を予測する構成としてもよい。この場合、利用予測部15は、エレベーターの稼働状況を示す稼働状況データを取得し、これを用いて、需要量を予測する。エレベーターの稼働状況データには、時間ごとの稼働量(稼働率、稼働回数や稼働距離)や停止階を含む利用場所が含まれることが望ましい。この場合、利用予測部15は、時間帯ごとの各利用場所における需要量を含む需要データ予測することになる。この需要量は、稼働量と同様に、エレベーターの稼働率、稼働回数、稼働距離が含まれる。
また、上述のステップS29において、自律走行評価値算出部16が予測された需要量に応じた自律走行評価値を算出する。そして、上述のステップS30において、配車決定部14が、予測された需要データに基づき、搬送カート5の配車時間および配車場所を決定する。
この場合、配車決定部14は、この配車時間に、搬送カート5の需要量が比較的多い利用場所に近接する帰還場所を配車場所とする。また、配車決定部14は、搬送カート5の需要量が比較的多い時間帯以前の時間帯でエレベーターの需要量が比較的少ない時間帯を配車時間とする。また、なお、需要量が比較的少ない時間帯とは、他の時間帯と比較した結果で、最上位など所定件数分の時間帯としてよい。需要量が比較的多い利用場所も同様である。さらに、利用場所に近接する帰還場所とは、利用場所に最も近い帰還場所の他、所定距離などの条件を満たす場所であればよい。 以上の本実施例によれば、需要量に応じてあらかじめ配置する搬送カート5の台数を特定できるため、実施例1などの配車をより効率的に行うことが可能となる。なお、実施例1および2は、あわせて実行してもよいし、個別機能として独立してもよい。
以上で、本発明の実施例1および2の説明を終了するが、本発明はこれらに限定される各種変形例も含まれる。また、搬送カート5以外の電気自動車や自走式のロボットや掃除機などの各種移動体も対象となる。