(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051412
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】オキセタン組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 65/18 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
C08G65/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162053
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】弘津 健二
(72)【発明者】
【氏名】山下 真奈
(72)【発明者】
【氏名】小西 優久
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA07
4J005AA09
4J005BA00
(57)【要約】
【課題】 4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(OXBP)の特徴を損なわず、ハンドリングを向上させることが可能な組成物を提供する。
【解決手段】 25℃での粘度が100cP以下のオキセタン化合物及び4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(OXBP)を含むオキセタン組成物であって、オキセタン組成物全量に対し、該オキセタン化合物及びOXBPの合計の含有量が80質量%以上である、オキセタン組成物である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃での粘度が100cP以下のオキセタン化合物及び4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルを含むオキセタン組成物であって、
オキセタン組成物全量に対し、該オキセタン化合物及び4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルの合計の含有量が80質量%以上である、オキセタン組成物。
【請求項2】
前記25℃での粘度が100cP以下のオキセタン化合物が、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3,3’-(オキシビス(メチレン))ビス(3-エチルオキセタン)、3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチルオキシメチル)オキセタン、及び3-エチル-3-(アリルオキシメチル)オキセタンからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1記載のオキセタン組成物。
【請求項3】
前記オキセタン化合物と4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルとの質量比が、10/90~90/10の範囲である、請求項1又は2に記載のオキセタン組成物。
【請求項4】
前記オキセタン化合物と4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルとの質量比が、10/90~50/50の範囲である、請求項3に記載のオキセタン組成物。
【請求項5】
25℃において粘度が1000cP以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のオキセタン組成物。
【請求項6】
前記オキセタン化合物及び4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルのみからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のオキセタン組成物。
【請求項7】
光硬化させたときのガラス転移温度が、同じ条件で硬化させた4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルのガラス転移温度±15℃の範囲である、請求項1~6のいずれか一項記載のオキセタン組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のオキセタン組成物を含む、硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のオキセタン組成物、及び保存用容器からなる、オキセタン保存用キット。
【請求項10】
25℃での粘度が100cP以下のオキセタン化合物と混合する工程を含む、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニルを液状物として取り扱うための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキセタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オキセタン環を有する化合物(以下、「オキセタン類」ともいう)は、光カチオン重合や熱カチオン重合又は硬化が可能なモノマーとして、近年注目を浴びている化合物であり、多くの単官能性又は多官能性オキセタン類が報告されている。オキセタン類は、エポキシ樹脂の代替として、又は併用して使用することができる、優れた安全性、物性、反応性、保存安定性を備えていることを特徴とする。オキセタン類は、電子材料用エポキシ樹脂の代替として、又は併用して、レジスト、封止材、アンダーフィル材として使用されている。
【0003】
中でも4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(以下、OXBPと称することもある)は、カチオン重合性組成物の硬化成分としても知られている(特許文献1)。OXBPは、そのビフェニル骨格に由来して、硬化させたときに高硬度、耐熱性、耐吸湿性、耐薬品性などの特徴を備えているため、硬化性樹脂組成物の構成成分として有用な材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/043778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OXBPは耐熱性に優れるなど有用な特性を複数備えた材料であるが、室温で固体のモノマーである。使用する際には溶融させるなどの工夫が必要であるため、取り扱いが難しい。さらに、OXBPを一度融解すると、凝固が遅く、融点以下でも数か月にわたり過冷却状態で流動状態を保つ事もあるが非常に粘度が高く、また保存容器の壁や底に微細な結晶が析出することがある。この状態で容器から液状部分のみを取り出して使用すると、均一に融解した物と純度が異なるため、所望の物性が得られないことがある。
硬化性組成物の一成分としてのOXBPを含む樹脂組成物は、硬化物に均一な物理的性質を与えるために、硬化前の状態で均一な系とする必要がある。しかしながらOXBPはその性状に由来して取り扱い性において不便な点を有していた。そのため、溶融などの高エネルギーを付加する必要がなく、かつOXBPの物性に影響を与えないか、又は小さい影響で、OXBPの取り扱い性を向上させる手段が望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、OXBPの特徴を損なわず、かつ取り扱い性を向上させることが可能な組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、具体的には以下のとおりである。
[1]25℃での粘度が100cP以下のオキセタン化合物及び4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(OXBP)を含むオキセタン組成物であって、
オキセタン組成物全量に対し、該オキセタン化合物及びOXBPの合計の含有量が80質量%以上である、オキセタン組成物である。
[2]前記25℃での粘度が100cP以下のオキセタン化合物が、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(EHO)、3,3’-(オキシビス(メチレン))ビス(3-エチルオキセタン)(DOX)、3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチルオキシメチル)オキセタン(HBOX)、及び3-エチル-3-(アリルオキシメチル)オキセタンからなる群より選択される少なくとも一種である、前記[1]のオキセタン組成物。
[3]前記オキセタン化合物とOXBPとの質量比が、10/90~90/10の範囲である、前記[1]又は[2]のオキセタン組成物。
[4]前記オキセタン化合物とOXBPとの質量比が、10/90~50/50の範囲である、前記[3]のオキセタン組成物。
[5]25℃において粘度が1000cP以下である、前記[1]~[4]のいずれかのオキセタン組成物。
[6]前記オキセタン化合物及びOXBPのみからなる、前記[1]~[5]のいずれかのオキセタン組成物。
[7]光硬化させたときのガラス転移温度が、同じ条件で硬化させたOXBPのガラス転移温度±15℃の範囲である、前記[1]~[6]のいずれかのオキセタン組成物。
[8]前記[1]~[7]のいずれかのオキセタン組成物を含む、硬化性組成物。
[9]前記[1]~[7]のいずれかのオキセタン組成物、及び保存用容器からなる、オキセタン保存用キット。
[10]25℃での粘度が100cP以下のオキセタン化合物及びOXBPを混合する工程を含む、OXBPを液状物として取り扱うための方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、OXBPの特徴を損なわず、かつ取り扱い性を向上させることが可能な組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】参考例11~14、比較例11の組成物における、熱硬化反応の時間に対する反応率を示すグラフである。
【
図2】実施例34~37、比較例12の組成物における、熱硬化反応の時間に対する反応率を示すグラフである。
【
図3】実施例34、36、37、参考例11、14における、化合物又は組成物の熱硬化反応の時間に対する反応率を示すグラフである。
【
図4】実施例38、39、参考例15、16における、化合物又は組成物のDSC測定の結果を示すグラフである。
【
図5】実施例38、参考例15、17における、化合物又は組成物のDSC測定の結果を示すグラフである。
【
図6】参考例15~18の、各化合物のDSC測定の結果を示すグラフである。
【
図7】参考例15、18、実施例41の、各化合物のDSC測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のオキセタン組成物は、室温(25℃)での粘度が100cP以下のオキセタン化合物及びOXBPを含む、オキセタン組成物である。
以下、本発明のオキセタン組成物の原料、製造方法等について、詳細に説明する。
【0011】
[オキセタン化合物]
オキセタン類は、炭素原子3つ及び酸素原子1つからなる四員環構造(オキセタニル基)を有する化合物である。特に本発明のオキセタン組成物中に含まれるオキセタン類は、室温(25℃)、大気圧下での粘度が100cP以下のオキセタン化合物(以下、「オキセタン化合物」ということもある)である。この範囲の粘度を有するオキセタン化合物であれば、OXBPと相溶して液状を保つことが可能であり、融解せずとも本来の純度で使用することができ、それでいて混合に伴うOXBPの特徴を損なうことがないことを、本発明者らは見出した。
ここで、本明細書においてオキセタン類を含む各物質の粘度は、B型粘度計によって、トルクレンジが10~100%以内におさまるように回転数(0.01~200rpm)及びスピンドルを調節して測定される値である。粘度測定の機器としては例えばBROOKFIELD LV DV-II + Pro VISCOMETERのような測定機器が市販されている。
【0012】
オキセタン化合物としては、以下の式:
【化1】
(式中、R
1は水素原子又はアルキル基を表し、好ましくはC1~C6アルキル基であり、より好ましくはエチル基であり;R
2は、ヒドロキシ基、ハロゲン又は(メタ)アクリル基を有していてもよく、1つ以上の酸素で中断されていてもよいアルキル基を表し、好ましくはヒドロキシ基又はハロゲンを1つ有し、1つ以上の酸素で中断されていてもよいC1~C6アルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくはヒドロキシメチル基、4-ヒドロキシブトキシメチル基、又はクロロメチル基である)
で示される構造のオキセタン化合物、2つのオキセタン環を2価の有機基で連結した化合物のほか、公知のエポキシ化合物をオキセタンに置き換えた化合物、例えば、エーテルの一部にオキセタン環を導入した化合物、ビスフェノールA型オキセタン化合物、ビスフェノールオキセタン化合物、ビスフェノールS型オキセタン化合物、キシリレン型オキセタン化合物、フェノールノボラック型オキセタン化合物、クレゾールノボラック型オキセタン化合物、アルキルフェノールノボラック型オキセタン化合物、ビフェニル型オキセタン化合物、トリフェニルメタン型オキセタン化合物、フェノールアラルキル型オキセタン化合物、ビフェノール型オキセタン化合物、ビキシレノール型オキセタン化合物、ナフタレン型オキセタン化合物、ジシクロペンタジエン型オキセタン化合物、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のオキセタン化合物等のうち、25℃で100cP以下の粘度を有するものが挙げられる。また、オキセタン化合物としては、オキセタン環を1つのみ有するものであることが好ましい。
【0013】
25℃で100cP以下の粘度を有するオキセタン化合物の例としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(EHO)、3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチルオキシメチル)オキセタン(HBOX)、(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチルメタクリレート(OXMA)、3,3’-(オキシビス(メチレン))ビス(3-エチルオキセタン)(DOX)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン(EHOX)、3-エチル-3-(アリルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタンなどが挙げられる。これらはいずれも市販のグレードを利用可能である。OXBPの取り扱いを向上させ、特徴を維持する観点から、EHO、DOX、HBOX又は3-エチル-3-(アリルオキシメチル)オキセタンが好ましく、EHO又はDOXがより好ましく、OXBPの保存安定性、光硬化させたときのガラス転移温度の維持、安価に利用可能であることから、EHOがさらに好ましい。また、安価に利用可能であること、OXBPの硬化物の密着性を維持する観点から、DOXがさらに好ましい。また、OXBPの取り扱いを向上させ、特徴を維持する観点から、DOX、HBOX又は3-エチル-3-(アリルオキシメチル)オキセタンを使用してもよい。これらのオキセタン化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0014】
これらオキセタン化合物は、市販のものを用いてもよいし、予め合成したものを用いてもよい。オキセタン化合物の合成には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール(トリメチロールプロパン)の触媒存在下での炭酸ジアルキルや尿素との縮合・脱炭酸反応、カルボニル化合物とオレフィンとの[2+2]環化反応など、公知の手段を用いることができる。また、ヒドロキシ基を有するオキセタン化合物を原料として、エーテル化反応やエステル化反応することで得ることもできる。
【0015】
また、前記オキセタン化合物は、塩基性化合物を含有していてもよい。塩基性化合物を含有することにより、貯蔵時の安定性を高めることができる。オキセタン化合物の安定性をさらに高める観点から、塩基性化合物は、塩基性無機化合物であることが好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。塩基性化合物の含有量は、オキセタン化合物の安定性をさらに高める観点から、オキセタン化合物に対して、0.1質量ppm~1000質量ppmであることが好ましく、1質量ppm~500質量ppmであることがより好ましい。
【0016】
[OXBP]
本発明の組成物に含まれる主要な成分のうち一つは、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル(OXBP)である。OXBPは以下の構造を有する化合物であり、25℃、大気圧下で固体又は非常に粘度が高い油状のモノマーである。
【化2】
OXBPは室温では固体又は高粘性の油状物であるため、取り扱いが難しい。溶剤に希釈させれば液体として取り扱うことは可能であるが、OXBPの反応性や安定性、反応後に得られた樹脂の耐熱性等の特徴が損なわれることがある。
【0017】
OXBPは4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニルのSN2反応のような公知の方法によって合成が可能であるが、市販のものを用いることができ、例えば宇部興産(株)よりETERNACOLL(登録商標)OXBPの名称で市販されている。
【0018】
[オキセタン組成物の組成]
本発明のオキセタン組成物において、本発明のオキセタン組成物全量に対し、前記オキセタン化合物及びOXBPの合計の含有量(以下、単に「オキセタンの合計量」ともいう)が80質量%以上である。オキセタンの合計量は、組成物全体に対して90質量%以上であることが好ましく、組成物全体に対して95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることが更により好ましく、99質量%以上であることが更により好ましく、100質量%であることが特に好ましい。本発明のオキセタン組成物全量に対し、オキセタンの合計量が100質量%である組成物は、前記オキセタン化合物及びOXBPのみからなる組成物である。
【0019】
前記オキセタン組成物には、本発明の効果を損なわない範囲、また組成物全体の20質量%以下の範囲において、前記オキセタン化合物及びOXBP以外に、組成物を調製する際に使用する溶剤、その他保存安定剤など公知の添加剤等が含まれていてもよい。溶剤をさらに含んでいてもよいが、本発明のオキセタン組成物においては溶剤を用いずとも取り扱い性に優れた液状を保つため、溶剤の存在は必要がない。また、前記オキセタン組成物には、後述のエポキシ化合物も含まれてよいが、エポキシ化合物が含まれない方が好ましい。オキセタン化合物はエポキシ化合物と併用することがあるが、重合性や反応速度をコントロールする観点から、オキセタン化合物とエポキシ化合物を含む組成物の配合設計をすることが困難になるためである。
【0020】
また、本発明のオキセタン組成物は、電子用途に使用されることがあるため、塩化物イオンは含有しないことが好ましい。オキセタン化合物やOXBP等を合成中に塩化物イオンを含有する原料を使用する場合は、このオキセタン化合物やOXBP等は未精製では使用せず、晶析や蒸留にてオキセタン化合物やOXBP等を精製することが好ましい。
【0021】
本発明のオキセタン組成物において、前記オキセタン化合物/OXBPの質量比は、1/99~90/10の範囲であることが好ましく、5/95~90/10の範囲であることがより好ましく、10/90~90/10の範囲であることがさらに好ましい。この範囲とすることで、組成物におけるOXBPの濃度を十分に確保すること、OXBPの備える物性の低下を抑えること、OXBPの液状での良好な取り扱い性を得ること、をバランスよく達成することができる。さらに、組成物におけるOXBPの濃度を十分に確保すること、OXBPの備える物性の低下を抑えること、OXBPの液状での良好な取り扱い性を得ること、をさらにバランスよく達成する観点から、前記オキセタン化合物/OXBPの質量比は、10/90~50/50であることがより好ましく、10/90~40/60であることがさらに好ましく、10/90~30/70であることがさらにより好ましく、15/85~25/75であることが特に好ましい。
【0022】
本発明のオキセタン組成物は、保存用の容器に封入され、液状で供される。そのような、オキセタン組成物及び保存用容器からなるオキセタン保存用キットもまた、本発明の一態様である。オキセタン組成物は、光硬化性を有することから、保存容器としては、遮光性を有する保存用容器であることが好ましい。また氷点下の冷凍保存に適したものであるとより好ましいが、金属缶、プラスチック容器、褐色のガラス瓶など、一般に溶液の保存に用いられるものであれば、素材は特に制限されない。この保存用容器を用いることで、オキセタン組成物を固化させることなく、長時間保存させることができ、容器を開封後すぐに良好な取り扱い性をもって利用することができる。
【0023】
本発明のオキセタン組成物は、前記オキセタン化合物をOXBPと混合することによって組成物全体を室温で液状とすることができ、これにより得ることができる。オキセタン化合物及びOXBPを混合する工程を含む、OXBPを液状物として取り扱うための方法もまた、本発明の一態様である。オキセタン化合物をOXBPに注ぐことで混合してもよいし、OXBPをオキセタン化合物中に添加してもよい。また、混合後に均一な系とすることができれば、撹拌、振とうの手段は制限されない。本発明は室温で取り扱い性に優れたオキセタン組成物及びその製造方法に関するものであるが、これらの混合操作は室温以上に昇温した条件で行うこともできる。
【0024】
<オキセタン組成物の物性>
本発明のオキセタン組成物は、OXBPの物性を備えつつ、取り扱い性に優れた組成物である。具体的には、本発明のオキセタン組成物は以下のような物性を備えている。なお、本発明において、OXBPの特徴とは、OXBPの物性を示す。
【0025】
・粘度
本発明のオキセタン組成物は、室温(25℃)で取り扱いに適した性状である。流動性があり、取り扱い性において問題はないが、好ましくは液状である。均一な系として取り扱いが可能であり、他の成分と組み合わせて用いる際にも適度な流動性を保つことができるため、オキセタン組成物の粘度は、前記オキセタン化合物の量により制御することができるが、25℃で1000cP以下であることが好ましい。室温での取り扱い性をより向上させるため、25℃で600cP以下であることがより好ましく、400cP以下であることが更に好ましい。粘度は25℃で1000cP以下であればよいが、粘度は任意の温度の設定によって、より取り扱い性を良好にすることも可能である。
【0026】
・安定性
本発明のオキセタン組成物は、長期間の保存、また温度が変化する環境においてもその性状を保つことができる。OXBPは保存していると、保存温度によっては微結晶が析出することがある。結晶の析出はOXBPの純度にムラを生じるため、使用する前に溶融した上で均一に混合することが望ましいが、本発明のオキセタン組成物は、長期間にわたり、室温~冷凍保存環境下においても液状を保つため、長期間にわたり、同じような取り扱い性を保つことが可能である。
冷所保存の安定性は、オキセタン組成物が流動性を保つことができるかどうかによって評価することができる。単純な評価の方法として、保存容器を傾けたときにオキセタン組成物が低い位置に流れてゆけば、流動性があり性状が保たれていると判断することができる。
【0027】
・硬化性
本発明のオキセタン組成物は、OXBPが硬化性樹脂として有用であるため、硬化性樹脂組成物の一成分として用いることができる。本発明のオキセタン組成物にはOXBP以外のオキセタン化合物が含まれる。一般的にはそのようなオキセタン化合物が混在することにより硬化物としての性質に変化があるものと予測されるが、それにも関わらず、硬化性樹脂組成物としての取り扱い性はOXBP単独でのそれと大差ない。
【0028】
<発熱開始温度>
OXBPを含むオキセタン組成物を熱により硬化するとき、ある温度に達すると組成物自体が発熱するようになる。OXBPに他の成分を混合したとしても発熱開始温度が同等であると有利である。本発明は、オキセタン化合物を添加しているため、そのオキセタン化合物の熱特性を加味する必要があると思われるが、意外にも、OXBP単独とほぼ同等の発熱開始温度を示すことができるため、熱硬化においてOXBP単独と同様に扱うことができる。後述のSI-100Lを5質量部添加した際のOXBPの発熱開始温度は約83℃であるが、本発明のオキセタン組成物においては、同条件下で発熱開始温度が83±5℃の範囲であると好ましい。なお、本発明において、発熱開始温度はDSCにより測定される。
【0029】
<硬化時間>
OXBPを含むオキセタン組成物を硬化するとき、分子サイズの大きさなどの要因により、硬化反応にかかる時間は化合物の種類によって変動することが一般に予測される。しかしながら、本発明のオキセタン組成物においては、OXBP以外のオキセタン化合物を含むにもかかわらず、OXBPのそれとほぼ同等の硬化時間により硬化を達成することができるため、取り扱い性を損なうことがない。本発明のオキセタン組成物においては、硬化にかかる時間が同条件下でのOXBP単独での硬化時間と比べ、実施例31の熱硬化条件で硬化したときの時間差が5分以内、実施例25の光硬化条件で硬化したときの時間差が5分以内の範囲内であると好ましい。
硬化の確認は、公知の方法により確認することができるが、例えば、反応物のIR測定によりオキセタン環の消失を確認することで行うことができる。オキセタン環の975~985cm-1の吸収の消失と1070~1090cm-1付近に生成するエーテル結合の吸収を考慮して反応率を算出できる。その際、反応率が90%以上になった時点で硬化は終了すると判断できる。オキシラン環を用いた場合、オキシラン環の770cm-1~790cm-1付近の吸収の消失を確認することで反応の状態を判断できる。また一つの基準として、タック性の有無により判断することができる。硬化物に触れても樹脂が付着してこない(タックしない)場合、硬化反応が完了したと判断することができる。
【0030】
・硬化物のガラス転移温度
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、2種類以上の混合物であると各々単独でのTgとは異なるものになると一般的には予測される。しかしながら、本発明のオキセタン組成物においては、OXBP以外のオキセタン化合物を含んでいるにも関わらず、ガラス転移温度がOXBP単独でのガラス転移温度と同等視できる範囲内である。これにより、OXBPの取り扱い性を向上させつつも、硬化物の物性は変わらないという特異な効果を本発明は奏する。
本明細書においては、測定の際に生じる誤差を考慮して±10℃の範囲であることが、Tgとしては同等であることを意味している。この誤差を含めて、本発明のオキセタン組成物においては、Tgが同条件で硬化させたときのOXBP単独でのTg±15℃であることが好ましく、Tg±10℃であることがより好ましく、Tg±5℃であることがさらに好ましい。なお、Tgの測定においては、均質な硬化を達成しやすく誤差を小さく抑えることが可能であることから、光硬化による硬化物を測定対象とすることが好ましい。
【0031】
・硬化物の鉛筆硬度
本発明のオキセタン組成物においては、さらに、硬化物の硬さにおいてもOXBP単独での硬さとほぼ同等である。硬化した樹脂の硬さは、硬化に用いたモノマーの分子構造にどれだけ剛直な構造を含んでいるかなどの要因によって変化する。本発明のオキセタン組成物はOXBP以外のオキセタン化合物を含んでいるので、OXBP単独での硬化物とは異なる硬さを示すことが予測されるが、驚くべきことに本発明のオキセタン組成物を用いて得られた硬化物はOXBP単独での硬化物とほぼ同等の硬さを有する。
【0032】
本発明のオキセタン組成物は、硬化性組成物として用いることができる。硬化性の組成物として用いるにあたっては、他の硬化性を有する成分、硬化剤等を含んでいてもよい。
【0033】
<他の硬化性を有する成分>
オキセタン化合物以外の、硬化性を有する成分としては、カチオン重合性化合物を用いてもよい。カチオン重合性化合物としては、エポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーを使用することができる。そのような化合物として、グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物のようなエポキシ基を有する化合物は硬化性樹脂用途等で使用されるが、毒性があることが知られている。そのため、これらエポキシ化合物に代えて、又はこれらと併用して、本発明のオキセタン組成物を用いることは大きな意義があり、その取り扱い性を向上させた本発明の組成物は、硬化性樹脂において有用である。したがって本発明の一態様は、上記オキセタン組成物を含む、硬化性組成物である。
【0034】
グリシジルエーテル化合物としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル化合物、ビスフェールF型ジグリシジルエーテル化合物、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル化合物又はビスフェールF型ジグリシジルエーテル化合物の水素添加物、その他の芳香族グリシジルエーテル化合物、脂肪族グリシジルエーテル化合物等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、ジシクロペンタジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、ジ(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、(3,4-エポキシシクロヘキセニル)メチル-3,4-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン-1,2-ジ(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル等が挙げられる。これらのエポキシ化合物の他、エポキシ化オレフィン、臭素化樹脂、芳香族グリシジルアミン、複素環式グリシジルイミジン、フッ素化エポキシ樹脂、グリシジルエステルなどを用いることもできる。これらのエポキシ化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0035】
エポキシ化合物の他のカチオン重合性化合物としては、例えば、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。ビニルエーテル化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物;エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテルのような水酸基含有ビニルエーテル化合物等が挙げられる。これら他のカチオン重合性化合物はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明のオキセタン組成物は、前記組成でオキセタン化合物及びOXBPを含むことにより、室温において良好な取り扱い性を示す。
【0037】
[硬化性組成物]
本発明のオキセタン組成物は、OXBPが硬化性樹脂として有用であるため、硬化性を有する組成物の一成分として用いることができる。本発明のオキセタン組成物にはOXBP以外のオキセタン化合物が含まれる。一般的にはそのようなオキセタン化合物が混在することにより硬化性組成物となる。本発明のオキセタン組成物を使用することにより、OXBPの特徴を損なわず、かつ硬化性組成物を調製する際の取り扱い性を向上させることが可能となる。
【0038】
[オキセタン組成物の用途]
本発明の組成物の用途は特に限定されず、例えば場合により他の硬化性を有する成分と組み合わせた硬化性組成物として、硬化性型取り材、硬化性シート材、硬化性ペースト材、ポッティング材、注型材、半導体封止剤、接着剤、塗料、コーティング剤、光造形用樹脂等に用いることができる。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。また、以下の実施例・参考例・比較例において、特に断りのない限り、配合の量としての「部」は質量部であることを意味する。
【0040】
試験に用いたOXBPを含むオキセタン類の化合物は、以下のとおりである。
OXBP:宇部興産社製「ETERNACOLL(登録商標)OXBP」
4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル
EHO:宇部興産社製「ETERNACOLL(登録商標)EHO」
3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン
DOX:東京化成工業社製 3,3’-(オキシビス(メチレン))ビス(3-エチルオキセタン)
3-エチル-3-(アリルオキシメチル)オキセタン
また、比較用の試料として以下の化合物を用いた。
EP1:東京化成工業社製 グリシジルラウリルエーテル
EP2:東京化成工業社製 ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル
EP3:富士フィルム和光純薬社製 3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル
【0041】
<物性試験1:粘度測定>
実施例1
50℃に設定したオイルバスで融解させたOXBP 90部と、EHO 10部を300rpmに設定したマグネチックスターラーで撹拌させ、オキセタン組成物を得た。
B型粘度計(BROOKFIELD LV DV-II + Pro VISCOMETER)を使用し、25℃、50℃、70℃の設定温度で、得られた組成物の粘度を測定した。粘度測定で使用したフック式スピンドルは、BROOKFIELD製、SC4-18を用いており、サーモセルチャンバーは、BROOKFIELD製、HT-2DB-100を使用した。トルクレンジが10~100%以内におさまるように回転数(0.01~200rpm)を調節した。
【0042】
実施例2~6
モノマー成分を下記表1に記載の処方に変更した以外は実施例1と同様に行い、組成物を調製し、粘度測定を実施した。
【0043】
参考例1
50℃に設定したオイルバスでOXBPを融解させ、液状にした。液状にしたOXBPを実施例1と同様の測定条件で粘度測定を実施した。
【0044】
参考例2~4
室温で液状状態であるEHO、DOX及び3-エチル-3-(アリルオキシメチル)オキセタンについて、それぞれ粘度測定を実施した。粘度測定は実施例1に記載している条件で実施した。
【0045】
比較例1、2
OXBPと混合する化合物を、グリシジルラウリルエーテル(EP1:比較例1)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(EP2:比較例2)に変更した以外は実施例1と同様に行い、組成物を調製し、粘度測定を実施した。実施例1~6、参考例1~4、比較例1,2の結果を表1にまとめる。室温で凝固する前の粘度が2568cPと見積もられたOXBPが、オキセタン化合物と混合することで粘度1000cP以下の、取り扱い易い液状物となった。
【0046】
【0047】
<物性試験2:液状保存試験>
実施例7~24
モノマー成分を下記表2、3、4に記載の処方に変更した以外は実施例1と同様に行い、液状保存試験用組成物を得た。得られた組成物の室温保存(25℃)、冷蔵保存(5℃)、冷凍保存(-22℃)を行い、液状のまま保存できているかを目視で判断し、下記の基準で評価した。
<液状の評価基準>
液体で流動性が良い:〇
液体であるが、サンプル瓶を大きく傾けて流動する:△1
液体であるが、サンプル瓶を逆さにしても流動しない:△2
固化:×
【0048】
比較例3~8
モノマー成分を下記表2、3、4に記載の処方に変更した以外は実施例1と同様に行い、組成物を調製し、液状保存試験を実施した。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
<硬化性組成物としての評価>
硬化性の評価においては、以下の化合物を硬化剤として添加した。
SI-100L:熱硬化開始剤、三新化学工業社製「サンエイド(登録商標)SI-100L」、下記式(1)で表されるスルホニウム塩
CPI-101A:光硬化開始剤、サンアプロ社製「CPI(登録商標)-101A」、下記式(2)で表されるスルホニウム塩
【化3】
【0053】
<物性試験3:光硬化性評価/硬化時間>
参考例5
50℃に設定したオイルバスで融解させたOXBP 95部と光硬化開始剤 CPI(登録商標)-101A 5部を300rpmに設定したマグネチックスターラーで撹拌させ、光硬化用組成物を得た。得られた組成物をガラス板に塗布し(塗膜の厚さ:100μm)、ハンディキュアラブ ハンディ100(セン特殊光源、光源;高圧水銀灯、照度170mW/cm2)を用いて照射距離11cmで照射し、タック性が無くなるまで行った。タック性の無い状態は、薬さじを使用して硬化物の表面にべとつきが無い状態を基準としている。タックが無い状態になったときの硬化時間は表5に記載した。
【0054】
実施例25
50℃に設定したオイルバスで融解させたOXBP 76部、EHO 19部、光硬化開始剤 CPI(登録商標)-101A 5部を300rpmに設定したマグネチックスターラーで撹拌させ、光硬化用組成物を得た。この組成物を参考例5と同様にガラス板に塗布させ、UV照射を行った。タックが無い状態になったときの硬化時間は表5に記載した。
【0055】
参考例6
EHO 95部、CPI(登録商標)-101A 5部を300rpmに設定したマグネチックスターラーで撹拌させ、光硬化用組成物を得た。この組成物を参考例5と同様にガラス板に塗布させ、UV照射を行った。タックが無い状態になったときの硬化時間は表5に記載した。
【0056】
【0057】
<物性試験4:光硬化物の評価/ガラス転移温度>
実施例26~30
モノマー成分を下記表6に記載の処方に変更した以外は実施例25と同様に行い、光硬化用組成物を得た。得られた組成物をガラス板に塗布し(塗膜の厚さ:100μm)、コンベア型高圧水銀灯のUV CURING PROCESSOR, HM15001C-4(セン特殊光源、光源:高圧水銀灯)を用いて、照射距離8cm、コンベア速度0.4m/min、積算照射エネルギー2455.8mJ/cm2、照射時間1.5分の条件で照射を行い、の条件で照射を行い、光硬化物を得た。得られた硬化物は、下記に記載した条件と測定機器でガラス転移温度(Tg)測定を実施した。表6に各硬化物のTgを記載した。
装置:高感度型示差走査熱量計、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製
型式:DSC7020
測定方法:昇温10℃/min、25℃~350℃、窒素条件
【0058】
参考例7
50℃に設定したオイルバスで融解させたOXBP 95部と光硬化開始剤 CPI(登録商標)-101A 5部を300rpmに設定したマグネチックスターラーで撹拌させ、光硬化用組成物を得た。光硬化用組成物を実施例26~30と同様にガラス板に塗布させ、UV照射を行った。得られた硬化物は、実施例26~30と同様の条件でTg測定を行った。
【0059】
参考例8
EHO 95部と光硬化開始剤 CPI(登録商標)-101A 5部を300rpmに設定したマグネチックスターラーで撹拌させ、光硬化用組成物を得た。光硬化用組成物を実施例26~30と同様にガラス板に塗布させ、UV照射を行い、Tg測定を実施した。
【0060】
比較例9、10
モノマー成分を下記表6に記載の処方に変更した以外は実施例26~30と同様に行い、組成物を調製した。得られた組成物を実施例26~30と同様にガラス板に塗布させ、UV照射を行った。Tg測定では、測定温度を-100℃~100℃(10℃/min昇温)に変更した以外は、実施例26~30と同様に実施した。
【0061】
【0062】
<物性試験5:熱硬化物の評価>
参考例9
50℃に設定したオイルバスで融解させたOXBP 95部、熱硬化開始剤 SI-100L 5部を300rpmに設定したマグネチックスターラーで撹拌させ、熱硬化用組成物を得た。得られた組成物をガラス板に塗布し(塗膜の厚さ:100μm)、100℃に設定したヒーターを用いて、タック性が無くなるまで熱硬化を実施し、熱硬化物を得た。タック性の無い状態は、薬さじを使用して硬化物の表面にべとつきが無いときを基準としている。得られた硬化物につき、JIS K 5600-5-4に準じて鉛筆硬度試験を実施した。
【0063】
実施例31
50℃に設定したオイルバスで融解させたOXBP 76部、EHO 19部、熱硬化開始剤 SI-100L 5部を300rpmに設定したマグネチックスターラーで撹拌させ、熱硬化用組成物を得た。この組成物を参考例9と同様にガラス板に塗布させ、熱硬化を実施し鉛筆硬度試験で評価した。
【0064】
参考例10
3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(EP3)95部と熱硬化開始剤 SI-100L 5部を300rpmに設定したマグネチックスターラーで撹拌させ、熱硬化用組成物を得た。熱硬化用組成物を参考例9と同様にガラス板に塗布させ、熱硬化を実施し鉛筆硬度試験で評価した。
【0065】
実施例32、33
3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(EP3)と下記表7に記載しているオキセタンに変更した以外は実施例31と同様に行い、熱硬化用組成物を調製し、熱硬化反応を実施した。以上の実施例31~33、参考例9、10の結果を以下の表7にまとめる。熱硬化反応において、EHOの添加によっても、同程度の硬度を示す熱硬化物が得られている。また、3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(EP3)のような他の硬化性の物質を加えていても、OXBPの物性はほぼ保たれている。
【0066】
【0067】
<物性試験6:硬化時間>
(FT-IR測定)
実施例34~37
モノマー成分を下記表8に記載の処方に変更した以外実施例31と同様に行い、組成物を調製した。下記に記載している機器と測定条件で、経時的に測定を行い硬化の終点を確認した。
装置:Agilent Technologies製 Cary670型
Specac製 ゴールデンゲート
測定範囲:400~4000cm-1、測定温度:100℃、測定時間:60分、180分
【0068】
参考例11
参考例9と同様のモノマー成分及び調製方法で組成物を得た。得られた組成物を実施例34~37と同様の測定機器及び条件でFT-IR測定を実施した。組成は表8にまとめている。
【0069】
参考例12~14
モノマー成分を下記表8に記載の処方に変更した以外は参考例10と同様に行い、組成物を調製した。得られた組成物を実施例34~37と同様の測定機器及び条件でFT-IR測定を実施した。
【0070】
比較例11、12
モノマー成分を下記表8に記載の処方に変更した以外は実施例31、参考例10と同様に行い、組成物を調製した。得られた組成物を実施例34~37と同様の測定機器及び条件でFT-IR測定を実施した。以上の実施例34~37、参考例11~14、比較例11及び12におけるFT-IRの測定結果を
図1~3に示す。
【0071】
【0072】
OXBPは非オキセタン化合物であるEP1と混合すると熱硬化の反応性が低下するが、粘度100cP以下のオキセタン化合物であるEHO、DOX、3-エチル-3-アリルオキシメチルオキセタンとの混合では、熱硬化の反応性に影響が生じないことが示された。
【0073】
<物性試験7:DSC測定>
実施例38~41
モノマー成分を下記表9に記載の処方に変更した以外は実施例31と同様に行い、組成物を調製した。下記に記載している機器と測定条件で、DSC測定を実施した。
装置:高感度型示差走査熱量計、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製
型式:DSC7020
測定方法:昇温10℃/min、25℃~350℃、窒素条件
【0074】
参考例15
50℃に設定したオイルバスで融解させたOXBP 95部、熱硬化開始剤 SI-100L 5部を300rpmに設定したマグネチックスターラーで撹拌させ、熱硬化用組成物を得た。得られた組成物を実施例38~41と同様の測定機器及び条件でDSC測定を実施した。組成は表9にまとめている。
【0075】
参考例16~18
モノマー成分を下記表9に記載の処方に変更した以外は参考例10と同様に行い、組成物を調製した。得られた組成物を実施例38~41と同様の測定機器及び条件でDSC測定を実施した。これらのDSCチャートを
図4~7に示す。
【0076】
【0077】
DSCの熱吸収挙動は化合物各々の物性によるため、混合物では複雑な熱吸収挙動を示すことが予想されるが、本発明のオキセタン組成物は、混合してもピークは1つのみで、OXBPの熱吸収挙動の特徴が保たれている。また、特にDOXを混合した場合、DOXは単独では熱吸収量が大きいが、OXBPと混合した組成物では、OXBPの熱吸収挙動とほぼ同様のピークを示しており、OXBPの硬化反応における取り扱い性を維持しうることが示されている。
OXBPの特徴を損なわず、ハンドリングを向上させることが可能な組成物を提供することができる。本発明の硬化性組成物の用途は特に限定されず、例えば硬化性型取り材、硬化性シート材、硬化性ペースト材、ポッティング材、注型材、半導体封止剤、接着剤、塗料、コーティング剤、光造毛用樹脂等に用いることができる。