(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051033
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 167/08 20060101AFI20230404BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230404BHJP
C09D 161/28 20060101ALI20230404BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230404BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20230404BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230404BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C09D167/08
C09D163/00
C09D161/28
C09D7/61
B05D3/02 Z
B05D7/24 302W
B05D7/24 302S
B05D7/24 302U
B05D7/24 303J
B05D7/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161467
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 啓太
(72)【発明者】
【氏名】友弘 智
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075BB16X
4D075BB28Z
4D075CA13
4D075CA44
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB02
4D075DB07
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4D075EB13
4D075EB32
4D075EB33
4D075EB36
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC07
4D075EC23
4D075EC30
4D075EC33
4J038DA161
4J038DB001
4J038DD231
4J038HA536
4J038KA08
4J038KA20
4J038NA04
4J038NA12
4J038PA19
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に形成可能な塗料組成物を提供すること。
【解決手段】アルキド樹脂(A)と、メラミン樹脂(B)と、エポキシ樹脂(C)とを含有し、要件(I)または(II)を満たす塗料組成物。
要件(I):前記塗料組成物中の、フタル酸骨格のモル数に対するメラミン骨格のモル数の比が0.87~1.52であり、かつ、フタル酸骨格のモル数に対するグリシジル骨格のモル数の比が0.17~0.80である
要件(II):前記アルキド樹脂(A)の固形分の含有量に対する前記メラミン樹脂(B)の固形分の含有量の質量比が0.85~1.45であり、かつ、前記アルキド樹脂(A)の固形分の含有量に対する前記エポキシ樹脂(C)の固形分の含有量(MC)の質量比が0.30~1.35である
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキド樹脂(A)と、メラミン樹脂(B)と、エポキシ樹脂(C)とを含有する塗料組成物であって、
前記塗料組成物中の、フタル酸骨格のモル数(a)に対するメラミン骨格のモル数(b)の比[(b)/(a)]が0.87~1.52であり、かつ、
前記塗料組成物中の、フタル酸骨格のモル数(a)に対するグリシジル骨格のモル数(c)の比[(c)/(a)]が0.17~0.80である、
塗料組成物。
【請求項2】
アルキド樹脂(A)と、メラミン樹脂(B)と、エポキシ樹脂(C)とを含有し、
前記アルキド樹脂(A)の固形分の含有量(MA)に対する、前記メラミン樹脂(B)の固形分の含有量(MB)の質量比[(MB)/(MA)]が0.85~1.45であり、かつ、
前記アルキド樹脂(A)の固形分の含有量(MA)に対する、前記エポキシ樹脂(C)の固形分の含有量(MC)の質量比[(MC)/(MA)]が0.30~1.35である、
塗料組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(C)が、1分子中にエポキシ基を2個以上有する樹脂である、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
さらに鱗片状顔料を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
焼付塗料組成物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
非鉄金属用である、請求項1~5のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の塗料組成物より形成された塗膜。
【請求項8】
請求項7に記載の塗膜と基材とを含む塗膜付き基材。
【請求項9】
前記基材が非鉄金属製の基材である、請求項8に記載の塗膜付き基材。
【請求項10】
下記工程[1]および[2]を含む、塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、請求項1~6のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装する工程
[2]塗装された塗料組成物を焼き付けて塗膜を形成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、塗膜、塗膜付き基材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属基材などの基材に耐候性、耐薬品性、耐摩耗性等の性質を付与するために、金属基材に塗料(焼付塗料)を塗装し、高温で焼き付けて樹脂を硬化させることで塗膜を形成することが行われている。
【0003】
前記焼付塗料としては、メラミン系、フッ素系、アクリル系の焼付塗料が知られており、基材の用途に応じて各塗料が使い分けられているが、硬度の高い塗膜を形成できる等の点から、メラミン系の焼付塗料が幅広く使用されている。
このようなメラミン系の焼付塗料としては、例えば、特許文献1および2に記載の塗料が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-334490号公報
【特許文献2】特開2000-129201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のメラミン系の焼付塗料は、基材、特に非鉄金属基材への密着性が十分ではなかった。
さらに、基材の用途によっては、焼付塗料から形成される塗膜に耐溶剤性が求められるが、従来のメラミン系の焼付塗料から形成される塗膜は、トルエンなどの強溶剤と接触すると、膨れが発生しやすいため、耐溶剤性の点でも改良の余地があった。
【0006】
焼付塗料を用いて基材上に塗膜を形成する際には、焼付塗料を塗装した基材の基材温度を、所定の温度まで上昇させ、その温度で所定の時間維持する必要がある(この際の、基材の維持条件(基材温度×時間)を、以下「基材キープ条件」ともいう。)。
従来の焼付塗料を用いた場合には、該基材キープ条件が120~150℃×10~20分程度でないと、所望の物性を有する塗膜を形成することができなかった。一方、昨今、省エネルギー化のニーズが高まっており、このニーズに対応するには、低温短時間の基材キープ条件でも、所望の物性を有する塗膜を形成できる塗料が求められていた。
【0007】
本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に形成可能な塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、所定の塗料組成物によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例は以下の通りである。
【0009】
<1> アルキド樹脂(A)と、メラミン樹脂(B)と、エポキシ樹脂(C)とを含有する塗料組成物であって、
前記塗料組成物中の、フタル酸骨格のモル数(a)に対するメラミン骨格のモル数(b)の比[(b)/(a)]が0.87~1.52であり、かつ、
前記塗料組成物中の、フタル酸骨格のモル数(a)に対するグリシジル骨格のモル数(c)の比[(c)/(a)]が0.17~0.80である、
塗料組成物。
【0010】
<2> アルキド樹脂(A)と、メラミン樹脂(B)と、エポキシ樹脂(C)とを含有し、
前記アルキド樹脂(A)の固形分の含有量(MA)に対する、前記メラミン樹脂(B)の固形分の含有量(MB)の質量比[(MB)/(MA)]が0.85~1.45であり、かつ、
前記アルキド樹脂(A)の固形分の含有量(MA)に対する、前記エポキシ樹脂(C)の固形分の含有量(MC)の質量比[(MC)/(MA)]が0.30~1.35である、
塗料組成物。
【0011】
<3> 前記エポキシ樹脂(C)が、1分子中にエポキシ基を2個以上有する樹脂である、<1>または<2>に記載の塗料組成物。
【0012】
<4> さらに鱗片状顔料を含有する、<1>~<3>のいずれかに記載の塗料組成物。
【0013】
<5> 焼付塗料組成物である、<1>~<4>のいずれかに記載の塗料組成物。
<6> 非鉄金属用である、<1>~<5>のいずれかに記載の塗料組成物。
【0014】
<7> <1>~<6>のいずれかに記載の塗料組成物より形成された塗膜。
【0015】
<8> <7>に記載の塗膜と基材とを含む塗膜付き基材。
<9> 前記基材が非鉄金属製の基材である、<8>に記載の塗膜付き基材。
【0016】
<10> 下記工程[1]および[2]を含む、塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、<1>~<6>のいずれかに記載の塗料組成物を塗装する工程
[2]塗装された塗料組成物を焼き付けて塗膜を形成する工程
【0017】
本発明によれば、基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を、容易に、特に、低温短時間の基材キープ条件(例:基材キープ条件が120℃×3分)であっても所望の塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪塗料組成物≫
本発明の一実施形態に係る塗料組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、アルキド樹脂(A)と、メラミン樹脂(B)と、エポキシ樹脂(C)とを含有する塗料組成物であって、下記要件(I)を満たす塗料組成物(以下「本組成物1」ともいう。)、または、下記要件(II)を満たす塗料組成物(以下「本組成物2」ともいう。)である。
要件(I):本組成物1中の、フタル酸骨格のモル数(a)に対するメラミン骨格のモル数(b)の比[(b)/(a)]が0.87~1.52であり、かつ、
本組成物1中の、フタル酸骨格のモル数(a)に対するグリシジル骨格のモル数(c)の比[(c)/(a)]が0.17~0.80である。
要件(II):前記アルキド樹脂(A)の固形分の含有量(MA)に対する、前記メラミン樹脂(B)の固形分の含有量(MB)の質量比[(MB)/(MA)]が0.85~1.45であり、かつ、
前記アルキド樹脂(A)の固形分の含有量(MA)に対する、前記エポキシ樹脂(C)の固形分の含有量(MC)の質量比[(MC)/(MA)]が0.30~1.35である。
【0019】
本組成物は、前記要件(I)または(II)を満たせばよいが、前記要件(I)および(II)を満たすことが好ましい。
【0020】
前記(b)/(a)は、基材への密着性および耐溶剤性により優れる塗膜を、より低温の焼き付け条件で形成することができる等の点から、0.87~1.52であり、好ましくは0.90~1.50、より好ましくは0.95~1.40、さらに好ましくは1.00~1.30である。
【0021】
前記(c)/(a)は、基材への密着性および耐溶剤性により優れる塗膜を、より低温の焼き付け条件で形成することができる等の点から、0.17~0.80であり、好ましくは0.20~0.80、より好ましくは0.25~0.70、さらに好ましくは0.25~0.60である。
【0022】
前記(a)~(c)は、13C-NMRスペクトルから算出することができ、具体的には、下記実施例に記載の方法で算出することができる。
なお、下記実施例では、前記(a)~(c)を算出するために、131ppm付近のピーク、166ppm付近のピーク、45ppm付近と50ppm付近のピークを採用したが、例えば、他の構造に由来するピークとの重複が認められる等の場合には、前記(a)~(c)を算出するために用いるピークを変更してもよい。
【0023】
なお、前記フタル酸骨格とは、具体的には、以下の構造を示す。
【化1】
【0024】
前記メラミン骨格とは、具体的には、以下の構造を示す。
【化2】
【0025】
前記グリシジル骨格とは、具体的には、以下の構造を示す。なお、以下の構造におけるエポキシ環に結合した単線は、CH
2-エポキシ環を意味する。
【化3】
【0026】
前記(MB)/(MA)は、基材への密着性および耐溶剤性により優れる塗膜を、より低温の焼き付け条件で形成することができる等の点から、0.85~1.45であり、好ましくは0.90~1.40、より好ましくは0.95~1.30である。
【0027】
前記(MC)/(MA)は、基材への密着性および耐溶剤性により優れる塗膜を、より低温の焼き付け条件で形成することができる等の点から、0.30~1.35であり、好ましくは0.35~1.20、より好ましくは0.40~0.90である。
【0028】
なお、(MB)/(MA)および(MC)/(MA)は、本組成物を調製する際に、アルキド樹脂(A)とメラミン樹脂(B)との質量比、アルキド樹脂(A)とエポキシ樹脂(C)との質量比が前記範囲となるように、各樹脂を用いることをいう。
【0029】
本組成物は、第1剤、第2剤(および第n剤)を含み、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、使用直前に混合して用いられる2成分以上型の組成物であってもよいが、1成分型の組成物であることが好ましい。
【0030】
本組成物は、本発明の効果がより発揮される等の点から、焼付塗料組成物であることが好ましく、非鉄金属用の塗料組成物であることが好ましく、非鉄金属用の焼付塗料組成物であることがより好ましい。
本組成物の用途としては特に制限されず、表面に塗膜を形成されることが求められる基材用(例:金属用、特に非鉄金属用)等が挙げられ、具体的な好適例としては、自動車用部材、建築用部材、産業機械用部材(例:自動車のトランスミッションのパーツ、船舶用エンジンのオイルクーラー、プリンタ等のOA機器の部品、コンプレッサー等の空気圧制御システム部材、農作業用車両の油圧バルブ)用が挙げられ、特に、アルミダイキャストや亜鉛ダイキャスト等のダイキャスト部材用が好ましい。
【0031】
<アルキド樹脂(A)>
前記アルキド樹脂(A)は、前記フタル酸骨格を有し、前記メラミン骨格およびグリシジル骨格を有さない樹脂であれば特に制限されず、従来公知樹脂を用いることができる。
アルキド樹脂(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0032】
アルキド樹脂(A)は、未変性のアルキド樹脂でもよく、変性されたアルキド樹脂(例:ロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、エポキシ変性アルキド樹脂(エポキシ変性アルキド樹脂は、グリシジル骨格は有さない)、(メタ)アクリル変性アルキド樹脂、シリコン(シリコーン)変性アルキド樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂)でもよい。
【0033】
前記アルキド樹脂(A)は、従来公知の方法で得ることができるが、(半)乾性油または(半)乾性油脂肪酸と、酸成分と、多価アルコール成分とを重縮合させて得られる樹脂であることが好ましい。
【0034】
前記(半)乾性油としては、魚油、脱水ヒマシ油、サフラワー油、アマニ油、大豆油、ゴマ油、ケシ油、エノ油、麻実油、ブドウ核油、トウモロコシ油、トール油、ヒマワリ油、綿実油、クルミ油、ゴム種油などが挙げられ、(半)乾性油脂肪酸としては、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を使用することができる。
【0035】
前記(半)乾性油または(半)乾性油脂肪酸の使用量としては、基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、アルキド樹脂を合成する際のモノマー成分100質量%に対し、好ましくは20~70質量%、より好ましくは30~60質量%である。
【0036】
前記酸成分としては、フタル酸(オルト体)および無水フタル酸から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。また、前記酸成分としては、フタル酸や無水フタル酸と共に、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、アジピン酸、安息香酸、ロジンおよびコハク酸から選ばれる少なくとも1種を用いてもよい。
【0037】
前記酸成分の使用量としては特に制限されないが、アルキド樹脂を合成する際のモノマー成分100質量%に対し、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~45質量%である。
【0038】
前記多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を使用することができる。
【0039】
前記多価アルコール成分の使用量は特に制限されないが、アルキド樹脂を合成する際のモノマー成分100質量%に対し、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%である。
【0040】
アルキド樹脂(A)中のNMR法により測定される前記フタル酸骨格のモル量は、基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、アルキド樹脂(A)の固形分1gに対して、好ましくは0.5~15mmol、より好ましくは1~10mmolである。
【0041】
アルキド樹脂(A)のGPC法により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは8,000~120,000、より好ましくは10,000~100,000である。
【0042】
前記Mwは、GPC法により、装置(東ソー(株)製、HLC-8220GPC)、カラム(SuperH2000+SuperH4000(東ソー(株)製、内径6mm/長さ各15cm))、カラム温度(40℃)、溶離液(テトラヒドロフラン)、流速(0.50mL/min.)、検出器(RI)、標準物質(ポリスチレン)の条件にて測定することができる。
【0043】
アルキド樹脂(A)の酸価は、樹脂に含まれるカルボキシ基の数に依存して変動することから、アルキド樹脂(A)のカルボキシ基がどの程度存在するかを示す指標となる。
アルキド樹脂(A)の酸価は、基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.5~10mgKOH/g、より好ましくは1~9mgKOH/gである。
【0044】
前記酸価は、具体的には、以下の方法で測定できる。
コニカルビーカーに樹脂1~5gを正確に秤量し、トルエン/エタノール=7/3(体積比)混合溶液を30~50ml加えて該樹脂を溶かし、指示薬としてフェノールフタレイン-エタノール溶液を2滴加え、N/10水酸化カリウム-エタノール溶液で滴定し、液の赤みが30秒間消えなくなったときを滴定の終点として、次式より算出する。
酸価=(B×f×5.61)/S
[B:水酸化カリウム-エタノール溶液の使用量(ml)、f:水酸化カリウム-エタノール溶液のファクター、S:樹脂の質量(g)]
【0045】
本組成物中のアルキド樹脂(A)の固形分の含有量は、本組成物が本組成物1である場合、前記要件(I)を満たすような量であり、本組成物が本組成物2である場合、前記要件(II)を満たすような量である。
アルキド樹脂(A)の固形分の含有量は、基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは5~45質量%、より好ましくは10~35質量%である。
【0046】
本組成物の不揮発分は、以下のようにして算出できる。
本組成物1±0.1gを平底皿に量り採り、質量既知の針金を使って均一に広げ、108℃で3時間、常圧下で乾燥させ、得られた加熱残分から針金の質量を減算し、質量百分率の値とすることで算出される。
なお、本明細書では、各原材料(例:アルキド樹脂(A))中の溶剤以外の成分を「固形分」という。
【0047】
<メラミン樹脂(B)>
前記メラミン樹脂(B)は、前記メラミン骨格を有する樹脂であれば特に制限されず、従来公知樹脂を用いることができるが、前記フタル酸骨格およびグリシジル骨格を有さない樹脂であることが好ましい。
メラミン樹脂(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0048】
メラミン樹脂(B)としては、例えば、メチル化メラミン樹脂、ノルマルブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、オクチル化メラミン樹脂が挙げられる。なお、これらの樹脂は、完全アルキル基型、メチロール基等のヒドロキシ基型、イミノ基含有型等を含む。これらの中でも、基材への密着性に優れる等の点から、メチル化メラミン樹脂、ノルマルブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂が好ましく、ノルマルブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂がより好ましい。
【0049】
メラミン樹脂(B)中のNMR法により測定される前記メラミン骨格のモル量は、基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、メラミン樹脂(B)の固形分1gに対して、好ましくは0.5~15mmol、より好ましくは1~10mmolである。
【0050】
メラミン樹脂(B)のGPC法により測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、低温の焼き付け条件で所望の物性を有する塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは100~10,000である。
なお、前記Mnは、前記Mwと同様の条件にて測定することができる。
【0051】
メラミン樹脂(B)としては市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、三井化学(株)製のユーバンシリーズ、オルネクス社製のサイメルシリーズ、DIC(株)製のアミディアシリーズ(例:アミディアL-125-60[イソブチル化メラミン樹脂])、昭和電工マテリアルズ(株)製のメランシリーズ(例:メラン2000[ノルマルブチル化メラミン樹脂])が挙げられる。
【0052】
<エポキシ樹脂(C)>
前記エポキシ樹脂(C)は、前記グリシジル骨格を有する樹脂であれば特に制限されず、従来公知樹脂を用いることができるが、前記フタル酸骨格およびメラミン骨格を有さない樹脂であることが好ましい。
エポキシ樹脂(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0053】
エポキシ樹脂(C)としては、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、1分子中にエポキシ基を2個以上有する樹脂(ポリマー、オリゴマーを含む)であることが好ましい。
【0054】
エポキシ樹脂(C)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、脂環族型エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂(例:フェノール変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、リン酸化合物変性エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂)が挙げられる。
【0055】
エポキシ樹脂(C)の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類);ビスフェノールAD型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂が挙げられ、これらの水素添加反応(以下「水添」ともいう。)物、樹脂中の水素原子の少なくとも1つが臭素原子で置換された臭素化物等であってもよい。
【0056】
エポキシ樹脂(C)としては、前記の中でも、基材に対する密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、さらにはビスフェノールA型およびビスフェノールF型のエポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0057】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類などの縮重合物が挙げられる。
【0058】
エポキシ樹脂(C)は、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、常温(15~25℃の温度、以下同様。)で液状のものとして、「E-028」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量180~190、粘度12,000~15,000mPa・s/25℃)、「jER807」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160~175、粘度3,000~4,500mPa・s/25℃)等が挙げられる。常温で半固形状のものとして、「jER834」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量230~270)等が挙げられる。常温で固形状のものとして、「jER1001」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450~500)、「jER1004」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量875~975)、「jER1007」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量1750~2200)等が挙げられる。
【0059】
また、前述の半固形状または固形状のエポキシ樹脂を溶剤で希釈し、溶液とした「E-834-85X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(834タイプエポキシ樹脂溶液)、エポキシ当量255)、「E-001-75X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(1001タイプエポキシ樹脂溶液)、エポキシ当量475)、「EPICLON N-740-80X」(DIC(株)製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂のメチルエチルケトン溶液、エポキシ当量180)等も使用することができる。
なお、本明細書におけるエポキシ当量の値は、エポキシ樹脂の固形分当たりのエポキシ当量のことをいう。
【0060】
エポキシ樹脂(C)としては、低温短時間の基材キープ条件で焼き付けても基材に対する密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、常温で半固形状または固形状のエポキシ樹脂が好ましく、常温で固形状のエポキシ樹脂がより好ましい。
【0061】
エポキシ樹脂(C)中のNMR法により測定される前記グリシジル骨格のモル量は、基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、エポキシ樹脂(C)の固形分1gに対して、好ましくは0.5~15mmol、より好ましくは1~10mmolである。
【0062】
エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量は、基材に対する密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは150以上、より好ましくは210以上、特に好ましくは400以上であり、好ましくは2200以下、より好ましくは1000以下である。
【0063】
エポキシ樹脂(C)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量は、得られる組成物の塗装硬化条件(例:常乾塗装または焼付け塗装)などにもより一概に決定されないが、好ましくは350~20,000、より好ましくは450~10,000である。
【0064】
<その他の成分>
本組成物は、前記樹脂(A)~(C)以外の成分として、必要に応じて、鱗片状顔料、鱗片状顔料以外の顔料、有機溶剤、沈降防止剤(タレ止め剤)、レベリング剤、反応性希釈剤、硬化促進剤、密着性付与剤、可塑剤、脱水剤(安定剤)、分散剤、消泡剤、防汚剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
前記その他の成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0065】
前記その他の成分として、前記フタル酸骨格、メラミン骨格およびグリシジル骨格から選ばれる少なくとも1種の骨格を有するその他の成分(例:グリシジル骨格を有する反応性希釈剤やシランカップリング剤、フタル酸骨格を有する可塑剤)を用いてもよいが、このようなその他の成分を用いる場合、本組成物1では、前記要件(I)を満たすように、該その他の成分を用い、本組成物2では、前記要件(II)を満たすように、該その他の成分を用いることが好ましい。
【0066】
本組成物が、前記フタル酸骨格、メラミン骨格およびグリシジル骨格から選ばれる少なくとも1種の骨格を有するその他の成分を含有する場合、その含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0067】
[鱗片状顔料]
前記鱗片状顔料としては特に制限されず、従来公知の鱗片状顔料を使用することができるが、具体的には、鉱物系顔料、金属系顔料、ガラスフレーク、プラスチックフレーク等が挙げられ、これらの中でも鉱物系顔料または金属系顔料が好ましく、マイカ、タルクまたはアルミフレークがより好ましい。
【0068】
鱗片状顔料の平均アスペクト比(メジアン径(D50)/平均厚さ)は、得られる塗膜の耐溶剤性、内部応力緩和による基材との密着性の向上等の点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上であり、好ましくは150以下、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下である。
鱗片状顔料のD50は、同様の理由から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0069】
前記D50は、レーザー散乱回折式粒度分布測定装置、例えば「SALD 2200」((株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
前記平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)、例えば「XL-30」(フィリップス社製)を用いて鱗片状顔料の主面(最も面積の大きい面)に対して水平方向から観察し、数十~数百個の顔料粒子の厚さを測定することで、その平均値として算出できる。
【0070】
本組成物が鱗片状顔料を含有する場合、該鱗片状顔料の含有量は、基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%である。
【0071】
[鱗片状顔料以外の顔料]
前記鱗片状顔料以外の顔料としては特に制限されず、例えば、体質顔料、着色顔料、防錆顔料が挙げられる。
【0072】
前記体質顔料としては、従来公知の体質顔料を用いることができ、例えば、酸化亜鉛、シリカ、クレー、(カリ)長石、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム(例;バライト粉)、石膏、ロックウール、ガラス繊維が挙げられる。
【0073】
本組成物が体質顔料を含有する場合、該体質顔料の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~60質量%である。
【0074】
前記着色顔料としては、従来公知の着色顔料を用いることができ、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン(チタン白)、酸化鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、群青等の無機顔料、シアニンブルー、シアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。
【0075】
本組成物が着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは10~60質量%、より好ましくは15~50質量%である。
【0076】
[有機溶剤]
前記有機溶剤としては特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ブチルセロソルブ等のエーテル系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、イソプロパノール、n-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶剤、ミネラルスピリット、n-ヘキサン、n-オクタン、2,2,2-トリメチルペンタン、イソオクタン、n-ノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0077】
本組成物は、前記効果がより発揮される等の点から、有機溶剤を含有することが好ましく、有機溶剤を含有する溶剤系塗料組成物であることが好ましい。
本組成物中の有機溶剤の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0078】
[沈降防止剤]
前記沈降防止剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系ワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等、従来公知のものを使用できるが、中でも、アマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスおよび有機粘土系ワックスが好ましい。
このような沈降防止剤としては、市販品を用いてもよい。
【0079】
本組成物が沈降防止剤を含有する場合、該沈降防止剤の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1~3質量%である。
【0080】
[レベリング剤]
本組成物には、該組成物を塗装した際の塗膜のハジキを改善して、被塗物面(例:基材)への濡れ性を向上させ、膜厚の均一な塗膜を容易に得ることができる等の点から、レベリング剤を配合することが好ましい。
該レベリング剤としては特に制限されないが、例えば、フッ素系、アクリル系、シリコーン系等の各種レベリング剤が挙げられる。
【0081】
本組成物がレベリング剤を含有する場合、該レベリング剤の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.005~1.5質量%、より好ましくは0.01~1質量%である。
【0082】
<本組成物の調製方法>
本組成物は、該組成物の原材料となる成分、例えば、前記樹脂(A)~(C)および必要に応じて用いられる前記その他の成分を混合(混練)することで、調製することができる。本組成物1を調製する際には、用いる原材料中の前記各骨格の量を考慮して、前記要件(I)を満たすように、各原材料を用いることが好ましく、本組成物2を調製する際には、前記要件(II)を満たすように、各原材料を用いる。
前記混合(混練)の際には、従来公知の混合機、分散機、攪拌機等の装置を使用でき、該装置としては、例えば、ディスパー、混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザーが挙げられる。なお、前記混合(混練)の際には、季節、環境等に応じて加温、冷却等しながら行ってもよい。
【0083】
≪塗膜、塗膜付き基材≫
本発明の一実施形態に係る塗膜(以下「本塗膜」ともいう。)は、前記本組成物を用いて形成され、本発明の一実施形態に係る塗膜付き基材(以下「本塗膜付き基材」ともいう。)は、本塗膜と基材とを有する積層体である。
本塗膜および本塗膜付き基材における本塗膜は、本組成物を、5~35℃程度の常温乾燥や30~90℃程度の強制乾燥することで形成してもよいが、本発明の効果がより発揮される等の点から、以下のように本組成物を焼き付けることで形成することが好ましい。
【0084】
前記基材の材質としては特に制限されず、例えば、鉄鋼(例:鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、マイルドスチール、合金鋼)、非鉄金属(例:亜鉛、アルミニウム、銅、およびこれらの合金、真鍮、亜鉛メッキ、亜鉛溶射、リン酸亜鉛化成被膜、ステンレス(SUS304、SUS410等))が挙げられる。
また、前記基材として、例えば、マイルドスチール(SS400等)を用いる場合、必要により、グリットブラスト等で基材表面を研磨するなど、素地調整(例:算術平均粗さ(Ra)が30~75μm程度になるよう調整)しておくことが望ましい。
前記基材としては、さらに、基材に付着した錆、汚れ等を落とす洗浄処理やブラスト処理等の前処理を行った基材であってもよい。
【0085】
前記基材としては特に制限されず、表面に塗膜を形成されることが求められる基材に対し、制限なく使用することができるが、本組成物を用いる効果がより発揮される等の点から、非鉄金属基材が好ましい。
前記基材の具体的な好適例としては、自動車用部材、建築用部材、産業機械用部材(例:自動車のトランスミッションのパーツ、船舶用エンジンのオイルクーラー、プリンタ等のOA機器の部品、コンプレッサー等の空気圧制御システム部材、農作業用車両の油圧バルブ)が挙げられ、特に、アルミダイキャストや亜鉛ダイキャスト等のダイキャスト部材が好ましい。
【0086】
本塗膜の膜厚は特に限定されず、本塗膜が用いられる用途に応じて適宜選択すればよいが、通常は10~100μm、好ましくは15~80μm、より好ましくは20~60μmである。
【0087】
≪塗膜付き基材の製造方法≫
本発明の一実施形態に係る塗膜付き基材の製造方法(以下「本方法」ともいう。)は、下記工程[1]および[2]を含む。
工程[1]:本組成物を基材に塗装する工程
工程[2]:基材上に塗装された本組成物を焼き付けて塗膜を形成する工程
【0088】
<工程[1]>
前記工程[1]における塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアレススプレー塗装、エアースプレー塗装等のスプレー塗装、はけ塗り、ローラー塗りなどの従来公知の方法が挙げられる。
このような塗装の際には、得られる塗膜の乾燥膜厚が前記範囲となるように塗装することが好ましい。
本組成物を塗装する際に、所望に応じて、適正な塗料組成物の粘度に調整してもよい。
【0089】
<工程[2]>
前記工程[2]における焼き付け条件(基材キープ条件)としては特に制限されないが、100~140℃で1~10分となるような条件が好ましく、本発明の効果がより発揮される等の点から、110~130℃で2~8分となるような条件がより好ましい。
本組成物によれば、このような低温短時間の基材キープ条件で焼き付けても、基材、特に非鉄金属基材への密着性に優れ、耐溶剤性に優れる塗膜を得ることができる。
【0090】
前記工程[2]を行う際の雰囲気としては特に制限されず、大気中で行ってもよいし、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行なってもよい。また、常圧下で行ってもよいし、減圧下等で行ってもよい。
【実施例0091】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されない。
【0092】
[合成例1]
撹拌機、冷却器、温度計、窒素ガス導入管および脱水装置を備えた反応器に、トール油脂肪酸20.9質量部、無水フタル酸24.5質量部、安息香酸0.6質量部、グリセリン15.7質量部、および、キシレン1.8質量部を仕込み、窒素雰囲気下で反応物の酸価が13以下になるまで200℃で反応を行った後、冷却した。
冷却後の容器に、キシレンを36.4質量部入れることで、固形分が60質量%であるアルキド樹脂溶液Aを得た。
アルキド樹脂溶液A中のアルキド樹脂の酸価は6.7mgKOH/gであり、アルキド樹脂のMwは32,000であった。
【0093】
[合成例2]
反応器内に、大豆油350.0質量部と、ナフテン酸リチウム0.2質量部と、グリセリン29.0質量部とを仕込み、窒素気流下で得られた混合液を150℃まで昇温して、そこにペンタエリスリトール60.0質量部を投入した。次いで、260℃まで昇温して4時間保持した後、200℃まで降温した。
その後、無水フタル酸167.3質量部と、無水マレイン酸2.4質量部と、還流溶剤としてキシレン29.4質量部とを投入した。
次いで、220℃まで昇温し、220℃で5時間保温した後冷却し、ターペン362.5質量部を加えることで、固形分が60質量%であるアルキド樹脂溶液Bを調製した。
アルキド樹脂溶液B中のアルキド樹脂の酸価は7.0mgKOH/gであり、アルキド樹脂のMwは64,000であった。
【0094】
[実施例1]
アルキド樹脂溶液A18質量部、キシレン2.2質量部、n-ブチルアルコール4.7質量部、二酸化チタン18.9質量部、および、沈降防止剤0.47質量部を混合、強分散することで、ミルベースを得た。
得られたミルベースに、メラミン樹脂A15.7質量部、エポキシ樹脂7.2質量部、レベリング剤0.04質量部、鱗片状顔料11.6質量部、および、キシレン16.4質量部を添加し、撹拌することで、塗料組成物を調製した。
【0095】
[実施例2~11および比較例1~4]
表1に記載の各原料を表1に記載の数値(質量部)で用いた以外は実施例1と同様にして、塗料組成物を調製した。
【0096】
なお、前記塗料組成物の調製に用いた各原料は以下の通りである。
・「アルキド樹脂溶液A」:合成例1で調製したアルキド樹脂溶液、固形分=60質量%
・「アルキド樹脂溶液B」:合成例2で調製したアルキド樹脂溶液、固形分=60質量%
・「メラミン樹脂A」:アミディアL-125-60(DIC(株)製)、イソブチル化メラミン樹脂、固形分=60質量%
・「メラミン樹脂B」:メラン2000(昭和電工マテリアルズ(株)製)、ノルマルブチル化メラミン樹脂、固形分=60質量%
・「エポキシ樹脂」:E-001-75X(大竹明新化学(株)製)、固形分=75質量%、エポキシ当量=475
・「二酸化チタン」:タイペークR-930(石原産業(株)製)
・「鱗片状顔料」:ミクロエースL-1(日本タルク(株)製)、微粉タルク
・「レベリング剤」:BYK-310(ビックケミー・ジャパン(株)製)、シリコーン系レベリング剤、固形分=25質量%
・「沈降防止剤」:PEW-20X(大竹明新化学(株)製)、酸化ポリエチレンワックス、固形分=20質量%
【0097】
<フタル酸骨格、メラミン骨格およびグリシジル骨格のモル数の算出>
調製した塗料組成物の溶剤(アセトン:トルエン=1:1、容量比)抽出液をナスフラスコに入れ、エバポレーターで濃縮した。その後、クロロホルムで2回共沸し、40℃で減圧乾燥した。得られた乾固物約300mgに重クロロホルム約3mL、アセチル酢酸クロム約45mgを加えNMR試料溶液とした。
【0098】
得られたNMR試料溶液を用い、以下の条件で、13C-NMRを測定した。
・装置 :AVANCEIII400(ブルカー社製)
・測定方法 :IGD(インバースゲーテッドデカップリング)法
・観測核 :13C
・観測周波数 :100.6MHz
・ロック溶媒 :重クロロホルム
・データポイント数:65536
・遅延時間 :5秒
・積算回数 :8192回
・測定温度 :室温
・試料回転数 :20Hz
【0099】
(1)フタル酸骨格のモル数(a)
前記13C-NMRで観測された131ppm付近のピークは、フタル酸骨格内の炭素4個分を合計したピークに相当するため、131ppm付近のピークの積分値(面積)の4分の1をフタル酸骨格のモル数(a)として算出した。
【0100】
(2)メラミン骨格のモル数(b)
前記13C-NMRで観測された166ppm付近のピークは、メラミン骨格内の炭素3個分を合計したピークと、フタル酸骨格内の炭素2個分を合計したピークが重複しピークに相当する。このため、該166ppm付近のピークの積分値から、前記(1)で求めたフタル酸骨格のモル数を2倍した数値を差し引いた値の3分の1をメラミン骨格のモル数(b)として算出した。
【0101】
(3)グリシジル骨格のモル数(c)
前記13C-NMRで観測された45ppm付近と50ppm付近のピークの積分値の平均値をグリシジル骨格のモル数(c)として算出した。
【0102】
前記のようにして算出したモル数(a)~(c)を用い、(b)/(a)および(c)/(a)を算出した。結果を表1に示す。
【0103】
<耐溶剤性>
リン酸亜鉛処理鋼板(SPCC-SD 3118)に、調製した塗料組成物を乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、塗布した塗料組成物を、基材キープ条件が110℃×3分となるように焼き付けることで塗膜付き基材を作製した。
作製した塗膜付き基材の下半分を、トルエンの入ったポリ容器中に23℃で24時間浸漬させた。浸漬後、塗膜付き基材をポリ容器から取り出し、トルエンに浸漬した部分の膨れの発生面積の比率を目視観察にて、以下の評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
○:トルエンに浸漬した部分の面積を100%とした場合、塗膜が膨れていた部分の合計面積が5%未満であった
△:トルエンに浸漬した部分の面積を100%とした場合、塗膜が膨れていた部分の合計面積が5%以上、20%未満であった
×:トルエンに浸漬した部分の面積を100%とした場合、塗膜が膨れていた部分の合計面積が20%以上であった
【0104】
なお、トルエンは強溶剤であり、前記耐溶剤性の試験は、例えば、JIS K 5651:2002で規定されている耐溶剤性より厳しい条件下での試験である。このような厳しい条件下での試験において、評価が○の塗膜は、他の溶剤に対する耐性にも優れると考えられる。
【0105】
<密着性>
アルミダイキャスト基材に、調製した塗料組成物を乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、塗布した塗料組成物を、基材キープ条件が120℃×3分となるように焼き付けることで塗膜付き基材を作製した。
作製した塗膜付き基材を用い、JIS K 5600-5-6:1999のクロスカット法(クロスカットの間隔:1mm)に準じて、密着性を以下の評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
○:クロスカットにより形成したマスの合計の面積を100%とした場合、剥離した部分の合計の面積が10%未満であった
△:クロスカットにより形成したマスの合計の面積を100%とした場合、剥離した部分の合計の面積が10%以上、40%未満であった
×:クロスカットにより形成したマスの合計の面積を100%とした場合、剥離した部分の合計の面積が40%以上であった
【0106】