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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005103
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/08 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
A42B3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106813
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000126953
【氏名又は名称】株式会社アライヘルメット
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 理夫
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107DA18
3B107DA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】前後方向の回転力を抑制し、且つ、被り心地を損なわないヘルメットを提供する。
【解決手段】帽体10と、顎紐3と、帽体と顎紐とを繋ぐアンカープレート2を備え、アンカープレートは、固定プレート20と、補助腕部21と、複数のリベット孔とを備え、少なくとも2つのリベット孔を介して帽体の内側に取付けられており、固定プレート20は、少なくとも1つのリベット孔と、顎紐が連結される顎紐連結部201とが設けられ、補助腕部21は、顎紐3の長手方向に対して幅方向側に交差する方向の延長線C2に沿って突設されていると共に、少なくとも一つのリベット孔が設けられ、顎紐3は、アンカープレート2を介して帽体に取付けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽体と、顎紐と、帽体と顎紐とを繋ぐアンカープレートを備え、
アンカープレートは、固定プレートと、補助腕部と、複数のリベット孔とを備え、少なくとも2つのリベット孔を介して帽体の内側に取付けられており、
固定プレートは、少なくとも1つのリベット孔と、顎紐が連結される顎紐連結部とが設けられ、
補助腕部は、顎紐の長手方向に対して幅方向側に交差する方向の延長線に沿って突設されていると共に、少なくとも一つのリベット孔が設けられ、
顎紐は、アンカープレートを介して帽体に取付けられていることを特徴とするヘルメット。
【請求項2】
固定プレートのリベット孔が顎紐の長手方向と平行な延長線上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のヘルメット。
【請求項3】
一つのリベット孔が補助腕部の先端に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヘルメット
【請求項4】
補助腕部が撓むように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載のヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットの着用状態を保持する顎紐と帽体とを繋ぐアンカープレートを備えたヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルメットの着用状態を保持する顎紐を備えたヘルメットは、下記特許文献1に記載のように、顎紐が帽体の内側に軸支されたアンカープレートを介して帽体と繋がれている構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-85330
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の従来のアンカープレートは、上側1か所で帽体に軸支されているため、帽体に対して回転自在な状態になっている。
顎紐を締めてヘルメットの着用状態を保持したときには、顎紐が着用者の顎に掛かっているので、アンカープレートには顎紐の引っ張り力が作用し、通常この引っ張り力で帽体に対して回転できない状態となる。
しかしながら、転倒等によりヘルメットの前後方向に対して大きな回転力が加わった際には、顎紐やヘルメットの内装、更には着用している人体にも撓みが生じるため、前記引っ張り力を超えてアンカープレートの軸支部を中心に容易に回転してしまう状態となり得る。
この回転を抑制するためには、軸支部をヘルメットの中心より下方に設けるのが望ましいが、あまり下方に位置すると顎紐の基端部が着用者の顔から離れてしまい、被り心地を損なう事となる。また、更には顎から外れ易くなる恐れもある。
このことから、前後方向に回転しにくく、且つ、被り心地を損なわないヘルメットが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、請求項1に記載によるヘルメットは、帽体と、顎紐と、帽体と顎紐とを繋ぐアンカープレートを備え、アンカープレートは、固定プレートと、補助腕部と、複数のリベット孔とを備え、少なくとも2つのリベット孔を介して帽体の内側に取付けられており、固定プレートは、少なくとも1つのリベット孔と、顎紐が連結される顎紐連結部とが設けられ、補助腕部は、顎紐の長手方向に対して幅方向側に交差する方向の延長線に沿って突設されていると共に、少なくとも一つのリベット孔が設けられ、顎紐は、アンカープレートを介して帽体に取付けられていることを特徴とする。
【0006】
固定プレートのリベット孔が顎紐の長手方向と平行な延長線上に配置されていることを特徴とする。
【0007】
一つのリベット孔が補助腕部の先端に設けられていることを特徴とする。
【0008】
補助腕部が撓むように形成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る第1実施形態のヘルメットの側面図である。
図2図1のアンカープレートの拡大図である。
図3】アンカープレートの作用を説明する図である。
図4】本発明に係る第2実施形態のヘルメットの側面図である。
図5図4のアンカープレートの拡大図である。
図6】補助腕部の作用を説明する図である。
図7】アンカープレートの作用を説明する図である。
図8】アンカープレートの変形例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態のヘルメット1を図面に基づいて説明する。
以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
[第1実施形態のヘルメット1の構成]
先ず、図1図3を参照して第1実施形態のヘルメット1を説明する。
本実施形態のヘルメット1は、図1に示すように着用者の顔面の全てが露出するタイプのオープンフェースヘルメットである。
図1はヘルメット1の概略を仮想線で示しており、ヘルメット1の内側を表している。
ヘルメット1は、ヘルメット1の最外層を構成する帽体10の頬部101の内側に、アンカープレート2を介して顎紐3が設けられている。
また、ヘルメット1の帽体10の頭部102の内側には、衝撃吸収ライナー(図示せず)が配置され、さらにこの衝撃吸収ライナーの内側及び帽体10の頬部101の内側にクッション体(図示せず)が配置されている。
【0012】
アンカープレート2及び顎紐3は、帽体10の左右頬部101も内側に設けられるものであり、左右頬部101の内側に対して同じ構成で取付けられるものであるため、本実施形態では一方側のみを図示して説明する。
【0013】
本発明のヘルメット1は、オープンフェースヘルメットに限らず、着用者の顔面の顎部を除く部分が露出する前面開放部(前面開口部)を備えたフルフェースヘルメットにも適用できる。
【0014】
[アンカープレート2の構成]
次にアンカープレート2の構成を説明する。
アンカープレート2は、ステンレス製のものであり、図2に示すように、固定プレート20と、固定プレート20の縁端部20aから突設された補助腕部21とを有しており、これらを同厚で一体とした板状の加工品である。
アンカープレート2の厚みは、強度の確保や軽量化、さらには前述のクッション体の取付け時に影響を与えないようにする、補助腕部21を撓ませるようにする(後述)という観点から「1.5mm」程度が望ましいが、加工時の誤差で生じる程度の厚みの増減は許容される。
アンカープレート2の材質については、ステンレス製に限定するものではない。
【0015】
[固定プレートの構成]
固定プレート20は、図2に示すように、角を丸く面取りした正面凸形状を呈し、上方側に第1のリベット孔200が設けられ、下方側に顎紐連結部201が設けられている。
第1のリベット孔200は、固定プレート20の底辺の中央部と直交して、顎紐3の長手方向の延長線C1に沿う中心線C10を有している。
顎紐連結部201は、顎紐3の幅よりもわずかに大きい横長に形成された貫通孔であり、貫通孔の長手方向を固定プレート20の底辺と平行とし、長手方向の中央部に延長線C1が通過するように配置されている。
固定プレート20は、図2に示すように、顎紐連結部201に顎紐3が連結された状態で、第1のリベット孔200を上方に向けて帽体10の頬部101の内側にリベット40により軸支されている。
【0016】
[補助腕部の構成]
補助腕部21は、図2に示すように、固定プレート20の後方側の縁端部20aから後方に向かって、顎紐3の幅方向と交差する延長線C2と平行に突設されている。
補助腕部21は、基端部210が固定プレート20の縁端部20aにあり、基端部210から先端部211に向けて直線状に形成されている。
【0017】
補助腕部21の先端部211は、図2に示すように長円状に形成されており、この先端部211に長円状の第2のリベット孔212が設けられている。
これにより、補助腕部21の第2のリベット孔212が、顎紐3の幅方向で交差する方向の延長線C2上であって、第1のリベット孔200に対して離間した位置に配置される。
先端部211と第2のリベット孔212は同軸、且つ長手方向を同じ向きとする長円であり、延長線C2に対して斜め下方に傾かせて補助腕部21に一体に設けられている。
【0018】
補助腕部21は、固定プレート20を帽体10の頬部101の内側にリベット止めした後、第2のリベット孔212を介してリベット40により軸支される。
帽体10のリベット孔103、104の孔開け時における加工誤差により、第2のリベット孔212は、対応する帽体10側のリベット孔104の位置と多少のずれが生じることがあるが、長孔によってそのずれを吸収することで、第2のリベット孔212の位置を帽体10側のリベット孔104に合わせることができ、これにより、補助腕部21をリベット止めすることができる。
【0019】
延長線C2の角度は、固定プレート20に第1のリベット孔200を中心とする回転力が作用した場合、その回転力を補助腕部21がほぼ直線方向で支えることができる角度である。
【0020】
[アンカープレートの作用]
次に、アンカープレート2の作用を、図3を参照して説明する。
アンカープレート2は、固定プレート20と補助腕部21とをそれぞれリベット止めすることで、帽体1の頬部101に対して固定される。
これにより、アンカープレート2が第1のリベット孔200を中心とする回転力が作用したときに、回転力に抗して不動状態を保持することができる。
そして、アンカープレート2が不動状態であることにより、顎紐3を着用者の顎(図示せず)に正常に締めた状態で、帽体10に第1のリベット孔200を中心とする回転力が作用したときでも、帽体10の回転を防止することができる。
したがって、前後方向の回転力を抑制し、且つ、被り心地を損なわないヘルメット1及びアンカープレート2を提供できる。
【0021】
[第2実施形態のヘルメット1の構成]
次に図4図8を参照して第2実施形態のヘルメット1を説明する。
本実施形態のヘルメット1は、図4に示すように、第1実施形態と同じオープンフェースヘルメットである。
【0022】
[アンカープレート2の構成]
本実施形態のアンカープレート2は、ステンレス製のものであり、図5に示すように、固定プレート20と、固定プレート20の縁端部20aから突設された補助腕部21とを有しており、これらを同厚で一体とした板状の加工品である。
アンカープレート2の厚みは、強度の確保や軽量化、さらには前述のクッション体の取付け時に影響を与えないようにする、補助腕部21を撓ませるようにする(後述)という観点から「1.5mm」程度が望ましいが、加工時の誤差で生じる程度の厚みの増減は許容される。
アンカープレート2の材質については、ステンレス製に限定するものではない。
【0023】
[固定プレートの構成]
固定プレート20は、図5に示すように、角を丸く面取りした正面2等辺三角形状を呈し、頂点側に第1のリベット孔200が設けられ、底辺側に顎紐連結部201が設けられている。
また、第1のリベット孔200と顎紐連結部201との間には、正面台形状を呈する貫通孔202が設けられており、この貫通孔202によってアンカープレート2の軽量化が図られている。
第1のリベット孔200は、固定プレート20の底辺の中央部と直交して、顎紐3の長手方向の延長線C1に沿う中心線C10を有している。
顎紐連結部201は、顎紐3の幅よりもわずかに大きい横長に形成された貫通孔であり、貫通孔の長手方向を固定プレート20の底辺と平行とし、長手方向の中央部に延長線C1が通過するように配置されている。
固定プレート20は、図5に示すように、顎紐連結部201に顎紐3が連結された状態で、第1のリベット孔200を上方に向けて帽体10の頬部101の内側にリベット40により軸支される。
【0024】
[補助腕部の構成]
補助腕部21は、図5に示すように、固定プレート20の後方側の縁端部20aから後方、且つ斜め上方に向かって、顎紐3の幅方向と交差する延長線C2と平行に突設されている。
補助腕部21は、基端部210が固定プレート20の顎紐連結部201と貫通孔202の間付近の縁端部20aにあり、基端部210から先端部211に向けて直線状に形成されている。
【0025】
補助腕部21の先端部211は、図5に示すように円形状に形成されており、この先端部211に第2のリベット孔212が設けられている。
これにより、補助腕部21の第2のリベット孔212が、顎紐3の幅方向で交差する方向の延長線C2上であって、第1のリベット孔200に対して離間した位置に配置することができる。
補助腕部21は、固定プレート20を帽体10の頬部101の内側にリベット止めした後、第2のリベット孔212を介してリベット40により軸支される。
【0026】
延長線C2の角度は、固定プレート20に第1のリベット孔200を中心とする回転力が作用した場合、その回転力を補助腕部21がほぼ直線方向で支えることができる角度である。
【0027】
本実施形態では、補助腕部21の幅を厚み(1.5mm)の2倍としており、厚み方向及び幅方向に撓むようにされている。
このような補助腕部21の構成については、帽体10のリベット孔103、104の孔開け時における加工誤差により、帽体10側のリベット孔103、104の位置がわずかにずれ、固定プレート20の第1のリベット孔200を帽体10側のリベット孔103にリベット止めしたときに、補助腕部21の第2のリベット孔212と帽体10側のリベット孔104との位置がずれることがある。
このような場合、図6に示すように、固定プレート20をリベット止めした後、補助腕部21を幅方向に撓ませてずれを吸収することができ、これにより、補助腕部21をリベット止めすることができる。
また、補助腕部21を厚み方向へ撓ませることで、帽体10の頬部101の曲面に沿わせることができ、これにより、補助腕部21と頬部101との隙間の発生を防止することができる。
補助腕部21の幅及び長さについては、前述のように撓ませることができる幅及び長さであれば任意である。
また、補助腕部21は、補助腕部21が撓まない程度の幅及び長さであってもよい。
【0028】
[アンカープレートの作用]
次に、アンカープレート2の作用を、図7を参照して説明する。
アンカープレート2は、固定プレート20と補助腕部21とをそれぞれリベット止めすることで、帽体1の頬部101に対して固定される。
これにより、アンカープレート2が第1のリベット孔200を中心とする回転力が作用したときに、回転力に抗して不動状態を保持することができる。
そして、アンカープレート2が不動状態であることにより、顎紐3を着用者の顎(図示せず)に正常に締めた状態で、帽体10に第1のリベット孔200を中心とする回転力が作用したときでも、帽体10の回転を防止することができる。
したがって、前後方向の回転力を抑制し、且つ、被り心地を損なわないヘルメット1及びアンカープレート2を提供できる。
【0029】
[アンカープレートの変形例]
アンカープレート2の変形例として、図8に示すように、角を丸く面取りした五角形状の固定プレート20と、図5に示す補助腕部21よりも幅広とする補助腕部21と、複数の第1のリベット孔200及び複数の第2のリベット孔212を備えており、固定プレート20に2つの第1のリベット孔200を設け、補助腕部21に3つの第2のリベット孔212を設けたものが例示できる。
第1のリベット孔200は、互いに同一の中心線C10を有しており、中心線C10を顎紐3の長手方向と平行な延長線C1と平行にして上下方向に並べられている。
第2のリベット孔212は、互いに同一の中心線C11を有しており、中心線C11を顎紐3の幅方向で交差する方向の補助腕部21の延長線C2上に上下方向に並べられている。
これにより、第1のリベット孔200と第2のリベット孔212とが、互いに離間し、顎紐3の幅方向で交差する方向の延長線C2上に配置したアンカープレート2にすることができる。
このようなアンカープレート2は、固定プレート20の第1のリベット孔200及び補助腕部21の第2のリベット孔212が複数設けられているので、帽体10の形状やサイズに対応して最適な位置にある第1のリベット孔200及び第2のリベット孔212を介して取付けることができる。
また、複数の第1のリベット孔200及び第2のリベット孔212を介して帽体10に取付けてもよいし、いずれか一方のリベット孔を複数使用し、他方のリベット孔を1つ使用して帽体10に取付けてもよい。
その際、複数の第1のリベット孔200及び第2のリベット孔212は、それぞれ必ずしも延長線C1及び延長線C2上にすべてがある必要はない。
【0030】
以上、本発明に係る実施形態のヘルメット1を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1:ヘルメット
10:帽体
2:アンカープレート
3:顎紐
20:固定プレート
21:補助腕部
20a:縁端部
200:第1のリベット孔
212:第2のリベット孔
201:顎紐連結部
C1:延長線
C2:延長線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8