(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051100
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】紙製産業用ワイパー
(51)【国際特許分類】
A47L 13/16 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
A47L13/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161567
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
【テーマコード(参考)】
3B074
【Fターム(参考)】
3B074AA04
3B074AB01
3B074AC03
3B074BB01
(57)【要約】
【課題】吸水性、使用感(手持ちのボリューム感)及び丈夫さに優れ、ワイパー表裏の汚れ拭き取りやすさが共に良好であり、ワイパーの拭き心地にも優れる紙製産業用ワイパーを提供する。
【解決手段】1プライの原紙を、3プライ以上4プライ以下にプライアップし、エンボス加工を施して一体化した、紙製産業用ワイパーであって、ワイパーの坪量が55.0g/m
2以上101.0g/m
2以下、エンボス加工により施されたエンボスのワイパーにおける面積率が25%以上50%以下、エンボスの高さは250μm以上650μm以下であることを特徴とする、紙製産業用ワイパーを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1プライの原紙を、3プライ以上4プライ以下にプライアップし、エンボス加工を施して一体化した、紙製産業用ワイパーであって、
ワイパーの坪量が55.0g/m2以上101.0g/m2以下、前記エンボス加工により施されたエンボスのワイパーにおける面積率が25%以上50%以下、前記エンボスの高さは250μm以上650μm以下であることを特徴とする、紙製産業用ワイパー。
【請求項2】
プライ数が3プライであることを特徴とする、請求項1に記載の紙製産業用ワイパー。
【請求項3】
ワイパーの紙厚が400μm/製品プライ数以上800μm/製品プライ数以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の紙製産業用ワイパー。
【請求項4】
ワイパーのJIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強度DMDTと乾燥時の横方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTが10.4N/25mm以上25.0N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の紙製産業用ワイパー。
【請求項5】
前記エンボスのエンボス1個の面積が1.0mm2以上7.0mm2以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の紙製産業用ワイパー。
【請求項6】
プライアップ後のワイパーを、1プライの状態で測定した際の坪量が18.7g/m2以上26.7g/m2以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の紙製産業用ワイパー。
【請求項7】
プライアップ後のワイパーを、10プライとした状態で非エンボス部分を測定した際の紙厚が0.78mm/10プライ以上1.25mm/10プライ以下であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の紙製産業用ワイパー。
【請求項8】
プライアップ後のワイパーを、1プライの状態で測定した際の、JIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強度DMDTと乾燥時の横方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTが5.0N/25mm以上11.9N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の紙製産業用ワイパー。
【請求項9】
ワイパーの製品形態は四つ折りであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の紙製産業用ワイパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス加工が施された紙製産業用ワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
パルプや古紙(セルロースのみで、不織布は含まない)を原料とする、産業用ワイパー(以下、紙製産業用ワイパーとも称する)が知られている。
【0003】
市場に出回っているものは2~6プライの物が多く、エンボスの形状(マッチドエンボス、ピンエンボス等)や商品形態(ポップアップ式、四つ折り、ハンディタイプ等)は様々である。
【0004】
紙製産業用ワイパーに求められる品質として、吸水性、使用感(拭き取りやすさ、手持ちのボリューム感)、丈夫さ、等が挙げられる。
【0005】
そのような紙製産業用ワイパーの先行技術文献として、例えば、特許文献1には、構成繊維がパルプ100%であり、そのパルプ中にNBKP(針葉樹クラフトパルプ)を70~100重量部含み、構成繊維100質量部に対して、湿潤紙力増強剤を0.125~1.25質量部、柔軟剤を0.01~0.5質量部添加して抄紙され、キャレンダー処理が施され、ソフトネス(ハンドルオメーター法:JIS L 1096Eに準ずる)の値が3.0~12.0g、各面のMMDの値が7.0~20.0の範囲にあるものが、使用単位毎に切り離された状態で収納され、それら切り離して収納される各紙ワイプが、ワイプ表面の摩擦係数の平均偏差(MMD)の値が大きい方の面を中にして二つ折りにされ、中に折り込まれた面同士が接するように互いに噛み合わさるように重ねられて、使用時にポップアップにより取出される、ことを特徴とする産業用紙ワイプが開示されている。
また、特許文献2には、紙シートの積層数が4以上8以下である積層体を含み、積層体の表面層の少なくとも一方の紙シートは、坪量が14.0gsm~19.0gsmであり、紙シートの開口率が2.1パーセント~7.5パーセントであり、積層体の吸水量が、300g/m2~760g/m2であることを特徴とする産業用拭き取りシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5366596号公報
【特許文献2】特許第5978100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
紙製産業用ワイパーは、吸水性や拭き取りやすさ、手持ちのボリューム感を良好にするため、エンボスが施されているが、一般的には、エンボスの面積率(ワイパー全体に対するエンボスの割合)が低い方が製品に残るエンボス高さが高くなり、吸水性、拭き取りやすさ、手持ちのボリューム感に有利となる。また、市場では、エンボス面積率が10%未満のワイパー製品が多い。
【0008】
一方で、エンボスの面積率の低い紙製産業用ワイパーは、ワイパーの表裏(エンボス凹側、凸側)で拭き取り感(汚れ拭き取りやすさ)が変わる点が、使いづらいという問題がある。一方で、面積率を大きく(50%に近く)するとワイパーの表裏の拭き取り感の差は小さくなるものの、製品のエンボスが残りづらい(加工の過程でエンボスがつぶれやすい)ため、吸水性、使用感(手持ちのボリューム感)が劣り、拭き取り感もワイパー表裏両方で悪化するという問題がある。
また、エンボス以外に、ワイパーの原紙の枚数(プライ数)も、少なすぎると丈夫さ、吸水性に劣り、多すぎるとゴワゴワして、拭き心地が良くないという問題がある。
【0009】
そのため、吸水性、使用感(手持ちのボリューム感)及び丈夫さを良好なものとする事、ワイパー表裏の拭き取り感の差を小さくする(表裏の拭き取り感が共に良好である)事、並びにワイパーの拭き心地を良好なものとする事をバランスよく全て満たすのは従来の技術では難しかった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、吸水性、使用感(手持ちのボリューム感)及び丈夫さに優れ、ワイパー表裏の汚れ拭き取りやすさが共に良好であり、ワイパーの拭き心地にも優れる紙製産業用ワイパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は鋭意検討を行い、原紙を所定の枚数プライアップし、所定の面積率及び高さのエンボス加工を施して一体化し、所定の数値範囲内の坪量とすることで、吸水性、使用感(手持ちのボリューム感)及び丈夫さに優れ、ワイパー表裏の汚れ拭き取りやすさが共に良好であり、ワイパーの拭き心地にも優れる紙製産業用ワイパーとすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1)本発明の第1の態様は、1プライの原紙を、3プライ以上4プライ以下にプライアップし、エンボス加工を施して一体化した、紙製産業用ワイパーであって、ワイパーの坪量が55.0g/m2以上101.0g/m2以下、上記エンボス加工により施されたエンボスのワイパーにおける面積率が25%以上50%以下、上記エンボスの高さは250μm以上650μm以下であることを特徴とする、紙製産業用ワイパーである。
【0013】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の紙製産業用ワイパーであって、プライ数が3プライであることを特徴とするものである。
【0014】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の紙製産業用ワイパーであって、ワイパーの紙厚が400μm/製品プライ数以上800μm/製品プライ数以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の紙製産業用ワイパーであって、ワイパーのJIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強度DMDTと乾燥時の横方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTが10.4N/25mm以上25.0N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の紙製産業用ワイパーであって、上記エンボスのエンボス1個の面積が1.0mm2以上7.0mm2以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の紙製産業用ワイパーであって、プライアップ後のワイパーを、1プライの状態で測定した際の坪量が18.7g/m2以上26.7g/m2以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載の紙製産業用ワイパーであって、プライアップ後のワイパーを、10プライとした状態で非エンボス部分を測定した際の紙厚が0.78mm/10プライ以上1.25mm/10プライ以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(8)本発明の第8の態様は、(1)から(7)のいずれかに記載の紙製産業用ワイパーであって、プライアップ後のワイパーを、1プライの状態で測定した際の、JIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDTと乾燥時の横方向の引張強さDCDTとの積の平方根GMTが5.0N/25mm以上11.9N/25mm以下であることを特徴とするものである。
【0020】
(9)本発明の第9の態様は、(1)から(8)のいずれかに記載の紙製産業用ワイパーであって、ワイパーの製品形態は四つ折りであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、吸水性、使用感(手持ちのボリューム感)及び丈夫さに優れ、ワイパー表裏の汚れ拭き取りやすさが共に良好であり、ワイパーの拭き心地にも優れる紙製産業用ワイパーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る紙製産業用ワイパーのエンボス加工部分における断面図である。
【
図2】本実施形態に係る紙製産業用ワイパーのエンボス加工部分を凸面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0024】
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
<紙製産業用ワイパー>
本実施形態に係る紙製産業用ワイパー1は、
図1の断面図に示すように、原紙10を、3プライ以上4プライ以下にプライアップ(積層)し、エンボス加工を施して(エンボス20を付与して)一体化したものである。このとき、プライアップするプライ数が3プライ又は4プライであり、3プライであることがより好ましい。プライ数が3プライ又は4プライであることにより、紙製産業用ワイパー1の丈夫さ、適度な吸水性が確保されると共に、拭き取り時に適度な弾性感があり、良好な拭き心地となる。
なお、紙製産業用ワイパー1の長手方向の寸法は330mm以上360mm以下であることが好ましく、幅方向の寸法は320mm以上350mm以下であることが好ましい。また、紙製産業用ワイパー1は長手方向の寸法と幅方向の寸法が等しい、いわゆる正方形型であってもよい。紙製産業用ワイパー1の製品形態はポップアップ式、四つ折り、ハンディタイプ等の通常の産業用ワイパー製品に用いられる形態であれば特に制限されないが、中でも四つ折りであることが好ましい。四つ折り状態であれば対象物の水分を拭き取る用途で使用した際、吸水性が良好となり、使用感(手持ちのボリューム感)にも優れる。
【0026】
紙製産業用ワイパー1の坪量は、55.0g/m2以上101.0g/m2以下であり、61.2g/m2以上86.7g/m2以下であることが好ましい。坪量を上記の数値範囲内とすることで、吸水性と丈夫さ、良好な拭き心地を兼ね備える紙製産業用ワイパー1とすることができる。
また、プライアップ後の紙製産業用ワイパー1を、1プライの状態で測定した際の坪量が18.7g/m2以上26.7g/m2以下であることが好ましく、20.0g/m2以上25.3g/m2以下であることがより好ましい。1プライの状態での坪量を上記の数値範囲内とすることで、吸水性と丈夫さ、良好な拭き心地を兼ね備える紙製産業用ワイパー1とすることができる。この場合におけるプライアップ後とは、1プライの原紙をプライアップし、エンボス加工を施して一体化した後の状態を指す。なお、坪量は、いずれもJIS P 8124に準拠して測定される。
【0027】
また、紙製産業用ワイパー1の紙厚Tは400μm/製品プライ数以上800μm/製品プライ数以下であることが好ましく、500μm/製品プライ数以上700μm/製品プライ数以下であることがより好ましい。紙厚Tを上記の数値範囲内とすることで、使用感(手持ちのボリューム感)に優れ、ワイパーの拭き心地が良好である紙製産業用ワイパー1とすることができる。
なお、紙厚Tの単位の「製品プライ数」とは、紙製産業用ワイパー1の製品(原紙10ではなく、加工済みの紙製産業用ワイパー1)のプライを増減せずに紙厚Tを測定することを指す。紙厚Tは、JIS P 8111の条件下(23±1℃、50±2%相対湿度)でシックネスゲージ(例えば、尾崎製作所製、ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用い、測定荷重3.7kPa、測定子直径3mmの測定条件下に、測定子と測定台との間に試料(紙製産業用ワイパー1)を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取ることで測定できる。
【0028】
さらに、プライアップ後の紙製産業用ワイパー1を、10プライとした状態で非エンボス部分を測定した際の紙厚が0.78mm/10プライ以上1.25mm/10プライ以下であることが好ましく、0.89mm/10プライ以上1.13mm/10プライ以下であることがより好ましい。プライアップ後の紙製産業用ワイパー1における10プライの非エンボス部紙厚を上記の数値範囲内とすることで、使用感(手持ちのボリューム感)に優れ、ワイパーの拭き心地が良好である紙製産業用ワイパー1とすることができる。なお、この場合における10プライとは、プライアップ後の紙製産業用ワイパー1を剥がして1プライの状態に戻した後、戻した1プライを10プライ重ねた状態のことを指す。
【0029】
そして、紙製産業用ワイパー1のJIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強度DMDTと乾燥時の横方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTは10.4N/25mm以上25.0N/25mm以下であることが好ましく、12.8N/25mm以上20.6N/25mm以下であることがより好ましい。GMTが上記の数値範囲内であることにより、強度が高い(丈夫な)紙製産業用ワイパー1とすることができる。
また、プライアップ後の紙製産業用ワイパー1を、1プライの状態で測定した際の、JIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強度DMDTと乾燥時の横方向の引張強度DCDTとの積の平方根GMTは5.0N/25mm以上11.9N/25mm以下であることが好ましく、6.1N/25mm以上9.8N/25mm以下であることがより好ましい。1プライの状態でのGMTが上記の数値範囲内であることにより、強度が高い(丈夫な)紙製産業用ワイパー1とすることができる。なお、乾燥時の各々の方向の引張強度は、いずれもJIS P 8113に準拠して測定され、GMTはそれらの引張強さの積の平方根として求める。
【0030】
なお、プライアップ後の強度の調整をする場合は、後述する原紙10においてDDR(ダブルディスクリファイナ)での叩解、湿潤紙力剤や乾燥紙力剤の添加等の方法を適宜選択することができる。
湿潤紙力剤としては特に限定されないが、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系のものが好ましい。また、乾燥紙力剤を併用しても良く、乾燥紙力剤はPAM系が好ましい。また、湿潤紙力剤は、その助剤を含有してもよく、湿潤紙力剤の助剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド系樹脂が好ましい。吸水速度の観点から、紙力剤及び助剤の添加率は、絶乾パルプ重量に対して1.0%以下であることが好ましい。薬剤の添加量が多いと、吸水速度に劣る場合がある。
【0031】
(エンボス)
本実施形態に係る紙製産業用ワイパー1に施されるエンボス加工は、略規則的に、一定パターンの繰り返しでエンボス20を施して複数枚の原紙10を一体化するものである。エンボス20が施されることにより、エンボス20の凹側の面を凹面S、凸側の面を凸面Bとする。なお、エンボス20の加工形態は問わないが、紙製産業用ワイパー1にエンボス20が残りやすいことから、マッチドエンボス方式が好ましい。
紙製産業用ワイパー1におけるエンボス20が施された部分の高さ、すなわち
図1に示すエンボス20の高さ(エンボス高さH)は250μm以上650μm以下であり、350μm以上550μm以下であることが好ましい。エンボス高さHが上記の数値範囲内であることにより、使用感(手持ちのボリューム感)に優れ、ワイパーの拭き心地が良好である紙製産業用ワイパー1とすることができる。なお、エンボス高さHは紙製産業用ワイパー1のエンボス20の高さを3D顕微鏡VR-3000(株式会社キーエンス製)で測定し、測定した30点の平均値として求める。
【0032】
また、
図1に示す紙製産業用ワイパー1のエンボス加工部分を凸面B側から見た
図2において、エンボス20の紙製産業用ワイパー1における面積率が25%以上50%以下であり、30%以上45%以下であることが好ましい。面積率が上記の数値範囲内であることにより、使用感(手持ちのボリューム感)に優れ、ワイパー表裏の汚れ拭き取りやすさが共に良好である紙製産業用ワイパー1とすることができる。なお、面積率とは紙製産業用ワイパー1における単位面積当たりのエンボス20の面積割合の事を指す。
また、エンボス20のエンボス1個の面積が1.0mm
2以上7.0mm
2以下であることが好ましく、1.8mm
2以上5.0mm
2以下であることがより好ましい。エンボス1個の面積が上記の数値範囲内であることにより、より使用感(手持ちのボリューム感)に優れ、ワイパー表裏の汚れ拭き取りやすさが共に更に良好である紙製産業用ワイパー1とすることができる。
【0033】
エンボス20のエンボス1個の面積は、紙製産業用ワイパー1における凸面B側から、1個のエンボス20の面積を顕微鏡VHX-6000(株式会社キーエンス製)で計測し、30点の平均値をエンボス1個の面積とする。そして、面積率は
図2に示すエンボス領域Aにおいて(エンボス20の面積の合計値/エンボス領域Aの縦×横で求めた面積)×100(%)として算出する。このとき、エンボス領域Aの境界線上のエンボス20は1/2個、四隅のエンボス20は1/4個としてそれぞれ換算する。なお、
図2に示すエンボスのパターンはあくまで一例であり、エンボスのパターンが異なる場合であっても、
図2のような繰り返し領域(同じ模様が続く領域)を選び、面積率を測定する(すなわち、繰り返し領域であればどのような囲い方でも、面積率は同じ値となる)。
なお、エンボス20は
図2では略円形であるが、エンボス20の形は特に制限されず、円形、楕円形、多角形、星型等の中から一種類又は二種類以上を自由に選択することができる
【0034】
(原紙)
紙製産業用ワイパー1の製造に用いる(プライアップする前の)原紙10は、原料の種類は特に制限されず、晒パルプ、未晒パルプ、紙パック由来の再生原料等を一種類又は二種類以上を混ぜて使用することができる。
また、原料配合は針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、ミルクカートンから再生したパルプ(MSF)等を用いる事ができるが、吸水性の観点からバージンパルプ100%とすることが好ましい。また、最終的な紙製産業用ワイパー1の強度の観点から、針葉樹クラフトパルプ80%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましく、100%とすることが更に好ましい。
【0035】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、吸水性、使用感(手持ちのボリューム感)及び丈夫さに優れ、ワイパー表裏の汚れ拭き取りやすさが共に良好であり、ワイパーの拭き心地にも優れる紙製産業用ワイパー1を提供することができる。
【実施例0036】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
表1及び表2に示す各条件において、実施例1~13及び比較例1~8のそれぞれの紙製産業用ワイパー(製品)を作製し、以下の評価を行った。なお、下記の評価以外の各パラメーターは、上述した基準又は測定方法に従って行った。
【0038】
(T.W.A.)
吸水性の評価として、単位面積当たりの吸水量(T.W.A.)を用いた。以下の測定方法で測定したT.W.A.の数値について、下記の基準で評価を行った。
240g/m2以上:優(特に多くの水分を吸収することができる)
220g/m2以上、240g/m2未満:良(多くの水分を吸収することができる)
200g/m2以上、220g/m2未満:可(水分の吸収量に問題はない)
200g/m2未満:不可(水分の吸収量が少ない)
【0039】
単位面積当たりの吸水量(T.W.A.;Total Water Absorbency)は、まず、得られた紙製産業用ワイパーを76×76mmの正方形の試験片に切断し、乾燥質量(W1)を測定した。その後、この試験片を蒸留水中に2分間浸漬した後、試験片の1つの角部が上側の頂部となるようにし、この頂部と隣接する2つの角部とを支持して展伸した状態(RH100%)で吊るし、30分放置後の質量(W2)を測定した。そして、(W2-W1)の値を算出し、この値をサンプル1m2あたりの保水量(g/m2)に換算したものを、単位面積当たりの吸水量(T.W.A.)とした。
【0040】
(各面の汚れ拭き取りやすさ)
紙製産業用ワイパーの凹面及び凸面の各面における、汚れ等対象物の拭き取りやすさについて評価を行った。官能評価は、60名を対象にして行われ、各人が1点から5点で評価した。総合的な評価は下記の基準で行った。
「優◎」:特に拭き取りやすく、汚れ等が非常に落ちやすい。60名の評価の平均点が4.0点以上
「良○」:拭き取りやすく、汚れ等が落ちやすい。平均点が3.0点以上4.0点未満
「可△」:汚れ等を拭き取ることに支障はない。平均点が2.0点以上3.0点未満
「不可×」:拭き取りづらく、汚れが落ちづらい。平均点が2.0点未満
【0041】
(ワイパーの手持ち感)
紙製産業用ワイパーを手に持った感触に関する官能評価は、60名を対象にして行われ、各人が1点から5点で評価した。総合的な評価は下記の基準で行った。
「優◎」:ワイパーを手に取った際、特にボリューム感が感じられ、使用時に安心感がある。60名の評価の平均点が4.0点以上
「良○」:ワイパーを手に取った際、ボリューム感が感じられ、使用時に安心感がある。60名の評価の平均点が3.0点以上4.0点未満
「可△」:ワイパーを手に取った際、ややボリューム感が感じられる。使用時も特に問題はない。60名の評価の平均点が2.0点以上3.0点未満
「不可×」:ワイパーにボリューム感が感じられず、ペラペラであると感じられ、安心して使用できない。平均点が2.0点未満
【0042】
(ワイパーの丈夫さ)
ワイパーで対象物を拭いた際の丈夫さに関する官能評価は、60名を対象にして行われ、各人が1点から5点で評価した。総合的な評価は下記の基準で行った。
「優◎」:ワイパーで対象物を拭いた際、特に破れづらく感じる。60名の評価の平均点が4.0点以上
「良○」:ワイパーで対象物を拭いた際、破れづらく感じる。平均点が3.0点以上4.0点未満
「可△」:ワイパーで対象物を拭いた際、多少破れることはあるものの使用に問題はない。平均点が2.0点以上3.0点未満
「不可×」:対象物を拭いた際にワイパーが破れやすく、使いづらい。平均点が2.0点未満
【0043】
(ワイパーの拭き心地)
紙製産業用ワイパーの拭き心地に関する官能評価は、60名を対象にして行われ、各人が1点から5点で評価した。総合的な評価は下記の基準で行った。
「優◎」:ワイパーに弾性があり、拭き心地が特に良く、対象物を特にスムーズに拭くことができる。60名の評価の平均点が4.0点以上
「良○」:ワイパーに適度な弾性があり、拭き心地が良く、対象物をスムーズに拭くことができる。60名の評価の平均点が3.0点以上4.0点未満
「可△」:ワイパーにやや弾性が感じられ、拭き心地は問題のないレベルである。60名の評価の平均点が2.0点以上3.0点未満
「不可×」:ワイパーに弾性が感じられず、対象物の拭き心地に劣る。平均点が2.0点未満
【0044】
表1に、各実施例の条件及び評価結果を示し、表2に、各比較例の条件及び評価結果を示す。なお、各評価が△(可)以上を合格とした。
【0045】
【0046】
【0047】
以上より、本実施例によれば吸水性、使用感(手持ちのボリューム感)及び丈夫さに優れ、ワイパー表裏の汚れ拭き取りやすさが共に良好であり、ワイパーの拭き心地にも優れる紙製産業用ワイパーが得られることが少なくとも確認された。