(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051185
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】トンネル用防水シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/08 20060101AFI20230404BHJP
E21D 11/38 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B32B5/08
E21D11/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161713
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】和氣坂 弘二
(72)【発明者】
【氏名】切川 修一
(72)【発明者】
【氏名】大坪 大輔
【テーマコード(参考)】
2D155
4F100
【Fターム(参考)】
2D155HA01
2D155HA02
2D155KB11
2D155KB16
2D155LA02
2D155LA03
4F100AK07C
4F100AK42B
4F100AK48D
4F100AK63A
4F100AK68A
4F100AL05A
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4F100GB07
4F100JD05A
4F100JD05B
4F100JL10C
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】立体網状体を含み、トンネルの一次覆工コンクリート面に取り付ける取付け片の加工性が良好であるトンネル用防水シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、遮水層2、透水層3、立体網状体4及びトンネルの一次覆工コンクリート面に取り付ける取付け片5を含むトンネル用防水シート1であって、遮水層2、透水層3及び立体網状体4は、この順に積層されており、立体網状体4は、幅方向の中央部に他の箇所よりも目付が低い低目付帯を有しており、取付け片5は、立体網状体4の透水層3とは反対側の表面に配置され、取付け片5と透水層3は、立体網状体4を挟んだ状態で接合されており、接合箇所7は、トンネル用防水シート1の長手方向と平行して存在しており、接合箇所7により挟まれている立体網状体4の部分は、低目付帯に位置する、トンネル用防水シート1に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮水層、透水層、立体網状体及びトンネルの一次覆工コンクリート面に取り付ける取付け片を含むトンネル用防水シートであって、
前記遮水層、前記透水層及び前記立体網状体は、遮水層、透水層、立体網状体の順に積層されており、
前記立体網状体は、他の箇所よりも目付が低い低目付帯を有しており、
前記取付け片は、前記立体網状体の前記透水層とは反対側の表面に配置され、
前記取付け片と前記透水層は、前記立体網状体を挟んだ状態で接合されており、接合箇所は、トンネル用防水シートの長手方向と平行して存在しており、
前記接合箇所により挟まれている立体網状体の部分は、前記低目付帯に位置する、トンネル用防水シート。
【請求項2】
前記立体網状体の全体目付が200g/m2以上である、請求項1に記載のトンネル用防水シート。
【請求項3】
前記立体網状体において、全体目付に対する前記低目付帯の目付の比が0.30以上0.90以下である、請求項1又は2に記載のトンネル用防水シート。
【請求項4】
前記低目付帯の幅が50mm以上である、請求項1~3のいずれかに記載のトンネル用防水シート。
【請求項5】
前記立体網状体の全体幅に対する前記低目付帯の幅の比が0.20以下である、請求項1~4のいずれかに記載のトンネル用防水シート。
【請求項6】
前記低目付帯の目付は80g/m2以上250g/m2以下である、請求項1~5のいずれかに記載のトンネル用防水シート。
【請求項7】
遮水層、透水層、立体網状体及びトンネルの一次覆工コンクリート面に取り付ける取付け片を含むトンネル用防水シートの製造方法であって、
立体網状体を幅方向中央部に存在する孔の一部を塞いだ状態の紡糸ノズルを用いて製造することで、立体網状体に他の箇所よりも目付が低い低目付帯を設ける工程、
前記立体網状体と透水層の積層体において、前記立体網状体の前記透水層とは反対側の低目付帯の表面に取付け片を重ねて前記取付け片と前記透水層を接合箇所がトンネル用防水シートの長手方向と平行して存在するように接合する工程、及び
前記透水層の表面に遮水層を積層一体化させる工程を含む、トンネル用防水シートの製造方法。
【請求項8】
前記立体網状体において、全体目付に対する前記低目付帯の目付の比が0.30以上0.90以下である、請求項7に記載のトンネル用防水シートの製造方法。
【請求項9】
前記低目付帯の幅が50mm以上である、請求項7又は8に記載のトンネル用防水シートの製造方法。
【請求項10】
前記立体網状体の全体幅に対する前記低目付帯の幅の比が0.20以下である、請求項7~9のいずれかに記載のトンネル用防水シートの製造方法。
【請求項11】
前記低目付帯の目付は80g/m2以上250g/m2以下である、請求項7~10のいずれかに記載のトンネル用防水シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事における地山側の一次覆工コンクリートから流出する湧水を外部へ排出するためのトンネル防水シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳部におけるトンネル工法のひとつとして、新オーストリアトンネル工法(以下、NATMともいう。)が知られている。NATMでは、通常、掘削後にトンネル掘削壁面へコンクリートを吹き付け(一次覆工コンクリート)、地山内部に向けてロックボルトを挿入し、その後、内空変位が安定した後に、一次覆工コンクリート面に防水シートを施工し、次いで二次覆工コンクリートを打設する。
【0003】
防水シートは、一次覆工コンクリート面から流出する湧水を外部へ排出し、かつ二次覆工コンクリート側への湧水流出を防ぐ役割を担う。このような防水シートとして、従来から、例えば、特許文献1に記載されているように、合成樹脂で構成された不透水シートと不織布で構成された透水マットが一体化されたものが使用されている。近年は、排水性能を高めるために、例えば、特許文献2に記載のように、立体網状体で構成されている導水層を設けたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61-58299号公報
【特許文献2】特開2017-166149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、防水シートの施工時に、シートの中間部分のたるみを抑えるために、例えば、特許文献1にように、中間止め用の取付け片を設けることで、シートの中間部を一次覆工コンクリート面に固定することが行われている。
しかし、特許文献2に記載のような立体網状体を含む防水シートの場合、中間止め用の取付け片を接合する加工が難しく、縫合によって中間止め用の取付け片を接合する場合には縫合時に針が立体網状体を構成する線条と接触し、針折れや糸切れが多発することがあった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、立体網状体を含み、トンネルの一次覆工コンクリート面に取り付ける取付け片の加工性が良好であるトンネル用防水シート及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、遮水層、透水層、立体網状体及びトンネルの一次覆工コンクリート面に取り付ける取付け片を含むトンネル用防水シートであって、前記遮水層、前記透水層及び前記立体網状体は、遮水層、透水層、立体網状体の順に積層されており、前記立体網状体は、幅方向の中央部に他の箇所よりも目付が低い低目付帯を有しており、前記取付け片は、前記立体網状体の前記透水層とは反対側の表面に配置され、前記取付け片と前記透水層は、前記立体網状体を挟んだ状態で接合されており、接合箇所は、トンネル用防水シートの長手方向と平行して存在しており、前記接合箇所により挟まれている立体網状体の部分は、前記低目付帯に位置する、トンネル用防水シートに関する。
【0008】
本発明は、また、遮水層、透水層、立体網状体及びトンネルの一次覆工コンクリート面に取り付ける取付け片を含むトンネル用防水シートの製造方法であって、立体網状体を幅方向中央部に存在する孔の一部を塞いだ状態の紡糸ノズルを用いて製造することで、立体網状体に他の箇所よりも目付が低い低目付帯を設ける工程、前記立体網状体と透水層の積層体において、前記立体網状体の前記透水層とは反対側の低目付帯の表面に取付け片を重ねて前記取付け片と前記透水層を接合箇所がトンネル用防水シートの長手方向と平行して存在するように接合する工程、及び前記透水層の表面に遮水層を積層一体化させる工程を含む、トンネル用防水シートの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、立体網状体を含み、トンネルの一次覆工コンクリート面に取り付ける取付け片の加工性が良好であるトンネル用防水シート及びその製造方法を提供することができる。
本発明の製造方法によれば、立体網状体を含むトンネル用防水シートに、トンネルの一次覆工コンクリート面に取り付ける取付け片を加工性がよく設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の一例のトンネル用防水シートの模式的分解斜視図である。
【
図2】
図2は本発明の一例のトンネル用防水シートの模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、立体網状体(以下、単に網状体ともいう)を有するトンネル用防水シートにおいて、トンネルの一次覆工コンクリート面に取り付けるための取付け片を設ける場合の加工性を向上するために検討を重ねた。その結果、立体網状体の幅方向の中央部に他の箇所より目付(単位面積当たりの質量)が低い低目付帯を設け、遮水層と透水層が立体網状体を挟んで接合される際に接合箇所により挟まれている立体網状体の部分を低目付帯に位置するようにすることで、接合工程での工程不良がほとんど発生せず、加工性が向上することを見出した。
【0012】
トンネル用防水シートは、遮水層、透水層、立体網状体及びトンネルの一次覆工コンクリート面に取り付けるための取付け片(以下において、単に「取付け片」と記す)を含む。
図1は、本発明の一例のトンネル用防水シートの模式的分解斜視図であり、
図2は、同模式的斜視図である。
図1に示されているように、トンネル用防水シート1において、遮水層2、透水層3、立体網状体4はこの順に積層されており、取付け片5は、立体網状体4の透水層3とは反対側の表面に配置されている。遮水層2は、所定の間隔で配置されている接着剤6にて透水層3と点状接着されている。取付け片5と透水層3は立体網状体4を挟んで接合7されている。
図1及び
図2において、接合7はミシンなどによる縫合である場合を示している。
図1及び
図2において、LDは長手方向を示し、WDは幅方向を示す。LDとWDは直交している。
【0013】
図1において、接合7(縫合)は、互いに略平行する2本の接合線(縫製線)で行っているが、1本の接合線(縫製線)で行ってもよく、互いに略平行する2本以上の接合線(縫製線)で行ってもよい。簡便性や生産性の観点から、接合7(縫合)は、互いに略平行する2本の接合線(縫製線)で行うことが好ましい。
【0014】
<遮水層>
遮水層は、湧水がコンクリート側へ移行することを防止する役割を果たす。例えば、トンネル工事において、一次覆工コンクリート側にトンネル用防水シートを張設することにより、地中側から発生した湧水が遮水シートを超えて二次覆工コンクリート側へ流れ出さないようにする。二次覆工コンクリート側に湧水が移行すると、二次覆工コンクリートにクラックが発生しやすくなり、コンクリートが崩落するおそれがある。
【0015】
遮水層は、水を透過しないシートで構成すればよく、特に限定されない。遮水層は、例えば、樹脂シートで構成することができる。上記樹脂シートは、エチレン-酢酸ビニル共重合体を20質量%以上90質量%以下含み、ポリエチレンを10質量%以上90質量%以下含んでもよい。樹脂シート中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有量が20質量%以上であると、エチレン-酢酸ビニル共重合体の樹脂特性に起因して良好な遮水性を有する。さらには、エチレン-酢酸ビニル共重合体の樹脂特性に起因して、例えば10℃以下の低温環境下に於いても遮水シートが固くならず、施工面に対する追従性が保たれる。かかる効果をより顕著に得る観点から、上記樹脂シートは、エチレン-酢酸ビニル共重合体を40質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことが特に好ましい。樹脂シート中のポリエチレンの含有量が10質量%以上であると透水層を構成する不織布との接着力に優れた樹脂シートを得ることができる。また、遮水層のしなやかさや引張強さを低下させない観点から、樹脂シートは、ポリエチレンを60質量%以下含むことが好ましく、40質量%以下含むことがより好ましく、30質量%以下含むことが特に好ましい。
【0016】
上記エチレン-酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量が、3質量%以上50質量%以下であることが好ましい。エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量が3質量%以上であると、柔軟性に優れたシートを得ることができる。また、酢酸ビニル含有量が50質量%以下であると、トンネル用防水シートを30℃以上の環境下で保管する場合であっても、遮水層同士がくっついて一体化(ブロッキング)してしまうことが少ない。かかる効果をより顕著に得る観点から、酢酸ビニル含有量は、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
上記ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び線状低密度ポリエチレンからなる群から1つ以上を選択して用いることができる。高密度ポリエチレンを用いるとその樹脂特性に起因して、耐衝撃性に優れた樹脂シートを得ることができる。また、低密度ポリエチレンを用いるとその樹脂特性に起因して、熱溶着性に優れた樹脂シートを得ることができる。なかでもポリエチレンは、線状低密度ポリエチレンであることが好ましい。線状低密度ポリエチレンを含む樹脂シートは、特に優れた引張強さを有する。樹脂シートが引張強さに優れると、遮水層が破断し難くなる。
【0018】
上記ポリエチレンはJIS K 7210-1(2014)に準じて測定された190℃(荷重2.16kgf(21.18N))におけるメルトフローレート(以下、MFRともいう)が1g/10分以上10g/10分以下であることが好ましい。ポリエチレンのMFRが1g/10分以上であると、遮水シートを生産しやすい。ポリエチレンのMFRが10g/10分以下であると、遮水シートの強力が低下するおそれが少ない。かかる効果をより顕著に得る観点から、ポリエチレンのMFRは、1.5g/10分以上7g/10分以下であることがより好ましい。
【0019】
上記樹脂シートは、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリエチレンに加えて、他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂の含有量は、樹脂シートの全体質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。他の樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとの共重合体、ポリブテン-1、上述したポリエチレンとは異なるエチレンとエチレン以外のオレフィンとの共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィン系樹脂を用いることができる。また、樹脂シートは、必要に応じて、遮水シートの全体質量に対して、酸化防止剤や熱安定剤などを10質量%以下の量で含んでもよい。
【0020】
上記樹脂シートは、特に限定されないが、厚みが0.10mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.30mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。遮水層の厚みが0.10mm以上3.0mm以下であると、施工時の取り扱い性に優れたトンネル用防水シートとなる。樹脂シートの厚みは、JIS A 6008(2006) 8.2に準じて測定する。即ち本方法にて説明される測定箇所に対し、JIS K 6250(2019) 10.2(A法)に準じて厚みを測定する。
【0021】
上記樹脂シートは、特に限定されないが、施工時の取扱性の観点から、JIS A 6008(2006) 8.4に準じて測定する目付(単位面積当たりの質量)が、700g/m2以上1000g/m2以下であることが好ましく、750g/m2以上900g/m2以下であることがより好ましい。
【0022】
上記樹脂シートは、JIS K 6251(2017)に準じて測定する引張強さ(切断時引張強さ)が、10N/mm2以上であることが好ましく、16N/mm2以上であることがより好ましい。引張強さが10N/mm2以上であると、樹脂シートが破断しにくい。引張強さの好ましい上限は、100N/mm2以下である。なお、引張強さの測定に使用する試験片はJIS K 7127(1999)の試験片タイプ5で行う。
【0023】
上記樹脂シートは、JIS K 6251(2017)に準じて測定する伸び率(切断時伸び)が、500%以上であることが好ましく、600%以上であることがより好ましい。伸び率が500%以上であると、トンネル用防水シートをトンネルの円弧面に沿って施工することが容易になる。伸び率の好ましい上限は、1000%以下である。なお、伸び率の測定に使用する試験片は上述した引張強さの測定に使用する試験片と同様である。
【0024】
上記樹脂シートは、JIS K 6252(2015) 4.3 試験方法B-手順(a):切込みなしアングル形試験片を用いる方法に準じて測定する引裂強さが、400N/cm以上であることが好ましく、500N/cm以上であることがより好ましい。引裂強さが400N/cm以上であると、樹脂シートが裂けにくい。引裂強さの好ましい上限は、2000N/cm以下である。
【0025】
上記樹脂シートは、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリエチレンを含む樹脂組成物を溶融させて、Tダイから押し出して、金属ロール間で厚みを調整し、所定の厚みのシート状にすることで作製することができる。このとき、エチレン-酢酸ビニル共重合体とポリエチレンとは、予め混合してマスターバッチ化してもよい。さらに、必要に応じて、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ヒドロキシアミン系熱安定剤などの添加剤を加えてよい。また、遮水シートは必要に応じて、延伸処理を付してもよい。
【0026】
<透水層>
透水層は、不織布で構成することができる。不織布としては、特に限定されないが、例えば、長繊維不織布や短繊維不織布のいずれを用いてもよい。長繊維不織布としては、例えば、スパンボンド不織布及びメルトブローン不織布などが挙げられる。短繊維不織布としては、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布及びサーマルボンド不織布などが挙げられる。また、長繊維不織布や短繊維不織布をバインダー樹脂でバインダー処理したものを用いてもよい。
【0027】
上記不織布を構成する繊維は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂などの合成樹脂で構成されている繊維が挙げられる。中でも、上記不織布を構成する繊維は、不織布強力や嵩高性に優れる観点からポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0028】
上記不織布を構成する繊維は、特に限定されないが、単繊維繊度が1dtex以上100dtex以下であってもよく、2dtex以上80dtex以下であってもよく、4dtex以上60dtex以下であってもよい。繊度が上述した範囲内であると、不織布の引張強さや引裂強さを高めることができる。
【0029】
上記不織布は、厚みが0.50mm以上20mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.60mm以上10mm以下であり、さらに好ましくは0.70mm以上5.0mm以下であり、特に好ましくは0.90mm以上3.0mm以下である。不織布の厚みが0.50mm以上であると、突起物により遮水シートが損傷することを防止する効果がより高い。不織布の厚みが20mm以下であると、不織布が厚み方向に破断又は剥離し難い。なお、不織布の厚みは、JIS L 1096(2010)8.4に準じて、1.96kPaの荷重を加えた状態で測定する。
【0030】
上記不織布は、目付(単位面積当たりの質量)が80g/m2以上250g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは120g/m2以上200g/m2以下である。不織布の目付が80g/m2以上であると、引張強さが高く、破断しにくい。また、不織布の目付が250g/m2以下であると、重くなりすぎず、施工が容易である。不織布の目付は、JIS L 1096(2010)8.3に準じて測定する。
【0031】
上記不織布は、特に限定されないが、JIS L 1096(2010)8.14 A法(ストリップ法)に準じて測定される引張強さが、200N/5cm以上であることが好ましく、250N/5cm以上であることがより好ましい。引張強さが200N/5cm以上であると、不織布が破断しにくい。引張強さの好ましい上限は1000N/5cm以下である。
【0032】
上記不織布は、特に限定されないが、JIS L 1096(2010)8.14 A法(ストリップ法)に準じて測定される伸び率が、20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。伸び率が20%以上であると、遮水層を構成する樹脂シートの伸びに追従しやすくなる。また、伸び率は90%以下であることが好ましく、より好ましくは80%以下である。不織布の伸び率が90%以下であると、透水層と立体網状体の間に湧水や土砂が溜まりにくくなる上、透水層と遮水層の間が導水路として機能しやすく、多くの湧水を排水することができる。
【0033】
上記不織布は、特に限定されないが、JIS L 1096(2010)8.17 A-1法(シングルタング法)に準じて測定される引裂強さが、50N以上であることが好ましく、60N以上であることがより好ましい。引裂強さが50N以上であると、不織布が裂けにくい。引裂強さの好ましい上限は、150N以下である。
【0034】
上記不織布は、1種の繊維から構成されていてもよく、2以上の繊維が混綿された不織布であってもよい。また、不織布は、いずれも、1層のウェブからなる単層不織布であってもよく、2層以上のウェブが積層されてなる積層不織布であってもよい。さらに、上記不織布は、単一成分の樹脂からなる繊維で構成されていてもよく、2以上の樹脂を用いた複合繊維で構成されていてもよい。
【0035】
<立体網状体>
本発明において、立体網状体は湧水などを外部へ排水するための導水路として機能する。立体網状体で構成された導水路は、コンクリートの打設や土の自重などによりトンネル用防水シートに圧力が加わった場合でも、導水路がある程度の厚みを残すため、より大量の湧水を排水することができる。例えば、トンネル用防水シートをトンネルの一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートとの間に遮水層が二次覆工コンクリート側になるように配置した場合、一次覆工コンクリート側から生じた湧水などは、透水層と遮水層との間に加えて、立体網状体の空隙部を通過して、外部へ排出される。
【0036】
立体網状体は、太さ(直径)が0.1mm以上10mm以下の複数の連続フィラメントが水平方向及び/又は厚み方向に不規則に交差してなる。立体網状体において、フィラメントが連続していることにより、フィラメントが不連続である場合と比較して、フィラメント先端が少なく、フィラメント先端が遮水シートを損傷させることがない又は少ない。連続フィラメントの太さは、0.3mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上3.0mm以下であることがより好ましい。連続フィラメントの太さが0.1mm以上であると、フィラメントが破断し難くなる。また、連続フィラメントの太さが10mm以下であると、連続フィラメント同士や連続フィラメントと不織布との接着交点が大きくなりすぎることがなく、立体網状体が適度な空隙を形成する。なお、連続フィラメントの太さは、連続フィラメントの任意の100箇所における直径を測定し、その平均値を連続フィラメントの太さとする。
【0037】
連続フィラメントの断面形状は、特に限定されず、円形、楕円形、三角形、四角形、多角形、Y字型、十字型などのいずれの形状であってもよい。フィラメント断面が円形状以外である場合、連続フィラメントの太さは、フィラメント断面積を測定し、この断面積と同じ面積の円に換算したときの円直径とする。
【0038】
連続フィラメントを構成する樹脂は、特に限定されないが、ポリエチレン(エチレンとエチレン以外のオレフィンとの共重合体を含む)、ポリプロピレン(プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとの共重合体を含む)、ポリブテン-1などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリスチレン(水素添加ポリスチレンを含む)などの合成樹脂であってよい。なかでも、耐アルカリ性と耐候性に優れる観点からポリオレフィン樹脂であることが好ましい。連続フィラメントがポリオレフィン樹脂から構成されると、耐アルカリ性に優れた立体網状体となり、例えば、打設したコンクリートからアルカリ溶液が生じた場合でも立体網状体が劣化し難い。
【0039】
立体網状体は、特に限定されないが、全体目付が200g/m2以上1000g/m2以下であることが好ましく、250g/m2以上700g/m2以下であることがより好ましく、300g/m2以上600g/m2以下であることがさらに好ましい。目付が200g/m2以上であると、導水路となる空隙を形成しやすく、排水性能が向上する。全体目付が1000g/m2以下であると、巻き取りやすい上、重くなりすぎず、例えば、コンクリート面への打設が容易である。立体網状体の全体目付は、試料を後述する低目付帯とは異なる他の箇所から採取し、JIS L 1096(2010)8.3に準じて測定する。立体網状体が透水層等と積層一体化されている場合は、予め測定した透水層等の目付を積層体の目付から差し引くことで算出してもよい。
【0040】
立体網状体は、他の箇所より目付が低い低目付帯を有する。後述するように、透水層と取付け片の接合箇所が立体網状体の低目付帯を挟むように配置されることで、取付け片を取り付ける際の工程不良が抑制され、取付け片の加工性が向上する。防止シートの中間部をトンネルの一次覆工コンクリート面に取り付けやすい観点から、上記低目付帯は、立体網状体の幅方向中央部に配置され、長手方向に連続するように形成されることが好ましい。本発明において、他の箇所は、トンネル用防水シートの幅を3等分した際、真ん中の1/3を除く両側の箇所を意味する。低目付帯の目付は、試料を低目付帯から採取し、上述した全体目付と同様に測定する。なお、低目付帯が他の箇所と見分けがつかない場合は、接合箇所を中心とした幅方向50mm程度の間の目付を測定するとよい。接合箇所が幅方向に複数存在する(接合線が2本以上存在する)場合は、最も外に位置する二つの接合箇所同士の間の目付、もしくは、最も外に位置する二つの接合箇所の中間点を中心とした幅方向50mm程度の間の目付を測定するとよい。他の箇所の目付は、全体目付と同様に試料を他の箇所から採取して測定する。
【0041】
立体網状体において、全体目付に対する低目付帯の目付の比が0.30以上0.90以下であることが好ましく、0.40以上0.85以下であることがより好ましい。これにより、取付け片の加工性が向上するとともに、高い排水性能を維持することができる。また、立体網状体において、全体目付と低目付帯の目付との差が30g/m2以上であることが好ましく、60g/m2以上であることがより好ましい。全体目付と低目付帯の目付との差の上限は、例えば500g/m2以下であることが好ましく、400g/m2以下であることがより好ましい。
【0042】
低目付帯の目付は、特に限定されないが、80g/m2以上250g/m2以下であることが好ましく、100g/m2以上240g/m2以下であることがより好ましく、120g/m2以上230g/m2以下であることがさらに好ましい。これにより、取付け片の加工性が向上するとともに、高い排水性能を維持することができる。
【0043】
上記低目付帯の幅は、特に限定されないが、50mm以上であることが好ましく、80mm以上であることがより好ましく、100mm以上であることがさらに好ましい。これにより、透水層と取付け片の接合箇所が立体網状体の低目付帯を挟むように配置されやすくなる。上記低目付帯の幅の上限は、例えば400mm以下であることが好ましく、300mm以下であることがより好ましく、200mm以下であることがさらに好ましい。これにより、高い排水性能を維持することができる。
【0044】
立体網状体の全体幅に対する低目付帯の幅の比は、特に限定されないが、0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.10以下であることがさらに好ましい。これにより、高い排水性能を維持することができる。立体網状体の全体幅に対する低目付帯の幅の比は、例えば下限が0.025以上であることが好ましく、0.040以上であることがより好ましく、0.050以上であることがさらに好ましい。これにより、取付け片の接合加工が良好になる。
【0045】
立体網状体は、特に限定されないが、厚みが1.0mm以上30mm以下であることが好ましい。網状体の厚みが1.0mm以上であると、湧水中に土砂などが含まれていた場合であっても、目詰まりしにくく、良好な通水性を得ることができる。また、網状体の厚みが30mm以下であると不織布と網状体とが剥離し難い。かかる効果をより顕著に得る観点から、立体網状体の厚みは2.0mm以上10mm以下であることが好ましい。また、立体網状体は、厚み方向に凸部又は凹部を有していてもよい。立体網状体の厚みは、JIS L 1096(2010)8.4に準じて、1.96kPaの荷重を加えた状態で測定する。立体網状体が透水層等と積層一体化されている場合は、予め測定した透水層等の厚みを積層体の厚みから差し引くことで算出してもよい。
【0046】
低目付帯を有する立体網状体は、例えば、立体網状体を構成する樹脂を200℃以上350℃以下程度に加熱して溶融し、溶融樹脂を幅方向中央部に存在する孔の一部を塞いだ状態の紡糸ノズル(紡糸金型)からランダムに周動させながら押し出して、不規則に交差する連続フィラメントを捕集板又は透水層を構成する不織布上に捕集することで作製することができる。必要に応じて、立体網状体を構成する樹脂に黒色顔料マスターバッチ等の顔料マスターバッチを配合してもよい。
【0047】
(取付け片)
取付け片は、トンネルの一次覆工コンクリート面に取り付けるものであり、トンネル用防水シートの中間をトンネルに固定し、たるみが発生することを抑制する。取付け片は、トンネル用防水シートの長手方向に連続して形成された帯状でもよく、トンネル用防水シートの長手方向に一定間隔で配置された方形の小片でもよい。取付け片の材質は、特に限定されず、不織布でもよく、織編地でもよい。強度の観点から、織物を好適に用いることができる。取扱性の観点から、取付け片は、帯状の織物をトンネル用防水シートの長手方向に連続的に配置したものであることが好ましい。
【0048】
取付け片は、上記透水層と、上記立体網状体を挟んだ状態で接合され、接合箇所は、トンネル用防水シートの長手方向と平行して存在しており、接合箇所により挟まれている立体網状体の部分は、低目付帯に位置する。これにより、取付け片と透水層を接合する際の工程不良が抑制され、取付け片の加工性が向上する。取付け片の幅は、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができる。取付け片の幅は、例えば、200mm以上500mm以下であってもよく、250mm以上400mm以下であってもよく、270mm以上350mm以下であってもよい。接合箇所は、取付け片の幅方向の真ん中でもよく、いずれかの側に偏在してもよい。偏在させた場合、幅が広い側に固定ピンを打つことができる。接合は1本の接合線で行ってもよく、互いに略平行する2本以上の接合線で行ってもよい。簡便性や生産性の観点から、接合は、互いに略平行する2本の接合線で行うことが好ましい。なお、取付け片と立体網状体の間に他のシート(不織布など)が挿入されている場合は、立体網状体と他のシート越しに取付け片と透水層とを接合させてもよい。
【0049】
取付け片の接合方法は、例えば、縫合による接合、接着剤による接合、熱溶着による接合、タグピンによる接合などが挙げられるが、特にミシンなどの縫合による接合が加工性の観点で好ましい。
【0050】
縫合による接合は、糸によって透水層と取付け片とを縫い合わせることにより接合することができる。接合箇所に存在する立体網状体が低目付帯を有することにより、針が通りやすく針折れや糸切れが発生しにくくなる。
【0051】
接着剤による接合は、透水層と取付け片との間に接着剤を付与することで接合することができる。接合箇所に存在する立体網状体が低目付帯を有することにより、透水層と取付け片とが接しやすくなるため接着剤による接合が行いやすくなる。
【0052】
熱溶着による接合は、熱可塑性樹脂製である透水層及び取付け片の一方または両方を超音波や熱風により溶融接着することで接合することができる。接合箇所に存在する立体網状体が低目付帯を有することにより、透水層と取付け片とが接しやすくなるため熱溶着による接合が行いやすくなる。
【0053】
タグピンによる接合は、衣料品のタグ付けなどに使用されるものであって両端部にT字状や鏃状の止め部を有するタグピンを使い、タグガンによって透水層と取付け片とを接合することができる。接合箇所に存在する立体網状体が低目付帯を有することにより、タグガンの針が貫通しやすくなるためタグピンによる接合が行いやすくなる。
【0054】
透水層を構成する不織布と立体網状体は、接着剤を介して積層一体化されてもよく、又は連続フィラメントを構成する成分により積層一体化されてもよい。透水層を構成する不織布と立体網状体は、連続フィラメントを構成する成分により一体化されていることが好ましく、連続フィラメントを構成する成分を融着させて一体化していることがより好ましい。透水層を構成する不織布と網状体とが連続フィラメントを構成する成分により一体化されていると、透水層と網状体とが剥離しにくくなる。また、接着点において、連続フィラメントをフィルム化させることで、より強固に透水層と網状体を一体化することができる。
【0055】
透水層を構成する不織布と遮水層を構成する樹脂シートは、接着剤を介して接着されてもよく、或いは、不織布又は樹脂シートを構成する成分により熱溶着されることで接着されてもよい。透水層を構成する不織布と遮水層を構成する樹脂シートは、ホットメルト系接着剤または熱溶着により接着されていることが好ましい。
【0056】
透水層を構成する不織布と遮水層を構成する樹脂シートは、点状接着又は線状接着されていることが好ましい。透水層を構成する不織布と遮水層を構成する樹脂シートが点状接着又は線状接着されてなると、不織布と樹脂シートの間が導水路として機能しやすく、多くの湧水を排水することができる。大量の湧水が発生した場合、その水圧により不織布と樹脂シートの間の接着されていない部分に空間が形成されこの空間が導水路となり、効率よく排水することができる。
【0057】
点状接着又は線状接着の接着間隔は、2cm以上70cm以下であることが好ましい。ここで接着間隔とは、点状接着である場合、隣接する二つの接着点間の距離をいい、線状接着である場合、接着された線状部と垂直な方向に最も近い他の接着線状部との距離をいう。接着間隔が2cm以上であると、接着されていない部分に空間が形成されやすくなり、接着間隔が70cm以下であると、施工時に不織布と遮水シートとがずれ難くなり、施工が容易になる。
【0058】
なかでも、透水層を構成する不織布と遮水層を構成する樹脂シートは、ホットメルト系接着剤によって点状接着されてなり、接着間隔が10cm以上50cm以下であることがより好ましい。かかる構成であると、透水層と遮水層が剥離し難く、かつ透水層と遮水層の間に優れた導水路を形成することができる。
【0059】
トンネル用防水シートは、目付が2.0kg/m2以下であることが好ましく、1.5kg/m2以下であることが好ましい。トンネル用防水シートの目付が2.0kg/m2以下であると、トンネル用防水シートが軽くなり、施工が容易になる。たとえば、トンネル天井部などに張設する際にも施工が容易である。特に限定されないが、好ましい下限は、0.50kg/m2以上である。
【0060】
トンネル用防水シートは、特に限定されないが、例えば、下記のように作製することができる。
立体網状体を幅方向中央部に存在する孔の一部を塞いだ紡糸ノズルを用いて製造することで、立体網状体に他の箇所よりも目付が低い低目付帯を設け、立体網状体と透水層との積層体において、立体網状体の透水層とは反対側の低目付帯の表面に取付け片を重ねて取付け片と透水層とを接合箇所がトンネル用防水シートの長手方向と平行して存在するように接合し、透水層の表面に遮水層を積層一体化させることで、トンネル用防水シートを得ることができる。
【0061】
まず、立体網状体を構成する樹脂を200℃以上350℃以下程度に加熱して溶融し、溶融樹脂を幅方向中央部に存在する孔の一部を塞いだ状態の紡糸ノズル(紡糸金型)からランダムに周動させながら押し出して、不規則に交差する連続フィラメントを所望の厚みを得るための金型上に捕集して立体網状体を形成し、連続フィラメントが固化する前に透水層用不織布を立体網状体の上に積層して透水層用不織布側から押さえロールで圧着一体化させながら透水層用不織布と低目付帯を有する立体網状体の積層体を作製する。低目付帯は紡糸ノズルの孔を塞いだ部分に対応する。透水層用不織布と立体網状体は押さえロールによる圧着時に連続フィラメントの冷却固化により溶着一体化することができる。必要に応じて、立体網状体を構成する樹脂に黒色顔料マスターバッチ等の顔料マスターバッチを配合してもよい。透水層用不織布として、上述したものを用いることができる。紡糸ノズルの孔を塞いだ部分の幅は、50mm以上であってもよく、80mm以上であってもよく、100mm以上であってもよい。紡糸ノズルの孔を塞いだ部分の幅は、例えば上限が400mm以下であってもよく、300mm以下であってもよく、200mm以下であってもよい。また、紡糸ノズルの孔を塞いだ部分の幅は、紡糸ノズルの全体幅の0.20以下であってもよく、0.15以下であってもよく、0.10以下であってもよい。紡糸ノズルの孔を塞いだ部分の幅は、紡糸ノズルの全体幅の0.025以上であってもよく、0.040以上であってもよく、0.050以上であってもよい。なお、紡糸ノズルの全体幅とは、紡糸ノズルの最も端にある孔同士の間隔を指す。
【0062】
次に、上記で得られた積層体において、立体網状体の透水層とは反対側の低目付帯の表面に取付け片を重ねて取付け片と透水層とを接合箇所がトンネル用防水シートの長手方向と平行して存在するように接合する。取付け片として、上述したものを用いることができる。接合は、接合線が直線状になるように行うことができる。接合線は、1本でもよく、互いに略平行する2本以上でもよい。接合方法が縫合である場合はミシンなどを使用して行うとよい。
【0063】
遮水層用樹脂シートの表面にホットメルト接着剤の所定の間隔で点状に付着させた後に、上記で得られた積層体の透水層用不織布側を遮水層用樹脂シートに貼り合わせて積層一体化させることで、トンネル用防水シートを得ることができる。ホットメルト接着剤は、特に限定されないが、例えば、接着性を高める観点から、エチレンー酢酸ビニル共重合体からなるホットメルト接着剤等を用いることができる。
【0064】
本発明のトンネル用防水シートは、トンネル工事における地山側の一次覆工コンクリートから流出する湧水を外部へ排出することができる。トンネル用防水シートは、取付け片が一次覆工コンクリート側になり、遮水層が二次覆工コンクリート側になり、長手方向がトンネル断面の周方向に沿うように配置されて使用される。トンネル用防水シートは、一次覆工コンクリート面から流出する湧水を外部へ排出し、かつ二次覆工コンクリート側への湧水流出を防ぐ役割を担う。
【実施例0065】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0066】
実施例及び比較例において用いた測定方法は以下の通りである。
【0067】
(目付)
不織布の目付は、JIS L 1096(2010)8.3に準じて測定した。
樹脂シートの目付は、JIS A 6008(2006) 8.4に準じて測定した。
立体網状体において、低目付帯の目付は、JIS L 1096(2010)8.3に準じて測定した。
立体網状体において、全体目付(他の箇所の目付)は、幅を3等分した際の中央部以外の箇所の目付を、JIS L 1096(2010)8.3に準じて測定した。
(取付け片の加工性)
取付け片と透水層用不織布とを立体網状体越しに長手方向の寸法が60mになるまで縫い合わせ、糸切れが1回以下の場合、加工性良好であると判断した。
(厚み)
不織布の厚み及び立体網状体の厚みは、JIS L 1096(2010)8.4に準じて、1.96kPaの荷重を加えた状態で測定した。
樹脂シートの厚みは、JIS A 6008(2006) 8.2に準じて測定した。即ち本方法にて説明される測定箇所に対し、JIS K 6250(2019) 10.2(A法)に準じて厚みを測定した。
【0068】
[材料]
実施例に使用する材料、設備について以下を準備した。
(透水層)
透水層用として以下の不織布を準備した。
ポリエチレンテレフタレート製スパンボンド不織布(目付約130g/m2、厚み1.3~1.4mm、繊度3.3dtex(繊維径約18μm)、東洋紡株式会社製、商品名「ボランス4131N」)
(遮水層)
遮水層として以下の樹脂シートを準備した。
エチレン-酢酸ビニル共重合体A(酢酸ビニル含有率14質量%、三井・ダウポリケミカル株式会社製、商品名「EV560」)、エチレン-酢酸ビニル共重合体B(酢酸ビニル含有率28質量%、三井・ダウポリケミカル株式会社製、商品名「EV260」)、及び線状低密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、商品名「SP2040」)を質量比25:50:25で混合しTダイ法にて溶融押出を行いフィルム状に成形し、冷却した樹脂シート(目付約800g/m2、厚み0.85mm)
(樹脂)
立体網状体を構成する樹脂として以下を準備した。
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「SA01A」)100質量部に、黒色顔料マスターバッチを混合した樹脂
(紡糸ノズル)
立体網状体の製造に使用する紡糸ノズルとして以下を準備した。
幅方向に長いノズルであって、孔径1.0mmの孔が幅方向において、隣接する孔間距離5.0mmで配列されており、最も端にある孔同士の距離が2000mmであるノズル
(取付け片)
取付け片として以下のシートを準備した。
織物:目付120g/m2、厚み0.20mm、幅方向のサイズ30cm、ナイロン繊維製
【0069】
[比較例1]
(立体網状体の製造)
搬送用ベルトの上に透水層用の不織布を設置し、上記樹脂を加熱溶融し、上記紡糸ノズルから吐出し、連続フィラメントを深さ5.0mmの金型上に垂らしながらベルトを機械方向に移動させて立体網状体を形成し、連続フィラメントが固化する前に透水層用不織布を立体網状体の上に積層して透水層用不織布側から押さえロールで圧着一体化させながら透水層用不織布と立体網状体の積層体を製造した。得られた立体網状体はフィラメントの繊維径が約1.0mm、厚みが5.0mm、全体目付が約300g/m2、全体幅が約2000mmであり、低目付帯を設けないものであった。透水層用不織布と立体網状体は連続フィラメントの冷却固化により接着一体化していた。
(取付け片の設置)
不織布と立体網状体の積層体について、立体網状体の上に取付け片となるシートを載置し、ミシンにより取付け片と不織布とを立体網状体越しに縫い合わせた。接合箇所(縫合箇所)は積層体の幅方向の略中央部であり、長手方向(機械方向)に沿って直線状に縫った。接合(縫合)は、互いに略平行する二本の縫製線で行われており、接合箇所(縫合箇所)の幅、すなわち二本の縫製線間の距離は約20mmであった。
(遮水層との積層)
遮水層用の樹脂シートの表面にエチレン-酢酸ビニル共重合体からなるホットメルト接着剤を点状に付着させた後、積層体の不織布側を樹脂シートと貼り合わせて積層一体化して比較例1の防水シートを得た。隣接する点状の接着剤の間隔は長手方向(機械方向)に25cm、幅方向に40cmであった。
【0070】
[実施例1]
立体網状体を製造する紡糸ノズルについて以下の加工を行った。
(紡糸ノズルの加工)
ノズルの幅方向中央部において100mmにわたって隣接する孔同士の間隔が10mmとなるように半分の個数の孔を塞ぎ、中央部から吐出される連続フィラメントの本数が半減されるようにした。
(立体網状体の製造、取付け片の設置、遮水層との積層)
比較例1と同様にして立体網状体を製造した。得られた立体網状体は、立体網状体の幅方向の中央部において目付が他よりも低くなっている低目付帯を有するものであった。低目付帯の幅方向の幅は約100mmであった。立体網状体の全体目付は約300g/m2、低目付帯の目付は約150g/m2、全体幅は約2000mm、フィラメントの繊維径は約1.0mm、厚みは約5.0mmであった。
取付け片の設置は低目付帯の箇所で比較例1と同様にして行い、遮水層との積層は比較例1と同様にして行って実施例1の防水シートを得た。
【0071】
[実施例2]
紡糸ノズルの加工において、孔を塞ぐ幅を100mmから120mmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の防水シートを得た。立体網状体の低目付帯の幅は約120mmであった。
【0072】
[実施例3]
立体網状体の製造において、立体網状体の全体目付を約300g/m2から約400g/m2に、低目付帯の目付を約150g/m2から約200g/m2に変更した以外は、実施例2と同様にして実施例3の防水シートを得た。
【0073】
[実施例4]
立体網状体の製造において、立体網状体の全体目付を約300g/m2から約500g/m2に、低目付帯の目付を約150g/m2から約210g/m2に変更した以外は、実施例2と同様にして実施例4の防水シートを得た。
【0074】
[実施例5]
紡糸ノズルの加工において、孔を塞ぐ幅を100mmから120mmに変更し、また、孔を塞ぐ頻度として6孔あたり1孔のみを塞ぐように変更して、ノズルの幅方向中央部から吐出される連続フィラメントの本数が6分の5に減少するようにし、立体網状体の低目付帯の目付が約250g/m2となるようにした以外は、実施例1と同様にして実施例5の防水シートを得た。立体網状体の低目付帯の幅は約120mmであった。
【0075】
[実施例6]
紡糸ノズルの加工において、孔を塞ぐ幅を100mmから150mmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例6の防水シートを得た。立体網状体の低目付帯の幅は約150mmであった。
【0076】
実施例及び比較例における取付け片の加工性を上述したとおりに評価し、その結果を下記表1に示した。
【0077】
【0078】
実施例1~6の防水シートでは、立体網状体が低目付帯を有しており、取付け片を低目付帯の表面に重ねて縫い合わせていることから、糸切れがほとんど発生せず、加工性が良好であった。
立体網状体が低目付帯を有しない比較例1では、長手方向に60m連続して取付け片を縫い合わせた際、糸切れが4回も発生しており、加工性が悪かった。
本発明のトンネル用防水シートは、一次覆工コンクリート面から流出する湧水を外部へ排出し、かつ二次覆工コンクリート側への湧水流出を防ぐ防水シートとして好適に用いることができる。