IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特開2023-51013搬送カートおよび搬送カートの制御方法
<>
  • 特開-搬送カートおよび搬送カートの制御方法 図1
  • 特開-搬送カートおよび搬送カートの制御方法 図2
  • 特開-搬送カートおよび搬送カートの制御方法 図3
  • 特開-搬送カートおよび搬送カートの制御方法 図4
  • 特開-搬送カートおよび搬送カートの制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051013
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】搬送カートおよび搬送カートの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230404BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G05D1/02 Y
B62B3/00 B
B62B3/00 Z
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161430
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久継 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】寧 鋭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
【テーマコード(参考)】
3D050
5H301
【Fターム(参考)】
3D050AA02
3D050BB01
3D050EE08
3D050EE15
3D050KK14
5H301AA02
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD17
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301HH10
5H301LL02
5H301QQ02
(57)【要約】
【課題】
搬送カートにおける運用の特性を活かし、より効率的に搬送カートの走行モードの切り替えに関する制御を行うことを課題とする。
【解決手段】
上記の課題を解決するための本発明の構成は、利用者の操作による手動走行モードと自律走行モードを有し、積載物を搬送する搬送カートにおいて、前記利用者により、操作される手押し用ハンドルと、積載物を積載するかご部と、走行のための車輪と、前記手押し用ハンドル、前記かご部および前記車輪と接続する本体部と、前記自律走行モードにおける当該搬送カートの走行を制御する制御部を有し、前記制御部は、当該搬送カートの搬送についての状況に応じて、前記自律走行モードへの遷移に関する制御を行う搬送カートである。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の操作による手動走行モードと自律走行モードを有し、積載物を搬送する搬送カートにおいて、
前記利用者により、操作される手押し用ハンドルと、
積載物を積載する積載部と、
走行のための車輪と、
前記手押し用ハンドル、前記積載部および前記車輪と接続する本体部と、
前記自律走行モードにおける当該搬送カートの走行を制御する制御部を有し、
前記制御部は、当該搬送カートの搬送についての状況に応じて、前記自律走行モードへの遷移に関する制御を行う搬送カート。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送カートにおいて、
前記制御部は、前記自律走行モードへの遷移に関する制御として、当該自律走行モードへの遷移自体または前記自律走行モードへの遷移についての通知を出力するための制御を行う搬送カート。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送カートにおいて、
さらに、
前記積載物を検知する積載物検知部と、
当該搬送カートの位置と方向の少なくとも一方を検知する走行検知部と、
前記制御部は、前記積載物検知部、前記走行検知部の検知結果を受け付け、前記自律走行モードへの遷移に関する制御を行う搬送カート。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送カートにおいて、
前記積載物検知部は、前記積載部に対する荷重量が所定量以下であるか、および前記積載部に前記積載物が存在するか否かの少なくとも一方を検知する搬送カート。
【請求項5】
請求項3に記載の搬送カートにおいて、
前記制御部は、前記積載物検知部によって積載物が検知されず、前記走行検知部により前記搬送カートの方向が所定方向であること、および/または、前記走行検知部により前記搬送カートが所定位置に位置することが検知された場合に、前記自律走行モードへの遷移を実行し、前記自律走行モードへの遷移が可能でない場合に前記通知を出力する搬送カート。
【請求項6】
請求項2に記載の搬送カートにおいて、
前記通知は、前記自律走行モードへの遷移したこともしくは前記自律走行モードへの遷移を促すことを示す搬送カート。
【請求項7】
請求項2に記載の搬送カートにおいて、
さらに、当該搬送カートが所定位置に所定時間以上滞留していることを検知する滞留検知部を有し、
前記制御部は、前記滞留検知部によって前記搬送カートが所定時間以上滞留したことを検知した場合に自律走行モードへの遷移に関する制御を行う搬送カート。
【請求項8】
請求項1に記載の搬送カートにおいて、
前記制御部は、前記自律走行モードへの遷移に関する制御として、当該自律走行モードへ遷移を行い、予め定められた返却場所に当該搬送カートを返却させる搬送カート。
【請求項9】
請求項1に記載の搬送カートにおいて、
さらに、
前記利用者からの入力を受け付ける入力部と、
他の機器の制御装置と通信を行う通信部と、
前記他の機器の情報を表示する表示部と有し、
前記通信部は、前記入力部からの入力に応じて、前記他の機器に対する操作指示を通信する搬送カート。
【請求項10】
請求項9に記載の搬送カートにおいて、
前記他の機器がエレベーターであり、
前記表示部は、前記エレベーターの運行情報を表示し、
前記入力部は、前記エレベーターのカゴ呼びを受け付ける搬送カート。
【請求項11】
請求項9に記載の搬送カートにおいて、
前記制御部は、当該搬送カートの位置情報に基づいて、前記表示部での表示および制御可能な他の機器を変更する搬送カート。
【請求項12】
利用者の操作による手動走行モードと自律走行モードを有し、積載物を搬送する搬送カートの制御方法において、
前記搬送カートは、前記利用者により、操作される手押し用ハンドルと、積載物を積載する積載部と、走行のための車輪と、前記手押し用ハンドル、前記積載部および前記車輪と接続する本体部と、前記自律走行モードにおける当該搬送カートの走行を制御する制御部を有し、
前記制御部により、
当該搬送カートの搬送についての状況を検知し、
当該搬送カートの搬送についての状況に応じて、前記自律走行モードへの遷移に関する制御を行う搬送カートの制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載の搬送カートの制御方法において、
前記制御部により、
前記自律走行モードへの遷移に関する制御として、当該自律走行モードへの遷移自体または前記自律走行モードへの遷移についての通知を出力するための制御を行う搬送カートの制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の搬送カートの制御方法において、
当該搬送カートは、さらに、前記積載物を検知する積載物検知部と、当該搬送カートの方向を検知する走行検知部と、当該搬送カートが所定位置に所定時間以上滞留していることを検知する滞留検知部を有し、
前記制御部により、前記積載物検知部、前記走行検知部および前記滞留検知部の検知結果を受け付け、前記自律走行モードへの遷移に関する制御を行う搬送カートの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物や商品等を積載する台車や搬送カート(以下、単に搬送カート)やその動作を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スーパーマーケットや工場、ビルなどの施設において、荷物や商品などの物品(積載物)を搬送するために、搬送カートが利用されている。搬送カートでは、自律走行モードと手動走行モードを有する場合がある。ここで、搬送カートではないが、自律走行モードと手動走行モードを有する車両に関する技術が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1では、「自律走行の適用および解除を行う」ことを課題としている。この課題を解決するために、特許文献1には、「自律走行モードと手動運転モード間の切り替え」を行うため、車両のコンピュータ110は一定の状態を識別するため一連の環境、システム、及び運転者のチェックを実行し得る。このコンピュータは、これらの状態のいくつかを修正し、また完了すべきタスク810-850、910-940のチェックリストを運転者に提供し得る。いったんタスクが完了し状態が変化すると、コンピュータ110は運転者が手動運転モードから自律走行モードに切り替えることを許可し得る。また、コンピュータ110は、自律走行モードから手動運転モードに切り替えることは一定の状態のもとで運転者の安全や心地良さにとって有害であろうと判定し得る。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-212905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、手動運転モードから自律運転モードに切り替える要求を受けた場合に、走行状態を条件に切り替えを実行している。このように、特許文献1では、切り替え要求や走行状態に応じて切り替えを行っているが、要求の手間や走行状態(タスク)の判断処理で負荷が生じる。
【0006】
そこで、本発明では、この運用の特性を活かし、より効率的に搬送カートの走行モードの切り替えに関する制御を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記の課題を鑑みなれたもので、手動走行モードである搬送カートについて、その搬送についての状況に応じて、自律走行モードへの遷移に関する制御を実行する。より具体的には、利用者の操作による手動走行モードと自律走行モードを有し、積載物を搬送する搬送カートにおいて、前記利用者により、操作される手押し用ハンドルと、
積載物を積載する積載部と、走行のための車輪と、前記手押し用ハンドル、前記積載部および前記車輪と接続する本体部と、前記自律走行モードにおける当該搬送カートの走行を制御する制御部を有し、前記制御部は、当該搬送カートの搬送についての状況に応じて、前記自律走行モードへの遷移に関する制御を行う搬送カートである。
【0008】
また、本発明には、この搬送カートの制御方法も含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より効率的に搬送カートの走行モードの切り替えに関する制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例における搬送カートの外観を示す図である。
図2】本発明の一実施例における搬送カートの側面を示す図である。
図3】本発明の一実施例における搬送カートを含むシステムの機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施例における搬送カートの制御フローを示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施例における自動走行モード処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。本実施例では、自律走行可能な搬送カート1を例に説明するが、本発明はこれに限定されない。駆動力を発揮する搬送カートであればよく、例えば、手動走行を支援する機能を有する搬送カートにも、本発明を適用できる。また、搬送カート1は積載物を人力によって搬送を行う機能も有している機器であり、ショッピングカートや各種台車など様々な形状のものを含む。また、本実施例においては、搬送カート1が自律走行のための制御を行う。
【0012】
まず、本実施例の搬送カート1の構造について説明する。図1は、本実施例における搬送カート1の外観を示す図である。また、図2は、本実施例における搬送カート1の側面を示す図である。図1および図2において、搬送カート1は、かご部11、手押し用ハンドル12、本体部13、自由輪回転従属輪14、駆動輪15および駆動機構16を有する。
【0013】
本実施例の搬送カート1は、本体部13を介して、他のかご部11、手押し用ハンドル12、自由輪回転従属輪14および駆動機構16ないし駆動輪15が接続されている。なお、駆動輪15もしくは駆動機構16は、いずれか一方が、本体部13と接続してもよい。このため、本体部13は、いわゆるフレームで実現できる。
【0014】
また、かご部11は、積載物を積載する積載部の一種である。なお、積載部は、積載物を積載できればよく、かご部11以外の荷台などで実現可能である。ここで、かご部11には、積載物の有無を検知するための重量センサー19を有する。この重量センサー19は、かご部11への荷重量を検知する。より望ましくは、重量センサー19は、かご部11への荷重が所定量以下であるかを検知する。この所定量には、荷重が0であることを含む。なお、本実施例では重量センサー19を用いるが、積載物の有無を判定できればよく、重量センサー19以外のセンサーを用いてもよい。例えば、カメラ、超音波センサー、LiDAR等を用いて、かご部11に積載物を含む物体があるか否かを検知してもよい。また、複数のセンサーを組み合わせて積載物の有無を判定してもよい。例えば、重量センサー19とカメラの少なくとも一方で積載物があると判断された場合に、積載物があると判断してもよい。このように、本実施例では、積載物の存在を検知する積載物検知部を設ければよい。この積載物検知部は、荷重が所定量以下であるかおよび積載物が存在するか否かの少なくとも一方を検知すればよく。
【0015】
また、手押し用ハンドル12は、利用者により操作されるものである。つまり、利用者が手押し用ハンドル12を握り、これを押すことで搬送カート1が手動走行する。また、図1に示すように、手押し用ハンドル12は、右用の手押しハンドル12-1、左手用の手押しハンドル12-2で構成されるが、これに限定されない。
【0016】
さらに、手押し用ハンドル12には、表示部18および入力部17が設置される。ここで、表示部18は、自律走行に関する情報などを表示する。また、入力部17は、利用者からの操作や端末装置2(図4参照)などから自律走行に関する指示を受け付ける。自律走行に関する操作には、自律走行の開始や終了、速度や目的地の設定などが含まれる。なお、表示部18や入力部17は、かご部11や本体部13に設置してもよい。さらに、表示部18および入力部17は、タッチパネルのように一体で構成してもよい。また、表示部18および入力部17は、搬送カート1と直接または間接的に通信可能であり、利用者が所有しているコンピュータなどの情報端末でも良い。
【0017】
また、自由輪回転従属輪14は、利用者の手押しや駆動輪15の駆動に応じて、回転する回転従属輪である。自由輪回転従属輪14は、他の装置の駆動に応じて回転する回転従属輪で実現できる。なお、図1に示すように、自由輪回転従属輪14は、2輪(14-1、14-2)で構成される。但し、自由輪回転従属輪14の数は、2輪に限定されない。なお、本実施例では、自由輪回転従属輪14は、いわゆる自在輪を示す。
【0018】
また、駆動輪15は、自由輪回転従属輪14の後方に配置され、駆動力に応じて搬送カート1の自律走行を実現する。本実施例では、駆動輪15を、自由輪回転従属輪14の後方に配置しているが、これに限定されない。なお、駆動機構16については、図3を用いて、後述する。また、以上のように、車輪である自由輪回転従属輪14や駆動輪15が用いられる。また、車輪については、ローラー(球体のものを含む)や無限軌道などの移動、走行のための部位を含む概念である。
【0019】
以上で、本実施例の搬送カート1の構造の説明を終わり、次に、自律走行機能について説明する。本実施例では、利用者が積載物を、手動走行モードの搬送カート1で目的まで搬送し、この搬送カート1を返却場所に返却するために、自律走行モードを利用する。つまり、本実施例では、手動走行モードと自律走行モードの切り替え(遷移)を行っている。
【0020】
なお、ここでは、駆動機構16の構成についても説明する。ここで、自律走行機能を実現するための構成を、図3に示す。図3は、本実施例における搬送カート1を含むシステムの機能ブロック図である。図3のシステムでは、搬送カート1は、端末装置2やコンピュータ装置3と接続されている。端末装置2は、近距離無線通信を用いて、入力部17と接続される。また、コンピュータ装置3は、インターネットのようなネットワーク4を介して通信部161と通信する。これら端末装置2やコンピュータ装置3は、搬送カート1の自律走行に関する指示を出力する。端末装置2やコンピュータ装置3は、情報処理装置(コンピュータ)であるスマートフォン、タブレット、PC等で実現できる。なお、上述の指示については、追って説明する。
【0021】
まず、駆動機構16について説明する。図3に示すように、駆動機構16は、通信部161、制御部162、モーター163および可変サスペンション164を有する。通信部161や制御部162は、通信路を介して入力部17やモーター163と接続される。また、図示していないが、表示部18も通信路と接続される。また、図1図2示す重量センサー19も通信路に接続される。
【0022】
また、通信部161は、ネットワーク4を介して、エレベーターやセキュリティゲート、機械式駐車場など他の機器の制御装置と接続しても良い。これにより、搬送カート1の表示部18に他の機器の状態を表示できる。また、入力部17において他の機器を制御する入力を行ってもよい。例えば、表示部18にエレベーターのカゴ位置や混雑状況を表示してもよい。また、入力部17からエレベーターのカゴ呼びを行えるようにしてもよい。また、エレベーターのカゴ呼びなど他の機器に対する操作指示は入力部17を通して人が行うのみならず、制御部162が制御プログラムに基づいて行ってもよい。また、他の機器の制御は、後述する搬送カート1の位置情報を得る手段から得られた位置情報に基づいて制御可能か否かを判断する処理を加えてもよい。例えば、エレベーターの設置位置から一定距離内にある場合のみに入力部17からエレベーターのかご呼びを行えるようにしてもよい。つまり、制御部162は、搬送カート1の位置に応じて、表示や制御可能な機器を変更する構成とすることができる。
【0023】
ここで、制御部162は、上述の指示、利用者からの指示等に応じて、自身が有する制御プログラムに従って、自律走行を制御する制御信号を生成し、モーター163にこれを出力する。
【0024】
また、モーター163は、制御部162からの制御信号に従って、動力を出力する。この結果、駆動輪15や可変サスペンション164が、制御信号に応じた動作を実行する。また、可変サスペンション164は、モーター163に応じて能動的に動作機能するサスペンションである。なお、可変サスペンション164は、通常のサスペンションを用いてもよいし、省略してもよい。また、本実施例では、モーター163は、左右の駆動輪15ごとに設けられる。なお、駆動輪15のそれぞれでは、異なる駆動を発生させることできればよく、モーター163は左右の駆動輪15ごとに設けなくともよい。
【0025】
次に、搬送カート1の自律走行の制御の詳細について説明する。図4は、本実施例における搬送カート1の制御フローを示すフローチャートである。本フローチャートでは、所定条件を満たす場合、自律走行モード処理を実行する処理を示す。以下、図4に従って、その詳細を説明する。
【0026】
まず、ステップS1において、制御部162が、搬送カート1が自律走行モードであるかを判定する。つまり、手動走行モードか自律走行モードであるかを判定する。このために、制御部162は、端末装置2や利用者から自律走行指示を受け付けているか、を用いることができる。この結果、自律走行を行っている場合には(YES)、本処理を終了する。また、手動走行モードである場合には(NO)、ステップS2に遷移する。
【0027】
次に、ステップS2において、制御部162は、積載物があるかを判定する。このために、制御部162は、重量センサー19の計測結果を用いる。この結果、積載物が有る場合には、ステップS3に遷移する。また、積載物が無い場合には、ステップS5に遷移する。
【0028】
次に、ステップS3において、制御部162は、ステップS2で検知された積載物が荷下ろしされたかを判定する。このために、積載物検知部が、積載物が除かれたか、つまり、積載物が存在するかを検知する。そして、制御部162はこの検知結果を受け付け、これを用いる。この結果、積載物が荷下ろしされた場合(積載物無し)には、ステップS4に遷移する。また、積載物が残っている(積載物有り)の場合、ステップS5に遷移する。このために、制御部162は、重量センサー19を用いることが望ましい。このステップでは、搬送カート1の積載物が荷下ろしされたため、返却が可能になったことを判定していることになる。
【0029】
ここで、ステップS3では、さらに以下の処理を行う構成としてもよい。まず、ジャイロセンサーやGPS装置で代表される走行検知部で、搬送カート1の位置および姿勢(方向)の少なくとも一方を検知する。そして、制御部162は、位置および姿勢の少なくとも一方である走行検知部の検知結果を用いて、搬送カート1が自律走行可能かを判定する。この結果、積載物無しで自律走行可能である場合は、ステップS4に遷移する。これ以外の場合、ステップS5に遷移する。なお、この構成の詳細は、後述するステップS65およびS66で説明する。なお、この構成を採用した場合、ステップS65およびS66の処理を本ステップの結果を流用できる。
【0030】
次に、ステップS4において、制御部162は、搬送カート1が方向転換されたかを判定する。これは、利用者が積載物を自室などの目的地まで搬送し、自律走行により搬送カート1を戻すために、向きを変えたかを判定する。
【0031】
このために、制御部162は、ジャイロセンサー等の搬送カート1に設けられた走行方向検知部を用いることが可能である。つまり、方向検知部は、搬送カート1の方向転換を検知する。そして、制御部162は、方向検知部からこの検知結果を受け付ける。この結果、所定の条件を満たす方向転換がされた場合(YES)には、ステップS6に遷移する。また、所定の条件を満たす方向転換がされていない場合(NO)には、ステップS5に遷移する。なお、所定の条件とは、所定速度、加速度以上の転換や所定の角度以上の走行転換が含まれる。さらに、位置情報を用いて、所定の位置での方向転換がなされたかを判定してもよい。
【0032】
また、ステップS5において、制御部162は、搬送カート1が放置されたかを判定する。このために、制御部162は、地図情報を有し、搬送カート1が所定位置に一定時間以上滞留されているかを判定し、一定時間以上滞留していると判断された場合に搬送カート1が放置されたと判断する。このために、搬送カート1は、周囲を走査するLiDARなどのセンサーを有し、センサーによって一定範囲から利用者がいなくなったと判断してから、放置であるかを判断するための時間を計測してもよい。つまり、本ステップでは、センサーを含む滞留検知部により一定時間以上滞留しているかを検知する。そして、制御部162が、この検知結果を滞留検知部から受け付ける。所定位置には、返却場所や仮置き場(一時保存場所)以外の場所が含まれる。なお、本ステップでは、搬送カート1が返却場所への移動が必要であることを判定することになる。
【0033】
そして、ステップS6の自動走行モード処理が実行される。以上のように、ステップS3~S5の搬送カート1の搬送についての状況を検知し、これに応じて、この自動走行モード処理が実行される。つまり、搬送カート1の返却が可能もしくは必要かを判定し、可能もしくは必要な場合に、自動走行モードに遷移し、返却を実現することになる。ここで、搬送カート1の搬送についての状況は、搬送カート1の返却以外の状況であってもよい。
【0034】
なお、本実施例では、ステップS3~S5の順で判定しているが、各ステップの1つや一部の組合せのみを実行してもよいし、並行処理してもよい。このステップS6が実行されると、本処理フローを終了する。
【0035】
ここで、ステップS6の自動走行モード処理の詳細を説明する。図5は、本実施例における自動走行モード処理の詳細を示すフローチャートである。
【0036】
まず、ステップS61において、制御部162は、自動走行モード処理として、通知を行うか、自走走行モードに遷移するかを判定する。これは、制御部162で予め定めた処理を選択するようにしてもよいし、いずれか一方のみを実行する構成としてもよい。
【0037】
この結果、通知を行う場合、ステップS62に進む。また、自走走行モードに遷移する場合、ステップS64に進む。
【0038】
次に、ステップS62において、制御部162は、表示部18に自動走行モードへ遷移するかを確認する通知を行う。これを受けて、利用者は入力部17に対して、自動走行モードへの遷移を許可するかを入力する。また、搬送カート1に積載物がある場合には、積載物が残っていることを利用者に通知した上で、自動走行モードに遷移するかを利用者に入力させるようにしてもよい。
【0039】
そして、ステップS63において、制御部162は、自動走行モードへの遷移が許可されたかを判定する。この結果、不許可の場合、本処理を終了する。許可された場合、ステップS64に進む。
【0040】
なお、ステップS61~S63は、以下のように制御可能である。まず、ステップS61において、制御部162は、自律走行できるか否かを、予め定めた条件を満たすかにより判定する。この結果、できない場合は、ステップS62に遷移する。なお、条件には、積載物を荷下ろしすること、搬送カート1の方向を変えることなどが含まれる。
【0041】
次に、ステップS62において、制御部162は、表示部18を用いて、自律走行できるように条件を整えるように通知する。
【0042】
そして、ステップS63において、制御部162は、利用者が条件を整えた場合に、自律走行モードへの遷移を許可する(ステップS64へ遷移)。また、ステップS63では、利用者が該当の条件を整えた場合に、入力部17が利用者から手動で自律走行モードへの遷移指示を受け付けてもよい。
【0043】
次に、ステップS64において、制御部162は、自動走行モードを開始、つまり、自動走行モードに遷移する。なお、本実施例では、通知に対する許可を条件としているが、通知自体を条件としてステップS64を実行してもよい。
【0044】
次に、ステップS65において、制御部162は、搬送カート1の位置や姿勢を取得する。このために、制御部162は、搬送カート1に設けられたジャイロセンサーやGPS装置を用いる。つまり、ジャイロセンサーやGPS装置で代表される走行検知部で、搬送カート1の位置および姿勢(方向)の少なくとも一方を検知する。
【0045】
次に、ステップS66において、制御部162は、自身が有する地図情報と、ステップS65で取得された位置および姿勢(方向)の少なくとも一方である走行検知部の検知結果を用いて、搬送カート1の返却場所に移動可能かを判定する。また、積載物の重量が自動走行モードで運搬可能な重量であるか否かも移動可能な条件として判定する。この結果、不可の場合にはステップS67に進み、可能な場合にはステップS68に進む。
【0046】
なお、制御部162での搬送カート1が返却場所へ移動可能との判定には、以下の処理が含まれる。つまり、制御部162は、走行検知部により搬送カート1の姿勢(方向)が所定方向であること、および/または、走行検知部の検知結果により搬送カート1が所定位置に位置することを検知された場合に、自律走行モードへの遷移自体が可能と判定し、これを実行する。この場合、自律走行モードへの遷移自体が可能でない場合、ステップS62の通知処理を実行する。
【0047】
さらに、返却場所への移動が可能かの判定には、搬送カート1の姿勢を変更できるかの判定が含まれる。この場合、搬送カート1の位置が壁のような障害物に近接して存在することが含まれる。また、この判定では、自律走行が可能かを判定してもよい。
【0048】
ステップS67において、制御部162は、表示部18もしくは端末装置2コンピュータ装置3に、返却場所への移動ができないことを通知する。また、制御部162は、自身の地図情報の格納された仮置き場に、搬送カート1を移動させる制御信号を出力する。これらは併せて実行してもよいし、一方のみを実行してもよい。なお、上述の通知により、利用者もしくは搬送カート1の管理者が、返却の必要性を判断できる。この場合、これら利用者や管理者が手動で搬送カート1を返却することが望ましい。また、自動走行モードでの移動の妨げになっている条件を通知し、当該条件を解消してもらったのちに、ステップS68に進み、自動走行モードで返却してもよい。ここでいう条件の解消とは、例えば、積載物を降ろすこと、車両の方向あるいは位置を特定の状態まで移動させることなどを言う。また、仮置き場とは、搬送カート1が存在する近傍(例えば、同一フロア)に設けられる一部保存場所が相当する。
【0049】
また、ステップS68において、制御部162は、自身が有する地図情報を用いて、自律走行モードにより、予め定められた返却場所に搬送カート1を移動させる。以上の本実施例では、ステップS3において、搬送カート1の積載物の有無や搬送カート1の位置および姿勢のうち少なくとも一方を用いて、自律走行モード処理を行うかを判定している。
【0050】
以上で、本実施例の説明を終了するが、本発明は本実施例に限定されず、例えば以下のような様々な変形例を含む。
【0051】
(1)搬送カート1に、自律走行中に周囲に自律走行、つまり、自動運転中であることを知らせるランプまたは表示画面である表示機や音を発する装置を設けてもよい。また、表示機は、自律走行を行うかの判断の内容を表示するものであってもよい。さらに、表示器は、上述の表示部18として実現してもよい。
【0052】
(2)ユーザインタフェースとして、音声を発する機能を設けてもよいし、利用者の入力は音声指示によって行われてもよい。走行中に大声で「とまれ」などの指示を行うと緊急停止する仕組みがあってもよい。
【0053】
(3)手押し用ハンドル12付近に取り付けたユーザインタフェースからエレベーター呼びを行う機能を設けてもよい。この機能は、手押し、つまり、手動走行の際に用いることが望ましい。
【0054】
なお、以上の実施例の搬送カート1においては、商品、物品、部品等の搬送物を手動で搬送し、返却場所には自律走行で返却するとの運用が1つの例として想定できる。また、この例においては、返却場所へ向けて搬送カート1の走行方向の変更が必要な場合がある。そこで、本実施例では、以上のような搬送カート1の運用の特性を利用して、搬送カート1に対して搬送についての状況に応じた制御を実現できる。
【符号の説明】
【0055】
1…搬送カート、11…かご部、12…手押し用ハンドル、13…本体部、14…自由輪回転従属輪、15…駆動輪、16…駆動機構、161…通信部、162…制御部、163…モーター、164…可変サスペンション、17…入力部、18…表示部、19…重量センサー、2…端末装置、3…コンピュータ装置、4…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5