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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051088
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】送信制御方法、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/18 20090101AFI20230404BHJP
   H04W 28/04 20090101ALI20230404BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20230404BHJP
【FI】
H04W52/18
H04W28/04
H04W72/04 131
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161548
(22)【出願日】2021-09-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
(72)【発明者】
【氏名】森山 雅文
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA14
5K067CC04
5K067DD11
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE10
5K067GG08
(57)【要約】
【課題】連送を行う送信局に対して好適な遅延制御を可能とする。
【解決手段】無線通信相手の受信局と非直交多元接続される複数の送信局であって、夫々が連送により所定の周期で所定回数連続して同一の信号を前記受信局に送信可能な複数の送信局の送信制御方法であって、情報処理装置が、前記複数の送信局の夫々が前記連送に用いる符号語長を示す情報を取得することと、送信局間に要求される電力差が確保された送信電力を前記符号語長が短いほど高くなるように前記複数の送信局の夫々に割り当てることとを実行する送信制御方法である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信相手の受信局と非直交多元接続される複数の送信局であって、夫々が連送により所定の周期で所定回数連続して同一の信号を前記受信局に送信可能な複数の送信局の送信制御方法であって、
情報処理装置が、
前記複数の送信局の夫々が前記連送に用いる符号語長を示す情報を取得することと、
送信局間に要求される、前記受信局における受信電力差を確保可能な送信電力を、前記符号語長が短いほど前記受信局における受信電力が高くなるように、前記複数の送信局の夫々に割り当てることと
を実行する送信制御方法。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記複数の送信局に含まれる前記符号語長が同一の2以上の送信局に対し、前記受信局における受信品質が高いほど前記受信局における受信電力が高くなるように送信電力を割り当てる
請求項1に記載の送信制御方法。
【請求項3】
前記情報処理装置は、前記複数の送信局の夫々が前記受信局へ送信した前記符号語長を示す情報を取得する
請求項1又は2に記載の送信制御方法。
【請求項4】
前記情報処理装置は、前記複数の送信局に対して所定の送信電力での信号の送信を指示し、
前記指示に従って前記複数の送信局から前記受信局へ送信された信号に含まれた前記符号語長を示す情報を取得する
請求項1又は2に記載の送信制御方法。
【請求項5】
前記情報処理装置は、前記受信局へ送信された信号の前記受信局における受信品質を取得する
請求項4に記載の送信制御方法。
【請求項6】
前記情報処理装置が、前記符号語長が短いほど上位となるように前記複数の送信局の順位を定め、前記送信電力の割り当てにおいて、前記複数の送信局のうちで前記順位が最上位の送信局に割り当て可能な最大の送信電力を割り当て、前記最上位の送信局が除外された残りの送信局の夫々に割り当てる送信電力を、前記最大の送信電力よりも低い電力の範囲において、前記受信局における受信電力差が確保されるように計算する
請求項1から5のいずれか一項に記載の送信制御方法。
【請求項7】
前記情報処理装置が、前記複数の送信局に割り当てられた送信電力を含む情報を前記複数の送信局に送信する
請求項1から6のいずれか一項に記載の送信制御方法。
【請求項8】
制御部を含み、
前記制御部が、無線通信相手の受信局と非直交多元接続される複数の送信局であって、夫々が連送により所定の周期で所定回数連続して同一の信号を前記受信局に送信可能な複数の送信局に関して、
前記複数の送信局の夫々が前記連送に用いる符号語長を示す情報を取得することと、
送信局間に要求される、前記受信局における受信電力差を確保可能な送信電力を前記符号語長が短いほど前記受信局における受信電力が高くなるように前記複数の送信局の夫々に割り当てることと
を実行する情報処理装置。
【請求項9】
前記制御部が、前記複数の送信局に含まれる前記符号語長が同一の2以上の送信局に対し、前記受信局における受信品質が高いほど前記受信局における受信電力が高くなるように送信電力を割り当てる
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記制御部が、前記複数の送信局の夫々が前記受信局へ送信した前記符号語長を示す情報を取得する
請求項8又は9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記制御部が、前記複数の送信局に対して所定の送信電力での信号の送信を指示し、
前記指示に従って前記複数の送信局から前記受信局へ送信された信号に含まれた前記符号語長を示す情報を取得する
請求項8又は9に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記制御部が、前記受信局へ送信された信号の前記受信局における受信品質を取得する請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記制御部が、前記符号語長が短いほど上位となるように前記複数の送信局の順位を定め、前記送信電力の割り当てにおいて、前記複数の送信局のうちで前記順位が最上位の送信局に割り当て可能な最大の送信電力を割り当て、前記最上位の送信局が除外された残りの送信局の夫々に割り当てる送信電力を、前記最大の送信電力よりも低い電力の範囲において、前記受信局における受信電力差が確保されるように計算する
請求項8から12のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記複数の送信局に割り当てられた送信電力を含む情報を前記複数の送信局に送信する
請求項8から13のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記受信局に含まれている
請求項8から14のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
無線通信相手の受信局と非直交多元接続される複数の送信局であって、夫々が連送により所定の周期で所定回数連続して同一の信号を前記受信局に送信可能な複数の送信局に含まれる第1の送信局の送信制御方法であって、
前記第1の送信局が、
前記連送に用いる符号語長を前記受信局へ送信することと、
前記符号語長に基づいて割り当てられた前記連送に用いる送信電力を示す情報を受信することと、
前記送信電力を用いて前記連送を行うことと、
を実行する送信制御方法。
【請求項17】
前記第1の送信局は、前記受信局が前記複数の送信局に関して前記符号語長が短いほど高くなるように割り当てられた送信電力を示す情報を受信する
請求項16に記載の送信制御方法。
【請求項18】
前記第1の送信局は、前記受信局から指示を受信することと、
前記連送に用いる符号語長を示す情報を前記指示に応じた信号に含めることと、
前記指示に応じた信号を前記受信局へ送信することと
をさらに実行する請求項16又は17に記載の送信制御方法。
【請求項19】
前記第1の送信局は、前記指示に応じた信号を前記受信局から指定された送信電力で送信する
請求項18に記載の送信制御方法。
【請求項20】
前記第1の送信局は、前記連送の開始タイミング、前記連送に用いる周波数チャネル、及び前記連送の回数を示す情報を受信する
請求項16から19のいずれか一項に記載の送信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信制御方法、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信の標準化団体3GPP(Third Generation Partnership Project)では、リリース17における議題の一つとして、Coverage enhancement (通信範囲の拡張)が設定
されている。会議では、基地局からの距離によらず、基地局-端末間の伝搬損失が大きい場合でも、所望の通信要件を満たす通信を実現するための技術が検討されている。
【0003】
本開示に係る背景技術としては、例えば、同一信号の連送を行い、受信局で同一信号の積分を行い、受信局での信号対ノイズ比(SNR)の改善を図る技術がある(例えば、非特許文献1)。また、基地局に非直交多元接続(Non-orthogonal Multiple Access:NOMA)された複数の端末が同一の周波数帯を用いて同一の時間帯にデータを送信可能な技術がある(例えば、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP TR 38.830、Study on NR coverage enhancements (Release 17)、2020 年12月
【非特許文献2】M. Moriyama, T. Takizawa, M. Oodo, H. Tezuka, and F. Kojima, “Experimental Evaluation of a Novel Up-link NOMA System for IoT communication Equipping Repetition Transmission and Receive Diversity,” IEICE Trans. Commun., Vol.E102 -B, No.8, pp1467-1476
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、連送を行う送信局に対して好適な遅延制御を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様の一つは、無線通信相手の受信局と非直交多元接続される複数の送信局であって、夫々が連送により所定の周期で所定回数連続して同一の信号を前記受信局に送信可能な複数の送信局の送信制御方法であって、情報処理装置が、前記複数の送信局の夫々が前記連送に用いる符号語長を示す情報を取得することと、送信局間に要求される、受信局における受信電力差を確保可能な送信電力を前記符号語長が短いほど受信局における受信電力が高くなるように前記複数の送信局の夫々に割り当てることとを実行する送信制御方法である。
【0007】
本開示の他の態様の一つは、制御部を含み、前記制御部が、無線通信相手の受信局と非直交多元接続される複数の送信局であって、夫々が連送により所定の周期で所定回数連続して同一の信号を前記受信局に送信可能な複数の送信局に関して、前記複数の送信局の夫々が前記連送に用いる符号語長を示す情報を取得することと、送信局間に要求される、受信局における受信電力差を確保可能な送信電力を前記符号語長が短いほど高くなるように前記複数の送信局の夫々に割り当てることとを実行する情報処理装置である。
【0008】
本開示の他の態様の一つは、無線通信相手の受信局と非直交多元接続される複数の送信局であって、夫々が連送により所定の周期で所定回数連続して同一の信号を前記受信局に
送信可能な複数の送信局に含まれる第1の送信局の送信制御方法であって、前記第1の送信局が、前記連送に用いる符号語長を前記受信局へ送信することと、前記符号語長に基づいて割り当てられた前記連送に用いる送信電力を示す情報を受信することと、前記送信電力を用いて前記連送を行うことと、を実行する送信制御方法である。
【0009】
本開示の他の態様は、上記した複数の送信局と受信局とを含む無線通信システム、コンピュータを上記した、送信局、受信局、又は情報処理装置として動作させるプログラム、当該プログラムを記録した非一時的記憶媒体などを含み得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、連送を行う送信局に対して好適な遅延制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1Aは、無線通信システムの第1の構成例を示す図であり、図1Bは、無線通信システムの第2の構成例を示す図である。
図2図2は、無線通信システムに適用される無線フレームの例を示す図である。
図3図3は、電力多重、及び干渉抑圧・除去技術(Interference suppression and cancellation techniques)の説明図である。
図4図4は、無線通信システムにおける連送の一例を示す図である。
図5図5は、基地局及び端末のハードウェア構成例を示す図である。
図6図6は、端末の構成例を示すブロック図である。
図7図7は、基地局の構成例を示すブロック図である。
図8図8は、基地局における処理例を示すフローチャートである。
図9図9は、図8におけるステップS001の詳細を例示するフローチャートである。
図10図10は、図8におけるステップS002の詳細を示すフローチャートである。
図11図11は、図10におけるステップS021の詳細を示すフローチャートである。
図12図12は、無線通信システムにおいて実行される、改良された連送の一例を示す図である。
図13図13は、連送に係る実験例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<無線通信システムの構成>
図1は、実施形態に係る無線通信システムの第1の構成例を示す図である。図1Bは、無線通信システムの第2の構成例を示す図である。第1の構成例に係る無線通信システムは、基地局1と、基地局1との間で無線により通信する複数の端末2(#0~#K-1、Kは0を含む自然数)を含む。基地局1は、受信局の一例であり、複数の端末2は、複数の送信局の一例である。
【0013】
複数の端末2の夫々は、UE(User Equipment)と呼ばれる。複数の端末2の夫々は、アンテナ20と、アンテナ20と接続された無線機2aと、無線機2aと接続された制御装置2bとを含む。制御装置2bは、センサ3などからデータを取得(受信)する。また、制御装置2bは、データ信号或いは制御信号の基地局1への送信、或いは、基地局1からの制御信号などの受信のために、無線機2aを制御する。無線機2aは、データ信号及び制御信号などを含む送信対象の信号を無線信号に変換してアンテナ20から放射(送信)する。また、無線局2aは、アンテナ20から受信された無線信号を制御装置2bで扱い可能な信号形式に変換する。アンテナ20の本数は、1でも2以上でもよい。端末2が2以上のアンテナを有し、基地局1との間でMIMO(multiple-input and multiple-ou
tput)通信が行われてもよい。
【0014】
基地局1は、1又は2以上のアンテナ10と、アンテナ10と接続された無線機1aと、無線機1aと接続された制御装置1bとを含む。無線機1a及び制御装置1bは、無線機2a及び制御装置2bと同様の機能を有する。制御装置2bは、端末2から受信したデータをサーバ4等に送信することができる。制御装置1bは、情報処理装置(コンピュータ)の一例である。なお、情報処理装置は、基地局1に含まれていてもよく、基地局1と異なる(基地局1から独立した)端末装置(サーバなど)であってもよい。すなわち、サーバなどの端末装置が、複数の端末2に対する連送回数及び各回において使用する送信電力を算出し、各端末2に通知(送信)する構成を有していてもよい。
【0015】
無線通信システムによれば、例えば、複数の端末2の夫々でセンサ3から取得されるデータ(IoT(Internet of Things)データなど)を基地局1経由でサーバ4に蓄積することができる。また、サーバ4からのデータを基地局1経由で複数の端末2の夫々に送信することもできる。端末2は、固定端末でも移動端末であってもよい。移動端末は、携帯端末であっても車載端末であってもよい。車載端末は、車両に乗せられた端末であっても、車両に据え付けられた端末であってもよい。
【0016】
なお、図1Bの第2の構成例に示すように、基地局1の代わりに、2以上の分散基地局と、制御装置1bとを有する基地局1Aが適用されてもよい。分散基地局は、アンテナ10及び無線機1aを有し、RRH(Remote Radio Head:無線部)と呼ばれる。2以上の分
散基地局が接続される制御装置1bは、BBU(Base Band Unit:信号処理部)と呼ばれる。以下の説明では、第1の構成例を有する基地局1について説明する。
【0017】
第1及び第2の構成例において、基地局1と複数の端末2の夫々とは、下り回線(ダウンリンク:DL)と、上り回線(アップリンク:UL)とを用いて通信(信号の送受信)を行う。DLは、基地局1から端末2へ向かう回線であり、制御信号の送信(通知)に使用される制御チャネル(制御CH)を含む。一方、ULは、端末2から基地局1へ向かう回線であり、制御CHと、データ(ユーザデータ)の送信に使用される共用チャネル(共用CH)とを含む。共用CHはデータチャネルとも呼ばれる。
【0018】
<無線フレーム>
ULの信号、及びDLの信号は、時分割多重によって割り当てられた時間領域を用いて送信される。図2は、無線通信システムに適用される無線フレームの例を示す図である。図2において、無線フレームは、所定の時間長を有する。無線フレーム長は、5Gでは10msであるが、10msより短くても長くてもよい。また、無線フレームは、複数個のサブフレームに分割される。5Gでは、サブフレーム長が1msに規定され、無線フレームが10個のサブフレームに分割される。但し、サブフレーム長及び分割数は5Gの例に制限されない。サブフレームは、さらに2つ以上のスロット(スロット長:500μm)に分割されてもよい。図2に示すように、無線フレームの各サブフレームは、DL又はULに割り当てられる。図2の例では、1つのDLに4つのULが続くように、DL及びULの割り当てがなされている。但し、このような割り当ては変更可能である。また、ULが割り当てられたサブフレームにおけるスロットは、等分され、前半部分にリファレンス信号(RS)がマッピングされ、後半部分にデータ信号(DS)がマッピングされている。但し、1スロットにおけるリファレンス信号及びデータ信号の配置は適宜変更可能である。
【0019】
リファレンス信号は、受信局(基地局1)で既知の信号であり、無線信号のチャネル(伝搬路、或いは通信路と呼ばれる)推定に使用される。データ信号は、ユーザデータが所定のMCS(Modulation and Coding Scheme:変調・符号化率)に従って変調及び符号化さ
れた信号である。
【0020】
<無線通信システムの特徴>
無線通信システムでは、データ信号のアップリンク通信において、以下のような特徴を有する。第1に、本実施形態における無線通信システムでは、コンフィギュアドグラント(CG)が採用されている。図2に示したように、UL通信において、CGとして利用可能な周波数チャネル及びスロットを事前に端末2に通知しておき、端末2毎に異なるリファレンス信号が用意され、リファレンス信号をペイロードであるデータ信号とともに送信することで、CGを実現している。CGにより、通信の許可であるグラントを基地局から端末が取得する手続きに伴う通信遅延をなくすことができる。
【0021】
第2に、無線通信システムでは、非直交多元接続により、複数の端末2から同一の周波数領域及び同一の時間領域(スロット)を用いて無線信号(リファレンス信号及びデータ信号)が送信される。このとき、基地局1において、端末2間で所望の受信電力差が生じるように、各端末2は、基地局1から指定された送信電力で無線信号の送信を行う。NOMAにより、信号送信の待ち時間を減少させることができる。但し、基地局1において、各端末2からの端末間干渉の抑圧及び除去が必要となる。
【0022】
図3は、電力多重、及び干渉抑圧・除去技術の説明図である。図3における左側の図は、複数の端末2の例である端末A、端末B及び端末Cから送信された無線信号の基地局1における受信電力を模式的に示す。この例では、端末A、B及びCから受信されたデータ信号は、基地局1の受信電力で重畳された状態(重畳信号)となっている。そして、端末Aの受信電力と端末Bの受信電力の電力差D1、端末Bの受信電力と端末Cの受信電力との電力差D2の夫々は、好適な干渉抑圧・除去のために要求される、基地局1における端末2間の受信電力差(要求電力差ΔP)以上である。
【0023】
基地局1は、リファレンス信号に基づく伝搬路特性を求め、この伝搬路特性を用いて重畳信号に対する復調及び復号を行うことで、端末Aからのデータを得ることができる。なお、上述したCG、NOMAを用いたUL通信、及び干渉抑圧・除去技術(SICなど)を含む無線通信システムを本願発明者はSTABLE(Simultaneous Transmission Access Boosting Low-latEncy)と呼んでいる。但し、本願に係る送信(連送)制御方法は、
STABLE以外のNOMAを適用する無線通信システムに適用可能である。
【0024】
重畳信号から端末Aの信号の干渉抑圧・除去を行うアルゴリズムとして、逐次型干渉抑圧・除去(Successive Interference Cancellation:SIC)アルゴリズムが使用される
。SICは、受信信号強度(Received Signal Strength Indicator:RSSI)の大きい
順に1端末ずつ逐次的に信号を判定し、その信号を除去していくアルゴリズムである。SICアルゴリズムは、端末2固有のリファレンス信号を用いた端末2と基地局1との間の通信路(伝搬路)特性の推定値を用いる。すなわち、SICアルゴリズムは、伝搬路特性の推定値を用いて、重畳信号のうち、受信信号強度の一番大きい端末2(端末A)から送信された信号(レプリカ信号と呼ばれる)を再現(生成)し、重畳信号から差し引く。これによって、重畳信号から、端末Aからのデータ信号による干渉が除去される(図3の真ん中の図を参照)。
【0025】
端末Aからのデータ信号が除去された重畳信号について、端末Bのリファレンス信号に基づく伝搬路特性を用いた復調及び復号によって、端末Bからのデータを得ることができる。さらに、SICアルゴリズムを用いて、端末Bから送信されたデータ信号のレプリカ信号を生成し、重畳信号から差し引くことで、端末Bからのデータ信号による干渉が除去され、端末Cから送信されたデータ信号が残る(図3の右側の図を参照)。当該信号に対し、端末Cのリファレンス信号に基づく伝搬路特性を用いた復調及び復号によって、端末
Cからのデータを得ることができる。
【0026】
<連送(Repetition)>
また、無線通信システムは、複数の端末2の夫々は連送を行うことができる。連送は、所定の周期(例えばスロット安易)で同一の信号を連続して繰り返し送信することである。連送により端末2から送信された信号は、基地局1にて受信され積分される。積分により受信信号の足し合わせが行われることで、SNRが上昇し、受信品質(SINR或いは伝搬損失)の改善が図られる。
【0027】
連送にあたり、データ信号の生成に使用する符号語長(すなわち、符号化率)を複数の端末2間で揃える場合がある。一方で、複数の端末2の夫々が使用する符号化長を独自に決定し、異なる符号化率が混在する状況で連送を行う場合もある。符号語長の混在は、例えば、使用するMCSが端末2間で異なる場合に発生する。
【0028】
連送は、連送により受信される信号の積分を通じてSNRを高め、SINRの改善を図るためになされる。このため、複数の端末2をその伝搬損失が小さい順に並べ、伝搬損失が小さいほど基地局における受信電力が高くなるように、複数の端末2に対する送信電力の割り当てを行うことが考えられる。
【0029】
図4は、連送の一例を示す図である。図4において、NOMAでのUL通信を行う5台(K-1=5)の端末2が存在すると仮定する。5台の端末2の夫々の識別情報(ユーザID)は、“1”,“2”,“3”,“4”及び“5”である。端末“1”~“5”の番号順は、これらと基地局1との間の伝搬損失の大きい順序となっている。また、端末“1”~“5”の符号語長は同一ではない。図4の例では、端末“1”及び“5”が連送の際に使用する符号語長は、連送1回分のデータ信号の送信に4スロットを使用する長さとなっている。また、端末“2”が連送の際に使用する符号語長は連送1回分のデータ信号の送信に2スロットを使用する長さとなっている。そして、端末“3”及び“4”の夫々が連送の際に使用する符号語長は、連送1回分のデータ信号の送信に1スロットを使用する長さとなっている。
【0030】
図4に示すように、基地局の受信電力が最大となる端末“1”の下位に位置する端末(図4の例では“2”、“3”及び“4”)の符号語長が端末“1”の符号語長よりも短い場合、以下のような問題が生じる。すなわち、端末“1”のデータ信号の受信には4スロットを要するため、SICにより端末“1”のレプリカ信号を生成して端末“1”からの信号を除去するための最小遅延は4スロットとなる。ところが、4スロットの受信において、端末“2”、“3”、及び“4”の夫々については、正常な復調及び復号を行うための受信を既に終えている。にも関わらず、端末“1”についての最小遅延を待つ状態となり、これらの端末についての復号結果を得るまでの遅延時間が長くなる問題があった。以下の説明では、少なくとも上述した問題を解決可能な無線通信システム、及び送信局の送信制御方法の詳細について説明する。
【0031】
<ハードウェア構成>
図5は、基地局1及び端末2のハードウェア構成例を示す図である。図5において、基地局1は、図1Aに示したM本のアンテナ10(10-1~10-M(Mは自然数))と、無線機(無線処理装置)1aと、制御装置1bとを備える。制御装置1bは、プロセッサ11と、記憶装置(メモリ)12と、内部インタフェース13と、他の基地局等と通信するためのネットワークインタフェース14とを有する。
【0032】
プロセッサ11は、Central Processing Unit (CPU)、或いはMicroprocessor Unit(MPU)とも呼ばれる。プロセッサ11は、単一のプロセッサに限定される訳ではな
く、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、プロセッサ11は、単一のソケットで接続される単一の物理CPUがマルチコア構成を有していても良い。また、プロセッサ11は、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)等の様々な回路構成の演算装置を含んでも良い。また、プロセッサ11は、集積回路(IC)、その他のディジタル回路、またはアナログ回路と連携するものでもよい。集積回路は、例えば、LSI、 Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、又はプログラマブルロジックデバイス(PLD)などである。PLDは、例えば、Field-Programmable
Gate Array(FPGA)である。プロセッサ11は、例えば、マイクロコントローラ(
MCU)、SoC(System-on-a-chip)、システムLSI、或いはチップセットなどと呼ばれるものであってもよい。プロセッサ11は、制御部の一例である。
【0033】
記憶装置12は、プロセッサ11が実行する命令列(コンピュータプログラム)、または、プロセッサ11が処理するデータ等を記憶する。内部インタフェース(内部IF)13は、種々の周辺装置をプロセッサ11に接続する回路である。
【0034】
ネットワークインタフェース(NW-IF)14は、他の基地局が接続されるネットワークに基地局1がアクセスするための通信装置である。他の基地局が接続されるネットワークは、バックホールとも呼ばれる。バックホールは例えば、光通信による有線ネットワークである。
【0035】
無線機1aは、無線信号を送信するトランスミッタおよび無線信号を受信するレシーバ等を含み、アンテナ10(10-1、・・・、10-M)に接続される。無線機1aは、トランスミッタおよびレシーバをそれぞれアンテナと同数のM系統有してもよい。
【0036】
図5において、端末2は、アンテナ20と、無線機(無線処理装置)2aと、制御装置2bとを備える。制御装置2bは、プロセッサ21と、記憶装置(メモリ)22と、内部インタフェース(内部IF)23と、他の基地局等と通信するためのネットワークインタフェース(NW-IF)24とを有する。
【0037】
プロセッサ21、記憶装置22、内部IF23、及びNW-IF24、及び無線機2aは、プロセッサ11、記憶装置12、内部IF13、及びNW-IF14、及び無線機1aと同様の機能を有する。
【0038】
<端末の構成>
図6は、端末の構成例を示すブロック図である。図5に示したプロセッサ21が記憶装置22に記憶されたプログラムを実行することによって、端末2は、RS部210と、DS部220とを備えた装置として動作する。RS部210は、RS生成部211を含む。RS生成部211はリファレンス信号を生成する。
【0039】
DS部220は、符号化部221と、変調部222とを含む。符号化部221は、入力されるデータ(ユーザデータ)に対する所定の誤り訂正符号化を行う。誤り訂正符号化は、例えばターボ符号化であるが、これ以外の符号化形式でもよい。また、ターボ符号化の前に、例えばCRC(Cyclic Redundancy Check)符号化が行われてもよい。
【0040】
変調部222は、符号化されたデータをディジタル変調してデータ信号を生成する。ディジタル変調の方式は、例えば、Quadrature Amplitude Modulation (QAM)、Phase Shift Keying (PSK)等である。符号化及び変調方式は、端末2に設定されているM
CSに従う。
【0041】
端末2は、マルチプレククサ(多重部)202をさらに含む。マルチプレククサ202
の出力端はアンテナ20に接続されている。マルチプレククサ202は、リファレンス信号を出力したら、データ信号を出力するように切り替わることで、1スロット分のリファレンス信号及びデータ信号をアンテナ20に接続する。なお、リファレンス信号及びデータ信号の夫々の前段には、CP(Cyclic Prefix)と呼ばれる遅延波の影響を補償するた
めの信号区間を設けることができる。連送の際には、同一のデータ信号が基地局1から指定された連送回数(N回)送信されるように、データ信号の生成が行われる。或いは、生成されたデータ信号が複製され、連送回数(N回)送信されるようにしてもよい。
【0042】
<基地局の構成>
図7は、基地局1の構成例を示す図である。基地局1のプロセッサ11が記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することによって、基地局1は図7に示すブロックを有する装置として動作する。図7に示すように、基地局1は、アンテナ10と、デマルチプレクサ101と、RS部110と、DS部120とを含む。デマルチプレクサ101は、切り替え動作によって、アンテナ10から受信される信号中のリファレンス信号をRS部110の積分部111へ送り、データ信号をDS部120の積分部121へ送る。このとき、リファレンス信号及びデータ信号に付与されていたCPが除去される。
【0043】
積分部111は、連送によって受信されるリファレンス信号を足し合わせることで、十分な受信信号電力のリファレンス信号を得る。通信路推定部112は、積分されたリファレンス信号を用いて通信路特性の推定値(チャネルベクトル)を算出する。この推定値は、復調部123における復調処理及びレプリカ信号の生成に利用される。
【0044】
DS部120は、積分部121と、レプリカ除去部122と、復調部123と、復号部124と、レプリカ生成部126とを含む。積分部121は、ターゲットの端末2(端末k)に対して割り当てた連送回数N(N個のスロット)のデータ信号を足し合わせることで、受信信号のSNRを高めてSINRの改善を図る。
【0045】
レプリカ除去部122は、積分された受信信号(重畳信号)からレプリカ生成部126によって生成されたレプリカ信号を差し引く。復調部123は、通信路推定部112からの通信路特性の推定値を用いて、ターゲットの端末2(重畳信号の送信元の端末のうち、送信電力値が最大の端末2)のデータ信号を分離し、分離したデータ信号に対する復調を行う。復号部123は、端末2の符号化部221で行われた符号化に対する復号を行い、元のデータを出力する。
【0046】
レプリカ生成部126は、符号化部127と、変調部128と、乗算部129とを含む。符号化部127及び変調部128は、復号部124から出力されたデータに対し、端末2で行われた符号化及びディジタル変調を行う。乗算部129は、変調されたデータに対し、ターゲットの端末2(復号されたデータの送信元の端末2)と基地局1との間の通信路特性の推定値を乗じる。これにより、レプリカ信号が生成される。レプリカ信号はレプリカ除去部122に供給される。
【0047】
<符号語長に基づく送信電力の算出>
図8は、基地局1における処理例を示すフローチャートである。図8に示す処理は、例えば、基地局1のプロセッサ11(制御装置1b)によって行われる。当該処理は、例えば、複数の端末2がデータを基地局1へ送信する場合に、端末2から送信されたデータ信号の送信要求を基地局1がUL制御チャネルを通じて受けたことを契機に開始される。但し、開始トリガは上記に制限されない。プロセッサ11に対する入力パラメータは以下の通りである。
・端末ID(ユーザID)k:kは、最小値“0”から最大値“K-1”までの値をとる。
・最大送信電力Pmax,UE:端末2での利用が許容される送信電力の最大値
・要求電力差ΔP:好適な干渉抑圧・除去の実施に要求される、基地局における端末間の受信電力差
【0048】
入力パラメータは、例えば記憶装置12に記憶されている。但し、入力パラメータの記憶場所は、記憶装置12以外であってもよい。また、プロセッサ11が入力パラメータの一部または全部をネットワークから取得するようにしてもよい。
【0049】
ステップS001において、プロセッサ11は、NOMAによるUL通信を行うK台の端末2(端末k:0~K-1)に関して、基地局1-端末2間の伝搬損失Lの測定を行う。また、プロセッサ11は、K台の端末2の夫々から送信された、データの送信に用いる符号語長Cを取得する。
【0050】
ステップS002において、プロセッサ11は、K台の端末2の夫々に対し、符号語長Cに基づく送信電力値Pの割り当てを行う。ステップS003の終了時点における出力パラメータは、以下の通りである。
・K台の端末2(端末ID:k=0~K-1の端末)の夫々に対して指定した送信電力Pk
【0051】
ステップS003は、基地局1は、DL制御チャネルを介して複数の端末2の夫々に出力パラメータを含む情報を送信する。このとき、基地局1は、端末2へ送信する情報に、連送回数、連送開始スロット、及び連送に使用する周波数チャネルを示す情報を含めることができる。これらの情報は、DL制御チャネル以外を用いて端末2へ送信されてもよい。
【0052】
図9は、図8におけるステップS001の詳細を例示するフローチャートである。ステップS011では、プロセッサ11は、各端末2に対して、送信電力を送信電力値pk,UEに設定して制御信号を送信することを指示する。この指示は、例えば、DL制御チャネルを通じて送信される。
【0053】
ステップS012では、プロセッサ11は、各端末2が上記指示に従って送信電力値pk,UEで送信した制御信号の受信信号強度rk,BSを計測する。なお、当該制御信号は、例えばUL制御チャネルを介して送信される。
【0054】
ステップS013では、プロセッサ11は、送信電力値pk,UEから受信信号強度rk,BSを引くことで、端末2と基地局1との間の伝搬損失Lを計算する。ステップS003において、基地局1が複数のアンテナ10を有する場合には、例えば、各アンテナ10の受信信号に係る伝搬損失の平均値を伝搬損失Lとして用いることができる。
【0055】
ステップS014では、プロセッサ11は、当該制御信号に含まれていた、各端末2が連送の際に使用する符号語長Cを示す情報(例えばMCS)を取得し、当該情報を記憶装置22などに記憶する。
【0056】
図10は、図8におけるステップS002の詳細を例示するフローチャートである。ステップS021では、プロセッサ11は、符号語長Cを昇順(ここでは短い順)にしたときの端末局IDとしてk(i)を決定する。
【0057】
図11は、ステップS021の詳細を説明するフローチャートである。ステップS031において、プロセッサ11は、K台の端末2を、符号語長Cの短い順に並べる。
【0058】
ステップS032では、プロセッサ11は、符号語長Cの短い順に並べた結果において、K台の端末2の中に、2以上の同じ順位の端末(同一の符号語長を有する端末)があるか否かを判定する。すなわち、プロセッサ11は、K台の端末2の符号語長Cの中に、同一の符号語長Cがあるか否かを判定する。同一の符号語長があると判定される場合には、処理がステップS033に進み、そうでない場合には、処理がステップS034に進む。
【0059】
ステップS033では、同順位の端末を伝搬損失Lの小さい順に並べる。伝搬損失の小さい端末2の順位を上げることで、基地局1における受信電力が高くなるように送信電力が割り当てられるようにしてSNR向上を図るためである。
【0060】
ステップS034では、同順位のない状態で順位が定められた端末kの夫々に対し、端末IDであるk(i)が割り当てられる。k(i)は、iの値が大きくなるほど小さくなる関数である。従って、符号語長に基づく順位が上位である程、k(i)の値は小さい値となる。
【0061】
以下に一例を示す。例えば、4台の端末k(k=0~3)があり、端末kの符号語長Cの値が以下である場合を仮定する。
=5, C=1, C=2, C=1
さらに、端末kの伝搬損失Lkが以下である場合を仮定する。
=90, L=80, L=85, L=75
【0062】
上記の例では、Cに基づく順序は、C=C,C,Cとなる。但し、C=Cであるため、伝搬損失Lと伝搬損失Lとの大小が比較される。その結果、伝搬損失が低い(損失が大きい)CがCより上位に配置される。従って、最終的な順序はC,C,C,Cとなる。そして、端末k=0~3に対するk(i)の値は、例えば以下
の値となる。
k(i=0)=3,k(i=1)=1,k(i=2)=2,k(i=3)=0,
【0063】
図10に戻って、ステップS22では、プロセッサ11は、引数であるiの値を0に設定する。ステップS023では、プロセッサ11は、現在のiの値が0(iの最小値)か否かを判定する。iの値が0であると判定される場合、処理がステップS024に進み、そうでない場合には、処理がステップS025に進む。
【0064】
ステップS024では、プロセッサ11は、端末k(i)に割り当てる送信電力値Pk(i)を最大送信電力Pmax,UEに設定する。これにより、上記例における端末k(0)、すなわち端末k=3の送信電力が最大送信電力に設定される。なお最大送信電力Pmax,UEの代わりに、Pmax,UEより低い所望の値を用いてもよい。その後、処理がステップS026に進む。
【0065】
ステップS025に処理が進んだ場合には、プロセッサ11は、端末k(i)の送信電力
値Pk(i)を、以下に示す第1及び第2の値のうちの小さい方に決定する。
・第1の値:最大送信電力Pmax,UE
・第2の値:端末k(i-1)の電力値Pk(i-1)から、伝搬損失Lk(i)と伝搬損失Lk(i-1)
との差分、及び要求電力差ΔPを減じた値
第2の値は、第1の値よりも小さい値となる。第2の値は、要求電力差ΔP以上の値となり、端末間で十分な電力差が得られるようにしている。
【0066】
ステップS026では、プロセッサ11は、現在のiの値がK-1(iの最大値)であるか否かを判定する。iの値がK-1であると判定される場合には、図10のフローが終了し、そうでない場合には、処理がステップS027に進む。ステップS027では、i
の値がインクリメント(現在のiの値に1を加算)され、処理がステップS023に戻る。このようにして、上記の例で示した端末k(i=1~3)に対して、送信電力値Pk(i)が決
定される。これによって、端末kに対し、要求電力差ΔP以上の電力差が確保された送信電力が割り当てられる。
【0067】
図12は、無線通信システムにおいて実行される、改良された連送の一例を示す図である。図4に示した端末ID“1”~“5”の端末2に関して、図8図13に示したフローに係る処理を行うと、以下のようになる。すなわち、符号語長Cの短い順(伝搬損失Lに基づく調整含む)で端末“1”~“5”が並べられる(ステップS031~S03
3)、夫々に電力初期値が割り当てられる(ステップS023~S027)。したがって、端末“1”~“5”の順番が、符号語長の短い順で“3”→“4”→“2”→“1”→“5”に変更され、当該順序で高い方から順に送信電力が割り当てられる。これによって、基地局の受信電力は、上記した順序で高くなり、図13に示した状態となる。ここで、端末“1”~“5”のうち、符号語長が最短の端末“3”が最上位に位置する。端末“3”の符号語長は、スロット1つ分であるため、端末“3”からの信号の復調及び復号に要する遅延は1スロット長である。このように、本実施形態では、端末“1”~“5”がタイミング(連送開始スロット)を合わせて連送を開始してから、信号の復調及び復号を開始できる最小遅延を短縮することができる。すなわち、連送を行う端末“3”に対して好適な遅延制御を行うことができる。また、端末“3”は符号長が短く、高い送信電力の設定により好適な復調及び復号結果(要求BLER(ブロックエラーレート))を早期に得ることが期待でき、端末“3”の連送を早期に停止させることも可能となる。
【0068】
図13は、実施形態に係る無線通信システムを用いた連送に係る実験例を示す図である。実験例における環境は以下の通りである。
・ISD(Inter-Site Distance:基地局間距離):1732m
・NLOS(Non Line Of Sight:見通し外)の環境
・最大送信電力:23dBm
・基地局1のアンテナ数:2本
・MCS=1,3,5に対応する3種類をランダムに選択
・誤り訂正符号:LDPC(Low Density Parity Check)
【0069】
図13の左側のグラフにおいて、複数のユーザID(端末2)“1”~“6”は、伝搬損失の小さい順で並べられている。グラフの縦軸は、復調及び復号の開始に要求されるスロット数である。
【0070】
これに対し、右側のブロックは、符号語長(伝搬損失を用いた調整含む)に基づく順番で並べられている。この場合、符号語長が最短の端末2に対し、連送を行う複数の端末2の中で最大の送信電力が割り当てられるため、当該端末2からの信号の復調及び復号に要する最小遅延が短縮されている。このようにして、連送を行う端末2に対して好適な遅延制御を行うことができる。
【0071】
<実施形態の作用効果>
実施形態に係る無線通信システムは、無線通信相手の受信局(基地局1)と非直交多元接続される複数の送信局(端末2)を含む(図1A図1B)。複数の端末2の夫々は、連送により所定の周期(スロット数)で所定回数連続して同一の信号を基地局1に送信可能である(図4)。
【0072】
基地局1に含まれる情報処理装置、すなわちプロセッサ11を含む制御装置1bは、複数の端末2の夫々が連送に用いる符号語長を示す情報を取得する(図9のS014)。また、プロセッサ11は、端末2間に要求される要求電力差ΔPを確保可能な基地局におけ
る受信電力を符号語長が短いほど高くなるように複数の端末2の夫々に送信電力を割り当てる。これによって、最短の符号語長の端末2に対し、複数の端末2の中で最大の受信電力が割り当てられることとなる。従って、当該端末2の復調及び復号を開始するのに要求される最小遅延(要求スロット数)を、伝搬損失の大きいほど高い送信電力を割り当てる場合に比べて短縮可能となる。これにより、連送を行う端末2に対し、好適な遅延制御を行うことができる。
【0073】
また、実施形態では、プロセッサ11又は制御装置1bは、複数の端末2に含まれる符号語長が同一の2以上の端末2に対し、基地局1における受信品質(伝搬損失)が高いほど高い受信電力となるように送信電力を割り当てる(図11のS083、図10)。このように伝搬損失の小さい端末2の基地局1における受信電力が高くなるように送信電力を割り当てて、受信品質(SINR或いはエラー率)の向上を図ることができる。
【0074】
また、実施形態において、プロセッサ11又は制御装置1bは、複数の端末2の夫々が基地局1へ送信した符号語長を示す情報を取得することができる。例えば、図9に示したように、すなわち、プロセッサ11又は制御装置1b(基地局1)は、複数の端末2に対して所定の送信電力(指定した送信電力)での信号の送信を指示する(S011)。そして、プロセッサ11又は制御装置1bは、この指示に従って複数の端末2から基地局1へ送信された信号中の符号語長を示す情報を取得することができる(S014)。
【0075】
また、実施形態において、プロセッサ11又は制御装置1bは、指示に従って基地局1へ送信された信号の基地局1における受信品質(伝搬損失L)を取得することができる。これによって、符号語長の取得と伝搬損失の測定とを同時期に(効率的に)行うことができる。なお、符号語長の取得と伝搬損失の測定は個別に行われるようにしてもよい。
【0076】
また、実施形態において、プロセッサ11又は制御装置1bは、以下のようにすることができる。すなわち、プロセッサ11又は制御装置1bは、符号語長が短いほど上位となるように複数の端末2の順位を定める(図11)。また、プロセッサ11又は制御装置1bは、送信電力の割り当てにおいて、複数の端末2のうちで順位が最上位の端末k(0)に
対し、基地局における受信電力が最大となるように割り当て可能な最大の送信電力(Pmax,UE)を割り当てる。そして、プロセッサ11又は制御装置1bは、最上位の端末k(0)
が除外された残りの端末の夫々に割り当てる送信電力を、Pmax,UEより低い電力の範囲において、基地局における受信電力において要求電力差ΔPが確保されるように計算する(図10のS025)。これによって、夫々の端末2に対し、SICに適した電力差を有する一方で、SINRの向上を図ることが可能な高さの送信電力を、順位が2番目以降の各端末2に割り当てることができる。
【0077】
また、実施形態において、プロセッサ11又は制御装置1bは、複数の端末2に割り当てられた送信電力を含む情報を複数の端末2に送信することができる。当該情報は、UL制御チャネル又はそれ以外を介して送信することができる(図8のS003)。端末2は、当該情報を受けて、連送に用いる送信電力を設定することができる。また、端末2は、送信電力を示す情報とともに、連送回数、連送開始タイミング、及び使用する周波数チャネルを示す情報を端末2が受信してもよい。
【0078】
また、実施形態において、連送を行う複数の端末2の夫々は「第1の送信局」の例示であり、端末2は、基地局1が複数の端末2に関して符号語長が短いほど高くなるように割り当てられた送信電力を示す情報を受信することができる。
【0079】
また、端末2は、基地局1から指示を受信することと、連送に用いる符号語長を示す情報を指示に応じた信号に含めることと、指示に応じた信号を基地局1へ送信することとを
実行することができる。このとき、端末2は、指示に応じた信号を基地局1から指定された送信電力で送信することができる。
【0080】
本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0081】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0082】
1・・・基地局
1a,2a・・・無線機(無線処理装置)
1b,2b・・・制御装置
2・・・端末
10,20・・・アンテナ
11,21・・・プロセッサ
12,22・・・記憶装置
13,23・・・内部インタフェース
14,24・・・ネットワークインタフェース
101・・・スイッチ
110・・・RS部
111,121・・・積分部
112・・・通信路推定部
122・・・レプリカ除去部
123・・・復調部
124・・・復号部
126・・・レプリカ生成部
127・・・符号化部
128・・・変調部
129・・・乗算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13