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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051062
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】エアフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/52 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
B01D46/52 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161515
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】関 和也
【テーマコード(参考)】
4D058
【Fターム(参考)】
4D058JA14
4D058KA01
4D058KA08
4D058KA23
4D058KA25
(57)【要約】
【課題】樹脂製の枠体を構成する板状の枠材のねじれるような変形を抑さえることができるエアフィルタを提供する。
【解決手段】実施形態のエアフィルタは、気体中の微粒子を捕集するよう構成された濾材と、前記濾材を囲むように矩形に組み合わせられる4つの枠材を含む樹脂製の枠体と、を備える。前記枠材は、前記濾材の側と反対側を向く外側面を有する板状の部材である。前記枠材のうち、前記濾材を挟むよう配置される2つの枠材は、前記外側面から前記濾材の側と反対側に突出し、前記外側面上を線状に延びる線状突起が形成された突状領域を有している。前記線状突起は、気体が前記濾材を通過する気流方向及び前記気流方向と直交する前記枠材の延在方向に並び、互いに仕切られた複数の凹部を形成するように延びている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中の微粒子を捕集するよう構成された濾材と、
前記濾材を囲むように矩形に組み合わせられる4つの枠材を含む樹脂製の枠体と、を備え、
前記枠材は、前記濾材の側と反対側を向く外側面を有する板状の部材であり、
前記枠材のうち、前記濾材を挟むよう配置される2つの枠材は、前記外側面から前記濾材の側と反対側に突出し、前記外側面上を線状に延びる線状突起が形成された突状領域を有し、
前記線状突起は、気体が前記濾材を通過する気流方向及び前記気流方向と直交する前記枠材の延在方向に並び、互いに仕切られた複数の凹部を形成するように延びている、ことを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
前記突状領域は、前記枠材の前記気流方向の長さの20%以上の領域に設けられている、請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記突状領域は、前記気流方向の前記枠材の中心を含む中央領域に設けられている、請求項2に記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記突状領域は、前記枠材の前記延在方向の長さの90%以上の領域に設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
【請求項5】
前記突状領域には、前記線状突起に加え、前記凹部のうち直線上に並ぶ複数の凹部を、前記線状突起と交差しつつ貫通するよう延びるリブが少なくとも1本形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
【請求項6】
前記線状突起は、前記外側面との接続部分において、前記外側面に近づくにつれて前記線状突起の高さ方向に対する傾斜角度が大きくなるよう湾曲した湾曲部を有している、請求項1から5のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
【請求項7】
前記凹部のうちの1つの凹部と接する前記線状突起の壁部の前記外側面からの突出高さHと、当該凹部の前記外側面と平行な方向の最大長さLとの比H/Lは、1/20~1/2である、請求項1から6のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
【請求項8】
前記線状突起は、前記枠材の前記気流方向の中心を通り、前記枠材の前記延在方向と平行な前記枠材の中心線に対し線対称に形成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のエアフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体中の微粒子を捕集するエアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内の空気の清浄化のために用いられるエアフィルタは、一般に、空気中の微粒子を捕集する濾材と、濾材を囲む枠体とを備えている。枠体の内側には、例えば、プリーツ加工されジグザグ形状に折り畳まれた濾材のプリーツ間にセパレータ、スペーサ等の部材が配置された濾材パックが収容される。枠体は、例えば、4つの板状の枠材を矩形に組み合わせて作製される。従来、樹脂製の枠体を備えるエアフィルタが知られている(特許文献1)。
【0003】
エアフィルタの組み立ては、例えば、矩形状の枠体の両側板をなす2つの枠材の間に濾材パックを挟んだものを、上面にシール材を塗布した、枠体の底板をなす枠材の上に載せ、濾材パック及び側板の上に、枠体の天板をなす枠材を、濾材パック及び側板との間にシール材を介在させて載せることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-051510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにエアフィルタを組み立てるとき、樹脂製の板状の枠材は、ねじれるように変形する場合がある。濾材パックは、枠体の内側に隙間なく収容されるよう、枠体の側板をなす2つの枠材の間に、プリーツ間隔が狭まる方向に圧縮されるように挟み込まれるので、その反力により、側板をなす枠材に外向きの力がかかる。このとき、枠材の上下の端部が互いに反対方向に回転するように枠材のねじれが発生する。このように枠材が変形した状態でシール材が固まると、枠材同士の接続位置が目標位置からずれ、隣り合う枠材同士の間あるいは枠材と濾材との間に、枠体のねじれにより生じた隙間が表れ、リークの原因となる場合がある。また、圧縮された濾材パックが広がろうとして枠材が外側に膨らむよう変形することにより、寸法誤差が生じ、エアフィルタを所定の設置個所に取り付けられないなどの不具合が起こる。特に、板厚を薄くした樹脂製の枠材は、このような変形をしやすく、上記の問題が起こりやすい。
【0006】
本発明は、樹脂製の枠体を構成する板状の枠材のねじれるような変形を抑さえることができるエアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、エアフィルタである。当該エアフィルタは、
気体中の微粒子を捕集するよう構成された濾材と、
前記濾材を囲むように矩形に組み合わせられる4つの枠材を含む樹脂製の枠体と、を備え、
前記枠材は、前記濾材の側と反対側を向く外側面を有する板状の部材であり、
前記枠材のうち、前記濾材を挟むよう配置される2つの枠材は、前記外側面から前記濾材の側と反対側に突出し、前記外側面上を線状に延びる線状突起が形成された突状領域を有し、
前記線状突起は、気体が前記濾材を通過する気流方向及び前記気流方向と直交する前記枠材の延在方向に並び、互いに仕切られた複数の凹部を形成するように延びている、ことを特徴とする。
【0008】
前記突状領域は、前記枠材の前記気流方向の長さの20%以上の領域に設けられている、ことが好ましい。
【0009】
前記突状領域は、前記気流方向の前記枠材の中心を含む中央領域に設けられている、ことが好ましい。
【0010】
前記突状領域は、前記枠材の前記延在方向の長さの90%以上の領域に設けられている、ことが好ましい。
【0011】
前記突状領域には、前記線状突起に加え、前記凹部のうち直線上に並ぶ複数の凹部を、前記線状突起と交差しつつ貫通するよう延びるリブが少なくとも1本形成されている、ことが好ましい。
【0012】
前記線状突起は、前記外側面との接続部分において、前記外側面に近づくにつれて前記線状突起の高さ方向に対する傾斜角度が大きくなるよう湾曲した湾曲部を有している、ことが好ましい。
【0013】
前記凹部のうちの1つの凹部と接する前記線状突起の壁部の前記外側面からの突出高さHと、当該凹部の前記外側面と平行な方向の最大長さLとの比H/Lは、1/20~1/2である、ことが好ましい。
【0014】
前記線状突起は、前記枠材の前記気流方向の中心を通り、前記枠材の前記延在方向と平行な前記枠材の中心線に対し線対称に形成されている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記態様によれば、複数の樹脂製の枠材を組み合わせてエアフィルタを組み立てる際の枠材の変形を抑さえ、組み立ての精度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態のエアフィルタを示す正面図である。
図2図1のエアフィルタの左側面図である。
図3図1のエアフィルタの右側面図である。
図4図1のエアフィルタの平面図である。
図5図1のエアフィルタの底面図である。
図6図1のエアフィルタの背面図である。
図7図1のエアフィルタの分解正面図である。
図8】枠材のねじれを説明する図である。
図9】枠材の一例を示す斜視図である。
図10】枠材の延在方向の端面の一部の形状を示す斜視図である。
図11】線状突起の形態を説明する図である。
図12】枠材の別の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態のエアフィルタを説明する。
図1~6に、実施形態のエアフィルタ1の正面図、左側面図、右側面図、背面図、平面図、底面図を示す。
エアフィルタ1は、濾材11と、枠体20とを備える。
【0018】
濾材11は、気体中の微粒子を捕集するよう構成されている。濾材11は、例えば、ガラス繊維または有機繊維からなる繊維体である、繊維体の形態は、例えば、不織布、ペーパ、綿、あるいは織布である。濾材11の捕集効率は、粒径0.3μmの粒子に対し例えば90~99.99%である。
【0019】
濾材11は、好ましくは、プリーツ加工され、ジグザグ形状に折り畳まれたシート状部材である。濾材11の厚みは、例えば0.4~0.9mmである。濾材11のプリーツ間隔は5~9mm、折り幅(折り目と直交する方向の長さ)は260mm、プリーツ数は60~100である。
【0020】
濾材11は、好ましくは、図1及び図6に示すように、複数のセパレータ13と共に濾材パック10を構成する。濾材パック10は、枠体20に囲まれた空間内に収容され、枠体20に保持される。セパレータ13は、濾材11の隣り合うプリーツの間隔(図1のY方向に沿った間隔)を保持する部材である。セパレータ13は、濾材11の隣り合うプリーツの間のスペース内に挿入、配置された部材である。セパレータ13は、気流方向(X方向)に見た断面が波形状をなすようコルゲート加工されている。セパレータ13は、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属、あるいは紙を材質とする。
【0021】
枠体20は、濾材11を囲むように矩形に組み合わせられる4つの枠材21,22,23,24を含む樹脂製の部材である。このため、枠体が金属製である場合と比べ、エアフィルタ1は軽量である。枠材21~24は、好ましくは、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフタルアミド等の熱可塑性樹脂の材料の一体成型品である。枠材21~24は、濾材11の側と反対側を向く外側面30を有する板状の部材である。外側面30における枠材21~24の板厚(図10において2本の矢印で挟んだ部分を参照)は、好ましくは1.5~4mm、より好ましくは1.8~3mmである。
【0022】
エアフィルタ1の側板をなす枠材22,23(以降、側板ともいう)の延在方向(Z方向)の両端部には、延在方向に外側に突出する爪22a,22b,23a,23b(図7参照)が設けられている。一方、エアフィルタ1の底板をなす枠材24(以降、底板ともいう)の濾材パック10の側の面(上面)、及び、エアフィルタ1の天板(以降、天板ともいう)をなす枠材21の濾材パック10の側の面(下面)には、枠材22,23の爪22a,22b,23a,23bを受け入れるよう凹んだ爪受け部(図示せず)が、爪の形成位置と対応して形成されている。エアフィルタ1を組み立てる際、爪22a,22b,23a,23bが、対応する爪受け部に入り込むことで、枠材21,24の枠材22,23に対する気流方向(X方向)及び延在方向(Y方向)の位置ずれが防止される。
【0023】
枠材21~24は、エアフィルタ1を組み立てる際に、矩形に組み合わせられる。エアフィルタ1を組み立てる際、図7に示すように、底板24の上に、側板22,23の間に挟んだ濾材パック10を載せ、その上に、天板21を載せることを行う。濾材パック10は、側板22,23の下端部が、底板24の目標位置に位置するよう底板24に載せられる。このとき、側板22,23の下端部の爪22b,23bが底板24の爪受け部に入り込み、側板22,23は底板24に対して位置ずれが防止される。ここで、底板24の上面には、例えばウレタン系樹脂のシール剤が予め塗布されていて、シール剤は、底板24に載せた濾材パック10及び側板22,23の下端部と接続される。また、底板24の上に載せた濾材パック10及び側板22,23の上端部には、例えばウレタン系樹脂のシール剤が塗布され、濾材パック10及び側板22,23に載せた天板21と接続される。天板21は、側板22,23の上端部の爪22a,23aが天板21の爪受け部に入り込み、側板22,23は天板21に対して位置ずれ防止される。このようにして、枠材21~24は、ネジ等の固定具を用いずに、矩形に組み立てられ、互いに接続される。
【0024】
エアフィルタ1を組み立てる際、濾材パック10は、枠体20の内側に枠体20と隙間なく収容されるよう、側板22,23により、濾材11のプリーツ間隔が狭まる方向(Y方向)に圧縮されている。なお、側板22,23は、濾材パック10の水平方向(Y方向)の両端に位置する濾材11の部分と接着剤を介して接着される。
【0025】
枠材21~24は、外側面30から濾材11の側と反対側に突出し、外側面30上を線状に延びる線状突起32が形成された突状領域31を有している。線状突起32は、気体が濾材を通過する気流方向(X方向)及び気流方向と直交する枠材21~24の延在方向(Y方向又はZ方向)に並び、互いに仕切られた複数の凹部33を形成するように延びている。このような線状突起32は、外側面30と平行な面内で種々の方向に延びる成分を有し、成分同士が互いに支え合っているため、強度が高い。このため、線状突起32の代わりに、枠材の延在方向に延びるリブを形成した場合と比べ、枠材21~24をねじるような力に対する抵抗が大きく、枠材21~24のねじれるような変形を抑制できる。
【0026】
図8に、一般的な枠材(側板)25のねじれを説明する図を示す。側板25がねじれるような力は、例えば、濾材パックを枠材で両側から挟み込み圧縮することにより生じた濾材パックの反力が、幅方向の剛性の分布を有する枠材に作用することで主に発生する。この力は、側板25の延在方向の両端部が互いに逆向きに回転するような変形をもたらす。そのため、側板25の延在方向の下端部が底板に対し目標位置に位置決めできても、上端部が天板に対して目標位置に位置決めできなくなる場合がある。位置決めの精度は、爪22a,22b,23a,23bと爪受け部の嵌め合いによって保証されない。また、天板や底板は、シール剤が乾いて天板及び底板が引っ張る力がシール剤が乾いた箇所からかかることによって、ねじれるように変形する場合がある。このような枠材の変形は、枠材が樹脂製であるために生じやすい。特に、板厚の薄い枠材は、剛性が低く、顕著に生じる。枠材が変形すると、隣り合う枠材同士の間あるいは枠材と濾材との間に、枠体のねじれにより生じた隙間が表れ、リークの原因となる場合がある。また、変形の程度が大きいと、そもそも隣り合う枠材と組み合わせることができなくなり、枠材のねじれを無理に直そうとすると、枠材が割れる場合がある。
【0027】
複数の凹部33は、好ましくは、外側面30と平行な面内に敷き詰められたように配列している。外側面30と垂直な方向に見た凹部33の形状(以降、単に形状という)は、好ましくは多角形であり、より好ましくは正六角形、正方形、正三角形、台形、長方形、平行四辺形、ひし形や、トロミノ、テトロミノ等のポリオミノ形状である。特に、凹部33を、気流方向(X方向)及び延在方向(Y方向又はZ方向)に対し傾斜した方向に配列させることが容易な点で、凹部33の形状は、正六角形、正三角形、平行四辺形、ひし形であることが一層好ましい。気流方向(X方向)及び延在方向(Y方向又はZ方向)に対し傾斜した方向に配列した凹部33は、延在方向の両端部が互いに反対方向に回転するようなねじれを抑制する効果が高い。複数の凹部33は、互いに同じ形状であることが好ましいが、互いに異なる形状であることも好ましい。図2~5に示す例の複数の凹部33は、正六角形の凹部を含む。
【0028】
線状突起32は、外側面30と平行な面内で3つ以上の方向に延びる成分が接続した複数の接続部32aを有している。このため、線状突起32は、強度の高い網目構造をなし、枠材の変形の抑制に貢献する。線状突起32は、好ましくは、図2~5に示す例のように、互いに等間隔で配置された複数の接続部32aを備える。線状突起32は、好ましくは、途中で途切れることなく繋がっている。
【0029】
複数の凹部33の間で、外側面30と垂直な方向に見た凹部33のサイズ(最大長さ)は、枠材21~24に使用する材料を減らして軽量化及び低コスト化を図ることと、ねじれるような枠材21~24の変形を抑えることを両立させる観点から、好ましくは1.5~10mmである。また、凹部33のサイズ(最大長さ)が異なる複数の凹部33が形成されている場合に、凹部33の間で、サイズ(最大長さ)が最小の凹部33とサイズ(最大長さ)が最大の凹部33のサイズ(最大長さ)の比は、突状領域31における線状突起32の強度のばらつきを小さくする観点から、好ましくは0.25~4、より好ましくは0.5~2である。突状領域31に形成される複数の凹部33の数は、気流方向(X方向)に、好ましくは3~20個、より好ましくは5~10個であり、延在方向(Y,Z方向)に、好ましくは10~40個、より好ましくは15~30個である。
【0030】
線状突起32の外側面30からの突出高さは、好ましくは1~15mm、より好ましくは3~7mmである。突出高さが上記範囲より低いと、ねじれるような枠材21~24の変形を抑制する効果が不十分となりやすい。突出高さが上記範囲より高いと、枠材21~24に使用する樹脂材料を減らすことによる軽量化及び低コスト化を達成する効果が小さくなる。また、枠材21~24の気流方向(X方向)と直交する方向に外側に膨らんだエアフィルタ1を所定の取付箇所に設置する際に、取付箇所と接触し取り付けられない場合がある。
【0031】
線状突起32が延びる方向及び突出高さの高さ方向と直交する方向の線状突起32の長さ(線幅)は、好ましくは0.5~3mm、より好ましくは1~2mmである。線状突起32の上記範囲の線幅は、枠材21~24に使用する樹脂材料を減らして軽量化及び低コスト化を図ることと、ねじれるような枠材21~24の変形を抑えることを両立することに寄与する。
【0032】
突状領域31は、枠材21~24それぞれの気流方向(X方向)の長さ(幅)の20%以上の領域に設けられていることが好ましく、枠材21~24それぞれの幅の40~100%の領域に設けられていることがより好ましい。上記範囲の領域に突状領域31が設けられていることで、延在方向の両端部が互いに反対方向に回転するような枠材21~24のねじれを効果的に抑制することができる。図2~5及び図9~11に示す例の枠材は、幅方向(X方向)の両端部に、外側に折り返された形状の折り返し部が形成されているが、このような折り返し部を形成することなく突状領域31を設けることができる。
【0033】
突状領域31は、気流方向(X方向)の枠材21~24の中心を含む中央領域に設けられていることが好ましい。枠材の中央領域は、一般的に板厚が薄いため、剛性が低く、変形しやすい。突状領域31が中央領域に設けられていることで、枠材21~24のねじれるような変形を効果的に抑制することができる。
【0034】
突状領域31は、枠材21~24の延在方向(Y方向又はZ方向)の長さの90%以上の領域に設けられていることが好ましく、95~100%の領域に設けられていることがより好ましい。これにより、枠材21~24のねじれるような変形を効果的に抑制することができる。
【0035】
突状領域31には、線状突起32に加え、凹部33のうち直線上に並ぶ複数の凹部を、線状突起32と交差しつつ貫通するよう延びる第1リブ35が少なくとも1本形成されていることが好ましい。上記直線は、仮想の直線であり、好ましくは、枠材21~24の延在方向(Y方向又はZ方向)に延びる。突状領域31に第1リブ35が形成されていることにより、線状突起32と第1リブ35が接続し、互いに支え合うことで、枠材21~24のねじれるような変形を抑制する効果は大きく向上する。また、気流方向(X方向)と直交する方向に撓むような枠材21~24の変形を抑制する効果が向上する。エアフィルタ1の上流側に送風装置を配置してエアフィルタ1を使用すると、エアフィルタ1の上流側と下流側との圧力差が生じ、枠材21~24は外側に撓む(膨らむ)ように変形する場合がある。反対に、エアフィルタ1の下流側に送風装置を配置してエアフィルタ1を使用すると、エアフィルタ1の上流側と下流側との圧力差が生じ、枠材21~24は内側に撓む(凹む)ように変形する場合がある。このように枠材21~24が撓むと、濾材パック10もこれに追随して、濾材11のプリーツ形状に変形が生じる、その結果、エアフィルタ1の圧力損失が上昇するおそれがある。また、組み立て後のエアフィルタ1において、圧縮された濾材パック10の反力を受けて枠材22,23が外側に膨らむよう変形していると、寸法誤差が生じ、エアフィルタ1を所定の設置個所に取り付けられないなどの不具合が起きる。第1リブ35は、突状領域31に複数本形成されていることが好ましく、3~5本形成されていることがより好ましい。3本以上の第1リブ35は、等間隔に(互いに平行に)設けられていることが好ましい。図2~5に示す例の突状領域31には、3本の第1リブ35が等間隔に設けられている。
【0036】
第1リブ35が延びる方向及び第1リブ35の突出高さの方向と直交する方向の第1リブ35の長さ(線幅)は、線状突起32の線幅より太いことが好ましく、線状突起32の線幅の2~4倍であることがより好ましい。第1リブ35及び線状突起32の線幅が上記関係を満たすことで、線状突起32の線幅が細くても、枠材21~24がねじれるような変形を抑制する効果が大きくなり、枠材21~24に使用する樹脂材料を減らして軽量化及び低コスト化を図ることに貢献する。第1リブ35の外側面30からの突出高さは、線状突起32の突出高さの0.8~1.2倍であることが好ましく、等倍であることがより好ましい。
【0037】
突状領域31には、図2~6に示す例のように、突状領域31の幅方向の両端をなす第2リブ36がさらに形成されていることも好ましい。これにより、線状突起32と第2リブ36が接続し、互いに支え合うことで、枠材21~24のねじれるような変形を抑制する効果が増す。また、気流方向(X方向)と直交する方向に撓むような枠材21~24の変形を抑制する効果が向上する。
【0038】
第2リブ36が延びる方向及び第2リブ36の突出高さの方向と直交する方向の第2リブ36の長さ(線幅)は、線状突起32の線幅の0.5~2倍であることが好ましく、等倍であることが好ましい。第2リブ36の外側面30からの突出高さは、線状突起32の突出高さの0.8~1.2倍であることが好ましく、等倍であることがより好ましい。
【0039】
線状突起32は、外側面30との接続部分において、外側面30に近づくにつれて線状突起32の高さ方向に対する傾斜角度が大きくなるよう湾曲した湾曲部32bを有していることが好ましい。これにより、枠材21~24にかかる、枠材21~24をねじるような力に対する抵抗が格段に大きくなり、枠材21~24の変形を抑制する効果が大きくなる。
第1リブ35及び第2リブ36も、外側面30との接続部分において、外側面30に近づくにつれて第1リブ35及び第2リブ36の高さ方向に対する傾斜角度が大きくなるよう湾曲した湾曲部35b,36bを有していることが好ましい。この場合に、第1リブ35及び第2リブ36は、第1リブ35及び第2リブ36の線幅方向の両側のうちの片側だけに湾曲部35b,36bを有していることも好ましい。
湾曲部32b,35b,36bが延びる方向と直交する方向の断面形状は、曲率半径を有していることが好ましく、線状突起32、第1リブ35、第2リブ36の突出高さの30~90%の曲率半径を有していることがより好ましい。
枠材21~24をねじるような力に対する抵抗を大きくする観点から、湾曲部32b,35b,36bの外側面30からの高さはそれぞれ、線状突起32、第1リブ35、第2リブ36の外側面30からの突出高さの30~90%の長さであることが好ましく、40~70%の長さであることがより好ましい。
また、線状突起32、第1リブ35、第2リブ36の延在方向及び高さ方向と直交する方向の線状突起32、第1リブ35、第2リブ36の最大幅(以下、根元幅という)はそれぞれ、線状突起32、第1リブ35、第2リブ36の上記線幅の1.5~6倍の長さであることが好ましく、2~5倍の長さであることがより好ましい。
なお、線状突起32、第1リブ35、第2リブ36は、湾曲部32b,35b,36bに代えて、あるいは、湾曲部32b,35b,36bを有しつつ、線状突起32、第1リブ35、第2リブ36の延在方向と直交する断面形状が、外側面30の側から高さ方向の先端にかけて先細りになったテーパー形状であってもよい。上記断面形状は、例えば、線状突起32、第1リブ35、第2リブ36の高さ方向の先端を上辺とする台形、あるいは、高さ方向の先端を1つの頂角とする三角形、等である。
【0040】
複数の凹部33のうちの1つの凹部33と接する線状突起32の壁部32cの外側面からの突出高さH(mm)と、当該凹部33の外側面30と平行な方向の最大長さL(mm)との比H/Lは、1/20~1/2)であることが好ましい。比H/Lが上記範囲を満たすことにより、凹部33のサイズ(最大長さ)の大きさに関わらず、枠材21~24の強度を向上させ、枠材21~24のねじれるような変形を抑制することと、枠材21~24に使用する樹脂材料を減らして軽量化及び低コスト化を図ることとのバランスが保たれる。
また、線状突起32の壁部32cの突出高さH(mm)と、壁部32cの線幅W(mm)との積H・Wは、1~10(mm2)であることが好ましい。積H・Wが上記範囲を満たすことにより、枠材21~24の強度を向上させ、枠材21~24のねじれるような変形を抑制することと、枠材21~24に使用する樹脂材料を減らして軽量化及び低コスト化を図ることとのバランスが保たれる。
図11に、線状突起32の壁部32cの突出高さH、凹部33の最大長さL、壁部32cの線幅Wを示す。
【0041】
線状突起32は、枠材21~24の気流方向(X方向)の中心を通り、枠材21~24の延在方向(Y方向又はZ方向)と平行な枠材21~24の中心線に対し線対称に形成されていることが好ましい。これにより、枠材21~24のねじれるような変形を抑制する効果が幅方向(X方向)の両側で均一に得られやすい。
【0042】
(実験例)
線状突起の有無による、枠材の変形を抑制する効果を調べるため、線状突起の有無を除いて同じ仕様のエアフィルタを、上記説明した組み立て方に従い2つ作製した。一方のエアフィルタには線状突起を設け、下記仕様を除いて、図2~5に示す上記実施形態の線状突起32の形態を基調とした(実施例)。
【0043】
・線状突起32の線幅:1.0mm
・線状突起32の突出高さ:3.0mm
・線状突起32の湾曲部32bの曲率半径:2.0mm
・線状突起32の湾曲部32bの高さ:2.0mm
・線状突起32の根元幅:5mm
・凹部33のサイズ(最大長さ):36mm
・突状領域31の気流方向(X方向)の長さ:枠材の気流方向(X方向)の両端部の折り返し部を除く全域151mm
【0044】
なお、第1リブ35の線幅は、線状突起32の線幅の3倍とし、第2リブ36の線幅は、線状突起32の線幅の等倍とした。第1リブ35及び第2リブ36の突出高さは、線状突起32の突出高さの等倍とした。第1リブ35の湾曲部35b及び第2リブ36の湾曲部36bの高さ及び曲率半径は、線状突起32の湾曲部32bの高さ及び曲率半径と同じとした。第1リブ35の根元幅は、線状突起32の根元幅の2倍とし、第2リブ36の根元幅は、線状突起32の根元幅の0.6倍とした。
なお、図10に示すように、線状突起32の湾曲部32bは、線状突起32の線幅の中心に対して両側に設け、第1リブ35の湾曲部35bは、第1リブ35の線幅の中心に対して両側に設け、第2リブ36の湾曲部36bは、第2リブ36の線幅の中心に対して片側に設けた。
【0045】
枠材21~24の寸法は、気流方向(X方向)の長さ(横幅)を291mm、延在方向(Z方向)の長さを592.5mm、外側面30の板厚を1.8mmとした。枠材の材質はABS樹脂とした。
【0046】
他方のエアフィルタには、枠材に、実施例の線状突起を設けず、第1リブ35及び第2リブ36だけを設けた(比較例)。
【0047】
その結果、実施例のエアフィルタでは、組み立てるときに、枠材22,23が枠材21の目標位置に位置決めすることができたが、比較例のエアフィルタでは、組み立てるときに、枠材22,23が枠材21の目標位置に位置決めできなかった。
【0048】
以上、本発明のエアフィルタについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び上記実験例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0049】
例えば、突状領域31は、好ましくは、枠材22,23あるいは枠材21,24に設けられ、より好ましくは、枠材21~24の全てに設けられる。
【0050】
第1リブ35、第2リブ36は、好ましくは、枠材22,23あるいは枠材21,24に設けられ、より好ましくは、枠材21~24の全てに設けられる。一方で、第1リブ35は、図12に示すように、突状領域31に設けられていなくてもよい。第2リブ36は、突状領域31に設けられていなくてもよい。
【0051】
濾材パック10は、セパレータ13の代わりに、プリーツ間隔を保持するスペーサ(図示せず)を備えたものであってもよい。スペーサは、プリーツに、折り目を横切るように線状に設けられ、隣り合うプリーツに設けられたスペーサと当接することでプリーツ間隔を保持する。スペーサは、折り目方向に間隔をあけて複数設けられる。また、濾材11はプリーツ加工されジグザグ形状に折り畳まれたものでなくてもよく、例えば、気流方向(X方向)に一定以上(例えば10mm以上)の厚さを有する繊維体であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 エアフィルタ
10 濾材パック
11 濾材
13 セパレータ
20 枠体
21,22,23,24 枠材
22a,22b,23a,23b 爪
30 外側面
31 突状領域
32 線状突起
32a 接続部
32b 湾曲部
32c 壁部
33 凹部
35 第1リブ
35b 湾曲部
36 第2リブ
36b 湾曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12