(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051004
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】擁壁用コンクリートブロックの施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/02 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
E02D29/02 310
E02D29/02 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161419
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】521427896
【氏名又は名称】日本テクノス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595054741
【氏名又は名称】齋喜 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】横手 勉
(72)【発明者】
【氏名】齋喜 重信
【テーマコード(参考)】
2D048
【Fターム(参考)】
2D048AA43
2D048AA47
2D048AA82
2D048AA83
(57)【要約】
【課題】
造成地工事における工程において、下部に傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを設置する際に、熟練を要さずに、容易に素早く正確に施工を行う技術を提供する。
【解決手段】
本発明の擁壁用コンクリートブロックの施工方法は、施工対象地面を掘削し、そこに砕石を水平に敷設し、転圧して基礎面を敷設する第1工程と、前記基礎面上に、平面視が後記下り勾配の傾斜底板部と略同形の楔形状のコンクリート板を載置する第2工程と、前記楔形状のコンクリート板の上に、垂直壁部と同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを、前記楔形状のコンクリート板の上に前記コンクリートブロックの傾斜底板部の下面が当接するようにして乗置する第3工程と、前記第3工程の傾斜底板部の上面に土を充填し転圧する第4工程とからなる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象地面を掘削し、そこに砕石を水平に敷設し、転圧して基礎面を敷設する第1工程と、
前記基礎面上に、平面視が後記下り勾配の傾斜底板部と略同形の楔形状のコンクリート板を載置する第2工程と、
前記楔形状のコンクリート板の上に、垂直壁部と同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを、前記楔形状のコンクリート板の上に前記コンクリートブロックの傾斜底板部の下面が当接するようにして乗置する第3工程と、
前記第3工程の傾斜底板部の上面に土を充填し転圧する第4工程とからなることを特徴とする下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【請求項2】
施工対象地面を掘削し、そこに砕石を水平に敷設し、転圧して基礎面を敷設する第1工程と、
前記基礎面上に、平面視が後記下り勾配の傾斜底板部と略同形の楔形状のコンクリート板を載置する第2工程と、
前記楔形状のコンクリート板の上に、垂直壁部と同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを、前記楔形状のコンクリート板の上に前記コンクリートブロックの傾斜底板部の下面が当接するようにして乗置する第3工程と、
前記コンクリートブロックの傾斜底板部と楔形状のコンクリート板との間に形成される空隙部にコンクリートを打設する第4工程と、
前記第4工程の傾斜底板部の上面に土を充填し転圧する第5工程とからなることを特徴とする下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【請求項3】
楔形状のコンクリート板の楔の角度が、傾斜底板の傾斜角度と略同一であることを特徴とする請求項1又は2に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【請求項4】
擁壁用コンクリートブロックが、垂直壁部下端縁から更に下方に垂直に突設された壁体を有してなることを特徴とする請求項1~3のずれか1項に記載のか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【請求項5】
傾斜底板部と楔形状のコンクリート板と基礎面との間に形成される空隙部に、傾斜底板部に穿設された貫通孔と楔形状のコンクリート板に穿設された貫通孔を通じてコンクリートモルタルを充填・打設することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【請求項6】
楔形状のコンクリート板が、側面視が二等辺三角形で、傾斜面の基部に平坦部を有し、先端部斜面に突出部を有してなるものであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【請求項7】
楔形状のコンクリート板の表面が凹凸面化あるいは粗面化されてなるものであることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【請求項8】
下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの一方の側面に凹部を他方の側面に前記凹部に嵌合する凸部を備えてなり、下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの複数個を前記凹部と凸部を嵌合させて横方向に連設して施工することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【請求項9】
下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックが、背部に背びれ状のリブを有し、かつ同リブにはワイヤーロープを通すための貫通孔が穿設されてなり、下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの複数個を前記貫通孔にワイヤーロープを通して横方向に連設して施工することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【請求項10】
施工対象地面を垂直地面を形成するように切り土し、その手前部の低地面に砕石を水平に敷設し、転圧して基礎面を敷設する第1工程と、
前記基礎面上に、平面視が後記下り勾配の傾斜底板部と略同形の楔形状のコンクリート板をその先端部を前記垂直地面から手前に遠ざかる方向に位置させて載置する第2工程と、
前記楔形状のコンクリート板の上に、垂直壁部と同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを、前記楔形状のコンクリート板の上に前記コンクリートブロックの傾斜底板部の下面が当接するようにして乗置する第3工程と、
前記第3工程の傾斜底板部の上面に土を充填し転圧する第4工程とからなることを特徴とする下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【請求項11】
施工対象地面を垂直地面を形成するように切り土し、その手前部の低地面に砕石を水平に敷設し、転圧して基礎面を敷設する第1工程と、
前記基礎面上に、平面視が後記下り勾配の傾斜底板部と略同形の楔形状のコンクリート板をその先端部を前記垂直地面から手前に遠ざかる方向に位置させて載置する第2工程と、
前記楔形状のコンクリート板の上に、垂直壁部と同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを、前記楔形状のコンクリート板の上に前記コンクリートブロックの傾斜底板部の下面が当接するようにして乗置する第3工程と、
前記コンクリートブロックの傾斜底板部と楔形状のコンクリート板との間に形成される空隙部にコンクリートを打設する第4工程と、
前記第4工程の傾斜底板部の上面に土を充填し転圧する第5工程とからなることを特徴とする下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【請求項12】
楔形状のコンクリート板の傾斜面にロッドを突設し、また下り勾配の傾斜底板部に前記ロッドが緩挿されるガイド孔を穿設してなり、第3工程において、前記ロッドをガイド孔に緩挿するようにして擁壁用コンクリートブロックを楔形状のコンクリート板上に乗置させることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部に下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜地に平坦な土地を造成する場合に、
図15に断面説明図を示すごとく、法面に断面L型の擁壁用コンクリートブロック4’を設置し、そのブロック4’と法面との空間に土を充填G’し転圧して、平坦地Gを造成することが通常に行われている。
また、前記擁壁用コンクリートブロックとして、断面L型でなく、
図14に断面説明図を示すごとく、底板を下り勾配(好ましくは105°)とした傾斜底板部4bを備える改良された擁壁用コンクリートブロック4を使用して造成する方法が実施されている。なお、2は基礎面、5は載置台である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-50138号公報
【特許文献2】特開2017-150278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、
図14に示す従来の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロック4を使用して造成する方法では、底板部が傾斜しているため、地面に対して擁壁用コンクリートブロック4の縦壁を垂直に設置する作業は困難であった。
そこで本発明は、下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロック4の据付け作業を熟練を要さず容易に設置・施工できる施工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は下記の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法である。
〔1〕 施工対象地面を掘削し、そこに砕石を水平に敷設し、転圧して基礎面を敷設する第1工程と、
前記基礎面上に、平面視が後記下り勾配の傾斜底板部と略同形の楔形状のコンクリート板を載置する第2工程と、
前記楔形状のコンクリート板の上に、垂直壁部と同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを、前記楔形状のコンクリート板の上に前記コンクリートブロックの傾斜底板部の下面が当接するようにして乗置する第3工程と、
前記第3工程の傾斜底板部の上面に土を充填し転圧する第4工程とからなることを特徴とする下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
〔2〕 施工対象地面を掘削し、そこに砕石を水平に敷設し、転圧して基礎面を敷設する第1工程と、
前記基礎面上に、平面視が後記下り勾配の傾斜底板部と略同形の楔形状のコンクリート板を載置する第2工程と、
前記楔形状のコンクリート板の上に、垂直壁部と同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを、前記楔形状のコンクリート板の上に前記コンクリートブロックの傾斜底板部の下面が当接するようにして乗置する第3工程と、
前記コンクリートブロックの傾斜底板部と楔形状のコンクリート板との間に形成される空隙部にコンクリートを打設する第4工程と、
前記第4工程の傾斜底板部の上面に土を充填し転圧する第5工程とからなることを特徴とする下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
〔3〕 楔形状のコンクリート板の楔の角度が、傾斜底板の傾斜角度と略同一であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
〔4〕 擁壁用コンクリートブロックが、垂直壁部下端縁から更に下方に垂直に突設された壁体を有してなることを特徴とする前記〔1〕~〔3〕のずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【0006】
〔5〕 傾斜底板部と楔形状のコンクリート板と基礎面との間に形成される空隙部に、傾斜底板部に穿設された貫通孔と楔形状のコンクリート板に穿設された貫通孔を通じてコンクリートモルタルを充填・打設することを特徴とする前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
〔6〕楔形状のコンクリート板が、側面視が二等辺三角形で、傾斜面の基部に平坦部を有し、先端部斜面に突出部を有してなるものであることを特徴とする前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
〔7〕楔形状のコンクリート板の表面が凹凸面化あるいは粗面化されてなるものであることを特徴とする前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
〔8〕下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの一方の側面に凹部を他方の側面に前記凹部に嵌合する凸部を備えてなり、下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの複数個を前記凹部と凸部を嵌合させて横方向に連設して施工することを特徴とする前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
〔9〕下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックが、背部に背びれ状のリブを有し、かつ同リブにはワイヤーロープを通すための細孔が穿設さえてなり、下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの複数個を前記細孔にワイヤーロープを通して横方向に連設して施工することを特徴とする前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【0007】
〔10〕施工対象地面を垂直地面を形成するように切り土し、その手前部の低地面に砕石を水平に敷設し、転圧して基礎面を敷設する第1工程と、
前記基礎面上に、平面視が後記下り勾配の傾斜底板部と略同形の楔形状のコンクリート板をその先端部を前記垂直地面から手前に遠ざかる方向に位置させて載置する第2工程と、
前記楔形状のコンクリート板の上に、垂直壁部と同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを、前記楔形状のコンクリート板の上に前記コンクリートブロックの傾斜底板部の下面が当接するようにして乗置する第3工程と、
前記第3工程の傾斜底板部の上面に土を充填し転圧する第4工程とからなることを特徴とする下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
〔11〕施工対象地面を垂直地面を形成するように切り土し、その手前部の低地面に砕石を水平に敷設し、転圧して基礎面を敷設する第1工程と、
前記基礎面上に、平面視が後記下り勾配の傾斜底板部と略同形の楔形状のコンクリート板をその先端部を前記垂直地面から手前に遠ざかる方向に位置させて載置する第2工程と、
前記楔形状のコンクリート板の上に、垂直壁部と同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを、前記楔形状のコンクリート板の上に前記コンクリートブロックの傾斜底板部の下面が当接するようにして乗置する第3工程と、
前記コンクリートブロックの傾斜底板部と楔形状のコンクリート板との間に形成される空隙部にコンクリートを打設する第4工程と、
前記第4工程の傾斜底板部の上面に土を充填し転圧する第5工程とからなることを特徴とする下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
〔12〕楔形状のコンクリート板の傾斜面にロッドを突設し、また下り勾配の傾斜底板部に前記ロッドが緩挿されるガイド孔を穿設してなり、第3工程において、前記ロッドをガイド孔に緩挿するようにして擁壁用コンクリートブロックを楔形状のコンクリート板上に乗置させることを特徴とする〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、造成地施工の工程において、下部に傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを設置する際に、熟練を要さずに、容易に素早く実施することができ、全体の施工時間を短縮することができる。
また、傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの底板部が楔形状のコンクリート板と重合された状態で厚みが増大する結果、底板部が補強された構造となって、強度の負荷に耐えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明を実施するための形態における。施工対象地面の断面説明図である。
【
図2】施工対象地面に施工用の溝を形成した状態の断面説明図である。
【
図3】施工対象地面に施工用の溝に砕石を並べて転圧して基礎面を形成した状態の断面説明図である。
【
図4】基礎面に楔形状のコンクリート板を載置した状態の断面説明図である。
【
図5】楔形状のコンクリート板の上に、下部に傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの垂直壁部の下端が当接するようにして乗置した状態の断面説明図である。
【
図6】傾斜底板部の上面に土を充填し転圧した状態の断面説明図である。
【
図7】土が充填された部分が転圧されて完成した状態の断面説明図である。
【
図8】本発明が切り土部に採用された状態の断面説明図である。
【
図9】本発明で使用される下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックと楔形状のコンクリート板と基礎面の配置構成を示す断面説明図である。
【
図11】本発明で使用される下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックが横方向に連設された状態の斜視図である。
【
図12】楔形状コンクリート板と傾斜底板部との間に形成される空隙部に、傾斜底板部の貫通孔からコンクリートモルタルが充填された構造の断面説明図である。
【
図13】基礎面と楔形状コンクリート板と傾斜底板部との間に形成される全ての空隙部に、傾斜底板部の貫通孔からコンクリートモルタルが一気に充填された構造の断面説明図である。
【
図14】本発明で使用される下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを使用した従来技術の構造の断面説明図である。
【
図15】断面L型の擁壁用コンクリートブロックを使用した従来技術の構造の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の下部に下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの施工方法を図面に基づいて説明する。
本発明の下部に下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロック4の施工にあたっては、第1工程として、まず
図1に示すごとき要施工対象地面
Sを特定した後、図・に示すごとく、 施工対象地面Sを溝状に掘削し、次いで
図3に示すごとく、そこに砕石を水平に敷設し、転圧して基礎面2を形成する。
次いで第2工程として、
図4に示すごとく、基礎面2(あるいはコンクリートモルタル6)上に楔形状のコンクリート板3を、その先端部を奥側に位置させて載置する。
その後、第3工程として、
図5に示すごとく、楔形状のコンクリート板3の上面にコンクリートブロック4の傾斜底板部下面が当接するように乗置させる。
次いで、第4工程として、前記傾斜底板部4bと楔形状のコンクリート板3間に形成される(又は、更に前記基礎面2との間に形成される)空隙部にコンクリートモルタル6を充填して養生・硬化させる。
その後、第5工程として、
図6に示すごとく、傾斜底板部4bの上面に土を充填G’(充填土)し、転圧して
図7に示すごとく完成地面Gとする。
【0011】
上記において、基礎面2を形成する第1工程では、砕石(又は玉石)を水平に敷設し、転圧しただけでもよいが、その面にコンクリートモルタル6を流し込んで、次の工程(楔形状のコンクリート板3との接合工程)に備えてもよい。なお、砕石の上にはコンクリート板(図示せず)を載置してもよい。
次に、第2工程において、基礎面2上に楔形状のコンクリート板3を、その先端部を奥側に位置させて載置するが、前記基礎面2上のコンクリートモルタル6が軟らかい内に、楔形状のコンクリート板3を載置してその裏面と基礎面2との結合を強固にすることも好ましい。
楔形状のコンクリート板3は、
図10に示すごとく、平面視が、下部に下り勾配の傾斜底板部4b(
図9参照)を備える本発明で使用される擁壁用コンクリートブロック4の下り勾配の傾斜底板部4bと略同形の楔形状のコンクリート板3である。
【0012】
そして、
図9に示すごとく、前記擁壁用コンクリートブロック4の下り勾配の傾斜底板部4bに当接する楔形状のコンクリート板3の基部の角度は、垂直壁部4aと同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板4bの角度と補角関係であることが好ましい。すなわち、下り勾配の傾斜底板の角度θが105°であれば、楔形状のコンクリート板3の基部の角度は、75°であることが好ましい。
この場合、楔形状のコンクリート板3は、
図10(a)、(b)に示すごとく、側面視が略二等辺三角形で、傾斜面の基部に平坦部3aを有し、先端部斜面に突出部3bを有してなるものであることが好ましい。
その平坦部3aには
図9に示すごとく、擁壁用コンクリートブロック4の、垂直壁部下端縁から更に下方に垂直に突設された壁体4dの底面が安定的に当接され、また前記楔形状のコンクリート板3先端部斜面に突出部3bを備えたことで、傾斜底板4b裏面と楔形状のコンクリート板3表面との間に一定厚みの空隙部が形成され、その空隙部に適量のコンクリートモルタル6を均等に充填することができる。
また、この楔形状のコンクリート板3にはコンクリートモルタル6充填用の貫通孔3c(
図10)を穿設しておくことも好ましい。
そしてまた、楔形状のコンクリート板3の斜面にはロッド3dを立設(
図10(b))し、他方それに載置される擁壁用コンクリートブロック4には同じ位置に内径がロッド3dの直径よりもやや大きいガイド孔4e(
図9)を設けておき、第3工程において、擁壁用コンクリートブロック4のガイド孔4eにロッド3dを緩挿させるように乗置すれば位置決めが容易・確実に実施できる。この際に、ロッド3dをボルトとし、その先端の雄ネジ部にナットを螺着するようにすれば、楔形状のコンクリート板3と擁壁用コンクリートブロック4を確実に固定・合体することができる。
さらに、楔形状のコンクリート板3の表裏面にはコンクリートモルタル6との接触面積を大きくするために凹凸部、粗面部(図示せず)を設けてもよい。
なお、通常は楔形状のコンクリート板3の補強のために内部に鉄筋を配設してある。
さらに、
図10(c)に示すごとく、楔形状のコンクリート板3の複数個を横並びに一体化した構造のものとし、それを使用することも全体強度が増強され、かつ施工作業の効率化に貢献するために好ましいことである。
【0013】
本発明で使用される、垂直壁部4aと同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部4bを備える擁壁用コンクリートブロック4は、
図9に側断面図を示すごとく、垂直壁部4aと下り勾配の傾斜底板部4bとの傾斜角度θが105°であることが構造計算上最適であるとされている。なお、通常その内部には補強鉄筋を配設してある。
さらに、背部には背びれ状のリブ4cを有し、かつ同リブ4cにはワイヤーロープを通すための貫通孔4c’が穿設されてなり、下り勾配の傾斜底板部4bを備える擁壁用コンクリートブロックの複数個を同貫通孔4c’にワイヤーロープ(図示せず)を通して横方向に連設(
図11)して施工することができる。
そしてまた、図示しないが、本発明で使用される下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの一方の側面には凹部を他方の側面に前記凹部に嵌合する凸部を設けて、下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの複数個同士を前記凹部と凸部を嵌合させて横方向に連設して施工することが好ましい。
そして、下り勾配の傾斜底板4bにはコンクリートモルタル6充填用の貫通孔4b’が穿設され、同貫通孔4b’を通じて、傾斜底板4b裏面と楔形状のコンクリート板3表面との間の空隙部に適量のコンクリートモルタル6を均等に充填することができる。
前記充填されたコンクリートモルタル6が硬化した後に、
図6に示すごとく、擁壁用コンクリートブロック4の垂直壁部4aと下り勾配の傾斜底板部4bとの間に土を充填(充填土)G’をする。
そして、その充填土G’を転圧して完成地盤Gとする。
【0014】
なお上記における、前記コンクリートブロックの傾斜底板部4bと楔形状のコンクリート板3との間に形成される空隙部にコンクリートモルタル6を充填・硬化する第4工程は、貫通孔4b’を通じて行うことが好ましいが、楔形状のコンクリート板3の表面にコンクリートモルタル6を流下してから、そのモルタル6層の上にコンクリートブロックの傾斜底板部4bを載置する方法で行うこともできる。
よって、本発明では第4工程のコンクリートモルタル充填作業は、必ずしも第3工程に続いて行うべきものではなく、随時に行うことができる。
空隙部にコンクリートモルタル6が充填・硬化された構成は、傾斜底板部4bの貫通孔4b’のみからコンクリートモルタル6が充填・硬化される場合(
図12)と、傾斜底板部4bの貫通孔4b’と楔形状のコンクリート板3の貫通孔3cとからコンクリートモルタル6が充填・硬化される場合(
図13)が提案される。
図13の場合は、まず、基礎面2に楔形状コンクリート板3を載置し、次いでその上にコンクリートブロックの傾斜底板部4bを載置した後、基礎面2と楔形状コンクリート板3と傾斜底板部4bとの間に形成される空隙部の全てに対して、傾斜底板部4bの貫通孔4b’からコンクリートモルタル6を注入することで、一気に全ての空隙部にコンクリートモルタルを注入・充填することができ、作業効率を上げることができる。
【0015】
以上の具体的な説明は、いわば盛り土方式の場合(
図7参照)について行っているが、
図8に示すごとく切り土方式に対して実施することもできる。
すなわち、施工対象地面を垂直地面を形成するように切り土し、その手前部の低地面に砕石を水平に敷設し、転圧して基礎面を敷設する第1工程と、前記基礎面上に、平面視が後記下り勾配の傾斜底板部と略同形の楔形状のコンクリート板をその先端部を前記垂直地面から手前に遠ざかる方向に位置させて載置する第2工程と、前記楔形状のコンクリート板の上に、垂直壁部と同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックを、前記楔形状のコンクリート板の上に前記コンクリートブロックの傾斜底板部の下面が当接するようにして乗置する第3工程と、前記第3工程の傾斜底板部の上面に土を充填し転圧する第4工程とで実施する。
以上のように、本発明によれば、宅地造成工事等において、下部に傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロック(プレキャスト製品)を楔形状のコンクリート板(プレキャスト製品)の上に乗置するだけで、熟練を要さずに、容易に素早く正確に設置でき、全体の施工時間を短縮することができ、施工コストの低減に寄与することができる。
そして、傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロックの底板部が楔形状のコンクリート板と重合された状態で下部コンクリート板の厚みが増大する結果、底板部が補強された構造となり、大きな強度の負荷に対抗できることになる。
【符号の説明】
【0016】
1:掘削溝
2:基礎部
3:楔形状のコンクリート板
3a;平坦部
3b:突出部
3c:貫通孔
3d:ロッド
4:垂直壁部と同壁部の下端から横に延設された下り勾配の傾斜底板部を備える擁壁用コンクリートブロック
4a:垂直壁部
4b:下り勾配の傾斜底板部
4b’:貫通孔
4c:背びれ状のリブ
4c’:貫通孔
4d:下方に垂直に突設された壁体
4e:ガイド孔
5:載置台
6:コンクリートモルタル
G:地面
G’:充填土