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特開2023-51290ショットブラスト装置、検査方法、検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051290
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ショットブラスト装置、検査方法、検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   B24C 5/06 20060101AFI20230404BHJP
   B24C 9/00 20060101ALI20230404BHJP
   B24C 3/14 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B24C5/06 D
B24C9/00 Z
B24C5/06 A
B24C3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161865
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】見城 維佐久
(72)【発明者】
【氏名】岡本 丈弘
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 健之
(72)【発明者】
【氏名】小林 達史
(57)【要約】
【課題】装置の始業前検査の自動化を実現するとともに、正常に稼働することの判定および良品を生産可能な状態であることの判定の自動化を実現する。
【解決手段】プロセッサ(213)は、インペラ(110)が、モータは回転しているが投射材(400)は供給されない状態において、前記インペラの有する各モータに供給される電流値が第一の閾値(θ1)以下か否かを判定する第一の検査処理(T1)と、前記インペラが前記投射材を投射している状態において、前記インペラの有する各モータに供給される電流値が第二の閾値(θ2)以上か否かを判定する第二の検査処理(T‘1)とを、装置起動後、投射対象物(500)に投射材を投射する前に実行し、それぞれの判定結果およびそれぞれの判定結果を総合した判定結果の少なくとも一方をディスプレイ(300)に表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のモータを有し投射対象物に対して投射材を投射するインペラと、
少なくとも1つのプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
前記インペラが、前記モータは回転しているが、投射材は供給されない状態において、前記インペラの有する各モータに供給される電流値が第一の閾値以下となっているか否かを判定する第一の検査処理と、
前記インペラが前記投射材を投射している状態において、前記インペラの有する各モータに供給される電流値が第二の閾値以上となっているか否かを判定する第二の検査処理とを、
装置起動後、投射対象物に投射材を投射する前に実行し、
(1)前記第一の検査処理および前記第二の検査処理それぞれの判定結果、および、(2)前記第一の検査処理および前記第二の検査処理のそれぞれ各判定結果を総合した判定結果、のうち少なくとも一方をディスプレイに表示する表示処理を実行する、
ショットブラスト装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記第一の検査処理、第二の検査処理の順で連続して実行する、請求項1に記載のショットブラスト装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記第一の検査処理において、前記ショットブラスト装置がインペラ以外に有するモータの少なくとも一部について、電流値が閾値以下となっているか否かを併せて判定する、請求項1または2に記載のショットブラスト装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記第二の検査処理において、前記ショットブラスト装置がインペラ以外に有するモータの少なくとも一部について、電流値が閾値以下となっているか否かを併せて判定する、請求項1から3のいずれか1項に記載のショットブラスト装置。
【請求項5】
前記ショットブラスト装置は、前記投射対象物を搬送するコンベヤを備え、
前記プロセッサは、前記コンベヤが前記投射対象物を搬送する搬送速度を取得し、前記搬送速度が所定の範囲となっているか否かを判定する処理を実行する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のショットブラスト装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第二の検査処理の判定結果と、前記搬送速度とに基づいて、前記インペラによる投射材の投射状態が所定の状態であるか否かを判定する第三の検査処理を行い、前記表示処理において、前記第三の検査処理の判定結果を前記ディスプレイに表示する、
請求項5に記載のショットブラスト装置。
【請求項7】
1以上のモータを有し投射対象物に対して投射材を投射するインペラを備えるショットブラスト装置の制御方法であって、
前記インペラが、前記モータは回転しているが、投射材は供給されない状態において、前記インペラの有する各モータに供給される電流値が第一の閾値以下となっているか否かを判定する第一の検査処理と、
前記インペラが前記投射材を投射している状態において、前記インペラの有する各モータに供給される電流値が第二の閾値以上となっているか否かを判定する第二の検査処理とを、
装置起動後、投射対象物に投射材を投射する前に実行し、
(1)前記第一の検査処理および前記第二の検査処理それぞれの判定結果、および、(2)前記第一の検査処理および前記第二の検査処理のそれぞれの判定結果を総合した判定結果、のうち少なくとも一方をディスプレイに表示する表示処理を実行する、
ショットブラスト装置の制御方法。
【請求項8】
前記プロセッサを備えるコンピュータを、請求項1に記載のショットブラスト装置として機能させるためのプログラムであって、前記プロセッサに前記第一の検査処理、前記第二の検査処理、および前記表示処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショットブラスト装置、検査方法、検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショットブラスト装置において、モータ又はモータの駆動にかかわる部分が、過負荷により故障したかどうかを検知する異常検知システムとして、サーマルリレーなどの過負荷保護装置が知られている。また、センサを用いて運転を定期的に遠隔モニタリングするシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-011665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの保護装置では、既に生産ラインが動き出した後で監視を行うため、異常を検知したときにはショットブラスト装置の各部のいずれかがすでに故障していることが多く、交換作業が完了するまで生産が停止するという問題がある。そこで、始業前検査が重要だが、始業前検査の時間的・設備的コストが高く、手軽に実施できないことがあった。
【0005】
本発明の一態様は、装置の始業前検査の自動化を実現するとともに、正常に稼働することの判定および良品を生産可能な状態であることの判定を自動化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るショットブラスト装置は、1以上のモータを有し投射対象物に対して投射材を投射するインペラと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、前記プロセッサは、前記インペラが、前記モータは回転しているが、投射材は供給されない状態において、前記インペラの有する各モータに供給される電流値が第一の閾値以下となっているか否かを判定する第一の検査処理と、前記インペラが前記投射材を投射している状態において、前記インペラの有する各モータに供給される電流値が第二の閾値以上となっているか否かを判定する第二の検査処理とを、装置起動後、投射対象物に投射材を投射する前に実行し、(1)前記第一の検査処理および前記第二の検査処理それぞれの判定結果、および、(2)前記第一の検査処理および前記第二の検査処理の各判定結果を総合した判定結果、のうち少なくとも一方をディスプレイに表示する表示処理を実行する。
【0007】
本発明の各態様に係るショットブラスト装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記ショットブラスト装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記ショットブラスト装置をコンピュータにて実現させるショットブラスト装置の検査プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、装置の始業前検査の自動化を実現するとともに、正常に稼働することの判定および良品を生産可能な状態であることの判定も自動化され、さらなる効率化に資する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ショットブラスト装置の構成を示すブロック図である。
図2】検査における時間軸と電流値および判定ロジックを示した図である。
図3】検査処理の流れを示すフロー図である。
図4】検査結果を表示する画面の一例を示す図である。
図5】検査結果を表示する画面の一例を示す図である。
図6】検査結果を表示する画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
(ショットブラスト装置の構成)
本発明の一実施形態に係るショットブラスト装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、ショットブラスト装置1の構成を示すブロック図である。
【0011】
ショットブラスト装置1は、図1に示すように、投射装置100、PLC(Programmable Logic Controller)200、ディスプレイ300からなる。投射装置100は、外部から供給される投射材400を、投射対象物500に投射する(打ち付ける)ことで、例えば、投射対象物500のバリ(投射対象物500の製造過程において、その縁などにはみ出した余計な材料部分)を取り除くなどの表面加工処理を行う。投射材400は、例えば、金属製の球状の粒子(所謂、ショット)、金属製の鋭角状の粒子(所謂、グリッド)、が挙げられるが、非金属(例えば、ガラス、セラミックス、砂、樹脂、植物種子)の粒子であってもよい。投射対象物500は、例えば鋳物などの工業製品である。投射対象物500の単位表面積あたりに投射される投射材400の量を投射密度という。投射密度は、投射品質に影響し、一定の投射品質を保つためには、一定の投射密度が必要である。
【0012】
PLC200は、投射装置100を制御する。ディスプレイ300は、PLC200から送信された各種の情報を表示する。
【0013】
投射装置100は、投射材400を投射対象物に投射するインペラ群110、投射対象物500を搬送するコンベヤ120、投射材400をインペラ群110に供給するディストリビュータ130、投射装置100内を攪拌するスクリュ140、投射後の投射材400を回収するためのバケットエレベータ150、投射対象物500から剥がれたバリなどの不要物を回収するための集塵装置160などから構成されるが、図示しない他の部分を含んでいてもよい。インペラ群110は、少なくとも1のインペラを含む。図中では、インペラ111及びインペラ112を記載し、その他のインペラについては記載を省略する。以下の図においても、同様である。コンベヤ120は、例えば、投射対象物500が鉄骨のような長尺の形状であるときは、一回の投射では全体に投射できないため、投射装置100が投射材400を投射する位置(以下、投射位置と呼ぶ)に漸次搬送する。そして、搬送と同時に、投射装置100による投射を行う。また、投射対象物500が投射装置100に対して大きい場合は、投射装置100は、コンベヤ120の代わりに、投射装置100自身を移動させる走行体などを備えていてもよい。ディストリビュータ130は、投射材400を、投射するために適切な分量になるように、インペラ群110の各インペラに供給する。スクリュ140は、投射装置100内を攪拌し、例えば投射済みの投射材400とバリとを遠心分離する。バケットエレベータ150は、前記遠心分離された投射材400を、再びディストリビュータ130に補充するために回収する。集塵装置160は、前記遠心分離されたバリなどの不要物を廃棄するために回収する。インペラ111、インペラ112、コンベヤ120、ディストリビュータ130、スクリュ140、バケットエレベータ150および集塵装置160は、それぞれ、モータM1a、モータM1b、モータM2、モータM3、モータM4、モータM5、モータM6を有している。
【0014】
PLC200は、投射装置100の各部と接続され、投射装置100を制御する。PLC200は、通信IF(インタフェース)211、メモリ212、プロセッサ213、出入力IF214を有する。通信IF(インタフェース)211、メモリ212、プロセッサ213、出入力IF214は、バスを介して互いに接続されている。
【0015】
通信IF211には、通信ネットワークを介して図示しないメータなど各種情報装置が接続される。本実施形態においては、通信ネットワークは、有線LANなどのアナログ回路であるが、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、CC-Link(登録商標)などを用いてもよく、クラウドで実装されてもよい。
【0016】
メモリ212は、例えば、以下の情報を保存する。
【0017】
(1)工場出荷時の各モータの最大電流値
(2)第一の検査処理に用いられる各モータの閾値および判定条件
(3)第二の検査処理に用いられる各モータの閾値および判定条件
(4)コンベヤ120の搬送速度と、コンベヤ120の有するモータM2の電流値との相関関係
(5)プロセッサ213が判定した検査結果
メモリ212として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリを挙げることができる。
【0018】
プロセッサ213は、第一の検査処理および第二の検査処理を実行する。プロセッサ213として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)を挙げることができる。
【0019】
出入力IF214には、入力装置及び/又は出力装置が接続される。出入力IF214に接続される出力装置としては、例えば、ディスプレイやプリンタなどが挙げられる。入出力IFに接続される入力装置としては、例えば、キーボードやマウスなどが挙げられる。出入力IF214としては、例えば、HDMI(登録商標)やUSB(登録商標)などを用いることができる。本実施形態において、出入力IF214には、出力装置としてのディスプレイ300が接続されている。
【0020】
ディスプレイ300は、本ショットブラスト装置1に係る検査結果を表示するための画面である。なお、本実施形態においては、ディスプレイ300としてユーザが操作可能なタッチパネルを用いる構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。ディスプレイ300は、例えば、モニタを備えるPC(Personal Computer)であってもよく、マウスなど図示しない入力装置を備えていてもよい。
【0021】
(検査処理の流れ)
ショットブラスト装置1により実行される第一の検査処理及び第二の検査処理の流れについて、図2図6を参照して説明する。
【0022】
以下、図2及び図3を用いて、検査処理の流れを説明する。
【0023】
(検査全体の流れ)
図2を用いて、検査全体の流れを説明する。図2は、投射装置100に電源を投入してからのインペラ111のモータM1aに係る電流値の推移グラフである。
【0024】
まず、投射装置100に電源を投入すると、投射装置100の有する各モータの電流量は一時的に増大し、その後低いレベルに戻る。この間は、電流量の変動が激しく、本実施形態の検査に適さないため、プロセッサ213は、電源を投入してから、待機が終わるまでの一定時間、待機するものとする。この時間を起動時待機時間tとする。起動時待機時間tは、本実施形態ではあらかじめメモリ212に保存されているものとするが、例えばモータM1aの電流値からプロセッサ213が算出してもよい。
【0025】
起動時待機時間tを過ぎると、インペラ111が投射材400を投射していない状態(以下、非投射状態という)では、モータM1a、M1bには投射材400の負荷がかからないため、例えばモータM1aおよびモータM1aの駆動にかかわる部分が正常であれば電流値は低いレベルで推移する。もし、この状態でモータM1aの電流値が所定のレベルより高ければ、投射装置100のモータM1a又はモータM1aの駆動にかかわる部分に何らかの異常がある可能性がある。異常とは、モータM1aが故障している場合のほか、モータM1aの駆動にかかわる部分に生じた機械的なその他の不具合の場合も考えられる。プロセッサ213は、この期間の電流値を判定するために非投射状態監視検査処理T1(第一の検査処理)を行う。電流値を正常と判定するための閾値を閾値θ1とする。プロセッサ213は、非投射状態監視検査処理T1により、モータM1aの電流値がθ1以下であれば、モータM1a関係部分が正常と判断する。なお、以降の図中では、「モータM1aおよびモータM1aの駆動にかかわる部分が正常であること」を「モータM1a関係部分が正常」と記載する。
【0026】
次に、インペラ111が投射材400を投射中(以下、投射状態という)は、モータM1aには投射材400の負荷がかかるため、電流値は高いレベルで推移する。もし、モータM1aの電流値が所定のレベルより低ければ、ディストリビュータ130からインペラ111への投射材400の供給量が投射密度を保つのに不十分である可能性がある。この場合、ショットブラスト装置1の処理品質が保てないことになるため、プロセッサ213がディストリビュータ130に投射材400の供給量を増加させるなどの対応が必要になる。プロセッサ213は、インペラ111が投射材400を投射している間に、投射状態監視検査処理T‘1(第二の検査処理)を行う。投射状態での電流値を正常と判定するための閾値を閾値θ2とする。プロセッサ213は、投射状態監視検査処理T’1により、モータM1aの電流値がθ2以上であれば、インペラ111への投射材400の供給量が十分であると判定する。
【0027】
プロセッサ213は、上記の非投射状態監視検査処理T1及び投射状態監視検査処理T‘1を、実際に製造が開始されて投射装置100が投射対象物500に投射を行う前に自動で行い、ユーザに対して表示することで、検査者の目視による判断に依存せずに、生産ラインの停止を予防し、また、不良品が生成されることを予防できる。
【0028】
なお、上記閾値θ1および閾値θ2は、それぞれモータごとに設定可能であり、それぞれ随時変更可能である。また、「閾値以上」「閾値以下」「閾値を超える」「閾値未満」という判定条件は、投射状態監視検査処理T‘1においてはモータごとに任意に設定可能である。本実施形態では、工場出荷時のモータM1aの最大電流値を100%とした場合の10%が閾値θ1、90%が閾値θ2にそれぞれ設定されている。

上記各検査は、インペラ以外のモータに対して行われてもよい。インペラ群110以外のモータについて、インペラ群110が投射材400を投射していない状態での電流値が閾値θ1以下かどうかをプロセッサ213が判定出来ないモータもある。そのため、そのような一部のモータについては、プロセッサ213は、第二の検査処理、つまり投射状態監視検査処理として、当該モータの電流値が閾値θ2以下であるかどうかを判定してもよい。この場合において、プロセッサ213は、当該モータの電流値が閾値θ2以下であるとき当該モータ関係部分が正常であると判断してよい。投射装置100に含まれるモータであってインペラ群110以外のモータにつき、当該モータ関係部分が正常か否かの判定に非投射状態監視検査処理を用いるか、投射状態監視検査処理を用いるかは、モータごとに設定可能であり、また、ユーザが随時変更することができる。
【0029】
なお、プロセッサ213は、実際に製造が開始された後の非投射状態および投射状態において、上記の非投射状態監視検査処理T1及び投射状態監視検査処理T‘1と同じ処理を行ってもよい。
【0030】
図3のフローチャートを用いて、プロセッサ213が第一の検査処理、第二の検査処理及び表示処理を行う一連の流れを説明する。図中の「装置」は、投射装置100を指す。
【0031】
(非投射状態監視検査処理)
ステップS101において、プロセッサ213は、投射装置100が起動したかどうかを判定する。判定は、例えば図示しない各種電流メータへの電流値を検出することによってもよい。投射装置100が起動していない場合(S101のNO)、プロセッサ213は待機を継続する。投射装置100が起動している場合(S101のYES)、プロセッサ213はステップS102へ進む。なお、プロセッサ213は、ステップS101にて自動で検査処理を開始する代わりに、ユーザの操作を受け付けて検査処理を開始してよい。
【0032】
ステップS102において、プロセッサ213は、投射材400を投入しない状態で投射装置100の各モータを起動する。
【0033】
ステップS103において、プロセッサ213は、メモリ212から起動時待機時間tを読み込む。
【0034】
ステップS104において、プロセッサ213は、起動時待機時間tの間、処理を待機する。
【0035】
以下、ステップS116まで、投射装置100に含まれる検査対象の各モータについて繰り返す。検査の対象とするかどうかは、モータごとにあらかじめ設定されていてもよい。
【0036】
ステップS111において、プロセッサ213は、メモリ212から第一の閾値θ1を読み込む。閾値θ1は、モータごとに異なっていてもよく、すべてのモータにつき一律であってもよい。
【0037】
ステップS112において、プロセッサ213は、投射装置100の各モータの電流値を取得する。
【0038】
ステップS113において、プロセッサ213は、投射装置100の各モータの電流値が閾値θ1以下であるかを判定する。当該モータの電流値が閾値θ1以下である場合、プロセッサ213は、ステップS114へ進む(ステップS113のYES)。当該モータの電流値が閾値θ1を超える場合、プロセッサ213は、ステップS115へ進む(ステップS113のNO)。対象となるモータは任意であり、インペラ群110に含まれるものだけであってもよく、投射装置100に含まれるすべてのモータであってもよい。
【0039】
ステップS114において、プロセッサ213は、電流値が閾値θ1以下であるモータについて、当該モータ関係部分が正常であると判定する。
【0040】
ステップS115において、プロセッサ213は、電流値が閾値θ1を超えるモータについて、当該モータ関係部分が異常であると判定する。
【0041】
ステップS116において、プロセッサ213は、検査結果をメモリ212に保存する。検査結果とは、当該モータと、ステップS114又はS115にて判定された正常または異常という結果との組み合わせデータである。
【0042】
(投射状態監視検査処理)
ステップS121において、プロセッサ213は、ディストリビュータ130からインペラ群110に投射材400を供給させる。すなわち、プロセッサ213は、インペラ群110が投射材400を投射している状態を作り、そのうえで投射状態監視検査処理を行う。
【0043】
以下、ステップ129まで、投射装置100に含まれる検査対象の各モータについて繰り返す。検査の対象とするかどうかは、モータごとにあらかじめ設定されていてもよく、インペラ群110に含まれるものだけを検査対象にしてもよい。
ステップS122において、プロセッサ213は、メモリ212から当該モータの第二の閾値θ2および判定条件を読み込む。閾値θ2は、モータごとに異なっていてもよく、すべてのモータにつき一律であってもよい。また、「閾値以上」または「閾値以下」という判定条件は、モータごとに設定されていてもよい。判定条件は、「閾値以上」または「閾値以下」のほか、「閾値を超える」または「閾値未満」が含まれていてもよいが、説明の便宜のため、「閾値以上」または「閾値以下」として説明する。当該モータの判定条件が「閾値θ2以上である」場合、ステップS123へ進む。当該モータの判定条件が「閾値θ2以下である」場合、ステップS126へ進む。本実施形態では、インペラ群110のモータには「閾値θ2以上である」の判定条件が、インペラ群110以外のモータには「閾値θ2以下である」の判定条件が設定されているものとする。
【0044】
ステップS123において、プロセッサ213は、インペラ群110のモータの電流値が閾値θ2以上であるかどうかを判定する。
【0045】
ステップS124において、プロセッサ213は、電流値が閾値θ2以上であるインペラ群110のモータについて、ディストリビュータから投射材400が十分な量供給されていると判定する。
【0046】
ステップS125において、プロセッサ213は、電流値が閾値θ2未満であるインペラ群110のモータについて、ディストリビュータから投射材400が十分な量供給されていないと判定する。
【0047】
ステップS126において、プロセッサ213は、インペラ群110以外のモータの電流値が閾値θ2以下であるかどうかを判定する。
【0048】
ステップS127において、プロセッサ213は、電流値が閾値θ2以下であるインペラ群110以外のモータについて、当該モータ関係部分が正常であると判定する。
【0049】
ステップS128において、プロセッサ213は、電流値が閾値θ2を超えるインペラ群110以外のモータについて、当該モータ関係部分が異常であると判定する。
【0050】
ステップS129において、プロセッサ213は、検査結果をメモリ212に保存する。ステップS214又はステップS215及びステップS217またはステップS128の検査結果をメモリ212に保存する。検査結果とは、当該モータと、ステップS214又はステップS215で判定されたディストリビュータ130からの投射材400の供給が十分か否かという判定結果、あるいは当該モータと、ステップS217又はステップS218で判定された当該モータ関係部分が正常か異常かという判定結果との組み合わせデータである。
【0051】
(表示処理)
ステップS131において、プロセッサ213は、出入力IF214を通じてディスプレイ300に各検査結果を表示する。
【0052】
(表示処理の一例)
図3のステップ131において実行される表示処理によりディスプレイ300に表示される画面の例を、図4~6で説明する。なお、以下に示す例はいずれも一例であり、各表示領域は別の構成で表示されていてもよい。
【0053】
図4図3のステップ131でプロセッサ213がディスプレイ300に表示する画面σ1の一例である。画面σ1は、始業前(装置起動後、投射対象物に投射材を投射する前)に行われた非投射状態監視検査処理および投射状態監視検査処理の結果を、投射装置100の有するモータごと、およびそれらの結果を総合的に表示する画面である。本実施形態において、「〇」は「モータ関係部分が正常であったこと」または「ディストリビュータから投射材が十分な量供給されていること」を示し、「△」は「モータ関係部分が異常であったこと」または「ディストリビュータから投射材が十分な量供給されていないこと」を示す。以下の図も同様である。なお、検査結果を端的に示すため「〇」及び「△」に代えて別の記号を用いてもよく、「良」「不良」などの言葉を用いてもよい。また、本実施形態では「〇」と「△」の表示位置が左右に分かれているが、左右に分かれていなくてもよい。当該事項は、後述するすべての結果表示領域においても同様である。画面σ1は、総合結果表示領域σ101、画面遷移ボタンσ102、処置要求ボタンσ103、履歴確認ボタンσ104、及び、投射装置100の各モータに対応する表示領域を有する。本実施形態では、インペラ111のモータM1aに対応する表示領域σ11aについて説明し、他の各モータに対応する表示領域についての説明は、表示領域σ11aと同様のため省略する。
【0054】
プロセッサ213は、総合結果表示領域σ101に、非投射状態監視検査処理または投射状態監視検査処理の少なくとも一方を行った全てのモータについての検査結果を総合して表示する。なお、検査を行っていないモータについての表示が含まれていてもよい。本実施形態では、非投射状態監視検査処理または投射状態監視検査処理の少なくとも一方を行ったモータの少なくともいずれか1つに「モータ関係部分が異常であった」または「ディストリビュータから投射材が十分な量供給されていない」という結果が出た場合には、総合結果表示領域σ101に「△」を表示し、そうでない場合には、「〇」を表示する。本実施形態の場合には、モータM1aに「モータ関係部分が異常であった」または「ディストリビュータから投射材が十分な量供給されていない」という結果が出たため、総合結果表示領域σ101に「△」が表示されている。
【0055】
画面遷移ボタンσ102は、ユーザの操作を受け付ける。画面遷移ボタンσ102にユーザからの入力があった場合、プロセッサ213は、画面σ1から、図示しない他の画面に遷移させる。処置要求ボタンσ103は、ユーザの操作を受け付ける。処置要求ボタンσ103にユーザからの入力があった場合、プロセッサ213は、画面σ1から、例えば図示しないネットワーク上の別のPCへ、処置が必要であることを通知する。例えば、「モータM1aが異常であった」という結果が出た場合は、図示しないネットワーク上の別のPCへ、モータM1aの検査、修理または交換が必要であることを通知する。履歴確認ボタンσ104は、ユーザの操作を受け付ける。履歴確認ボタンσ104にユーザからの入力があった場合、プロセッサ213は、画面σ1から、画面σ3に遷移する。
【0056】
表示領域σ11aは、部材名表示領域σ11a1、モータ名表示領域σ11a2、結果表示領域σ11a3、詳細表示ボタンσ11a4を有する。
【0057】
部材名表示領域σ11a1には、プロセッサ213は、投射装置100の有する部材であってモータを有するものの名称を表示する。本実施形態の場合であれば、「インペラ111」が表示されているが、例えば「インペラNo.1」などでもよい。モータ名表示領域σ11a2には、モータの名称を表示する。結果表示領域σ11a3は、モータM1aについての非投射状態監視検査処理および投射状態監視検査処理結果を総合したものを表示する。プロセッサ213は、当該モータについて「モータ関係部分が異常であった」または「ディストリビュータから投射材が十分な量供給されていない」という結果が出た場合には、結果表示領域σ11a3に「△」を表示し、そうでない場合には、「〇」を表示する。詳細表示ボタンσ11a4は、ユーザの操作を受け付け、後述の画面σ2へ遷移する。
【0058】
図5図3のステップ131でプロセッサ213がディスプレイ300に表示する画面σ2の一例である。画面σ2は、ユーザが検査結果の詳細を把握できるようにするため、プロセッサ213がインペラ111の有するモータM1aの電流値と時系列の関係を示したグラフ並びに非投射状態監視検査処理結果及び投射状態監視検査処理を表示する画面である。画面σ2は、対象部材名表示領域σ21、結果表示領域σ22、非投射状態監視結果表示領域σ221、投射状態監視結果表示領域σ222、画面遷移ボタンσ23、電流値推移グラフ表示領域σ24を有する。
【0059】
対象部材名表示領域σ21には、プロセッサ213は、検査対象であるモータを有する部材の名称を表示するが、当該モータ名を表示してもよい。本実施形態の場合、検査対象となっているモータM1aを有する「インペラ111」を表示する。
【0060】
結果表示領域σ22には、プロセッサ213は、図1のσ11a3と同様である。非投射状態監視結果表示領域σ221には、プロセッサ213は、モータM1aについての非投射状態監視検査処理の結果を表示する。投射状態監視結果表示領域σ222には、プロセッサ213は、モータM1aについての投射状態監視検査処理の結果を表示する。
【0061】
画面遷移ボタンσ23は、ユーザの操作を受け付け、画面σ1へ遷移する。
電流値推移グラフ表示領域σ24は、モータM1aの電流値の推移を示したグラフである。縦軸はモータM1aの電流値、横軸は時間を示す。横軸としては、ユーザの設定した時間軸を用いることができ、本実施形態では、投射装置100に電源が投入されてから、非投射状態監視検査処理T1および投射状態監視検査処理T‘1が行われた時間が表示されているものとする。本実施形態では、非投射状態監視検査処理T1の結果、モータM1aは正常であったので、非投射状態監視結果表示領域σ221には「〇」が表示されている。一方、投射状態においてモータM1aの電流値が閾値θ2を下回っているため、投射状態監視検査処理T‘1の判定結果としては、インペラ111へのディストリビュータ130からの投射材400の供給量が十分でない。そのため、投射状態監視結果表示領域σ222には、「△」が表示されている。原因としては、ディストリビュータ130とインペラ111をつなぐ図示しないケージの故障等が考えられる。このように、プロセッサ213は、個別に電流値推移グラフの詳細を表示することで、ユーザが故障位置を適切に把握することを可能にする。
【0062】
図6図3のステップ131でプロセッサ213がディスプレイ300に表示する画面σ3の一例である。画面σ3は、ユーザが参照できるようにするためプロセッサ213が過去の検査履歴を一覧化して表示するものである。σ3は、画面遷移ボタンσ23及び検査履歴一覧σ31を有する。画面遷移ボタンσ23は、図5のものと同じである。
【0063】
検査履歴一覧σ31には、プロセッサ213は、投射装置100の各モータについての非投射状態監視検査処理結果および投射状態監視検査処理結果、並びにそれらを総合した検査結果を、検査開始日時ごとに一覧して表示する。図中では、プロセッサ213は、列見出しとして各モータを有する部材名を表示しているが、当該モータ名を表示してもよい。「非」は非投射状態監視検査処理結果を、「投」は投射状態監視検査処理を示している。プロセッサ213は、「総合」列に、投射装置100の有するいずれかのモータで非投射状態監視検査処理結果または投射状態監視検査処理結果のいずれかが「△」だった場合には、「△」、つまり問題がある旨を表示し、そうでない場合には「〇」を表示する。本実施形態では、7月24日の11時24分に行われた最新の非投射状態監視検査処理及び投射状態監視検査処理について、インペラ111のモータM1aにつき、投射状態監視検査処理結果が「△」だったので、プロセッサ213は、「総合」欄に「△」を表示している。
【0064】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0065】
投射処理においてコンベヤ120が投射対象物500を搬送する場合、搬送速度により投射密度が変動する。そのため、投射材400の供給量の適否を判断するにあたって、搬送速度を考慮する必要がある。コンベヤ120のモータM2が経年劣化などにより搬送速度が遅くなる。搬送速度が遅くなれば、投射密度が高くなりすぎて品質を保てない可能性がある。そこで、プロセッサ213は、コンベヤ120の搬送速度が所定の範囲内となっているかどうかを判定してよい。コンベヤ120の搬送速度はモータM2の運転周波数と相関するため、メモリ212はモータM2の運転周波数とコンベヤ120の搬送速度の対応関係をあらかじめ保持してよく、プロセッサ213は、メモリ212から当該相関関係データを読み込んで、モータM2のインバータ周波数からコンベヤ120の搬送速度を算出してもよい。具体的には、プロセッサ213は、モータM2のインバータ周波数で換算した搬送速度と、コンベヤ120の図示しないローラに取り付けた回転検知センサのカウント数を搬送速度に換算したものとを比較して、コンベヤ120の搬送速度が正常かどうかを算出してよい。
さらに、プロセッサ213は、投射状態監視検査処理結果と、コンベヤ120の搬送速度とに基づいて、インペラ群110からの投射状況が適切か否かを判定する第三の検査処理を行い、前記表示処理において、前記第三の検査処理の判定結果を前記ディスプレイに表示してもよい。
【0066】
(付記事項)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。閾値については、「以上」「以下」となっているものはそれぞれ「~を超える」「~を下回る」としてもよい。
【0067】
〔ソフトウェアによる実現例〕
ショットブラスト装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特にプロセッサに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0068】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0069】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0070】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 ショットブラスト装置
100 投射装置
110 インペラ群
111 インペラ
120 コンベヤ
130 ディストリビュータ
200 PLC
212 メモリ
213 プロセッサ
300 ディスプレイ
400 投射材
500 投射対象物
M1a、M2 モータ
t 起動時待機時間
T1 非投射状態監視検査処理
T‘1 投射状態監視検査処理
θ1、θ2 閾値
σ1、σ2、σ3 画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6