(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051091
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ウレタン系シーリング材組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20230404BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230404BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20230404BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20230404BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20230404BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C09K3/10 D
C08G18/10
C08G18/32 096
C08G18/48
C08G18/76
C08G18/66 066
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161553
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】321011088
【氏名又は名称】シーカ・ハマタイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】吉川 篤志
【テーマコード(参考)】
4H017
4J034
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB03
4H017AB08
4H017AB15
4H017AD05
4H017AD06
4H017AE03
4H017AE05
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA01
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4J034CA12
4J034DF01
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4J034DP18
4J034GA01
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4J034HA06
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4J034MA01
4J034MA29
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QB19
4J034RA08
(57)【要約】
【課題】接着性、耐熱性が優れるウレタン系シーリング材組成物の提供。
【解決手段】ウレタンプレポリマー100質量部に対して、エポキシ基と加水分解性シリル基とを有するエポキシ系化合物を2~10質量部と、潜在性硬化剤1~10質量部とを含有する、ウレタン系シーリング材組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマー100質量部に対して、
エポキシ基と加水分解性シリル基とを有するエポキシ系化合物を2~10質量部と、
潜在性硬化剤1~10質量部とを含有する、ウレタン系シーリング材組成物。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマーが、芳香族イソシアネート残基を有する、請求項1に記載のウレタン系シーリング材組成物。
【請求項3】
前記ウレタンプレポリマーが、ポリエーテル構造を有する、請求項1又は2に記載のウレタン系シーリング材組成物。
【請求項4】
前記加水分解性シリル基が、アルコキシシリル基である、請求項1~3のいずれか1項に記載のウレタン系シーリング材組成物。
【請求項5】
前記エポキシ基が、グリシジール基である、請求項1~4のいずれか1項に記載のウレタン系シーリング材組成物。
【請求項6】
前記エポキシ系化合物が、前記エポキシ基と前記加水分解性シリル基を1分子中にそれぞれ1個以上有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のウレタン系シーリング材組成物。
【請求項7】
前記潜在性硬化剤が、オキサゾリジン系化合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のウレタン系シーリング材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系シーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シーリング材組成物は建築物等の目地をシールするために使用されている。シーリング材組成物としては例えばウレタンプレポリマー等を含有する組成物が挙げられる。
【0003】
これまでに、ウレタンプレポリマー等を含有する組成物としては、例えば、特許文献1が提案されている。
特許文献1は、貯蔵安定性と硬化性に優れた潜在性硬化剤の提供を目的として、ウレタンプレポリマーに、一般式(1):
【化1】
(式中、R
1は、炭素原子数5以上の脂肪族炭化水素基、R
2は、有機のポリイソシアネートからイソシアネート基を除いて得られる残基、mは1~6の整数、nは0~4の整数である。)で示されるオキサゾリジン化合物を配合してなるウレタン樹脂組成物を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようななか、本発明者は特許文献1を参考にして、ウレタンプレポリマー及び潜在性硬化剤を含有する組成物を調製しこれを評価したところ、このような組成物は、接着性、耐熱性が低い場合があることが明らかとなった(比較例1)。
【0006】
一方、ウレタンプレポリマーにシランカップリング剤を含有させる場合があるが、上記の場合、シランカップリング剤は通常接着付与剤としての機能を目的に使用されている。接着付与剤としてのシランカップリング剤の実際の使用量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して通常1質量部程度である。これより多くシランカップリング剤を使用すると、得られる硬化物のモジュラスが低くなる、又は接着強度が低くなる等の問題が生じる場合があるからである。
本発明者がウレタンプレポリマー及び潜在性硬化剤を含有する組成物に対してシランカップリング剤等を添加してこれを評価したところ、このような組成物は、耐熱性が低い等の場合があることが明らかとなった(比較例2~9)。
【0007】
そこで、本発明は、接着性、耐熱性が優れるウレタン系シーリング材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ウレタン系シーリング材組成物が、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、エポキシ基と加水分解性シリル基とを有するエポキシ系化合物を2~10質量部と、潜在性硬化剤1~10質量部とを含有することによって、接着性、耐熱性が優れることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0009】
[1] ウレタンプレポリマー100質量部に対して、
エポキシ基と加水分解性シリル基とを有するエポキシ系化合物を2~10質量部と、
潜在性硬化剤1~10質量部とを含有する、ウレタン系シーリング材組成物。
[2] 上記ウレタンプレポリマーが、芳香族イソシアネート残基を有する、[1]に記載のウレタン系シーリング材組成物。
[3] 上記ウレタンプレポリマーが、ポリエーテル構造を有する、[1]又は[2]に記載のウレタン系シーリング材組成物。
[4] 上記加水分解性シリル基が、アルコキシシリル基である、[1]~[3]のいずれかに記載のウレタン系シーリング材組成物。
[5] 上記エポキシ基が、グリシジール基である、[1]~[4]のいずれかに記載のウレタン系シーリング材組成物。
[6] 上記エポキシ系化合物が、上記エポキシ基と上記加水分解性シリル基を1分子中にそれぞれ1個以上有する、[1]~[5]のいずれかに記載のウレタン系シーリング材組成物。
[7] 上記潜在性硬化剤が、オキサゾリジン系化合物を含む、[1]~[6]のいずれかに記載のウレタン系シーリング材組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウレタン系シーリング材組成物は、接着性、耐熱性が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分の製造方法は特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。
本明細書において、接着性、耐熱性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0012】
[ウレタン系シーリング材組成物]
本発明のウレタン系シーリング材組成物(本発明の組成物)は、
ウレタンプレポリマー100質量部に対して、
エポキシ基と加水分解性シリル基とを有するエポキシ系化合物を2~10質量部と、
潜在性硬化剤1~10質量部とを含有する、ウレタン系シーリング材組成物である。
【0013】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
ウレタンプレポリマーと潜在性硬化剤とを含有するシーリング材組成物は、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と潜在性硬化剤から生じた活性水素含有基との反応によって硬化し、ウレタン系の硬化物(シーリング材)となる。上記ウレタン系の硬化物は、通常、経時で又は加熱条件下で分解反応を起こすためモジュラスが低下する。
一方、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基に対する、潜在性硬化剤から生じた活性水素含有基の反応性と、上記イソシアネート基に対する、エポキシ基と加水分解性シリル基とを有するエポキシ系化合物が有するエポキシ基の反応性とを比較すると、前者の反応性のほうが後者の反応性よりも速い。
また、上記エポキシ系化合物が有する加水分解性シリル基は、経時で(長い時間かけて)、加水分解性シリル基同士が加水分解縮合反応して、シロキサン結合による架橋を形成することができる。
このように、本発明の組成物は、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と潜在性硬化剤から生じた活性水素含有基との比較的速い反応による架橋の他に、更に、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と上記エポキシ系化合物が有するエポキシ基との遅い反応による架橋と、上記エポキシ系化合物が有する加水分解性シリル基が経時で加水分解縮合反応するシロキサン結合による架橋を形成することができる。
したがって、上記ウレタン系の硬化物が経時で又は加熱条件下で分解反応を起こし、硬化物が一時的にモジュラス低下したとしても、その一方で、ウレタンプレポリマーの官能基とエポキシ基との経時的な反応、及び、上記加水分解性シリル基の加水分解縮合反応によって経時的に生じる架橋によって、硬化物におけるポリマーマトリックスを維持し上記モジュラスの低下を回復させることができる、又は、抑制できる。このため、本発明の組成物は、接着性、耐熱性に優れると推測される。
なお本発明に関する上記メカニズムは本発明者による推測であり上記に限定されない。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0014】
<ウレタンプレポリマー>
本発明の組成物は、ウレタンプレポリマーを含有する。
上記ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を有するウレタン系化合物である。
【0015】
・イソシアネート基
ウレタンプレポリマーは、複数のイソシアネート基を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0016】
上記ウレタンプレポリマーは、本発明の効果がより優れ、イソシアネート基の反応性が高いという観点から、芳香族イソシアネート残基を有することが好ましい。上記ウレタンプレポリマーにおける上記芳香族イソシアネート残基は、ウレタンプレポリマーを形成するために使用され得るポリイソシアネート化合物が芳香族ポリイソシアネート化合物を含む場合、上記芳香族ポリイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を意味する。
ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を分子末端に有することが好ましい。
【0017】
・ポリエーテル構造
上記ウレタンプレポリマーは、本発明の効果がより優れるという観点から、ポリエーテル構造を有することが好ましい。上記ポリエーテル構造は、ウレタンプレポリマーを形成するために使用され得るポリオール化合物としてのポリエーテルポリオールに由来することが好ましい。ポリオール化合物については後述する。
【0018】
ウレタンプレポリマーとしては、例えば、従来公知のものを用いることができる。具体的には例えば、ポリイソシアネート化合物と1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(以下、「活性水素化合物」と略す。)とを、活性水素含有基に対してイソシアネート基が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
本発明において、活性水素含有基は活性水素を含有する基を意味する。活性水素含有基としては例えば、ヒドロキシ基、アミノ基(-NH2)、イミノ基(-NH-)が挙げられる。
【0019】
(ポリイソシアネート化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート化合物(芳香族ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基が結合する連結基が少なくとも芳香族炭化水素基を有すればよい。);
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族(上記脂肪族は、直鎖状、分岐状及び脂環式を含む概念である)ポリイソシアネート(脂肪族ポリイソシアネートにおいて、イソシアネート基が結合する連結基は脂肪族炭化水素基であり、芳香族炭化水素基を有さない。);
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0020】
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ウレタンプレポリマーを構成しうるポリイソシアネート化合物は、本発明の効果がより優れ、イソシアネート基の反応性に優れるという観点から、芳香族系ポリイソシアネート化合物を含むことが好ましく、MDI、TDIを含むことがより好ましく、TDIを含むことが更に好ましい。
【0021】
(活性水素化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0022】
上記活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール化合物、1分子中に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン化合物等が好適に挙げられる。中でも、本発明の効果がより優れ、耐劣化性に優れるという観点から、ポリオール化合物を含むことが好ましい。
【0023】
上記ポリオール化合物は、OH基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。ポリオール化合物の具体例としては、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;(メタ)アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールを含むことがより好ましく、ポリエーテルポリオールを含むことが更に好ましい。
【0024】
ポリエーテルポリオールは、主鎖としてポリエーテルを有し、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位-Ra-O-Rb-を合計して2個以上有する基が挙げられる。ここで、上記構造単位中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体のポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリイソアネート化合物との相溶性に優れるという観点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
【0025】
上記ポリオール化合物は、本発明の効果がより優れ、得られる硬化物において3次元マトリックスを形成できるという観点から、3官能以上のポリオール化合物(ヒドロキシ基を3個以上有するポリオール化合物)を含むことが好ましく、3官能のポリオール化合物を含むことがより好ましく、3官能のポリエーテルポリオール及び/又は3官能のポリエステルポリオールを含むことが更に好ましく、3官能のポリエーテルポリオールを含むことがより更に好ましい。
【0026】
上記ポリオール化合物が3官能以上のポリオール化合物を含む場合、更に2官能のポリオール化合物を併用することが好ましく、3官能のポリエーテルポリオール及び2官能のポリエーテルポリオールを併用することがより好ましい。
上記ポリオール化合物が3官能以上のポリオール化合物及び2官能のポリオール化合物を含む場合、上記3官能以上のポリオール化合物の使用量は、上記ポリオール化合物全量中の5~80質量%が好ましい。
【0027】
ウレタンプレポリマーを構成しうるポリオール化合物(例えばポリエーテルポリオール)の重量平均分子量は、本発明の効果がより優れ、ポリイソシアネート化合物との反応によって得られるウレタンプレポリマーの粘度が常温(23℃)おいて適度な流動性を有するという観点から、1000~10000であることが好ましく、3000~8000がより好ましい。本発明において上記重量平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
【0028】
ウレタンプレポリマーは、本発明の効果がより優れ、イソシアネート基の反応性に優れるという観点から、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応物であるウレタンプレポリマーを含むことが好ましく、芳香族ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とのウレタンプレポリマーを含むことがより好ましく、TDI又はMDIとポリエーテルポリオールとのウレタンプレポリマーを含むことが更に好ましく、TDIとポリエーテルポリオールとのウレタンプレポリマーを含むことがより更に好ましい。
【0029】
ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、ウレタンプレポリマー全量中の1.0~10質量%が好ましい。
【0030】
ウレタンプレポリマーの製造方法は特に制限されない。例えば、活性水素化合物が有する活性水素含有基(例えばヒドロキシ基)1モルに対し、過剰量のイソシアネート基が反応するようにポリイソシアネート化合物を使用し、これらを混合して反応させることによってウレタンプレポリマーを製造することができる。
活性水素化合物が有する活性水素含有基に対する、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基のモル比(インデックスともいう。活性水素含有基がヒドロキシ基である場合、NCO/OHと表される。)は、本発明の効果がより優れるという観点から、0.5~2.5が好ましく、1.2~2.2がより好ましい。
ウレタンプレポリマーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
<エポキシ系化合物>
本発明の組成物は、エポキシ基と加水分解性シリル基とを有するエポキシ系化合物を含有する。
本発明の組成物は上記エポキシ系化合物を含有することによって、得られる硬化物が経時で又は加熱条件下で分解反応を起こし、分解したとしても、ウレタンプレポリマーが有する官能基と上記エポキシ系化合物が有するエポキシ基との経時的な反応、及び、上記エポキシ系化合物が有する加水分解性シリル基の加水分解縮合反応により経時的に生じる架橋によって、得られる硬化物におけるポリマーマトリックスを維持して、上記モジュラス低下を回復させることができると考えられる。上記エポキシ系化合物が有する、得られた硬化物のモジュラス低下を回復させるという機能は、従来の接着付与剤としての機能とは異なると考える。
なお、本明細書において、上記のエポキシ基と加水分解性シリル基とを有するエポキシ系化合物を「特定エポキシ系化合物」と称する場合がある。
【0032】
<エポキシ基>
特定エポキシ系化合物が有するエポキシ基はオキシラン環(下記構造)を有するものであれば特に制限されない。
【化2】
【0033】
エポキシ基としては、例えば、グリシジール基、エポキシシクロヘキシル基のようなエポキシシクロアルキル基が挙げられる。
【0034】
上記エポキシ基は、本発明の効果がより優れるという観点から、グリシジール基であることが好ましい。
特定エポキシ系化合物は、1分子当たり、エポキシ基を1個又は複数有することができる。
【0035】
<加水分解性シリル基>
特定エポキシ系化合物が有する加水分解性シリル基は、水によって加水分解し、かつケイ素原子を有する基であれば特に制限されない。
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基等が挙げられる。
【0036】
なかでも、加水分解性シリル基は、本発明の効果がより優れるという観点から、アルコキシシリル基であることが好ましい。アルコキシシリル基としては、例えば、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、モノアルコキシシリル基が挙げられる。
アルコキシシリル基がジアルコキシシリル基又はモノアルコキシシリル基である場合、上記アルコキシシリル基におけるケイ素原子に(アルコキシ基以外に)更に結合しうる基としては、例えば、炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状を含む。)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。上記炭化水素基は、アルキル基であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記アルコキシシリル基としては、例えば、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が挙げられる。
【0037】
上記エポキシ系化合物は、本発明の効果がより優れるという観点から、エポキシ基と加水分解性シリル基を1分子中にそれぞれ1個以上有することが好ましい。
【0038】
特定エポキシ系化合物としては、例えば、エポキシ基含有シランカップリング剤、上記エポキシ基含有シランカップリング剤の縮合物が挙げられる。
特定エポキシ系化合物は、本発明の効果がより優れるという観点から、エポキシ基含有シランカップリング剤、及び/又は、エポキシ基含有シランカップリング剤の縮合物を含むことが好ましく、エポキシ基含有シランカップリング剤を含むことがより好ましい。
【0039】
・エポキシ基含有シランカップリング剤
上記エポキシ基含有シランカップリング剤は、エポキシ基と加水分解性シリル基とを有する、低分子(いわゆるモノマー)のエポキシ系化合物をいう。
上記エポキシ基含有シランカップリング剤は、1分子当たり、エポキシ基と加水分解性シリル基とをそれぞれ1個有することができる。
上記エポキシ基含有シランカップリング剤において、上記エポキシ基と上記加水分解性シリル基とは連結基としての有機基を介して結合することができる。
【0040】
・・有機基
上記有機基としては、炭化水素基が挙げられる。具体的には、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、若しくは環状)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。上記炭化水素基は、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい。
【0041】
特定エポキシ系化合物が上記エポキシ基含有シランカップリング剤である場合、加水分解性シリル基は、本発明の効果がより優れるという観点から、アルコキシシリル基が好ましく、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基がより好ましく、トリアルコキシシリル基が更に好ましい。
上記アルコキシシリル基は、本発明の効果がより優れるという観点から、より具体的には、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基であることが好ましく、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基がより好ましい。
【0042】
上記エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシランのようなグリシドキシアルキルアルコキシシラン;
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシシクロアルキルアルキルアルコキシシランが挙げられる。
上記エポキシ基含有シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れるという観点から、グリシドキシアルキルアルコキシシランを含むことが好ましく、グリシドキシアルキルトリアルコキシシランを含むことがより好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを含むことが更に好ましい。
【0043】
・エポキシ基含有シランカップリング剤の縮合物
エポキシ基含有シランカップリング剤の縮合物は、上述したエポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解縮合物をいう。
上記縮合物は、上述したエポキシ基含有シランカップリング剤が上記加水分解性シリル基において加水分解縮合した化合物であることが好ましい。このため、上記縮合物は、主鎖として-(Si-O)n-Si-(nは2~10が好ましい)を有することが好ましい。
特定エポキシ系化合物が上記縮合物である場合、上記-(Si-O)n-Si-における各ケイ素が、特定エポキシ系化合物が有する加水分解性シリル基を構成してもよい。上記各ケイ素がシロキサン結合を形成してもよい。
また、特定エポキシ系化合物が上記縮合物である場合、エポキシ基は有機基を介して上記主鎖におけるケイ素原子に結合することができる。エポキシ基とケイ素原子を介する有機基は、上記エポキシ基含有シランカップリング剤においてエポキシ基と加水分解性シリル基とを連結基として解する有機基と同様である。
上記エポキシ基含有シランカップリング剤の縮合物は、1分子当たり、エポキシ基と加水分解性シリル基とをそれぞれ2個以上有することが好ましい。
【0044】
上記縮合物は、本発明の効果がより優れるという観点から、グリシドキシアルキルトリアルコキシシランの縮合物が好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び/又は3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランの縮合物がより好ましい。
【0045】
<特定エポキシ系化合物の含有量>
本発明において、特定エポキシ系化合物(エポキシ基と加水分解性シリル基とを有するエポキシ系化合物)の含有量は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、2~10質量部である。
特定エポキシ系化合物の含有量が上記範囲であることによって、本発明の効果が優れる。
特定エポキシ系化合物の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、3~8質量部であることが好ましい。
【0046】
・エポキシ基含有シランカップリング剤の含有量
特定エポキシ系化合物が上記エポキシ基含有シランカップリング剤を含む場合、上記エポキシ基含有シランカップリング剤の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、3~8質量部が好ましい。
【0047】
・エポキシ基含有シランカップリング剤の縮合物の含有量
特定エポキシ系化合物が上記エポキシ基含有シランカップリング剤の縮合物を含む場合、上記エポキシ基含有シランカップリング剤の縮合物の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、3~8質量部が好ましい。
【0048】
<潜在性硬化剤>
本発明の組成物は、潜在性硬化剤を含有する。
上記潜在性硬化剤は、湿気硬化型潜在性硬化剤が好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記湿気硬化型潜在性硬化剤は、湿気(例えば、空気中の水分)によって加水分解して、官能基を有する硬化剤を生成することができる。
上記潜在性硬化剤が加水分解して生成した官能基は、上記ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基及び/又は特定エポキシ系化合物が有するエポキシ基と反応することができる。
上記官能基は、本発明の効果がより優れるという観点から、NH2基、NH基、ヒドロキシ基が好ましく、NH基、ヒドロキシ基がより好ましい。
【0049】
上記潜在性硬化剤が加水分解して生成した硬化剤は、上記官能基を1分子当たり複数有することが好ましい。
【0050】
上記潜在性硬化剤としては、例えば、オキザゾリジン系化合物、エナミン系化合物、シリルエーテル系化合物、チオシリルエーテル系化合物、ケチミン系化合物が挙げられる。
【0051】
・オキサゾリジン系化合物
上記潜在性硬化剤は、本発明の効果がより優れるという観点から、オキサゾリジン系化合物を含むことが好ましい。
オキサゾリジン系化合物は、分子内にオキサゾリジン環を有する化合物である。
オキサゾリジン系化合物は、分子内にオキサゾリジン環を1分子当たり、1個又は複数個有することができ、本発明の効果がより優れるという観点から、複数個有することが好ましく、2個有することがより好ましい。
【0052】
上記オキサゾリジン系化合物は、本発明の効果がより優れるという観点から、下記式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化3】
【0053】
式(1)中、R1は炭化水素基を表し、R2は、m+n価の連結基を表し、mは1~4の整数であり、nは0~4の整数である。
【0054】
上記式(1)中、R1は、炭化水素基を表す。
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、若しくは環状)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。
上記炭化水素基は、本発明の効果がより優れるという観点から、炭素原子数3以上の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素原子数3~20の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素原子数3~15の炭化水素基である。
R1としての炭化水素基としては、例えば、イソブチル、n-ペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、3,5,5-トリメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デカニル、n-ウンデカニル、n-ドデカニル、n-トリデカニル、n-テトラデカニルなどが挙げられる。
【0055】
式(1)中、R2は、m+n価の連結基を表す。
m+n価は、1~4価であることが好ましい。
上記連結基としては、例えば、炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、若しくは環状)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。上記炭化水素基は、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい。
上記連結基としては、例えば、トリレン基、ジフェニルメタン基、フェニレン基、ポリメチレンポリフェニレン基などの芳香族基;ヘキサメチレン基などの脂肪族基;イソホロン基などの脂環式炭化水素基;キシレン基などの芳香族脂肪族基;これらのカルボジイミド変性基またはイソシアヌレート変性基などが挙げられる。
【0056】
式(1)中、mは、1~4の整数である。特に、2~3であるのが、硬化性、硬化物の物性の点で好ましい。
式(1)中、nは、0~4の整数である。特に、0~2であるのが、硬化性の点で好ましい。
【0057】
上記オキサゾリジン系化合物としては、下記構造で表される各潜在性硬化剤I~Vが挙げられる。
【化4】
【0058】
上記潜在性硬化剤は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記式(IV)で表される潜在性硬化剤を含むことが好ましい。
【0059】
<潜在性硬化剤の含有量>
本発明において、上記潜在性硬化剤の含有量は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1~10質量部である。
潜在性硬化剤の含有量が上記範囲であることによって、本発明の効果が優れる。
【0060】
上記潜在性硬化剤の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、3~8質量部が好ましい。
【0061】
(他の任意成分)
本発明の組成物は、上記成分以外に、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、充填剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム)、ビニルシランのような脱水剤、フタル酸ジイソノニル及び/又はポリオキシアルキレン系樹脂のような可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤、分散剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を更に含有することができる。
【0062】
・炭酸カルシウム
本発明の組成物は、作業性に優れるという観点から、更に炭酸カルシウムを含有することが好ましい。
【0063】
炭酸カルシウムは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。具体的には例えば、未処理の炭酸カルシウム又は表面処理された炭酸カルシウムが挙げられる。炭酸カルシウムとして、未処理の炭酸カルシウム及び/又は表面処理された炭酸カルシウムを使用できる。
なお、未処理の炭酸カルシウムは、表面処理がされていない炭酸カルシウムを指す。
炭酸カルシウムを表面処理するために用いられる表面処理剤は特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
本発明の組成物が更に炭酸カルシウムを含有する場合、炭酸カルシウムの含有量は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、20~500質量部であることが好ましい。
【0064】
・脱水剤
本発明の組成物が更に例えばビニルシランのような脱水剤を含有する場合、脱水剤の含有量は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0~3質量部であることが好ましい。ビニルシランは、ビニル基と加水分解性シリル基とを有する化合物を指す。加水分解性シリル基は上記と同様とできる。ビニルシランとしては、例えば、ビニルトリメトキシシランのようなビニルシランカップリング剤が挙げられる。
【0065】
(製造方法)
本発明の組成物は、上記ウレタンプレポリマー、特定エポキシ系化合物、潜在性硬化剤、必要に応じて使用することができる上記添加剤を混合することによって製造することができる。
【0066】
本発明の組成物は、シーリング材用の組成物として使用することができる。
【0067】
本発明の組成物は、1液型、2液型のいずれであってもよい。本発明の組成物は1液型であることが好ましい態様として挙げられる。
【0068】
本発明の組成物を適用することができる基材としては、例えば、コンクリート、木材、金属、ガラス、プラスチック、セラミック、石材が挙げられる。
本発明の組成物を基材に適用する方法は、特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。
【0069】
本発明の組成物は、水分(例えば空気中の湿気等の水分)で硬化することができる。相対湿度は30~80%RHであることが好ましい。上記硬化は、室温又は加熱条件下であってもよい。
本発明の組成物は、硬化後、ウレタン系シーリング材(例えばウレタン結合及び/又はウレア結合等を有するシーリング材)となることができる。
【実施例0070】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0071】
<組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、各組成物を製造した。
【0072】
<評価>
上記のとおり製造された各組成物(ウレタン系シーリング材組成物)を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
[剥離試験(簡易接着法と呼ばれる評価試験)]
(試験片の作製)
上記のとおり製造された各組成物をアルミニウム被着体に、幅15mm、厚さ3mm、長さ50mmのビード状に付与して、その後上記被着体を40℃の条件下で5日間置いて養生し、試験片を作製した。
【0073】
(接着性)
上記のとおり作製した各試験片を用いて、23℃の条件下で、各試験片から組成物の硬化物(シーラント層)を180℃の角度で、手で剥がす剥離試験(簡易接着法と呼ばれる評価試験)を行い、剥離試験後の破壊状態を目視で観察して「接着性」を以下の基準で評価した。
【0074】
・接着性の評価基準
上記剥離試験後の破壊状態の結果を以下のように表示で表示した。
・・C:CF(シーリング材の凝集剥離)
・・T:TCF(薄層凝集剥離)
・・A:AF(界面剥離)
なお、接着性の評価欄において上記「C」等とともに記載されている数字「100」は、接着面全体に対して各破壊状態が占める割合の合計を表す。例えば「C+T 100」は接着面全体に対してCFとTCFが占める割合が合わせて100%であったこと、つまり、AFはなかったことを意味する。
本発明において、破壊状態がCF及び/又はTCFであった場合、接着性が優れると評価し、これを「○」と表示した。
一方、破壊状態がAFであった場合、接着性が悪いと評価した。
【0075】
(耐熱試験)
上記のとおり作製した各試験片を用いて、100℃の条件下に7日間置く耐熱試験を行った。
【0076】
(耐熱性)
上記のとおり作製した各試験片について、上記耐熱試験前後において、日本ゴム協会標準規格(SRIS)0101に準じてアスカーC型硬度計(高分子計器社製)を用いてアスカーC(ASKER C)硬度を測定し、「耐熱性」を以下の基準で評価した。
【0077】
・耐熱性の評価基準
上記耐熱試験前後において、シーラント層のアスカーC硬度の差の絶対値が10.0以下であった場合、耐熱性が優れると評価し、これを「○」と表示した。
上記のシーラント層のアスカーC硬度の差の絶対値が10.0よりも小さいほど、耐熱性がより優れると評価した。
一方、上記のシーラント層のアスカーC硬度の差の絶対値が10.0を超えた場合、又は、上記耐熱試験の前若しくは後においてシーラント層のアスカーC硬度が測定不可であった場合、耐熱性が悪いと評価し、これを「×」と表示した。
なお、シーラント層のアスカーC硬度の評価結果について、アスカーC硬度が測定不可であった(測定値がすぐに0に戻ってしまう)場合を「-」と表示した。
【0078】
・耐熱試験前のシーラント層のアスカーC硬度
耐熱試験前のシーラント層のアスカーC硬度は40以上であることが好ましい。
【0079】
【0080】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(ウレタンプレポリマー)
・ウレタンプレポリマー1(TDI系):以下のとおり調製したウレタンプレポリマー1
ポリエーテルトリオールであるポリオキシプロピレントリオール(商品名:エクセノール5030、数平均分子量約5000、AGC社製)750gと、ポリエーテルジオールであるポリオキシプロピレンジオール(商品名:エクセノール2020、数平均分子量約2000、AGC社製)とを質量比70/30で混合し、混合物を120℃で減圧下脱水した。トルエンジイソシアネート(商品名:コロネート T-80、東ソー株式会社製)をトルエンジイソシアネートのNCO基と上記混合物のOH基の当量比(NCO/OH)が1.7になる量で上記混合物に加え、これらを窒素置換中80℃で24時間混合撹拌した後、ウレタンプレポリマー1を得た。得られたウレタンプレポリマー1のNCO基の含有量は、ウレタンプレポリマー1全量中の1.5質量%であった。
【0081】
・ウレタンプレポリマー2(HDI系):以下のとおり調製したウレタンプレポリマー2
ポリエーテルトリオールであるポリオキシプロピレントリオール(商品名:エクセノール5030、数平均分子量約5000、AGC社製)750gと、ポリエーテルジオールであるポリオキシプロピレンジオール(商品名:エクセノール2020、数平均分子量約2000、AGC社製)とを質量比70/30で混合し、混合物を120℃で減圧下脱水した。ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業社製)をヘキサメチレンジイソシアネートのNCO基と上記混合物のOH基の当量比(NCO/OH)が1.7になる量で上記混合物に加え、これらを窒素置換中80℃で24時間混合撹拌した後、ウレタンプレポリマー2を得た。得られたウレタンプレポリマー2のNCO基の含有量は、ウレタンプレポリマー2全量中の1.5質量%であった。
【0082】
・ウレタンプレポリマー3(XDI系):以下のとおり調製したウレタンプレポリマー3
ポリエーテルトリオールであるポリオキシプロピレントリオール(商品名:エクセノール5030、数平均分子量約5000、AGC社製)750gと、ポリエーテルジオールであるポリオキシプロピレンジオール(商品名:エクセノール2020、数平均分子量約2000、AGC社製)とを質量比70/30で混合し、混合物を120℃で減圧下脱水した。キシリレンジイソシアネート(東京化成工業社製)をキシリレンジイソシアネートのNCO基と上記混合物のOH基の当量比(NCO/OH)が1.7になる量で上記混合物に加え、これらを窒素置換中80℃で24時間混合撹拌した後、ウレタンプレポリマー3を得た。得られたウレタンプレポリマー3のNCO基の含有量は、ウレタンプレポリマー3全量中の1.5質量%であった。
【0083】
・炭酸カルシウム:表面処理炭酸カルシウム(商品名シーレッツ200、丸尾カルシウム社製)と、重質炭酸カルシウム(商品名スーパーS、丸尾カルシウム社製)との混合物(質量比は上記表面処理炭酸カルシウム:上記重質炭酸カルシウム=3:1)
・脱水剤(ビニルシラン):ビニルトリメトキシシラン、商品名KBM-1003、信越化学工業株式会社製
【0084】
(特定エポキシ系化合物)
・特定エポキシ系化合物1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(下記構造)。商品名KBM-403、信越化学工業社製。
【化5】
【0085】
・特定エポキシ系化合物2:主鎖骨格が直鎖状のポリシロキサン(-Si-O-Si-O-Si-)であり、アルコキシシリル基及びエポキシ基を1分子中それぞれ複数有する化合物。上記(-Si-O-Si-O-Si-)における各ケイ素原子は加水分解性シリル基を形成できる。アルコキシ基量17wt%。エポキシ当量280g/モル。商品名KR-516、信越化学工業社製。
【0086】
・比較シランカップリング剤:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、商品名KBM-503、信越化学工業株式会社製
・(比較)エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EP―4100、株式会社ADEKA製
【0087】
(潜在性硬化剤)
・潜在性硬化剤:2-(1-メチルブチル)-3-オキサゾリジンエタノール100gとキシリレンジイソシアネート51.5gを反応させて製造した、下記式(IV)で表される潜在性硬化剤。式(IV)で表される潜在性硬化剤に水が反応すると、2つのオキサゾリジン環が加水分解して、それぞれ-NH-CH
2CH
2-OHを生じる。
【化6】
【0088】
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル(DINP、三菱化学社製)と希釈用ポリオキシアルキレン系樹脂(商品名LBU-25、三洋化成工業社製。なおLBU-25は活性水素含有基を有さない。)との混合物(質量比はDINP:LBU-25=6:10)
【0089】
第1表に示す結果から明らかなように、上記特定エポキシ系化合物を含有しない比較例1は、接着性、耐熱性が悪かった。
特定エポキシ系化合物が所定の含有量より少ない比較例2、5は、耐熱性が悪かった。
特定エポキシ系化合物が所定の含有量より多い比較例3、6は、耐熱性が悪かった。
上記特定エポキシ系化合物を含有せず、代わりに比較シランカップリング剤を含有する比較例4、8、9は、接着性、耐熱性が悪かった。
上記特定エポキシ系化合物を含有せず、代わりにエポキシ樹脂を含有する比較例7は、接着性、耐熱性が悪かった。
【0090】
これに対して、本発明のウレタン系シーリング材組成物は、接着性、耐熱性が優れた。