(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051295
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】金属チューブおよび金属チューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 35/02 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
B65D35/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161870
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤原 寛
(72)【発明者】
【氏名】萩原 一男
【テーマコード(参考)】
3E065
【Fターム(参考)】
3E065AA01
3E065BA02
3E065CA09
3E065DA04
3E065DB05
3E065DD04
3E065EA07
3E065FA15
3E065GA03
3E065GA04
3E065HA06
(57)【要約】
【課題】粘度が比較的高い物質が充填された場合であっても、チューブを密封できる金属チューブを実現する。
【解決手段】金属チューブ(1)は、湿分硬化型樹脂組成物が充填される胴部(2)と、胴部(2)の一方の端部に設けられる、内容物を吐出可能な吐出口(32)と、他方の端部に設けられる、多段に折り曲げ封止された折り曲げ封止部(4)と、を備えている。折り曲げ封止部(4)の内面には、粘着剤が塗布されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿分硬化型樹脂組成物が充填された金属チューブであって、
前記金属チューブは、
前記湿分硬化型樹脂組成物が充填される胴部と、
前記胴部の一方の端部に設けられる、内容物を吐出可能な吐出口と、
前記胴部の他方の端部に設けられる、多段に折り曲げ封止された折り曲げ封止部と、を備え、
前記折り曲げ封止部の内面には、粘着剤が塗布されており、
前記湿分硬化型樹脂組成物は、23℃において200PaS以上800PaS以下の粘度を有するよう調整されている、金属チューブ。
【請求項2】
前記折り曲げ封止部において、
前記金属チューブの胴部の内径をA、前記他方の端部の末端から湿分硬化型樹脂が充填される部分までの距離をB、前記金属チューブの長軸方向における前記粘着剤の塗布幅をCとし、
1.6≦B/A≦2.0であり、かつB>Cである、請求項1に記載の金属チューブ。
【請求項3】
前記湿分硬化型樹脂組成物は、23℃において180°剥離試験でのピール強度が1N/cm以下である、請求項1または2に記載の金属チューブ。
【請求項4】
前記粘着剤は、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、またはシリコン系から選ばれる粘着剤のいずれかである、請求項1から3のいずれか1項に記載の金属チューブ。
【請求項5】
前記吐出口を突破可能に閉塞する閉塞部をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の金属チューブ。
【請求項6】
前記湿分硬化型樹脂組成物は、少なくとも湿分硬化型樹脂および熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性樹脂組成物である、請求項1から5のいずれか1項に記載の金属チューブ。
【請求項7】
湿分硬化型樹脂組成物が充填された金属チューブの製造方法であって、
前記金属チューブが有する胴部の端部の内面に粘着剤を塗布する塗布工程と、
前記粘着剤に含まれる溶剤を乾燥させる乾燥工程と、
前記胴部に湿分硬化型樹脂組成物を充填する充填工程と、
前記端部を多段に折り曲げる折り曲げ工程とを含み、
前記胴部の内径をA、前記端部の末端から前記湿分硬化型樹脂組成物が充填される部分までの距離をB、前記金属チューブの長軸方向における前記粘着剤の塗布幅をCとし、
前記充填工程において、1.6≦B/A≦2.0であり、かつB>Cを満たすように前記湿分硬化型樹脂組成物を充填する、金属チューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属チューブおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミチューブ容器は、低コストで製造可能でありながらも、ガスバリア性、光遮断性に優れるものであるため、接着剤やシーリング材等の湿分硬化型樹脂の容器として広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、接着剤等として用いられる湿分硬化型樹脂を充填したアルミチューブが開示されている。当該アルミチューブは、一方の端部に吐出口を有し、反対側の端部は折り曲げ封止されている。
【0004】
一般的にこのようなアルミチューブにおいては、当該折り曲げ封止部分に、アルミチューブに充填された粘度の低い樹脂が染み出しており、当該樹脂が外部の水分によって硬化することで、アルミチューブ内の樹脂の大部分への水分の影響が低減されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らは、特許文献1に記載されているような従来の金属チューブ内に粘度の高い物質が充填される場合、折り畳み封止のみでは十分に密封されないという問題を見出した。
【0007】
本発明の一態様は、粘度が比較的高い物質が充填された場合であっても、チューブを密封できる金属チューブおよびその製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一実施形態に係る金属チューブは、湿分硬化型樹脂組成物が充填された金属チューブであって、前記金属チューブは、前記湿分硬化型樹脂組成物が充填される胴部と、前記胴部の一方の端部に設けられる、内容物を吐出可能な吐出口と、前記胴部において前記一方の端部の反対側の端部に設けられる、多段に折り曲げ封止された折り曲げ封止部と、を備え、前記折り曲げ封止部の内面には、粘着剤が塗布されており、前記湿分硬化型樹脂組成物は、23℃において200PaS以上800PaS以下の粘度を有するよう調整されている。
【0010】
本発明の一実施形態に係る金属チューブの製造方法は、湿分硬化型樹脂組成物が充填された金属チューブの製造方法であって、前記金属チューブが有する胴部の端部の内面に粘着剤を塗布する塗布工程と、前記粘着剤に含まれる溶剤を乾燥させる乾燥工程と、前記胴部に湿分硬化型樹脂組成物を充填する充填工程と、前記端部を多段に折り曲げる折り曲げ工程とを含み、前記胴部の内径をA、前記端部の末端から前記湿分硬化型樹脂組成物が充填される部分までの距離をB、前記金属チューブの長軸方向における前記粘着剤の塗布幅をCとし、前記充填工程において、1.6≦B/A≦2.0であり、かつB>Cを満たすように前記湿分硬化型樹脂組成物を充填する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、金属チューブ内部に充填されている物質が、粘度が比較的高い湿分硬化型樹脂組成物であったとしても、当該金属チューブを密封できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る金属チューブの他端側が折り畳まれた状態を示す平面図である。
【
図2】他端側が折り畳まれていない状態の金属チューブを示す部分断面図である。
【
図3】金属チューブの吐出部近辺の部分断面図の拡大図である。
【
図4】湿分硬化型樹脂組成物の充填部と、塗布部と、折り曲げ封止部との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を添付図面にもとづいて説明する。
【0014】
〔実施形態1〕
<金属チューブの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る金属チューブ1の他端側が折り畳まれた状態を示す平面図である。
図2は、金属チューブ1の他端側が折り畳まれていない状態を示す部分断面図である。
図2において、吐出部30はキャップ3によって覆われておらず、むき出しになっている。
図3は、閉塞部34を示す、金属チューブ1の部分断面図である。
【0015】
図1および
図2に示すように、金属チューブ1は、湿分硬化型樹脂組成物が充填される胴部2と、胴部2の一方の端部に設けられ、内容物を吐出可能な吐出部30と、吐出部30を覆うキャップ3と、折り曲げ封止部4とを備えている。本実施形態において、吐出部30が形成されている側を一端側と称し、金属チューブ1の折り曲げ封止部4が形成されている側を他端側と称する。折り曲げ封止部4は、胴部2の他端側が多段に折り曲げ封止されることによって形成されている。胴部2は、柔軟性のある金属材料、好ましくはアルミニウムで形成される。胴部2を形成する金属膜の厚みは、例えば、0.05以上、0.20mm以下であってもよい。
【0016】
図3に示すように、金属チューブ1は、吐出部30を突破可能に閉塞する閉塞部34を有している。閉塞部34は、柔軟性のある金属材料、好ましくはアルミニウムで形成されており、突起物を吐出部30に挿入することにより、閉塞部34を破ることができる。閉塞部34が破られると、胴部2に充填された湿分硬化型樹脂組成物を外部に吐出可能となる。
【0017】
(塗布部)
図2に示すように、吐出部30は、雄ネジ部31、吐出口32および吐出通路33から構成される。符号41が示す部分は、折り畳まれていない状態の折り曲げ封止部4において、その内面に粘着剤が塗布されている部分であり、当該部分を塗布部41と称する。
図2において、塗布部41は、網掛けで図示されている。当該粘着剤は、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、またはシリコン系から選ばれる粘着剤のいずれかであってもよい。
【0018】
(粘着剤を塗布する技術的意義)
金属チューブ1に充填される湿分硬化型樹脂組成物は、吐出後に塗膜等の硬化物を形成する樹脂組成物であって、硬化性液状樹脂を含有している。当該湿分硬化型樹脂組成物は、23℃で200PaS以上、800PaS以下の粘度を有している。また、当該湿分硬化型樹脂組成物は、23℃において180°剥離試験でのピール強度が1N/cm以下であってもよい。
【0019】
従来、金属チューブ内に常温(23℃程度)で100PaS程度より低い粘度を有する湿分硬化型の物質が充填されることがある。このような物質が金属チューブ内に充填された場合、折り曲げ封止されている部分に内容物が少量染み出し、当該物質が硬化することで折り曲げ封止部が強固に接着される。これにより、金属チューブが密閉され、金属チューブ内の物質への空気中の水分の影響が低減されていた。
【0020】
しかしながら、金属チューブ1に充填される湿分硬化型樹脂組成物が、上述のように常温で200PaS~800PaS程度の比較的高い粘度を有する湿分硬化型樹脂組成物である場合、湿分硬化型樹脂組成物が折り曲げ封止部4に染み出す量が少ない。さらに、粘着および剥離を行えるリペア性を確保するために、上記湿分硬化型樹脂組成物の接着力を23℃において180°剥離試験でのピール強度が1N/cm以下として比較的低く設定している。そのため、当該湿分硬化型樹脂組成物自体の接着力で折り曲げ封止部4を十分に接着できない可能性が高いことを本発明の発明者が見出した。折り曲げ封止部4が十分に接着されない場合、空気中の水分が内部に充填されている湿分硬化型樹脂組成物に影響し、当該組成物が硬化してしまう、または金属チューブ1を用いる際、折り曲げ封止部4から当該組成物が漏れ出てしまう等の問題が発生する可能性がある。
【0021】
これらの問題を解決するため、本発明の発明者は、粘着剤を塗布部41の内面に塗布するという技術的思想を見出した。塗布部41の内面に粘着剤が塗布されていることにより、当該塗布部41が十分に接着されるため、金属チューブ1が密閉される。これにより、金属チューブ1に充填されている物質が、比較的高い粘度を有し、比較的低い接着力を有する湿分硬化型樹脂組成物であったとしても、当該組成物への空気中の水分の影響を低減することができる。また、金属チューブ1を使用する際、内部の組成物が折り曲げ封止部4から漏れ出る可能性を低減することができる。
【0022】
(湿分硬化型樹脂組成物の詳細)
金属チューブ1に充填される湿分硬化型樹脂組成物は、湿分硬化型樹脂として硬化性液状樹脂を含有している。上記湿分硬化型樹脂は、変性シリコン樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる1種以上の樹脂である。硬化性液状樹脂の詳細については後述する。
【0023】
上記湿分硬化型樹脂組成物は、硬化性液状樹脂を硬化させるための硬化触媒、開始剤、熱老化防止剤、可塑剤、増量剤、チクソ性付与剤、貯蔵安定剤、脱水剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、難燃剤、電磁波吸収剤、充填材、溶剤等の各種添加剤が、用途に応じて適宜添加されていてもよい。
【0024】
上記湿分硬化型樹脂組成物は、少なくとも湿分硬化型樹脂および熱伝導性フィラーを含有するように調製された熱伝導性樹脂組成物であってもよい。上記湿分硬化型樹脂組成物は、例えば電子機器や基板、発熱体の表面に塗布されて塗膜を形成する用途等に用いる場合には、熱伝導性フィラーをさらに含有していることが好ましい。当該熱伝導性フィラーとして、アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリコンカーバイト、グラフェン粒子、酸化グラフェン粒子、炭酸カルシウムから選ばれる1種以上の熱伝導性フィラーを用いてもよい。熱伝導性フィラーの詳細については後述する。
【0025】
湿分硬化型樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含有することで、熱伝導性が向上する。そのため、当該湿分硬化型樹脂組成物は、2つの物体間、例えばCPUとクーラントとの間に塗布されることで、CPUからクーラントへより効率的に熱を電動する熱伝導性物質として機能することができる。熱伝導性フィラーを含有する湿分硬化型樹脂組成物は、硬化物の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上となる樹脂組成物であることがより好ましく、0.8W/(m・K)以上となる樹脂組成物であることがさらに好ましく、1.0W/(m・K)以上となる樹脂組成物であることが特に好ましい。これにより、上記湿分硬化型樹脂組成物を電子機器等の表面に塗布して塗膜を形成したときに、当該塗膜によって電子機器等で発生した熱を効率的に逃がすことができる。尚、本明細書においては、硬化物の熱伝導率が0.5W/(m・K)以上となる湿分硬化型樹脂組成物を、熱伝導性硬化性樹脂組成物と称する場合がある。
【0026】
(硬化性液状樹脂)
上記湿分硬化型樹脂組成物に含まれる硬化性液状樹脂は、分子内に反応性基を有し、その反応性基の反応によって硬化することが可能な液状樹脂である。上記硬化性液状樹脂の具体例としては、例えば、硬化性アクリル系樹脂、硬化性メタクリル系樹脂に代表される硬化性アクリル系樹脂;、硬化性ポリプロピレンオキサイド系樹脂に代表される硬化性ポリエーテル系樹脂;硬化性ポリイソブチレン系樹脂に代表される硬化性ポリオレフィン系樹脂;シリコン系樹脂;等が挙げられる。反応性基の具体例としては、例えば、エポキシ基、加水分解性シリル基、ビニル基、アクリロイル基、SiH基、ウレタン基、カルボジイミド基、或いは、無水カルボン酸基とアミノ基との組み合わせ、等の反応性官能基が挙げられる。
【0027】
硬化性液状樹脂の中でも、シラノール縮合反応型の硬化性液状樹脂がより好ましい。また、硬化性液状樹脂の中でも、低分子量シロキサンによる電子機器内の汚染の問題が少ないこと、耐熱性に優れていること、接着力を最適にコントロールできる等から、硬化性アクリル系樹脂または硬化性ポリプロピレンオキサイド系樹脂を用いることが好ましい。硬化性アクリル系樹脂としては、公知の様々な反応性アクリル樹脂を用いることができる。この中でも、分子末端に反応性基を有するアクリル系オリゴマーを用いることが好ましい。このような硬化性アクリル系樹脂の例として、(株)カネカ製のカネカXMAPが知られている。また、硬化性ポリプロピレンオキサイド系樹脂としては、公知の様々な反応性ポリプロピレンオキサイド樹脂を用いることができる。このような反応性ポリプロピレンオキサイド樹脂の例として、(株)カネカ製のカネカMSポリマーが知られている。硬化性液状樹脂は、2種類以上を併用することもできる。
【0028】
(熱伝導性フィラー)
熱伝導性硬化性樹脂組成物(およびその硬化物)に用いられる熱伝導性フィラーとしては、例えば、グラファイト、ダイヤモンド等の炭素化合物;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の金属窒化物;炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化ケイ素等の金属炭化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;結晶性シリカ;アクリロニトリル系ポリマー焼成物、フラン樹脂焼成物、クレゾール樹脂焼成物、ポリ塩化ビニル焼成物、砂糖の焼成物、木炭の焼成物等の有機性ポリマー焼成物;Znフェライトとの複合フェライト;Fe-Al-Si系三元合金;金属粉末;等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易性、充填性、絶縁性の観点で、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムがより好ましい。
【0029】
また、熱伝導性フィラーは、硬化性液状樹脂に対する分散性が向上することから、シランカップリング剤(ビニルシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリルシラン、イソシアナートシラン、クロロシラン、アミノシラン等)やチタネートカップリング剤(アルコキシチタネート、アミノチタネート等)、または、脂肪酸(カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の飽和脂肪酸;ソルビン酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸等)や樹脂酸(アビエチン酸、ピマル酸、レボピマール酸、ネオアピチン酸、パラストリン酸、デヒドロアビエチン酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、コルム酸、セコデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸等)等によって、その表面が処理されているフィラーを用いることもできる。
【0030】
熱伝導性フィラーの使用量は、湿分硬化型樹脂組成物から得られる硬化物の熱伝導率を高くすることができることから、湿分硬化型樹脂組成物に占める熱伝導性フィラーの容積率(容量%)が25容量%以上となる量であることが好ましい。熱伝導性フィラーの使用量が25容量%よりも少ない場合には、硬化物の熱伝導性が十分でなくなる傾向がある。より高い熱伝導率を望む場合には、熱伝導性フィラーの使用量を、30容量%以上とすることがより好ましく、40容量%以上とすることがさらに好ましく、50容量%以上とすることが特に好ましい。また、熱伝導性フィラーの使用量は、90容量%以下であることが好ましい。熱伝導性フィラーの使用量が90容量%よりも多い場合には、硬化前の熱伝導性硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎることがある。
【0031】
ここで、熱伝導性フィラーの容積率(容量%)とは、硬化性液状樹脂分(熱伝導性フィラーを除いた湿分硬化型樹脂組成物)および熱伝導性フィラーの、それぞれの重量分率と比重とから算出される数値であり、次式(1)によって算出される。尚、式(1)では硬化性液状樹脂分を単に「樹脂分」と記載し、熱伝導性フィラーを単に「充填材」と記載した。
【0032】
充填材の容積率(容量%)=(充填材の重量分率/充填材の比重)÷[(樹脂分の重量分率/樹脂分の比重)+(充填材の重量分率/充填材の比重)]×100 …(1)。
【0033】
硬化性液状樹脂分に対する熱伝導性フィラーの容積率を高める一手法としては、粒子径が互いに異なる2種類以上の熱伝導性フィラーを併用することが好適である。この場合には、粒子径がより大きい熱伝導性フィラーとして粒子径が5μmを超える熱伝導性フィラーを用い、粒子径がより小さい熱伝導性フィラーとして粒子径が5μm以下の熱伝導性フィラーを用いることが好ましい。
【0034】
また、2種類以上の熱伝導性フィラーを併用する場合には、これら熱伝導性フィラーは、同一組成の熱伝導性フィラーであってもよく、互いに異なる組成の熱伝導性フィラーであってもよい。
【0035】
さらに、最大粒子径の小さな熱伝導性フィラーを適宜組み合わせることによって硬化物の薄膜性を担保することができる。上記最大粒子径は、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。最大粒子径の小さな熱伝導性フィラーを用いることにより、狭い隙間にも硬化性樹脂組成物を流し込むことができる。
【0036】
<金属チューブの製造工程>
本実施形態に係る金属チューブ1の製造工程は、「金属チューブの製造工程」、「塗布部41の内面に粘着剤を塗布する工程」、「乾燥工程」、「樹脂充填工程」、および「折り曲げ工程」の5つの工程を含む。以下に、添付図面を用いて金属チューブの製造工程を説明する。
【0037】
(金属チューブの製造工程)
胴部2および吐出部30を有する金属チューブの製造方法としては、衝撃押出法のような公知の方法を用いることができる。本工程を経ることによって、
図2に示すような、折り畳まれていない状態の金属チューブが得られる。湿分硬化性樹脂組成物の内容量を多くできることから、本願発明のチューブの胴部2の内径Aは0.9cm以上であることが好ましい。
【0038】
(塗布部41の内面に粘着剤を塗布する工程)
次に、
図2において網掛けにて示す塗布部41の内面、すなわち、筒状の胴部2の他端側の内壁面に、スプレーコートまたは刷毛など一般的な塗布用の設備を用いて、粘着剤を塗布する。粘着剤の塗布は、湿分硬化型樹脂組成物の充填前の任意のタイミングで行われる。ここで使用する粘着剤の種類はとくに指定されないが、好ましくは、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、またはシリコン系から選ばれる粘着剤のいずれかである。ウレタン系、アクリル系、エポキシ系、またはシリコン系の粘着剤を用いて封止することで、塗布部41を十分強固に接着し、金属チューブ1を密閉することができる。
【0039】
(乾燥工程)
次に、塗布部41における粘着剤に含まれる溶媒を揮発させる乾燥工程を行う。
【0040】
(樹脂充填工程)
次に、粘着剤を塗布した側の端部から、ノズルを注入し、樹脂を充填する。チューブの吐出口側の先端から樹脂を押し出し、規定量を充填したのち、ノズルを引き抜く。
【0041】
図4は、湿分硬化型樹脂組成物の充填部5と、塗布部41と、折り曲げ封止部4との関係を示す図である。
図4における符号101で示す図は、他端側が円筒形状を保っている状態の金属チューブ1を示す部分断面図である。
図4における符号102で示す図は、他端側を折り畳む直前の金属チューブ1の状態を示す側面図である。
【0042】
図4における符号101で示す状態では、湿分硬化型樹脂組成物の充填部5と塗布部41との間に空気層が存在する。符号102で示す状態のように、胴部2の他端側を押し潰すことにより、当該空気層に湿分硬化型樹脂組成物が充填される。本実施形態のように粘度が高い湿分硬化型樹脂組成物を充填する場合、粘着剤を塗布したチューブであっても充填作業において塗布部41まで充填物が染み出すと、接着力の低下が起きる可能性がある。
【0043】
そこで、湿分硬化型樹脂組成物が、塗布部41の内部には浸入しないように、湿分硬化型樹脂組成物の充填量および塗布部41の範囲が規定されている。具体的には、
図4に示すように、胴部2の内径(直径)をA、胴部2の端部の末端から湿分硬化型樹脂組成物が充填される部分(充填部5)までの距離をBとし、金属チューブ1の長軸方向における粘着剤の塗布幅をCとした場合、1.6≦B/A≦2.0かつB>Cとなるように、前記充填量および塗布部41の範囲が規定されている。好ましくは、1.7≦B/A≦1.9かつB>Cとなるように前記充填量および塗布部41の範囲が規定される。B/Aが1.6より小さいと、塗布部41に湿分硬化型樹脂組成物が浸入し、金属チューブ1を密閉できなくなる。B/Aが2.0より大きいと、内部に空気が多く残存し、湿分硬化型樹脂組成物の硬化が進行する。B/Aを当該範囲に制御することで、これらを防ぎ、湿分硬化型樹脂組成物の硬化を防ぎながら、金属チューブ1を密閉することが可能になる。
【0044】
また、塗布部41の他端側と他端側との間の距離Cを、Bよりも小さくすることで、粘着剤の塗布部に樹脂が至らず、粘着力が低下しない。さらに、塗布部41における接着力を十分に確保するという観点から、塗布部41の一端側と他端側との間の距離Cは、1cm以上であることが好ましい。
【0045】
(折り曲げ工程)
次に、胴部2の他端側を所定の間隔で折り曲げて、折り曲げ封止部4を形成する。
図4における符号103で示す図は、符号102で示す金属チューブ1の平面図である。胴部2の他端側を押し潰すことにより、当該他端側の幅は広がる。符号103で示す図において、胴部2の他端側の幅(金属チューブ1の長軸方向に対して垂直な方向の幅)は、πA/2となる。この状態で胴部2の他端側を所定の間隔で折り曲げる。
【0046】
以上の5つの工程を経ることによって、
図1に示すような、折り畳まれた状態の金属チューブが得られる。なお、本実施形態に係る金属チューブ1の製造方法は、少なくとも、金属チューブ1が有する胴部2の端部の内面に粘着剤を塗布する塗布工程と、前記粘着剤に含まれる溶剤を乾燥させる乾燥工程と、胴部2に湿分硬化型樹脂組成物を充填する充填工程と、前記端部を多段に折り曲げる折り曲げ工程とを含んでいればよい。
【0047】
<塗布方法>
金属チューブ1を用いて湿分硬化型樹脂組成物を塗布対象物である基材表面に塗布する方法について説明する。まず、吐出口32の閉塞部34に穴を開ける。吐出口32が開口した上で、金属チューブ1を指で加圧し、吐出口32から吐出される湿分硬化型樹脂組成物を基材表面に塗布する。または、吐出口32から吐出される湿分硬化型樹脂組成物をシリンジに移液した後に一定量を吐出し、基材表面に塗布する。
【0048】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 ・・・金属チューブ
2 ・・・胴部
32 ・・吐出口
34 ・・閉塞部
4 ・・・折り曲げ封止部
A ・・・胴部の内径
B ・・・他方の端部の末端から湿分硬化型樹脂が充填される部分までの距離
C ・・・金属チューブの長軸方向における粘着剤の塗布幅