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  • 特開-金属製部材の加熱装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051142
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】金属製部材の加熱装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/10 20060101AFI20230404BHJP
   B65G 15/28 20060101ALI20230404BHJP
   C21D 1/42 20060101ALI20230404BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20230404BHJP
   F27B 9/24 20060101ALI20230404BHJP
   F27D 11/06 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C21D1/10 Y
B65G15/28
C21D1/42 H
C21D1/00 113Z
F27B9/24 E
F27D11/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161643
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508056109
【氏名又は名称】株式会社ネツレンタクト
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100158665
【弁理士】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】渡部 久明
【テーマコード(参考)】
3F023
4K034
4K050
4K063
【Fターム(参考)】
3F023AB06
3F023BA01
3F023BA02
3F023BB01
3F023BC01
3F023CA08
4K034AA01
4K034AA03
4K034DB02
4K034EA11
4K034EC07
4K050AA02
4K050BA02
4K050CD07
4K050CG09
4K063AA05
4K063BA02
4K063CA03
4K063FA31
4K063FA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】搬送速度のバラツキを防止することができるコンベアを有する加熱装置を提供する。
【解決手段】高周波加熱装置1が設置されたコンベア2上で誘導加熱する金属製部材の加熱装置であって、コンベア本体3の始端部と終端部とに各々ローラ4a、4bを横架し、両ローラ間にガラス繊維製又はアラミド繊維製の第1の無端状ベルト5を架設し、その往路側をコンベア本体3の上面側とし復路側を下面側とし、上面側は金属製部材が搬送及び誘導加熱される搬送路とし、下面側に第1の無端状ベルトの復路側と接触してベルトを駆動回転させる第1の回転ローラ6を備え、第1の回転ローラの外周に第1の無端状ベルトを掛け回すと共に、その上にゴム製である第2の無端状ベルト7を掛け回し、第2の無端状ベルトを第1の無端状ベルトに面接触させて、第2の無端状ベルトを回転駆動させることにより第1の回転ローラを回転駆動させる、金属製部材の加熱装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製部材を、高周波加熱装置1が設置されたコンベア2上で誘導加熱する金属製部材の加熱装置であって、
前記コンベア2は、コンベア本体3の始端部と終端部とに各々ローラ4a、4bを横架し、これら両ローラ4a、4b間に、ガラス繊維製又はアラミド繊維製の第1の無端状ベルト5を架設し、
その往路側を前記コンベア本体3の上面側とし、
その復路側を前記コンベア本体3の下面側とし、
前記上面側は、前記金属製部材が搬送及び誘導加熱される搬送路とし、
前記下面側に、前記第1の無端状ベルト5の復路側と接触して同ベルト5を駆動回転させる第1の回転ローラ6を備え、前記第1の回転ローラ6の外周に前記第1の無端状ベルト5を掛け回すと共に、さらにその上にゴム製である第2の無端状ベルト7を掛け回し、前記第2の無端状ベルト7を前記第1の無端状ベルト5に面接触させて、前記第2の無端状ベルト7を回転駆動させることにより、前記第1の回転ローラ6を回転駆動させる、金属製部材の加熱装置。
【請求項2】
前記コンベア2において、前記第1の回転ローラ6の両側に第2の回転ローラ8a、第3の回転ローラ8bを設け、前記第1の回転ローラ6の下方に第4の回転ローラ9を設けて、前記第1の回転ローラ6の外周に掛け回した前記第1の無端状ベルト5上、前記第2の回転ローラ8aの外周、前記第4の回転ローラ9の外周、前記第3の回転ローラ8bの外周及び前記第1の無端状ベルト5上の順で掛け回し、前記いずれかの回転ローラを駆動ローラとして、前記第2の無端状ベルト7を回転駆動させる、請求項1に記載の金属製部材の加熱装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製部材の加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製部材の加熱において高周波加熱(誘導加熱)は表皮効果のため被加熱物の表面を集中的に加熱できるので、表面焼入れなどに多く利用されている。さらに高周波加熱は被加熱物自体が発熱するので急速に温度上昇し、このため炉加熱に比べて熱処理時間が著しく短縮できるので大量生産工程に適しており、被加熱物全体を加熱する必要がある場合にも使用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1には、「開口部を有するワークの全面に塗着する静電塗着方法において、上記ワークの開口部に回動軸を有する保持治具を遊挿させて保持する保持工程と、上記保持工程にて遊挿された上記ワークの上記回動軸の方向の端部を他の部材に対して非接触状態とする位置誘導工程と、遊挿された上記保持治具を前記保持治具の回動軸を中心として回動させながら上記ワークに塗着させる粉体を電着する静電塗着工程と、上記ワークに静電塗着している粉体を高周波誘導により加熱して融解させる仮キュア工程と、この仮キュア工程後の絶縁被覆に遠赤外線を照射することにより加熱硬化させる本キュア工程と、を具備することを特徴とする静電塗着方法。」(請求項1)が記載されている。
そして、ワークを、静電粉体塗着部11、仮キュア加熱部(高周波加熱部)12、本キュア加熱部(遠赤外線加熱部)15に、順次コンベア9で搬送することも示されている(第3図参照)。
【0004】
そして、ワークを、高周波(マイクロ波)加熱装置等を用いて、コンベア上で加熱する場合、ベルトとして、ガラス繊維、アラミド繊維等の耐熱性繊維を用いることも公知である(特許文献3の請求項1、段落[0031]、特許文献4の請求項8、段落[0034]、特許文献5の段落[0017]参照)。
【0005】
特許文献4には、「ベルトコンベア14のベルト18は、ガラス繊維とPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)とを主材料として形成されている。これらベルト18を形成するガラス繊維ならびにPTFEは、耐熱温度が200℃以上と高く、マイクロ波の吸収度合いを示す物性である誘電体損失率が低いものである。このため、耐熱温度が高いベルト18は、照射ユニット20によってマイクロ波が照射されるマイクロ波照射処理装置10に用いて好適なものであり、しかも、ベルト18自体の誘電体損失率が低いので、ベルト18に載置された被処理物100にマイクロ波が吸収されやすい構成になっている。」(段落[0034])と記載されている。
【0006】
また、コンベアについて、2つのベルトとそのベルトを駆動するローラを組み合わせて、ワークを搬送する装置が公知である(特許文献6及び7参照)。
【0007】
特許文献6には、「無端状の走行可能な連絡ベルトと、この連絡ベルトと対向する位置に回転可能に配設され、軸方向が前記連絡ベルトの走行方向と交差する方向に一致している挟持ローラと、この挟持ローラと前記連絡ベルトとで面接触的に挟持され、前記挟持ローラおよび前記連絡ベルトのいずれか一方からの駆動力で走行して被搬送物を搬送する無端状の走行可能な搬送ベルトとを具備したことを特徴とするベルトコンベヤ。」(請求項1)が記載されている。
【0008】
また、「コイルばね45にて第2の支軸38が下方に向けて付勢された状態では、この第2の支軸38に取り付けられた第2のローラ50,50が駆動ローラ25側に向けて付勢され、その結果、一対の連絡ベルト51a,51bが駆動ローラ25側に向けて相対的に近づく方向に付勢されており、図7に示されるように、搬送ベルト16の復路面部16bがこれら一対の連絡ベルト51a,51bと駆動ローラ25の筒状部材26とで面接触的に挟持された状態にある。」(段落[0038])と記載されている。
【0009】
特許文献7には、「検出ヘッド(2)で物品内の金属物検出を行うため、物品を搬送させる搬送ベルトが検出ヘッドの開口部内を通過する構造の金属検出機において、搬送手段は、一対の主動ローラ(3)および従動ローラ(4)と、前記主動ローラ(3)および従動ローラ(4)間に張設され物品を搬送する無端状の搬送ベルト(5)と、前記主動ローラ(3)の端部に設けられ該主動ローラより小径な主動ギヤ(3a)とによって構成され、駆動手段は、前記搬送ベルトの下面位置に設けられ、該搬送ベルトにテンションを付与するテンションローラ(8)と、前記テンションローラ(8)の端部に設けられたテンションギヤ(8a)と、装置基台に設けられ、前記搬送ベルトを搬送駆動する駆動源としてのモータ(14)と、装置基台に対し、前記モータのギヤ(14a)と、前記テンションギヤとの間で略三角状となるよう配置される補助ギヤ(15a)と、前記モータのギヤとテンションギヤと補助ギヤとの間に掛け渡され、表裏両面に歯面を有し、展張部分で前記主動ギヤに外接歯合する両歯タイミングベルト(17)とによって構成されていることを特徴とする金属検出機のコンベア駆動装置。」(請求項1)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2883346号公報
【特許文献2】特許第4620486号公報
【特許文献3】特開2011-99190号公報
【特許文献4】特開2006-59744号公報
【特許文献5】特開2000-306661号公報
【特許文献6】特開2001-88926号公報
【特許文献7】実用新案登録第2607147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1及び2に記載されているように、高周波加熱(マイクロ波加熱)は、金属製部材を短時間で加熱することができるが、コンベアで移動させて加熱する場合、コンベアベルトには、通常、特許文献3~5に記載されているような高周波(マイクロ波)を吸収しにくいガラス繊維、アラミド繊維等の耐熱性繊維が用いられる。
しかし、このガラス繊維製、アラミド繊維製のベルトは、表面が平滑なため、走行する箇所に引っ掛からないという利点があるが、逆にローラとベルトの間のスリップにより、コンベアの搬送速度にバラツキが生じる場合があり、金属製部材が不均一に加熱される問題があった。
一方、特許文献6及び7には、駆動ローラからの駆動力を搬送ベルトに適切に伝達し、ワークを安定して搬送するために、搬送ベルト以外のベルト及びそのベルトを駆動するローラを設けて、搬送ベルト以外のベルト又はローラから搬送ベルトにテンションを付与するようにしたコンベアが示されているが、このようなコンベアを加熱装置に用いることは示されていない。
【0012】
本発明の課題は、金属製部材の加熱装置において、搬送速度のバラツキを防止することができるコンベアを有する加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の手段を採用する。
(1)金属製部材を、高周波加熱装置1が設置されたコンベア2上で誘導加熱する金属製部材の加熱装置であって、前記コンベア2は、コンベア本体3の始端部と終端部とに各々ローラ4a、4bを横架し、これら両ローラ4a、4b間に、ガラス繊維製又はアラミド繊維製の第1の無端状ベルト5を架設し、その往路側を前記コンベア本体3の上面側とし、その復路側を前記コンベア本体3の下面側とし、前記上面側は、前記金属製部材が搬送及び誘導加熱される搬送路とし、前記下面側に、前記第1の無端状ベルト5の復路側と接触して同ベルト5を駆動回転させる第1の回転ローラ6を備え、前記第1の回転ローラ6の外周に前記第1の無端状ベルト5を掛け回すと共に、さらにその上にゴム製である第2の無端状ベルト7を掛け回し、前記第2の無端状ベルト7を前記第1の無端状ベルト5に面接触させて、前記第2の無端状ベルト7を回転駆動させることにより、前記第1の回転ローラ6を回転駆動させる、金属製部材の加熱装置。
(2)前記コンベア2において、前記第1の回転ローラ6の両側に第2の回転ローラ8a、第3の回転ローラ8bを設け、前記第1の回転ローラ6の下方に第4の回転ローラ9を設けて、前記第1の回転ローラ6の外周に掛け回した前記第1の無端状ベルト5上、前記第2の回転ローラ8aの外周、前記第4の回転ローラ9の外周、前記第3の回転ローラ8bの外周及び前記第1の無端状ベルト5上の順で掛け回し、前記いずれかの回転ローラを駆動ローラとして、前記第2の無端状ベルト7を回転駆動させる、請求項1に記載の金属製部材の加熱装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、搬送速度のバラツキが防止されたコンベアを有する金属製部材の加熱装置を提供することができ、この加熱装置を用いることにより、均質な金属製部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の1実施形態に係るコンベアを有する金属製部材の加熱装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(金属製部材)
金属製部材は、鉄鋼材であることが好ましい。
本発明でいう鉄鋼材とは、普通鋼(炭素鋼)および特殊鋼全体を包含し、例えば一般構造用圧延鋼材等の炭素鋼、低温用鋼、原子炉用鋼板材料等をいい、冷間圧延鋼材、熱間圧延鋼材、自動車構造用熱間圧延鋼板材、自動車加工用熱間圧延高張力鋼板材等の鉄鋼材である。また、本発明でいう鉄鋼材は上記鋼材に限らず、例えば、日本工業規格(JIS「SS400」)等で規格化されたあらゆる鉄鋼材が含まれる。
【0017】
(高周波加熱装置)
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係る加熱装置は、図1に示すように、コンベア2上を搬送される金属製部材を誘導加熱する高周波加熱装置1を備える。
高周波加熱装置1は、特許文献2に記載されているような平行に配設した2個の逆U字型導体の一方の足端部同士を連結し、他方の足端部に電源を接続して形成された逆U字型導体のコイルを備える。この誘導加熱コイルの逆U字型導体の足部を金属製部材に跨がせて加熱することにより、効率よく急速に金属製部材の深部まで加熱することができる。
【0018】
(コンベア)
本実施形態で用いるコンベア2について、図1を用いて説明する。
コンベア2は、コンベア本体3の両端部(始端部と終端部)に各々ローラ4a、4bを横架すると共に、これら両ローラ4a、4bの間に第1の無端状ベルト5を架設することにより、コンベア本体3の上面側に金属製部材を搬送する搬送路を構成してある。また、コンベア本体3の上面側には金属製部材を誘導加熱する高周波加熱装置1が設置されている。
また、コンベア2は、機枠となるコンベア本体3を平面視略長帯型に構成し、このコンベア本体3の上面側、即ち搬送路を第1の無端状ベルト5の往路側とし、且つ、コンベア本体3の下面側を第1の無端状ベルト5の復路側として構成してある。
【0019】
そして、コンベア本体3の下面側に、第1の無端状ベルト5の復路側と接触して同ベルト(第1の無端状ベルト)5を駆動回転させる第1の回転ローラ6を備え、かつ、第1の回転ローラ6の外周に第1の無端状ベルト5を掛け回すと共に、さらにその上に第2の無端状ベルト7を掛け回し、第2の無端状ベルト7を第1の無端状ベルト5に面接触させる。このように面接触させた状態で、第2の無端状ベルト7を回転駆動させることにより、第1の回転ローラ6を回転駆動させ、これにより第1の無端状ベルト5を駆動回転させる。
【0020】
本実施形態において、第1の無端状ベルト5の材質は、ガラス繊維製又はアラミド繊維製とする。ガラス繊維又はアラミド繊維は、表面が平滑なため、第1の無端状ベルト5が走行する箇所に引っ掛かることがなく、第1の無端状ベルト5上の金属製部材をスムーズに搬送することができる。
上記のような高周波加熱装置による誘導加熱は、金属製部材を例えば20秒という短時間で行うため、通過時間ですべてが決まる。従って、第1の無端状ベルト5を引っ掛からないようにすることは金属製部材ごとの加熱時間のバラツキを発生させないという点で重要である。
【0021】
本実施形態において、ガラス繊維製又はアラミド繊維製の第1の無端状ベルト5は、ガラス繊維又はアラミド繊維で織られた織物からなるメッシュとすることが好ましい。ガラス繊維製又はアラミド繊維製とは、ガラス繊維又はアラミド繊維のみからなるベルトを意味するものではなく、ガラス繊維又はアラミド繊維の表面をフッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)等でコーティングしたものも含む。また、ガラス繊維単独ではなく、ガラス繊維とPTFE等の混合物としてもよく、アラミド繊維と他の繊維の混合物としてもよい。織物ではなく、ガラスマット(不織布)とすることもできる。
ガラス繊維、アラミド繊維は、高周波を吸収し難く、高周波エネルギーによる自己発熱がないので、特に、高周波加熱装置のコンベアベルトの材質として最適である。
【0022】
上記のように、ガラス繊維又はアラミド繊維は、表面が平滑なため、ガラス繊維製又はアラミド繊維製の第1の無端状ベルトは、走行する箇所に引っ掛かることがなく、第1の無端状ベルト5上の金属製部材をスムーズに搬送することができるが、逆に、第1の回転ローラ6と第1の無端状ベルト5の間にスリップを生じるという問題がある。この問題は、本実施形態において、以下に記載するとおり解決できる。
【0023】
本実施形態において、第1の回転ローラ6の外周に第1の無端状ベルト5を掛け回すと共に、さらにその上にゴム製である第2の無端状ベルト7を掛け回し、第2の無端状ベルト7を第1の無端状ベルト5に面接触させている。
したがって、表面が平滑であるガラス繊維製又はアラミド繊維製の第1の無端状ベルト5は、ゴム製である第2の無端状ベルト7と面接触されている。よって、第2の無端状ベルト7がゴム製であるため摩擦係数が高くなると共に、更に、第1の無端状ベルト5と第2の無端状ベルト7は面接触されてるため、第1の無端状ベルト5と第2の無端状ベルト7との密着度を高めることができ、ひいては、第1の無端状ベルト5と第1の回転ローラ6との密着度を高めることができる。従って、第1の回転ローラ6と第1の無端状ベルト5の間にスリップが生じるのを抑制できる。
【0024】
コンベア2において、第1の回転ローラ6の両側に第2の回転ローラ8a、第3の回転ローラ8bを設け、第1の回転ローラ6の下方に第4の回転ローラ9を設けて、第1の回転ローラ6の外周に掛け回した第1の無端状ベルト5上、第2の回転ローラ8aの外周、第4の回転ローラ9の外周、第3の回転ローラ8bの外周及び第1の無端状ベルト5上の順で掛け回し、前記いずれかの回転ローラを駆動ローラとして、第2の無端状ベルト7を回転駆動させる、ことが好ましい。
上記のような構成とすることで、第2の無端状ベルト7によって第1の無端状ベルト5は、第1の回転ローラ6方向にテンションがかかり、ガラス繊維製又はアラミド繊維製の第1の無端状ベルト5と第1の回転ローラ6の外周面との密着度をより上げることができる。
【0025】
次に、第1の回転ローラ6を駆動する駆動機構について説明する。
上記のとおり、第2の無端状ベルト7を回転駆動させるためには、第2の回転ローラ8a、第3の回転ローラ8b、第4の回転ローラ9のいずれかを駆動ローラとすればよいが、以下の実施形態では、第4の回転ローラを駆動ローラとする場合について説明する。
図1において、第4の回転ローラ9が矢印の方向(右回り(時計回り))に回転駆動すると、第2の無端状ベルト7は、第4の回転ローラ9との間に生じる摩擦力により右回り(時計回り)に回転駆動され、外周に第1の無端状ベルト5が掛け回され、さらにその上に第2の無端状ベルト7が掛け回された第1の回転ローラ6は、第2の無端状ベルト7と第1の無端状ベルト5との間に生じる面接触による摩擦力により矢印の方向(左回り(反時計回り)に回転駆動する。
【0026】
そして、第1の無端状ベルト5は、第1の回転ローラ6の外周面との間に生じる摩擦力により左回り(反時計回り)に回転駆動され、第1の無端状ベルト5上の金属製部材が紙面右から左へと搬送される。
上記のように、ガラス繊維製又はアラミド繊維製の第1の無端状ベルト5と第2の無端状ベルト7との密着度を高めることができ、ひいては、第1の無端状ベルト5と第1の回転ローラ6との密着度を高めることができる。そのため、第1の回転ローラ6と第1の無端状ベルト5の間にスリップが生じるのが抑制され、第1の回転ローラ6からの駆動力を第1の無端状ベルト5に適切に伝達できる。従って、金属製部材を安定して搬送することができる。
【0027】
次に、第4の回転ローラ9を駆動する駆動機構について説明する。
本実施形態における第4の回転ローラ9を駆動する駆動機構は、従来の回転ローラの駆動機構と同様である。
第4の回転ローラ9を軸支するベアリング付きの2個の軸受け部(図示なし)を設け、これらの間に、第4の回転ローラ9を水平に横架して回転自在に軸支してある。第4の回転ローラ9は、中空状に形成した回転ローラ本体9aの軸芯部に支軸9bを挿通して成り、この支軸9bの両端部を上記軸受け部に各々嵌入することにより回転自在に軸支してある。
また、第4の回転ローラ9の支軸の一端部は、上記軸受け部を貫通して突出し、その突出部にスプロケット9cを取り付け固定してある。
【0028】
一方、第4の回転ローラ9のスプロケット9cの隣には、減速機付きの駆動モータ10を設置してある。そして、上記減速機の出力軸(図示せず)にスプロケット10cを設けると共に、該スプロケット10cと第4の回転ローラ9のスプロケット9cとの間を無端状のチェーン11にて連絡してある。したがって、駆動モータ10を駆動回転すると、この駆動力がスプロケット10c、チェーン11、スプロケット9cを介して第4の回転ローラ9に伝達され、該回転ローラ9を所定の回転数にて駆動回転させる。
【0029】
第1の回転ローラ6の上方には、2本の従動ローラ12a、12bを、適宜間隔を介して並設することが好ましい。上記のように第1の無端状ベルト5が回転駆動すると、これと同時に、両従動ローラ12a、12bも第1の無端状ベルト5の回転駆動に追従する形で回転する。第1の無端状ベルト5の復路側を、2本の従動ローラ12a、12bの外周の対向する内側に掛け回し、かつ、第1の回転ローラ6の外周に掛け回すことにより、同回転ローラ6の外周面に対して第1の無端状ベルト5を適宜な押圧力により接触させる。なお、第1の無端状ベルト5のテンションを調節する際には、両従動ローラ12a、12bの間隔を狭めたり広げたりすることにより、第1の無端状ベルト5の引き込み具合を増減して、第1の回転ローラ6の外周に加わる押圧力を調節することができる。
【0030】
上記のように構成したコンベア本体3の少なくとも両端部近傍における両側部位には各々脚13a、13b、13c、13dを設ける。すなわち、コンベア本体3は少なくとも4本の脚13により所定の高さに支持される。図1に示されるように、高周波加熱装置1が設置されたコンベア本体3の箇所に、追加の脚を設けて、6本の脚により支持してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の金属製部材の加熱装置は、高周波加熱を利用する様々な分野の金属製部材の加熱装置に用いて、短時間に、均質な製品を得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1:高周波加熱装置
2:コンベア
3:コンベア本体
4a、4b:ローラ
5:第1の無端状ベルト
6:第1の回転ローラ
7:第2の無端状ベルト
8a:第2の回転ローラ
8b:第3の回転ローラ
9:第4の回転ローラ
9a:回転ローラ本体
9b:支軸
9c:スプロケット
10:駆動モータ
10c:スプロケット
11:無端状のチェーン
12a、12b:従動ローラ
13a、13b、13c、13d:脚
図1