(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051064
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】フィルタ用ケーシング、及びフィルタ収容体
(51)【国際特許分類】
B01D 46/00 20220101AFI20230404BHJP
【FI】
B01D46/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161517
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】木寺 康仁
(72)【発明者】
【氏名】大山 広
(72)【発明者】
【氏名】石澤 美由貴
【テーマコード(参考)】
4D058
【Fターム(参考)】
4D058JA14
4D058KC33
4D058KC37
4D058KC51
4D058KC54
4D058KC81
(57)【要約】
【課題】エアフィルタのメンテナンス性に優れたフィルタ用ケーシング及びフィルタ収容体を提供する。
【解決手段】実施形態のフィルタ用ケーシングは、取付位置においてエアフィルタを受ける受け部と、押付機構と、載置部と、を備える。押付機構は、取付位置に案内されるエアフィルタの通路となるケーシング内の空間のうち取付位置と対応する取付空間を、受け部との間に挟むよう設けられた押付機構であって、被操作部と、被操作部の操作により、エアフィルタを受け部に押し付け、エアフィルタを取り付けるよう構成された押付部材とを有し、被操作部あるいは押付部材の自重により、被操作部あるいは押付部材の一部が、空間内に入り込むよう構成されている。載置部は、押付部材の一部が空間の外において載置されることにより、被操作部あるいは押付部材の一部が空間内に入り込むことを阻止するよう構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアフィルタを所定の取付位置に案内し、前記取付位置に取り付けられた前記エアフィルタに、外部から取り込まれた空気を通過させるよう構成されたフィルタ用ケーシングであって、
前記取付位置において前記エアフィルタを受ける受け部と、
前記取付位置に案内される前記エアフィルタの通路となる前記ケーシング内の空間のうち前記取付位置と対応する取付空間を、前記受け部との間に挟むよう設けられた押付機構であって、被操作部と、前記被操作部の操作により、前記エアフィルタを前記受け部に押し付け、前記エアフィルタを取り付けるよう構成された押付部材とを有し、前記被操作部あるいは前記押付部材の自重により、前記被操作部あるいは前記押付部材の一部が、前記空間内に入り込むよう構成された押付機構と、
前記押付部材の前記一部が前記空間の外において載置されることにより、前記被操作部あるいは前記押付部材の前記一部が前記空間内に入り込むことを阻止するよう構成された載置部と、を備えることを特徴とするフィルタ用ケーシング。
【請求項2】
前記押付機構は、前記空間内を案内される前記エアフィルタの移動方向と平行な前記ケーシングの奥行方向に延びる駆動軸であって、前記被操作部及び前記押付部材と一体に回転するよう前記被操作部及び前記押付部材のそれぞれと接続され、前記奥行方向に移動可能、かつ、前記駆動軸の中心線の回りに回転可能な駆動軸をさらに有し、
前記押付機構は、前記駆動軸が、第1の奥行方向位置に位置することにより、前記押付部材が前記中心線の回りに回転し、前記エアフィルタの押し付けを行うことが可能となるよう構成され、
前記載置部は、前記押付部材が所定の回転方向位置に位置し、前記駆動軸が前記第1の奥行方向位置と異なる第2の奥行方向位置に位置することにより、前記押付部材が前記載置部に載置されるよう構成されている、請求項1に記載のフィルタ用ケーシング。
【請求項3】
前記押付部材は、前記駆動軸から遠ざかるように延びる部分であって、前記押付部材が前記回転方向位置に位置することにより水平方向に延びる部分を有し、
前記載置部は、当該部分を下方から支持する水平な載置面を有している、請求項2に記載のフィルタ用ケーシング。
【請求項4】
前記ケーシングは、前記エアフィルタを押し付ける際の前記押付部材の回転方向と反対方向から前記押付部材に当接することにより、前記押付部材が、前記エアフィルタを押し付けるための回転方向位置を超えて回転することを阻止するよう構成された停止部をさらに備える、請求項2又は3に記載のフィルタ用ケーシング。
【請求項5】
前記ケーシングは、
前記押付部材に対し前記奥行方向の両側に前記奥行方向と直交するよう設けられ、前記駆動軸の回転を支持するよう構成された一対の壁部と、
前記壁部のうちの第1壁部のうちの前記中心線の両側の部分から、前記駆動軸より下方の位置を、前記第1壁部と対向する第2壁部の側に向かってそれぞれ延びる2つの突出部であって、前記載置部及び前記停止部として機能する2つの突出部と、
を有するフレームを備える、請求項4に記載のフィルタ用ケーシング。
【請求項6】
前記突出部のうち、前記載置部として機能する突出部と、前記第2壁部との前記奥行方向の間隔は、前記押付部材の前記奥行方向の長さより広く、
前記停止部として機能する突出部と、前記第2壁部との前記奥行方向の間隔は、前記押付部材の前記奥行方向の長さより狭い、請求項5に記載のフィルタ用ケーシング。
【請求項7】
前記被操作部は、前記フレームに対し前記奥行方向の手前側に配置され、
前記ケーシングは、前記フレームに取り外し可能に装着される装着具であって、前記エアフィルタの押し付けが解除される前記被操作部の回転を阻止するよう、前記エアフィルタを押し付けた前記押付部材の回転方向位置と対応する回転方向位置に位置する前記被操作部に対し、前記押し付けが解除されるよう前記被操作部が回転する側に配置される装着具をさらに備える、請求項5又は6に記載のフィルタ用ケーシング。
【請求項8】
前記装着具は、前記取付空間内の前記エアフィルタに前記奥行方向の手前側から当接することにより、前記エアフィルタが前記取付空間から抜け出ることを阻止するようよう構成されている、請求項7に記載のフィルタ用ケーシング。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のフィルタ用ケーシングと、
前記ケーシング内の取付位置に案内され、前記取付位置に取り付けられるエアフィルタと、を備え、
前記ケーシングは、前記取付位置において前記エアフィルタを受ける受け部を含むガイド部であって、前記取付位置に案内される前記エアフィルタの通路に沿って前記ケーシング内に形成され、前記エアフィルタに接触して前記エアフィルタを受けつつ前記取付位置に案内するよう構成されたガイド部を有し、
前記エアフィルタは、前記ガイド部と接触する部分に、フッ素系樹脂材料からなる部材が設けられている、ことを特徴とするフィルタ収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタを収容するフィルタ用ケーシング、及びフィルタ収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置から排出された空気を清浄化するために、エアフィルタが用いられる場合がある。エアフィルタは、ケーシング内の所定の取付位置に取り付けられてケーシング内に収容される。エアフィルタを収容したケーシング(フィルタ収容体)は、例えば、空調装置の排出口を覆うよう空調装置に外付けされる。空調装置から排出された、空調された空気は、ケーシング内に取り込まれ、エアフィルタを通過することで清浄化される。
【0003】
フィルタ収容体内のエアフィルタは、ケーシング内に取り込まれた空気が、エアフィルタを通過することなくケーシングの外に排出されることがないよう、取付位置に気密に取り付けられる必要がある。特許文献1には、鋼板を断面U字状に折り曲げ加工して作製した押さえ棒を回転させ、エアフィルタをケーシングの内壁に対して気流の方向に押し付けることが記載されている。押さえ棒には、押さえ棒が延びる方向の回りに押さえ棒を回転させるためのハンドルが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアフィルタの使用に伴って濾材に塵埃が堆積すると、エアフィルタの捕集性能が低下する。このため、エアフィルタを継続して使用するためには、濾材の清掃あるいは交換を定期的に行う必要があり、その際、エアフィルタはケーシングに対して出し入れされる。しかし、エアフィルタをケーシングに押し付ける部材やハンドルが、エアフィルタの通路となるケーシング内の空間内に入り込んで、エアフィルタの出し入れの邪魔になることがある。エアフィルタの出し入れに先立って、予め、ハンドルを操作して、これらの部材やハンドルが上記空間の外に位置するようにしても、作業中のエアフィルタとケーシングとの接触や振動によって、押し付ける部材やハンドルが自重により回転し、上記空間内に入り込んでしまう場合がある。
【0006】
特に、大型の重いエアフィルタは、作業者が両手で持ってケーシングに出し入れされるため、エアフィルタを押し付ける部材やハンドルが、エアフィルタの通路となる空間内に入り込むと、これらの部材やハンドルを空間の外に出すために、一旦、エアフィルタを下し、ハンドルを操作する必要が生じ、作業をスムーズに行えない。また、空調装置の上部に外付けされるケーシングに対するエアフィルタの出し入れは、比較的高所で行われるため、エアフィルタが落下しないよう注意を払いながら作業をすることで、余計に時間がかかってしまう。
【0007】
本発明は、エアフィルタのメンテナンス性に優れたフィルタ用ケーシング及びフィルタ収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、エアフィルタを所定の取付位置に案内し、前記取付位置に取り付けられた前記エアフィルタに、外部から取り込まれた空気を通過させるよう構成されたフィルタ用ケーシングである。
前記フィルタ用ケーシングは、
前記取付位置において前記エアフィルタを受ける受け部と、
前記取付位置に案内される前記エアフィルタの通路となる前記ケーシング内の空間のうち前記取付位置と対応する取付空間を、前記受け部との間に挟むよう設けられた押付機構であって、被操作部と、前記被操作部の操作により、前記エアフィルタを前記受け部に押し付け、前記エアフィルタを取り付けるよう構成された押付部材とを有し、前記被操作部あるいは前記押付部材の自重により、前記被操作部あるいは前記押付部材の一部が、前記空間内に入り込むよう構成された押付機構と、
前記押付部材の前記一部が前記空間の外において載置されることにより、前記被操作部あるいは前記押付部材の前記一部が前記空間内に入り込むことを阻止するよう構成された載置部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
前記押付機構は、前記空間内を案内される前記エアフィルタの移動方向と平行な前記ケーシングの奥行方向に延びる駆動軸であって、前記被操作部及び前記押付部材と一体に回転するよう前記被操作部及び前記押付部材のそれぞれと接続され、前記奥行方向に移動可能、かつ、前記駆動軸の中心線の回りに回転可能な駆動軸をさらに有し、
前記押付機構は、前記駆動軸が、第1の奥行方向位置に位置することにより、前記押付部材が前記中心線の回りに回転し、前記エアフィルタの押し付けを行うことが可能となるよう構成され、
前記載置部は、前記押付部材が所定の回転方向位置に位置し、前記駆動軸が前記第1の奥行方向位置と異なる第2の奥行方向位置に位置することにより、前記押付部材が前記載置部に載置されるよう構成されている、ことが好ましい。
【0010】
前記押付部材は、前記駆動軸から遠ざかるように延びる部分であって、前記押付部材が前記回転方向位置に位置することにより水平方向に延びる部分を有し、
前記載置部は、当該部分を下方から支持する水平な載置面50aを有している、ことが好ましい。
【0011】
前記ケーシングは、前記エアフィルタを押し付ける際の前記押付部材の回転方向と反対方向から前記押付部材に当接することにより、前記押付部材が、前記エアフィルタを押し付けるための回転方向位置を超えて回転することを阻止するよう構成された停止部をさらに備える、ことが好ましい。
【0012】
前記ケーシングは、
前記押付部材に対し前記奥行方向の両側に前記奥行方向と直交するよう設けられ、前記駆動軸の回転を支持するよう構成された一対の壁部と、
前記壁部のうちの第1壁部のうちの前記中心線の両側の部分から、前記駆動軸より下方の位置を、前記第1壁部と対向する第2壁部の側に向かってそれぞれ延びる2つの迫出であって、前記載置部及び前記停止部として機能する2つの突出部と、
を有するフレームを備える、ことが好ましい。
【0013】
前記突出部のうち、前記載置部として機能する突出部と、前記第2壁部との前記奥行方向の間隔は、前記押付部材の前記奥行方向の長さより広く、
前記停止部として機能する突出部と、前記第2壁部との前記奥行方向の間隔は、前記押付部材の前記奥行方向の長さより狭い、ことが好ましい。
【0014】
前記被操作部は、前記フレームに対し前記奥行方向の手前側に配置され、
前記ケーシングは、前記フレームに取り外し可能に装着される装着具であって、前記エアフィルタの押し付けが解除される前記被操作部の回転を阻止するよう、前記エアフィルタを押し付けた前記押付部材の回転方向位置と対応する回転方向位置に位置する前記被操作部に対し、前記押し付けが解除されるよう前記被操作部が回転する側に配置される装着具をさらに備える、ことが好ましい。
【0015】
前記装着具は、前記取付空間内の前記エアフィルタに前記奥行方向の手前側から当接することにより、前記エアフィルタが前記取付空間から抜け出ることを阻止するようよう構成されている、ことが好ましい。
【0016】
本発明の一態様は、フィルタ収容体である。
前記フィルタ収容体は、
前記フィルタ用ケーシングと、
前記ケーシング内の取付位置に案内され、前記取付位置に取り付けられるエアフィルタと、を備え、
前記ケーシングは、前記取付位置において前記エアフィルタを受ける受け部を含むガイド部であって、前記取付位置に案内される前記エアフィルタの通路に沿って前記ケーシング内に形成され、前記エアフィルタに接触して前記エアフィルタを受けつつ前記取付位置に案内するよう構成されたガイド部を有し、
前記エアフィルタは、前記ガイド部と接触する部分に、フッ素系樹脂材料からなる部材が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記態様のフィルタ用ケーシング及びフィルタ収容体によれば、エアフィルタのメンテナンス性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態のフィルタ収容体を、ケーシングの一部を省略して示す外観図である。
【
図2】(a)は、エアフィルタの取付位置への案内を説明する図であり、(b)及び(c)は、エアフィルタの押し付けを説明する図である。
【
図3】押付部材によりエアフィルタを押し付ける位置を上方から見て示す図である。
【
図4】押付部材と、載置部及び停止部との位置関係を示す正面図である。
【
図5】フレームの一部を省略して、押付部材と、載置部及び停止部との位置関係を示す斜視図である。
【
図6】装着具と被操作部材との位置関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態のフィルタ用ケーシング及びフィルタ収容体を説明する。
【0020】
(フィルタ用ケーシング)
図1は、フィルタ収容体80を、フィルタ用ケーシング(以降、単にケーシングという)1の一部を省略して示す外観図である。
図2(a)は、エアフィルタ100の取付位置への案内を説明する図である。
【0021】
ケーシング1は、エアフィルタ100を、ケーシング1内の取付位置に案内し、取付位置に取り付けられたエアフィルタ100に、外部から取り込まれた空気を通過させるよう構成されている。取付位置は、
図1及び、後で参照する
図2(b)及び(c)においてエアフィルタ100が位置するケーシング1内の位置である。
【0022】
ケーシング1は、好ましくは、略直方体形状の外形を有し、内側が空洞の筐体である。ケーシング1は、例えば、金属材料からなる板材や部品等を組み合わせて作製される。ケーシング1は、エアフィルタ100の清掃及び濾材(後述)の交換等(メンテナンス)の際にエアフィルタ100を出し入れするための取出口(
図2(a)参照)と、外部から空気が取り込まれる取込口(図示せず)と、エアフィルタ100を通過した空気が排出される排出口(図示せず)と、を有している。取出口には、例えば、開閉式の扉が設けられる。
図1に示すケーシング1において、取込口は、例えば、直方体の底面をなすケーシング1の部分に設けられ、排出口は、例えば、直方体の上面をなすケーシングの部分に設けられる。
【0023】
ケーシング1は、受け部10と、押付機構30と、載置部50(
図4及び
図6参照)と、を備える。
【0024】
受け部10は、取付位置においてエアフィルタ100を受ける部分である。受け部10は、
図1において、ケーシング1内の底部に配置された矩形の支持台からなる。支持台は、エアフィルタ100の外周部(後述する外枠)を下方から支持しつつ、取込口から取り込まれた空気をエアフィルタ100の濾材(後述)に通過させるよう、上方から見て、矩形の外周を周状に延び、その内周側が開口された形状を有している。
【0025】
図1のほか、
図2(b)及び
図2(c)、
図3及び
図4にも、押付機構30を示す。なお、
図2(a)において、押付機構30の図示は省略されている。
図3は、押付機構30の後述する押付部材33によりエアフィルタ100を押し付ける位置を上方から見て示す図である。
図4には、奥行方向(Z方向)と直交する押付機構30の断面が示される。
【0026】
押付機構30は、取付位置に案内されるエアフィルタ100の通路となるケーシング1内の空間Sのうち取付位置と対応する取付空間S´(
図2(a)参照)を、受け部10との間に挟むよう設けられた機構である。ケーシング1の奥行方向は、上記空間S内を案内されるエアフィルタ100の移動方向と平行な方向(Z方向)である。
図1及び
図3に示すケーシング1において、押付機構30は、奥行方向(Z方向)と直交するケーシング1の幅方向(Y方向)の両側に1つずつ、計2つ設けられている。
【0027】
押付機構30は、被操作部31と、押付部材33と、を有する。
【0028】
被操作部31は、押付機構30によるエアフィルタ100の押し付け及び押し付けの解除を行う際に作業者が操作する部分であり、レバーとして機能する。
図3において、被操作部31の図示は省略されている。
【0029】
押付部材33は、被操作部31の操作により、エアフィルタ100を受け部10に押し付け、エアフィルタ100を取り付けるよう構成された部材である。押付部材33は、
図1において、奥行方向(Z方向)に間隔をあけて2つ配置されている。2つの押付機構30の間で、奥行方向(Z方向)に見たときの、後述する駆動軸35の回転方向や、後述する押付部材33の形状は、取付位置の幅方向(Y方向)の中心に対して対称である。
【0030】
押付機構30は、好ましくは、駆動軸35をさらに有している。駆動軸35は、ケーシング1の奥行方向(Z方向)に延びる棒状の部分である。駆動軸35は、被操作部31及び押付部材33と一体に回転するよう被操作部31及び押付部材33のそれぞれと接続されている。被操作部31は、駆動軸35の手前側の端と接続され、駆動軸35の中心線から離れるように延びる。駆動軸35の中心線は、駆動軸35の延在方向と直交する駆動軸35の断面の中心を通る線である。
図4に示す押付部材33は、延在部33aと、押付部33bとを有するよう、例えば鋼板に曲げ加工を施して作製された部材である。なお、
図4には、幅方向(Y方向)の両側の押付機構30のうち、奥行方向(Z方向)に見て、右側に設けられた押付機構30が示される。延在部33aは、駆動軸35から遠ざかるように延びる部分である。延在部33aは、好ましくは、
図4(a)に示すように、押付部材33が、上記中心線の回りの所定の回転方向位置に位置することにより略水平方向に延びる部分である。押付部33bと駆動軸35の中心との距離は、後述の解除状態におけるエアフィルタ100と駆動軸35の中心との距離よりも長い。これにより、押付機構30は、
図4(b)に示す後述の押付状態において、押付部33bを介して、エアフィルタ100の外周部を下方に押し付け、エアフィルタ100を受け部10に押し付ける。押付部材33は、
図3に示すように、エアフィルタ100の外周部の四隅と対応する4箇所に1つずつ配置され、エアフィルタ100の外周部を、周方向に均等な力で受け部10に押し付ける。
【0031】
駆動軸35は、奥行方向(Z方向)に移動可能、かつ、駆動軸35の中心線の回りに回転可能である。押付機構30は、駆動軸35が、第1の奥行方向位置に位置することにより、押付部材33が中心線の回りに回転し、エアフィルタ100の押し付けを行うことが可能となるよう構成されている。第1の奥行方向位置は、
図2(b)及び
図2(c)に示すように、押付部材33が駆動軸35の回りに回転可能となる奥行方向(Z方向)の位置である。押付機構30は、押付部材33の回転方向位置に応じて、
図2(b)及び
図4(a)に示す解除状態と、
図2(c)及び
図4(b)に示す押付状態と、を採りうる。
【0032】
押付機構30は、駆動軸35が第1の奥行方向位置に位置することにより、被操作部31あるいは押付部材33の自重により、被操作部31あるいは押付部材33の一部が、空間S内に入り込むよう構成されている。
図4に示す押付機構30では、被操作部31と、押付部材33の押付部33bとが駆動軸35に対し重複する方位方向に位置しているため、被操作部31及び押付部33bが駆動軸35より上方に配置され、空間Sの外に位置していても、ケーシング1に衝撃や振動が作用することで、自重により駆動軸35を容易に回転させ、被操作部31及び押付部33bの一部が空間S内に入り込む。
図4に示す押付機構30では、被操作部31は空間S内に、押付部33bは取付空間S´内に入り込む。
【0033】
図5に、後述するフレーム40の一部(後述する第2壁部42)を省略して、載置部50及び停止部(後述)60を示す。なお、
図5において、押付機構30の被操作部31は省略されている。
載置部50は、押付部材33の一部(押付部33b)が空間の外において載置されることにより、被操作部31の一部(駆動軸35と反対側の端を含む部分)あるいは押付部材33の一部(押付部33b)が空間S内に入り込むことを阻止するよう構成されている。
【0034】
載置部50は、押付部材33が所定の回転方向位置に位置し、駆動軸35が第1の奥行方向位置と異なる第2の奥行方向位置に位置することにより、押付部材33が載置部50に載置されるよう構成されていることが好ましい。駆動軸35は、押付部材33が、
図4(a)に示す回転方向位置に配置されることにより、第1の奥行方向位置と第2の奥行方向位置との間で奥行方向(Z方向)に移動可能である。第2の奥行方向位置において、駆動軸35の回転は制限される。載置部50は、
図5に示すように、延在部33aを下方から支持する水平な載置面50aを有していることが好ましい。
【0035】
ケーシング1にエアフィルタ100を取り付ける際、ケーシング1の取出口の扉を開け、押付機構30の駆動軸35を第1の奥行方向位置に位置させた状態で、被操作部31を操作して押付部材33を上記所定の回転方向位置に位置させ、さらに、駆動軸35を奥行方向に押し込んで第2の奥行方向位置に移動させることにより、押付部材33を載置部50に載置する。これにより、押付部材33及び被操作部31は、空間Sの外に配置される。この状態では、ケーシング1にエアフィルタ100が接触したり、空調装置から振動が伝わったりしても、押付部材33及び被操作部31の一部が自重により空間S内に入り込むことは阻止されるので、エアフィルタ100を、取出口から取付位置に向けて奥行方向に移動させる作業をスムーズに行える。エアフィルタ100を取付位置に移動させた後、被操作部31を操作して駆動軸35を引き出して第2の奥行方向位置から第1の奥行方向位置に移動させ、さらに、押付部材33を、
図2(c)及び
図4(b)に示す回転方向位置に回転させ、押付部材33をエアフィルタ100に押し付ける。このようにして、エアフィルタ100は取付位置に取り付けられる。
【0036】
一方、エアフィルタ100を取り出す際、被操作部31を操作して、押付機構30を解除状態にし、
図2(b)及び
図4(a)に示すように、押付部材33を所定の回転方向位置に位置させ、さらに、駆動軸35を押し込んで第1の奥行方向位置から第2の奥行方向位置に移動させ、押付部材33を載置部50に載置する。この状態では、上述したように押付部材33及び被操作部31の一部が自重により空間S内に入り込むことは阻止されるので、エアフィルタ100を、取付位置から引き出し、取出口から取り出す作業をスムーズに行える。
【0037】
以上のケーシング1によれば、エアフィルタ100清掃や濾材の交換に伴う作業が容易になり、メンテナンス性に優れる。
【0038】
ケーシング1は、空調装置に外付けされる。空調装置は、例えば、空調装置の長手方向が鉛直方向と平行な縦型あるいは縦置き型と呼ばれるタイプの装置である。この種の空調装置は、一般に、上部に、空調された空気を排出する排出口を有し、ケーシング1は、排出口の近傍である空調装置の最上面(天井面)に設置される。空調装置の排出口には、ケーシング1の取込口に延びるダクトが接続され、温度、湿度、風量等が調整された空気がケーシング1内に取り込まれる。空調装置には送風のために駆動するファンが備えられ、ファンの回転に伴う振動がケーシング1に伝わりやすい。
【0039】
ケーシング1は、
図4及び
図5に示すように、停止部60をさらに備えることが好ましい。停止部60は、エアフィルタ100を押し付ける際の押付部材33の回転方向(
図4及び
図5において反時計回り)と反対方向から押付部材33に当接することにより、押付部材33が、エアフィルタ100を押し付けるための回転方向位置を超えて回転することを阻止するよう構成されており、ストッパーとして機能する。押付部材33が、エアフィルタ100を押し付けるための回転方向位置を超えて回転した場合、押し付けのための動作をし直すために被操作部31をもう一周回そうとしても、ケーシング1内の狭いスペースに指を入れて被操作部31を操作する必要が生じたり、ケーシング1の内壁と接触して回転させることができなかったりするので、エアフィルタ100の取付作業に手間取ってしまう。このため、押付部材33が、エアフィルタ100を押し付けるための回転方向位置を超えて回転しないようにすることは好ましい。
【0040】
ケーシング1は、
図1及び
図4~6に示すように、フレーム40を備えることが好ましい。フレーム40は、一対の壁部41,42と、2つの突出部43,44とを有している。
図3において、フレーム40の図示は省略されている。
壁部41,42は、押付部材33に対し奥行方向(Z方向)の両側に奥行方向(Z方向)と直交するよう設けられ、駆動軸35の回転を支持するよう構成された部分である。
突出部43,44は、第1壁部41の駆動軸35の中心線の両側の部分から、駆動軸35より下方の位置を、第1壁部41と対向する第2壁部42の側に向かってそれぞれ延びる部分である。突出部43は載置部50として機能し、突出部44は停止部60として機能する。
【0041】
フレーム40は、押付部材33の奥行方向位置と対応させて奥行方向(Z方向)の2か所に、ケーシング1の幅方向(Y方向)と平行な方向にケーシング1内を延びるよう、2本配置されている。フレーム40の延在方向(Y方向)の両端は、ケーシング1の側面の内壁と接続される。フレーム40の延在方向(Y方向)と直交するフレーム40の断面形状は、図示される例において、下に開いた略コの字形状である。ケーシング1の幅方向(Y方向)の両側に配置された2つの押付部材33は、1本のフレーム40の壁部41,42の間に位置するよう、当該フレーム40に覆われている。
図5に示す突出部43,44は、壁部41の下端から奥行方向(Z方向)の手前側に突出するように、曲げ加工が施されている。
【0042】
フレーム40には、駆動軸35が壁部41,42を貫通して配置されるように、下方に開いた挿通口(壁部42の挿通口42aのみ図示)が設けられている。また、フレーム40には、挿通口を貫通して配置された駆動軸35に貫通して配置され、下方から駆動軸35を支持可能なように側方に開いた挿通口45aを有する支持部材45が設けられている。
図5に示す支持部材45は、ケーシング1の幅方向(Y方向)と直交する断面が下方を開いた略コの字形状を有しており、フレーム40の一部のY方向領域を被覆するようフレーム40に装着されている。ケーシング1は、このような支持部材45をさらに備えることが好ましい。これにより、駆動軸35は、鉛直方向(X方向)及び水平方向(Y方向)に位置決めされ、押付部材33による押付力の大きさが安定する。
【0043】
駆動軸35の高さ位置を調整するため、
図5に示すフレーム40上面と支持部材45の間に挟まれるように配置される1枚又は複数枚(例えば2枚)の板材(図示せず)を、ケーシング1はさらに備えていてもよい。板材を用いて駆動軸35の高さ位置を調整することで、押付部材33による押付力の大きさを調整できる。
【0044】
載置部50として機能する突出部43と、第2壁部42との奥行方向の間隔G1は、押付部材33の奥行方向の長さLより広く、停止部60として機能する突出部44と、第2壁部42との奥行方向の間隔G2は、押付部材33の奥行方向の長さLより狭いことが好ましい。これにより、駆動軸35の奥行方向位置に応じて、押付部材33の回転可能な状態と回転不能な状態とを切り替えることができるとともに、駆動軸35の奥行方向位置に関わらず、押付状態となる回転方向位置を超える押付部材33の回転を阻止する効果が確保される。
【0045】
図6に、装着具70を示す。ケーシング1は、装着具70をさらに備えることが好ましい。装着具70は、フレーム40に取り外し可能に装着される部材である。装着具70は、エアフィルタ100の押し付けを解除する被操作部31の回転を阻止するよう、エアフィルタ100を押し付けた押付部材33の回転方向位置と対応する回転方向位置に位置する被操作部31に対し、押し付けを解除するよう被操作部31が回転する側に配置される。これにより、使用中に、ケーシング1が空調装置から振動等を受けて駆動軸35が回転することによりエアフィルタ100の押し付けが解除されることが阻止される。装着具70は、エアフィルタ100の取り付け後、フレーム40に装着される。装着具70は、
図1に示す2本のフレーム40のうち、手前側のフレーム40に装着されることが好ましい。装着具の形態は
図6に示すものに制限されず、一例によれば、装着具は、
図1に示す形態であってもよく、さらに、フレーム40に装着する代わりに、取出口の扉の内面に装着されたものであってもよい。この場合、装着具を、エアフィルタ100の取付と無関係に、扉に装着したままにすることができる。
【0046】
装着具70は、取付空間S´内のエアフィルタ100に奥行方向の手前側から当接することにより、エアフィルタ100が取付空間S´から抜け出ることを阻止するようよう構成されていることが好ましい。
図6に示す装着具70は、取り付けられたエアフィルタ100に手前側から当接する当接部70aを有している。
【0047】
別の一実施形態のケーシングは、
エアフィルタを所定の取付位置に案内し、前記取付位置に取り付けられた前記エアフィルタに、外部から取り込まれた空気を通過させるよう構成されたフィルタ用ケーシングであって、
前記取付位置において前記エアフィルタを受ける受け部と、
前記取付位置に案内される前記エアフィルタの通路となる前記ケーシング内の空間のうち前記取付位置と対応する取付空間を、前記受け部との間に挟むよう設けられた押付機構であって、被操作部と、前記被操作部の操作により、前記エアフィルタを前記受け部に押し付け、前記エアフィルタを取り付けるよう構成された押付部材と、を有する押付機構と、
前記エアフィルタを押し付ける前記押付部材に当接することにより、前記エアフィルタの押し付けが解除される前記押付部材の動きを阻止するよう構成された停止部と、を備えることを特徴とする。
【0048】
押付部材が、エアフィルタを押し付けるための位置からずれた場合、エアフィルタを押し付けるための動作をし直すために被操作部をもう一度操作しようとしても、ケーシング1内の狭いスペースに指を入れて被操作部を操作する必要が生じたり、ケーシングの内壁と接触して回転させることができかったりするので、エアフィルタの取付作業に手間取ってしまう。この実施形態のケーシングによれば、押付部材が、エアフィルタを押し付けるための位置からずれて回転しないようにすることができる。停止部は、ストッパーとして機能する。
【0049】
この実施形態のケーシングは、好ましくは、上記実施形態のケーシング1と同様に構成される。
【0050】
(フィルタ収容体)
実施形態のフィルタ収容体80は、上記実施形態のケーシング1と、エアフィルタ100と、を備える。
【0051】
エアフィルタ100は、ケーシング1内の取付位置に案内され、取付位置に取り付けられる。エアフィルタ100は、図示されない濾材と、外枠101とを備える。
図1~3及び
図6において、エアフィルタ100は、外枠101がなす輪郭によって示される。濾材は、空気を通過させ、空気中の塵埃を捕集するよう構成されている。濾材は、例えば、プリーツ加工され、ジグザグ形状に折り畳まれた不織布等からなるシート状部材である。外枠101は、空気が濾材を通過するよう濾材を取り囲む部材である。外枠101は、好ましくは、矩形形状を有し、受け部10に下方から支持される。エアフィルタ100は、例えば、HEPAフィルタとしての性能を有する。
【0052】
ケーシング1は、ガイド部11を有している。ガイド部11は、取付位置においてエアフィルタ100を受ける受け部10を含む、ケーシング1の部分である。
図1~3のガイド部11は、受け部10を構成する支持台からなる。ガイド部11は、取付位置に案内されるエアフィルタ100の通路に沿ってケーシング1内に形成され、エアフィルタ100に接触してエアフィルタ100を受けつつ取付位置に案内するよう構成されている。
【0053】
エアフィルタ100は、ガイド部11と接触する部分に、フッ素系樹脂材料からなる部材(以降、接触部という)102(
図2参照)が設けられている。これにより、ケーシング1に対しエアフィルタ100を出し入れする際のエアフィルタ100とガイド部11との間の摩擦が小さくなり、
図2(a)に示すように、取出口から取付位置に向けて奥行方向に移動させる作業をスムーズに行える。したがって、メンテナンス性がさらに向上する。フッ素系樹脂材料は、フッ素樹脂を含む材料であり、好ましくはフッ素樹脂からなる材料である。フッ素樹脂は、好ましくは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体)、PFA(パーフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、FEP(パーフルオロエチレン・パーフルオロプロピレン共重合)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)のうちの少なくとも1種であり、より好ましくはPTFEである。接触部102は、例えば、受け部10の側を向く外枠101の下面に貼り付けられるシート状部材である。
【0054】
エアフィルタ100は、好ましくは、ガスケット103をさらに備える。ガスケット103は、接触部102と外枠101の上記下面との間に介在するよう設けられる。これにより、押し付けられたエアフィルタ100と受け部10との間からの空気のリークが抑制され、シール性が向上する。ガスケット103は、例えば、硬質発泡ポリウレタン系樹脂の材料からなる。
【0055】
以上、本発明のについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0056】
例えば、上記実施形態のケーシング1において、押付機構30の駆動軸35の中心線に対し、被操作部31が駆動軸35から離れるように延びる方位方向と、押付部材33の押付部33bが位置する方位方向は、重なっていなくてもよい。例えば、駆動軸35の中心線の方向に見て、被操作部31が駆動軸35から離れるように延びる方向と、押付部33bが押付部材の先端に向かって延びる方向とが略平行であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 フィルタ用ケーシング
10 受け部
11 ガイド部
30 押付機構
31 被操作部
33 押付部材
33a 延在部
33b 押付部
35 駆動軸
40 フレーム
41 第1壁部
42 第2壁部
42a,45a 挿通口
43,44 突出部
50 載置部
50a 載置面
60 停止部
70 装着具
70a 当接部
80 フィルタ収容体
100 エアフィルタ
101 外枠
102 接触部
103 ガスケット