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  • 特開-輸送容器 図1
  • 特開-輸送容器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051287
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】輸送容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/24 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
G01N33/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161860
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390000686
【氏名又は名称】株式会社住化分析センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大和 好数
(72)【発明者】
【氏名】深浦 友美
(57)【要約】
【課題】土壌試料の分析前の前処理の手間を省き、スムーズに分析を行うことを可能とする。
【解決手段】輸送容器(40)は、開口部(416)を有する容器本体(41)と、開口部(416)を封止する封止部(42)と、封止部(42)により開口部(416)が封止された容器本体(41)の内部の空間(401)を、開口部(416)側の空間(401a)と、その下方側の空間(401b)とに仕切るように設けられた篩部(43)とを備え、輸送容器(40)の内部の空間に乾燥剤(44)が配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌試料の輸送容器であって、
土壌試料の投入口となる開口部を有する容器本体と、
前記開口部を封止する封止部と、
前記封止部により前記開口部が封止された前記容器本体の内部の空間を、前記開口部側の空間と、その下方側の空間とに仕切るように設けられた篩部とを備え、
前記輸送容器の内部の空間に前記土壌試料を乾燥させる乾燥剤が配置された、輸送容器。
【請求項2】
前記乾燥剤は、前記封止部の内面と前記容器本体の内面の両方に配置されている、請求項1に記載の輸送容器。
【請求項3】
前記篩部は、該篩部を前記開口部の縁に係止する係止部と、該係止部よりも下方側に位置する篩面とを含む、請求項1または2に記載の輸送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、分析対象の土壌試料を輸送するための輸送容器等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から土壌試料を解析して、その土壌試料に含まれる様々な成分の含量を測定する技術が知られている。例えば、下記の特許文献1には、土壌と抽出溶媒をサンプルチャンバー内で混合し、このサンプルチャンバー内に赤外線を照射して土壌スペクトル信号を発生させ、この信号を解析して土壌中の硝酸性窒素濃度を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-075692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術の適用範囲は、測定したい成分が溶媒抽出でき、かつ土壌と抽出溶媒が混合した状態で当該成分のスペクトル測定が可能なものに限られる。このような測定が適用できない成分については、土壌試料を実験室に送り、乾燥し、粉末にした上で、スペクトル測定を行う必要がある。このような土壌試料の前処理は、同文献の段落0004に記載されているように、土壌分析に要する時間と費用を増大させる要因となっている。
【0005】
本発明の一態様は、土壌試料の分析前の前処理の手間を省き、スムーズに分析を行うことを可能にする輸送容器等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る土壌試料の輸送容器は、土壌試料の投入口となる開口部を有する容器本体と、前記開口部を封止する封止部と、前記封止部により前記開口部が封止された前記容器本体の内部の空間を、前記開口部側の空間と、その下方側の空間とに仕切るように設けられた篩部とを備え、前記容器本体の内部の空間に前記土壌試料を乾燥させる乾燥剤が配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、土壌試料の分析前の前処理の手間を省き、スムーズに分析を行うことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る輸送容器の構成例を示す図である。
図2】輸送容器の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明においては、簡潔化のため、公知技術と同様の事項は説明を適宜省略する。なお、本明細書において述べる各構成要素は、特に明示されない限り、単なる一例であることに留意されたい。従って、特に明示されない限り、各構成要素の位置関係は、各図の例に限定されない。また、各図面は、各構成要素の形状、構造、および位置関係を概略的に説明するものであり、必ずしも実際の通りに描かれていないことに留意されたい。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る輸送容器の構成例を示す図である。以下、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る輸送容器40の構成を説明する。図1において、7Aは、輸送容器40の斜視図である。7Bは、輸送容器40の各部材(容器本体41、封止部42、および篩部43)の構成を示す斜視図である。7Cは、輸送容器40の各部材を係合するための構造を示す断面図である。7Dは、輸送容器40への乾燥剤44の設置例を示す斜視図である。
【0011】
輸送容器40は、例えば圃場等で採取された土壌試料を分析施設へ輸送するための容器である。分析施設における分析内容は、例えば定性分析や定量分析等であってもよく、特に限定されない。また、分析施設は、分析を行うことが可能な施設であればよく、分析を専門に行う施設や、分析を主に行う施設に限られない。
【0012】
上述のような分析を行う際には、土壌試料の乾燥等の前処理を行う必要があるが、以下説明するように、輸送容器40を用いて土壌試料を分析施設に輸送すれば、分析施設における分析前の前処理の手間を省き、スムーズに分析を行うことが可能になる。
【0013】
<輸送容器40の構成>
図1に示すように、輸送容器40は、容器本体41、封止部42、および篩部43を備える。
【0014】
容器本体41は、土壌試料の投入口となる開口部416を有する。また、容器本体41は、底面部410、本体側面部411、および本体係止部415を備える(図1の7B、7C参照)。底面部410は、平面視略正方形であり、輸送容器40の底部を構成する。本体側面部411は、底面部410の各辺から上方に延伸しており、上方に向かうにしたがって輸送容器40の外側方向に漸次広がっている。本体側面部411の上辺は、開口部416の縁を形成する。また、輸送容器40の内部の空間には、土壌試料を乾燥させる乾燥剤44(例えば、シリカゲルあるいは塩化カルシウム等)が配置される(図1の7D参照)。
【0015】
本体係止部415は、本体側面部411の上端部に形成される。本体係止部415は、後述する篩部43および封止部42を開口部416の縁に係止させる構造となっている。具体的には、本体係止部415は、本体側面部上端412と、本体側面部411の上辺から外側方向に延伸する本体外側延伸部413と、本体外側延伸部413の外側の端部から下方に延伸する本体下方延伸部414とを有する(図1の7C参照)。
【0016】
封止部42は、開口部416を封止する。封止部42は、輸送容器40における蓋の役割を果たす。具体的には、封止部42は、上面部420、封止部側面部421、および封止部係止部425を備える(図1の7C参照)。上面部420は、平面視略正方形であり、輸送容器40の頂部を構成する。封止部側面部421は、上面部420の各辺から下方に延伸しており、下方に向かうにしたがって輸送容器40の外側方向に漸次広がっている。
【0017】
封止部係止部425は、篩部43を挟んで封止部42を開口部416の縁に係止するように、封止部側面部421の下端部に形成される。封止部係止部425は、後述する篩部係止部435に対して係合可能な形状を有している。具体的には、封止部係止部425は、封止部側面部421の下辺から上方に延伸する上方延伸部422と、上方延伸部422の上辺から外側方向に延伸する封止部外側延伸部423と、封止部外側延伸部423の外縁から下方に延伸する封止部下方延伸部424とを有する。
【0018】
篩部43は、封止部42により開口部416が封止された容器本体の内部の空間401を、開口部側の空間401aと、その下方側の空間401bとに仕切る。具体的には、篩部43は、篩面430、篩部側面部431、および篩部係止部435(係止部)を備える(図1の7C参照)。篩面430は、平面視略正方形であり、底面部410と上面部420との間に位置する。また、篩面430には複数の穴430aが形成されている。穴430aは、通過した土壌試料が分析に適した粒径となるような径とすればよい。篩部側面部431は、篩面430の各辺から上方に延伸しており、上方に向かうにしたがって輸送容器40の外側方向に漸次広がっている。
【0019】
篩部係止部435は、篩部側面部431の上端部に形成される。篩部係止部435は、篩部43を開口部416の縁に係止する。このため、篩部係止部435は、本体係止部415に対して係合可能な形状を有している。具体的には、篩部係止部435は、篩部側面部上端432と、篩部側面部431の上辺から外側方向に延伸する篩部外側延伸部433と、篩部外側延伸部433の外縁から下方に延伸する篩部下方延伸部434とを有する。
【0020】
図1の7A~7Cに示すように、本体係止部415に篩部係止部435を係止することにより、容器本体41に篩部43が固定される。この状態で土壌試料が開口部416から容器本体41の内部、より詳細には篩部43上に投入される。そして、篩部係止部435に封止部係止部425を係止することにより、土壌が入った容器本体41が密閉され、篩部43が容器本体41と封止部42に挟まれた状態で固定される。
【0021】
以上のように、輸送容器40では、篩部43が、容器本体41の内部の空間401を、土壌試料が投入される開口部416側の空間401aと、その下方側の空間401bとに仕切るように設けられている。よって、輸送容器40に投入された土壌試料は、輸送中の振動により篩われて、篩部43の下方側の空間401bに移る。この空間401bに移った土壌試料は篩部43を通過しているため粉状になり、また、粒径の大きいものや小石などの異物が取り除かれている。さらに、輸送容器40の内部の空間には乾燥剤44が配置されているから、篩われて粉状になった土壌試料は速やかに乾燥し、分析に適した水分含量またはそれに近い水分含量となる。
【0022】
したがって、輸送容器40で土壌試料を輸送することにより、土壌試料の分析前の前処理の手間を省き、スムーズに分析を行うことが可能になる。また、分析施設において土壌試料を乾燥させるためのスペースを確保する必要がなくなるという利点もある。
【0023】
なお、図1に示した構成は例示にすぎず、輸送容器40の構成はこの例に限定されるものではない。例えば、輸送容器40を、全体として円柱状の形状としてもよい。なお、土壌試料の篩い分けの効率を上げるという観点からは、輸送容器40は、高さに比して幅および奥行きが大きい扁平な形状とすることが好ましい。また、容器本体41、封止部42、および篩部43は、例えばポリエチレン樹脂など、公知の熱可塑性樹脂で構成され得る。
【0024】
また、容器本体41、封止部42、および篩部43の係合構造も任意であり、図1の例に限られない。例えば、封止部42を容器本体41にねじ止めする構造としてもよい。また、例えば、本体側面部411に篩部43を固定し、容器本体41の上端部に封止部42を係合させる構成としてもよい。また、例えば、封止部42と容器本体41との間にパッキンを設ける等して密閉度を高めてもよい。
【0025】
輸送容器40の容積は、分析に必要な土壌試料の量に応じたものとすればよい。例えば、1回の分析に乾燥後の重量で20~30gの土壌試料が必要であり、3回の分析を行う場合、乾燥後の重量で90g程度の土壌試料が得られるような容積の輸送容器40を用いればよい。この場合、例えば、篩部43の上部の空間401aに少なくとも150g程度の土壌試料(乾燥前)を収容でき、篩部43の下部の空間401bに少なくとも90g程度の土壌試料(乾燥後)を収容できるような容積・形状の輸送容器40を用いればよい。
【0026】
また、乾燥剤44は、輸送容器40の内部の空間の任意の場所に配置することが可能であり、例えば、封止部42の内面と容器本体41の内面の両方に配置されてもよい。図1の7Dに示した一例では、乾燥剤44は、容器本体41の本体側面部411および封止部42の上面部420に配置されている。なお、乾燥剤44の配置箇所としてはこれに限定されず、例えば、容器本体41の底面部410にも配置してもよい(図2の8C参照)。
【0027】
上記の構成によれば、封止部42の内面と容器本体41の内面の両方に乾燥剤44が配置されているので、容器内部の土壌試料を上下両方向から効率よく乾燥させることができる。
【0028】
また、上述のように、篩部43は、篩部43を開口部416の縁に係止する篩部係止部435(係止部)と、篩部係止部435よりも下方側に位置する篩面430とを含んでもよい。
【0029】
上記の構成によれば、篩部係止部435により篩部43を開口部416に簡単に取り付けることができる。また、篩面430が篩部係止部435よりも下方側に位置しているため、開口部416と篩面430の間に土壌試料を収容する空間401aが生じる。これにより、土壌試料の投入や、封止部42による封止を行い易くすることができる。
【0030】
<輸送容器45の構成>
続いて、図2を参照し、輸送容器45の構成例を説明する。輸送容器45は、本発明の一態様に係る輸送容器の別の例である。図2において、8Aは、輸送容器45の斜視図である。8Bは、輸送容器45の各部材(容器本体41、封止部42、および篩部46)の構成を示す斜視図である。8Cは、輸送容器45への乾燥剤44の設置例を示す斜視図である。
【0031】
図2に示すように、輸送容器45は、容器本体41、封止部42、および篩部46を備える。上述した篩部43と篩部46との違いは、篩部46の篩面460がメッシュ(網)で形成されている点である。このように篩面460をメッシュとしてもよい。メッシュサイズは、通過した土壌試料が分析に適した粒径となるようなサイズとすればよい。篩面460は、例えば繊維製の柔軟なもので構成してもよいし、樹脂や金属等で構成してもよい。
【0032】
篩部46は、輸送容器40と同様にして容器本体41に取り付けてもよいし、他の方法で取り付けてもよく、その取り付け方は特に限定されない。例えば、繊維製の柔軟な篩部46を用いる場合、容器本体41の側面部に篩部46を固定すればよい。固定方法は特に限定されないが、篩部46で篩われた土壌試料を容易に取り出すことができるように、篩部46を容器本体41に着脱可能な態様で固定することが好ましい。なお、容器本体41の篩面より下方側に土壌試料の取り出し口を設けてもよく、この場合、篩部46を容器本体41に着脱不能に取り付けてもよい。
【0033】
〔付記事項〕
本発明の一態様は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の一態様の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
40、45 輸送容器
41 容器本体
42 封止部
43、46 篩部
44 乾燥剤
401 容器本体の内部の空間
401a 開口部側の空間
401b 下方側の空間
416 開口部
430、460 篩面
435、465 篩部係止部(係止部)
図1
図2