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特開2023-51286情報処理装置、土壌分析サービスの提供方法、および土壌分析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051286
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】情報処理装置、土壌分析サービスの提供方法、および土壌分析システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20230404BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161859
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390000686
【氏名又は名称】株式会社住化分析センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】島田 真一
(72)【発明者】
【氏名】姫野 博史
(72)【発明者】
【氏名】大和 好数
(72)【発明者】
【氏名】深浦 友美
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】施用するべき肥料または土性改良材等の施用物を検討するという負担を利用者に負わせることなく、適切な施用物を施用することを可能とする。
【解決手段】情報処理装置(2)は、対象となる圃場において採取された土壌試料に含まれる所定の成分を定量した定量結果を取得する定量結果取得部(203)と、予め登録されている複数種類の施用物の中から、前記定量の結果に基づいて、施用後の前記圃場における前記所定の成分の量が所定範囲内になる前記施用物の組み合わせを決定する施用物決定部(205)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる圃場において採取された土壌試料に含まれる所定の成分を定量した定量結果を取得する定量結果取得部と、
予め登録されている複数種類の施用物の中から、前記定量の結果に基づいて、施用後の前記圃場における前記所定の成分の量が所定範囲内になる前記施用物の組み合わせを決定する施用物決定部と、を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記圃場の面積を特定する面積特定部と、
前記面積特定部が特定した前記圃場の面積に基づいて、前記施用物決定部が決定した組み合わせに係る各施用物の所要数量を算出する数量算出部と、を備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記数量算出部が算出した前記所要数量だけ前記施用物を発注する発注部を備える、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記圃場において栽培される作物を特定する作物特定部を備え、
前記施用物決定部は、前記所定の成分の量が、前記作物特定部が特定した作物に応じた所定範囲内になる前記施用物の組み合わせを決定する、請求項1から3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記定量結果取得部は、前記所定の成分の含有量が既知である複数の既知試料のスペクトルを多変量解析した結果に基づいて各既知試料のスペクトルの特徴を表した既知試料特徴データの中から前記土壌試料のスペクトルの特徴データと類似したものを特定し、特定した前記既知試料特徴データに対応する前記既知試料の検量線を用いて、前記土壌試料のスペクトルから前記定量結果を取得する、請求項1から4の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記土壌試料を輸送するための輸送容器を指定された利用者に配送させる配送手配部を備える、請求項1から5の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置により実行される土壌分析サービスの提供方法であって、
対象となる圃場において採取された土壌試料に含まれる所定の成分を定量した定量結果を取得する定量結果取得ステップと、
予め登録されている複数種類の施用物の中から、前記定量の結果に基づいて、施用後の前記圃場における前記所定の成分の量が所定範囲内になる前記施用物の組み合わせを決定する施用物決定ステップと、を含む土壌分析サービスの提供方法。
【請求項8】
対象となる圃場において採取された土壌試料を分析する分析装置と、
前記分析装置による分析結果に基づき、前記土壌試料に含まれる所定の成分を定量する定量装置と、
予め登録されている複数種類の施用物の中から、前記定量の結果に基づいて、施用後の前記圃場における前記所定の成分の量が所定範囲内になる前記施用物の組み合わせを決定する情報処理装置と、を含む土壌分析システム。
【請求項9】
情報処理装置と分析装置とを含む土壌分析システムにより実行される土壌分析サービスの提供方法であって、
利用者からの土壌分析サービスの利用申請を受け付ける受付ステップと、
対象となる圃場において採取された土壌試料を輸送するための輸送容器を前記利用者に配送させる配送手配ステップと、
前記輸送容器に収容された状態にて前記分析装置の所在地に輸送された前記土壌試料を、当該分析装置により分析する分析ステップと、
前記分析の結果に基づいて前記利用者への通知を行う通知ステップと、を含んでおり、
前記分析ステップでは、前記分析装置が前記土壌試料のスペクトルデータを生成し、
前記土壌分析サービスの提供方法は、
前記スペクトルデータを用いて前記土壌試料に含まれる所定の成分を定量する定量ステップと、
予め登録されている複数種類の施用物の中から、前記定量の結果に基づいて、施用後の前記圃場における前記所定の成分の量が所定範囲内になる前記施用物の組み合わせを決定する施用物決定ステップと、をさらに含み、
前記通知ステップでは、決定された前記施用物の組み合わせを前記利用者に通知する、土壌分析サービスの提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、圃場に施用する肥料または土性改良材等の施用物を決定する情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から土壌のスペクトルデータを解析して、その土壌に含まれる様々な成分の含量を測定する技術が知られている。例えば、下記の特許文献1には、土壌に照射した赤外線の拡散反射光をスペクトル分析して土壌中の有効元素成分量を測定し、圃場に欠乏する土壌成分を算出し、その算出結果を表示する作業車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-209314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、測定した有効元素成分量を円グラフによって表示することが記載されている。このような従来技術には、実際に入手できる肥料または土性改良材を用いて、過不足のない施用をすることが難しいという問題がある。
【0005】
例えば、特許文献1の作業車両において、圃場に硝酸態窒素とマグネシウムとが不足していることが円グラフによって示されたとする。このような場合、硝酸態窒素のみを含む肥料と、マグネシウムのみを含む肥料とを入手できれば、それらの肥料により不足を補うことができる。しかしながら、市販されている肥料または土性改良材には、複数の有効成分が含まれているものも多く、そのような肥料または土性改良材を用いて過不足ない施用をすることは難しい。
【0006】
本発明の一態様は、施用するべき肥料または土性改良材等の施用物を検討するという負担を利用者に負わせることなく、適切な施用物を施用することを可能にする情報処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、対象となる圃場において採取された土壌試料に含まれる所定の成分を定量した定量結果を取得する定量結果取得部と、予め登録されている複数種類の施用物の中から、前記定量の結果に基づいて、施用後の前記圃場における前記所定の成分の量が所定範囲内になる前記施用物の組み合わせを決定する施用物決定部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る土壌分析サービスの提供方法は、情報処理装置により実行される土壌分析サービスの提供方法であって、対象となる圃場において採取された土壌試料に含まれる所定の成分を定量した定量結果を取得する定量結果取得ステップと、予め登録されている複数種類の施用物の中から、前記定量の結果に基づいて、施用後の前記圃場における前記所定の成分の量が所定範囲内になる前記施用物の組み合わせを決定する施用物決定ステップと、を含む。
【0009】
また、本発明の一態様に係る土壌分析システムは、対象となる圃場において採取された土壌試料を分析する分析装置と、前記分析装置による分析結果に基づき、前記土壌試料に含まれる所定の成分を定量する定量装置と、予め登録されている複数種類の施用物の中から、前記定量の結果に基づいて、施用後の前記圃場における前記所定の成分の量が所定範囲内になる前記施用物の組み合わせを決定する情報処理装置と、を含む。
【0010】
また、本発明の一態様に係る土壌分析サービスの提供方法は、情報処理装置と分析装置とを含む土壌分析システムにより実行される土壌分析サービスの提供方法であって、利用者からの土壌分析サービスの利用申請を受け付ける受付ステップと、対象となる圃場において採取された土壌試料を輸送するための輸送容器を前記利用者に配送させる配送手配ステップと、前記輸送容器に収容された状態にて前記分析装置の所在地に輸送された前記土壌試料を、当該分析装置により分析する分析ステップと、前記分析の結果に基づいて前記利用者への通知を行う通知ステップと、を含んでおり、前記分析ステップでは、前記分析装置が前記土壌試料のスペクトルデータを生成し、前記土壌分析サービスの提供方法は、前記スペクトルデータを用いて前記土壌試料に含まれる所定の成分を定量する定量ステップと、予め登録されている複数種類の施用物の中から、前記定量の結果に基づいて、施用後の前記圃場における前記所定の成分の量が所定範囲内になる前記施用物の組み合わせを決定する施用物決定ステップと、をさらに含み、前記通知ステップでは、決定された前記施用物の組み合わせを前記利用者に通知する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、施用するべき肥料または土性改良材等の施用物を検討するという負担を利用者に負わせることなく、適切な施用物を施用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1における土壌分析システムの概要を示す図である。
図2】実施形態1における定量装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施形態1における情報処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図4】情報処理装置における利用者データベースの構成例を示す図である。
図5】情報処理装置における作物データベースの構成例を示す図である。
図6】情報処理装置における施用物データベースの構成例を示す図である。
図7】輸送容器の構成例を示す図である。
図8】輸送容器の他の構成例を示す図である。
図9】定量装置におけるデータベースの構成例を示す図である。
図10】特徴データを座標平面上にプロットした例を示す図である。
図11】クラスタ化の結果の例を示す図である。
図12】対象試料のスペクトルの特徴データと類似した特徴データを特定した例を示す図である。
図13】定量装置においてデータベースを構築する処理の一例を示すフローチャートである。
図14】定量装置において前処理条件と因子数を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
図15】定量装置において対象試料の性状を特定する処理の一例を示すフローチャートである。
図16】定量装置においてデータベースを更新する処理の一例を示すフローチャートである。
図17】定量装置において前処理条件を段階的に更新する処理の一例を示すフローチャートである。
図18】情報処理装置における処理の一例を示すフローチャートである。
図19】実施形態2における土壌分析システムの概要を示す図である。
図20】実施形態2における情報処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
実施形態1の土壌分析システム1000について、以下に説明する。説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。簡潔化のため、公知技術と同様の事項についても、説明を適宜省略する。
【0014】
本明細書において述べる各構成要素および各数値は、特に明示されない限り、単なる一例であることに留意されたい。従って、特に明示されない限り、各構成要素の位置関係は、各図の例に限定されない。また、各図面は、各構成要素の形状、構造、および位置関係を概略的に説明するものであり、必ずしも実際の通りに描かれていないことに留意されたい。
【0015】
<土壌分析システム1000の概要>
図1は、土壌分析システム1000の概要を示す図である。土壌分析システム1000は、定量装置1と情報処理装置2と分析装置3とを含む。図1の例では、分析装置3は、分析施設(対象となる圃場において採取された土壌試料を分析するための施設)内に設けられている。以下では、対象となる圃場を、単に「圃場」と略称する。
【0016】
分析装置3は、圃場において採取された土壌試料を分析する。定量装置1は、分析装置3による分析結果に基づき、土壌試料に含まれる所定の成分を定量する。情報処理装置2は、予め登録されている複数種類の施用物の中から、定量装置1による定量結果に基づいて、施用後の圃場における所定の成分の量が所定範囲内になる施用物の組み合わせを決定する。
【0017】
図1に示される通り、土壌分析システム1000によれば、本発明の一態様に係る土壌分析サービスの提供方法を実行できる。実施形態1における土壌分析サービスの提供方法は、図1に示されている処理S1~S10を含む。以下、実施形態1における土壌分析サービスの提供方法における処理の流れについて述べる。
【0018】
まず、S1(受付ステップ)において、情報処理装置2は、利用者からの土壌分析サービスの利用申請を受け付ける。一例として、利用者は、情報処理端末(図1の例では、利用者が所有するスマートフォン)に表示された所定の申請フォームに対して入力操作を施すことより、土壌分析サービスの利用申請を行うことができる。情報処理装置2は、申請フォームに入力された各情報を取得することにより、土壌分析サービスの利用申請を受け付ける。
【0019】
S1の後、S2(配送手配ステップ)において、情報処理装置2は、圃場で採取された土壌試料を輸送するための輸送容器を、利用者に配送させる配送手配を行う。一例として、情報処理装置2は、配送業者に配送のための各種情報を供給することにより、配送手配を行う。そして、S2の後、S3(配送ステップ)において、配送業者は、情報処理装置2によってなされた配送手配に従って、輸送容器を利用者に配送する。なお、本発明の一態様に係る輸送容器としては、例えば後述の輸送容器40(あるいは輸送容器45)が使用されてよい。
【0020】
S3の後、利用者は、配送された輸送容器に、圃場において採取された土壌試料を収容する。そして、S4(輸送ステップ)において、利用者は、土壌試料が収容された輸送容器を、分析施設へと輸送する。言い換えれば、輸送ステップでは、輸送容器に収容された状態にて、土壌試料が分析施設(分析装置3の所在地)に輸送される。
【0021】
S4の後、S5(分析ステップ)において、分析装置3は、分析施設へと輸送された土壌試料を分析する。一例として、分析ステップでは、分析装置3は、土壌試料を分析することにより、土壌試料のスペクトルデータを生成してよい。
【0022】
S5の後、S6(分析結果取得ステップ)において、定量装置1は、分析装置3による分析結果を取得する。そして、S6の後、S7(定量ステップ)において、定量装置1は、分析装置3による分析結果に基づき、土壌試料に含まれる所定の成分を定量する。一例として、定量ステップでは、定量装置1は、土壌試料のスペクトルデータを用いて、前記所定の成分を定量してよい。
【0023】
S7の後、S8(定量結果取得ステップ)において、情報処理装置2は、定量装置1による定量結果を取得する。そして、S8の後、S9(施用物決定ステップ)において、情報処理装置2は、予め登録されている複数種類の施用物の中から、定量装置1による定量結果に基づいて、施用後の圃場における所定の成分の量が所定範囲内になる施用物の組み合わせを決定する。
【0024】
S9の後、S10(通知ステップ)において、情報処理装置2は、分析装置3による分析結果に基づいて、利用者への通知を行う。具体的には、通知ステップにおいて、情報処理装置2は、分析装置3による分析結果に基づく各種情報を、上述の情報処理端末に通知する。
【0025】
一例として、通知ステップにおいて、情報処理装置2は、(i)分析結果取得ステップにおいて得られた分析結果、(ii)定量結果取得ステップにおいて得られた定量結果、および、(iii)施用物決定ステップにおいて決定された施用物の組み合わせ、のうちの少なくとも1つを通知してよい。
【0026】
別の例として、通知ステップにおいて、情報処理装置2は、分析結果に基づいて、(i)施用物を提案する通知、(ii)必要な施用物を購入できる購入先(例:店舗または販売会社)の通知、および、(iii)施用物の配送通知、のうちの少なくとも1つを通知してもよい。
【0027】
なお、土壌分析システム1000においては、S1~S3の処理を省略してもよい。この場合、利用者は、必要事項を記載した利用申請書と共に土壌試料を分析施設に送ればよい。
【0028】
<定量装置1の構成例>
続いて、定量装置1の構成例について述べる。図2は、定量装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。定量装置1は、(1)性状が未知の対象試料について測定されたスペクトルから、その対象試料の性状を特定する機能、(2)対象試料の性状の特定に用いるデータベースを構築する機能、および(3)上記データベースを更新する機能を備えている。各機能の詳細は以下にて順次説明する。
【0029】
なお、以下では、対象試料が土壌試料であり、スペクトルは所定の光源から照射された光が土壌試料で反射した反射光を集光して測定したものである例を説明する。また、以下では、対象試料の性状として、対象試料に含まれる対象成分の濃度を特定する例を説明する。対象成分は、当該成分の濃度がスペクトルに反映されるものであればよい。
【0030】
定量装置1は、定量装置1の各部を統括して制御する制御部10、定量装置1が使用する各種データを記憶する記憶部11、定量装置1に対する入力を受け付ける入力部12、およびデータを出力する出力部13を備えている。なお、記憶部11、入力部12、および出力部13は、定量装置1に外付けされた、定量装置1とは別体の装置であってもよい。
【0031】
制御部10には、入力受付部101、最適化部102、前処理部103、性状導出データ生成部104、評価部105、クラスタリング部106、およびデータベース生成部107が含まれている。また、制御部10には、特徴データ生成部108、類似データ特定部109、および性状特定部110が含まれている。
【0032】
記憶部11には、データベース111が記憶されている。データベース111は、定量装置1により構築および更新される。定量装置1は、データベース111を用いて、対象試料の性状特定を行う。
【0033】
入力受付部101は、入力部12に入力されたデータを制御部10の各部に受け渡す。なお、入力受付部101は、分析装置3による分析結果を取得することもできる。入力受付部101は、データベース111の構築時には、入力部12に入力されたデータベース構築用の各データを最適化部102に渡す。一方、入力受付部101は、対象試料の性状判定時には、入力部12に入力された対象試料のスペクトルを前処理部103に渡す。また、データベース111に新たに追加するデータが入力部12に入力された場合にも、入力受付部101は、そのデータを前処理部103に渡す。
【0034】
最適化部102は、スペクトルから試料の性状を精度よく特定するために当該スペクトルに対して行う前処理の最適条件の探索を行う。詳細は後述するが、最適化部102は、最適条件の探索を、その精度を段階的に上げながら詳細まで行ってもよい。また、最適化部102は、後述する多変量解析における最適な説明変数の数(以下、因子数とも呼ぶ)の決定も行う。
【0035】
前処理部103は、上述の前処理をスペクトルに対して行う。例えば、上記前処理は、スペクトルの微分、移動平均の算出、および波長範囲の絞り込み等であってもよい。スペクトルを微分する前処理の最適化は、最適な微分次数の算出であり、スペクトルの移動平均を算出する前処理の最適化は、移動平均を算出する対象とする波長範囲(測定点の範囲)の最適化であり、波長範囲の絞り込みは最適な波長範囲の特定である。
【0036】
性状導出データ生成部104は、性状が既知である既知試料のスペクトルと性状との関係を示す性状導出データを生成する。より詳細には、性状導出データ生成部104は、複数の既知試料のスペクトルを多変量解析して、スペクトルと性状との関係を示す性状導出データを生成する。性状が既知の既知試料とは、具体的には対象成分の濃度が既知の土壌試料である。また、上記性状導出データは、具体的には対象成分の濃度を算出するための検量線である。既知試料の対象成分の濃度は例えば化学分析等によって特定されたものであってもよい。
【0037】
多変量解析の具体的な手法は特に限定されず、例えばPCA(Principal Component Analysis:主成分分析)を行ってもよいし、PLS(Partial Least Squares)による解析を行ってもよい。PLSでは、目的変数の情報も使って解析を行うため、目的変数と関連性の高い説明変数(因子)を特定し、この説明変数に基づく検量線を算出することができる。目的変数の情報としては、スペクトルに対応する既知試料の性状を示すデータ、すなわち既知試料に含まれる対象成分の濃度を示すデータを用いればよい。
【0038】
PLSを適用する場合、性状導出データ生成部104は、PLSR(Partial Least Squares Regression:部分的最小二乗回帰)により、下記の数式によって表される検量線を算出する。
Y=a+a+a+a+…+a
なお、上記数式において、Yは対象成分の濃度、aは切片の値、X~Xは移動平均および微分された波長の吸光度の値、a~aは重み(回帰係数)であり、nは移動平均化後の波長の数に等しい。性状導出データ生成部104は、複数の既知試料のスペクトルデータと、その対象成分濃度から、上記数式のa~aの値を算出して、検量線を生成する。
【0039】
評価部105は、性状導出データ生成部104が生成した性状導出データの妥当性を評価する。具体的には、評価部105は、上述の検量線の妥当性を示す評価値として、当該検量線で算出した濃度と、化学分析等により測定した濃度との相関係数を算出する。
【0040】
クラスタリング部106は、スペクトルの特徴が類似した既知試料をクラスタ化する。詳細は後述するが、クラスタ化は、特徴データ生成部108が生成する特徴データに基づいて行われる。
【0041】
データベース生成部107は、既知試料について特徴データ生成部108が生成する特徴データと、該特徴データに対応する性状導出データである検量線とを対応付けてデータベース化する。このようにして生成されたデータベースがデータベース111である。
【0042】
特徴データ生成部108は、複数の既知試料のスペクトルを多変量解析した結果に基づいて各既知試料のスペクトルの特徴を表した特徴データを生成する。具体的には、特徴データ生成部108は、各既知試料のスペクトルから、性状導出データ生成部104による多変量解析によって特定された説明変数(因子)の値を特定して、それを各既知試料の特徴データとする。例えば、多変量解析にPCAを適用した場合に、第1~第n主成分の各値がそれぞれa~aであったとすれば、特徴データは(a,…,a)となる。多変量解析にPLSを適用した場合にも同様にして特徴データを生成することができる。なお、PLSRによって算出された検量線の重みa~aを特徴データとしてもよい。これらの特徴データもデータベース111に記録される。
【0043】
類似データ特定部109は、データベース111に記録されている複数の既知試料の特徴データの中から、対象試料のスペクトルの特徴データと類似したものを特定する。例えば、類似データ特定部109は、特徴データを構成する因子の値を、当該特徴データの位置を示す値とみなして、対象試料のスペクトルの特徴データと、各既知試料の特徴データとの間の距離をそれぞれ算出してもよい。そして、類似データ特定部109は、当該距離が最も短かった既知試料の特徴データを、対象試料のスペクトルの特徴データと類似した特徴データであると特定してもよい。
【0044】
性状特定部110は、類似データ特定部109が特定した特徴データに対応する検量線を用いて、対象試料のスペクトルから当該対象試料に含まれる対象成分の濃度を算出する。
【0045】
以上のように、定量装置1は、複数の既知試料の特徴データの中から対象試料のスペクトルの特徴データと類似したものを特定する類似データ特定部109と、類似データ特定部109が特定した特徴データに対応する性状導出データを用いて、対象試料のスペクトルから当該対象試料の性状を特定する性状特定部110と、を備えている。
【0046】
上記の構成によれば、スペクトルを多変量解析した結果に基づいて各既知試料のスペクトルの特徴を表した既知試料特徴データの中から、対象試料のスペクトルの特徴データと類似したものを特定する。これにより、スペクトルの特徴が類似した既知試料特徴データを精度よく特定することができる。
【0047】
そして、上記の構成によれば、類似データ特定部が特定した既知試料特徴データに対応する既知試料の性状導出データを用いて、対象試料の性状を特定する。これにより、対象試料用の性状導出データを作成することなく、対象試料の性状を速やかに特定することができる。
【0048】
また、以上のように、定量装置1は、各既知試料のスペクトルの特徴データを生成する特徴データ生成部108と、既知試料のスペクトルと性状との関係を示す性状導出データを生成する性状導出データ生成部104と、既知試料の特徴データと、該特徴データに対応する性状導出データとを対応付けてデータベース化するデータベース生成部107と、を備えている。
【0049】
上記の構成によれば、既知試料の特徴データと、該特徴データに対応する性状導出データとが対応付けられたデータベース111を構築することができる。上述のように、このデータベース111を用いることにより、対象試料のスペクトルの特徴データから、その特徴データと類似した特徴データを特定することができる。そして、特定した特徴データに対応する性状導出データを用いて、対象試料のスペクトルから当該対象試料の性状を特定することができる。
【0050】
以上の説明から明らかである通り、定量装置1によれば、分析装置3による分析結果に基づき、土壌試料に含まれる所定の成分を定量することができる。すなわち、定量装置1によれば、上述の定量ステップを実行できる。例えば、定量ステップにおいて、定量装置1は、土壌試料のスペクトルデータを用いて、前記所定の成分を定量できる。
【0051】
<情報処理装置2の構成例>
続いて、情報処理装置2の構成例について述べる。図3は、情報処理装置2の要部構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置2は、情報処理装置2の各部を統括して制御する制御部20、情報処理装置2が使用する各種データを記憶する記憶部21、通信部22、および出力部23を備える。通信部22は、外部装置(例:定量装置1)と通信するための通信インターフェースである。なお、記憶部21および出力部23は、情報処理装置2に外付けされた、情報処理装置2とは別体の装置であってもよい。
【0052】
制御部20には、利用申請受付部201、配送手配部202、定量結果取得部203、作物特定部204、施用物決定部205、面積特定部206、数量算出部207、および通知部208が含まれている。
【0053】
記憶部21には、利用者データベース211、作物データベース212、および施用物データベース213が記憶されている。利用者データベース211は、情報処理装置2により構築および更新される。作物データベース212および施用物データベース213はそれぞれ、予め構築されている。
【0054】
利用申請受付部201は、通信部22を介して、利用者からの土壌分析サービスの利用申請を受け付ける。このように、利用申請受付部201によって、上述の受付ステップが実行される。
【0055】
配送手配部202は、利用申請受付部201から、土壌分析サービスの利用申請の内容を示す情報(利用申請情報)を取得する。そして、配送手配部202は、利用申請情報に基づいて、圃場において採取された土壌試料を輸送するための輸送容器を指定された利用者に配送させる配送手配を行う。このように、配送手配部202によって、上述の配送手配ステップが実行される。
【0056】
配送手配部202によれば、利用者に自動的に輸送容器を配送することができる。そして、利用者は、送られてきた輸送容器に圃場で採取した土を入れて所定の輸送先に送るだけで、施用するべき施用物の組み合わせを、土壌分析システム1000によって(より詳細には、情報処理装置2によって)決定してもらうことができる。
【0057】
定量結果取得部203は、通信部22を介して、定量装置1による定量結果(すなわち、圃場において採取された土壌試料に含まれる所定の成分を定量した定量結果)を取得する。このように、定量結果取得部203によって、上述の定量結果取得ステップが実行される。
【0058】
作物特定部204は、圃場において栽培される作物を特定する。例えば、作物特定部204は、利用申請情報に含まれている、圃場において栽培される作物を示す情報(栽培作物情報)を取得することにより、当該作物を特定する。
【0059】
施用物決定部205は、予め登録されている複数種類の施用物の中から、定量装置1による定量結果に基づいて、施用後の圃場における所定の成分の量が所定範囲内になる施用物の組み合わせ(以下、推奨施用物セットとも称する)を決定する。このように、施用物決定部205によって、上述の施用物決定ステップが実行される。
【0060】
一例として、施用物決定部205は、所定の成分の量が、作物特定部204が特定した作物に応じた所定範囲内になる推奨施用物セットを決定することが好ましい。この場合、栽培される作物を考慮せずに施用物を決定する場合と比べて、作物の良好な生育が期待できる施用物を決定することができる。
【0061】
面積特定部206は、圃場の面積(圃場面積)を特定する。例えば、面積特定部206は、利用申請情報に含まれている、圃場面積を示す情報(圃場面積情報)を取得することにより、当該圃場面積を特定する。そして、数量算出部207は、面積特定部206が特定した圃場面積に基づいて、施用物決定部205が決定した推奨施用物セットに係る各施用物の所要数量を算出する。
【0062】
上記の構成によれば、数量算出部207によって、圃の面積に応じた各施用物の所要数量を自動的に算出することができる。このため、利用者は、各施用物の所要数量を自分で計算することが不要となる。それゆえ、利用者の利便性を高めることができる。
【0063】
通知部208は、通信部22を介して、分析装置3による分析結果に基づいて、利用者への通知を行う。このように、通知部208によって、上述の通知ステップが実行される。通知の方法は特に限定されない。例えば、通知部208は、電子メールにより通知を行ってもよいし、SNS(Social Networking Service)等を介して通知を行ってもよい。
【0064】
<情報処理装置2における各データベースの構成例>
図4図6を参照し、情報処理装置2における各データベースの構成例を説明する。図4は、利用者データベース211の構成例を示す図である。図4の例における利用者データベース211では、申請No.(申請番号)ごとに、利用者、配送先、栽培作物、圃場面積、定量結果、推奨施用物セット、および所要数量が対応付けられている。また、図示のように、利用者データベース211には、土壌pHが記録されてもよい。土壌pHは、利用申請時に利用者に入力してもらってもよいし、分析施設等で分析することによって特定してもよい。
【0065】
なお、実施形態1では、利用申請受付部201が利用者からの土壌分析サービスの利用申請を受け付けるたびに、利用申請受付部201によって個別の申請番号が付与されるものとする。また、利用申請情報には、利用者を示す情報(利用者情報)および配送先を示す情報(配送先情報)が含まれているものとする。さらに、上述の通り、利用申請情報には、栽培作物情報および圃場面積情報が含まれているものとする。
【0066】
定量結果取得部203は、定量結果取得ステップにおいて取得した定量結果(定量装置1による定量結果)を、利用者データベース211に記録する。図4の例では、申請No.「0001」について、成分X、Y、およびZの定量結果が記録されている。また、申請No.「0002」について、成分MおよびNの定量結果が記録されている。この例のように、土壌試料毎に異なる成分の定量を行うようにしてもよい。より詳細には、図4の例では、栽培作物が「米」である申請No.「0001」の土壌試料については成分X、Y、Zの定量を行い、栽培作物が「大豆」である申請No.「0002」の土壌試料については成分M、Nの定量を行っている。このように、栽培作物に応じて、その栽培作物の生育に必要な成分の定量を行うことにより、適切な施用物を決定することができる。
【0067】
図5は、作物データベース212の構成例を示す図である。作物データベース212では、栽培作物ごとに、当該栽培作物の生育に必要な成分およびその量が対応付けられている。図5の例では、栽培作物「米」について、生育に必要な成分(X、Y、Z)およびその量が記録されている。また、栽培作物「大豆」について、生育に必要な成分(M、N)およびその量が記録されている。また、作物データベース212では、図5に示すように、栽培作物ごとに、その栽培作物の生育に適したpHの範囲を示す適正pHがさらに対応付けられていてもよい。また、作物データベース212には、栽培作物の生育時期ごとに、その生育時期における当該栽培作物の生育に必要な成分およびその量が記録されていてもよい。
【0068】
図6は、施用物データベース213の構成例を示す図である。施用物データベース213では、施用物ごとに、当該施用物の含有成分およびその量が対応付けられている。図6の例では、肥料x(30kg/1袋)について、含有成分(X、Y、Z)およびその量が記録されている。また、肥料y(30kg/1袋)について、含有成分(M、N)およびその量が記録されている。なお、施用物データベース213では、図6に示すように、施用物ごとに、その施用物を施用したときの土壌pHへの影響(例えばpHを低下させる等)がさらに対応付けられていてもよい。
【0069】
図4を再び参照し、利用者データベース211についてさらに説明する。施用物決定部205は、定量装置1による定量結果に基づいて決定した推奨施用物セットを、利用者データベース211に記録する。図4の例では、申請No.「0001」に対応する推奨施用物セットとして、「肥料xおよび肥料y」が記録されている。また、申請No.「0002」に対応する推奨施用物セットとして、「肥料mおよび資材n」が記録されている。
【0070】
一例として、施用物決定部205は、作物データベース212を参照することによって、定量装置1による定量結果に基づいて、ある栽培作物(例:米)における所定の成分(例:成分X)の不足量を算出する。そして、施用物決定部205は、施用物データベース213を参照することによって、前記所定の成分の不足量を補填しうる施用物の組み合わせを探索する。言い換えれば、施用物決定部205は、施用物データベース213を参照することによって、施用後の圃場における前記所定の成分の量が所定範囲内になる施用物の組み合わせを探索する。施用物決定部205は、探索によって見出された施用物の組み合わせを、推奨施用物セットとして決定する。このように、施用物決定部205は、作物データベース212および施用物データベース213を参照することによって、推奨施用物セットを決定できる。
【0071】
また、施用物決定部205は、施用後の圃場における土壌pHが作物データベース212に示される適正pHの範囲内になるように施用物セットを決定してもよい。この場合、施用物決定部205は、利用者データベース211に示される土壌pHと、施用物データベース213に示される各施用物のpHへの影響に基づいて施用物セットを決定すればよい。
【0072】
また、数量算出部207は、圃場面積に基づいて決定した推奨施用物セットに係る各施用物の所要数量を、利用者データベース211に記録する。図4の例では、申請No.「0001」に対応する前記所要数量として、「肥料xおよび肥料yの所要数量」が記録されている。また、申請No.「0002」に対応する前記所要数量として、「肥料mおよび資材nの所要数量」が記録されている。
【0073】
数量算出部207は、施用物データベース213を参照することによって、ある申請No.に対応する圃場面積(例:申請No.「0001」に対応する圃場面積)に応じた、推奨施用物セットに係る各施用物の所要数量を算出してもよい。例えば、数量算出部207は圃場面積と各施用物の所要数量との対応関係を示す所与の演算式を用いて、前記所要数量を算出してよい。例えば、施用物決定部205が、単位面積の圃場に対して施用する各施用物の数量(例:個数)を決定する場合、数量算出部207は、その数量に圃場面積を乗じて各施用物の数量を算出すればよい。
【0074】
<輸送容器40の構成例>
続いて、図7を参照し、輸送容器40の構成例を説明する。輸送容器40は、本発明の一態様に係る輸送容器の一例である。図7において、7Aは、輸送容器40の斜視図である。7Bは、輸送容器40の各部材(容器本体41、封止部42、および篩部43)の構成を示す斜視図である。7Cは、輸送容器40の各部材を係合するための構造を示す断面図である。7Dは、輸送容器40への乾燥剤44の設置例を示す斜視図である。
【0075】
図7に示すように、輸送容器40は、容器本体41、封止部42、および篩部43を備える。輸送容器40は、例えば土壌分析システム1000における輸送ステップ(図1のS4を参照)において、圃場で採取された土壌試料を分析施設へ輸送するための容器である。
【0076】
容器本体41は、土壌試料の投入口となる開口部416を有する。また、容器本体41は、底面部410、本体側面部411、および本体係止部415を備える(図1の7B、7C参照)。底面部410は、平面視略正方形であり、輸送容器40の底部を構成する。本体側面部411は、底面部410の各辺から上方に延伸しており、上方に向かうにしたがって輸送容器40の外側方向に漸次広がっている。本体側面部411の上辺は、開口部416の縁を形成する。また、輸送容器40の内部の空間には、土壌試料を乾燥させる乾燥剤44(例えば、シリカゲルあるいは塩化カルシウム等)が配置される(図1の7D参照)。
【0077】
本体係止部415は、本体側面部411の上端部に形成される。本体係止部415は、後述する篩部43および封止部42を開口部416の縁に係止させる構造となっている。具体的には、本体係止部415は、本体側面部上端412と、本体側面部411の上辺から外側方向に延伸する本体外側延伸部413と、本体外側延伸部413の外側の端部から下方に延伸する本体下方延伸部414とを有する(図7の7C参照)。
【0078】
封止部42は、開口部416を封止する。封止部42は、輸送容器40における蓋の役割を果たす。具体的には、封止部42は、上面部420、封止部側面部421、および封止部係止部425を備える(図7の7C参照)。上面部420は、平面視略正方形であり、輸送容器40の頂部を構成する。封止部側面部421は、上面部420の各辺から下方に延伸しており、下方に向かうにしたがって輸送容器40の外側方向に漸次広がっている。
【0079】
封止部係止部425は、篩部43を挟んで封止部42を開口部416の縁に係止するように、封止部側面部421の下端部に形成される。封止部係止部425は、後述する篩部係止部435に対して係合可能な形状を有している。具体的には、封止部係止部425は、封止部側面部421の下辺から上方に延伸する上方延伸部422と、上方延伸部422の上辺から外側方向に延伸する封止部外側延伸部423と、封止部外側延伸部423の外縁から下方に延伸する封止部下方延伸部424とを有する。
【0080】
篩部43は、封止部42により開口部416が封止された容器本体の内部の空間401を、開口部側の空間401aと、その下方側の空間401bとに仕切る。具体的には、篩部43は、篩面430、篩部側面部431、および篩部係止部435(係止部)を備える(図7の7C参照)。篩面430は、平面視略正方形であり、底面部410と上面部420との間に位置する。また、篩面430には複数の穴430aが形成されている。穴430aは、通過した土壌試料が分析に適した粒径となるような径とすればよい。篩部側面部431は、篩面430の各辺から上方に延伸しており、上方に向かうにしたがって輸送容器40の外側方向に漸次広がっている。
【0081】
篩部係止部435は、篩部側面部431の上端部に形成される。篩部係止部435は、篩部43を開口部416の縁に係止する。このため、篩部係止部435は、本体係止部415に対して係合可能な形状を有している。具体的には、篩部係止部435は、篩部側面部上端432と、篩部側面部431の上辺から外側方向に延伸する篩部外側延伸部433と、篩部外側延伸部433の外縁から下方に延伸する篩部下方延伸部434とを有する。
【0082】
図7の7A~7Cに示すように、本体係止部415に篩部係止部435を係止することにより、容器本体41に篩部43が固定される。この状態で土壌試料が開口部416から容器本体41の内部、より詳細には篩部43上に投入される。そして、篩部係止部435に封止部係止部425を係止することにより、土壌が入った容器本体41が密閉され、篩部43が容器本体41と封止部42に挟まれた状態で固定される。
【0083】
以上のように、輸送容器40では、篩部43が、容器本体41の内部の空間401を、土壌試料が投入される開口部416側の空間401aと、その下方側の空間401bとに仕切るように設けられている。よって、輸送容器40に投入された土壌試料は、輸送中の振動により篩われて、篩部43の下方側の空間401bに移る。この空間401bに移った土壌試料は篩部43を通過しているため粉状になり、また、粒径の大きいものや小石などの異物が取り除かれている。さらに、輸送容器40の内部の空間には乾燥剤44が配置されているから、篩われて粉状になった土壌試料は速やかに乾燥し、分析に適した水分含量またはそれに近い水分含量となる。
【0084】
したがって、輸送容器40で土壌試料を輸送することにより、土壌試料の分析前の前処理の手間を省き、スムーズに分析を行うことが可能になる。また、分析施設において土壌試料を乾燥させるためのスペースを確保する必要がなくなるという利点もある。
【0085】
なお、図7に示した構成は例示にすぎず、輸送容器40の構成はこの例に限定されるものではない。例えば、輸送容器40を、全体として円柱状の形状としてもよい。なお、土壌試料の篩い分けの効率を上げるという観点からは、輸送容器40は、高さに比して幅および奥行きが大きい扁平な形状とすることが好ましい。また、容器本体41、封止部42、および篩部43は、例えばポリエチレン樹脂など、公知の熱可塑性樹脂で構成され得る。
【0086】
また、容器本体41、封止部42、および篩部43の係合構造も任意であり、図7の例に限られない。例えば、封止部42を容器本体41にねじ止めする構造としてもよい。また、例えば、本体側面部411に篩部43を固定し、容器本体41の上端部に封止部42を係合させる構成としてもよい。また、例えば、封止部42と容器本体41との間にパッキンを設ける等して密閉度を高めてもよい。
【0087】
輸送容器40の容積は、分析に必要な土壌試料の量に応じたものとすればよい。例えば、1回の分析に乾燥後の重量で20~30gの土壌試料が必要であり、3回の分析を行う場合、乾燥後の重量で90g程度の土壌試料が得られるような容積の輸送容器40を用いればよい。この場合、例えば、篩部43の上部の空間401aに少なくとも150g程度の土壌試料(乾燥前)を収容でき、篩部43の下部の空間401bに少なくとも90g程度の土壌試料(乾燥後)を収容できるような容積・形状の輸送容器40を用いればよい。
【0088】
また、乾燥剤44は、輸送容器40の内部の空間の任意の場所に配置することが可能であり、例えば、封止部42の内面と容器本体41の内面の両方に配置されてもよい。図1の7Dに示した一例では、乾燥剤44は、容器本体41の本体側面部411および封止部42の上面部420に配置されている。なお、乾燥剤44の配置箇所としてはこれに限定されず、例えば、容器本体41の底面部410にも配置してもよい(図2の8C参照)。
【0089】
上記の構成によれば、封止部42の内面と容器本体41の内面の両方に乾燥剤44が配置されているので、容器内部の土壌試料を上下両方向から効率よく乾燥させることができる。
【0090】
また、上述のように、篩部43は、篩部43を開口部416の縁に係止する篩部係止部435(係止部)と、篩部係止部435よりも下方側に位置する篩面430とを含んでもよい。
【0091】
上記の構成によれば、篩部係止部435により篩部43を開口部416に簡単に取り付けることができる。また、篩面430が篩部係止部435よりも下方側に位置しているため、開口部416と篩面430の間に土壌試料を収容する空間401aが生じる。これにより、土壌試料の投入や、封止部42による封止を行い易くすることができる。
【0092】
<輸送容器45の構成例>
続いて、図8を参照し、輸送容器45の構成例を説明する。輸送容器45は、本発明の一態様に係る輸送容器の別の例である。図8において、8Aは、輸送容器45の斜視図である。8Bは、輸送容器45の各部材(容器本体41、封止部42、および篩部46)の構成を示す斜視図である。8Cは、輸送容器45への乾燥剤44の設置例を示す斜視図である。
【0093】
図8に示すように、輸送容器45は、容器本体41、封止部42、および篩部46を備える。上述した篩部43と篩部46との違いは、篩部46の篩面460がメッシュ(網)で形成されている点である。このように篩面460をメッシュとしてもよい。メッシュサイズは、通過した土壌試料が分析に適した粒径となるようなサイズとすればよい。篩面460は、例えば繊維製の柔軟なもので構成してもよいし、樹脂や金属等で構成してもよい。
【0094】
篩部46は、輸送容器40と同様にして容器本体41に取り付けてもよいし、他の方法で取り付けてもよく、その取り付け方は特に限定されない。例えば、繊維製の柔軟な篩部46を用いる場合、容器本体41の側面部に篩部46を固定すればよい。固定方法は特に限定されないが、篩部46で篩われた土壌試料を容易に取り出すことができるように、篩部46を容器本体41に着脱可能な態様で固定することが好ましい。なお、容器本体41の篩面より下方側に土壌試料の取り出し口を設けてもよく、この場合、篩部46を容器本体41に着脱不能に取り付けてもよい。
【0095】
<定量装置1におけるデータベースの構成例>
続いて、図9を参照し、定量装置1におけるデータベース、すなわちデータベース111の構成例を説明する。図9は、データベース111の構成例を示す図である。図9の例におけるデータベース111では、試料IDごとに、測定成分、特徴データ、検量線、相関係数、因子数、更新日時、および前処理条件が対応付けられている。
【0096】
試料IDは、各既知試料を識別する識別情報であり、1つの既知試料に対して固有のIDが1つ付与される。また、測定成分は、濃度を測定する対象となる対象成分を示す。図9の例ではFeである。
【0097】
特徴データは、既知試料のスペクトルの特徴を示すデータであり、特徴データ生成部108が生成する。具体的には、特徴データは、多変量解析で特定された説明変数(因子)の値で構成される。また、検量線は、スペクトルから対象成分の濃度を算出するための数式であり、性状導出データ生成部104が算出する。クラスタリング部106が決定したクラスタが同じである既知試料については、同一の検量線が対応付けられる。
【0098】
相関係数は、性状導出データ生成部104が生成した検量線を用いて算出した濃度と、化学分析等により測定した濃度との相関の程度を表した数値であり、評価部105が算出する。また、因子数は、性状導出データ生成部104が行った多変量解析における説明変数の数である。因子数は最適化部102が決定する。
【0099】
更新日時は、各既知試料に関するデータが更新された日時を示す。具体的には、検量線、相関係数、因子数、および前処理条件は更新の対象となっているので、これらのデータの少なくとも何れかが更新されると、その日時が更新日時としてデータベース111に記録される。また、前処理条件は、スペクトルに対して行う前処理の条件を示す。前処理条件は最適化部102が決定する。
【0100】
<特徴データの分布>
特徴データ生成部108が生成する特徴データを座標平面上にプロットすることにより、特徴データ間の関連性を視覚的に分かりやすく表現することができる。図10は、特徴データ生成部108が生成した特徴データを座標平面上にプロットした例を示す図である。なお、図10では、特徴データを構成する複数の因子のうち因子1と因子2の値に基づいてプロットしている。特徴データを構成する因子の数は3以上であってもよい。
【0101】
図10に示す特徴データは、5つの圃場から採取した土壌試料のスペクトル測定結果に基づいて生成されたものである。図10では、同じ圃場から採取した土壌試料の特徴データのプロットが分布するエリアをA1~A5で示している。
【0102】
この結果から、同じ圃場から採取した土壌試料の特徴データのプロットは、ある程度近い範囲にまとまっていることが分かる。ただし、同じ圃場から採取した土壌試料であっても、特徴データのプロット位置に大きな幅があるものも見られ、同じ圃場から採取した土壌試料であっても、必ずしも同様の特徴を有しているとはいえないことが分かる。
【0103】
(土壌試料のクラスタリング)
クラスタリング部106は、特徴データの類似性に基づいて土壌試料をクラスタ化する。すなわち、クラスタリング部106は、上記のプロット位置が近いものが同じクラスタに分類されるようにクラスタ化する。
【0104】
図11は、クラスタ化の結果の例を示す図である。同図では、圃場については考慮せず、特徴データのプロット位置が近い所定数のプロットを特定し、それらのプロットに対応する土壌試料を1つのクラスタとしており、このクラスタ化の結果を円Cで示している。クラスタの作成においては、クラスタの中心とするプロットからの距離と、1つのクラスタに含めるプロットの個数を任意に設定してもよい。この場合、クラスタリング部106は、当該設定に従ってクラスタ化を行う。
【0105】
図示のように、1つの圃場から得られた土壌試料であっても、特徴データのプロット位置が離れていれば異なるクラスタに分類されている。また、異なる圃場から得られた土壌試料であっても、特徴データのプロット位置が近接していれば同じクラスタに分類されている。
【0106】
<類似データの特定>
図10および図11のように特徴データをプロットした場合、類似した特徴データは近い位置にプロットされる。したがって、類似データ特定部109は、対象試料のスペクトルの特徴データと類似した特徴データを特定する際には、対象試料のスペクトルの特徴データとプロット位置が近い特徴データを類似データであると特定すればよい。
【0107】
図12は、対象試料のスペクトルの特徴データと類似した特徴データを特定した例を示す図である。図12に示す座標平面には、上述の5つの圃場から採取した土壌試料のスペクトル測定結果に基づいて生成された特徴データをプロットすると共に、対象試料のスペクトルの特徴データについてもプロットしている(点P)。
【0108】
図示のように、点Pから最も近い位置にある点はQである。よって、この例では、類似データ特定部109は、対象試料のスペクトルの特徴データと最も類似した特徴データは点Qの特徴データであると特定すればよい。具体的には、類似データ特定部109は、対象試料のスペクトルの特徴データのプロット位置と、各既知試料のスペクトルの特徴データのプロット位置との距離を算出し、その距離が最も短いものを類似データと特定する。
【0109】
<処理の流れ(定量装置1におけるデータベース構築)>
定量装置1がデータベース111を構築する処理(データベース生成方法)の流れを図13に基づいて説明する。図13は、定量装置1におけるデータベース111を構築する処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下では、土壌試料のスペクトルから、その土壌試料に含まれる対象成分の濃度を算出するためのデータベース111を構築する例を説明する。
【0110】
S11では、入力受付部101が、複数の既知試料について、そのスペクトルと化学分析結果の入力を受け付ける。なお、化学分析結果は、既知試料に含まれる対象成分の濃度を示すデータである。また、既知試料は、できるだけ多様なものとすることが好ましい。例えば、既知試料として、図10図12の例のように複数の圃場の複数個所で採取された土壌試料を用意してもよい。この場合、S11では、それらの既知試料について測定されたスペクトルと化学分析結果の入力を受け付ける。
【0111】
S12では、最適化部102等により、S11で入力を受け付けた各スペクトルと対応する化学分析結果(濃度)に対する前処理条件と、PLSR解析の因子数とが決定される。S12の処理の詳細は図14に基づいて後述する。
【0112】
S13では、前処理部103が、S12で決定された前処理条件を適用して、S11で入力を受け付けた各スペクトルの前処理を行う。そして、S14では、性状導出データ生成部104が、S13で前処理された各スペクトルについて、S11で入力を受け付けた化学分析結果を目的変数としてPLSR解析を行い、対象成分の濃度を算出するための検量線を算出する。
【0113】
S15(特徴データ生成ステップ)では、特徴データ生成部108が、S14のPLSR解析結果に基づいて、各既知試料の特徴データを生成する。具体的には、特徴データ生成部108は、S13で前処理された各スペクトルについて、PLSR解析によって特定された説明変数の値を算出し、それらを各既知試料の特徴データとする。
【0114】
S16では、クラスタリング部106が、S15で生成された特徴データに基づいて既知試料をクラスタ化する。例えば、クラスタリング部106は、クラスタの中心とする特徴データを選択して、その特徴データからの距離が近いものから順に当該クラスタに分類してもよい。この処理は、上記クラスタに分類した特徴データが所定数に達するまで行う。そして、クラスタの中心とする特徴データを変更しながら、上述の処理を繰り返すことにより、各既知試料のクラスタを決定してもよい。
【0115】
S17では、最適化部102等により、S16で設定されたクラスタのそれぞれについて、スペクトルに対する前処理条件とPLSR解析の因子数とが決定される。S17の処理は、前処理条件と因子数の決定がクラスタ単位で行われることを除けばS12の処理と同様である。
【0116】
S18では、前処理部103が、S17で決定された前処理条件を適用して、各クラスタのスペクトルの前処理を行う。つまり、S18では、クラスタごとに決定された前処理条件で当該クラスタに対応する各スペクトルの前処理が行われる。
【0117】
S19(性状導出データ生成ステップ)では、性状導出データ生成部104が、S16で設定された各クラスタについて、S18で前処理されたスペクトルから検量線を得る処理を行う。具体的には、性状導出データ生成部104は、クラスタごとに前処理したスペクトルを対象として、S11で入力を受け付けた化学分析結果を目的変数としたPLSR解析を行って、クラスタごとの検量線を算出する。
【0118】
S20(データベース生成ステップ)では、データベース生成部107が、各既知試料のデータをデータベース111に記録し、図13の処理は終了する。なお、既知試料のデータとは、既知試料のID、測定成分、特徴データ、検量線、クラスタ等、データベース111に記録する各種データである(図9参照)。以上の処理により、対象試料のスペクトルから当該対象試料に含まれる対象成分の濃度を算出するためのデータベース111が構築される。
【0119】
以上のように、クラスタリング部106は、既知試料の特徴データに基づいて、スペクトルの特徴が類似した既知試料をクラスタ化する(S16)。そして、性状導出データ生成部104は、既知試料のクラスタごとにスペクトルの多変量解析を行うことにより性状導出データである検量線を算出する(S19)。
【0120】
上記の構成によれば、スペクトルの特徴が類似した既知試料のクラスタごとにスペクトルの多変量解析を行って検量線を算出するので、確度の高い検量線を算出することが可能になる。
【0121】
<定量装置1における処理の流れ(前処理条件と因子数の決定)>
図13のS12処理の詳細を図14に基づいて説明する。図14は、定量装置1において前処理条件と因子数を決定する処理の一例を示すフローチャートである。また、図14には、前処理条件の評価基準の例も併せて示している。
【0122】
S121では、最適化部102が、前処理条件を初期値に設定し、S122では、前処理部103が、S121で設定された前処理条件で各スペクトルの前処理を行う。そして、S123では、性状導出データ生成部104が、S122で前処理されたスペクトルから検量線を得る。具体的には、性状導出データ生成部104は、図13のS11で入力を受け付けた化学分析結果を目的変数としたPLSR解析を行って検量線を算出する。
【0123】
S124では、評価部105が、S123で算出された検量線について相関係数を算出する。具体的には、評価部105は、S121で設定された前処理条件で前処理したスペクトルとS123で算出された検量線とを用いて算出した対象成分の濃度と、図13のS11で入力を受け付けた当該成分の濃度とに基づいて相関係数を算出する。
【0124】
また、S124では、最適化部102が、PLSR解析における因子数を算出する。最適化部102は、例えばクロスバリデーションによる予測値を用いて算出した分散の値を指標として因子数を算出してもよい。この場合、最適化部102は、分散値が最大となる因子数を算出してもよい。ただし、検量線の汎用性を考慮すれば、因子数は少ないほど好ましいため、分散値が大きく下がらない範囲で(例えば最大値から1%以内の範囲で)最小の因子数を算出してもよい。
【0125】
また、上記のとおり、因子数は少ないほど好ましいため、因子数に上限(例えば10個)を設定してもよい。この場合、最適化部102は、算出した因子数が上限を超えていた場合には、上限の個数を因子数とする。なお、因子数の算出方法は、ここに挙げた例に限られない。
【0126】
S125では、最適化部102が、S124で算出された相関関数と因子数を一時的に記録する。そして、S126では、最適化部102は、最適化のための試行、すなわちS122~S127の処理の繰り返しを終了するか否かを判定する。具体的には、最適化部102は、試行すべき全ての前処理条件を用いた相関係数と因子数の算出および記録が終了していれば、試行を終了すると判定する。
【0127】
S126で試行を終了する(S126でYES)と判定された場合にはS128の処理に進む。一方、試行を継続する(S126でNO)と判定された場合にはS127の処理に進む。そして、S127では、最適化部102が前処理条件を変更して、処理はS122に戻る。
【0128】
S128では、最適化部102は、S125で一時的に記録した相関係数と因子数の組み合わせの中で、因子数が小さく、相関係数が高い前処理条件を選択する。因子数が小さいものを選択する理由は、因子数が多いほど相関係数は高くなる傾向があるが、因子数が多いほど汎用性が下がるためである。
【0129】
例えば、最適化部102は、所定の評価基準に従って因子数と前処理条件の組み合わせを評価し、評価結果が最良であった因子数と前処理条件の組み合わせを、最適な因子数と前処理条件として選択してもよい。上記評価基準は、因子数が少ないほど、また、相関係数が高いほど高評価となるような基準とすればよい。
【0130】
<定量装置1における処理の流れ(対象試料の性状特定)>
定量装置1が対象試料の性状を特定する処理(スペクトル解析方法)の流れを図15に基づいて説明する。図15は、定量装置1において対象試料の性状を特定する処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下では、対象試料が土壌試料であり、上記性状として対象試料に含まれる対象成分の濃度を特定する例を説明する。
【0131】
S31では、入力受付部101が対象試料のスペクトルの入力を受け付ける。対象試料は対象成分の濃度が未知である土壌試料である。そして、S32では、前処理部103が、図13のS12で決定された前処理条件を適用して、S31で入力を受け付けたスペクトルを前処理する。
【0132】
S33では、特徴データ生成部108が、対象試料の特徴データを生成する。具体的には、特徴データ生成部108は、S32で前処理されたスペクトルについて、図13のS14の検量線算出の際に行われたPLSR解析によって特定された説明変数の値を算出し、その値を対象試料の特徴データとする。
【0133】
S34(類似データ特定ステップ)では、類似データ特定部109が、図13のS15で生成された既知試料の特徴データの中から、対象試料のスペクトルの特徴データと類似したものを特定する。
【0134】
S35では、性状特定部110が、S34で特定された特徴データに対応する検量線を特定する。より詳細には、性状特定部110は、データベース111において、S34で特定された特徴データに対応付けられている検量線を特定する。この検量線は、図13のS19でクラスタごとに算出されたものである。つまり、S35では、対象試料と類似した特徴データの既知試料が属するクラスタについて算出された検量線が取得される。
【0135】
S36(性状特定ステップ)では、性状特定部110は、S35で特定された検量線を用いて、S31で入力を受け付けた対象試料のスペクトルから当該対象試料における対象成分の濃度を算出する。これにより、図15の処理は終了する。なお、性状特定部110は、算出した濃度を出力部13に出力させてもよい。
【0136】
<定量装置1における処理の流れ(データベース更新)>
定量装置1がデータベース111を更新する処理の流れを図16に基づいて説明する。図16は、定量装置1においてデータベース111を更新する処理の一例を示すフローチャートである。
【0137】
S51では、入力受付部101が新たな既知試料のスペクトルと対象成分の濃度を示すデータの入力を受け付ける。新たな既知試料も、データベース111を構築する際に用いた既知試料と同様に土壌試料である。なお、S51では、データベース111を構築するにあたり必要な他のデータの入力についても受け付けてもよい。例えば、図9のようなデータベース111を構築する場合には、測定成分を示すデータ等の入力についても受け付けてもよい。
【0138】
S52では、前処理部103が、図13のS12で決定された前処理条件を適用して、S51で入力を受け付けたスペクトルを前処理する。そして、S53では、特徴データ生成部108が、新たな既知試料の特徴データを生成する。具体的には、特徴データ生成部108は、S52で前処理されたスペクトルについて、図13のS14で行われたPLSR解析によって特定された説明変数の値を算出し、その値を新たな既知試料の特徴データとする。
【0139】
S54では、クラスタリング部106が、新たな既知試料の追加に伴うクラスタの更新を行う。具体的には、クラスタリング部106は、S53で生成された特徴データと、図13のS15で生成済みの各特徴データとを含む全特徴データを対象として、再度クラスタ化を行う。なお、S54におけるクラスタの更新態様はこの例に限られない。例えば、新たな既知試料の特徴データと最も類似した特徴データが属するクラスタを、新たな既知試料の特徴データのクラスタに設定し、他の特徴データのクラスタは変更しないようにしてもよい。
【0140】
S55では、S54で更新されたクラスタのそれぞれについて、最適化部102等により、スペクトルに対する前処理条件と、PLSR解析の因子数とが決定される。S55の処理の詳細は図17に基づいて後述する。
【0141】
S56では、前処理部103が、S55で決定された前処理条件を適用して、更新後の各クラスタのスペクトルの前処理を行う。このように、S56では図13のS18と同様にクラスタごとに決定された前処理条件で当該クラスタに対応する各スペクトルの前処理が行われる。
【0142】
S57では、性状導出データ生成部104が、S54の更新後のクラスタごとに、S56で前処理されたスペクトルのPLSR解析を行って、更新後の各クラスタの検量線を算出する。PLSR解析における目的変数は、S51で入力を受け付けた化学分析結果と、図13のS11で入力を受け付けた化学分析結果である。
【0143】
S58では、データベース生成部107が、新たな既知試料のデータをデータベース111に追加すると共に、クラスタの更新を反映させ、これにより図16の処理は終了する。新たな既知試料のデータとは、新たな既知試料のID、特徴データ、および検量線等のデータベース111に記録する各種データである(図9参照)。また、クラスタに更新があった既知試料については、検量線、相関係数、因子数、前処理条件、および更新日時を更新する。また、図9の例のように、データベース111に更新日時を記録する構成となっている場合、データベース生成部107は更新日時についても記録する。
【0144】
以上のように、新たな既知試料のスペクトルと化学分析結果の入力を受け付けた場合、特徴データ生成部108は、入力されたスペクトルおよび化学分析結果に基づいて既知試料の特徴データを生成する。また、クラスタリング部106は、新たな既知試料の特徴データに基づいてクラスタの更新を行う。そして、性状導出データ生成部104は、更新後のクラスタの検量線を算出し、データベース生成部107は、新たな既知試料の特徴データをデータベース111に追加すると共に、更新されたクラスタに属する各既知試料に対応付ける検量線を更新する。
【0145】
上記の構成によれば、新たな既知試料のスペクトルと、当該新たな既知試料の性状を示す化学分析結果との入力を受け付けた場合に、新たな既知試料の特徴データがデータベース111に追加される。また、上記の構成によれば、クラスタとクラスタに対応する性状導出データが更新され、これに伴って、更新後のクラスタに属する各既知試料に対応付ける検量線も更新される。これにより、性状が未知の対象試料に対して、より類似性の高い既知試料を特定できる可能性を高めて、性状の特定結果の確度を高めることができる。
【0146】
<定量装置1における処理の流れ(前処理条件の段階的な更新)>
図16のS55の処理の詳細を図17に基づいて説明する。図17は、定量装置1において前処理条件を段階的に更新する処理の一例を示すフローチャートである。なお、図17のS551~S558は、図14のS121~S128と概ね同様である。以下では、図14との相違点を中心に説明する。
【0147】
図17の処理では、初回に最適な前処理条件を決定する際には粗い探索を行い、その後、探索精度を段階的に高めて前処理条件をより最適なものに更新する。このため、S55
7の前処理条件の変更において、最初にS558で前処理条件と因子数が選択されるまでの期間は、最適化部102は、予め設定された複数段階の探索精度のうち、最も粗いものを適用して前処理条件を変更する。
【0148】
S558において、最も粗い探索精度での探索の結果に基づき、最適な因子数と前処理条件が選択されると、図16のS56で当該前処理条件での前処理が行われ、S57でPLSR解析と検量線の算出が行われる。そして、S58でこれらの算出結果がデータベース111に反映される。
【0149】
図16のS56以降の処理と並行して、あるいはそれらの処理の後に、最適化部102がS559の処理を行う。S559では、最適化部102は、直近の最適化における探索精度が最大であるか否かを判定する。ここで最大ではないと判定された場合(S559でNO)にはS560の処理に進む。S560では、最適化部102は、直近の最適化における探索精度を一段階上げて前処理条件を変更する。この後、処理はS552に戻る。一方、S559で探索精度が最大であると判定された場合(S559でYES)には、図17の処理は終了する。
【0150】
以上のように、最適化部102は、前処理の最適条件の探索を、探索精度を段階的に上げながら詳細まで行う。そして、性状導出データ生成部104は、最適化部102が検出した最適条件での前処理後のスペクトルを用いて、更新後のクラスタの検量線を算出する。そして、性状導出データ生成部104は、最適化部102がより精度の高い探索で最適条件を検出したときには、当該最適条件での前処理後のスペクトルを用いて、更新後のクラスタの検量線を算出し、データベース111における検量線を更新させる。
【0151】
上記の構成によれば、最初は相対的に粗い探索精度で最適条件を探索するので、この最適条件を適用して速やかに検量線を算出し、データベース111を使用可能な状態とすることができる。そして、データベース111が使用可能な状態となった後、より高い探索精度で探索された最適条件に基づいてデータベース111における検量線を更新するので、検量線の精度を段階的に高めることができる。
【0152】
例えば、10~40の範囲で最適な移動平均を求める場合、S557で移動平均を10ずつ変化させれば4回の変更(S552~S557の処理の4回の繰り返し)で10~40の範囲における最適な移動平均を求めることができる。そして、S558で因子数と前処理条件の選択が行われた後のS560で探索精度が上げられる。例えば、移動平均の変更幅を上記より小さい5にすれば、7回の変更で10~40の範囲における最適な移動平均を求めることができる。この場合、S552~S557の繰り返し回数は多くなるが、移動平均を10ずつ変化させた場合と比べてより妥当な移動平均を求めることができる可能性が高くなる。
【0153】
<定量装置1に関する補足事項>
上記の説明における対象試料は土壌試料に限られない。対象試料は、その性状を示すスペクトルを測定可能な試料であればよく、固体、液体、および気体の何れであってもよい。また、定量装置1が特定する性状は対象成分の濃度に限られず、スペクトルの測定に用いる光および測定方法も特に限定されない。特定したい性状に応じた方法で測定したスペクトルを用いればよい。
【0154】
例えば、対象試料をICP(inductively coupled plasma)分析により得られるスペクトルを用いて当該対象試料の性状を特定する構成とすることもできる。この他にも、例えば、ガスクロマトグラフィー、GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析)、あるいは液体クロマトグラフィー等によって得られるチャートを用いて当該対象試料の性状を特定する構成とすることもできる。
【0155】
また、特定する性状としては任意のものを適用可能である。例えば、土壌試料であれば、上記実施形態の例のように土壌に含まれる各種成分の定量を行うこともできるし、土壌のpH等を特定することも可能である。また、スペクトルと土壌成分との関係をモデル化しておくことにより、土壌成分の定性分析を行うことや、土壌の分類を行うことも可能でなる。
【0156】
定量装置1は、データベース111の構築、更新、並びにデータベース111を用いた特性予測を行う構成であるが、これらを個別の情報処理装置で行う構成としてもよい。例えば、データベースの構築を行うが特性予測は行わない情報処理装置や、特性予測を行うがデータベースの構築は行わない情報処理装置等も本発明の一態様の範疇に含まれる。また、上記において説明した定量装置1に係る各処理は、複数の情報処理装置で実行してもよい。つまり、上記において説明した定量装置1に係る各処理は、1または複数の情報処理装置に実行させることができる(後述の実施形態2も参照)。
【0157】
<情報処理装置2における処理>
続いて、図18を参照し、情報処理装置2における処理の流れについて説明する。図18は、情報処理装置2における処理の一例を示すフローチャートである。図18の例では、図1に例示された各処理のうち、情報処理装置2において実行される処理について説明されている。
【0158】
まず、S71(定量結果取得ステップ)において、定量結果取得部203は、定量装置1による定量結果を取得する。S71の後、S72(作物特定ステップ)において、作物特定部204は、圃場において栽培される作物を特定する。S72の後、S73(施用物決定ステップ)において、施用物決定部205は、定量装置1による定量結果に基づいて、推奨施用物セットを決定する。
【0159】
S73の後、S74(面積特定ステップ)において、面積特定部206は、圃場面積を特定する。S74の後、S75(数量算出ステップ)において、数量算出部207は、圃場面積に基づいて、推奨施用物セットに係る各施用物の所要数量を算出する。S75の後、S76(通知ステップ)において、通知部208は、例えば、分析装置3による分析結果に基づいて、利用者への通知を行う。
【0160】
<効果>
上述の通り、情報処理装置2は、定量装置1による定量結果を取得する定量結果取得部203と、当該定量結果に基づいて推奨施用物セットを決定する施用物決定部205と、を備えている。そして、情報処理装置2により実行される土壌分析サービスの提供方法は、上述の定量結果取得ステップと施用物決定ステップとを含む。上記の構成によれば、施用するべき肥料または土性改良材等の施用物を検討するという負担を利用者に負わせることなく、適切な施用物を施用することが可能になる。
【0161】
また、情報処理装置2によれば、利用者に適切な施用物を施用させることができるので、例えば農業における生産性を向上させることができる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献することもできる。
【0162】
〔実施形態2〕
図19は、実施形態2の土壌分析システム1000Aの概要を示す図である。土壌分析システム1000Aは、情報処理装置2に替えて、情報処理装置2Aを含む。また、土壌分析システム1000Aは、定量装置1を含んでいない。土壌分析システム1000Aでは、情報処理装置2Aは、定量装置1の機能を併有している。また、情報処理装置2Aは、決定した施用物の発注を行う(S10A)点でも情報処理装置2と相違している。
【0163】
図20は、情報処理装置2Aの要部構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置2Aの制御部を、制御部20Aと称する。制御部20Aは、定量結果取得部203に替えて、定量結果取得部203Aを備える。そして、制御部20Aは、発注部209をさらに備える。
【0164】
定量結果取得部203Aは、定量装置1の機能を備えた機能部である。従って、定量結果取得部203Aは、分析装置3による分析結果に基づき、土壌試料に含まれる所定の成分を定量することができる。
【0165】
例えば、実施形態1における定量装置1に関する各説明から明らかである通り、定量結果取得部203Aは、前記所定の成分の含有量が既知である複数の既知試料のスペクトルを多変量解析した結果に基づいて各既知試料のスペクトルの特徴を表した既知試料特徴データの中から前記土壌試料のスペクトルの特徴データと類似したものを特定し、特定した前記既知試料特徴データに対応する前記既知試料の検量線を用いて、前記土壌試料のスペクトルから定量結果を取得する。
【0166】
上述の通り、定量結果取得部203Aは、既知試料特徴データの中から土壌試料のスペクトルの特徴データと類似したものを特定する。これにより、スペクトルの特徴が類似した既知試料特徴データを精度よく特定することができる。加えて、定量結果取得部203Aは、特定した既知試料特徴データに対応する既知試料の検量線を用いて、土壌試料のスペクトルから定量結果を取得する。よって、土壌試料の検量線を作成することなく、速やかに定量結果を取得することができる。このため、定量結果取得部203Aによれば、土壌試料のスペクトルから、当該土壌試料に含まれる所定の成分の定量結果を、高精度かつ速やかに取得することが可能になる。
【0167】
加えて、定量結果取得部203Aによれば、情報処理装置2において土壌試料に含まれる所定の成分を定量することが可能になる。このため、土壌分析システムに、情報処理装置と別体の定量装置を設けることが不要となる。それゆえ、土壌分析システムの全体構成が簡素化されるという利点も得られる。
【0168】
発注部209は、数量算出部207が算出した所要数量だけ施用物を発注する。例えば、発注部209は、所要数量の施用物の発注に係る各種情報を含んだ発注手配情報を生成し、当該発注手配情報を施用物の購入先に対して送信する。発注部209によれば、所要数量の施用物を自動的に発注することができる。このため、利用者による手動発注の手間を省くことができる。
【0169】
図19に示されている通り、土壌分析システム1000Aによっても、本発明の一態様に係る土壌分析サービスの提供方法を実行できる。実施形態2における土壌分析サービスの提供方法は、図19に示されている処理S1~S10Aを含む。S1~S5については、実施形態1と同様であるため、以下では説明を省略する。また、図19におけるS8AおよびS9Aはそれぞれ、図1におけるS9およびS10と同様であるため、これらについても説明を省略する。
【0170】
S5の後、S6A(分析結果取得ステップ)において、情報処理装置2Aは、分析装置3による分析結果を取得する。S6Aの後、S7A(定量ステップ)において、情報処理装置2A(より詳細には、定量結果取得部203A)は、分析装置3による分析結果に基づき、土壌試料に含まれる所定の成分を定量する。そして、S9Aの後、S10Aにおいて、情報処理装置2A(より詳細には、発注部209)は、数量算出部207が算出した所要数量だけ施用物を発注する。
【0171】
以上の通り、土壌分析システム1000Aにより実行される土壌分析サービスの提供方法は、S1(受付ステップ)と、S2(配送手配ステップ)と、S5(分析ステップ)と、S9A(通知ステップ)と、を含む。上述の通り、分析ステップでは、分析装置3が土壌試料のスペクトルデータを生成してよい。そして、当該土壌分析サービスの提供方法は、S7A(定量ステップ)とS8A(施用物決定ステップ)とをさらに含む。上述の通り、定量ステップでは、情報処理装置2Aがスペクトルデータを用いて土壌試料に含まれる所定の成分を定量してよい。そして、通知ステップでは、決定された推奨施用物セットを利用者に通知してよい。
【0172】
上記の構成によれば、土壌分析サービスの利用者は、該サービスの利用申請を行うことにより、輸送容器を受け取ることができる。そして、この利用者は、受け取った輸送容器に圃場で採取した土壌試料を入れて分析装置の所在地に送ればよい。これにより、利用者は、分析の結果に基づく通知を受けることができる。
【0173】
加えて、上記の構成によれば、土壌試料のスペクトルデータを生成して、その土壌試料に含まれる所定の成分を定量できる。そして、施用後の圃場における所定の成分の量が所定範囲内になる施用物の組み合わせを決定し、利用者に通知できる。よって、利用者は、施用するべき肥料または土性改良材等の施用物を検討することなく、適切な施用物を施用することが可能になる。
【0174】
ところで、分析装置3による分析を行う場合には、一般に土壌試料の乾燥等の前処理が必要になる。但し、輸送容器40を使用した場合には、利用者が土壌試料を輸送容器40に入れてから、分析装置3によって分析されるまでの間に、輸送容器40内の土壌試料は、輸送時の振動等により篩われ、乾燥されて、前処理の全部または一部が完了した状態となる。よって、分析装置3による土壌試料の分析前の前処理の手間を省き、スムーズに分析を行うことが可能になる。このことは、輸送容器45を使用した場合についても同様である。
【0175】
〔輸送容器に関する補足事項〕
当業者であれば明らかである通り、本発明の一態様に係る輸送容器は、輸送容器40・45に限定されないことに留意されたい。当該輸送容器は、土壌試料が収容された状態において輸送されることが可能である限り、任意の容器であってよい。従って、本発明の一態様に係る土壌分析システムおよび土壌分析サービスの提供方法は、任意の輸送容器に対して適用されうる。
【0176】
〔ソフトウェアによる実現例〕
土壌分析システム1000・1000A(以下、「システム」と呼ぶ)の機能は、当該システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該システムの各制御ブロック(特に制御部10・20・20Aに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0177】
この場合、上記システムは、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0178】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記システムが備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記システムに供給されてもよい。
【0179】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の一態様の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0180】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0181】
〔付記事項〕
本発明の一態様は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の一態様の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0182】
1 定量装置
2、2A 情報処理装置
3 分析装置
10、20、20A 制御部
40、45 輸送容器
201 利用申請受付部
202 配送手配部
203、203A 定量結果取得部
204 作物特定部
205 施用物決定部
206 面積特定部
207 数量算出部
208 通知部
209 発注部
1000、1000A 土壌分析システム
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