(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051250
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】接続構造体
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20230404BHJP
H01B 5/16 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
H01B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161816
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 克哉
【テーマコード(参考)】
5G307
【Fターム(参考)】
5G307HA02
5G307HB03
5G307HC01
(57)【要約】
【課題】第1電子部品と第2電子部品を異方性導電接続した接続構造体において、端子間スペースに導電粒子が溜まってショートが引き起こされることを解消する。
【解決手段】端子11aが配列してなる端子列12aを有する第1電子部品10と、該端子列12aに対応した端子列22aを有する第2電子部品20とが絶縁性樹脂1を介して接着され、第1電子部品10の端子11aと第2電子部品20の端子21aとが、それらの間で挟持された絶縁性樹脂1中の導電粒子2により電気的に接続されている接続構造体30Aであって、端子列の端子間スペース13aにおいて端子に隣接する端子近傍部15の個数密度αと、端子間スペース13aから端子近傍部15を除いた端子間中間部14における導電粒子の個数密度βが、α<βである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子が配列してなる端子列を有する第1電子部品と、該端子列に対応した端子列を有する第2電子部品とが絶縁性樹脂を介して接着され、第1電子部品の端子と第2電子部品の端子とが、それらの間で挟持された絶縁性樹脂中の導電粒子により電気的に接続されている接続構造体であって、
端子列の端子間スペースにおいて端子に隣接した端子近傍部での導電粒子の個数密度αと、端子間スペースから端子近傍部を除いた端子間中間部での導電粒子の個数密度βが、α<βである接続構造体。
【請求項2】
端子近傍部が、端子列の端子間スペースにおいて、端子からの距離が導電粒子径の1倍未満の領域である請求項1記載の接続構造体。
【請求項3】
端子間スペースにおいて、端子からの距離が導電粒子径の0.5倍以内の領域に導電粒子が存在しない請求項1又は2記載の接続構造体。
【請求項4】
第1電子部品の端子と第2電子部品の端子とが異方性導電接続されている請求項1~3のいずれかに記載の接続構造体。
【請求項5】
電子部品の個々の端子面積が1000μm2以下又は電子部品の最長辺の長さが600μm以下である請求項1~4のいずれかに記載の接続構造体。
【請求項6】
第1電子部品の端子と第2電子部品の端子で挟持されている導電粒子が規則配列している領域を有する請求項1~5のいずれかに記載の接続構造体。
【請求項7】
端子列の周囲に、導電粒子が規則配列している領域を有する請求項1~6のいずれかに記載の接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルムを使用して製造することのできる第1電子部品と第2電子部品との接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性樹脂層に導電粒子を保持させた異方性導電フィルムが、ICチップ等の電子部品を配線基板等に実装する際に広く使用されている。ここで、異方性導電フィルムとは、電子部品の端子列と基板の端子列とを接続した接続構造体を得る場合にそれらの間に介在させるフィルムであって、フィルム厚方向のみに導通性が発揮され、フィルム面方向には導通性が無くなるフィルムをいう。また、異方性導電接続とは、電子部品の端子列と基板の端子列との接続に関し、電子部品と基板の積層方向には導通性があるが、端子の列方向には導通性が無い接続をいう。
【0003】
異方性導電接着剤においては、電子部品の高密度実装に伴うバンプ等の端子の狭ピッチ化に対応できるようにすることが強く要請されている。このような要請に対し、単に異方性導電フィルムにおける導電粒子の個数密度を高めると、例えば、
図10に示すように、異方性導電接続時の熱圧着に伴い、対向する電子部品10、20の端子11a、21aの間や、対向する電子部品10、20の接着面の間から押し出された絶縁性樹脂1が端子間スペース13a、13bに流入し、端子の長手方向に流動し、その樹脂流動に伴い導電粒子2が端子間スペース13a、13bを移動し、樹脂流動の下流側の端子間スペース端部近傍13xに溜まり、隣り合う端子同士を橋掛けするように繋がり、ショートが引き起こされる場合がある。
【0004】
これに対しては、電極パッドや基板に樹脂流動を遮る壁を立てて端子間スペースに導電粒子が流れ込むことを抑制し、それによりショートを防止することが提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-27847号公報
【特許文献2】特開2012-191015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術によれば、電極パッドや基板に樹脂流動を遮る壁を立てなくてはならない。そのため、樹脂流動を遮る壁の無い汎用されている電子部品を異方性導電接続する場合にはショートを防止することができないという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、任意の第1電子部品の端子列と第2電子部品の端子列とが異方性導電接続された接続構造体であって、端子間スペースに溜まった導電粒子によるショートが抑制されたものの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、第1電子部品の端子列と第2電子部品の端子列とを異方性導電フィルムを用いて接続構造体を得るにあたり、異方性導電フィルムとして、導電粒子を保持している絶縁性の高粘度樹脂層と該高粘度樹脂層よりも最低溶融粘度が低い低粘度樹脂層とが積層されているものを使用し、この場合に、(i)高粘度樹脂層と低粘度樹脂層の最低溶融粘度の比を特定の範囲とし、(ii)異方性導電フィルムを構成する樹脂層の全厚Tsと、第1電子部品の端子高さと第2電子部品の端子高さの合計Ttとの比Ts/Ttを特定の範囲とした場合に、異方性導電フィルムを介して積層した第1電子部品と第2電子部品を特定の圧力以下で押圧すると、第1電子部品と第2電子部品の対向する端子の間から低粘度樹脂層が押し出され、この低粘度樹脂層の押し出しにより、端子列方向の端子間スペースにおいて、端子に隣接する端子近傍部には導電粒子が存在しないか、又は端子近傍部での導電粒子の個数密度が顕著に低減し、端子間スペースの導電粒子によるショートが防止された接続構造体を得られることを見出した。これは、このような押圧によれば、異方性導電接続時に端子間スペースを流れる樹脂流動は殆ど低粘度樹脂層により引き起こされ、端子間スペースで導電粒子を保持している高粘度樹脂層は、端子間スペースを流れる樹脂流動を殆ど構成することなく端子間スペースに保持されるためと推定される。
【0009】
一方、上述の比Ts/Ttが大きいこと等により強い樹脂流動が起こりやすい異方性導電フィルムを使用して第1電子部品と第2電子部品を異方性導電接続する場合に、上述の圧力を超える大きな圧力で押圧するときにも、端子間スペースにおける導電粒子の個数密度が顕著に低減し、端子間スペースの導電粒子によるショートが防止された接続構造体を得られることを見出した。これは、この場合の押圧によれば、端子間スペースの粒子流動は低粘度樹脂層だけでなく高粘度樹脂層によっても構成され、この強い樹脂流動により端子間スペースに保持されていた導電粒子が端子間スペースから押し出されるためと推定される。
本発明は、このような知見に基づくものである。
【0010】
即ち、本発明は、端子が配列してなる端子列を有する第1電子部品と、該端子列に対応した端子列を有する第2電子部品とが絶縁性樹脂を介して接着され、第1電子部品の端子と第2電子部品の端子とが、それらの間で挟持された絶縁性樹脂中の導電粒子により電気的に接続されている接続構造体であって、
端子列の端子間スペースにおいて端子に隣接した端子近傍部での導電粒子の面積占有率が1%未満である接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接続構造体によれば、端子間スペースにおいて、端子に隣接する端子近傍部において、導電粒子の個数密度αと、端子間スペースから端子近傍部を除いた端子間中間部の導電粒子の個数密度βが、α<βであり、端子近傍部での導電粒子の個数密度が疎であるため、又は端子間スペースにおける導電粒子の個数密度が顕著に低減しているため、端子間スペースに存在する導電粒子によってショートが引き起こされることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例の接続構造体30Aの上面透視図である。
【
図2】
図2は、実施例の接続構造体30Aの領域Aの拡大図である。
【
図3】
図3は、実施例の接続構造体30Aの領域Aの断面図である。
【
図4】
図4は、実施例の接続構造体30Aの製造工程における熱圧着前の状態の上面透視図である。
【
図5】
図5は、実施例の接続構造体30Aの製造工程における熱圧着前の状態の部分断面図である。
【
図6】
図6は、実施例の接続構造体30Aの製造工程における熱圧着時の部分断面図である。
【
図7】
図7は、実施例の接続構造体30Aの製造工程における熱圧着時の部分断面図である。
【
図8】
図8は、実施例の接続構造体30Aの製造工程における熱圧着時の上面透視図である。
【
図9】
図9は、実施例の接続構造体30Bの上面透視部分拡大図である。
【
図10】
図10は、比較例の接続構造体の製造工程における熱圧着時の上面透視図である。
【
図11A】
図11Aは、接続構造体の製造に好適な異方性導電フィルム5Aの断面図である。
【
図11B】
図11Bは、接続構造体の製造に好適な異方性導電フィルム5Bの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の接続構造体を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0014】
<接続構造体>
図1は、本発明の一実施例の接続構造体30Aの上面透視図であり、
図2はその領域Aの拡大図であり、
図3は領域Aの断面図である。
【0015】
この接続構造体30Aは、入力側端子(バンプ)11aがその短手方向に直線状に配列した端子列12aと、出力側端子(バンプ)11bがその短手方向に直線状に配列した端子列12bとを有するドライバIC等のICチップ(第1電子部品)10と、該ICチップ10の端子列12a、12bに対応した端子列22a、22bを有するガラス基板20(第2電子部品)の該端子列22a、22bとが、異方性導電フィルムを構成していた導電粒子2と絶縁性樹脂(高粘度樹脂及び低粘度樹脂)1とによって異方性導電接続されているものである。即ち、ICチップ10とガラス基板20の対向する面が絶縁性樹脂1により接着されると共に、ICチップ10の入力側の端子11aとガラス基板20の端子21aがそれらの間で挟持された導電粒子2により電気的に接続され、ICチップ10の出力側の端子11bとガラス基板20の端子21bもそれらの間で挟持された導電粒子2により電気的に接続されている。
【0016】
このように、本発明の接続構造体は、ICチップ、ICモジュール、その他の半導体素子(例えば、LEDやペルチェ素子などの半導体素子)、FPC等の第1電子部品と、該第1電子部品の端子列に対応した端子列を有する、ガラス基板、FPC、リジッド基板、セラミック基板、プラスチック基板等の第2電子部品とを異方性導電接続したものである。本発明の接続構造体は種々の用途に使用することができ、例えば、情報携帯端末(携帯電話等)、大型テレビジョン、パブリックディスプレイ(デジタルサイネージ)、ウェアラブルディスプレイ (スマートウォッチ)、車載用ディスプレイ等に使用することができる。
【0017】
なお、本発明において電子部品には個々の電極の面積(以下、端子面積ともいう)が1000μm2以下、又は電子部品の最長辺の長さが600μm以下、特に300μm以下の微小な電子部品も含まれる。
【0018】
また、例えばマイクロLEDの集合体を基板に異方性導電フィルムを用いて接続した接続構造体のように、個々のマイクロLEDは端子列を有しておらず、個々のマイクロLEDの端子と基板との接続に「異方性」を観念できないものも、マイクロLEDの集合体は本発明における第1電子部品となり得る。したがって、マイクロLEDの集合体を基板に異方性導電フィルムを用いて接続した接続構造体を本発明は包含する。
【0019】
電子部品の端子列における端子の配列状態は直線状に限られず、例えば特開2007-19550号公報等に記載されているように放射状でもよい。また、各電子部品における端子列の数に限定はない。なお、以降の本発明の接続構造体の説明をわかりやすくするため、入力側の端子列について説明するが、出力側の端子列にも同様の説明があてはまる。
【0020】
本実施例の接続構造体30Aでは、異方性導電接続された端子列12a、22aの端子間スペース13aにおける、端子11a、21aの配列方向Xの導電粒子2の分布が、
図2に示す上面透視図のように、端子間中間部14に比して端子近傍部15が疎であること、言い換えると、端子間スペース13aにおいて端子に隣接した端子近傍部15での導電粒子2の個数密度αと、端子間スペース13aから端子近傍部15を除いた端子間中間部14での導電粒子2の個数密度βが、α<βであることを特徴としている。この配列方向Xは、一般には端子の長手方向に垂直な方向である。
【0021】
異方性導電接続時に端子間スペースに流れ込む樹脂を遮る壁(特許文献1、2)が無い電子部品を異方性導電接続した従来の接続構造体では、
図10に示したように端子間スペース13aのICチップ10の外縁側の開口端近傍13Xに導電粒子2が偏り、そこで導電粒子同士が繋がり、端子の配列方向Xで隣り合う端子にショートが引き起こされる場合がある。これに対して本実施例の接続構造体30Aでは、端子間スペース13aにおける導電粒子2の分布が、上述のように端子間中間部14に比して端子近傍部15が疎となっており、端子間スペース13aに存在する導電粒子2がICチップ10の外縁側に偏った状態ではないため、端子間スペース13aでショートが起こりにくい。
【0022】
端子近傍部15としては、
図2に示すように、端子11a、21aの配列方向における端子11a、21aからの距離Lvが導電粒子径Dの好ましくは1倍未満、より好ましくは0.5倍以内の領域をあげることができる。端子間中間部14は、端子間スペース13aから端子近傍部15を除いた領域である。本実施例の接続構造体30Aのさらに好ましい態様としては、異方性導電接続されたいずれの端子11a、21aにおいても、端子からの距離Lvが導電粒子径Dの0.5倍以内の領域である端子近傍部15に導電粒子2が存在しない態様を挙げることができる。この態様によれば、端子間のショートが確実に解消する。
【0023】
なお、本発明において導電粒子径Dは、端子間スペース13aに存在する導電粒子2の平均粒子径をいう。また、端子11a、21aの配列方向で端子からの距離Lvが導電粒子径Dの1倍未満の領域を端子近傍部15とする場合に、端子近傍部15と端子間中間部14の境界に存在する導電粒子2を、導電粒子の個数密度を計測する上で端子近傍部15に帰属させるか、端子間中間部14に帰属させるかは、その導電粒子の平面視の面積が端子近傍部15と端子間中間部14のいずれに多く存在するかで決める。端子11a、21aの配列方向で端子からの距離Lvが導電粒子径Dの0.5倍以内の領域を端子近傍部15とする場合も同様である。
【0024】
端子近傍部15や端子間中間部14の導電粒子2の個数密度や導電粒子1個の平面視の面積は、例えば金属顕微鏡を用いて撮った観察画像から計測することができる。計測では画像解析ソフト(一例として、WinROOF(三谷商事エンジニアリング(株))、A像くん(旭化成エンジニアリング(株)))を用いてもよい。したがって、第1電子部品と第2電子部品の接続構造体が、本発明の接続構造体であるかを検査する方法としては、検査対象とする接続構造体の端子間の顕微鏡画像を撮り、端子近傍部(例えばLv<D)における導電粒子の個数密度αと端子間中間部の導電粒子の個数密度βを計測し、α<βであることを確認する方法を挙げることができる。この検査方法は検査に要する工程数が少なく、簡便に行うことができる。また、従来の検査手法で接続構造体30Aの接続検査等を行うことができる。本発明の接続構造体は高い接続精度や安定性を有する。従って、高い動作精度や安全性が強く求められる車載・医療等の用途にも適したものとなる。
【0025】
また、本実施例の接続構造体30Aにおいては、
図1に示すように、第1電子部品10の端子11aと第2電子部品20の端子21aで挟持されている導電粒子2の少なくとも一部が規則配列している領域7があることが好ましく、また、端子列12a、22aの周囲においても導電粒子が規則配列している領域8があることが好ましく、これらの領域7、8における導電粒子の配列状態が等しいことが好ましい。より具体的には、この接続構造体30Aでは、領域7、8の双方において導電粒子2が6方格子に配列している。これは、後述するように、本実施例の接続構造体30Aを製造する際の異方性導電接続の熱圧着工程では、異方性導電フィルムを構成する高粘度樹脂の流動量が従前よりも低減しているために、異方性導電フィルムの導電粒子の配列状態が上述の領域7、8に残っていることによる。この規則配列の具体的態様としては、例えば正方格子、長方格子、斜方格子、3角格子等の格子配列を挙げることができる。また、この規則配列の態様としては、異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよく、導電粒子が所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させたものでもよい。
【0026】
一方、本発明の接続構造体としては、
図9に示す接続構造体30Bのように、端子列の端子間スペース13aにおける導電粒子の個数密度が著しく低減している態様を挙げることができる。
この接続構造体30Bでは、端子間スペース13aにおける導電粒子2の個数密度が
図2に示した接続構造体30Aよりも著しく低減しているため、端子近傍部15での個数密度αと、端子間スペース13aから端子近傍部15を除いた端子間中間部14での導電粒子2の個数密度βは必ずしもα<βを満たさないが、この接続構造体30Bにおいても端子間スペース13aにある導電粒子2によってショートが起こることを防止できる。
【0027】
<接続構造体の製造方法>
本発明の接続構造体のうち、
図1に示した接続構造体30Aの製造方法としては、例えば、まず常法に従い第2電子部品20の端子列22a、22b又は第1電子部品10の端子列12a、12bに導電粒子を含む接続材料を配置する。この接続材料はフィルム状であることが好ましく、例えば異方性導電フィルム5を配置する。次に異方性導電フィルム5の上に第1電子部品10の端子列12a、12b又は第2電子部品20の端子列22a、22bを位置合わせして仮圧着し(
図4、
図5)、第2電子部品と第1電子部品とを加熱加圧ツール41を用いて熱圧着する工程(
図6~
図8)を行う。
図9に示した接続構造体30Bも同様の工程で製造することができる。即ち、異方性導電フィルムを構成する高粘度樹脂層や低粘度樹脂層の最低溶融粘度や層厚、熱圧着工程における加熱加圧条件等を適宜変えることで、端子間スペースにおける樹脂流動の強さを調整し、
図1に示した接続構造体30A又は
図9に示した接続構造体30Bを製造する。
【0028】
(異方性導電フィルム)
本発明において、異方性導電フィルムとしては、導電粒子2を保持している絶縁性の高粘度樹脂層3と、30~200℃の範囲で高粘度樹脂層3よりも最低溶融粘度が低い低粘度樹脂層4が積層した異方性導電フィルム5を使用することが好ましい。
【0029】
この場合、熱圧着工程における加圧条件を70MPa未満、特に60MPa以下とする加熱加圧条件においては、高粘度樹脂層の最低溶融粘度と低粘度樹脂層の最低溶融粘度との比を2以上とすることが好ましい。これに対し、異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層が単一の樹脂層で構成されているか、又は最低溶融粘度の異なる2つの樹脂層で構成されていても、それらの最低溶融粘度の比が2未満で、最低溶融粘度の差異が不十分なものを使用すると、熱圧着工程における加圧条件を70MPa未満、特に60MPa以下とした場合に、
図10に示したように、熱圧着時の樹脂流動により端子間スペース13aに導電粒子2の密集部分が形成されやすくなる。
【0030】
(異方性導電フィルムにおける導電粒子の保持態様)
高粘度樹脂層3が導電粒子2を保持する態様としては、
図11A又は
図11Bに示すように、高粘度樹脂層3の表面と導電粒子2とが略面一になるように導電粒子2が高粘度樹脂3に埋め込まれているものが好ましい。高粘度樹脂層3の表面と導電粒子2が略面一である態様としては、隣り合う導電粒子2の中間部の高粘度樹脂層3の接平面3sから導電粒子2の最深部までの距離を埋込量Lbとした場合に、埋込量Lbと導電粒子の平均粒子径Dとの比である埋込率Lb/Dを80~105%、特に90~100%とする態様をあげることができる。高粘度樹脂層の表面と導電粒子とを略面一とすることにより、異方性導電接続するときの熱圧着時に、導電粒子の不用な移動を抑制することができる。
【0031】
(高粘度樹脂と低粘度樹脂の粘度)
高粘度樹脂層3の粘度としては、
図11A、
図11Bに示すように、高粘度樹脂層3に導電粒子2を押し込んだ場合に、押し込んだ導電粒子2の周りの高粘度樹脂層3の表面に凹み3aが形成されるほど、又は押し込んだ導電粒子の直上の高粘度樹脂層の表面に凹凸が形成されるほど、導電粒子2の埋込時に、高粘度樹脂層3が高粘度であるために、高粘度樹脂層3に埋込の痕跡が残るものが好ましい。このような高粘度樹脂層3としては、最低溶融粘度が、好ましくは1100Pa・s以上、より好ましくは1500Pa・s以上、さらに好ましくは2000Pa・s以上、特に3000~15000Pa・s、さらに3000~10000Pa・sである。最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instrument社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。
【0032】
なお、本発明で使用する異方性導電フィルムが、高粘度樹脂層3の表面に凹み3a又は凹凸を有するものに限定されるものではない。
【0033】
低粘度樹脂層4は、30~200℃の範囲で高粘度樹脂層3よりも最低溶融粘度が低い絶縁性の樹脂層である。低粘度樹脂層4と高粘度樹脂層3の最低溶融粘度は、差があるほど電子部品の電極やバンプによって形成される空間が低粘度樹脂層4で充填されやすくなり、電子部品同士の接着性を向上させる効果が期待できる。また、この差があるほど異方性導電接続する熱圧着時に、導電粒子2を保持している高粘度樹脂層3の移動量が低粘度樹脂層4に対して相対的に小さくなるため、導電粒子2が端子間スペース13aで流されにくくなるので好ましい。そこで、本発明では低粘度樹脂層4と高粘度樹脂層3との最低溶融粘度比を2以上、好ましくは5以上、更に好ましくは8以上とする。一方、この比が大きすぎると長尺の異方性導電フィルムを巻装体にした場合に、樹脂のはみだしやブロッキングが生じる虞があるので、実用上は15以下が好ましい。
【0034】
また、低粘度樹脂層4の30~200℃の好ましい最低溶融粘度は、好ましくは3000Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下であり、特に100~2000Pa・sである。
【0035】
高粘度樹脂層3と低粘度樹脂層4を合わせた樹脂層全体の最低溶融粘度は、高粘度樹脂層3と低粘度樹脂層4の厚みの比率にもよるが、実用上は8000Pa・s以下としてもよく、バンプ間への充填を行い易くするためには200~7000Pa・sであってもよく、好ましくは、200~4000Pa・sである。
【0036】
(絶縁性樹脂)
高粘度樹脂層3又は低粘度樹脂層4の形成に使用する絶縁性樹脂としては、特許6187665号公報に記載の異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層と同様に、熱又は光により硬化する硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、高粘着性樹脂等を使用することができる。
【0037】
絶縁性樹脂には、溶融粘度調整のために絶縁フィラーを含有させてもよい。これはシリカ粉やアルミナ粉などが挙げられる。絶縁性フィラーの大きさは粒子径20~1000nmが好ましく、また、配合量はエポキシ化合物等の熱重合性化合物(光重合性化合物)100質量部に対して5~50質量部とすることが好ましい。
【0038】
更に、上述の絶縁フィラーとは異なる充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい。
【0039】
また、必要に応じて、応力緩和剤、シランカップリング剤、無機フィラー等を配合してもよい。応力緩和剤としては、水添スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン-イソプレンブロック共重合体等を挙げることができる。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。また、無機フィラーとしては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0040】
高粘度樹脂層3と低粘度樹脂層4の樹脂組成は同一でも異なっていてもよいが、同一とした場合に、これらの最低溶融粘度を調整する方法としては、絶縁フィラーの配合量を調整すればよい。また、絶縁性樹脂が硬化性樹脂の場合には、硬化温度、硬化時間等を変えることで調整してもよい。
【0041】
(導電粒子)
異方性導電フィルムで使用する導電粒子2としては、公知の異方性導電フィルムにおいて使用されているものを適宜選択して使用することができる。例えば、ニッケル、銅、銀、金、パラジウムなどの金属粒子、ポリアミド、ポリベンゾグアナミン等の樹脂粒子の表面をニッケルなどの金属で被覆した金属被覆樹脂粒子等を挙げることができる。導電粒子の大きさは、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下、更に好ましくは2μm以上6μm以下である。
【0042】
高粘度樹脂層3に保持させる前の導電粒子2の平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて求めることができる。粒度分布測定装置の一例としてFPIA-3000(マルバーン社)を挙げることができる。また、高粘度樹脂層3に保持させた後の導電粒子2の平均粒子径(即ち、異方性導電フィルムに成形された後の導電粒子の平均粒子径)は、SEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。この場合、粒子径Dを測定するサンプル数を200以上とすることが望ましい。また、導電粒子の形状が球形でない場合、最大長または球形に模した形状の直径を導電粒子の粒子径Dとすることができる。
【0043】
導電粒子2の表面は絶縁処理されていてもよい。例えば、絶縁コートや絶縁粒子処理などにより被覆されていることが挙げられる。このような被覆は導電粒子2の表面から剥がれ易く且つ異方性導電接続に支障をきたさないものとする。本発明の粒子径は、このような絶縁処理による被覆層の厚みを含まないものとする。また、導電粒子2の表面の全面又は一部に突起が設けられていてもよい。突起の高さは導電粒子径の20%以内、好ましくは10%以内であることが好ましい。
【0044】
異方性導電フィルムにおいて、導電粒子は規則配列していることが好ましい。導電粒子が規則配列していると、第1電子部品と第2電子部品を異方性導電接続して得られる接続構造体において、第1電子部品10の端子11aと第2電子部品20の端子21aが対向する領域内に導電粒子2が規則配列している領域7があることや、端子列12a、22aの周囲に導電粒子が規則配列している領域8があることを観察することができ、それにより異方性導電接続時の樹脂流動が、端子間にショートを引き起こさないように良好に制御されていることを確認することができる。これに対して異方性導電フィルムにおける導電粒子の配置がランダムであると、異方性導電接続時の樹脂流動の良否を導電粒子の配列によって確認することができない。
【0045】
異方性導電フィルムにおける導電粒子2の個数密度は接続する電子部品の組み合わせや用途によって好ましい条件が変わるために特に制限はないが、個数密度の下限については、30個/mm2以上、又は12000個/mm2以上、又は150000個/mm2以上とすることができ、個数密度の上限については、例えば、350000個/mm2以下、又は240000個/mm2以下、又は100000個/mm2以下とすることができる。また、ICチップとガラスもしくはプラチック基板を接続する、所謂COGもしくはCOP接続の場合には、12000~30000個/mm2が特に好ましい。
【0046】
(高粘度樹脂層の層厚Ta)
第1電子部品10の端子高さTt1と第2電子部品20の端子高さTt2との合計をTt(=Tt1+Tt2)とした場合に、高粘度樹脂層3の層厚Taと第1電子部品10及び第2電子部品20の端子高さの合計Ttとの好ましい比は、熱圧着工程における押圧力の大きさによって異なる。
【0047】
例えば、
図1に示した接続構造体30Aを製造する場合に押圧力を70MPa未満、特に60MPa以下とするとき、比Ta/Ttが大きすぎると高粘度樹脂層の押し込み量が大きくなり、樹脂流動による導電粒子の移動量が過度に大きくなることが懸念されるため、比Ta/Ttは0.5以下が好ましく、0.45以下がより好ましい。一方、比Ta/Ttが小さすぎると、対向する第1電子部品10の端子11aと第2電子部品20の端子21aとの間から端子間スペースに押し出される樹脂量が低減し、端子間スペースにおいて端子近傍部15から端子間中間部14へ移動する導電粒子2の数が減り、端子近傍部15の導電粒子2の個数密度αが十分に低減せず、α<βを達成できないことが懸念されるため、比Ta/Ttは0.20以上が好ましい(
図5)。
【0048】
一方、熱圧着工程における押圧力を70MPa以上、特に80MPa以上とする場合、フィルム厚Ts(高粘度樹脂層3の層厚Taと低粘度樹脂層4の層厚Tnの合計)と端子高さTtの比Ts/Ttを1.6以上とし、高粘度樹脂層3と低粘度樹脂層4を合わせた樹脂層全体の最低溶融粘度を低くするなどにより熱圧着工程において強い樹脂流動が起こりやすくすることにより
図9に示した接続構造体30Bを得やすくなる。
【0049】
なお、高粘度樹脂層3の層厚Taは、導電粒子2の平均粒子径Dとの関係では、それらの比(Ta/D)が0.6~10が好ましい。この比が大き過ぎると異方性導電接続時に導電粒子2が位置ズレしやすくなり、端子における導電粒子2の捕捉性が低下する。この傾向はTa/Dが10を超えると顕著である。そこでTa/Dは8以下が好ましく、6以下がより好ましい。反対に高粘度樹脂層3の層厚Taが小さすぎてTa/Dが0.6未満となると、導電粒子2を高粘度樹脂層3によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持することが困難となる。特に、接続する端子が高密度COGの場合、高粘度樹脂層3の層厚Taと導電粒子2の粒子径Dとの比(Ta/D)は、好ましくは0.8~2である。
【0050】
(異方性導電フィルムのフィルム厚Ts)
異方性導電フィルム5のフィルム厚Ts(高粘度樹脂層3の層厚Taと低粘度樹脂層4の層厚Tnの合計)と、第1電子部品10及び第2電子部品20の端子高さの合計Ttとの好ましい比Ts/Ttも、熱圧着工程における押圧力の大きさによって異なる。例えば、押圧力を70MPa未満、特に60MPa以下とする場合、比Ts/Ttの上限については、好ましくは1.6未満、より好ましくは1.55以下、さらに好ましくは1.4以下である。一方、比Ts/Ttの下限については、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.3以上である(
図5)。比Ts/Ttをこのような範囲とし、前述のように低粘度樹脂層4と高粘度樹脂層3との最低溶融粘度比を2以上とすることにより、
図1に示した接続構造体30Aを得やすくなる。
【0051】
(端子幅Lt/端子間スペースの幅Ls)
接続対象とする電子部品についての条件に関し、
図1に示した接続構造体30Aを製造する場合には、第1電子部品10の入力側の端子列12a及び第2電子部品20の端子列22aにおける端子幅Ltと端子間スペースの幅(即ち、端子間スペースの端子幅方向の距離)Lsとの比Lt/Lsを1.5未満とすることが好ましい(
図4)。この比Lt/Lsが1.5を超えると第1電子部品の端子と第2電子部品の端子との間から押し出された高粘度樹脂層3が、端子間スペース13aにある導電粒子2を端子間中間部14(
図2)に寄せるだけでなく、端子間スペース13aにおける導電粒子2の配置を大きく乱し、導電粒子2の密集領域が形成されるおそれが生じる。比Lt/Lsの好ましい範囲は、1.2以下であり、1以下がより好ましい。
【0052】
(熱圧着工程)
熱圧着工程では、
図6に示すように、第1電子部品10と第2電子部品20の間に異方性導電フィルム5を介在させ、第1電子部品10と第2電子部品20をステージ40と加熱加圧ツール41との間で加熱加圧する。これにより、まず第1電子部品10の端子11aと第2電子部品20の端子21aとの対向領域から高粘度樹脂層3及び低粘度樹脂層4が端子間スペース13aに押し出される。押し出される樹脂の流動方向や流速は、電子部品の形状や端子レイアウトによって変わる。また熱圧着工程における加圧力の大きさによっても押し出される樹脂の流量や流速が異なり、樹脂流動が異方性導電フィルム内の導電粒子の配置に及ぼす影響が異なり、熱圧着工程後に得られる接続構造体における導電粒子の分布状態に影響する。
【0053】
例えば、
図1に示した接続構造体30Aを製造する場合、温度140~170℃、圧力40~60MPaで加熱加圧する。これにより、対向する端子11a、21aで十分に捕捉されていない導電粒子2や、端子間スペース13aにある導電粒子2のうち、端子11a、21aの近傍にある導電粒子2は、端子11a、21aの対向領域から押し出された樹脂の流動によって端子11a、21aから離れる方向へ移動する。したがって、端子間スペース13aにおける端子の配列方向Xの導電粒子2の分布が、端子間中間部14に比して端子近傍部15が疎となる。即ち、端子間中間部14における導電粒子2の個数密度βに比して、端子近傍部15における導電粒子2の個数密度αが低くなる。
なお、この状態でも導電粒子2は高粘度樹脂層3に保持されている。
【0054】
さらに加熱加圧を続けると、
図7に示すように、第1電子部品10と第2電子部品20の間の空間は高粘度樹脂層3及び低粘度樹脂層4で満たされる。このとき、
図8に示すように、端子間スペース13aには、端子列の非形成領域16において第1の電子部品10と第2電子部品20の間から押し出された低粘度樹脂4が流入する。従前の場合には、端子間スペースへ流入した絶縁性樹脂によって、電子部品の圧着部の中央部から周縁部に樹脂が流れる樹脂流動が起こり、導電粒子が流される(
図10の矢印参照)。
【0055】
これに対し、
図1に示した接続構造体30Aの製造工程では、導電粒子2を保持している高粘度樹脂層3と、高粘度樹脂層3に積層している低粘度樹脂層4との最低溶融粘度の比を2以上とし、低粘度樹脂層4を高粘度樹脂層3に比して熱圧着時に流動しやすくすることが好ましい。また、第1電子部品10の端子11aの高さTt1と第2電子部品20の端子21aの高さTt2の合計をTtとした場合に、高粘度樹脂層3の層厚Taと端子高さの合計Ttとの比Ta/Ttを0.5以下とすることが好ましい。これにより、非端子部分にある高粘度樹脂層3は、熱圧着時に押圧されても、押圧領域の外側に押し出されにくくなる。一方、低粘度樹脂層4は熱圧着時に容易に樹脂流動を起こす。また、端子間スペース13aにおいて、導電粒子2は、上述のように高粘度樹脂層3に保持されている。そのため、端子間スペース13aでは、導電粒子2を保持している高粘度樹脂層3上を低粘度樹脂層4の樹脂流動が通る。このとき導電粒子2の高粘度樹脂層3における埋込率(導電粒子の埋込量Lb/導電粒子の平均粒子径D)にもよるが、後述するように埋込率が80%以上であると、高粘度樹脂層3に保持された導電粒子2は低粘度樹脂層4の流動により流されることなく、高粘度樹脂層3に保持された位置を維持する。したがって、
図8に示すように、高粘度樹脂層3に押し出されて端子近傍部15から端子間中間部14に移動した導電粒子2は、その移動先の位置又はその近傍に留まり、端子近傍部15の個数密度αと、端子間中間部14における導電粒子の個数密度βには、前述のα<βの関係が維持される。
【0056】
こうして、
図1~
図3に示したように、端子間スペース13a内の導電粒子2が電子部品の周縁側に溜まっておらず、端子近傍部15における導電粒子2の個数密度αが、端子間中間部14の個数密度βに比して小さく、端子間のショートが防止された接続構造体30Aを得ることができる。
【0057】
一方、
図9に示した接続構造体30Bを製造する場合には、熱圧着工程において温度140~170℃、圧力80~120MPaで加熱加圧することが好ましい。これにより端子間スペース13aへ流入した絶縁性樹脂によって、電子部品の圧着部の中央部から周縁部に流れる樹脂流動が強く起こり、端子間スペース13aの端子近傍部15の導電粒子2も、端子間中間部14の導電粒子2も端子間スペース13aから押し流される。この場合、異方性導電フィルム5のフィルム厚Ts(高粘度樹脂層3の層厚Taと低粘度樹脂層4の層厚Tnの合計)と、第1電子部品10及び第2電子部品20の端子高さの合計Ttとの比Ts/Ttを1.6以上とすることが好ましい。この比Ts/Ttが1.6未満であると、端子間スペースから電子部品の圧着部の周縁部に向かって流れ出た導電粒子2が、端子の周縁部付近に溜まり、ショートが引き起こされる場合がある。また、端子間スペースで強い樹脂流動を起こすために、高粘度樹脂層3と低粘度樹脂層4を合わせた合計の最低溶融粘度を下げることが好ましい。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0059】
実験例1-1~1-6
(異方性導電フィルムの作製)
表1に示した配合で、高粘度樹脂層及び低粘度樹脂層を形成する樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0060】
高粘度樹脂層を形成する樹脂組成物をバーコーターでフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表2Aに示す厚さの高粘度樹脂層を形成した。同様にして、低粘度樹脂層を、表2Aに示す厚さでPETフィルム上に形成した。
【0061】
高粘度樹脂層及び低粘度樹脂層の最低溶融粘度を、回転式レオメータ(TA instrument社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めた。この場合、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとした。
【0062】
一方、導電粒子2の配置が平面視で6方格子配列であり、個数密度が20000個/mm2となるように、導電粒子を充填する凹みを有する樹脂型を作製した。この場合、まず、凸型を金型で作製し、次に、金型に公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で流し込み、冷やして固めることで、凹みが6方格子配列の樹脂型を形成した。
【0063】
導電粒子として、金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、AUL703、平均粒子径3μm)を用意し、この導電粒子を樹脂型の凹みに充填し、その上に上述の高粘度樹脂層を被せ、60℃、0.5MPaで押圧することで貼着させた。そして、型から高粘度樹脂層を剥離し、高粘度樹脂層上の導電粒子を、加圧(押圧条件:60~70℃、0.5Mpa)することで高粘度樹脂層に押し込み、樹脂層が単層からなる異方性導電フィルムを作製した。導電粒子の埋め込みの状態は、押し込み条件でコントロールした。なお、使用した金属被覆樹脂粒子のCV値はFPIA-3000(マルバーン社)を用いて、粒子個数1000個以上で測定したところ20%以下であった。
【0064】
また、同様に作製した絶縁性樹脂層に、低粘度樹脂層を積層することにより2層タイプの異方性導電フィルムを作製した。
【0065】
(接続構造体の作製)
表2Aに示すバンプ仕様の評価用IC(外形1.7×30mm、厚み0.15mm)のバンプ形成領域と、評価用ICのバンプに対応する電極端子(外形26×80mm、厚み0.3mm、ITO配線)を有するガラス基板(コーニング社製1737F)の電極端子形成領域とを対向させ、それらの間に各実験例の異方性導電フィルムを挟み、加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)して各評価用接続物を得、得られた評価用接続物の端子近傍部(Lv<D)の導電粒子の個数密度α及び端子間中間部の導電粒子の個数密度βを金属顕微鏡を用いた目視観察により計測した。これらの結果を表2Bに示す。
【0066】
(接続構造体の評価)
実験例1-1~1-6で得た接続構造体の(a)導通抵抗、(b)信頼性、(c)ショートの発生率、(d)導電粒子の捕捉性を次のように評価した。結果を表2Bに示す。
【0067】
(a)導通抵抗
接続構造体の初期導通抵抗を4端子法で測定し、次の基準で評価した。導通抵抗の評価は、実用上1オーム未満であれば好ましく、0.3オーム未満であればより好ましい。NGであっても、2オーム以下であれば実用上問題はない。
【0068】
導通抵抗評価基準
OK:1Ω未満
NG:1Ω以上
【0069】
(b)信頼性
(a)で作製した接続構造体を、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を初期導通抵抗と同様に測定し、次の基準で評価した。導通信頼性は、実用上5オーム未満であれば好ましく、2.5オーム以下であれば更により好ましい。NGであっても、6オーム以下であれば実用上問題はない。
【0070】
信頼性評価基準
OK:5Ω未満
NG:5Ω以上
【0071】
(c)ショートの発生率
接続構造体のバンプ間でショートしているチャンネル数を計測し、バンプ間100個あたりのショート数をショート発生率とし、次の基準で評価した。
【0072】
ショートの発生率の評価基準
OK:200ppm未満
NG:200ppm以上
【0073】
(d)導電粒子の捕捉性
接続構造体において、評価用ICのバンプとガラス基板の電極端子とが重なっている領域100個について、評価用ICのバンプとガラス基板の電極端子で捕捉されている導電粒子の数を計測し、最低捕捉数を求め、次の基準で評価した。
【0074】
導電粒子の捕捉性評価基準
OK:最低捕捉数が3個以上
NG:最低捕捉数が3個未満
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
表2Bから、端子間スペースにおける端子近傍部の導電粒子の個数密度αと、端子間中間部の導電粒子の個数密度βが、α<βである実験例1-1、1-2、1-3の接続構造体は、(a)導通抵抗、(b)導通信頼性、(c)ショート発生率、(d)導電粒子の捕捉性のいずれの評価項目についても良好な結果が得られたが、α>βである実験例1-4、1-5、1-6の接続構造体はショートの発生率が高いことがわかる。この理由としては、実験例1-4、1-5では端子高さの合計Ttに対するフィルム全厚Tsの比Ts/Ttが1.6を超えているため、熱圧着時の樹脂流動が実験例1-1、1-2、1-3よりも大きくなり、熱圧着工程の初期段階において評価用ICのバンプとガラス基板の電極端子との対向領域から樹脂が押し出され、その樹脂により、端子近傍部にあった導電粒子が該端子から離れる方向に移動し、端子間スペースにおける導電粒子の分布がα<βとなったときの導電粒子の配置(
図6)を維持できなかったためと考えられる。
【0079】
一方、実験例1-6では、比Ts/Ttが1.6未満でもα>βとなり、ショートが発生しやすくなっているが、これは、実験例1-6は他の実験例と高粘度樹脂層の組成が異なり、低粘度樹脂層と高粘度樹脂層との最低溶融粘度比が2未満であり、他の実験例よりも熱圧着時に高粘度樹脂層が流動しやすかったためと考えられる。
【0080】
実験例2-1~2-6
実験例1-1~1-6の接続構造体の製造工程において、熱圧着工程の押し圧を80MPaとする以外は、実験例1-1~1-6と同様にして接続構造体を製造し、評価した。
【0081】
その結果、熱圧着工程の押し圧を60MPaとした実験例1-4~1-6ではα>βであり、ショートが発生しやすかったのに対し、これらの熱圧着工程の押し圧を80MPaとした実験例2-4~2-6ではショートが起こりにくかった。これは、熱圧着工程の押し圧を80MPaに高めると、樹脂の流動性が顕著に強まり、端子間スペースにあった導電粒子の多くが端子間スペースから押し出されることによると考えられる。一方、熱圧着工程の押し圧を60MPaとした実験例1-1~1-3ではα<βであり、ショートが発生しにくかったのに対し、これらの熱圧着工程の押し圧を80MPaとした実験例2-1~2-3ではショートが発生しやすかった。これは押し圧を80MPaとしても、比Ts/Ttが1.6未満であるために十分に強い樹脂流動が起きにくかったためと考えられる。また、実験例2-6では比Ts/Ttが1.6未満でもショートが発生し難かったのは、高粘度樹脂層の最低溶融粘度が他の実験例よりも低く、樹脂層全体の最低溶融粘度が低下し、熱圧着工程で強い樹脂流動が起きたためと考えられる。