IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サタケの特許一覧

特開2023-51011穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法
<>
  • 特開-穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法 図1
  • 特開-穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法 図2
  • 特開-穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法 図3
  • 特開-穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法 図4
  • 特開-穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法 図5
  • 特開-穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法 図6
  • 特開-穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法 図7
  • 特開-穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法 図8
  • 特開-穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法 図9
  • 特開-穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051011
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/85 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
G01N21/85 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161427
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】梶山 剛志郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宏明
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA04
2G051AB03
2G051CA03
2G051CD04
2G051EA12
2G051EA16
2G051EA17
2G051EC01
2G051ED07
2G051ED09
2G051ED21
(57)【要約】
【課題】穀粒品位判別装置によって、整粒重量比(整粒割合)を高精度に測定可能な方法を提供することを技術的課題とするものである。
【解決手段】上記課題を解決するため本発明は、穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法であって、検査対象の穀粒の容積重を測定する容積重測定工程と、穀粒品位判別装置により前記穀粒を撮像し、前記穀粒の一粒毎の画像情報を取得する撮像工程と、前記容積重測定工程で測定した容積重の値と前記撮像工程で取得した画像情報に基づいて、前記穀粒の整粒重量比を求める演算工程とを備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法であって、
検査対象の穀粒の容積重を測定する容積重測定工程と、
前記穀粒品位判別装置により前記穀粒を撮像し、前記穀粒の一粒毎の画像情報を取得する撮像工程と、
前記容積重測定工程で測定した容積重の値と前記撮像工程で取得した画像情報に基づいて、前記穀粒の整粒重量比を求める演算工程と、を備えたことを特徴とする穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法。
【請求項2】
前記画像情報は、前記穀粒の長さの平均値、幅の平均値、厚みの平均値、表面積の平均値、側面面積の平均値、体積の平均値及び長さ/幅の比の平均値の内、一つ又は複数の平均値を選択して用いる請求項1に記載の穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法。
【請求項3】
前記画像情報は、前記穀粒の長さの標準偏差の値、幅の標準偏差の値、厚みの標準偏差値、表面積の標準偏差の値、側面面積の標準偏差の値、体積の標準偏差の値及び長さ/幅の比の標準偏差の値の内、一つ又は複数の標準偏差の値を選択して用いる請求項1又は請求項2に記載の穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の穀粒を撮像し、その穀粒の粒ごとの画像を取得する穀粒品位判別装置に関し、より詳細には、穀粒品位判別装置で求められる整粒重量比の精度を向上させる算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、検査対象のサンプル米を光学的に撮像し、撮像して得られた画像情報に基づいて前記サンプル米の粒毎の外観品位を機械的に判定(以下、「機械判定」という)することが行われている。この機械判定では、整粒に加え、死米、着色粒、胴割粒、砕粒などの外観品位を判定することが可能である。
【0003】
前記機械判定は、特許文献1に記載されているような穀粒品位判別装置で行われている。前記穀粒品位判別装置で得られた前記外観品位の判定結果は、農産物検査法に基づく鑑定方法(平成13年農林水産省告示第333号)(インターネット<URL:https://www.maff.go.jp/j/seisan/syoryu/kensa/kokuryu/attach/pdf/index-3.pdf>)により、国内産水稲うるち玄米の「死米」及び「着色粒」の混入割合の鑑定に用いることができる。加えて、「胴割粒」及び「砕粒」の混入割合については、「穀粒判別器による胴割粒及び砕粒の混入割合の測定を行う際の取扱いについて((農林水産省)政策統括官付穀物課長」)」(インターネット<URL:https://www.maff.go.jp/j/seisan/syoryu/kensa/kokuryu/attach/pdf/index-5.pdf>)の通知に基づき、「被害粒等計」の鑑定の際に活用することができる。
【0004】
また、前記穀粒品位判別装置は、穀粒の前記外観品位を粒毎に判別できるものであることから、所定の粒数(例えば千粒)の試料(サンプル米)について、そのサンプル米に含まれる各品位の穀粒の粒数を数えることができる。
そして、例えば、特許文献2に開示されているように、各品位の穀粒に対して重量換算係数を設定し、この重量換算係数と前記判別で得られた各品位の粒数を用いて、穀粒外観品位判別装置によって整粒重量比(整粒割合)を算出することが行われている。
この算出方法によれば、穀粒の重量を実測することなく整粒重量比を容易に求めることができるというメリットがある。
【0005】
前記整粒重量比は、検査対象の穀粒全体に含まれる整粒の重さの割合であるので、その穀粒の品質を示す指標となるものである。
このため、農産物検査法に基づく鑑定方法で、穀粒品位判別装置で算出した整粒重量比が採用可能となることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6687826号公報
【特許文献2】特許第5533245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載された穀粒品位判別装置では、穀粒を撮像した画像情報に基づいて整粒重量比を求めているので、穀粒の重量を実測していない。このため、前記穀粒品位判別装置で算出した整粒重量比の測定結果と、実際に各穀粒の重量を測定して求めた整粒重量比(真値)とに差(乖離(かいり))が生じるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点にかんがみて、前記真値との間で極端な差が生じないように、穀粒品位判別装置を用いて整粒重量比を高精度に算出することが可能な方法を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、穀粒品位判別装置を利用した整粒重量比の算出方法であって、検査対象の穀粒の容積重を測定する容積重測定工程と、前記穀粒品位判別装置により前記穀粒を撮像し、前記穀粒の一粒毎の画像情報を取得する撮像工程と、前記容積重測定工程で測定した容積重の値と前記撮像工程で取得した画像情報に基づいて、前記穀粒の整粒重量比を求める演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記画像情報として、前記穀粒の長さの平均値、幅の平均値、厚みの平均値、表面積の平均値、側面面積の平均値、体積の平均値及び長さ/幅の比の平均値の内、一つ又は複数の平均値を選択することを特徴とする。
【0011】
さらに、前記画像情報として、前記穀粒の長さの標準偏差の値、幅の標準偏差の値、厚みの標準偏差値、表面積の標準偏差の値、側面面積の標準偏差の値、体積の標準偏差の値及び長さ/幅の比の標準偏差の値の内、一つ又は複数の標準偏差の値を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、穀粒品位判別装置で撮像した検査対象の穀粒の画像情報に、実測値である前記穀粒の容積重の値を加えた穀粒情報を用いて整粒重量比を求めるので、整粒重量比を高精度に求めることが可能となる。
また、この整粒重量比は、農産物検査法に基づく目視鑑定でも測定されるものであるから、目視鑑定の代替手段として、前記穀粒品位判別装置を活用することの可能性を広げるものと考えられる。
【0013】
また、前記画像情報として、100粒以上の前記穀粒の長さの平均値、幅の平均値、厚みの平均値、表面積の平均値、側面面積の平均値、体積の平均値及び長さ/幅の比の平均値等を利用するので、検査対象の各穀粒の特徴を適切に処理することができ、整粒重量比の算出精度を向上させることができる。
【0014】
さらに、前記画像情報として、前記穀粒の長さの標準偏差の値、幅の標準偏差の値、厚みの標準偏差値、表面積の標準偏差の値、側面面積の標準偏差の値、体積の標準偏差の値及び長さ/幅の比の標準偏差の値等を利用する。鑑定を行う際の試料(サンプル米)は、複数の穀粒を含むので、標準偏差の値を用いることで、一つの試料に含まれる複数の穀粒の長さ、幅、厚み、表面積、側面面積、体積、長さ/幅の比などのバラツキの特徴を適切に処理することができ、整粒重量比の算出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態における穀粒品位判別装置の制御ブロック図である。
図2】本発明に係る穀粒品位判別装置の縦側断面図を示した図である。
図3】本発明の実施の形態における穀粒品位判別装置の平面図である。
図4】本発明の実施の形態における第一光学検出部の縦側断面図である。
図5】本発明の実施の形態における第二光学検出部の縦側断面図である。
図6】本発明の実施の形態における穀粒品位判別装置を用いた整粒重量比の算出方法の手順を示したものである。
図7】米粒の画像イメージを示すものである。
図8】本発明の方法で求めた整粒重量比の測定結果を示した図である。
図9】本発明の方法で求めた整粒重量比の測定結果を示した図である。
図10】本発明の方法で求めた整粒重量比の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1のように本方法を実施するための装置としては、サンプル米(試料)の容積重を測定することのできるブラウェル穀粒計30と、前記サンプル米を撮像し、穀粒の一粒毎の画像情報を取得できる撮像手段を備えるとともに、前記容積重と前記画像情報とに基づいて前記サンプル米の整粒重量比を算出可能な演算手段を備えた穀粒品位判別装置1とから構成される。
【0017】
前記ブラウェル穀粒計30は、農産物検査法に基づく標準計測方法(平成13年農林水産省告示第332号)に記載されているものである。また、容積重は、所定の容積に対する玄米の重さのことである(単位は「g/l」)。
【0018】
穀粒品位判別装置1は、ブラウェル穀粒計30で測定された容積重の値が入力される入力部26と、二つの光学検出部(2a、2b)と、表示部25と、これらを制御する制御部20とから構成される。
【0019】
本発明の穀粒品位判別装置1には、例えば、特許第6805506号に記載されているような公知のものを用いることができる。図2は、本発明に係る穀粒品位判別装置1の縦側断面図を示した図である。この穀粒品位判別装置1は、被測定物の穀粒(以下「米粒S」という)を撮像部2に搬送する搬送部3が設けられている。該搬送部3は、円板搬送方式のものであって、米粒Sが1粒ずつ入る溝4aを周囲に複数設けた円板4を有する。
【0020】
前記円板4は、架台6bによって傾斜状に支持されたベース板6上に配設され、その中心部に、前記架台6bに固着したモータ5の出力軸5aが軸着されて回転自在としてある(図2及び図3参照)。本実施形態において、円板4は時計回り方向(矢印Y)に回転するものとしてある。前記各溝4aは、底部4bを透明材料で構成するとともに周縁部分を開放部4cで構成する。前記ベース板6上には、前記溝4a内の米粒Sが前記開放部4cから放出されるのを防止するための堰部6aが、円板4の周縁部に沿って構成してある。
【0021】
また、米粒供給部7が、円板4の傾斜下方位置に構成してある。この米粒供給部7は、円板4の周縁部上部に米粒Sが滞留できるように、前記堰部6aと連結した広幅状の平面を有してなる。
なお、この米粒供給部7を円板4の搬送始端側とすると、搬送終端側は、前記堰部6aを切り欠いた切欠部6cが形成されており、測定の終わった米粒Sを溝4aから落下させる構成になっている。
【0022】
前記撮像部2は、第1光学検出部2aと第2光学検出部2bから構成され、円板4の傾斜上方位置に配設されている(図2,3参照)。前記第1光学検出部2aは、搬送されてきた米粒Sの上面及び側面を光学検出(撮像)できる構成にしてある(図4参照)。
前記第1光学検出部2aは、溝4a(米粒S)の上方に、集光レンズ8、CCDリニアセンサー(受光センサー)9及び照射部10としての赤(R)・緑(G)・青(B)の発光ダイオードを構成し、溝4aの側方には、集光レンズ11及びCCDリニアセンサー(受光センサー)12を構成してある。
【0023】
また、溝4aの下方には、前記ベース板6を凹状にしたその内部空間に、米粒Sを下方から照射する照射部(発光ダイオード)13を構成する。
なお、前記第1光学検出部2aにおいて、溝4aの側方の堰部6aは透明材料とし、米粒Sからの光りがCCDリニアセンサー12に入光可能となるようにしてある。前記CCDリニアセンサー9,12は、赤(R)・緑(G)・青(B)の各光を受光することのできるものを用い、米粒Sの搬送方向(前記矢印Y)と直交する方向を走査するように配設する。
【0024】
次に、前記第二光学検出部2bの構成であるが、該第二光学検出部2bは米粒Sの下面(底面)を光学検出(撮像)するための構成がなされている(図5参照)。第二光学検出部2bは、前記ベース板6を凹状にしたその内部空間に、集光レンズ14、CCDリニアセンサー(受光センサー)15及び照射部16としての赤(R)・緑(G)・青(B)の発光ダイオードを構成し、一方溝4aの上方には、米粒Sを上方から照射する照射部(発光ダイオード)17が構成してある。前記CCDリニアセンサー15も、赤(R)・緑(G)・青(B)の各光を受光することのできるものを用い、米粒Sの搬送方向(前記矢印Y)と直交する方向を走査するように配設する。
【0025】
次に、前記CCDリニアセンサー9,12,15からの受光信号を受けて信号処理を行う制御部(信号処理部)20につき、その一例を説明する(図1参照)。
前記制御部20は、中央演算処理部(以下「CPU」という)21を構成の中心とし、該CPU21と電気的に接続した入出力回路(以下「I/O」という)22、読み込み専用記憶部(以下「ROM」という)23及び読み込み・書き込み用記憶部(以下「RAM」という)24から構成する。
【0026】
前記I/O22は、前記CCDリニアセンサー9,12,15と電気的に接続するとともに、前記CPU21で判別した品位、粒画像、整粒重量比等を表示する表示部25及び設定開始ボタン22a(図示せず)にも同様に接続する。
前記ROM23には、穀粒品位判別装置1を制御するための運転プログラム及びルックアップテーブルが記憶してある。また、前記制御部20は、前記モータ5の始動制御や前記照射部10,13,16,17の点灯出力制御を行なう回路(図示せず)とも電気的に接続してある(公知手段につき詳細説明省略)。
【0027】
また、前記I/O22は、入力部26と接続されている。この入力部26は、ブラウェル穀粒計30で測定された容積重の値が入力されるものである。
なお、容積重を測定する容積重測定装置は、ブラウェル穀粒計に限定されるわけではなく、ヘクトリットルキログラム計や電気式穀粒計を用いてもよい。
【0028】
前記穀粒品位判別装置1での米粒の撮像方法を説明する。本実施形態では検査対象の米粒が玄米である場合について説明する。図6は、粒状物外観品位判別装置1を用いた穀粒の品位判別方法及び整粒重量比の算出方法の手順を示したものである。
【0029】
(1)容積重測定工程(ステップS1):
まず、検査対象の穀粒(サンプル米)の容積重をブラウェル穀粒計30で測定する。前記測定は、農産物検査法に基づく標準計測方法(平成13年農林水産省告示第332号)に記載の方法で行うことが望ましい。
なお、前記容積重測定工程(ステップS1)は、穀粒品位判別装置1での測定後に行ってもよい。
【0030】
(2)撮像工程(ステップS2):
次に、穀粒品位判別装置1で前記サンプル米の測定を行う。米粒供給部7に試料である米粒Sを供給し測定開始ボタン(図示せず)をONにすると円板4が回転し、米粒供給部7の米粒Sは一粒ずつ溝4aに入って前記第一、第二光学検出部2a,2bに搬送される。前記第一光学検出部2aでは、照射部10,13から米粒Sに照射光が当り当該米粒Sが前記CCDリニアセンサー9,12により走査される。これによって、米粒Sの平面及び側面の画像情報が得られ、各画像情報は順次前記RAM24に記憶される。
【0031】
前記第一光学検出部2aを経た米粒Sは前記第二光学検出部2bで撮像される。すなわち、前記第二光学検出部2bでは、照射部16,17から米粒Sに照射光が当り当該米粒Sが前記CCDリニアセンサー15により走査される。これによって、米粒Sの裏面の画像情報が得られ、該画像情報は順次前記RAM24に記憶される。
【0032】
(3)画像処理工程(ステップS3):
前記CPU21は、前記RAM24に記憶した各米粒Sの画像情報を順次読み出して画像処理部47で処理し、粒毎に画像情報を得て、各米粒の外形形状、面積、長さ、幅、色彩、胴割等の品位に関連する測定品位情報を抽出する。
【0033】
(4)判別工程(ステップS4):
次に、CPU21の判別部48において前記測定品位情報をあらかじめ設定した設定品位情報(例えば、しきい値や検量線(品位関係式)等)と比較等して各米粒の品位(整粒、砕米、死米、着色米、青未熟米、害虫被害米等)を判別する。前記抽出及び判別は、一般的な解析手法で行うことができる。例えば、特開2011-242284号公報や特開2000-304702に記載されているような方法を用いることができる。
【0034】
(5)演算工程(ステップS5)
この段階で、上記容積重測定工程(ステップS1)で測定した容積重の値を、穀粒品位判別装置1の入力部26に入力する。そして、入力された前記容積重の値がI/O22を介してCPU21に送られ、CPU21にて、整粒重量比が算出される。この算出は、事前に整粒重量比を算出するために作成された検量線(計算式)に、ブラウェル穀粒計で測定した容積重の値と、前記測定品位情報の値を代入して行うものである。前記検量線は後述する方法で作成する。また、代入する前記値は後述するものを用いればよい。
【0035】
(6)画像作成工程(ステップS6):
前記CPU21の画像処理部において、前記画像情報を利用し、粒毎に米粒の粒画像を作成する。画像作成工程は、上記画像処理工程(ステップS3)で行うようにしてもよい。
【0036】
(7)表示工程(ステップS7):
前記画像作成工程で作成した各米粒の粒画像を、ディスプレイ等の表示部25に表示する。該表示は、方法は特に限定されない。
【0037】
前記画像処理工程(ステップS3)にて、投入した玄米(サンプル米)の、長さ、幅、厚み、表面積、側面面積、体積、長さ/厚みの比、等の値を粒毎に求めるとともに、長さ標準偏差、幅標準偏差、厚み標準偏差、表面積標準偏差、側面積標準偏差、体積標準偏差、長さ/厚みの比の標準偏差などをサンプル米毎に算出する。算出したこれらの値や標準偏差を前記表示工程(ステップS7)で表示させてもよい。
なお、穀粒の画像情報から前記値を求めるには、例えば、特開2003-042963号公報に開示されている公知の方法を用いることができる。
【0038】
前記算出において、長さは、図7のX方向であって穀粒の長手方向の長さのことであり、幅はY方向、厚みはZ方向となる。また、前記表面積は図7(a)で示す穀粒の面積であり、前記側面面積は図7(b)で示す穀粒の面積である。
また、サンプル米の整粒重量比を、前記値、標準偏差及び別途測定して求める容積重量値とから後述の方法で算出する。そして、前記整粒重量比を前記表示工程(ステップS7)で表示させてもよい。
ところで、整粒重量比とは、一定量の玄米のなかに存在する整粒の割合を重量比で示したものである。例えば、100gのサンプル米に70gの整粒が存在すれば、そのサンプル米の整粒重量比は70%となる。
【0039】
ところで、本発明の実施形態では、穀粒品位判別装置1のCPU21を利用して前記演算工程(ステップS5)を行っているが、穀粒品位判別装置1で撮像した画像情報及びブラウェル穀粒計で測定した容積重の値を入力可能なPC(パソコン)やタブレット端末等であれば、それらを利用して前記演算工程(ステップS5)を行うことが可能である。
【0040】
本発明では、穀粒の画像情報(撮像データ)で算出する整粒重量比をより精度の高いものとするために、実測値である容積重値と、穀粒品位判別装置1で測定可能な項目(長さ、幅、厚み、等)とを説明変数、整粒重量比を目的変数とした検量線(回帰式)を作成する。そして、この検量線を用いて整粒重量比を算出することを特徴とする。検量線を作成する際には公知の分析方法を用いればよい。重回帰分析やPLS回帰分析などの多変量解析により検量線を作成すればよい。前記説明変数は、前記測定品位情報の値を用いる。
【0041】
前記検量線の作成方法を説明する。複数のサンプル米(玄米)を用意し、各サンプル米の容積重を測定する。この測定は、公知のブラウェル穀粒計30(藤原製作所社製)で行った。サンプル米には、計34種類の2018年産又は2019年産の国内産の玄米(短粒種)を使用した。
なお、前記サンプル米をそれぞれ3回測定し、102個の測定データとした。
【0042】
ブラウェル穀粒計30の測定方法は、農産物検査法に基づく標準計測方法(平成13年農林水産省告示第332号)に記載の方法で行った。
【0043】
次に、前記102個の測定データを使用し、整粒重量比を目的変数、前記容積重値及び穀粒品位判別装置1の画像情報から求めた各項目の値を説明変数にして、重回帰分析により検量線を作成した。その際、前記102個の測定データを二つに分け、51個の測定データを校正(キャリブレーション)用に使用し、残りの51個の測定データを検証(プレディクション)用に使用した。
【0044】
なお、本発明の実施例では、穀粒品位判別装置1で撮像した画像情報及びブラウェル穀粒計で測定した容積重の値を入力可能なPC(パソコン)を別途用意し、そのPCにより、検量線の作成、校正及び検証を行った。
【0045】
目的変数とする前記整粒重量比は、粒毎に重量を測定したものを用いるのが望ましいが、本実施例では、穀粒判別器(サタケ社製、型式:RGQI100B)で測定して求めたものを使用した。
【0046】
次に、説明変数の個数を8個(実施例1)、15個(実施例2)及び4個(実施例3)の場合で検量線を作成した結果を下記に示す。
【0047】
実施例1(説明変数が8個)
目的変数:整粒重量比
説明変数:容積重、長さ平均、幅平均、厚み平均、表面積平均、側面面積平均、体積平均、長さ/厚みの比の平均
【0048】
前記102個のサンプル米の測定データ(容積重値及び画像情報)を二つに分け、51個の測定データを校正用(キャリブレーション)に使用し、重回帰分析を行って係数及び定数を求めて検量線A(回帰式)を作成する。そして、残り半分の51個の測定データを前記検量線Aに代入して検証(プレディクション)を行った。その結果を図8に示す。
【0049】
図8は、前記検量線Aを使用し、穀粒品位判別装置1の米粒の画像情報と容積重量値とから算出した整粒重量比の精度を示すものである。上記実施例1の条件(説明変数8個)で算出した結果、相関係数(R)は0.528であった。
【0050】
実施例2(説明変数が15個)
目的変数:整粒重量比
説明変数:容積重、長さ平均、幅平均、厚み平均、表面積平均、横面積平均、体積平均、長さ/厚みの比の平均、長さ標準偏差、幅標準偏差、厚み標準偏差、表面積標準偏差、側面面積標準偏差、体積標準偏差、長さ/厚みの比の標準偏差
【0051】
上記実施例2は、実施例1の説明変数に、複数の標準偏差の値を追加したものである。前記102個のサンプル米の測定データ(容積重値及び画像情報)を二つに分け、51個の測定データを校正用(キャリブレーション)に使用し、重回帰分析を行って係数及び定数を求めて検量線B(回帰式)を作成する。そして、残り半分の51個の測定データを前記検量線Bに代入して検証(プレディクション)を行った。その結果を図9に示す。
【0052】
図9は、前記検量線Bを使用し、穀粒品位判別装置1の米粒の画像情報と容積重量値とから算出した整粒重量比の精度を示すものである。上記実施例2の条件(説明変数15個)で算出した結果、相関係数(R)は0.738であった。説明変数に標準偏差の値を追加することで精度を向上させることが可能となる。
【0053】
実施例3(説明変数が4個)
目的変数:整粒重量比
説明変数:容積重、長さ平均、幅平均、厚み平均
【0054】
前記102個のサンプル米の測定データ(容積重値及び画像情報)を二つに分け、51個の測定データを校正用(キャリブレーション)に使用し、重回帰分析を行って係数及び定数を求めて検量線C(回帰式)を作成する。そして、残り半分の51個の測定データを前記検量線Cに代入して検証(プレディクション)を行った。その結果を図10に示す。
【0055】
図10は、前記検量線Cを使用し、穀粒品位判別装置1の米粒の画像情報と容積重量値とから算出した整粒重量比の精度を示すものである。上記実施例3の条件(説明変数4個)で算出した結果、相関係数(R)は0.460であった。前記条件では、整粒重量比を精度よく出すことが困難と思われる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の穀粒品位判別装置を用いた整粒重量比の算出方法によれば、試料(サンプル米)の整粒重量比を精度よく求めることが可能となる。サンプル米の重量を米粒ごとに実測しなくてもそのサンプル米の整粒重量比を高精度に算出し、算出した整粒重量比で定量的にサンプル米を評価することができるため、極めて有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 穀粒品位判別装置
2 撮像部
2a 第1光学検出部
2b 第2光学検出部
3 搬送部
4 円板
4a 溝
4b 底部
4c 開放部
5 モータ
5a 出力軸
6 ベース板
6a 堰部
6b 架台
7 米粒供給部
8 集光レンズ
9 CCDリニアセンサー(受光センサー)
10 照射部
11 集光レンズ
12 CCDリニアセンサー(受光センサー)
13 照射部
14 集光レンズ
15 CCDリニアセンサー(受光センサー)
16 照射部
17 照射部
20 制御部
21 中央演算処理部(CPU)21
22 入出力回路(I/O)
23 読み込み専用記憶部
24 読み込み・書き込み用記憶部
25 表示部
26 入力部
30 ブラウェル穀粒計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10