(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005136
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/05 20060101AFI20230111BHJP
G03G 5/147 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G03G5/05 104B
G03G5/147 504
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106866
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 幸一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 賢太
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA04
2H068AA14
2H068AA29
2H068AA35
2H068AA37
2H068BA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外部光による感光層のダメージが抑制され、繰り返し使用時の電気特性の悪化がなく、良好な画質を連続して得ることができる電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に、少なくとも感光層、または少なくとも感光層および該感光層上に積層された保護層を備え、前記感光層および前記保護層の双方またはいずれか一方の層が、一般式(I):
(式中、Xは水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基であり、mは1~6の整数である)で表されるペリミジン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、少なくとも感光層、または少なくとも感光層および該感光層上に積層された保護層を備え、
前記感光層および前記保護層の双方またはいずれか一方の層が、一般式(I):
【化1】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基であり、mは1~6の整数である)
で表されるペリミジン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記ペリミジン化合物は、一般式(I)における置換基Xが水素原子でありかつ指数mが6である化合物である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層が前記導電性支持体側から順次積層された積層型感光層であり、該電荷輸送層が前記ペリミジン化合物を含有する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記ペリミジン化合物が、電荷輸送層の全固形分に対して0.05~1.5質量%の割合で含有する請求項3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記電荷輸送層が、18~42μmの膜厚を有する請求項3または4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記ペリミジン化合物が、前記保護層の全固形分に対して0.3~7質量%の割合で含有する請求項1~5のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記保護層が、3~7μmの膜厚を有する請求項1~6のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、露光により形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段および前記電子写真感光体に残留するトナーを除去するクリーニング手段から選択される少なくとも1種とを備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、外部光による感光層のダメージが抑制され、繰り返し使用時の電気特性の悪化がなく、良好な画質を連続して得ることができる電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真感光体には、有機光導電性材料を用いた有機感光体(以下「電子写真感光体」、単に「感光体」ともいう)が広く用いられている。
しかし、有機感光体には、感光層が光により劣化するという耐光性の問題がある。
通常、感光体は、複写機やレーザプリンタなどの画像形成装置の内部で遮光された状態で使用されており、蛍光灯などの外部光に曝されることはないが、マシン(画像形成装置)の組み立て時や感光体交換時、例えば紙詰まりが起こりマシン内から感光体を取り出す際に、感光体は外部光に曝されることになる。外部光の光強度はマシン内での画像形成のための露光強度と比較して断然強いために、感光体が外部光に曝されると大きなダメージを受けて、画像形成上問題となることがある。
【0003】
そこで、上記の問題を解決する手段として、様々な取り組みがなされている。
例えば、特開平10-048856公報(特許文献1)には、特定構造のフルオレン化合物と380~480nmに最大吸収波長を有する化合物とを含有する感光体が、特開2016-143024公報(特許文献2)には、280~380nmに吸収波長を有するベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含有する感光層を有する感光体が、特開2012-103333公報(特許文献3)には、420~520nmの範囲における吸光度が少なくとも一つの極大値を有する光吸収性化合物を含有する感光層を有する感光体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-048856公報
【特許文献2】特開2016-143024公報
【特許文献3】特開2012-103333公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の先行技術では、感光体の感光層に特定波長の光吸収性化合物や紫外線吸収剤を添加して、感光体に対する光ダメージを軽減しているが、それらの添加化合物による感光体の繰り返し使用時の電気特性の悪化が大きく、カブリや画像濃度の低下を引き起こす問題がある。
そこで、本発明は、外部光による感光層のダメージが抑制され、繰り返し使用時の電気特性の悪化がなく、良好な画質を連続して得ることができる電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、感光体の感光層および保護層の双方またはいずれか一方の層が、特定のペリミジン化合物を含有することで、外部光による感光層のダメージが抑制され、繰り返し使用時の電気特性の悪化がなく、良好な画質を連続して得ることができる電子写真感光体、ひいてはそれを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば、導電性支持体上に、少なくとも感光層、または少なくとも感光層および該感光層上に積層された保護層を備え、
前記感光層および前記保護層の双方またはいずれか一方の層が、一般式(I):
【化1】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基であり、mは1~6の整数である)
で表されるペリミジン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、上記の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【0009】
さらに、本発明によれば、上記の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段、露光により形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段および前記電子写真感光体に残留するトナーを除去するクリーニング手段から選択される少なくとも1種とを備えることを特徴とするプロセスカートリッジが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部光による感光層のダメージが抑制され、繰り返し使用時の電気特性の悪化がなく、良好な画質を連続して得ることができる電子写真感光体、それを備えたプロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することができる。
上記のペリミジン化合物は、480~600nmの波長領域の全域において外部光を吸収することができ、かつ画像形成装置のレーザなどの露光光や除電光の600~800nmの波長領域の光を吸収しないので、露光光や除電光を損なうことなしに、外部光による感光層のダメージを抑制(軽減)することができるものと考えられる。また、上記のペリミジン化合物は、感光体の繰り返し使用時の電気特性を悪化させることがない。
また、本発明の感光体は外部光のダメージが抑制されていることから、それを備えたプロセスカートリッジはその取扱いが容易になる。
上記の先行技術には、上記のペリミジン化合物についての記載や示唆はない。
【0011】
蛍光灯やLEDなどの外部光により感光体に与えられるダメージは、外部光が電荷輸送層を透過し、その透過した光が電荷発生物質に作用し、電荷トラップを発生することで起こる。一般的な蛍光灯は、440、490、550、580および620nm付近の光波長成分を有し、白色LEDは、460nmおよび500~700nmの光波長成分を有することから、これらの光が電荷輸送層を透過すると、電荷発生材料に作用し、電荷トラップを発生させる。
図4は、本発明の一般式(I)で表されるペリミジン化合物の吸収スペクトルであり、480~600nmの広範囲に吸収があり、電荷輸送層や保護層に添加することで、光吸収化合物として機能して、上記の光波長成分が電荷発生物質への作用を効果的に遮断することができるものと考えられる。
また、600~800nmの光波長成分は、感光体を露光して静電潜像を形成するLEDやレーザ光および感光体に残留する表面電荷を除電するLEDなどで使われるため透過する必要がある。本発明の一般式(I)で表されるペリミジン化合物は600~800nmに吸収を示さないことから、電気特性への弊害が少なく非常に好適であるものと考えられる。
【0012】
本発明の感光体は、次の条件(1)~(6)のいずれか1つを満たす場合に、上記の効果をより発揮する。
(1)ペリミジン化合物は、一般式(I)における置換基Xが水素原子でありかつ指数mが6である化合物である。
(2)感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層が導電性支持体側から順次積層された積層型感光層であり、電荷輸送層がペリミジン化合物を含有する。
(3)ペリミジン化合物が、電荷輸送層の全固形分に対して0.05~1.5質量%の割合で含有する。
(4)電荷輸送層が、18~42μmの膜厚を有する。
(5)ペリミジン化合物が、保護層の全固形分に対して0.3~7質量%の割合で含有する。
(6)保護層が、3~7μmの膜厚を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の感光体1の要部の構成を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の感光体2の要部の構成を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の画像形成装置の要部の構成を示す模式側面図である。
【
図4】本発明の一般式(I)で表されるペリミジン化合物の吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)電子写真感光体
本発明の感光体は、導電性支持体上に、少なくとも感光層、または少なくとも感光層および該感光層上に積層された保護層を備え、
前記感光層および前記保護層の双方またはいずれか一方の層が、一般式(I):
【0015】
【0016】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基であり、mは1~6の整数である)
で表されるペリミジン化合物(以下「本発明のペリミジン化合物」ともいう)を含有することを特徴とする。
以下、(1)感光体に関して、その構造および構成材料について説明し、それを備えた(2)画像形成装置および(3)プロセスカートリッジについて説明する。
【0017】
<感光体>
本発明の感光体は、導電性支持体上に、少なくとも感光層、または少なくとも感光層および該感光層上に積層された保護層を備える。
以下に図面を用いて、本発明の感光体を説明するが、本発明は、これらにより限定されるものではない。
本発明の感光体は、以下に説明するように、導電性支持体と感光層との間に下引き層を備えていてもよく、また感光層、すなわち電荷輸送層上に保護層を備えていてもよい。
【0018】
図1は、本発明の感光体1の要部の構成を示す概略断面図である。
感光体1は、導電性支持体11上に、下引き層18が設けられ、その上に電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷輸送物質13、それを結着させるバインダ樹脂17および本発明のペリミジン化合物19を含有する電荷輸送層16とがこの順序で積層されてなる積層構造の感光層(「積層型感光層」、「機能分離型感光層」ともいう)14が設けられた積層型感光体(「機能分離型感光体」ともいう)である。
本発明の感光体の感光層は、上記のように、電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層が前記導電性支持体側から順次積層された積層型感光層であり、該電荷輸送層が記ペリミジン化合物を含有するのが好ましい。
【0019】
図2は、本発明の感光体2の要部の構成を示す概略断面図であり、この感光体2は、
図1に感光体1の外側(感光側)に本発明のペリミジン化合物19を含有する保護層20を有する積層型感光体である。感光体2では、電荷輸送層16が本発明のペリミジン化合物19を含有していないが、本発明の感光体では、電荷輸送層16および保護層20が共に本発明のペリミジン化合物19を含有していても、電荷輸送層16および保護層20のいずれか一方が本発明のペリミジン化合物19を含有していてもよい。
以下、各構成について説明する。
【0020】
<導電性支持体11>
導電性支持体は、感光体の電極としての機能と支持部材としての機能を有し、その構成材料は、当該技術分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼およびチタンなどの金属材料、ならびに表面に金属箔ラミネート、金属蒸着処理または導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布した、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンおよびポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙ならびにガラスなどが挙げられる。これらの中でも、加工の容易性の点からアルミニウムが好ましく、JIS3003系、JIS5000系およびJIS6000系などのアルミニウム合金が特に好ましい。
導電性支持体の形状は、
図5に示すような円筒状(ドラム状)に限定されず、シート状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。
また、導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、レーザ光による干渉縞防止のために、陽極酸化皮膜処理、薬品もしくは熱水などによる表面処理、着色処理、または表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
【0021】
<下引き層(「中間層」ともいう)18>
本発明の感光体は、導電性支持体11と感光層14との間に下引き層18を備えるのが好ましい。
下引き層は、一般に、導電性支持体の表面の凸凹を被覆し均一にして、感光層、ここでは電荷発生層の成膜性を高め、感光層の導電性支持体からの剥離を抑え、導電性支持体と感光層との接着性を向上させる。具体的には、導電性支持体からの感光層への電荷の注入が防止され、感光層の帯電性の低下を防ぎ、画像のかぶり(いわゆる黒ぽち)を防止することができる。
【0022】
下引き層は、例えば、バインダ樹脂を適当な溶剤に溶解させて下引き層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成することができる。
【0023】
バインダ樹脂としては、後述する感光層に含まれるものと同様のバインダ樹脂に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどの天然高分子材料などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。
バインダ樹脂は、下引き層上に感光体層を形成する際に用いられる溶剤に対して溶解や膨潤などが起こらないこと、導電性支持体との接着性に優れること、可撓性を有することなどの特性が要求されることから、上記のバインダ樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が好ましい。
アルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば、6-ナイロン、66-ナイロン、610-ナイロン、11-ナイロンおよび12-ナイロンなどの単独重合または共重合ナイロン、N-アルコキシメチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などが挙げられる。
【0024】
樹脂材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤、アセトン、ジオキソラン、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
【0025】
また、下引き層用塗布液は、金属酸化物粒子19を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子は、下引き層の体積抵抗値を容易に調節でき、感光層への電荷の注入をさらに抑制できると共に、各種環境下において感光体の電気特性を維持できる。
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどが挙げられる。
下引き層用塗布液におけるバインダ樹脂と金属酸化物粒子との合計質量Cと溶剤の質量Dとの比率(C/D)は、1/99~40/60が好ましく、2/98~30/70が特に好ましい。
また、バインダ樹脂の質量Eと金属酸化物粒子の質量Fとの比率E/Fは、90/10~1/99が好ましく、70/30~5/95が特に好ましい。
【0026】
金属酸化物粒子を下引き層用塗布液に分散させるために、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機およびペイントシェーカなどの公知の装置を用いてもよい。
下引き層用塗布液の塗布方法は、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択すればよく、例えば、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などが挙げられる。
これらの中でも、浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、感光体の製造に好適に用いることができる。浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置が設けられていてもよい。
【0027】
自然乾燥により塗膜中の溶剤を除去してもよいが、加熱により強制的に塗膜中の溶剤を除去してもよい。
このような乾燥工程における温度は、使用した溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50~140℃程度が適当であり、80~130℃程度が特に好ましい。
乾燥温度が50℃未満では、乾燥時間が長くなることがあり、また溶剤が充分に蒸発せず感光体層中に残ることがある。また、乾燥温度が約140℃を超えると、感光体の繰り返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化することがある。
このような温度条件は、下引き層のみならず後述する感光層などの層形成や他の処理においても共通する。
【0028】
下引き層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.05~10μmである。
下引き層の膜厚が0.01μm未満では、下引き層として実質的に機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体からの感光層への電荷の注入を防止することができなくなるおそれがある。一方、下引き層の膜厚が20μmを超えると、均一な下引き層を形成し難く、また感光体の感度も低下するおそれがある。
なお、導電性支持体の構成材料がアルミニウムの場合には、アルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、下引き層とすることができる。
【0029】
<電荷発生層15>
電荷発生層は、画像形成装置などにおいて半導体レーザ光などの照射された光を吸収することによって電荷を発生する機能を有し、電荷発生物質を主成分とし、必要に応じてバインダ樹脂や添加剤を含有する。
【0030】
電荷発生物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用でき、具体的には、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料;インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料;ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料;アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料;チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料;スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料;ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などが挙げられ、露光波長域に感度を有するものを適宜選択して用いることができる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの電荷発生物質の中でも、下記一般式(A):
【0031】
【0032】
(式中、X1、X2、X3およびX4は、同一または異なって、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、r、s、yおよびzは、同一または異なって0~4の整数である)
で表されるチタニルフタロシアニンを用いることが好ましい。
チタニルフタロシアニンは、現在一般的に用いられているレーザ光およびLED光の発信波長域(近赤外光)で高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質であり、光を吸収することにより多量の電荷を発生させると共に、発生した電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質13に効率よく注入することができる。
【0033】
一般式(A)で表されるチタニルフタロシアニンは、例えばMoser, Frank HおよびArthur L. ThomasによるPhthalocyanine Compounds、Reinhold Publishing Corp.、New York、1963に記載されている方法などの公知の製造方法によって製造することができる。
例えば、一般式(A)で表されるチタニルフタロシアニン化合物のうち、r、s、yおよびzが0である無置換のチタニルフタロシアニンの場合は、フタロニトリルと四塩化チタンとを、加熱融解するかまたはα-クロロナフタレンなどの適当な溶剤中で加熱反応させることによってジクロロチタニルフタロシアニンを合成した後、塩基または水で加水分解することによって得られる。
また、イソインドリンとテトラブトキシチタンなどのチタニウムテトラアルコキシドとを、N-メチルピロリドンなどの適当な溶剤中で加熱反応させることによっても、チタニルフタロシアニン組成物を製造することができる。
【0034】
電荷発生層の形成方法としては、電荷発生物質を導電性支持体上に真空蒸着する方法、および溶剤中に電荷発生物質を分散して得られる電荷発生層用塗布液を導電性支持体上に塗布する方法などがある。これらの中でも、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷発生物質を従来公知の方法によって分散させ、電荷発生層用塗布液を導電性支持体上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
【0035】
バインダ樹脂としては、特に限定されず、当該分野で公知の樹脂をいずれも使用でき、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェノキシ、ポリビニルブチラールおよびポリビニルホルマールなどの樹脂、ならびにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などを挙げることができる。
共重合体樹脂としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
溶剤としては、例えば、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなどのエーテル類、1,2-ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、またはN,N-ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
電荷発生物質とバインダ樹脂との配合比率は、電荷発生物質の割合が10~99質量%の範囲にあることが好ましい。
電荷発生物質の割合が10質量%未満であると、感度が低下することがある。一方、電荷発生物質の割合が99質量%を超えると、電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少して画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多く発生することがある。
【0038】
バインダ樹脂溶液中に電荷発生物質を分散させる前に、予め電荷発生物質を粉砕機によって粉砕処理してもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などを挙げることができる。
電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に分散させる際に用いられる分散機としては、ペイントシェーカ、ボールミルまたはサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器および分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択すればよい。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、下引き層用塗布液の塗付方法と同様の方法が挙げられ、浸漬塗布法が特に好ましい。
【0039】
電荷発生層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.05~5μmであり、より好ましくは0.1~1μmである。
電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感光体の感度が低下することがある。一方、電荷発生層の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が感光層表面の電荷を消去する過程の律速段階となり感光体の感度が低下することがある。
【0040】
<電荷輸送層16>
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れ感光体表面まで輸送する機能を有し、電荷輸送物質、フィラーおよびバインダ樹脂、必要に応じて本発明のペリミジン化合物、その他の添加剤を含有する。
【0041】
本発明のペリミジン化合物は、一般式(I):
【0042】
【0043】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基であり、mは1~6の整数である)
で表される。
炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられる。
炭素数が1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシなどが挙げられる。
これらの中でも、本発明の優れた効果が得られる点、材料入手の容易さなどの点から、一般式(I)における置換基Xが水素原子でありかつ指数mが6である化合物Xが水素原子のペリミジン化合物(C.I.ソルベントレッド179)が特に好ましい。
【0044】
本発明のペリミジン化合物は、特表2001-501667号公報の実施例1および4に記載の方法で合成することができる。また、市販品、例えば、AmericanDyestuff製のAmesolve Red A、紀和化学工業株式会社製のKP Plast Red H2Gおよび東洋サイエンス株式会社製のRed E2Gなどがあり、本発明ではこれらを用いることができる。
【0045】
電荷輸送物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマー(ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン、エチルカルバゾール-ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ-9-ビニルアントラセンなど)、ポリシランなどが挙げられる。これらの電荷輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
【0046】
これらの種々の電荷輸送物質の中でも、電気特性、耐久性および化学的安定性において、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体およびこれらの化合物が複数種結合したものが好ましく、スチルベン誘導体がより好ましく、下記の一般式(II):
【0047】
【0048】
(式中、R1、R2、R5およびR6は、同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはアラルキル基またはハロゲン原子であり、m、n、pおよびqは、同一または異なって、0~3の整数であり、R3およびR4は、同一または異なって、水素原子またはアルキル基である)
で表されるスチルベン化合物が特に好ましい。
【0049】
一般式(II)における置換基R1、R2、R5およびR6について説明する。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどの炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシなどの炭素数が1~6のアルコキシ基が挙げられる。
アリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ビフェニリル、o-テルフェニルなどが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、トリチルなどが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
【0050】
置換基R1、R2、R5およびR6の指数を示すm、n、pおよびqは、同一または異なって、0~3の整数であり、この指数が2以上のとき、各置換基は互いに異なっていてもよい。
また、一般式(II)における置換基R3およびR4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルなどの炭素数1~3のアルキル基が挙げられる。
一般式(II)で表されるスチルベン化合物は、例えば、特許第3272257号公報に記載の方法により合成することができる。
【0051】
一般式(II)で表されるスチルベン化合物としては、例えば、下記の化合物(1)~(3)が挙げられ、電気特性および溶解性の点で化合物(1)が特に好ましい。
【0052】
【0053】
電荷輸送層の形成方法としては、バインダ樹脂を溶剤中に混合して得られるバインダ樹脂溶液中に、電荷輸送物質および本発明のペリミジン化合物を加え、従来公知の方法によって分散させた電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法が好ましい。以下、この方法について説明する。
【0054】
バインダ樹脂としては、特に限定されず、当該分野で公知の樹脂をいずれも使用でき、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体樹脂およびそれらの共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリフェノキシ、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂などの樹脂、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、電荷輸送物質との相溶性に優れ、電気絶縁性、透明性、電気特性、皮膜性、耐摩耗性などにも優れることから、ポリカーボネート樹脂およびポリアリレート樹脂が特に好ましい。
【0055】
電荷輸送物質(A)とバインダ樹脂(B)との比率A/Bは、好ましくは10/12~10/30で用いられる。
比率A/Bが10/30未満でありバインダ樹脂の比率が高くなると、浸漬塗布法によって電荷輸送層を形成する場合、塗布液の粘度が増大するので、塗布速度低下を招き生産性が著しく悪くなる。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層に白濁が発生することがある。一方、比率A/Bが10/12を超えてバインダ樹脂の比率が低くなると、バインダ樹脂の比率が高いときに比べて耐刷性が低くなり、感光層の摩耗量が増加することがある。
【0056】
ペリミジン化合物は、電荷輸送層の全固形分に対して0.05~1.5質量%の割合で含有するのが好ましい。
ペリミジン化合物の含有量が0.05質量%未満では、耐光性への効果が十分に得られないことがある。一方、ペリミジン化合物の含有量が1.5質量%を超えると、電気特性が悪化することがある。より好ましいペリミジン化合物の含有量は、0.15~0.80質量%である。
【0057】
電荷輸送層は、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤またはレベリング剤などの添加剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などが挙げられる。
レベリング剤としては、例えばシリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
また、電荷輸送層は、機械的強度の増強や電気的特性の向上を図るために、無機化合物または有機化合物の微粒子を含有してもよい。
【0058】
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THF、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ならびにN,N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。また必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。これらの溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
電荷輸送層は、例えば、前述の電荷発生層15を形成する場合と同様に、適当な溶剤中に電荷輸送物質13およびバインダ樹脂17、ならびに必要な場合には前述の添加剤を溶解または分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗布液をスプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法または浸漬塗布法などによって、電荷発生層15上に塗布することによって形成される。これらの塗布方法の中でも、特に浸漬塗布法は、前述したように種々の点で優れているので、電荷輸送層を形成する場合にも多く利用されている。
【0060】
電荷輸送層は、18~42μmの膜厚を有するのが好ましい。
電荷輸送層の膜厚が18μm未満では、耐光性への効果が十分に得られないことがある。一方、電荷輸送層の膜厚が42μmを超えると、電気特性が悪化することがある。より好ましい電荷輸送層の膜厚は25~37μmである。
【0061】
<保護層>
本発明の感光体は、
図2に示すように、感光層上に保護層を有していてもよい。
保護層は、感光体の耐久性を向上させる機能を有し、バインダ樹脂、必要に応じて、本発明のペリミジン化合物、その他の添加剤を含有する。また、保護層は、電気特性安定化のために、電荷輸送層と同一の1種または2種以上の電荷輸送物質を含有してもよい。
バインダ樹脂としては、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用でき、例えばポリスチレン、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの樹脂が挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、摩耗特性、電気的特性を考慮した場合、ポリカーボネート、ポリアリレートが特に好ましい。
【0062】
また、保護層は、耐摩耗性を向上させる目的でフィラー材料が添加されていてもよい。
有機系フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a-カーボン粉末などが挙げられ、無機系フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられ、フィラーの硬度の点から、無機系フィラー材料が特に好ましい。
フィラーの平均一次粒子径は、保護層の光透過率や耐摩耗性の点から、0.01~0.5μmであるのが好ましい。
また、フィラー材料は、塗布形成のための塗布液中での分散性向上などの点から、無機物、有機物で表面処理されていてもよい。例えば、撥水性処理としてシランカップリング剤で処理したもの、フッ素系シランカップリング剤で処理したもの、高級脂肪酸で処理したもの、フィラー表面をアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカで処理したものが挙げられる。
保護層中のフィラー材料の含有割合は、高いほど耐摩耗性が向上し良好であるが、電気特性の悪化、保護層の書き込み光透過率の低下などの悪影響を生じる場合がある。したがって、フィラー材料は、全固形分に対して概ね50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。
【0063】
ペリミジン化合物は、保護層の全固形分に対して0.3~7質量%の割合で含有するのが好ましい。
ペリミジン化合物の含有量が0.3質量%未満では、耐光性への効果が十分に得られないことがある。一方、ペリミジン化合物の含有量が7質量%を超えると、電気特性が悪化することがある。より好ましいペリミジン化合物の含有量は、1~4質量%である。
【0064】
保護層は、3~7μmの膜厚を有するのが好ましい。
保護層の膜厚が3μm未満では、耐久性および耐光性への効果が十分に得られないことがある。一方、保護層の膜厚が7μmを超えると、電気特性が悪化することがある。より好ましい保護層の膜厚は4~6μmである。
【0065】
(2)画像形成装置100
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する(可視像化する)現像手段と、現像によって形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写されたトナー像を記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする。
図面を用いて、本発明の画像形成装置およびその動作について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
【0066】
図2は、本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
図2の画像形成装置(レーザプリンタ)100は、本発明の感光体1と、露光手段(半導体レーザ)31と、帯電手段(帯電器)32と、現像手段(現像器)33と、転写手段(転写帯電器)34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着手段(定着器)35と、クリーニング手段(クリーナ)36とを含んで構成される。符号51は記録媒体(記録紙または転写紙)を示す。
【0067】
感光体1は、画像形成装置100本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体1の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。帯電手段(帯電器)32、露光手段31、現像手段(現像器)33、転写手段(転写帯電器)34およびクリーニング手段(クリーナ)36は、この順序で、感光体1の外周面に沿って、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
【0068】
帯電器32は、感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電手段である。
露光手段31は、半導体レーザを光源として備え、光源から出力されるレーザビーム光を、帯電器32と現像器33との間の感光体1の表面に照射することによって、帯電された感光体1の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光は、主走査方向である感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器32により均一に帯電された感光体1の帯電量がレーザビームの照射および非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
【0069】
現像器33は、露光によって感光体1の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー)によって現像する現像手段であり、感光体1を臨んで設けられ、感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
【0070】
転写帯電器34は、現像によって感光体1の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写帯電器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写帯電器34は、例えば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙51上に転写させる接触式の転写手段である。
【0071】
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。また、このクリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
【0072】
また、画像形成装置100には、感光体1と転写帯電器34との間を通過した転写紙51が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ、加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
符号37は、転写紙と感光体を分離する分離手段、符号38は、画像形成装置の前記の各手段を収容するケーシングを示す。
【0073】
この画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。
まず、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の表面が正の所定電位に均一に帯電される。
【0074】
次いで、露光手段31から、感光体1の表面に対して画像情報に応じた光が照射される。感光体1は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33から、静電潜像の形成された感光体1の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0075】
感光体1に対する露光と同期して、感光体1と転写帯電器34との間に、転写紙51が供給される。転写帯電器34によって、供給された転写紙51にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体1の表面に形成されたトナー像が、転写紙51上に転写される。
トナー像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
【0076】
一方、転写帯電器34によるトナー像の転写後も感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって感光体1の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体1の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
【0077】
(3)プロセスカートリッジ
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の感光体と、感光体を帯電させる帯電手段、露光により形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段および感光体に残留するトナーを除去するクリーニング手段から選択される少なくとも1種とを備えることを特徴とする。
【0078】
例えば、本発明のプロセスカートリッジは、本発明の感光体、帯電装置、現像装置およびクリーニング装置が支持部材に一体化されることで構成される。このようなプロセスカートリッジが画像形成装置100に組み込まれることにより、プロセスカートリッジの構成要素である各部が画像形成装置100に備えられることになる。
プロセスカートリッジが画像形成装置100に脱着可能であることにより、消耗時の交換が容易になる。
【実施例0079】
以下に、図面に基づき実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:タイベークTTO-D-1)3質量部および共重合ポリアミド(ナイロン)(東レ株式会社製、商品名:アミラン(登録商標)、グレード:CM8000)2質量部を、メチルアルコール25質量部に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理して下引き層用塗布液3リットルを調製した。
得られた下引き層用塗布液を塗布層に満たし、導電性支持体11として直径30mm、長さ255mmのアルミニウム製のドラム状支持体を浸漬した後に引き上げ、得られた塗膜を自然乾燥させて、導電性支持体11上に膜厚1μmの下引き層18を形成した。
【0081】
予め、電荷発生物質として使用する、下記構造式で表されるチタニルフタロシアニンを調製した。
【化7】
【0082】
ジイミノイソインドリン29.2gおよびスルホラン200mlを混合し、さらにチタニウムテトライソプロポキシド17.0gを加え、窒素雰囲気下、140℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を放冷した後、析出物を濾取し、クロロホルムおよび2%の塩酸水溶液で順次洗浄し、さらに水およびメタノールで順次洗浄し、乾燥させて青紫色の結晶物25.5gを得た。
得られた化合物の化学分析の結果、上記構造式で表されるチタニルフタロシアニンであることを確認した(収率88.5%)。
得られたチタニルフタロシアニン1質量部およびブチラール樹脂(積水化学株式会社製、商品名:エスレックBM-2)1質量部を、メチルエチルケトン98質量部に加え、ペイントシェーカにて2時間分散処理して電荷発生層用塗布液3リットルを調製した。
得られた電荷発生層用塗布液を、下引き層形成の場合と同様の浸漬法で、下引き層上に塗布し、得られた塗膜を自然乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0083】
次いで、電荷輸送物質として化合物(1)250g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)375gおよび一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製、商品名:Amesolve Red A)1.15gを、テトラヒドロフラン2500gに加え、混合し、ボールミルにて15時間撹拌処理して、電荷輸送層用塗布液3126gを調製した。
得られた電荷輸送層用塗布液を、下引き層形成の場合と同様の浸漬法で、電荷発生層上に塗布し、得られた塗膜を120℃で1時間乾燥させて、膜厚36μmの電荷輸送層を形成し、
図1に示す感光体を得た。
特許第3272257号公報に記載の方法に基づいて予め調製しておいた化合物(1)(スチルベン化合物)を電荷輸送物質として使用した。
【0084】
(実施例2)
電荷輸送層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)1.15gを4.38gにしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0085】
(実施例3)
電荷輸送層の膜厚36μmを26μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0086】
(実施例4)
電荷輸送層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)1.15gを0.31gにしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0087】
(実施例5)
電荷輸送層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)1.15gを9.50gにしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0088】
(実施例6)
電荷輸送層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)1.15gを0.25gにしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0089】
(実施例7)
電荷輸送層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)1.15gを10.1gにしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0090】
(実施例8)
電荷輸送層の膜厚36μmを18μmにしたこと以外は、実施例5と同様にして感光体を作製した。
【0091】
(実施例9)
電荷輸送層の膜厚36μmを42μmにしたこと以外は、実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0092】
(実施例10)
電荷輸送層の膜厚36μmを17μmにしたこと以外は、実施例5と同様にして感光体を作製した。
【0093】
(実施例11)
電荷輸送層の膜厚36μmを44μmにしたこと以外は、実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0094】
(実施例12)
実施例1と同様に、下引き層および電荷発生層を形成した。
次いで、電荷輸送物質として化合物(1)250gおよびポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)375gを、テトラヒドロフラン2500gに加え、混合し、ボールミルにて15時間撹拌処理して、電荷輸送層用塗布液3125gを調製した。
得られた電荷輸送層用塗布液を、下引き層形成の場合と同様の浸漬法で、電荷発生層上に塗布し、得られた塗膜を120℃で1時間乾燥させて、膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。
【0095】
次いで、シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL(登録商標)RX200)120g、電荷輸送物質として化合物(1)250g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)375gおよび一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)9.05gを、テトラヒドロフラン3500gに加え、混合し、ボールミルにて15時間撹拌処理し、粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M-110P)を用いて、5Pass分散処理して保護層用塗布液4041gを調製した。
得られた保護層用塗布液を、スプレー法で、電荷輸送層上に塗布し、得られた塗膜を120℃で1時間乾燥させて、膜厚4.5μmの保護層を形成し、
図2に示す感光体を得た。
特許第3272257号公報に記載の方法に基づいて予め調製しておいた化合物(1)(スチルベン化合物)を電荷輸送物質として使用した。
【0096】
(実施例13)
保護層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)9.05gを29.40gにしたこと以外は、実施例12と同様にして感光体を作製した。
【0097】
(実施例14)
保護層の膜厚4.5μmを5.5μmにしたこと以外は、実施例12と同様にして感光体を作製した。
【0098】
(実施例15)
保護層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)9.05gを3.00gにしたこと以外は、実施例12と同様にして感光体を作製した。
【0099】
(実施例16)
保護層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)9.05gを3.00gにしたこと以外は、実施例12と同様にして感光体を作製した。
【0100】
(実施例17)
保護層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)9.05gを1.50gにしたこと以外は、実施例12と同様にして感光体を作製した。
【0101】
(実施例18)
保護層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)9.05gを1.15gにしたこと以外は、実施例12と同様にして感光体を作製した。
【0102】
(実施例19)
保護層の膜厚4.5μmを3.0μmにしたこと以外は、実施例16と同様にして感光体を作製した。
【0103】
(実施例20)
保護層の膜厚4.5μmを7.0μmにしたこと以外は、実施例15と同様にして感光体を作製した。
【0104】
(実施例21)
保護層の膜厚4.5μmを2.0μmにしたこと以外は、実施例16と同様にして感光体を作製した。
【0105】
(実施例22)
保護層の膜厚4.5μmを8.0μmにしたこと以外は、実施例15と同様にして感光体を作製した。
【0106】
(実施例23)
電荷輸送層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)1.15gを加えたこと以外は、実施例12と同様にして感光体を作製した。
【0107】
(実施例24)
電荷輸送層用塗布液の調製において、電荷輸送物質の化合物(1)の代わりに、TPD(トリフェニルアミンダイマー)(東京化成工業株式会社製、商品名:D2448)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0108】
(比較例1)
電荷輸送層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)1.15gを用いないこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0109】
(比較例2)
電荷輸送層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)の代わりに、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、富士フィルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0110】
(比較例3)
電荷輸送層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)の代わりに、特開2012-103333の実施例1に記載の化合物(AmericanDyestuff製、商品名:Amesolve Red H)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0111】
(比較例4)
電荷輸送層用塗布液の調製において、一般式(I)の化合物(AmericanDyestuff製 商品名:Amesolve Red A)の代わりに、特開平10-048856の実施例1に記載の化合物(AmericanDyestuff製、商品名:Amesolve Yellow Y)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0112】
[評価]
作製した実施例1~24および比較例1~4の感光体を、試験用に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX-B455W)のユニットに装着し、電気特性および光暴露評価を行った。
【0113】
[電気特性(感度)]
上記複写機から現像器を取外し、代わりに現像部位に表面電位計(トレック・ジャパン社製:MODEL 344)を設け、温度25℃、相対湿度50%の環境中において、露光をしなかった場合の感光体の表面電位を-600Vに調整し、その状態で黒地部分の表面電位VL(-V)を測定した。
得られた結果から下記基準で感度を評価した。
<判定基準>
A:VL(-V)<80
高感度を要求される高速の複合機もしくはプリンタにおいても問題なく使用可
B:80≦VL(-V)<110
中低速の複合機もしくはプリンタにおいては問題なく使用可
C:110≦VL(-V)<140
低速で安価な複合機もしくはプリンタの場合であれば、やや濃度は薄いものの問題なく使用可
D:140≦VL(-V)
感度が悪いため、濃度が薄く、実使用上問題あり
【0114】
[光暴露評価]
感光体表面の一部分以外を黒紙でマスクし、マスクしていない部分に光強度400Luxの白色蛍光灯の光が照射されるように調整して5分間照射し、その後、5分間放置し、ハーフトーン画像の確認を行った。
得られた画像を下記基準で評価した。
<判定基準>
VG:照射部分と非照射部分に差なし
G :照射部分と非照射部分に僅かに差が見られるが、大差なし
NB:照射部分と非照射部分に若干の差が見られるが、実使用では問題なし
B :照射部分と非照射部分に大きな差が見られ、実使用上問題あり
【0115】
<総合評価>
上記の評価結果に基づいて、下記の基準で感光体を総合評価した。
VG:全ての項目でVG評価であり、非常に良好
G :いずれかの項目でG評価を含むものの、全ての項目でG評価以上であり、高画質な複合機もしくはプリンタ以外の場合であれば問題なく使用可能
NB:いずれかの項目でNB評価を含むものの、全ての項目でNB評価以上であり、安価な複合機もしくはプリンタの場合であれば問題なく使用可能
B:いずれかの項目にB判定があり、実使用不可
作製した感光体の構成および評価結果を表1および2に示す。
【0116】
【0117】
【0118】
表1および表2の結果から、次のことがわかる。
(1)電荷輸送層および保護層を有する電子写真感光体において、電荷輸送層および保護層の双方またはいずれか一方もしくは両方に本発明のペリミジン化合物を含有する感光体(実施例1~23)は、本発明のペリミジン化合物を含有していない感光体(比較例1)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含有する感光体(比較例2)、特開2012-103333号公報(特許文献3)の実施例1に記載の化合物を含有する感光体(比較例3)、特開平10-048856号公報(特許文献1)の実施例1に記載の化合物を含有した感光体(比較例4)に比べて、良好な電気特性でかつ外部光による光暴露耐性に優れた特性であることがわかる。
【0119】
(2)電荷輸送層中への本発明のペリミジン化合物の添加量は、実施例4~7の結果から、電荷輸送層の全固形分に対して0.05~1.5質量%が好ましく、添加量が0.05%より少ないと、耐光性への効果が十分ではなく、添加量が1.5質量%を超えると、電気特性が悪化すること、さらに実施例1および2の結果から、より好ましい添加量は、0.15~0.80質量%であることがわかる。
【0120】
(3)電荷輸送層の膜厚は、実施例8~12の結果から、18~42μmが好ましく、膜厚が18μmより薄いと、耐光性への効果が十分ではなく、膜厚が42μm超えると、電気特性が悪化すること、さらに実施例1および3の結果から、より好ましい膜厚は、25~37μmであるがことがわかる。
【0121】
(4)保護層中への本発明のペリミジン化合物の添加量は、実施例15~18の結果から、保護層の全固形分に対して0.3~7質量%が好ましく、添加量が0.3%より少ないと耐光性への効果が十分ではなく、添加量が7質量%を超えると、電気特性が悪化すること、さらに実施例12および13の結果から、より好ましい添加量は、1.0~4.0質量%であることがわかる。
【0122】
(5)保護層の膜厚は、実施例19~22の結果から、3~7μmが好ましく、膜厚が3μmより薄いと、耐光性への効果が十分ではなく、膜厚が7μm超えると、電気特性が悪化すること、さらに実施例12および14の結果から、より好ましい膜厚は、4~6μmであることがわかる。