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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051020
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】搬送車両
(51)【国際特許分類】
   B60P 7/10 20060101AFI20230404BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20230404BHJP
   B62D 33/023 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B60P7/10
B60P3/00 G
B62D33/023 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161442
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠樹
(72)【発明者】
【氏名】篠原 正夫
(57)【要約】
【課題】第三者に威圧感や危険な印象を与えることなく、法律の高さ制限と幅制限に準拠しつつ可及的に広範な大型パネルを含む荷物を建設現場へ搬送することのできる、搬送車両を提供すること。
【解決手段】キャビン10と、あおり30を備えた荷台20とを有して荷物Pを搬送する、搬送車両100であり、キャビン10の横幅B1は荷台20の横幅B2に比べて広くなっており、あおり30の外側において、荷物Pを立設させて、荷物Pの下端を荷台20よりも低い位置に下げた状態で荷台Pに固定し、平面視においてキャビン10と荷台20の段差領域25内に荷物Pが収容された状態で搬送する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンと、あおりを備えた荷台とを有して荷物を搬送する、搬送車両であって、
前記キャビンの横幅は、前記荷台の横幅に比べて広くなっており、
前記あおりの外側において、前記荷物を立設させて、該荷物の下端を前記荷台よりも低い位置に下げた状態で該荷台に固定し、平面視において前記キャビンと前記荷台の段差領域内に該荷物が収容された状態で搬送することを特徴とする、搬送車両。
【請求項2】
前記キャビンの側面の後方に、該キャビンの横幅を広げる突起棒状体が取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の搬送車両。
【請求項3】
前記突起棒状体は、前記キャビンに固定される固定片と、該固定片から側方に張り出して先端が後方の前記荷台側へ湾曲もしくは屈曲している突起片とを有することを特徴とする、請求項2に記載の搬送車両。
【請求項4】
前記あおりには、前記荷物が固定される固定治具が配設されており、
前記固定治具は、
前記あおりの上方を跨ぐ、コの字状の跨線片と、
前記跨線片の一端から屈曲して前記荷台に延び、カウンターウェイトが載荷される、荷重載荷片とを有し、
前記跨線片には縦方向に複数の第1ボルト孔が開設されており、
前記荷物受け片に前記荷物が載置され、前記跨線片の複数の前記第1ボルト孔と、該荷物の備える各第1ボルト孔に対応する第2ボルト孔がそれぞれ連通して複数の連通孔を形成し、各連通孔にボルトが螺合されることにより該荷物が前記固定治具に固定され、前記荷重載荷片に前記カウンターウェイトが載荷されることにより、前記荷物の立設した姿勢を保持することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の搬送車両。
【請求項5】
前記固定治具は、前記跨線片の他端から屈曲して前記あおりの外側へ水平に延びる、荷物受け片をさらに備え、該荷物受け片にて前記荷物の下端が載置されることを特徴とする、請求項4に記載の搬送車両。
【請求項6】
前記跨線片は、前記あおりの少なくとも上端と接触せずに該あおりを跨いでいることを特徴とする、請求項4又は5に記載の搬送車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車両に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋や物流倉庫等の建物の工業化に伴い、建物の屋根や壁、床等を工場においてパネルとして製作し、屋根パネルや壁パネル、床パネルといった各種のパネルを搬送車両の荷台に搭載して建設現場に搬送し、建設現場においてパネル同士を組み付ける施工方法(例えば、パネル工法)が一般に普及している。また、昨今は、工場製作されるパネルの大型化も図られている。パネルが大型化することにより、建設現場におけるパネル同士の組み付け箇所が低減されることから、パネルの大型化は、建設現場における作業効率性にとって重要な要素である。
【0003】
ところで、大型パネルを搬送車両に搭載して出荷工場から建設現場まで搬送するに当たり、一般には、一つもしくは複数の大型パネルを荷台の上に寝かせた姿勢で搭載して搬送しているが、大型パネルの幅が広すぎる(高さは幅よりも長い)場合、大型パネルの幅が荷台の左右のあおりを大きく超えて側方にはみ出してしまうと、道路交通法(以下、法律と称する場合もある)上の車幅制限を超過する危険性がある。また、仮に車幅制限を超過しない場合でも、荷物が荷台から側方に大きくはみ出した状態で搬送車両が公道を走行すると、同様に公道を走行する他の車両のドライバーや、歩道を通行する歩行者等、搬送車両を見る第三者に対して威圧感や危険な印象を与えることは否めない。
【0004】
そこで、大型パネルを荷台に寝かせることに代えて、荷台の上に立設した姿勢で搭載し、搬送する方法もある。しかしながら、大型パネルの例えば幅方向を縦方向として立設させたとしても、幅が3mを超える大型パネルの場合は、地上から荷台までの高さがおよそ1m程度と仮定した際に、立ち姿勢の大型パネルの上端までの地上からの高さが3.8mを超えてしまい、今度は道路交通法上の高さ制限を超過する危険性がある。
【0005】
幅が3m以上(高さは当然に3mよりも長い)の大型パネルの建設現場への搬送需要も少なくない現状を勘案すると、法律に準拠しながら、第三者に威圧感や危険な印象を与えることなく、大型パネルを建設現場へ搬送することを可能にした搬送車両が望まれる。
【0006】
ここで、特許文献1には、トラックの荷台に効率よく並べて積み込むことのできる大型パネルが提案されている。この大型パネルは、建物の壁や屋根、床等を構成する大型パネルであり、大型パネルを輸送するトラックの荷台の長辺方向の長さをKとし、大型パネルの長辺方向の長さをLとし、荷台の長手方向に並べて積み込む大型パネルの枚数をn枚とした際に、大型パネルの長辺方向の長さLが、K/1.2n≦L≦K/nに設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-129700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の大型パネルは、大型パネルの寸法を規定しているに過ぎず、様々な寸法の大型パネルの建設現場への搬送に際し、法律に準拠しながら、大型パネルの搬送を可能にした搬送車両を提案するものではない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第三者に威圧感や危険な印象を与えることなく、法律の高さ制限と幅制限に準拠しつつ可及的に広範な大型パネルを含む荷物を建設現場へ搬送することのできる、搬送車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による搬送車両の一態様は、
キャビンと、あおりを備えた荷台とを有して荷物を搬送する、搬送車両であって、
前記キャビンの横幅は、前記荷台の横幅に比べて広くなっており、
前記あおりの外側において、前記荷物を立設させて、該荷物の下端を前記荷台よりも低い位置に下げた状態で該荷台に固定し、平面視において前記キャビンと前記荷台の段差領域内に該荷物が収容された状態で搬送することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、荷台の上に荷物を搭載することに代えて、あおりの外側において、荷物を立設させてその下端を荷台よりも低い位置に下げた状態で荷台に固定することにより、荷物の横幅や縦幅が長い大型パネルにおいても、荷台よりも低い位置(例えば、地上から僅かに高い位置)から法律の高さ制限までの幅(高さ)と、荷台のあおりの長さの高さ(幅)を備えた寸法の大型パネルの搬送が可能になる。このことにより、可及的に広範な大型パネルの搬送を可能にして、建設現場における大型パネル同士の組み付け作業効率を高めることができる。
【0012】
また、荷台に比べてキャビンの横幅が広くなっていて、平面視においてキャビンと荷台の段差領域内に荷物が収容された状態で荷台に固定され、搬送されることにより、キャビンから荷物が側方へはみ出さないことから、荷台の外側に荷物を固定して搬送する搬送車両を見た第三者に対して威圧感や危険な印象を与えることが抑制もしくは抑止される。例えば、対向して向かってくる搬送車両を見た第三者は、荷物がキャビンの幅に隠されていることから、威圧感を受けることはない。一方、搬送車両をその後方から見た第三者は、キャビンの幅の背面に荷物が存在することから、同様に威圧感を受けることはない。
【0013】
ここで、キャビンの側方に突起棒状体が設置された際に、突起棒状体を含むキャビンの横幅が法律の横幅制限である2.5mに準拠するように、突起棒状体の寸法が設定される。また、本態様の搬送車両に搬送される荷物としては、高さと幅がともに長い、屋根パネルや壁パネル、床パネルといった各種のパネルの他、大型の窓ガラス等が好適である。荷物の寸法の具体例としては、荷台のあおりの長さ(例えば4m以上)と、公道の高さ制限である3.8m以上(地上ぎりぎりまで下げた姿勢で固定される場合)を、それぞれ高さ(もしくは幅)と幅(もしくは高さ)とした大寸法で平面視矩形の荷物が挙げられる。
【0014】
また、本発明による搬送車両の他の態様は、
前記キャビンの側面の後方に、該キャビンの横幅を広げる突起棒状体が取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、キャビンの側面の後方に、キャビンの横幅を広げる突起棒状体が取り付けられていることにより、キャビンの構造を変更することなく、キャビンの一部の横幅を容易に広げることができ、突起棒状体にてその後方にある荷物の側方へのはみ出しを解消することができる。ここで、左右のあおりの外側への荷物の固定態様に応じて、突起棒状体は、キャビンの左右の側面に取り付けられてもよいし、左右の側面のいずれか一方に取り付けられてもよい。
【0016】
また、本発明による搬送車両の他の態様において、
前記突起棒状体は、前記キャビンに固定される固定片と、該固定片から側方に張り出して先端が後方の前記荷台側へ湾曲もしくは屈曲している突起片とを有することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、突起棒状体が、キャビンに固定される固定片と、側方に張り出して先端が後方の荷台側へ湾曲もしくは屈曲している突起片とを有する比較的シンプルな形態であることから、安価な製作コストの突起棒状体にてキャビンの横幅を所望に広げることができる。また、固定片と突起片により構成され、各片は、走行中の風圧等に対抗できる剛性(厚み)を備えていればよいことから、全体として軽量な部材となり、車両本体に与える重量負荷の問題は生じない。
【0018】
さらに、突起片が、荷台側へ湾曲もしくは屈曲した、滑らかな外形を有していることから、突起棒状体の空気抵抗も抑制され、突起棒状体とその後方にあって立設している荷物が全体的に一体として見える外観を付与することができ、より一層威圧感を与えない搬送車両を形成できる。
【0019】
また、本発明による搬送車両の他の態様において、
前記あおりには、前記荷物が固定される固定治具が配設されており、
前記固定治具は、
前記あおりの上方を跨ぐ、コの字状の跨線片と、
前記跨線片の一端から屈曲して前記荷台に延び、カウンターウェイトが載荷される、荷重載荷片とを有し、
前記跨線片には縦方向に複数の第1ボルト孔が開設されており、
前記荷物受け片に前記荷物が載置され、前記跨線片の複数の前記第1ボルト孔と、該荷物の備える各第1ボルト孔に対応する第2ボルト孔がそれぞれ連通して複数の連通孔を形成し、各連通孔にボルトが螺合されることにより該荷物が前記固定治具に固定され、前記荷重載荷片に前記カウンターウェイトが載荷されることにより、前記荷物の立設した姿勢を保持することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、荷台に設置される固定治具の荷重載荷片を荷台上でカウンターウェイトにて固定しながら、あおりを跨ぐ固定治具の跨線片の複数箇所で荷物をボルト固定することにより、搬送車両の荷台に特別な固定手段を設けることなく、簡易な構成の固定治具を設置するのみで荷物を立設した姿勢で固定することができる。縦方向の複数のボルトによって荷物が跨線片に固定されるため、荷物の立設姿勢の安定性が確保され、荷物の倒れが防止される。例えば、一枚の大型パネルの固定においては、側方のあおりの離れた少なくとも二箇所に固定治具を設置し、各固定治具の跨線片に対して大型パネルの左右端のいずれか一方を少なくとも二つの縦方向に配設されたボルトで固定し、二つの固定治具に対して少なくとも合計四つのボルトで大型パネルを固定することにより、立設した大型パネルの安定姿勢を保持できる。
【0021】
また、本発明による搬送車両の他の態様において、
前記固定治具は、前記跨線片の他端から屈曲して前記あおりの外側へ水平に延びる、荷物受け片をさらに備え、該荷物受け片にて前記荷物の下端が載置されることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、固定治具が、跨線片の他端から屈曲してあおりの外側へ水平に延びて、荷物の下端が載置される荷物受け片をさらに備えていることにより、立設姿勢の荷物をより一層安定的に保持することができる。
【0023】
また、本発明による搬送車両の他の態様において、
前記跨線片は、前記あおりの少なくとも上端と接触せずに該あおりを跨いでいることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、跨線片があおりの少なくとも上端と接触せずにあおりを跨いでいることにより、荷物を保持する固定治具の跨線片からあおりに対して荷物の荷重が負担されないため、当初から荷物の荷重を負担することを想定されていないあおりが荷物の荷重を負担することに起因して変形や破損することを防止できる。ここで、「あおりの少なくとも上端と接触せずに」とは、あおりの上端と接触せず、あおりの内外の側面とは接触する形態と、あおりの上端に加えて、あおりの内外の側面とも接触しない(あおりと全く接触しない)形態の双方を含んでいる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から理解できるように、本発明の搬送車両によれば、第三者に威圧感や危険な印象を与えることなく、法律の高さ制限と幅制限に準拠しつつ可及的に広範な大型パネルを含む荷物を建設現場へ搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る搬送車両の一例の平面図であって、あおりの外側に大型パネルを立設した姿勢で固定している状態を示す図である。
図2図1のII方向矢視図であって、実施形態に係る搬送車両の一例の側面図である。
図3】突起棒状体の一例の斜視図である。
図4】(a),(b)はいずれも、突起棒状体の他の例の平面図である。
図5】固定治具があおりに配設されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態に係る搬送車両の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[実施形態に係る搬送車両]
図1乃至図5を参照して、実施形態に係る搬送車両の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る搬送車両の一例の平面図であって、あおりの外側に大型パネルを立設した姿勢で固定している状態を示す図である。また、図2は、図1のII方向矢視図であって、実施形態に係る搬送車両の一例の側面図であり、図3は、突起棒状体の一例の斜視図である。
【0029】
搬送車両100は、キャビン10と荷台20とを有し、荷台20は、側あおり30(あおりの一例)と後ろあおり35を回動自在に備えて、通常の荷物を搭載する際は、側あおり30と後ろあおり35を立設させて積載空間を形成し、荷台20の上に荷物を搭載して搬送する車両である。
【0030】
搬送車両100は、上記する通常の荷物の搭載形態(一般搭載形態)に加えて、図示例のように、側あおり30の外側に荷物Pを立設させた姿勢で荷台20に固定し(特殊搭載形態)、搬送することを可能にしている。
【0031】
特殊搭載形態は、搭載する荷物が図示例のように広範な大型パネルPの場合の搭載形態である。ここで、大型パネルPには、屋根パネルや壁パネル、床パネルといった各種のパネル、大型の窓ガラス等が含まれる。
【0032】
図2に示すように、大型パネルPの幅Bpは例えば3mを超える幅であり、高さHpは幅Bpよりも長い寸法を有している。そのため、荷台20の上に大型パネルPを寝た姿勢で搭載した場合、公道における車両(荷物を積載している車両の場合は荷物の幅も含まれる)の法律上の幅制限である2.5mを超過することから、寝た姿勢で搬送することができない。
【0033】
そこで、大型パネルPを荷台20の上に立設させて搭載する場合、地上から荷台20までの高さが1m程度あることから、仮に高さHpを鉛直方向とした状態で立設させると、公道における車両の法律上の高さ制限である3.8mを超過することから、幅Bpを鉛直方向とした状態で立設させるしかないが、この場合も高さ制限を超過することから搬送ができないことになる。
【0034】
そこで、搬送車両100は、荷台20の側あおり30に複数の固定治具40を設置し、側あおり30の外側で荷台レベルよりも下方の位置(図2のh1下方の位置)に、幅Bpを鉛直方向とした立設姿勢の大型パネルPを下げた状態で各固定治具40に固定することにより、大型パネルPの搬送を実現可能としている。ここで、大型パネルPの高さHpは、荷台20の長さL1以下である。
【0035】
通常は、荷台20からはみ出さないように荷物を搭載して搬送するのに対して、荷台20の外側に荷物Pを立設させた状態で固定して搬送することから、荷物Pが車両本体の外側へはみ出すことになり、この搬送車両を見た第三者に威圧感や危険な印象を与える恐れがなくなる。
【0036】
そこで、図1及び図2に示すように、キャビン10の側面の後方に、キャビン10の横幅を広げる突起棒状体60を取り付け、図1に示す平面視においてキャビン10(に取り付けられている突起棒状体60)と荷台20の段差領域25内に、大型パネルPを収容した状態で荷台20に固定する。
【0037】
突起棒状体60は、硬質ウレタン等の樹脂や合成樹脂、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、鋼やアルミニウム等の各種金属などで成形でき、走行中の風圧等に対抗できる剛性(厚み)を備えていればよいことから、全体として軽量な部材となり、車両本体に対して重量負荷の影響を与えない。
【0038】
図示例では、キャビン10の左右の側方にそれぞれ突起棒状体60を取り付け、荷台20の左右の側あおり30の外側に大型パネルPを立設姿勢で固定して搬送する形態を示している。この形態において、キャビン10の幅に左右の突起棒状体60の幅を加えた横幅B1は、荷台20の横幅B2よりも大きく、従って搬送車両100の横幅はB1となることから、この横幅B1が法律上の幅制限以下となるように突起棒状体60の幅が設定されている。
【0039】
ここで、キャビン10の左右の一方の側面にのみ突起棒状体を取り付ける場合(一方の側あおり30の外側にのみ大型パネルPを固定する場合)は、図示例の突起棒状体60の2倍の幅までの寸法が許容される。
【0040】
図3に示すように、突起棒状体60は、キャビン10に固定される固定片61,63と、進行方向前方の固定片61からキャビン10の側方に張り出して先端が後方の荷台20側へ湾曲している突起片62とを有する。
【0041】
各固定片61,63にはボルト孔61a,63aが開設されており、図1及び図2に示すように、各ボルト孔61a,63aにボルト70が挿通されてキャビン10の有する不図示のボルト孔に固定されるようになっている。
【0042】
突起片62が、キャビン10の側方へ徐々に広がりつつ、荷台20側へ向かってなだらかに湾曲していることから、搬送車両100が走行する際に突起棒状体60の空気抵抗が抑制される。
【0043】
図4(a),(b)には、突起棒状体の他の例を平面図で示している。図4(a)に示す突起棒状体60Aは、同一の曲率を有するなだらかな湾曲状の突起片62Aの両端が屈曲して、二つの固定片61A,63Aが設けられている形態である。
【0044】
一方、図4(b)に示す突起棒状体60Bは、突起片62Bが側方へ屈曲しながら広がり、突起片62Bの両端が屈曲して、二つの固定片61B,63Bが設けられている形態である。
【0045】
いずれの突起棒状体60A,60Bともに、図3に示す突起棒状体60と同様に、搬送車両100が走行する際に突起棒状体60A,60Bの空気抵抗が抑制される。
【0046】
キャビン10の側方に突起棒状体60、60A,60Bが取り付けられて横幅が広げられることにより、キャビン10の構造を変更することなく、キャビン10の一部の横幅を容易に広げることができ、突起棒状体60、60A,60Bにてその後方にある大型パネルPの側方へのはみ出しを解消することができる。
【0047】
図1を参照すると理解が容易となるが、平面視においてキャビン10の側方にある突起棒状体60から大型パネルPが側方へはみ出さないことから、荷台20の外側に大型パネルPを固定して搬送する搬送車両100を見た第三者に対して、威圧感や危険な印象を与えることが抑制もしくは抑止される。
【0048】
次に、図5を参照して、荷台20の外側に大型パネルPを立設姿勢で固定するための固定治具40について説明する。ここで、図5は、固定治具があおりに配設されている状態を示す図である。
【0049】
固定治具40は、あおり30の上方を跨ぐ、コの字状の跨線片41と、跨線片41の一端から屈曲して荷台20に延びて、カウンターウェイト50が載荷される荷重載荷片42と、跨線片41の他端から屈曲してあおり30の外側へ水平に延びる荷物受け片43とを有する。
【0050】
荷物受け片43に大型パネルPの下端が載置され、跨線片41の複数の第1ボルト孔41aと、大型パネルPの備える不図示の第2ボルト孔がそれぞれ連通して不図示の複数の連通孔を形成し、各連通孔にボルト70が螺合されることにより、大型パネルPが固定治具40に固定される。
【0051】
さらに、跨線片41は、あおり30の上端や側面と接触せずにあおり30を跨ぎ、荷台20の上に延びる荷重載荷片42に対して、カウンターウェイト50の下面にある凹部51が嵌まり込むようにしてX1方向に載荷される。
【0052】
このように、荷台20に設置される固定治具40の荷重載荷片42を荷台20上でカウンターウェイト50にて固定しながら、あおり30を跨ぐ固定治具40の跨線片41の複数箇所で大型パネルPをボルト固定することにより、搬送車両100の荷台20に特別な固定手段を設けることなく、簡易な構成の固定治具40を設置するのみで大型パネルPを立設した姿勢で固定することができる。
【0053】
また、縦方向の複数のボルト70によって大型パネルPが跨線片41に固定されるため、大型パネルPの立設姿勢の安定性が確保され、大型パネルPの倒れが防止される。図示例では、図2に示すように、あおり30の離れた三箇所に固定治具40を設置し、各固定治具40の跨線片41に対して大型パネルPを二つの縦方向に配設されたボルト70で固定することにより、立設した大型パネルPの安定姿勢を保持できる。
【0054】
さらに、跨線片41があおり30の上端や側面と接触せずにあおり30を跨いでいることにより、大型パネルPを保持する固定治具40の跨線片41からあおり30に対して大型パネルPの荷重が負担されない。このことにより、当初から大型パネルPの荷重を負担することを想定されていないあおり30が、大型パネルPの荷重を負担することに起因して変形や破損することを防止できる。
【0055】
搬送車両100によれば、第三者に威圧感や危険な印象を与えることなく、法律の高さ制限と幅制限に準拠しつつ、可及的に広範な大型パネルPを建設現場へ搬送することが可能になる。
【0056】
このように可及的に広範な大型パネルPが建設現場に搬送されることにより、建設現場における大型パネルP同士の組み付け作業効率を高めることができる。
【0057】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0058】
10:キャビン
20:荷台
25:段差領域
30:側あおり(あおり)
35:後ろあおり
40:固定治具
41:跨線片
41a:第1ボルト孔
42:荷重載荷片
43:荷物受け片
50:カウンターウェイト
60:突起棒状体
61,61A,61B,63,63A,63B:固定片
61a、63a:ボルト孔
62,62A,62B:突起片
70:ボルト
100:搬送車両
P:荷物(大型パネル)
Hp:大型パネルの高さ
Bp:大型パネルの幅
B1:車幅
B2:荷台幅
L1:長さ(荷台の長さ)
図1
図2
図3
図4
図5