(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051089
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】電界式人体通信システム、送信装置及び受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 13/00 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
H04B13/00 500
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161549
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】永井 辰憲
(57)【要約】
【課題】帯電電圧の低減や帯電電圧の周波数の少ない周波数の利用を図ることによりノイズの低減を目指す。
【解決手段】放電用電極203が接続され、基準の電圧とされた電圧が得られる基準電圧ポイント204と、前記放電用電極203と前記基準電圧ポイント204との間の放電経路を導通・非導通とする放電経路導通・非導通回路205と、送信電極201を介して、静電気で帯電した人体の帯電電圧を検出する帯電電圧検出手段206と、前記帯電電圧検出手段206により検出された電圧が所定閾値を超えているかを検出し、所定閾値を超えている場合には、前記放電経路導通・非導通回路205の放電経路を導通にして強制放電させる放電制御手段207とを具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体と容量結合する電界式人体通信用の送信電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記送信電極へ送信する信号送信部を有した送信装置と、人体と容量結合する電界式人体通信用の受信電極に接続された受信装置と、を備える電界式人体通信システムにおいて、
前記送信装置には、
放電用電極が接続され、
基準の電圧とされた電圧が得られる基準電圧ポイントと、
前記放電用電極と前記基準電圧ポイントとの間の放電経路を導通・非導通とする放電経路導通・非導通回路と、
前記送信電極を介して、静電気で帯電した人体の帯電電圧を検出する帯電電圧検出手段と、
前記帯電電圧検出手段により検出された電圧が所定閾値を超えているかを検出し、所定閾値を超えている場合には、前記放電経路導通・非導通回路の放電経路を導通にして強制放電させる放電制御手段と
を具備することを特徴とする電界式人体通信システム。
【請求項2】
前記送信装置には、
前記放電用電極または前記送信電極を介して前記人体の帯電電圧の周波数を検出する帯電電圧周波数検出手段と、
前記放電制御手段の動作後に前記帯電電圧周波数検出手段を動作させて前記人体の帯電電圧の周波数を検出させると共に、前記信号送信部を制御し、前記帯電電圧周波数検出手段により検出された周波数を除く1周波数で送信信号を送信させる送信周波数制御手段と
を具備することを特徴とする請求項1に記載の電界式人体通信システム。
【請求項3】
前記送信装置には、
人体と容量結合する試験用受信電極と、
前記試験用受信電極からの信号を入力する入力端子と、
前記信号送信部から所定周波数の送信信号を送信させ、前記入力端子から信号を入力して、この入力信号の周波数成分から前記信号送信部から送信した送信信号の周波数成分を除去して前記帯電電圧周波数検出手段へ与えて人体の帯電電圧の周波数を検出させる帯電電圧周波数検出補助手段と
を具備し、
前記送信周波数制御手段は、前記帯電電圧周波数検出補助手段の制御下で前記帯電電圧周波数検出手段により検出された周波数を除く1周波数で送信信号を送信させることを特徴とする請求項2に記載の電界式人体通信システム。
【請求項4】
前記信号送信部から前記送信電極へ到る信号線と前記入力端子の間に接続されたコンデンサを有し、
前記試験用受信電極からの信号と前記信号送信部から送信された信号が合成された合成信号が前記入力端子へ入力されるように構成され、
前記帯電電圧周波数検出補助手段は、前記入力端子から前記合成信号を入力して、この合成信号の周波数成分から前記信号送信部から送信した送信信号の周波数成分を除去して前記帯電電圧周波数検出手段へ与えて人の帯電電圧の周波数を検出させることを特徴とする請求項3に記載の電界式人体通信システム。
【請求項5】
前記受信装置には、
人体と容量結合する試験用送信電極と、
所定の周波数を用いて試験用送信信号を前記試験用送信電極へ送信する試験用信号送信部と
前記受信電極からの信号を入力する入力端子と、
前記試験用信号送信部から所定周波数の送信信号を送信させ、前記入力端子から信号を入力して、この入力信号の周波数成分から前記試験用信号送信部から送信した試験用送信信号の周波数成分を除去して人体の帯電電圧の周波数を検出する帯電電圧周波数検出手段と、
前記帯電電圧周波数検出手段に検出された帯電電圧周波数信号を記憶する記憶手段と、
前記送信装置の前記信号送信部から送信された送信信号を復元する場合に、前記記憶された帯電電圧周波数信号を用いて前記受信電極からの信号の周波数成分から不要周波数成分の除去を行うことを特徴とする請求項1に記載の電界式人体通信システム。
【請求項6】
前記試験用信号送信部から前記試験用送信電極へ到る信号線と前記入力端子の間に接続されたコンデンサを有し、
前記受信電極からの信号と前記試験用信号送信部から送信された信号が合成された合成信号が前記入力端子へ入力されるように構成され、
前記帯電電圧周波数検出手段は、前記入力端子から前記合成信号を入力して、この合成信号の周波数成分から前記試験用信号送信部から送信した送信信号の周波数成分を除去して前記帯電電圧周波数信号を作成することを特徴とする請求項5に記載の電界式人体通信システム。
【請求項7】
前記受信装置には、
放電用電極が接続され、
基準の電圧とされた電圧が得られる基準電圧ポイントと、
前記放電用電極と前記基準電圧ポイントとの間の放電経路を導通・非導通とする放電経路導通・非導通回路と、
前記受信電極を介して、静電気で帯電した人体の帯電電圧を検出する帯電電圧検出手段と、
前記帯電電圧検出手段により検出された電圧が所定閾値を超えているかを検出し、所定閾値を超えている場合には、前記放電経路導通・非導通回路の放電経路を導通にして強制放電させる放電制御手段と
を具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電界式人体通信システム。
【請求項8】
前記受信装置には、
複数の受信電極が接続され、
高速フーリエ変換を行う高速フーリエ変換手段と、
を具備し、
全ての前記受信電極から信号を受信して時系列に蓄積し、前記フーリエ変換手段に前記受信電極毎の蓄積した信号を与えて高速フーリエ変換し、高速フーリエ変換した結果に基づき前記送信装置の前記信号送信部から送信された送信信号を復元することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電界式人体通信システム。
【請求項9】
前記受信装置には、
複数の受信電極が接続され、
前記複数の受信電極からそれぞれ異なるタイミングで所定期間、信号を受信する前記複数の受信電極と同数のサンプリング回路と、
前記複数のサンプリング回路で受信した信号の全ての和信号または積信号を求める信号変形手段と、
前記和信号または積信号を所定波高閾値によりHレベルとLレベルに2値化する2値化回路と、
2値化のHレベルが概ね連続する期間の長さと2値化のLレベルが連続する長さに基づき、1と0のデータを取り出すデータ取出手段と
が備えられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電界式人体通信システム。
【請求項10】
前記受信装置には、
複数の受信電極が接続され、
前記複数の受信電極から所定時間毎のサンプリングをそれぞれ異なる周波数で行って信号を受信する前記複数の受信電極と同数の周波数受信回路と、
前記複数の周波数受信回路で受信した信号の全ての和信号または積信号を求める信号変形手段と、
前記和信号または積信号を所定波高閾値によりHレベルとLレベルに2値化する2値化回路と、
2値化のHレベルが概ね連続する期間の長さと2値化のLレベルが連続する長さに基づき、1と0のデータを取り出すデータ取出手段と
が備えられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電界式人体通信システム。
【請求項11】
人体と容量結合する電界式人体通信用の送信電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記送信電極へ送信する信号送信部を有した送信装置と、人体と容量結合する電界式人体通信用の受信電極に接続された受信装置と、を備える電界式人体通信システムの前記送信装置において、
放電用電極が接続され、
基準の電圧とされた電圧が得られる基準電圧ポイントと、
前記放電用電極と前記基準電圧ポイントとの間の放電経路を導通・非導通とする放電経路導通・非導道通回路と、
前記送信電極を介して、静電気で帯電した人体の帯電電圧を検出する帯電電圧検出手段と、
前記帯電電圧検出手段により検出された電圧が所定閾値を超えているかを検出し、所定閾値を超えている場合には、前記放電経路導通・非導通回路の放電経路を導通にして強制放電させる放電制御手段と
を具備することを特徴とする電界式人体通信システムの送信装置。
【請求項12】
前記放電用電極または前記送信電極を介して前記人体の帯電電圧の周波数を検出する帯電電圧周波数検出手段と、
前記放電制御手段の動作後に前記帯電電圧周波数検出手段を動作させて前記人体の帯電電圧の周波数を検出させると共に、前記信号送信部を制御し、前記帯電電圧周波数検出手段により検出された周波数を除く1周波数で送信信号を送信させる送信周波数制御手段と
を具備することを特徴とする請求項11に記載の電界式人体通信システムの送信装置。
【請求項13】
人体と容量結合する試験用受信電極と、
前記試験用受信電極からの信号を入力する入力端子と、
前記信号送信部から所定周波数の送信信号を送信させ、前記入力端子から信号を入力して、この入力信号の周波数成分から前記信号送信部から送信した送信信号の周波数成分を除去して前記帯電電圧周波数検出手段へ与えて人体の帯電電圧の周波数を検出させる帯電電圧周波数検出補助手段と
を具備し、
前記送信周波数制御手段は、前記帯電電圧周波数検出補助手段の制御下で前記帯電電圧周波数検出手段により検出された周波数を除く1周波数で送信信号を送信させることを特徴とする請求項12に記載の電界式人体通信システムの送信装置。
【請求項14】
前記信号送信部から前記送信電極へ到る信号線と前記入力端子の間に接続されたコンデンサを有し、
前記試験用受信電極からの信号と前記信号送信部から送信された信号が合成された合成信号が前記入力端子へ入力されるように構成され、
前記帯電電圧周波数検出補助手段は、前記入力端子から前記合成信号を入力して、この合成信号の周波数成分から前記信号送信部から送信した送信信号の周波数成分を除去して前記帯電電圧周波数検出手段へ与えて人体の帯電電圧の周波数を検出させることを特徴とする請求項13に記載の電界式人体通信システムの送信装置。
【請求項15】
人体と容量結合する電界式人体通信用の送信電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記送信電極へ送信する信号送信部を有した送信装置と、人体と容量結合する電界式人体通信用の受信電極に接続された受信装置と、を備える電界式人体通信システムの前記受信装置において、
放電用電極が接続され、
基準の電圧とされた電圧が得られる基準電圧ポイントと、
前記放電用電極と前記基準電圧ポイントとの間の放電経路を導通・非導通とする放電経路導通・非導通回路と、
前記受信電極を介して、静電気で帯電した人体の帯電電圧を検出する帯電電圧検出手段と、
前記帯電電圧検出手段により検出された電圧が所定閾値を超えているかを検出し、所定閾値を超えている場合には、前記放電経路導通・非導通回路の放電経路を導通にして強制放電させる放電制御手段と
を具備することを特徴とする電界式人体通信システムの受信装置。
【請求項16】
人体と容量結合する試験用送信電極と、
所定の周波数を用いて試験用送信信号を前記試験用送信電極へ送信する試験用信号送信部と
前記受信電極からの信号を入力する入力端子と、
前記試験用信号送信部から所定周波数の送信信号を送信させ、前記入力端子から信号を入力して、この入力信号の周波数成分から前記試験用信号送信部から送信した試験用送信信号の周波数成分を除去して人体の帯電電圧の周波数を検出する帯電電圧周波数検出手段と、
前記帯電電圧周波数検出手段に検出された帯電電圧周波数信号を記憶する記憶手段と、
前記送信装置の前記信号送信部から送信された送信信号を復元する場合に、前記記憶された帯電電圧周波数信号を用いて前記受信電極からの信号の周波数成分から不要周波数成分の除去を行うことを特徴とする請求項15に記載の電界式人体通信システムの受信装置。
【請求項17】
前記試験用信号送信部から前記試験用送信電極へ到る信号線と前記入力端子の間に接続されたコンデンサを有し、
前記受信電極からの信号と前記試験用信号送信部から送信された信号が合成された合成信号が前記入力端子へ入力されるように構成され、
前記帯電電圧周波数検出手段は、前記入力端子から前記合成信号を入力して、この合成信号の周波数成分から前記試験用信号送信部から送信した送信信号の周波数成分を除去して前記帯電電圧周波数信号を作成することを特徴とする請求項16に記載の電界式人体通信システムの受信装置。
【請求項18】
複数の受信電極が接続され、
高速フーリエ変換を行う高速フーリエ変換手段と、
を具備し、
全ての前記受信電極から信号を受信して時系列に蓄積し、前記フーリエ変換手段に前記受信電極毎の蓄積した信号を与えて高速フーリエ変換し、高速フーリエ変換した結果に基づき前記送信装置の前記信号送信部から送信された送信信号を復元することを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の電界式人体通信システムの受信装置。
【請求項19】
複数の受信電極が接続され、
前記複数の受信電極からそれぞれ異なるタイミングで所定期間、信号を受信する前記複数の受信電極と同数のサンプリング回路と、
前記複数のサンプリング回路で受信した信号の全ての和信号または積信号を求める信号変形手段と、
前記和信号または積信号を所定波高閾値によりHレベルとLレベルに2値化する2値化回路と、
2値化のHレベルが概ね連続する期間の長さと2値化のLレベルが連続する長さに基づき、1と0のデータを取り出すデータ取出手段と
が備えられていることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の電界式人体通信システムの受信装置。
【請求項20】
複数の受信電極が接続され、
前記複数の受信電極から所定時間毎のサンプリングをそれぞれ異なる周波数で行って信号を受信する前記複数の受信電極と同数の周波数受信回路と、
前記複数の周波数受信回路で受信した信号の全ての和信号または積信号を求める信号変形手段と、
前記和信号または積信号を所定波高閾値によりHレベルとLレベルに2値化する2値化回路と、
2値化のHレベルが概ね連続する期間の長さと2値化のLレベルが連続する長さに基づき、1と0のデータを取り出すデータ取出手段と
が備えられていることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の電界式人体通信システムの受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電界式人体通信システム、送信装置及び受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体通信とは、人体を通信の媒体として扱う通信技術のことである。この人体通信には2つの伝送方式がある。1つは「電流通信方式」であり、もう1つは「電界通信方式」である。
【0003】
「電流通信方式」は、一般的に利用面での制約があるとされている。即ち、送信機及び受信機のそれぞれの電極を人体に直接接触させる必要があるため、ユーザに不快感を与える。また、発汗などにより皮膚と電極の接触状態が変化し、通信が安定しない、などの欠点がある。
【0004】
一方の電界方式は、人の周りに存在している静電気のようなごく微弱な電気の膜と考えることができる“電界”を用い、人体の表面に発生する電界の変化を利用して情報を伝達するものである。この電界方式の問題点は、物理的な通信線を使用しないがために、基準電位を合わせられないといった点にある。本発明は後者の電界式通信を用いた通信システム、送信装置及び受信装置である。それが故に、外界からのノイズを多く受けるため、ノイズ除去が課題である。
【0005】
特許文献1には、電極同士の電界結合を高効率化し、装置の小型化を実現した、電界結合方式の優れた通信装置、通信システムが開示されている。この特許文献1の通信装置は、2枚の導体平板により構成される電極部に対して、直列に接続される第1の共振回路と、直列接続された電極部及び上記第1の共振回路に対して並列接続される第2の共振回路を備える。上記電極部に印加される電圧が直列接続された電極部及び第1の共振回路に印加される電圧よりも大きくなるように、共振回路の定数が決定されている。これにより、目的の周波数で非常に結合強度の大きい電界結合用電極を得ている。即ち、電極同士の電界結合を高効率化するための優れた電界結合用電極を用いてノイズ対策を行うという提案である。ソフトウェアによるノイズ除去には言及されていない。
【0006】
特許文献2では、高通信感度と低電力消費量の両立を図った人体通信システムが開示されている。この人体通信システムは、第1の通信端末及び第2の通信端末が人体等を介して通信する。第1の通信端末と第2の通信端末のそれぞれには、人体等と近接又は接触する電極が備えられている。この電極は、一対の電極材料で絶縁材料を挟み込んで構成される。電極材料は、金属や樹脂等の基材に対して、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバや炭素繊維強化プラスチック等の繊維状炭素を含有して形成されるものである。
高通信感度と低電力消費量の両立を図った電極及び電極材料を用いてノイズ対策を提案しているが、やはりソフトウェアによるノイズ除去には言及されていない。
【0007】
特許文献3は、経路案内に必要な情報を転送する際のユーザの負担を軽減することができる情報転送システムを開示する。
このシステムは、経路案内に必要な情報を保持する携帯端末から車載情報端末へ該情報を転送する情報転送システムであって、前記情報の転送は、前記車載情報端末の受信部に、前記携帯端末を携帯するユーザの体の一部が触れたときに、該ユーザの人体を介する電界通信を介して実現されるものである。
信号処理に関しては、人体に誘起されて伝達されてくる電界を、人体通信部において絶縁膜を介して送受信電極で検出し、この電界を電界検出光学部において電気信号に変換する。この電気信号は、信号処理回路で増幅、ノイズ除去などの信号処理を施される。更に波形整形回路で波形整形がなされ、入出力回路を介して降車地点通知部及び情報翻訳部等に出力される。しかしながら、静電気で帯電した人体の帯電電圧に基づくノイズの処理については特に行われていない。
【0008】
特許文献4に記載の人体通信では、近傍の電力線や電子機器から誘起される高度の環境ノイズが存在して、有意な電界搬送波を弁別する為に高度の環境ノイズ除去特性が求められることに鑑み、電極構成の選択と接続方法により簡易な受信回路を提供している。即ち、受信電極として三層の導電層を設けて、その二層目の電極を受信回路の電気的基準電位点に接続する構成を採用している。そして、人体に接する側の第1の導電層と第2の導電層との間隔を、2層目電極と第3の導電層との間隔より広くしている。また、第1の導電層と第3の導電層により構成される静電容量と搬送周波数に対応する共振インダクタンスを接続して、共振信号を増幅している。
【0009】
特許文献5の通信システムは、ユーザによって携帯される第1の通信装置と、上記第1の通信装置との間で前記ユーザの人体を介してデータ通信を行う第2の通信装置とを備える。上記第1の通信装置は、上記第2の通信装置との間で上記人体を介してデータ通信を行う第1の人体通信部と、上記人体の表面における荷電量を制御する荷電制御手段とを有し、上記第2の通信装置は、静電容量方式のタッチパネルと、上記人体に近接するように配置される人体通信アンテナと、上記第1の通信装置と上記人体との第1の近接部分における静電電界、および上記人体と上記人体通信アンテナとの第2の近接部分における静電電界を利用して、上記第1の通信装置との間で上記人体を介してデータ通信を行う第2の人体通信部と、上記ユーザによる上記タッチパネルに対するタッチ操作が開始されたことを条件として、上記第2の人体通信部における受信信号の信号強度の測定値が所定の閾値より小さい場合に上記信号強度を増大させる信号強度増大制御を実行する人体通信制御手段とを備えている。そして、上記信号強度増大制御は、上記第1の通信装置の上記荷電制御手段における荷電量制御用の電圧を上記所定の閾値と上記測定値との相違に応じて増大させることにより、上記第2の人体通信部における受信信号の上記信号強度を増大させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2014/087748号
【特許文献2】国際公開第2015/129048号
【特許文献3】特開2010-28394号公報
【特許文献4】特開2014-135633号公報
【特許文献5】特開2015-103901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明において、電界式人体通信において送信側では、帯電電圧の低減や帯電電圧の周波数の少ない周波数の利用を図ることによりノイズの低減を目指す。また、本発明において、電界式人体通信において受信側では、人体による伝送路で重畳されたノイズを含んだ受信信号から真の信号を的確に取り出せるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態に係る電界式人体通信システムは、人体と容量結合する電界式人体通信用の送信電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記送信電極へ送信する信号送信部を有した送信装置と、人体と容量結合する電界式人体通信用の受信電極に接続された受信装置と、を備える電界式人体通信システムにおいて、前記送信装置には、放電用電極が接続され、基準の電圧とされた電圧が得られる基準電圧ポイントと、前記放電用電極と前記基準電圧ポイントとの間の放電経路を導通・非導通とする放電経路導通・非導通回路と、前記送信電極を介して、静電気で帯電した人体の帯電電圧を検出する帯電電圧検出手段と、前記帯電電圧検出手段により検出された電圧が所定閾値を超えているかを検出し、所定閾値を超えている場合には、前記放電経路導通・非導通回路の放電経路を導通にして強制放電させる放電制御手段とを具備することを特徴とする。
【0013】
本発明の実施形態に係る送信装置は、人体と容量結合する電界式人体通信用の送信電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記送信電極へ送信する信号送信部を有した送信装置と、人体と容量結合する電界式人体通信用の受信電極に接続された受信装置と、を備える電界式人体通信システムの前記送信装置において、放電用電極が接続され、基準の電圧とされた電圧が得られる基準電圧ポイントと、前記放電用電極と前記基準電圧ポイントとの間の放電経路を導通・非導通とする放電経路導通・非導通回路と、前記送信電極を介して、静電気で帯電した人体の帯電電圧を検出する帯電電圧検出手段と、前記帯電電圧検出手段により検出された電圧が所定閾値を超えているかを検出し、所定閾値を超えている場合には、前記放電経路導通・非導通回路の放電経路を導通にして強制放電させる放電制御手段とを具備することを特徴とする。
【0014】
本発明の実施形態に係る受信装置は、人体と容量結合する電界式人体通信用の送信電極に接続され、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を前記送信電極へ送信する信号送信部を有した送信装置と、人体と容量結合する電界式人体通信用の受信電極に接続された受信装置と、を備える電界式人体通信システムの前記受信装置において、放電用電極が接続され、基準の電圧とされた電圧が得られる基準電圧ポイントと、前記放電用電極と前記基準電圧ポイントとの間の放電経路を導通・非導通とする放電経路導通・非導通回路と、前記受信電極を介して、静電気で帯電した人体の帯電電圧を検出する帯電電圧検出手段と、前記帯電電圧検出手段により検出された電圧が所定閾値を超えているかを検出し、所定閾値を超えている場合には、前記放電経路導通・非導通回路の放電経路を導通にして強制放電させる放電制御手段とを具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る電界式人体通信システムの実施形態の構成図。
【
図2】本発明の各実施形態に係る送信装置の構成図。
【
図2A】本発明の各実施形態に係る送信装置や送信装置により用いられるFFT変換の概略を説明するための図。
【
図2B】本発明の各実施形態に係る送信装置によりデータから送信信号を作成する過程を示す波形図。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る受信装置の構成図。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る送信装置の構成図。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る送信装置の変形例を示す構成図。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る受信装置の構成図。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る受信装置の変形例を示す構成図。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る受信装置の構成図。
【
図9】本発明の本実施形態に係る受信装置の受信部が行う処理の一例を示すフローチャート。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係る受信装置の構成図。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係る受信装置が有する第1のサンプリング回路と第2のサンプリング回路とにより用いられるクロックの一例を示す図。
【
図12】本発明の第4の実施形態に係る受信装置要部の動作を説明するための波形図。
【
図13】本発明の第5の実施形態に係る受信装置の構成図。
【
図14】本発明の第5の実施形態に係る受信装置が有する第1の周波数受信回路と第2の周波数受信回路との動作を説明するための波形図。
【
図15】本発明の第5の実施形態に係る受信装置要部の動作を説明するための波形図。
【
図16】本発明の第5の実施形態の受信装置によって採用した手法で、4個の受信電極とその受信信号を用いてデータを取得した場合の動作時の波形例を示す図。
【
図17】本発明の各実施形態の受信装置において、受信電極から受信した信号の、ローパスフィルタを通過させる前の波形を示す図。
【
図18】本発明の各実施形態の受信装置において、受信電極から受信した信号の、ローパスフィルタを通過させた後の波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照して本発明に係る電界式人体通信システム、送信装置及び受信装置の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に、本発明に係る電界式人体通信システムの実施形態の構成図を示す。このシステムは、人100の表面の静電電界を用いた電界式人体通信システムである。このシステムでは、送信装置200と受信装置300とを備える。送信装置200は、人100と容量結合する電界式人体通信用の送信電極201に接続されている。受信装置300は、人100と容量結合する電界式人体通信用の受信電極301に接続されている。
【0018】
送信装置200は、複数の周波数のいずれか1つの周波数を用いて送信信号を上記送信電極201へ送信する信号送信部202を有している。受信装置300は受信電極301を介して受信した受信信号の復元化等を行う受信部302を有している。
【0019】
第1の実施形態に係る送信装置200は、
図2に示されるように構成されている。即ち、送信装置200には、放電用電極203が接続され、基準電圧ポイント204、放電経路導通・非導通回路205、帯電電圧検出手段206、放電制御手段207を備える。基準電圧ポイント204は、基準の電圧とされた電圧が得られる導電性の端子などである。基準電圧ポイント204は、商用交流電源のアース側線に接続されてアース電位を供給するポイント、送信装置200がバッテリー駆動である場合、そのバッテリーの負極側に接続されて所定電圧を供給するポイント、或いは、送信装置200の導体シャーシに接続されて電気的に所定電圧を供給するポイントなど、とすることができる。
【0020】
放電経路導通・非導通回路205は、上記放電用電極203と上記基準電圧ポイント204との間の放電経路を導通・非導通とするスイッチング素子などの回路である。帯電電圧検出手段206は、上記送信電極201を介して、静電気で帯電した人100の帯電電圧を検出するものである。送信電極201と受信電極301は、人100と静電結合するために表面が絶縁されているのに対し、放電用電極203は人100が触れて放電を行うための電極であり、導体により構成することができる。
【0021】
放電制御手段207は、上記帯電電圧検出手段206により検出された電圧が所定閾値を超えているかを検出し、所定閾値を超えている場合には、上記放電経路導通・非導通回路205の放電経路を導通にして強制放電させるものである。以上の構成によって、人100が所定閾値を超えて帯電電圧を有した状態で帯電している場合には、送信路が帯電の電荷により不安定な電界状態であろうから、強制放電により安定した状態とすることができ、ノイズを低減させた状態で通信を行うことが可能である。
【0022】
第1の実施形態に係る受信装置300は、
図3に示されるように構成することができる。即ち、受信装置300には、放電用電極303が接続され、基準電圧ポイント304、放電経路導通・非導通回路305、帯電電圧検出手段306、放電制御手段307を備える。基準電圧ポイント304は、基準の電圧とされた電圧が得られる導電性の端子などである。基準電圧ポイント304は、商用交流電源のアース側線に接続されてアース電位を供給するポイント、受信装置300がバッテリー駆動である場合、そのバッテリーの負極側に接続されて所定電圧を供給するポイント、或いは、受信装置300の導体シャーシに接続されて電気的に所定電圧を供給するポイントなど、とすることができる。
【0023】
放電経路導通・非導通回路305は、上記放電用電極303と上記基準電圧ポイント304との間の放電経路を導通・非導通とするスイッチング素子などの回路である。帯電電圧検出手段306は、上記受信電極301を介して、静電気で帯電した人100の帯電電圧を検出するものである。送信電極201と受信電極301は、人100と静電結合するために表面が絶縁されているのに対し、放電用電極303は人100が触れて放電を行うための電極であり、導体により構成することができる。
【0024】
放電制御手段307は、上記帯電電圧検出手段306により検出された電圧が所定閾値を超えているかを検出し、所定閾値を超えている場合には、上記放電経路導通・非導通回路305の放電経路を導通にして強制放電させるものである。以上の構成によって、人100が所定閾値を超えて帯電電圧を有した状態で帯電している場合には、受信路が帯電の電荷により不安定な電界状態であろうから、強制放電により安定した状態とすることができ、ノイズを低減させた状態で通信を行うことが可能である。
【0025】
本実施形態では、送信装置には、
図2に示されるように、帯電電圧周波数検出手段208、送信周波数制御手段209が備えられている。帯電電圧周波数検出手段208は、上記放電用電極203または上記送信電極201を介して上記人100の帯電電圧の周波数を検出するものである。送信周波数制御手段209は、上記放電制御手段207の動作後に上記帯電電圧周波数検出手段208を動作させて上記人100の帯電電圧の周波数を検出させると共に、上記信号送信部202を制御し、上記帯電電圧周波数検出手段208により検出された周波数を除く1周波数で送信信号を送信させるものである。なお、上記帯電電圧周波数検出手段208では、FFT(高速フーリエ変換)により周波数解析を行い、含まれる信号の周波数を求めることができる。
【0026】
図2Aは、FFT変換を示す。帯電電圧周波数検出手段208に到来する信号(
図2A(a))を
図2A(b)に示されるようにフーリエ級数展開して、
図2A(c)に示す周波数スペクトルを得ることができる。本実施形態では、帯電電圧周波数検出手段208に到来する信号(
図2A(a))をディジタル化して蓄積し、蓄積したデータを用いてFFT変換を行い、周波数スペクトルを得る。
【0027】
信号送信部202は、
図2B(b)に示すような01により構成されるデータを送信する場合、搬送波を
図2B(a)に示す変調信号で変調して
図2B(c)に示す被変調信号として送信する。即ち、搬送波は
図2B(c)のパルスが連続した信号である。従って、データ(
図2B(b))については、1の場合に1周期(1H)にHとLとが続く信号とし、0の場合に1周期(1H)に全てLが続く信号として、変調信号(
図2B(a))を作成し、変調信号(
図2B(a))により搬送波を変調して被変調信号(
図2B(c))を得て送信する。
【0028】
信号送信部202は、33MHz、100MHz、123MHz、・・・などの複数の周波数で送信可能であり、送信周波数制御手段209の指示により、人100の帯電電圧の周波数と重ならない周波数を用いて送信でき、送信信号がノイズと混合するなどの通信状態の悪化を避けることが可能である。
【0029】
図4には、第2の実施形態に係る送信装置200の構成図が示されている。本実施形態に係る前記送信装置には、
図2に示した第1の実施形態の構成に加えて、試験用受信電極211、帯電電圧周波数検出補助手段212が備えられている。帯電電圧周波数検出補助手段212では、試験用受信電極211からの信号を入力する位置が入力端子213となっている。
【0030】
上記の帯電電圧周波数検出補助手段212は、上記信号送信部202から所定周波数の送信信号を送信させ、上記入力端子213から信号を入力して、この入力信号の周波数成分から上記信号送信部202から送信した送信信号の周波数成分を除去して上記帯電電圧周波数検出補助手段212へ与えて人体の帯電電圧の周波数を検出させるものである。この帯電電圧周波数検出補助手段212は、上記信号送信部202から送信した所定周波数の送信信号の提供を受けており、入力信号の周波数成分から上記信号送信部202から送信した送信信号の周波数成分を除去することが可能である。
【0031】
上記送信周波数制御手段209は、上記帯電電圧周波数検出補助手段212の制御下で上記帯電電圧周波数検出手段208により検出された周波数を除く1周波数で送信信号を送信させる。
【0032】
図5には、第2の実施形態に係る送信装置200の変形例が示されている。本実施形態
では、上記信号送信部202から上記送信電極201へ到る信号線と上記入力端子213の間に接続されたコンデンサCを有している。上記試験用受信電極211からの信号と上記信号送信部202から送信されコンデンサCを介した信号が合成された合成信号が上記入力端子213へ入力されるように構成されている。本実施形態は人100がいない場合に、試験用受信電極211からは、信号送信部202から送信した信号と帯電電圧に係る信号が合成された信号が受信できないことに対応するものである。
【0033】
本実施形態において上記帯電電圧周波数検出補助手段212は、上記入力端子213から上記合成信号を入力して、この合成信号の周波数成分から上記信号送信部202から送信した送信信号の周波数成分を除去して上記帯電電圧周波数検出手段208へ与えて人100の帯電電圧の周波数を検出させる。
【0034】
上記構成によれば、上記帯電電圧周波数検出補助手段212は、上記信号送信部202から送信した送信信号をまたはその送信信号の周波数や振幅などの情報を取得しているので、
図4の実施形態と異なり、実際に上記信号送信部202から送信した送信信号と上記帯電電圧の信号が合成された信号を試験用受信電極211から実際に得ることなく、合成したものを上記入力端子213から取り込むことができる。合成信号を得た以降の処理は、
図4の実施形態と同様に行うことができる。
【0035】
図6には、第2の実施形態に係る受信装置300の構成図が示されている。この第2の実施形態に係る受信装置300は、
図3に示した受信装置300の実施形態に対し、人体と容量結合する試験用送信電極311と、試験用信号送信部309と、帯電電圧周波数検出手段312と、記憶手段308とを追加して備えさせたものである。帯電電圧周波数検出手段312では、受信電極301からの信号を入力する位置が入力端子313となっている。
【0036】
上記において、試験用信号送信部309は、所定の周波数を用いて試験用送信信号を上記試験用送信電極311へ送信するものである。帯電電圧周波数検出手段312は、上記試験用信号送信部309から所定周波数の送信信号を送信させ、人100を介した通信で帯電電圧周波数信号と合成されたものを上記入力端子313から信号を入力して、この入力信号の周波数成分から上記試験用信号送信部309から送信した試験用送信信号の周波数成分を除去して人体の帯電電圧周波数信号を検出するものである。記憶手段308は、上記検出された帯電電圧周波数信号を(ディジタル化して)記憶するものである。受信部302は、上記送信装置200の上記信号送信部202から送信された送信信号を復元する場合に、上記記憶手段308に記憶された帯電電圧周波数検出用信号(ディジタルデータをアナログ信号として)を用いて上記受信電極301からの信号の周波数成分から不要周波数成分の除去を行う。具体的には、受信部302がフィルタなどを用いて不要周波数成分の除去を行う。本実施形態の試験用信号送信部309と帯電電圧周波数検出手段312は、通常の信号受信時の前に動作させて記憶手段308へ帯電電圧周波数信号を記憶し、通常の信号受信時には動作を休止した状態とする。
【0037】
図7には、第2の実施形態に係る受信装置300の変形例に係る構成図が示されている。本実施形態では、上記試験用信号送信部309から上記試験用送信電極311へ到る信号線と、受信電極301から上記入力端子313の間に接続されたコンデンサCを有し、上記受信電極301からの信号と上記信号送信部202から送信されコンデンサCを介した信号が合成された合成信号が上記入力端子313へ入力されるように構成されている。本実施形態は人100がいない場合に、受信電極301からは、試験用信号送信部309から送信した信号と帯電電圧に係る信号が合成された信号が受信できないことに対応するものである。
【0038】
本実施形態においては、上記受信電極301からの信号と上記試験用信号送信部309から送信されコンデンサCを介した信号が合成された合成信号が上記入力端子313へ入力されるように構成されていることから、帯電電圧周波数検出手段312は、上記入力端子313から信号を入力して、この入力信号の周波数成分から上記試験用信号送信部309から送信した試験用送信信号の周波数成分を除去して人体の帯電電圧周波数信号を検出する。
人体の帯電電圧周波数信号は記憶手段308へ記憶され、
図6の第2の実施形態に係る受信装置300と同様に処理が行われる。
【0039】
図8には、第3の実施形態に係る受信装置300の構成図が示されている。本実施形態の受信装置300には、複数(ここでは、4つ)の受信電極301-1~301-4が接続され、高速フーリエ変換を行う高速フーリエ変換手段であるFFT手段314-1~314-4を具備する。
【0040】
既に説明した実施形態の技術を用いてノイズ除去を行い、受信部302では、全ての上記受信電極301-1~301-4から信号を受信して時系列に(ディジタル化して)蓄積し、上記FFT手段314-1~314-4に上記受信電極301-1~301-4毎の蓄積した信号を与えて高速フーリエ変換し、高速フーリエ変換した結果に基づき上記送信装置200の上記信号送信部202から送信された送信信号を復元する。
【0041】
図9は、本実施形態に係る受信装置300の受信部302が行う処理の一例を示す。本実施形態では、「認証」のデータを受信する場合を例とする。まず、全ての受信電極で同時に信号の受信処理を行い、フィルタなどによりノイズ除去をして、受信した通常のアナログ信号とする(S11)。次に、電極毎に信号をディジタル化して電極毎に時系列に並べて蓄積する(S12)。電極毎の時系列データをFFT変換する(S13)。更に、電極毎のFFT変換結果を積算し、最大の周波数を送信信号の周波数と特定する(S14)。
【0042】
次に、蓄積された電極毎の時系列データを所定時間毎にFFT変換する(S15)。更に、時間単位で電極毎のFFT変換結果を積算し、送信信号の周波数と特定された周波数成分の大きさを閾値と比較し、時間単位で0または1に変換する(S16)。0と1のデータ列を所定ビット単位で文字化して保存する(S17)。保存された文字列が認証データと一致しているかを検出する(S18)。ここで、認証データと一致している場合には、認証完了として次の処理へ進む(S19)。一方、このステップS18においてNOとなるとステップS11へ戻って処理を続ける。
【0043】
図10には、第4の実施形態に係る受信装置300の構成図が示されている。この第4の実施形態に係る受信装置300は、第1の受信電極301-1と第2の受信電極301-2との2つの電極が接続され、第1のサンプリング回路315、第2のサンプリング回路316、信号変形手段317、2値化回路318、データ取出手段319が備えられている。第1のサンプリング回路315は、上記第1の電極301-1から第1のタイミングで所定期間信号を受信するものである。第2のサンプリング回路316は、上記第2の電極301-2から上記第1のタイミングと異なる第2のタイミングで上記所定期間信号を受信するものである。
【0044】
更に、信号変形手段317は、上記第1のサンプリング回路315で受信した信号と上記第2のサンプリング回路316で受信した信号の和信号または積信号を求めるものである。また、2値化回路318は、上記和信号または積信号を所定波高閾値によりHレベルとLレベルに2値化するものである。更に、データ取出手段319は、2値化のHレベルが概ね連続する期間の長さと2値化のLレベルが連続する長さに基づき、1と0のデータを取り出すものである。
【0045】
具体例で示すと、
図11に示すようである。第1のサンプリング回路315は、第1の電極301-1から(a)により示すクロックの立ち上がりである第1のタイミングで所定期間、信号を受信するものである。第2のサンプリング回路316は、第2の電極301-2から(b)により示すクロックの立ち上がりである第2のタイミングで所定期間、信号を受信するものである。
【0046】
第1のサンプリング回路315により受信した信号が
図12(c)のようであり、第2のサンプリング回路316により受信した信号が
図12(d)のようであった場合に、信号変形手段317が信号の和算を行った場合には、
図12(e)の如き和信号が得られる。これを波高閾値THにより2値化回路318で2値化すると、
図12(f)のようにHレベルとLレベルの信号とが存在する信号となる。データ取出手段319は、これを所定の時間幅で0と1へ変換し、
図12(f)の波形の下に示すように、10101110000・・・の如きデータを取得することができる。
【0047】
図13には、第5の実施形態に係る受信装置300の構成図が示されている。この第5の実施形態に係る受信装置300は、第1の受信電極301-1と第2の受信電極301-2との2つの電極が接続され、第1の周波数受信回路321、第2の周波数受信回路322、信号変形手段317、2値化回路318、データ取出手段319が備えられている。第1の周波数受信回路321は、上記第1の電極301-1から所定時間毎のサンプリングを第1の周波数で行って信号を受信するものである。第2の周波数受信回路322は、上記第2の電極301-2から所定時間毎のサンプリングを第2の周波数で行って信号を受信するものである。
【0048】
即ち、
図14の(g)に示すような1受信区間に対し、第1の周波数受信回路321は、サンプリングを第1の周波数(
図14の(h)に示す)で行って信号を受信する。第2の周波数受信回路322は、サンプリングを第2の周波数(
図14の(i)に示す)で行って信号を受信する。別言すれば、第1の周波数受信回路321は、
図14の(h)に示すパルスのパルス幅でサンプリングを行い、第2の周波数受信回路322は、
図14の(i)に示すパルスのパルス幅でサンプリングを行う。この例では、第1の周波数受信回路321の周波数は、第2の周波数受信回路322の周波数の2倍である。
【0049】
第1の周波数受信回路321により受信した信号が
図15(j)のようであり、第2の周波数受信回路322により受信した信号が
図15(k)のようであった場合に、信号変形手段317が信号の和算を行った場合には、
図15(l)の如き和信号が得られる。これを波高閾値THにより2値化回路318で2値化すると、
図15(m)のようにHレベルとLレベルの信号とが存在する信号となる。データ取出手段319は、これを所定の時間幅で0と1へ変換し、
図15(m)の波形の下に示すように、10101110000・・・の如きデータを取得することができる。
【0050】
上記
図12と
図15のように2値化した場合であっても、正しい信号成分であるか否かを判断するため、次の手法を採用することができる。送信装置200と受信装置300を有する本実施形態の通信システムでは、受信装置300において正しい信号の1ビット分のパルス幅(
図15に示す時間t
bit)は既知である。このパルス幅(時間t
bit)に対して“H”となっている信号成分の時間t
Hを判断材料とする。即ち、時間t
bitに対して時間t
Hが8割以上の長さを有した場合に正しい信号成分と判断する。ここで8割とした理由を説明する。その理由は、5割では誤検出が1/2となり、正しい信号成分であると、確度の高い判断ができない。また、7割程度の場合には、ノイズの影響で信号の先頭が欠けたり、信号のない時間帯の部分でノイズによる信号が重畳したりという現象が生じた場合に、信号誤検出率が上がってしまう。一方、8割以上に設定することで、信号あり、信号なし、のそれぞれについて誤検出の要因は少なくなり、実際の検証においても、誤検出がほぼなくなることが確かめられた(ただし、7割以下であっても信号の有無は判断しなければならない)。
【0051】
図16に第5の実施形態の受信装置300によって採用した手法で、4個の受信電極とその受信信号を用いてデータを取得した場合の動作時の波形例を示す。
図16(a)は2値化された本来の信号を示し、
図16(b)は0と1にデータ化したデータを示す。また、
図16(c)、(d)、(e)、(f)は、4個の受信電極毎で用いた周波数に対応するクロックである。
図16(g)は4個の信号の和信号である。
【0052】
4個の信号の和信号(
図16(g))に明らかな通り、データ1となるべき部分中のH部分が誇張され、正確なデータ取得ができるであろうことが判る。データ1となるべき部分においてもHとLが交互に繰り返される範囲があるが、このHとLが交互に繰り返される範囲中のHとなっている幅(時間)の合計とLとなっている幅(時間)の合計の比較から多数決でHであるかLであるかを判定してもよい。
【0053】
第4の実施形態に係る受信装置300であっても、第5の実施形態に係る受信装置300であっても、また、その他の受信装置300においても、受信電極から受信した信号にローパスフィルタを用いて信号処理すると正確なデータ取得ができるであろうことが判る。即ち、受信電極から受信した信号(ローパスフィルタ使用前)を
図17に示し、受信電極から受信した信号(ローパスフィルタ使用後)を
図18に示す。これらの信号に付加した2値化する場合に波高閾値THによって2値化を行うことを考えると、ローパスフィルタを用いると好適であることが一目瞭然である。
【0054】
上記第4の実施形態に係る受信装置300であっても、第5の実施形態に係る受信装置300であっても、受信電極を2個用いたものを示したが、一般的には複数個とすることができ、各受信電極によって受信した信号についての処理手法は、上記第4の実施形態に係る受信装置300の処理手法であっても、第5の実施形態に係る受信装置300の処理手法であっても良い。
【符号の説明】
【0055】
100 人 200 送信装置
201 送信電極 202 信号送信部
203 放電用電極 204 基準電圧ポイント
205 放電経路導通・非導通回路 206 帯電電圧検出手段
207 放電制御手段 208 帯電電圧周波数検出手段
209 送信周波数制御手段 211 試験用受信電極
212 帯電電圧周波数検出補助手段 213 入力端子
300 受信装置 301、301-1~301-4 受信電極 302 受信部 303 放電用電極
304 基準電圧ポイント 305 放電経路導通・非導通回路
306 帯電電圧検出手段 307 放電制御手段
308 記憶手段 309 試験用信号送信部
311 試験用送信電極 312 帯電電圧周波数検出手段
313 入力端子 314-1~314-4 FFT手段
315 第1のサンプリング回路 316 第2のサンプリング回路
317 信号変形手段 318 2値化回路
319 データ取出手段 321 第1の周波数受信回路
322 第2の周波数受信回路