(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051061
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池システム及びこれを含む水素製造装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20230404BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20230404BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20230404BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20230404BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230404BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20230404BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20230404BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20230404BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20230404BHJP
【FI】
C25B9/00 A
H01M8/0656
H01M8/0612
H01M8/00 Z
H01M8/04 J
H01M8/04858
C01B3/02 H
C25B1/04
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161511
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC07
4K021CA05
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA06
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB23
5H127AB27
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA12
5H127BA14
5H127BA18
5H127BA22
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB34
5H127BB37
5H127DC42
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水電解水素生成装置への電力供給を補助し、水素製造時の二酸化炭素の排出量を少なく抑えながら水素を経済的に製造することができる水素製造装置を提供すること。
【解決手段】水を電気分解して水素と酸素とを生成する水電解水素生成装置2と、炭化水素系燃料ガスを原燃料ガスとして用いて発電を行う固体酸化物形燃料電池システム6と、水電解水素生成装置2を作動させるための駆動電力を制御する電源コントローラ18とを備えた水素製造装置。固体酸化物形燃料電池システム6は、炭化水素系燃料ガスを改質した改質燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行うセルスタックと、セルスタックからのアノードオフガスを燃焼させる燃焼器と、を備え、水電解水素生成装置2にて生成された酸素は、この燃焼器に送給され、セルスタックにて発電された電池発電電力は、電源コントローラ18を介して水電解水素生成装置2に送給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解して水素と酸素とを生成する水電解水素生成装置と、炭化水素系燃料ガスを原燃料ガスとして用いて発電を行う固体酸化物形燃料電池システムと、前記水電解水素生成装置を作動させるための駆動電力を制御する電源コントローラと、を備えており、
前記固体酸化物形燃料電池システムは、原燃料ガスを改質して改質燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器からの改質燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行うセルスタックと、前記セルスタックのアノードからのアノードオフガスを燃焼させる燃焼器と、を備えており、
前記水電解水素生成装置にて生成された酸素は、酸素送給ラインを通して前記燃焼器に送給され、前記セルスタックにて発電された電池発電電力は、前記電源コントローラを介して前記水電解水素生成装置に送給されることを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
前記固体酸化物形燃料電池システムの定格発電出力は、前記水電解水素生成装置の定格消費電力の30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項3】
自然エネルギーを利用して発電する自然エネルギー発電装置からの自然エネルギー発電電力、系統電源からの商用供給電力及び前記固体酸化物形燃料電池システムからの前記電池発電電力が前記電源コントローラに供給され、前記電源コントローラは、前記自然エネルギー発電電力及び前記電池発電電力を前記水電解水素生成装置に優先的に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記固体酸化物形燃料電池システムは、更に、前記燃焼器からの燃焼排気ガス中に含まれる水分を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器にて凝縮された凝縮水を分離する気液分離装置と、前記気液分離装置により凝縮水が分離された燃焼排気ガスを回収・精製する排気ガス回収・精製ラインとを含み、前記排気ガス回収・精製ラインを通して二酸化炭素が回収・精製されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の水素製造装置。
【請求項5】
炭化水素系燃料ガスを原燃料ガスとして用いて発電を行う固体酸化物形燃料電池システムであって、
原燃料ガスを改質して改質燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器からの改質燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行うセルスタックと、前記セルスタックのアノードからのアノードオフガスを燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器に酸素を供給する酸素供給手段と、を備え、前記酸素供給手段は、水を電解分解する水電解水素生成装置から構成され、前記水電解水素生成装置での電気分解により生成された酸素が酸素送給ラインを通して前記燃焼器に送給されることを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃焼器からの燃焼排気ガスに含まれる水分を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器にて凝縮された凝縮水を分離する気液分離装置と、前記気液分離装置により凝縮水が分離された燃焼排気ガスを回収・精製する排気ガス回収・精製ラインとを更に含み、前記燃焼器からの燃焼排気ガスは、前記凝縮器にて水分が凝縮され、前記気液分離装置にて凝縮水が分離された後に前記排気ガス回収・精製ラインを通して回収・精製されることを特徴とする請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを改質した改質燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学反応(燃料電池反応)により発電を行うセルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池システム、及びこれを含む水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を燃焼もしくは電気化学反応(燃料電池反応)で発電(燃料電池自動車での水素発電含む)した場合、その燃焼もしくは電気化学反応においては二酸化炭素(以下、「CO2」とも称する。)を排出しない。しかしながら、水素製造技術としては、天然ガスの水蒸気改質法による水素リッチガスへの変換と圧力スイング法等によるガス分離精製を組み合わせて水素を生成する方法や、製鉄工程で副生して水素を生成する方法が主流であって、それら方法による水素の生成は、その製造段階で二酸化炭素の排出がある。
【0003】
そのため、近年では、製造段階での二酸化炭素の排出量にも着目して、より環境性の高い水素(以下、「H2」とも称する。)の価値が高まってきており、製造時に二酸化炭素の排出量の少ない低CO2排出の水素は、従来の製造法による水素に対して、環境的価値が認められる状況にある。
【0004】
そこで、太陽光、風力などの自然エネルギーを利用した自然エネルギー発電装置(太陽光発電装置、風力発電装置など)にて発電された発電電力(自然エネルギー発電電力)を用い、水電解水素生成装置を用いて水素の製造を行う方法が注目されている。水電解水素生成装置としては、アルカリ形、固体高分子形が知られており、両方のものが商用化されている。また、アニオン交換膜形水電解、固体酸化物形水蒸気電解も電気分解により水素を製造する方法として開発されている。
【0005】
水電解水素製造は設備コストと電力コストが高いために、水素製造コストでは、主流の天然ガスを改質して生成する方法や製鉄からの副生として生成する方法とは競合することができず、安定したローカルな水素需要がある産業用途の一部、また主として技術デモンストレーション目的などの限られた用途に用いられているに過ぎない。長期的には水電解水素生成装置の技術開発による設備コストの削減がなされると考えられるが、短中期的には高価な水電解水素生成装置を利用した上で、水素を安価に製造することが望まれる。
【0006】
一方、天然ガス等の高発電効率技術として、酸化物イオンを伝導する膜として固体電解質を用いた固体酸化物形のセルスタックを収納容器内に収納した固体酸化物形燃料電池システム(以下、「SOFCシステム」とも称する。)が知られている。この固体酸化物形燃料電池システムにおいては、セルスタックは複数の燃料電池セルを積層して構成され、各燃料電池セルにおける固体電解質の片面側に燃料極(アノード)が設けられ、その他面側に酸素極(カソード)が設けられている。この固体酸化物形燃料電池システムにおけるセルスタックの作動温度は約700~900℃と高く、このような高温下において、燃料ガス(改質燃料ガス)中の水素や一酸化炭素、炭化水素と空気中の酸素とが電気化学反応を起こすことによって電池発電が行われる。
【0007】
このようなSOFCシステムでは、天然ガスやバイオ燃料ガス(メタンと二酸化炭素とが混合した組成の燃料ガス)などの炭化水素系燃料ガスが原燃料ガスとして用いられている。このSOFCシステムは、炭化水素系燃料ガスを例えば水蒸気改質するための改質器と、改質器に燃料ガス(原燃料ガス)を供給するための燃料ガス供給手段と、酸化剤ガスとしての空気を供給するための空気供給手段と、燃料極(アノード)及び酸素極(カソード)を有するセルスタックとを備え、改質器からの改質燃料ガスがセルスタックの燃料極に送給され、空気供給手段からの空気がその酸素極に送給され、セルスタックでの改質燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学反応によって発電が行われる。
【0008】
このSOFCシステムでは、セルスタック及び改質器が高温空間に収容され、セルスタックの燃料極(アノード)からのアノードオフガスを燃焼させて高温状態を維持するようになっている。例えば、この高温空間内に燃焼器が収容され、セルスタックからのアノードオフガス及びカソードオフガスが燃焼器に送給され、この燃焼器での燃焼熱を利用して高温空間が高温状態に保たれる(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
このようなSOFCシステムにおいては、セルスタックからのアノードオフガス及びカソードオフガスが燃焼器に送給され、この燃焼器で燃焼されるので、その燃焼排気ガスは、水及び二酸化炭素に加えて窒素及び酸素を含んだものとなる。このような燃焼排気ガスから二酸化炭素を回収しようとすると、この二酸化炭素をアルカリ性吸収液に溶解させ、その後熱を加えて二酸化炭素を離脱させる(吸収液の再生)が必要となり、この離脱に熱エネルギーを必要とする。
【0010】
また、SOFCシステムのセルスタックからのアノードオフガスを完全に酸化させて水と二酸化炭素にする方法として、SOFCシステムが高温動作であることを利用した方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、酸素イオン伝導体、又は酸素イオンと電子伝導の混合伝導体を用い、セルスタックからのアノードオフガスに窒素が混じることなく、アノードオフガスとカソードオフガスとの酸素活量の違いにより、カソードオフガス中の酸素をアノードオフガス中の残余の水素及び一酸化炭素に反応させてほぼ完全酸化させている。
【0011】
この選択透過膜を用いる方法では、SOFCシステムの高温作動という特徴を活用でき、またアノードオフガスとカソードオフガスとの酸素活量の違いを駆動としているため、過剰に進行しないという特徴がある。しかしながら、選択透過膜に関する技術的成熟度が低く、このことは、コストが高く、信頼性も低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008-21596号公報
【特許文献2】特開2000-3719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
水素を製造する場合、自然エネルギーを利用した自然エネルギー発電装置(例えば、太陽光発電装置)からの発電電力を水電解水素生成装置の主たる電源として利用すると、水素製造時に排出される二酸化炭素の排出量を少なくすることができるが、自然エネルギー発電装置の発電電力が自然条件によって変動するという問題がある。
【0014】
例えば太陽光発電装置を用いたときには、夜間の時間帯、雨や曇りの時間帯などにおいては、発電に寄与する太陽光の受光量が少なく、この太陽光発電装置の発電出力が小さい又はほとんどない運転状態となる。また、例えば風力発電装置を用いたときには、風の弱い時間帯などにおいては、発電に寄与する風力が弱く、この風力発電装置の発電出力が小さい又はほとんどない運転状態となる。
【0015】
このように自然エネルギー発電装置の発電出力が小さい運転状態においては、水素製造設備の設備利用率が低くなって効率的な水素製造が難しくなり、その結果、水素の製造コストが高くなるという問題がある。
【0016】
また、自然エネルギー発電装置(例えば、太陽光発電装置)の発電出力が小さいときに系統電源(商用電源)からの商用電力を用いることも考えられるが、このような場合、商用電力の生成時に二酸化炭素を排出するために、水素の製造量当たりの二酸化炭素排出量を充分に低くすることが難しくなる。
【0017】
このようなことから、自然エネルギー発電装置を用いる場合、その発電出力の変動を抑えるために、二次電池を補助的に併用することも考えられるが、例えば太陽光発電装置では発電出力の低い時間帯が長くなる(少なくとも夜間の半日、雨天時であれば更に長い時間帯)ことから、発電出力の変動抑制効果を出すには大きな容量の二次電池が必要になる。数十分程度の短時間の時間帯に必要な電力分では問題ないが、数時間以上の長時間の時間帯に必要な電力を蓄電しようとすると、二次電池のコストなどを考慮すれば経済性を得ることは容易でない。
【0018】
本発明の目的は、水電解水素生成装置への電力供給を補助し、水素製造時の二酸化炭素の排出量を少なく抑えながら水素を経済的に製造することができる水素製造装置を提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、水電解水素生成装置にて生成された酸素を有効利用することができる固体酸化物形燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の請求項1に記載の水素製造装置は、水を電気分解して水素と酸素とを生成する水電解水素生成装置と、炭化水素系燃料ガスを原燃料ガスとして用いて発電を行う固体酸化物形燃料電池システムと、前記水電解水素生成装置を作動させるための駆動電力を制御する電源コントローラと、を備えており、
前記固体酸化物形燃料電池システムは、原燃料ガスを改質して改質燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器からの改質燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行うセルスタックと、前記セルスタックのアノードからのアノードオフガスを燃焼させる燃焼器と、を備えており、
前記水電解水素生成装置にて生成された酸素は、酸素送給ラインを通して前記燃焼器に送給され、前記セルスタックにて発電された電池発電電力は、前記電源コントローラを介して前記水電解水素生成装置に送給されることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項2に記載の水素製造装置では、前記固体酸化物形燃料電池システムの定格発電出力は、前記水電解水素生成装置の定格消費電力の30%以下であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項3に記載の水素製造装置では、自然エネルギーを利用して発電する自然エネルギー発電装置からの自然エネルギー発電電力、系統電源からの商用供給電力及び前記固体酸化物形燃料電池システムからの前記電池発電電力が前記電源コントローラに供給され、前記電源コントローラは、前記自然エネルギー発電電力及び前記電池発電電力を前記水電解水素生成装置に優先的に供給することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項4に記載の水素製造装置では、前記固体酸化物形燃料電池システムは、更に、前記燃焼器からの燃焼排気ガス中に含まれる水分を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器にて凝縮された凝縮水を分離する気液分離装置と、前記気液分離装置により凝縮水が分離された燃焼排気ガスを回収・精製する排気ガス回収・精製ラインとを含み、前記排気ガス回収・精製ラインを通して二酸化炭素が回収・精製されることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、炭化水素系燃料ガスを原燃料ガスとして用いて発電を行う固体酸化物形燃料電池システムであって、
原燃料ガスを改質して改質燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器からの改質燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により発電を行うセルスタックと、前記セルスタックのアノードからのアノードオフガスを燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器に酸素を供給する酸素供給手段と、を備え、前記酸素供給手段は、水を電解分解する水電解水素生成装置から構成され、前記水電解水素生成装置での電気分解により生成された酸素が酸素送給ラインを通して前記燃焼器に送給されることを特徴とする。
【0025】
更に、本発明の請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記燃焼器からの燃焼排気ガスに含まれる水分を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器にて凝縮された凝縮水を分離する気液分離装置と、前記気液分離装置により凝縮水が分離された燃焼排気ガスを回収・精製する排気ガス回収・精製ラインとを更に含み、前記燃焼器からの燃焼排気ガスは、前記凝縮器にて水分が凝縮され、前記気液分離装置にて凝縮水が分離された後に前記排気ガス回収・精製ラインを通して回収・精製されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の請求項1に記載の水素製造装置によれば、水を電気分解して水素と酸素とを生成する水電解水素生成装置と、炭化水素系燃料ガスを原燃料ガスとして用いて発電を行う固体酸化物形燃料電池システムと、水電解水素生成装置に供給する駆動電力を制御する電源コントローラとを備え、水電解水素生成装置にて生成された酸素は酸素送給ラインを通して固体酸化物形燃料電池システムの燃焼器に送給されるので、水電解水素生成装置にて発生した酸素をこの燃料器に送給してアノードオフガスの燃焼に有効利用することができる。また、セルスタックにて発電された電池発電電力は電源コントローラを介して水電解水素生成装置に送給されるので、このセルスタックでの発電電力を水電解水素生成装置への駆動電力の一部として利用することができ、これにより、水電解水素生成装置の駆動電力の嵩上げをし、その設備利用率を高めることができる。
【0027】
また、本発明の請求項2に記載の水素製造装置によれば、固体酸化物形燃料電池システムの定格発電出力が水電解水素生成装置の定格消費電力の30%以下であるので、水電解水素生成装置を効果的な設備利用率でもって稼働運転させることができる。
【0028】
また、本発明の請求項3に記載の水素製造装置によれば、自然エネルギーを利用して発電する自然エネルギー発電装置からの自然エネルギー発電電力、系統電源からの商用供給電力及び固体酸化物形燃料電池システムからの電池発電電力が電源コントローラに供給され、電源コントローラは、自然エネルギー発電電力及び電池発電電力を水電解水素生成装置に優先的に供給するので、系統電源からの商用供給電力の消費を抑えるとともに、水素製造時の二酸化炭素の排出量を少なくすることができる。尚、自然エネルギー発電装置とは、太陽光を利用した太陽光発電装置、風力を利用した風力発電装置などである。
【0029】
また、本発明の請求項4に記載の水素製造装置によれば、固体酸化物形燃料電池システムの燃焼器からの燃焼排気ガスは凝縮器及び気液分離装置に送給され、凝縮器にて燃焼排気ガス中の水分が凝縮され、気液分離装置にてこの凝縮水が分離された後に、排気ガス回収・精製ラインを通して回収・精製されるので、この固体酸化物形燃料電池システムからの二酸化炭素の排出を少なくすることができる。
【0030】
この水素製造装置用いる固体酸化物形燃料電池システムでは、原燃料ガスとして炭化水素系燃料ガスを用い、この燃料ガスを改質器で改質して改質燃料ガスを生成し、この改質燃料ガスをセルスタックの燃料極(アノード)に送給して電気化学反応により発電をしている。そして、セルスタックからのアノードオフガスが燃焼器に送給され、また水電解水素生成装置にて発生した酸素が燃焼器に送給され、この酸素を用いてアノードオフガスが燃焼される。このようなSOFCシステムでは、燃焼器からの燃焼排気ガスは水分を含んだ二酸化炭素となるが、水分については凝縮器にて凝縮された後に気液分離装置にて分離されるために、残った二酸化炭素のみが排気ガス回収・精製ラインを流れるようになり、かくして、排気ガス回収・精製ラインを流れる燃焼排気ガス(二酸化炭素)を回収・精製することにより、固体酸化物形燃料電池システムからの二酸化炭素の排出を少なくすることができる。
【0031】
また、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、セルスタックのアノードからのアノードオフガスを燃焼させる燃焼器に、酸素供給手段としての水電解水素生成装置にて発生した酸素が酸素送給ラインを通して送給されるので、水電解水素生成装置にて副生的に発生する酸素をアノードオフガスの燃焼に有効利用することができる。
【0032】
更に、本発明の請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、更に、凝縮器、気液分離装置及び排気ガス回収・精製ラインを備えているので、燃焼器からの燃焼排気ガスは、凝縮器にて燃焼排気ガス中の水分が凝縮され、気液分離装置にてこの凝縮水が分離された後に、排気ガス回収・精製ラインに流れ、この排気ガス回収・精製ラインを通して燃焼排気ガス(CO2)を回収・精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に従う水素製造装置の一実施形態を簡略的に示すブロック図。
【
図2】
図1の水素製造装置に用いられる固体酸化物形燃料電池システムの一実施形態を簡略的に示す図。
【
図3】太陽光発電装置の一日における時刻とその相対出力との関係の代表的な例を示す図。
【
図4】水電解水素生成装置の入力電力に対するSOFCシステムの出力電力の比率とSOFC発電出力当たりの改善効果インデックスとの関係を示す図。
【
図5】水電解水素生成装置における、SOFCシステムを追加する前と後との設備利用率の差と、SOFCシステムを追加したときのSOFC発電出力当たりの改善効果インデックスを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システム及びこれを含む水素製造装置について説明する。
【0035】
まず、
図1を参照して、水素製造装置の一実施形態について説明する。
図1において、図示の水素製造装置1は、水の電気分解により水素を生成する水電解水素生成装置2と、太陽光を利用して発電を行う太陽光発電装置4(自然エネルギーを利用して発電を行う自然エネルギー発電装置を構成する)と、炭化水素系燃料ガスを原燃料ガスとして用いて発電を行う固体酸化物形燃料電池システム6とを備えている。
【0036】
水電解水素生成装置2は、水を電気分解して水素を生成するそれ自体周知の各種形態のものでよく、水の電気分解により生成される水素が目的生成物(プロダクト)となり、この目的生成物(水素)が水素送給ライン8を通して水素タンク10などに貯蔵されたり、或いは下流側のこの水素使用設備(図示せず)などに送給されて消費される。生成された水素は、例えば燃料電池自動車、工業用又は家庭用燃料電池などの燃料ガスとしても利用することができる。
【0037】
また、水の電気分解の際に酸素が副生物として生成されるが、この副生物(酸素)は、後述するよう、例えば200kPa程度の圧力で酸素送給ライン12を通して固体酸化物形燃料電池システム6に送給されて消費され、この酸素を固体酸化物形燃料電池システム6にて利用することによって、水を電気分解する際に生じる副産物(酸素)の有効利用を図ることができる。尚、この副成物(酸素)の一部(余剰酸素)を酸素貯蔵ライン12を通して例えば酸素タンク16に貯蔵するようにしてもよい。
【0038】
水電解水素生成装置2における水の電気分解に用いる電力は、電源コントローラ18から送給される。この電源コントローラ18には、太陽光発電装置4からの太陽光発電電力(自然エネルギー発電電力)と、固体酸化物形燃料電池システム6からの電池発電電力と、系統電源21(所謂、例えば200Vの商用電源)からの商用供給電力が供給され、電源コントローラ18は、水電解水素生成装置2を稼働運転する電力を太陽光発電電力、電池発電電力及び商用供給電力の一つ又は二つ以上から選択して必要電力を送給する。
【0039】
この実施形態では、電源コントローラ18は、太陽光発電装置4からの太陽光発電電力及び固体酸化物形燃料電池システム6からの電池発電電力を利用するように制御し、これら太陽光発電電力及び電池発電電力を用いても電力が大きく不足するときに商用供給電力を用いるように制御する。このように制御することによって、太陽光発電電力及び電池発電電力が優先的に利用され、後述する記載からも理解されるように、水素製造時における水素製造コストを抑えることができ、また二酸化炭素の排出量をも少なく抑えることができる。
【0040】
上述の記載から理解されるように、効率的に水素を製造するとともに、二酸化炭素の排出量を少なく抑えるためには、この水素製造装置1を太陽光発電装置4からの太陽光発電電力及び固体酸化物形燃料電池システム6からの電池発電電力により稼働するようにすればよく、この場合、太陽光発電装置4からの太陽光発電電力が得られないときでも、固体酸化物形燃料電池システム6からの電池発電電力により水電解水素生成装置2が稼働するようになり、従って、水電気分解の副生物である酸素が生成され、その酸素が固体酸化物形燃料電池システム6に送給される。尚、この場合、余剰電力が生じたときには、固体酸化物形燃料電離システム6の発電出力を下げることにより対応することができる。
【0041】
次に、主として
図2を参照して、この水素製造装置1に用いられる固体酸化物形燃料電池システム6(SOFCシステム)について説明する。
図2において、図示の固体酸化物形燃料電池システム6(SOFCシステム)は、原燃料ガスとして炭化水素系燃料ガス(例えば、都市ガス、LPガス、バイオガスなど)を消費して発電を行うものであり、燃料ガスを改質するための改質器20と、この改質器20にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスとしての空気との電気化学反応(燃料電池反応)によって発電を行う固体酸化物形のセルスタック22とを備えている。
【0042】
セルスタック22は、電気化学反応によって発電を行うための複数の固体酸化物形の燃料電池セルをインターコネクタプレートを介して積層して構成され、図示していないが、酸素イオンを伝導する固体電解質24と、この固体電解質24の片側に設けられた燃料極26(アノード)と、固体電解質24の他側に設けられた酸素極28(カソード)とを備え、固体電解質24として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
【0043】
このセルスタック22の燃料極26側は、改質燃料ガス送給ライン30を介して改質器20に接続され、この形態では、改質器20は、改質用水を気化するための気化器32と一体的にユニットとして構成されている。尚、気化器32は、改質器20と別体に構成し、気化器32にて気化された水蒸気を水蒸気送給ライン(図示せず)を介して改質器20に送給するようにしてもよい。
【0044】
この気化器32は、水供給ライン34を介して水供給源(図示せず)(例えば、水タンクや水回収タンクなどから構成される)に接続され、水供給源からの改質水が水供給ライン34を通して気化器32に供給される。改質器20には改質触媒が収容され、改質触媒として例えばアルミナにルテニウムを担持させたものが用いられ、この改質触媒によって、燃料ガス供給ライン36を通して供給される原燃料ガスが気化器32にて気化された水蒸気でもって水蒸気改質される。
【0045】
この燃料ガス供給ライン36には、気化器32から上流側に向けて順に、燃料供給ポンプ38(燃料ガス供給手段)、燃料流量計40(流量センサ)、脱硫器42及び遮断電磁弁44が配設されている。脱硫器42は、原燃料ガスに含まれる硫黄成分(付臭剤中の硫黄成分)を除去し、遮断電磁弁44は、原燃料ガスの供給を停止させるときに閉状態となって燃料ガス供給ライン36を遮断する。
【0046】
また、燃料供給ポンプ38は、燃料ガス供給ライン36を流れる原燃料ガスを昇圧して気化器32に供給し、燃料流量計40は、燃料ガス供給ライン36を流れる原燃料ガスの流量を計測し、SOFCシステム6のシステム制御部(図示せず)は、原燃料ガスの設定流量値と燃料流量計40の計測流量値を比較し、この計測流量値が設定流量値よりも小さい(又は大きい)ときに燃料供給ポンプ38の回転数を上昇(又は減少)させ、このようにして原燃料ガスの供給流量がSOFCシステムの設定流量値となるように調整される。
【0047】
また、水供給ライン34には水供給ポンプ46(水供給手段)が配設され、この水供給ポンプ46によって、水供給源(図示せず)からの改質水が水供給ライン34を通して気化器32に供給される。SOFCシステム6のシステム制御部(図示せず)は、この水供給ポンプ46の回転数を制御し、改質水の供給流量が設定流量値より少ない(又は多い)ときに水供給ポンプ40の回転数を上昇(又は減少)させ、このようにして改質水の供給流量が設定流量値となるように調整される。
【0048】
更に、このセルスタック22の酸素極28側は、空気供給ライン48を介して空気ブロア50(空気供給手段)に接続されている。空気ブロア50は、酸化剤ガスとしての空気を空気供給ライン48を通してセルスタック22の酸素極28側に供給する。この空気供給ライン48には、空気流量を計測する空気流量計52が配設され、SOFCシステム6のシステム制御部(図示せず)は、空気の設定流量値と空気流量計52の計測流量値を比較し、この計測流量値が設定流量値よりも小さい(又は大きい)ときに空気ブロア50の回転数を上昇(又は減少)させ、このようにして空気の供給流量がSOFCシステムの設定流量値となるように調整される。
【0049】
このSOFCシステム6では、セルスタック22の燃料極26(アノード)からのアノードオフガスを燃焼させる燃焼器54が配設されている。更に説明すると、セルスタック22の燃料極26の排出側はアノードオフガス送給ライン56を介して燃焼器54に接続され、セルスタック22からのアノードオフガスは、このアノードオフガス送給ライン56を介して燃焼器54に送給される。また、水電解水素生成装置12からの酸素送給ライン12がこの燃焼器54に接続され、この酸素送給ライン12に電磁遮断弁58及びマスフローコントローラ60(酸素流量制御手段)が配設されている。マスフローコントローラ60は、酸素送給ライン12を流れる酸素の送給流量を後述するように制御して下流側に燃焼器54に送給し、電磁遮断弁58は、酸素の供給を停止するときに閉状態となって酸素送給ライン12を遮断する。
【0050】
また、セルスタック22の酸素極28(カソード)から排出されるカソードオフガスと空気供給ライン48を流れる空気との間で熱交換が行われるように第1熱交換器62が設けられている。セルスタック22の酸素極28の排出側にはカソードオフガス排出ライン64が設けられ、このカソードオフガス排出ライン64に第1熱交換器62が配設され、この第1熱交換器62にて、カソードオフガス排出ライン64を流れるカソードオフガスと空気供給ライン48を流れる空気との間で熱交換され、この熱交換により加温された空気がセルスタック22の酸素極28側に送給される。
【0051】
更に、燃焼器54から排出される燃焼排気ガスと空気供給ライン48を流れる空気との間で熱交換が行われるように第2熱交換器66が設けられている。燃焼器54の排出側には燃焼排気ガス排出ライン68が設けられ、この燃焼排気ガス排出ライン68に第2熱交換器66が配設され、この第2熱交換器66にて、燃焼排気ガス排出ライン68を流れる燃焼排気ガスと空気供給ライン48を流れる空気との間で熱交換が行われる。このように構成されているので、空気ブロア50からの空気は、第1熱交換器62にてカソードオフガスとの間で熱交換されて加温され、更に第2熱交換器66にて燃焼排気ガスとの間で熱交換されて加温され、このように2段階でもって加温された空気がセルスタック22の酸素極28側に送給される。
【0052】
このSOFCシステム6では、燃焼器54に接触乃至近接して改質器20及び気化器32が配設され、この燃焼器54でのアノードオフガスの燃焼による燃焼熱によって、改質器20及び気化器32が加熱されて所定の温度状態に保たれる。また、セルスタック22、燃焼器54、改質器20、気化器32、第1熱交換器62及び第2熱交換器66が断熱材(図示せず)で囲まれた高温空間82に収容され、燃焼器54からの燃焼熱によってこの高温空間82内が高温状態に維持される。
【0053】
このSOFCシステム6では、二酸化炭素の排出量を少なく抑えるために、更に次のように構成されている。即ち、燃焼排気ガス排出ライン68に第3熱交換器70及び気液分離装置72が下流側に向けてこの順に配設されている。第3熱交換器70は、燃焼排気ガス中の水分を凝縮するための凝縮器として機能し、例えば燃焼排気ガスの熱エネルギーを貯湯装置の貯湯タンク(図示せず)に温水として貯えるために適用される熱交換器などでよく、この第3熱交換器70にて、貯湯装置の貯湯タンク(図示せず)からの水と燃焼排気ガス排出ライン68を流れる燃焼排気ガスとの間で熱交換が行われ、この熱交換により、燃焼器54からの燃焼排気ガスが冷却されてそれに含まれる水分が凝縮される一方、熱交換により加温された温水が貯湯タンクに貯えられる。尚、凝縮器としては、このような貯湯装置からの水と熱交換を行う第3熱交換器70でなくてもよく、例えば冷却水との間で熱交換するものでもよく、或いは空気との間で熱交換するものでもよく、燃焼排気ガスを熱交換により冷却させてそれに含まれる水分を凝縮させるものであればよい。
【0054】
一方、熱交換により冷却された燃焼排気ガスは、燃焼排気ガス排出ライン68を更に下流側に流れ、第3熱交換器70にて凝縮された凝縮水が気液分離装置72により分離される。気液分離装置72は、例えばドレインセパレータなどから構成され、燃焼排気ガスに含まれる水分は、第3熱交換器70での熱交換により冷却されて凝縮され、凝縮された水がこの気液分離装置72にて分離され、水分が分離された燃焼排気ガスが更に下流側に流れる。尚、トレインセパレータにて分離された凝縮水は、例えば水回収タンク(図示せず)に回収して改質水として再利用するようにしてもよい。
【0055】
排気ガス回収ライン68の下流側には三方弁74が配設され、三方弁74の一方の排出側に排気ガス回収・精製ライン76(具体的には、二酸化炭素回収・精製ライン)が接続され、その他方の排出側に排気ガス処理ライン78が接続されている。この三方弁74は、第1切替状態にあるときには燃焼排気ガス排出ライン68と排気ガス回収・精製ライン76とを連通し、燃焼排気ガス排出ライン68からの燃焼排気ガスは、排気ガス回収・精製ライン76に流れて回収・精製され、また第2切替状態にあるときには燃焼排気ガス排出ライン68と排気ガス処理ライン78とを連通し、燃焼排気ガス排出ライン68からの燃焼排気ガスは、排気ガス処理ライン78に流れて所要の通りに処理される。
【0056】
固体酸化物形燃料電池システム6においては、定格運転状態のときには運転状態が安定しているので、セルスタック22からのアノードオフガスを水電解水素生成装置2からの酸素を用いて燃焼器54で完全燃焼させることができ、このような場合、三方弁74は第1切替状態に保持され、燃焼排気ガスとしての二酸化炭素は、排気ガス回収・精製ライン76を通して回収・精製される。一方、起動運転状態、或いは低出力運転状態のときは、セルスタック22からのアノードオフガスを酸素を用いて燃焼器54で完全燃焼させることが難しく、このような場合、三方弁74は第2切替状態に保持され、燃焼排気ガスは、排気ガス処理ライン78を通して流れ、所要の通りに処理された後に例えば大気中に排出される。
【0057】
この排気ガス回収・精製ライン76を通して回収された燃焼排気ガス(CO2)は、合成燃料(ジェット燃料、メタノールなどの液体燃料、メタン、プロパンなどのガス燃料)の製造に用いることができ、またオレフィン、ウレタンなどの化学品の合成などに用いることができる。
【0058】
この水素製造装置1においては、水素製造時において二酸化炭素の排出量を抑えることができ、またこのSOFCシステム6においては発電運転時に二酸化炭素の排出量を抑えることができ、このことについて説明する。SOFCシステム6の原燃料ガスとして炭化水素系燃料ガス(例えば、天然ガス、バイオガス(メタン、CO2を主成分とする)など)を用いて発電し、原燃料ガスをセルスタック22に供給する空気と混合することなく完全酸化させると、その生成物は二酸化炭素(CO2)と水(H2O)になる。そして、この生成物を冷却して水分を除去すると、燃焼排気ガス中の二酸化炭素が残って分離することができ、分離した二酸化炭素を排気ガス回収・精製ライン76に送給することにより回収・精製することができる。
【0059】
更に具体的に説明すると、SOFCシステム6の動作条件で燃料利用率が例えば80%である場合、原燃料ガスの80%が電気化学反応するように、セルスタック22の酸素極28側からの酸素が電解質24を通して燃料極26側に供給される。その結果、燃料極26の排出側出口のガス組成は、改質燃料ガスが純酸素で例えば80%部分酸化した状態となり、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)を含んだ状態となる。SOFCシステム6におけるセルスタック22の一般的な動作温度が700℃以上であり、また多量の水が存在していることから、メタンは0.1%未満と非常に少ない状態となっている。
【0060】
このガスを完全に酸化してCO2とH2Oにするために、セルスタック22からのアノードオフガスを燃焼器54に送給し、また水電解水素生成装置2にて副生的に発生する酸素を燃焼器54に送給し、この燃焼器54にてアノードオフガスを酸素により燃焼させるものである。セルスタック22の燃料利用率燃料が80%である場合、原燃料ガスの20%を燃焼させるのに必要な酸素量を水電解水素生成装置2から酸素供給ライン12を通してSOFCシステム6の燃焼器54に送給するようになり、水電解水素生成装置2からの酸素供給量をこのようにコントロールすることにより、セルスタック22からのアノードオフガスを完全に酸化せてCO2とH2Oにすることができる。
【0061】
水電解水素生成装置2からの酸素(所謂、純酸素)をSOFCシステム6の高温空間82内の燃焼器54に供給するにあたっては、セルスタック22が純酸素、高濃度酸素に触れることによる酸化劣化速度が、空気が触れることによる酸化劣化速度よりも大きくなることから、純酸素の接触は、燃焼器54自体とそれへの送給管(酸素送給ライン12)だけとなるようにするのが望ましい。また、燃焼器54でのアノードオフガスの燃焼条件は、燃焼後の組成がH2OとCO2だけになるストイキ(化学量論)燃焼にするのが望ましく、このようにすることにより、燃焼後の燃焼排気ガスを冷却して凝縮水を分離し、残ったCO2を排気ガス回収ライン76を通して回収することができる。
【0062】
水電解水素生成装置2に自然エネルギー発電装置(例えば、太陽光発電装置4)及びSOFCシステム6を組み合わせた上述の水素製造装置1では、特に、水素の製造コストの低減効果が得られる。自然エネルギー発電装置(例えば、太陽光発電装置4)からの発電電力は変動が大きく、特に少出力の時間が数時間以上継続することも頻繁にあるが、この自然エネルギー発電装置にSOFCシステム6を組み合わせることにより、SOFCシステム6からの電池発電電力を水電解水素生成装置2に供給することができ、これにより、水電解水素生成装置2の設備利用率を嵩上げすることができ、この設備利用率の嵩上げは、特に水電解水素生成装置6の設備利用率が低いときに大きな効果が得られる。
【0063】
次に、SOFCシステムからの電池発電電力による水電解水素生成装置の設備利用率(ここでは、暦時間の定格動作に対する利用率と定義して説明する)の向上の効果について説明する。
【0064】
水素製造時に低CO2排出が目的である場合について説明する。水電解水素生成装置のための電力源は、例えば太陽光発電装置であるとすると、その発電出力の変動によって、水電解水素生成装置の設備利用率(ここでは、(暦時間)×(定格動作に対する利用率)と定義する)が決まる。これにより、変動する水素製造コストに占める設備相当費部分(円/Nm3)を算出することができ、設備利用率に対して、水素製造コストに占める設備相当費部分(円/Nm3)との関係は、設備利用率をuとすると、1/uに比例することになる。そのため、例えば、設備利用率が0.7から0.8に上がる場合と、設備利用率が0.3から0.4に上がる場合では、後者の方が効果が著しく大きくなる。
【0065】
太陽光発電装置4は太陽光発電電力の出力変動が大きく、この太陽光発電装置4の発電出力が小さくて水電解水素生成装置の設備利用率が低くなる場合があるが、SOFCシステム6を水電解水素生成装置2の電源の一部として用い、特に設備利用率が低い場合に、このSOFCシステム6からの電池発電電力を供給することによって、比較的少ない発電容量のアップでもって効果を上げることができ、SOFCシステム6に関わる設備コストアップに関わらず水素製造の経済性が改善されやすくなる。
【0066】
ここで、水電解水素生成装置に太陽光発電装置及びSOFCシステムを組み合わせて用いた場合における経済性の改善効果を試算する。
図4は、一日の時間別の太陽光発電装置の発電出力の代表的な例を示している。
図4において、実線Aは晴天時における相対的出力、破線Bは曇天時における相対的出力、一点鎖線Cは雨天時における相対出力を示している。
図4は、代表的なものを簡略化して示したものであり、晴天時の最大発電出力を1.0とし、この最大発電出力に対する相対出力で示している。例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構等は詳細な地区別・日照データベースを公開しており、詳細に行うことは可能である。
【0067】
この試算では、10日間の間で、晴天が4日、曇天が4日、雨天が2日とし、太陽光発電装置の発電出力を水電解水素生成装置に接続した場合の水電解水素生成装置の設備利用率(定格x暦時間に対しての利用率)を求めた。尚、太陽光発電装置の発電出力は1時間以内の出力変動もあるが、その細かい出力変動は太陽光発電装置、水電解水素生成装置のいずれかでの小容量の蓄電機能で変動吸収できるために、
図4で示す通りの1時間単位で変動するものとして算出した。この算出方法においては、太陽光発電装置の最大発電出力(晴天時の太陽光が最も強いときの発電出力)を1.0とし、水電解水素生成装置への定格入力電力(即ち、装置容量)の0.6、0.4、0.2とした。尚、水電解水素生成装置は部分入力に対して比例した水素製造ができるものとして算出した。即ち、水電解水素生成装置に「1」の電力が供給された際の水素生成量が「1」とすると、「0.5」の電力が供給された際の水素生成量が「0.5」となるようにして演算した。そして、SOFCシステムを組み合わせない水素製造装置での10日間の水電解水素生成装置の設備利用率を求めた。その後、SOFCシステムを組み合わせた水素製造装置での10日間の水電解水素生成装置の設備利用率を求めた。
【0068】
図5は、SOFCシステムを追加する前と追加した後の水電解水素生成装置の設備利用率を算出した。この算出結果に示されているように、SOFCシステムを追加した方が水電解水素生成装置の設備稼働率が上昇し、その設備利用率が改善されることが分かる。
【0069】
更に、この設備利用率改善の効果を設備利用率をuとし、(1/u)を設備費分改善インデックスとして、SOFCシステムの有無での(1/u)の差をSOFCシステム追加の設備費分改善インデックスとして算出し、このSOFCシステム追加の設備費分改善インデックスをSOFCシステムの発電出力で割ることによってSOFCシステムの発電出力当たりの改善効果インデックスを算出し、この算出結果を
図5に示すとともに、その改善効果インデックスの傾向を
図4に示した。
【0070】
図5は、
図3の太陽光発電装置の発電出力1.0に対して、水電解水素生成装置の定格消費電力を0.2、0.4、0.6とした場合について算出したものである。この算出においては、水電解水素生成装置の定格入力と太陽光発電装置の最大出力との関係が変化しても(0.2~0.6の範囲で変化する)、SOFCシステム当たりの水電解水素生成装置の設備費分改善は大きくは変わらず、SOFCシステムの導入割合が高くなるほど低下することが分かる。SOFCシステム全般として、コストや効率のスケールメリットが小さい傾向があることが実績と技術特性(発電出力の増大に対しては燃料電池セルの枚数を増加せる必要がある)から分かっており、詳細はそれも勘案する必要はあるが、
図4及び
図5の算出結果から、太陽光発電装置とSOFCシステムを組み合わせた水素製造装置においては、水電解水素生成装置の定格電力入力に対するSOFCシステムの発電出力は大きくても0.3、望ましくは0.2以下がよいことが分かる。
【0071】
以上、本発明に従う水素製造装置(SOFCシステム)の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0072】
例えば、上述した水素製造装置においては、水電解水素生成装置に自然エネルギー発電装置としての太陽光発電装置とSOFCシステムとを組み合わせているが、このような組合せに代えて、自然エネルギー発電装置としての風力発電装置とSOFCシステムとを組み合わせても上述したと同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、例えば、上述した水素製造装置(SOFCシステム)では、水電解水素生成装置での副生物(酸素)をSOFCシステムで消費する技術的事項及びSOFCシステムから排出される燃焼排気ガス(二酸化炭素)を回収する技術的事項の双方を採用しているが、これら技術的事項のいずれか一方のみを採用するようにすることもできる。
【符号の説明】
【0074】
1 水素製造装置
2 水電解水素生成装置
4 太陽光発電装置
6 固体酸化物形燃料電池システム(SOFCシステム)
12 酸素送給ライン
18 電源コントローラ
20 改質器
22 セルスタック
54 燃焼器
60 マスフローコントローラ
70 第3熱交換器
72 気液分離装置
74 三方弁
76 排気ガス回収・精製ライン
78 排気ガス処理ライン