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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051157
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】容器および選別方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/08 20060101AFI20230404BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20230404BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20230404BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230404BHJP
【FI】
B65D23/08 Z BRH
B65D23/08 BSF
G09F3/10 J
C09J7/29
C09J7/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161658
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】土橋 英訓
(72)【発明者】
【氏名】小田切 俊
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 彰
【テーマコード(参考)】
3E062
4J004
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AC02
3E062DA02
3E062DA07
3E062JA04
3E062JA08
3E062JB06
3E062JC02
3E062JD10
4J004AB03
4J004CB03
4J004CC03
4J004CE02
4J004CE03
4J004FA01
(57)【要約】
【課題】容器を粉砕して容器片にしたときに、接着材が付着している容器片であることを認識できる容器を実現する。
【解決手段】本発明の一態様のPETボトル容器は、基材(11)と、インキ層(12)と、巻付けラベル(10)の一端部(10a)を前記容器に接着させる第1接着層(13)と、巻付けラベル(10)の他端部を基材(11)に接着させる第2接着層(14)と、を含み、インキ層(12)の基材(11)側とは反対側に第1接着層(13)および第2接着層(14)が位置いている巻付けラベル(10)が巻き付けられており、インキ層(12)と第1接着層(13)との密着力は、インキ層(12)と、基材(11)側との密着力よりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻付けラベルが巻き付けられた容器であって、
前記巻付けラベルは、
基材と、
インキを含むインキ層と、
前記巻付けラベルの一端部を前記容器に接着させる第1接着層と、
前記巻付けラベルの他端部を前記基材に接着させる第2接着層と、を含み、
前記インキ層の前記基材側とは反対側に前記第1接着層および前記第2接着層が位置しており、
前記巻付けラベルを容器から剥がした後の状態において、前記容器に残存した前記第1接着層に前記インキ層の少なくとも一部が付着したままとなる、容器。
【請求項2】
前記インキ層と前記第1接着層との密着力は、前記インキ層と、前記インキ層の前記基材側に位置する層との密着力よりも大きい、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記基材と前記インキ層との間にアルカリ可溶性を有する層を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記基材と前記インキ層との間に、前記インキ層と前記第1接着層とを剥がす力よりも小さい力で破断する層を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記インキ層は、前記インキ層と前記第1接着層とを剥がす力よりも小さい力で破断する、請求項1に記載の容器。
【請求項6】
巻付けラベルが巻き付けられた容器であって、
前記巻付けラベルは、
基材と、
インキを含むインキ層と、
前記巻付けラベルの一端部を前記容器に接着させる第1接着層と、
前記巻付けラベルの他端部を前記容器に接着させる第3接着層と、を含み、
前記インキ層の前記基材側とは反対側に前記第1接着層および前記第3接着層が位置しており、
前記巻付けラベルを容器から剥がした後の状態において、前記容器に残存した前記第1接着層および前記第3接着層に前記インキ層の少なくとも一部が付着したままとなる、容器。
【請求項7】
前記インキ層と前記第1接着層との密着力、および、前記インキ層と前記第3接着層との密着力は、前記インキ層と、前記インキ層の前記基材側に位置する層との密着力よりも大きい、請求項6に記載の容器。
【請求項8】
前記基材と前記インキ層との間にアルカリ可溶性を有する層を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項9】
前記基材と前記インキ層との間に、前記インキ層と前記第1接着層とを剥がす力よりも小さく、かつ、前記インキ層と前記第3接着層とを剥がす力よりも小さい力で破断する層を含む、請求項6に記載の容器。
【請求項10】
前記インキ層は、前記インキ層と前記第1接着層とを剥がす力よりも小さく、かつ、前記インキ層と前記第3接着層とを剥がす力よりも小さい力で破断する、請求項6に記載の容器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の容器から前記巻付けラベルを分離する分離工程と、
前記巻付けラベルが分離された前記容器を容器片に粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程により生じた複数の前記容器片から、前記インキ層が付着している容器片を除外する除外工程と、を含む選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻付けラベルが巻き付けられた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばポリエチレンテレフタレート製ボトル(P1)等のプラスチック製品が広く利用されている。省資源および環境保護の観点等から、PETボトル等のプラスチック製品を再利用することが求められている。
【0003】
プラスチック製品の中でも特にPETボトルの再利用は既に普及している。一方、商品情報等の表示のための印刷が施されたプラスチック製のラベルがPETボトルの胴部に装着されることがある。当該ラベルには、特許文献1のように、接着剤を用いてPETボトルに接着されることによりPETボトルに装着される巻付けラベルが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-3724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された巻付けラベルでは、PETボトルをリサイクルするために、巻付けラベルを剥がした際に、PETボトルに接着剤が残存してしまう。そのため、リサイクルのためにPETボトルを粉砕して容器片にしたときに、接着剤が付着している容器片と、接着剤が付着していない容器片とが混在する。容器片に付着する接着剤は、リサイクル処理における洗浄工程でも、完全に除去することは難しい。接着剤は不純物であり、接着剤が付着している容器片が混在した状態でこれらの容器片からPET樹脂などのリサイクル樹脂を製造すると、リサイクルにより製造された製品の品質が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、容器を粉砕して容器片にしたときに、接着材が付着している容器片であることを認識できる容器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る容器は、巻付けラベルが巻き付けられた容器であって、前記巻付けラベルは、基材と、インキを含むインキ層と、前記巻付けラベルの一端部を前記容器に接着させる第1接着層と、前記巻付けラベルの他端部を前記基材に接着させる第2接着層と、を含み、前記インキ層の前記基材側とは反対側に前記第1接着層および前記第2接着層が位置しており、前記巻付けラベルを容器から剥がした後の状態において、前記容器に残存した前記第1接着層に前記インキ層の少なくとも一部が付着したままとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、容器を粉砕して容器片にしたときに、接着材が付着している容器片であることを認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係るPETボトル容器の正面図である。
図2】上記PETボトル容器に巻き付ける前の巻付けラベルの構成を示す断面図である。
図3】上記PETボトル容器における、巻付けラベルが容器胴部と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
図4】上記PETボトル容器から巻付けラベルを剥がした後のPETボトル容器の第1接着層が接着されていた領域を示す断面拡大図である。
図5】上記PETボトル容器のリサイクル方法の処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態2に係るPETボトル容器に巻き付ける前の巻付けラベルの構成を示す断面図である。
図7】上記PETボトル容器における、巻付けラベルAが容器胴部と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
図8】上記PETボトル容器から巻付けラベルを剥がした後のPETボトル容器の第1接着層および第3接着層が接着されていた領域を示す断面拡大図である。
図9】本発明の実施形態3に係るPETボトル容器に巻き付ける前の巻付けラベルの構成を示す断面図である。
図10】上記PETボトル容器における、巻付けラベルが容器胴部と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
図11】上記PETボトル容器をアルカリ性の溶液で処理した後のPETボトル容器の第1接着層が接着されていた領域を示す断面拡大図である。
図12】本発明の実施形態4に係るPETボトル容器に巻き付ける前の巻付けラベルの構成を示す断面図である。
図13】上記PETボトル容器における、巻付けラベルが容器胴部と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
図14】上記PETボトル容器から巻付けラベルを物理的に剥がした後のPETボトル容器の第1接着層が接着されていた領域を示す断面拡大図である。
図15】本発明の実施形態5に係るPETボトル容器1に巻き付ける前の巻付けラベル10Dの構成を示す断面図である。
図16】上記PETボトル容器における、巻付けラベルが容器胴部と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
図17】上記PETボトル容器から巻付けラベルを剥がした後のPETボトル容器の第1接着層および第3接着層が接着されていた領域を示す断面拡大図である。
図18】本発明の実施形態6に係るPETボトル容器1に巻き付ける前の巻付けラベル10Eの構成を示す断面図である。
図19】上記PETボトル容器における、巻付けラベルが容器胴部と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
図20】上記PETボトル容器から巻付けラベルを物理的に剥がした後のPETボトル容器の第1接着層が接着されていた領域を示す断面拡大図である。
図21】本発明の実施形態7に係るPETボトル容器に巻き付ける前の巻付けラベルの構成を示す断面図である。
図22】上記PETボトル容器における、巻付けラベルが容器胴部と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
図23】上記PETボトル容器から巻付けラベルを剥がした後のPETボトル容器の第1接着層および第3接着層が接着されていた領域を示す断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
<PETボトル容器1>
図1は、本実施形態におけるPETボトル容器1の正面図である。図1に示すように、PETボトル容器1は、容器本体2と、巻付けラベル10とを備えている。
【0012】
容器本体2は、ポリエチレンテレフタレートにより構成されている。容器本体2は、容器胴部3を有している。容器胴部3には、巻付けラベル10が巻き付けられている。
【0013】
図2は、PETボトル容器1に巻き付ける前の巻付けラベル10の構成を示す断面図である。図3は、PETボトル容器1における、巻付けラベル10が容器胴部3と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
【0014】
図2および図3に示すように、巻付けラベル10は、基材11と、インキ層12と、第1接着層13と、第2接着層14とを有している。
【0015】
基材11は、従来公知のものを使用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂などの合成樹脂の2軸延伸フィルム、合成樹脂フィルムの積層フィルム、紙、和紙、合成紙、発泡樹脂シート、不織布など、またはこれらの積層フィルムなどを用いることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート製容器(PETボトル)に対して巻付けラベル10を用いる場合において、装着性やリサイクル時の比重差分別等の観点からは、ポリプロピレンフィルムを用いることが好ましく、フィルム厚みとしては20~60μmが好ましい。また、PETボトル)に対して巻付けラベル10を用いる同場合において、ラベル自体のリサイクルの観点からは、ポリエステル系フィルムを用いることが好ましく、フィルム厚みとしては10~50μmが好ましい。
【0016】
インキ層12は、インキにより商品名、絵柄などの所定の意匠が印刷された層である。インキ層12は、水性インキまたは油性インキによって形成されている。インキ層12を形成する水性インキおよび油性インキとしては、ラベル印刷などに用いられる従来公知のインキを使用することができる。油性インキとしては、例えば、顔料、染料などの着色剤、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などのバインダー樹脂および有機溶剤に添加物を配合したものを使用してもよい。また、水性インキとして、着色剤に、水溶性または水分散性のバインダー樹脂、添加剤などを配合したものを使用してもよい。添加剤としては、滑剤、ブロッキング防止剤、沈降防止剤などが挙げられる。
【0017】
第1接着層13および第2接着層14は、巻付けラベル10をPETボトル容器1に巻き付けるために、巻付けラベルの端部を接着させる接着層である。第1接着層13および第2接着層14は、図2に示すように、インキ層12の基材11側とは反対側に位置している。
【0018】
第1接着層13および第2接着層14は、例えば、室温では接着性を示さず且つ加熱されることによって接着性を発現する感熱性接着剤を用いることができる。このような感熱性接着剤としては、例えば、ホットメルト型接着剤、パートコート型感熱接着剤、ディレードタック型感熱接着剤などを適宜用いることができる。なお、第1接着層13および第2接着層14として用いられる接着剤は、感熱性接着剤以外に、感圧型接着剤などを用いることもできる。第1接着層13および第2接着層14は、互いに異なる接着剤によって構成されてもよい。
【0019】
図3に示すように、第1接着層13は、巻付けラベル10の一端部10a、より詳細には、インキ層12の一端部を容器胴部3に接着させる。第2接着層14は、巻付けラベル10の他端部10b、より詳細には、インキ層12の他端部を、第1接着層13が巻付けラベル10の一端部10aを接着させている領域において接着させる。これにより、巻付けラベル10が容器胴部3に巻き付けられて装着された状態となる。
【0020】
本実施形態におけるPETボトル容器1では、インキ層12と第1接着層13との密着力が、インキ層12と基材11との密着力よりも大きくなっている。インキ層12と第1接着層13との密着力およびインキ層12と基材11との密着力は、基材11、インキ層12、および第1接着層13を構成する材料の組合せを適宜行うことにより設定することができる。
【0021】
上記密着力は、例えば次のようにして比較することができる。すなわち、基材11にインキ層12を形成した後に、インキ層12とPETシートとを第1接着層13で接着させる。その後、接着部分を180度方向に剥離し、剥離した層間が、他方の層間よりも密着力の小さい層間である。
【0022】
図4は、PETボトル容器1から巻付けラベル10を物理的に(例えば、手で)剥がした後のPETボトル容器1の第1接着層13が接着されていた領域を示す断面拡大図である。上述したように、インキ層12と第1接着層13との密着力がインキ層12と基材11との密着力よりも大きくなっている。そのため、物理的に巻付けラベル10をPETボトル容器1から剥がす際に、インキ層12と第1接着層13との間ではなくインキ層12と基材11との間において巻付けラベル10が分離する。これにより、図4に示すように、巻付けラベル10をPETボトル容器1から剥がした後の状態において、PETボトル容器1に第1接着層13が残存するとともに、第1接着層13にインキ層12が付着したままとなる。
【0023】
なお、本実施形態におけるPETボトル容器1では、インキ層12と基材11とが接触している構成であったが、本発明のPETボトル容器1はこれに限られない。例えば、インキ層12と基材11との間に他の層を含んでいてもよい。この場合、PETボトル容器は、インキ層12と第1接着層13との密着力は、インキ層12と、インキ層12の基材11側に位置する層(上記の他の層)との密着力よりも大きい構成となっていればよい。また、第2接着層14と基材11との間にインキ層12が設けられていなくてもよい。すなわち、第2接着層14は、基材11と直接接するように設けられてもよい。当該構成は、後述する実施形態3、4および6についても同様である。
【0024】
<リサイクル方法>
次に、本実施形態におけるPETボトル容器1のリサイクル方法について説明する。図5は、本実施形態におけるPETボトル容器1のリサイクル方法の処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態におけるPETボトル容器1のリサイクル方法では、図5に示すように、まず、PETボトル容器1から巻付けラベル10を分離する(ステップS1、分離工程)。本実施形態の分離工程S1では、物理的に巻付けラベル10からPETボトル容器1から分離させる。これにより、図4に示すように、PETボトル容器1に残存した第1接着層13にインキ層12が付着したままの状態となる。
【0025】
次に、巻付けラベル10は剥がしたPETボトル容器1を複数の容器片に粉砕する(ステップS2、粉砕工程)。粉砕工程S2では、例えば、従来用いられている破砕機を用いてPETボトル容器1を容器片に粉砕する。
【0026】
ここで、粉砕工程S2によって生じた複数の容器片には、第1接着層13が付着している容器片と、第1接着層13が付着していない容器片とを含んでいる。PETボトル容器をリサイクルする場合、接着層が付着している容器片が材料の一部に含まれていると、接着層が不純物となってしまい、リサイクルにより製造されるPETボトル容器の品質が低下してしまう。そのため、接着層が付着している容器片を除外し、接着層が付着していない容器片のみを材料として用いることが好ましい。
【0027】
そのため、本実施形態では、粉砕工程S2により生じた複数の容器片から第1接着層13が付着している容器片を除外する除外工程S3を粉砕工程S2の後に行う。除外工程S3では、粉砕工程S2により生じた複数の容器片から、インキ層12が付着している容器片を除外する。除外工程S3では、例えば、互いに重ならないように容器片を並べ、カラーセンサを用いてインキ層12が付着している容器片を特定し、特定した容器片に対してエアノズルを用いて空気を吹き付けて当該容器片を吹き飛ばすことによりインキ層12が付着している容器片を除外してもよい。カラーセンサなどによる容器片の選別の精度向上の観点から、第1接着層13条に位置するインキ層12は、容器本体2と異なる色であることが好ましく、特に、カラーセンサなどでの識別性に優れた色であることが好ましい。
【0028】
このように、除外工程S3では、粉砕工程S2により生じた複数の容器片から、インキ層12が付着している容器片を除外する。これにより、粉砕工程S2により生じた複数の容器片から第1接着層13が付着している容器片を除外することができる。分離工程S1、粉砕工程S2および除外工程S3は、PETボトル容器1を粉砕することにより生じた複数の容器片のうち第1接着層13が付着していない容器片を選別する選別方法である。
【0029】
次に、第1接着層13が付着している容器片が除外された容器片を少なくとも材料の一部として用いてPETボトル容器を製造する(容器製造工程、ステップS4)。容器製造工程S4は、公知の技術を用いることができる。なお、本実施形態では、リサイクルによりPETボトル容器を製造する態様について説明したが、第1接着層13が付着している容器片が除外された容器片を少なくとも材料の一部として用いてPETボトル容器以外の物品を製造してもよい。例えば、プラスチック製品の材料としての樹脂ペレット、樹脂フラフなどを製造してもよい。
【0030】
以上のように、本実施形態におけるPETボトル容器1は、インキ層12と第1接着層13との密着力がインキ層12と基材11との密着力よりも大きい巻付けラベル10が巻き付けられている。これにより、巻付けラベル10をPETボトル容器1から剥がした後の状態において、PETボトル容器1に残存した第1接着層13にインキ層12が付着したままとなる。そのため、PETボトル容器1をリサイクルするためにPETボトル容器1を粉砕して容器片にしたときに、第1接着層13が付着している容器片であることを認識することができる。そのため、第1接着層13が付着している容器片を選択的に除外することが可能となり、リサイクルして製造した製品の品質を向上させることができる。また、PETボトル容器1では、PETボトル容器1に残存した第1接着層13に必ずインキ層12が付着するため、第1接着層13が付着している容器片であることを確実に認識することができる。
【0031】
なお、巻付けラベル10が装着される物品は、PETボトル容器1に限定されない。物品は、巻付けラベル10が装着されて使用されるものであればよく、PETボトル以外の容器であってもよい。また、本実施形態によれば、PETボトル容器1のリサイクル率を向上させることが可能となるため、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0032】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0033】
図6は、本実施形態におけるPETボトル容器1に巻き付ける前の巻付けラベル10Aの構成を示す断面図である。図7は、PETボトル容器1における、巻付けラベル10Aが容器胴部3と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
【0034】
図6および図7に示すように、巻付けラベル10Aは、実施形態1における巻付けラベル10が有する第2接着層14に代えて第3接着層15を有している。第3接着層15は、第1接着層13と同じ物質にて構成されている。
【0035】
図7に示すように、第1接着層13は、巻付けラベル10Aの一端部10Aa、より詳細には、インキ層12の一端部を容器胴部3に接着させる。第2接着層14は、巻付けラベル10Aの他端部10Ab、より詳細にはインキ層12の他端部を、第1接着層13が巻付けラベル10Aの一端部10Aaを接着させている領域に近接する領域において容器胴部3に接着させる。これにより、巻付けラベル10Aが容器胴部3に巻き付けられて装着された状態となる。
【0036】
本実施形態におけるPETボトル容器1では、実施形態1におけるPETボトル容器1と同様にインキ層12と第1接着層13との密着力がインキ層12と基材11との密着力よりも大きくなっているとともに、インキ層12と第3接着層15との密着力がインキ層12と基材11との密着力よりも大きくなっている。
【0037】
図8は、PETボトル容器1から巻付けラベル10Aを物理的に剥がした後のPETボトル容器1の第1接着層13および第3接着層15が接着されていた領域を示す断面拡大図である。上述したように、インキ層12と第1接着層13との密着力、および、インキ層12と第3接着層15との密着力が、インキ層12と基材11との密着力よりも大きくなっている。そのため、物理的に巻付けラベル10AをPETボトル容器1から剥がす際に、インキ層12と基材11との間において巻付けラベル10Aが分離する。これにより、図8に示すように、巻付けラベル10AをPETボトル容器1から剥がした後の状態において、PETボトル容器1に残存した第1接着層13および第3接着層15にインキ層12が付着したままとなる。そのため、PETボトル容器1をリサイクルするためにPETボトル容器1を粉砕して容器片にしたときに、第1接着層13または第3接着層15が付着している容器片であることを認識することができる。そのため、第1接着層13または第3接着層15が付着している容器片を選択的に除外することが可能となり、リサイクルして製造した製品の品質を向上させることができる。
【0038】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。図9は、本実施形態におけるPETボトル容器1に巻き付ける前の巻付けラベル10Bの構成を示す断面図である。図10は、PETボトル容器1における、巻付けラベル10Bが容器胴部3と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
【0039】
図9および図10に示すように、巻付けラベル10Bは、実施形態1における巻付けラベル10の構成に加えてアルカリ可溶層16を有している。図9および図10に示すように、アルカリ可溶層16は、インキ層12と基材11との間に位置する層である。アルカリ可溶層16は、アルカリ可溶性を有している。
【0040】
図10に示すように、本実施形態におけるPETボトル容器1では、実施形態1におけるPETボトル容器1と同様に、巻付けラベル10Bの一端部10Baが第1接着層13により容器胴部3に接着されており、巻付けラベル10Bの他端部10Bbが第2接着層14により基材11に接着されている。
【0041】
図11は、PETボトル容器1をアルカリ性の溶液で処理(例えば、アルカリ性の溶液への浸漬など)した後のPETボトル容器1の第1接着層13が接着されていた領域を示す断面拡大図である。本実施形態におけるPETボトル容器1は、インキ層12と基材11との間にアルカリ可溶層16を有している。そのため、PETボトル容器1をアルカリ性の溶液で処理する際に、アルカリ可溶層16が溶解することにより、巻付けラベル10BがPETボトル容器1から分離される。
【0042】
その結果、図11に示すように、巻付けラベル10BをPETボトル容器1から剥がした後の状態において、PETボトル容器1に第1接着層13およびインキ層12が残存する。すなわち、第1接着層13にインキ層12が付着したままとなる。そのため、PETボトル容器1をリサイクルするためにPETボトル容器1を粉砕して容器片にしたときに、第1接着層13が付着している容器片であることを認識することができる。そのため、第1接着層13が付着している容器片を選択的に除外することが可能となり、リサイクルして製造した製品の品質を向上させることができる。なお、インキ層12は、インキ層12自体で外径を維持できる層ではなく、基材11などの被着対象物があることによって層として存在できるようである。そのため、巻付けラベル10BをPETボトル容器1から剥がした後の状態では、図11に示すように、インキ層12は、第1接着層13上には維持されるが、それ以外の部分では層形状を維持することができない。
【0043】
巻付けラベル10BをPETボトル容器1から剥がすために用いられるアルカリ性溶液は、アルカリ可溶層16を溶解させることが可能であれば特に限定されず、アルカリ性物質を含有するアルカリ性の水溶液であればよい。アルカリ性溶液は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などを用いることができる。アルカリ溶液中のアルカリ性物質の濃度は、操作性、または作業性等を損なわない範囲で適宜選択することができ、例えば、0.5~6重量%程度とすることが好ましい。アルカリ性溶液による処理は、例えば、PETボトル容器1をアルカリ性溶液に1~20分程度浸漬させることにより行うことができる。アルカリ性溶液の好ましい温度は、50~95℃である。
【0044】
本実施形態におけるPETボトル容器1を用いたリサイクル方法では、分離工程S1において、実施形態1において説明した物理的に巻付けラベル10からPETボトル容器1から分離させる方法の代わりに、アルカリ性の溶液で処理することにより、巻付けラベル10BをPETボトル容器1から分離させることができる。
【0045】
本発明の一態様では、上記の構成に加えて、インキ層12と第1接着層13との密着力がインキ層12とアルカリ可溶層16との密着力よりも大きくなっていてもよい。上記の構成によれば、PETボトル容器1から巻付けラベル10Aを物理的に剥がす場合、および、産業的に回収された大量の廃棄されたPETボトル容器1に対してアルカリ性溶液を用いて化学的に大量に処理する場合のいずれの場合にもいても、PETボトル容器1に第1接着層13およびインキ層12を残存させることができる。
【0046】
本発明の一態様では、インキ層12とアルカリ可溶層16との間に他の層を有していてもよく、基材11とアルカリ可溶層16との間に他の層を有していてもよい。
【0047】
また、本実施形態において説明したアルカリ可溶層を用いる方法は、実施形態2で説明した、巻付けラベル10Aの両端部が接着層により容器胴部3に接着される構成に対しても適用することができる。
【0048】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。図12は、本実施形態におけるPETボトル容器1に巻き付ける前の巻付けラベル10Cの構成を示す断面図である。図13は、PETボトル容器1における、巻付けラベル10Cが容器胴部3と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
【0049】
図12および図13に示すように、巻付けラベル10Cは、実施形態1における巻付けラベル10の構成に加えて破断層17を有している。図12および図13に示すように、破断層17は、インキ層12と基材11との間に位置する層である。破断層17は、インキ層12と第1接着層13とを剥がす力よりも小さい力で破断するように構成されている。
【0050】
「破断層17が破断する力」と「インキ層12と第1接着層13とを剥がす力」とは、例えば次のようにして比較することができる。すなわち、基材11に、破断層17およびインキ層12をこの順に形成した後に、インキ層12とPETシートとを第1接着層13で接着させる。その後、接着部分を180度方向に力を印加し、破断層17が破断するか、または、インキ層12と第1接着層13との間で剥離するかによって比較することができる。
【0051】
図13に示すように、本実施形態におけるPETボトル容器1では、実施形態1におけるPETボトル容器1と同様に、巻付けラベル10Cの一端部10Caが第1接着層13により容器胴部3に接着されており、巻付けラベル10Cの他端部10Cbが第2接着層14により基材11に接着されている。
【0052】
図14は、PETボトル容器1から巻付けラベル10Cを物理的に剥がした後のPETボトル容器1の第1接着層13が接着されていた領域を示す断面拡大図である。本実施形態におけるPETボトル容器1は、インキ層12と第1接着層13とを剥がす力よりも小さい力で破断するように構成された破断層17がインキ層12と基材11との間に有している。そのため、物理的に巻付けラベル10CをPETボトル容器1から剥がす際に、インキ層12が第1接着層13から剥がれずに、破断層17が破断する。
【0053】
その結果、図14に示すように、巻付けラベル10CをPETボトル容器1から剥がした後の状態において、PETボトル容器1に第1接着層13、インキ層12および破断層17が残存し、第1接着層13にインキ層12が付着したままとなる。そのため、PETボトル容器1をリサイクルするためにPETボトル容器1を粉砕して容器片にしたときに、第1接着層13が付着している容器片であることを認識することができる。そのため、第1接着層13が付着している容器片を選択的に除外することが可能となり、リサイクルして製造した製品の品質を向上させることができる。
【0054】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。図15は、本実施形態におけるPETボトル容器1に巻き付ける前の巻付けラベル10Dの構成を示す断面図である。図16は、PETボトル容器1における、巻付けラベル10Dが容器胴部3と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
【0055】
図15および図16に示すように、巻付けラベル10Dは、実施形態2における巻付けラベル10Aの構成に加えて破断層18を有している。図15および図16に示すように、破断層18は、インキ層12と基材11との間に位置する層である。破断層18は、基材11と第1接着層13とを剥がす力よりも小さく、かつ、基材11と第3接着層15とを剥がす力よりも小さい力で破断するように構成されている。
【0056】
図16に示すように、本実施形態におけるPETボトル容器1では、実施形態2におけるPETボトル容器1と同様に、巻付けラベル10Dの一端部10Daが第1接着層13により容器胴部3に接着されており、巻付けラベル10Dの他端部10Dbが第3接着層15により容器胴部3に接着されている。
【0057】
図17は、PETボトル容器1から巻付けラベル10Dを物理的に剥がした後のPETボトル容器1の第1接着層13および第3接着層15が接着されていた領域を示す断面拡大図である。本実施形態におけるPETボトル容器1は、インキ層12と第1接着層13とを剥がす力よりも小さく、かつ、基材11と第3接着層15とを剥がす力よりも小さい力で破断するように構成された破断層18がインキ層12と基材11との間に有している。そのため、物理的に巻付けラベル10DをPETボトル容器1から剥がす際に、インキ層12が第1接着層13および第3接着層15から剥がれずに、破断層18が破断する。破断層18としては、上述の破断層17と同様の層が例示される。
【0058】
その結果、図17に示すように、巻付けラベル10DをPETボトル容器1から剥がした後の状態において、PETボトル容器1に第1接着層13、第3接着層15、インキ層12および破断層18が残存し、第1接着層13および第3接着層15にインキ層12が付着したままとなる。そのため、PETボトル容器1をリサイクルするためにPETボトル容器1を粉砕して容器片にしたときに、第1接着層13または第3接着層15が付着している容器片であることを認識することができる。そのため、第1接着層13または第3接着層15が付着している容器片を選択的に除外することが可能となり、リサイクルして製造した製品の品質を向上させることができる。
【0059】
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。図18は、本実施形態におけるPETボトル容器1に巻き付ける前の巻付けラベル10Eの構成を示す断面図である。図19は、PETボトル容器1における、巻付けラベル10Eが容器胴部3と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
【0060】
図18および図19に示すように、巻付けラベル10Eは、実施形態1における巻付けラベル10のインキ層12に代えてインキ層12Aを有している。インキ層12Aは、インキ層12Aと第1接着層13とを剥がす力よりも小さい力で破断するように構成されている。
【0061】
図19に示すように、本実施形態におけるPETボトル容器1では、巻付けラベル10Eの一端部10Eaが第1接着層13により容器胴部3に接着されており、巻付けラベル10Eの他端部10Ebが第2接着層14により基材11に接着されている。
【0062】
図20は、PETボトル容器1から巻付けラベル10Eを物理的に剥がした後のPETボトル容器1の第1接着層13が接着されていた領域を示す断面拡大図である。本実施形態におけるPETボトル容器1は、インキ層12Aと第1接着層13とを剥がす力よりも小さい力で破断するように構成されたインキ層12Aを有している。そのため、物理的に巻付けラベル10EをPETボトル容器1から剥がす際に、インキ層12Aが第1接着層13から剥がれずに、インキ層12Aが破断する。
【0063】
その結果、図20に示すように、巻付けラベル10EをPETボトル容器1から剥がした後の状態において、PETボトル容器1に第1接着層13およびインキ層12Aの一部が残存し、第1接着層13にインキ層12Aの一部が付着したままとなる。そのため、PETボトル容器1をリサイクルするためにPETボトル容器1を粉砕して容器片にしたときに、第1接着層13が付着している容器片であることを認識することができる。そのため、第1接着層13が付着している容器片を選択的に除外することが可能となり、リサイクルして製造した製品の品質を向上させることができる。
【0064】
〔実施形態7〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。図21は、本実施形態におけるPETボトル容器1に巻き付ける前の巻付けラベル10Fの構成を示す断面図である。図22は、PETボトル容器1における、巻付けラベル10Fが容器胴部3と接着している領域周辺を拡大した断面図である。
【0065】
図21および図22に示すように、巻付けラベル10Fは、実施形態2における巻付けラベル10Aのインキ層12に代えてインキ層12Bを有している。インキ層12Bは、インキ層12Bと第1接着層13とを剥がす力よりも小さく、かつ、インキ層12Bと第3接着層15とを剥がす力よりも小さい力で破断するように構成されている。
【0066】
図22に示すように、本実施形態におけるPETボトル容器1では、巻付けラベル10Fの一端部10Faが第1接着層13により容器胴部3に接着されており、巻付けラベル10Fの他端部10Fbが第3接着層15により容器胴部3に接着されている。
【0067】
図23は、PETボトル容器1から巻付けラベル10Fを物理的に剥がした後のPETボトル容器1の第1接着層13および第3接着層15が接着されていた領域を示す断面拡大図である。本実施形態におけるPETボトル容器1は、インキ層12Bと第1接着層13とを剥がす力よりも小さく、かつ、インキ層12Bと第3接着層15とを剥がす力よりも小さい力で破断するように構成されたインキ層12Bを有している。そのため、物理的に巻付けラベル10FをPETボトル容器1から剥がす際に、インキ層12Bが第1接着層13および第3接着層15から剥がれずに、インキ層12Bが破断する。
【0068】
その結果、図23に示すように、巻付けラベル10FをPETボトル容器1から剥がした後の状態において、PETボトル容器1に第1接着層13、第3接着層15およびインキ層12Bの一部が残存し、第1接着層13および第3接着層15にインキ層12Bの一部が付着したままとなる。そのため、PETボトル容器1をリサイクルするためにPETボトル容器1を粉砕して容器片にしたときに、第1接着層13または第3接着層15が付着している容器片であることを認識することができる。そのため、第1接着層13または第3接着層15が付着している容器片を選択的に除外することが可能となり、リサイクルして製造した製品の品質を向上させることができる。
【0069】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 PETボトル容器
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F 巻付けラベル
11 基材
12、12A、12B インキ層
13 第1接着層
14 第2接着層
15 第3接着層
16 アルカリ可溶層
17、18 破断層
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