(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051168
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】接合用ボルトの判定装置
(51)【国際特許分類】
E04G 23/00 20060101AFI20230404BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20230404BHJP
E04B 1/48 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
E04G23/00 ESW
G01M99/00 Z
E04B1/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161679
(22)【出願日】2021-09-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ジョイントボックス
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 淳司
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓久
(72)【発明者】
【氏名】今仲 雅之
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】白井 真彦
【テーマコード(参考)】
2E125
2E176
2G024
【Fターム(参考)】
2E125CA01
2E176AA00
2E176BB38
2G024AD34
2G024AD35
2G024CA22
(57)【要約】
【課題】梁および柱を接合する接合用ボルトに適切な仕様のボルトが使用されているかを判定することができる接合用ボルトの判定装置を提供する。
【解決手段】判定装置10は、全体画像G1から、梁4、柱3、および仕様に合わせたボルト51、52に合わせた領域4R、3R、51R、52Rを検出する領域検出部11と、柱3の領域3Rから、柱3に沿った柱3の近似直線3Lを算出する柱直線算出部12と、梁4の領域に関する情報と、柱3の近似直線3Lとに基づいて、接合用ボルト51Aを特定する接合用ボルト特定部13と、特定した接合用ボルト51Aが、適切な仕様のボルト51であるかを判定する仕様判定部14と、を少なくとも備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁および柱を含む全体画像から、前記全体画像に含まれるボルトのうち、前記梁および前記柱を接合する接合用ボルトが適切な仕様のボルトであるかを判定する接合用ボルトの判定装置であって、
前記全体画像から、前記梁、前記柱、および前記仕様に合わせた前記ボルトの領域を検出する領域検出部と、
前記柱の領域から、前記柱に沿った柱の近似直線を算出する柱直線算出部と、
前記梁の領域に関する情報と、前記柱の近似直線とに基づいて、前記接合用ボルトを特定する接合用ボルト特定部と、
特定した前記接合用ボルトが、適切な仕様のボルトであるかを判定する仕様判定部と、を少なくとも備えることを特徴とする接合用ボルトの判定装置。
【請求項2】
前記接合用ボルト特定部は、前記梁の領域に関する情報として、前記梁に沿った梁の近似直線を算出し、
前記梁の近似直線と前記柱の近似直線の交点と、前記ボルトの領域との距離から、前記接合用ボルトを特定することを特徴とする請求項1に記載の接合用ボルトの判定装置。
【請求項3】
前記接合用ボルト特定部は、前記梁の領域に関する情報として、前記梁の領域の境界線を抽出し、
前記梁の境界線と前記柱の近似直線の交点と、前記ボルトの領域との距離から、前記接合用ボルトを特定することを特徴とする請求項1に記載の接合用ボルトの判定装置。
【請求項4】
前記接合用ボルト特定部は、前記柱の領域の重心を算出し、前記ボルトの領域のうち、前記交点および前記重心に近い領域のボルトを、前記柱を接合する接合用ボルトであると特定することを特徴とする請求項2または3に記載の接合用ボルトの判定装置。
【請求項5】
前記接合用ボルト特定部は、前記ボルトの領域のうち、前記柱の近似直線および前記交点に近い領域のボルトを、前記柱を接合する接合用ボルトであると特定することを特徴とする請求項2または3に記載の接合用ボルトの判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁および柱を接合する接合用ボルトが適切な仕様のボルトであるかを判定する接合用ボルトの判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工事現場などにおいて、施工物の三次元形状を測定する三次元形状測定装置が利用されている。たとえば、特許文献1では、三次元形状測定装置から、工事現場の工事の状況を把握する状況把握システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すシステムでは、工事現場の工事の状況を把握することはできるが、梁および柱を接合する接合用ボルトに、適切な仕様のボルトが使用されたかまでは、把握できない。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、梁および柱を接合する接合用ボルトに適切な仕様のボルトが使用されているかを判定することができる接合用ボルトの判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係る接合用ボルトの判定装置は、梁および柱を含む全体画像から、前記全体画像に含まれるボルトのうち、前記梁および前記柱を接合する接合用ボルトが適切な仕様のボルトであるかを判定する接合用ボルトの判定装置であって、前記全体画像から、前記梁、前記柱、および前記仕様に合わせた前記ボルトの領域を検出する領域検出部と、前記柱の領域から、前記柱に沿った柱の近似直線を算出する柱直線算出部と、前記梁の領域に関する情報と、前記柱の近似直線とに基づいて、前記接合用ボルトを特定する接合用ボルト特定部と、特定した前記接合用ボルトが、適切な仕様のボルトであるかを判定する仕様判定部と、を少なくとも備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、まず、領域検出部により、全体画像から、梁、柱、および仕様に合わせたボルト(仕様ごとのボルト)の領域を検出するので、梁、柱、および仕様に合わせたボルトごとの検出された領域において、その検出された領域が、どの部材に対応しているかを識別することができる。
【0008】
次に、柱直線算出部で、柱の領域から、柱に沿った柱の近似直線を算出する。検出した領域のうち、水平方向に沿って二次元的に配置される梁に比べて柱は、鉛直方向に沿ってのみ配置されるため、柱の領域から、精度の高い柱の近似直線を算出することができる。
【0009】
次に、接合用ボルト特定部により、接合用ボルトを、柱の近似直線を利用して特定しているので、複数のボルトの領域から、接合用ボルトを精度良く特定することができる。このような結果、仕様判定部により、接合用ボルトが、適切な仕様のボルトであるかを精度良く判定することができる。
【0010】
さらに好ましい態様としては、前記接合用ボルト特定部は、前記梁の領域に関する情報として、前記梁に沿った梁の近似直線を算出し、前記梁の近似直線と前記柱の近似直線の交点と、前記ボルトの領域との距離から、前記接合用ボルトを特定する。
【0011】
この態様によれば、たとえば、梁の近似直線と柱の近似直線との交点に近い位置には、接合用ボルトの領域が存在することから、この交点と各ボルトの領域との距離から、たとえば所定の距離の範囲内に存在する領域のボルトを、接合用ボルトとして特定することができる。
【0012】
さらに別の好ましい態様としては、前記接合用ボルト特定部は、前記梁の領域に関する情報として、前記梁の領域の境界線を抽出し、前記梁の境界線と前記柱の近似直線の交点と、前記ボルトの領域との距離から、前記接合用ボルトを特定する。
【0013】
この態様によれば、水平方向に沿って二次元的に配置される梁の領域は、その形状が複雑となるため、梁の領域の境界線を抽出し、この梁の境界線と柱の近似直線との交点を利用するので、より正確かつ簡単に接合用ボルトを特定することができる。
【0014】
さらに、好ましい態様としては、前記接合用ボルト特定部は、前記柱の領域の重心を算出し、前記ボルトの領域のうち、前記交点および前記重心に近い領域のボルトを、前記柱を接合する接合用ボルトであると特定する。
【0015】
この態様によれば、梁の近似直線と柱の近似直線との交点または梁の境界線と柱の近似直線との交点から近いボルトの領域が複数存在することがある場合、柱の領域の重心を利用することにより、柱を接合する接合用ボルトをより正確に特定することができる。
【0016】
さらに別の好ましい態様として、前記接合用ボルト特定部は、前記ボルトの領域のうち、前記柱の近似直線および前記交点に近い領域のボルトを、前記柱を接合する接合用ボルトであると特定する。
【0017】
この態様によれば、柱の近似直線および交点に近い領域のボルト、すなわち、柱の近似直線および交点に対して所定の距離の範囲内にあり、かつ交点に対して所定の範囲内にあるボルトは、柱を接合する接合用ボルトである可能性が高いため、柱を接合する接合用ボルトをより正確に特定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、梁および柱を接合する接合用ボルトに適切な仕様のボルトが使用されているかを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る接合用ボルトで接合された梁と柱を含む施工途中の建物の一部と、判定装置の装置概略図を示した模式図である。
【
図3A】撮像装置により撮像した全体画像の模式図である。
【
図3B】
図3Aの全体画像に対して各部材の領域を検出した領域検出画像の模式図である。
【
図3C】
図3Bに対して、柱および梁の領域を検出し、梁および柱の近似直線を設定した図である。
【
図3D】
図2に示す接合用ボルト特定部の特定方法を説明するため説明図である。
【
図5A】
図3Bに対して、柱および梁の領域を検出し、柱の近似直線と梁の境界線を設定した図である。
【
図5B】
図2に示す接合用ボルト特定部の変形例に係る特定方法を説明するため説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に
図1~
図5を参照しながら、本実施形態に係る接合用ボルトの判定装置10を説明する。
【0021】
1.建物1の柱3および梁4の接合構造等について
本実施形態では、たとえば施工途中などの建物1において、柱と梁の接合用ボルトに適切な仕様のボルトが使用されているかの判定を行うものである。建物1には、柱3が立設されており、ジョイントボックス(柱3と梁4とを接合する柱梁接合部材)6を介して梁4に接合されている。梁4には、鉛直方向にスタッド(間柱)9が配置されて、水平方向には、ブレス(筋交い)7が固定されている。
【0022】
ここで、柱3は、ジョイントボックス6に接合用ボルト51Aで接合されており、梁4は、ジョイントボックス6に接合用ボルト51Bで接合されている。さらに、ブレス7は、固定ボルト52Aにより、梁4のフランジ部分に取り付けられている。本実施形態では、接合用ボルト51A、51Bおよび柱3に取り付けられたボルト51Cは、高強度ボルト51(以下「ボルト51」ということもある)であり、固定ボルト52Aおよび別の固定ボルト52Bは、普通ボルト52(以下「ボルト52」ということもある)であり、ボルトの仕様が異なる。
【0023】
なお、高強度ボルト51と普通ボルト52とは、撮像装置20で撮像した画像において、高強度ボルト51の画像と普通ボルト52の画像とが物体検出等により識別できるように、色が異なっていてもよく、たとえば、ボルト頭部に印を設けたり、形状等を変更したりしてもよい。
【0024】
ここで、柱3等の接合用ボルト51Aとして、高強度ボルト51を使用すべき箇所に、普通ボルト52が使用された場合、本来の設定されている柱3の接合強度が得られないため、好ましくない。そこで、以下に示す判定装置10により、ボルトの仕様が適正であるかの判定を行う。
【0025】
2.接合用ボルト51Aの判定装置10のハードウエア構成について
判定装置10は、ハードウエアとして、ROM、RAM等で構成され、たとえば機械学習により作成された部材の判定および識別等のプログラム等が記録された記憶部10Aと、これらのプログラムを実行する演算部10Bと、を備えている。
【0026】
判定装置10には、入力装置31と出力装置32とが接続されている。本実施形態では、入力装置31と出力装置32とが一体となったタッチパネルディスプレイであってもよい。入力装置31を介して、たとえば、ボルト51、52の特定条件、建物1の仕様および階数に応じた接合用ボルト51A、51Bの仕様等のデータが入力される。本実施形態では、入力装置31を介して、撮像装置20で撮像した画像データが入力されてもよい。入力装置31で入力されたデータは、記憶部10Aに記憶される。出力装置32には、撮像装置20で撮像された画像データ、演算部10Bで演算された演算結果等が、表示される。
【0027】
本実施形態では、判定装置10は、記憶部10Aおよび演算部10Bで構成されていたが、たとえば、入力装置31および出力装置32を備えたものであってもよい。判定装置10は、入力装置31および出力装置32に加えて、撮像装置20をさらに備え、これらが一体となったスマートフォンまたはタブレットなどの携帯端末であってもよい。
【0028】
3.接合用ボルト51Aの判定装置10のソフトウエア構成について
図2に示すように、判定装置10は、領域検出部11、柱直線算出部12、接合用ボルト特定部13、および仕様判定部14を備えている。
【0029】
領域検出部11は、
図3Aに示す撮像装置20で撮像された全体画像G1から、柱3、梁4、および仕様に合わせたボルト51、52等に合わせた領域を検出する。ここでは、予め機械学習されたアプリケーションにより、領域検出部11は、
図3Bに示すように、梁4、柱3、ボルト51、52、ジョイントボックス6、およびブレス7の領域を、物体検出タスクを用いて検出する。すなわち、検出した領域は、全体画像G1に示された柱3、梁4、ボルト51、52、ジョイントボックス6、およびブレス7の形状に応じた領域であり、各領域は、梁4、柱3、ボルト51、52、ジョイントボックス6、およびブレス7のいずれの部材の領域であるか、その領域ごとに部材のコードが紐付けられている。
【0030】
ここで、機械学習として、深層学習が挙げられ、そのアルゴリズムとしては、Adagrad、Adatelta、RMSprop、Adam、AdaBound、AMSBoundなどを上げることができる。機械学習をする学習段階では、教師用の画像データとして、柱3、梁4、ボルト51、52、ジョイントボックス6、およびブレス7が写り込んだ建物1の全体画像データを準備し、これらの全体画像ごとに、各部材の画像の領域を指定し、指定した領域に部材の名前(コード)を割り当てることにより、学習を行う。
【0031】
これにより、学習されたアプリケーションにより、利活用の段階では、読み込んだ全体画像から、柱3、梁4、ボルト51、52、ジョイントボックス6、およびブレス7の形状に応じた領域を検出し、検出した領域が、いずれの部材に該当するか、そのコードが割り当てられる。ここでボルト51、52は、上述した如く、高強度ボルト51と普通ボルト52は、区別して領域51R、52Rが検出される。
【0032】
このようにして、
図3Bに示すように、柱3の領域3R、梁4の領域3R、高強度ボルト51の領域51R、普通ボルト52が用いられたボルト52の領域52R、ジョイントボックス6の領域6R、およびブレス7の領域7Rを検出することができる。
図3Bでは、各領域を区別できるように、領域検出画像G2ごとに、同じ種類の部材には同じ色を付し、異なる種類の部材には種類に異なる色を配色してもよい。
【0033】
なお、本実施形態では、
図3Bに示すように、柱3、梁4、ボルト51、52、ジョイントボックス6、およびブレス7の物体検出のタスクとして、これらの対象物だけを検出するインスタンスセグメンテーションタスクを用いている。しかしながら、全体画像に写し出された全ての部材の画像に対して、領域を抽出するセマンティックセグメンテーションタスクを用いてもよい。
【0034】
このようにして、本実施形態によれば、領域検出部11により、全体画像G1から、柱3、梁4、および仕様に合わせたボルト51、52等に合わせた領域3R、4R、51R、52R等を検出することができる。これにより、柱3、梁4、およびボルト51、52ごとに検出された領域3R、4R、51R、52Rにおいて、その検出された領域3R、4R、51R、52Rが、どの部材に対応しているかを識別することができる。
【0035】
ここで、物体検出により検出された各領域の画像は、柱3、梁4、ボルト51、52、ジョイントボックス6、およびブレス7のいずれの部材の画像であるかを識別できるが、ボルト51、52の領域51R、52Rからのみでは、どこの箇所に用いられたボルトであるかわからない。そこで、本実施形態では、判定装置10は、柱直線算出部12と接合用ボルト特定部13とをさらに備えている。
【0036】
柱直線算出部12は、
図3Cに示すように、柱3の領域3Rから、柱3に沿った柱3の近似直線3Lを算出する。柱直線算出部12は、たとえば、柱3の領域3Rの画像から、一般的な直線検出処理等により、柱3の近似直線3Lを算出してもよく、近似直線3Lは、柱3の長手方向に沿った直線であり、柱3の領域3Rの幅の中央(または領域3Rの重心)を通過するような直線であることが好ましく、このような直線を得ることができるのであれば、柱3の近似直線3Lの算出の方法は、特に限定されるものではない。
【0037】
このようにして、柱直線算出部12で、柱3の領域3Rから、柱3の長手方向に沿った柱3の近似直線3Lを算出する。これにより、梁4は、水平方向に沿って二次元的に配置された複雑な構造であることが多いのに対して、柱3は鉛直方向に沿ってのみ配置されるため、柱3の領域3Rから、算出した柱3の近似直線4Lを、接合用ボルト51Aを特定するための基準線として用いることができる。
【0038】
接合用ボルト特定部13は、梁4の領域4Rに関する情報と、柱3の近似直線3Lとに基づいて、柱3を接合する接合用ボルト51Aを特定する。なお、接合用ボルト特定部13は、梁4を接合する接合用ボルト51Bの特定を行ってもよい。以下に、柱3を接合する接合用ボルト51Aの特定に関して説明する。
【0039】
まず、接合用ボルト特定部13は、梁4の領域4Rに関する情報として、梁4に沿った梁の近似直線4Lを算出する。ここでは、柱3で示した近似直線の算出方法と同様の方法で、
図3Cに示すように、梁4の近似直線4Lを算出する。
【0040】
次に、
図3Dに示すように、接合用ボルト特定部13は、柱3の近似直線3Lと梁4の近似直線4Lとの交点C1を算出する。ここで、接合用ボルト特定部13は、交点C1からボルト51の領域51R、52Rまでの距離(最短距離)を用いて、この距離が所定の範囲内の領域51R、52Rに対応するボルト51、52を、柱3の接合用ボルト51Aであると、特定してもよい。
【0041】
本実施形態では、交点C1から最も近いボルト51、52の領域51R、52Rが、柱3の接合用ボルト51Aであるので、ボルト51、52の領域51R、52Rから、柱3の接合用ボルト51Aを特定することができる。
【0042】
なお、
図3Dでは、適切な仕様のボルトが用いられているため、高強度ボルト51の領域51Rに接合用ボルト51A、51B等が括弧書きで示されているが、誤った仕様のボルトが用いられているときには、普通ボルト52の領域52Rが、接合用ボルト51Aであると特定されることになる。
【0043】
ここで、たとえば、撮像条件等により、交点C1から、梁4の接合用ボルト51Bの距離も、所定の範囲内に収まることがある。したがって、
図3Dに示すように、接合用ボルト特定部13は、柱3の領域3Rの重心(重心位置)Sを算出し、ボルト51、52の領域51R、52Rのうち、交点C1および重心Sに近い領域51R、52Rのボルトを、柱3を接合する接合用ボルト51Aであると特定してもよい。
【0044】
ここで、交点C1および重心Sに近い領域51R、52Rとは、たとえば、交点C1および重心Sに対してそれぞれに設定された所定の距離の範囲内にあるボルト51、52の領域51R、52Rである。なお、ここで、所定の距離の範囲内に、普通ボルト52の領域52Rがある場合には、この普通ボルト52は、高強度ボルト51と誤って取り付けられたボルトである。
【0045】
このようにして、たとえば、梁4の近似直線4Lと柱3の近似直線3Lとの交点C1から近いボルト51、52の領域51R、52Rが複数存在することがある場合などには、さらに重心Sを利用することにより、柱3を接合する接合用ボルト51Aをより正確に特定することができる。
【0046】
この他にも、接合用ボルト特定部13は、ボルト51、52の領域51R、52Rのうち、柱3の近似直線3Lおよび交点C1に近いボルト51、52を、柱3を接合する接合用ボルト51Aであると特定してもよい。ここで、柱3の近似直線3Lおよび交点C1に近いとは、たとえば、柱3の近似直線3Lおよび交点C1のそれぞれに対して、予め設定された所定の距離の範囲内にあるボルト51、52の領域51R、52Rである。このようにして、柱3の近似直線3Lおよび交点C1に対して近い距離には、接合用ボルト45Aの領域が存在することから、接合用ボルト51Aを正確に特定することができる。
【0047】
ここで、上に示した2つの特定方法を組合わせてもよい。さらに、上に示した2つの特定において、たとえば、1つの柱3に対して用いられる接合用ボルト51Aの個数が予め分かっている場合には、その個数を予め入力装置31を介して入力し、これらの個数を満たすまで、複数の領域51R、52Rから、交点C1および重心Sに近い領域51R、52Rを選択し、選択した領域51R、52Rのボルト51、52を、柱3を接合する接合用ボルト51Aであると特定してもよい。
【0048】
仕様判定部14は、接合用ボルト特定部13で、特定した接合用ボルト51Aが、適切な仕様であるボルト(すなわち高強度ボルト51)であるかを判定する。ここで、本実施形態の場合、たとえば、接合用ボルト51A、51Bに、高強度ボルト51に用いることが適切な仕様である。ただし、建物1の仕様およびその階数によっては、柱および梁の接合用ボルトに用いるボルトが高強度ボルト51でなく、普通ボルト52を用いることが適切な仕様である場合もある。このようなボルトの仕様は、上述した如く、入力装置31を介して記憶部10Aにおいて記憶されている。
【0049】
本実施形態では、その一例として、接合用ボルト51A、51Bに、高強度ボルト51に用いることが適切な仕様であるため、接合用ボルト特定部13により特定した接合用ボルト51Aが、普通ボルト52である場合には、この普通ボルト52は、高強度ボルト51と誤って取り付けられたボルトである。したがって、このような場合には、仕様判定部14は、接合用ボルト51Aに不適切なボルト(普通ボルト52)が取り付けられた判定する。一方、接合用ボルト特定部13により特定した接合用ボルト51Aが、高強度ボルト51である場合には、仕様判定部14は、接合用ボルト51Aに適切なボルトが取り付けられた判定する。判定結果は、判定装置10により、たとえば
図3Aに示す全体画像とともに、出力装置32に表示されてもよい。
【0050】
なお、本実施形態では、柱3を接合する接合用ボルト51Aの特定方法を説明したが、上に示した方法と同じようにして、接合用ボルト特定部13で、梁4を接合する接合用ボルト51Bを特定し、仕様判定部14で、接合用ボルト51Bが、適切な仕様であるボルト(すなわち高強度ボルト51)であるかを判定してもよい。
【0051】
このようにして、本実施形態では、接合用ボルト特定部13により、接合用ボルト51Aを、柱3の近似直線3Lを利用して特定している。したがって、複数のボルト51、52の領域51R、52Rから、接合用ボルト51Aを精度良く特定することができる。このような結果、仕様判定部14により、接合用ボルト51Aが、適切な仕様のボルトであるかを精度良く判定することができる。
【0052】
また、梁4の近似直線4Lと柱3の近似直線3Lとの交点C1に近い位置には、接合用ボルト51Aの領域が存在することから、この交点C1と各ボルト51、52の領域51R、52Rとの距離から、たとえば所定の距離の範囲内に存在する領域のボルト51、52を、接合用ボルト51Aとして特定することができる。
【0053】
以下に、本実施形態に係る判定装置10を用いた判定方法について、
図4を参照しながら以下に説明する。まず、ステップS1では、撮像装置20により、検査対象となる建物1の範囲を撮影する。次に、ステップS2により、領域検出部11により、梁4、柱3、ボルト51、52、ジョイントボックス6、およびブレス7の領域を、物体検出タスクを用いて検出し、ステップS3に進む。
【0054】
ステップS3では、柱直線算出部12により、柱3の領域3Rから、柱3に沿った柱3の近似直線3Lを算出し、ステップS4に進み、接合用ボルト特定部13により、梁4の領域4Rに関する情報として、梁4に沿った梁の近似直線4Lを算出し、ステップS5に進む。
【0055】
ステップS5では、接合用ボルト特定部13により、柱3の近似直線3Lと梁4の近似直線4Lとの交点C1を算出し、ステップS6に進む。ステップS6では、接合用ボルト特定部13により、柱3と梁4との接合部分における柱3の接合用ボルト51Aを、ボルトの領域51R、52Rから特定し、ステップS7に進む。ステップS7では、仕様判定部14により、特定した接合用ボルト51Aが、適切な仕様であるボルト(すなわち高強度ボルト51)であるかを判定し、この結果を、出力装置32に表示する。
【0056】
上に示した実施形態では、接合用ボルト特定部13は、梁4の領域4Rに関する情報として、梁4に沿った梁4の近似直線4Lを算出し、この近似直線4Lを用いたが、たとえば、梁4の領域4Rの境界線(輪郭線)4Dを用いてもよい。
【0057】
具体的には、
図5Aに示すように、この変形例では、接合用ボルト特定部13は、梁の4の領域4Rに関する情報として、梁4の領域4Rの境界線4Dを抽出する。次に、接合用ボルト特定部13は、
図5Bに示すように、梁4の境界線4Dと柱3の近似直線3Lの交点C2と、ボルト51、52の領域51R、52Rとの距離から、柱3の接合用ボルト51Aを特定する。ここで、近似直線3Lと梁4の境界線4Dとの交点が複数存在する場合には、重心Sに最も近い交点を用いる。
【0058】
この変形例によれば、水平方向に沿って二次元的に配置される梁4の領域4Rは、その形状が複雑となるため、梁4の領域4Rの境界線4Dを抽出し、この梁4の境界線4Dと柱3の近似直線3Lとの交点C2を利用するので、より正確かつ簡単に、柱3を接合する接合用ボルト51Aを特定することができる。
【0059】
この変形例においても、接合用ボルト特定部13は、柱3の領域3Rの重心Sを算出し、ボルト51、52の領域51R、52Rのうち、交点C2および重心Sに近い領域のボルトを、柱3を接合する接合用ボルト51Aであると特定してもよい。上述した場合と同様に、接合用ボルト特定部13は、ボルト51、52の領域51R、52Rのうち、柱3の近似直線3Lおよび交点C2に近い領域51R、52Rのボルト51、52を、柱3を接合する接合用ボルト51Aであると特定してもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0061】
1:建物、3:柱、3L:近似直線、3R:柱の領域、4:梁、4D:梁の境界線、4L:近似直線、4R:梁の領域、10:判定装置、11:領域検出部、12:柱直線算出部、13:接合用ボルト特定部、14:仕様判定部、51:高強度ボルト、52:普通ボルト、51A:接合用ボルト、51R、52R:ボルトの領域、C1、C2:交点、G:重心