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  • 特開-魚介類代用肉 図1
  • 特開-魚介類代用肉 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051432
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】魚介類代用肉
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/00 20060101AFI20230404BHJP
   A23J 3/18 20060101ALI20230404BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20230404BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20230404BHJP
【FI】
A23J3/00 507
A23J3/18
A23L17/00 E
A23J3/18 501
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162096
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】306007864
【氏名又は名称】ユニテックフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中里 有稀
(72)【発明者】
【氏名】種市 和也
【テーマコード(参考)】
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B036LC06
4B036LF19
4B036LH01
4B036LH14
4B036LH16
4B036LH22
4B036LH50
4B036LK01
4B036LP01
4B036LP24
4B042AC05
4B042AD36
4B042AE04
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK10
4B042AK12
4B042AK17
4B042AK20
4B042AP02
4B042AP24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】植物由来原料を含み、かつ、動物由来原料を含まない魚介類代用肉を提供し、さらに魚介類と同等の食感を示す魚介類代用肉を提供する。
【解決手段】植物由来原料を含み、かつ、動物由来原料を含まない魚介類代用肉である。前記植物由来原料が小麦たんぱくであることが好ましく、さらには、前記小麦たんぱくが、膨化・組織化された小麦たんぱくであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来原料を含み、かつ、動物由来原料を含まない魚介類代用肉。
【請求項2】
植物由来原料が、小麦たんぱくである請求項1に記載の魚介類代用肉。
【請求項3】
小麦たんぱくが、膨化・組織化された小麦たんぱくである請求項2に記載の魚介類代用肉。
【請求項4】
小麦たんぱくが、液体に浸漬することで元の重量の2.5倍以上3.8倍以下に膨潤された小麦たんぱくである請求項2又は3に記載の魚介類代用肉。
【請求項5】
液体が金属塩を含む溶液である請求項4に記載の魚介類代用肉。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の魚介類代用肉を加工する工程を含む魚介類代用肉食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類代用肉に関する。さらに詳しくは、植物由来原料を含み、かつ、動物由来原料を含まない魚介類代用肉等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動や世界的な人口増加等により、動物由来の食肉によるたんぱく質の摂取が困難となるたんぱく質クライシスが懸念されており、食肉に替わり得る食品として、植物を由来とするたんぱく質から、代用肉を製造する様々な技術が開発されている。
海洋資源も同様に供給の逼迫が起こることは明白であり、魚介類代用肉の開発が必要となることが予測される。
【0003】
魚介類代用肉の開発にあたり、例えば、特許文献1では、特定量のたんぱく質、脂肪及び水分を用い、これらの均質なドウ混合物を創製して魚肉フレーク類似品の作製する方法が開示されている。また、特許文献2では、押出成形等によって製造される構造化植物たんぱく質製品と、脂肪酸を含む疑似シーフード組成物を提供する技術が開示されている。しかし、これらの技術では、魚肉たんぱく質の使用や、魚肉、貝類の肉等のシーフード肉の使用を対象としており、動物由来原料を含まない魚介類代用肉の製造技術とはいえなかった。
【0004】
また、これまで植物性素材を主体とした代替食品の製造にあたり、たんぱく質源として安価で汎用性の高い大豆たんぱくが主に使用されてきた。しかし、大豆たんぱくは比較的硬く、弾力感、肉製品にとって重要な繊維様のほぐれ感を欠くため、代用肉、特に魚介類の代用肉の製造に使用するには食感面での課題があった。
そこで、特許文献3では、水戻し後サイレントカッターにより解繊した粒状大豆たんぱくを用い、特定の油脂を配合することで、魚様繊維感に優れたツナペースト代替食品を製造する技術が開示されている。
また、特許文献4では、カルシウム塩やフィチン酸を特定量含む水溶液に浸漬することで食感が硬く、繊維感を有し、味が改善された水溶液浸漬粒状大豆たんぱくを調製し、これを用いることで畜肉や魚肉に近い食感を有する畜肉様加工食品や魚肉様加工食品を製造する技術が開示されている。
しかし、これらの技術によって大豆たんぱくの繊維感や硬さは調節できるものの、魚介類独特の弾力感等が再現された、動物由来原料を含まない魚介類代用肉が得られるとはいえなかった。
【0005】
このように、従来の魚介類代用肉の製造では、植物由来原料を用いつつも、魚肉や魚介類由来の成分等を一部に使用する場合が多く、動物由来原料を全く含まないうえで、かつ、魚介類のような弾力感を示す魚介類代用肉が得られているとはいえなかった。
そこで、本発明者らは、植物由来原料を含み、かつ、動物由来原料を含まない、魚介類のような食感を示す魚介類代用肉の提供を試みた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2012-525118号公報
【特許文献2】特表2010-504103号公報
【特許文献3】特許第6601144号
【特許文献4】特許第6821246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は植物由来原料を含み、かつ、動物由来原料を含まない魚介類代用肉の提供を課題とする。本発明はさらに、魚介類と同等の食感を示す魚介類代用肉の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、小麦たんぱくを植物由来原料として用い、水分量を調節することで、植物由来原料を含み、かつ、動物由来原料を含まない魚介類代用肉が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。このような本発明の魚介類代用肉は、魚介類由来の食肉と同等のほぐれ感や弾力感のある魚介類代用肉となる。
【0009】
すなわち、本発明は次の(1)~(6)に示される魚介類代用肉等に関する。
(1)植物由来原料を含み、かつ、動物由来原料を含まない魚介類代用肉。
(2)植物由来原料が、小麦たんぱくである上記(1)に記載の魚介類代用肉。
(3)小麦たんぱくが、膨化・組織化された小麦たんぱくである上記(2)に記載の魚介類代用肉。
(4)小麦たんぱくが、液体に浸漬することで元の重量の2.5倍以上3.8倍以下に膨潤された小麦たんぱくである上記(2)又は(3)に記載の魚介類代用肉。
(5)液体が金属塩を含む溶液である上記(4)に記載の魚介類代用肉。
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の魚介類代用肉を加工する工程を含む魚介類代用肉食品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、植物由来原料を含み、かつ、動物由来原料を含まない魚介類代用肉の製造が可能となった。本発明の魚介類代用肉は、魚介類と同等の食感を示すため、ツナ、カニのほぐし身又はホタテの貝柱等に替わり得る魚介類代用肉となり得る。このような本発明の魚介類代用肉は、サラダ、炒め物、煮もの、卵焼き、グラタン、コロッケ、フライ、天ぷら、かき揚げ、餡かけ、茶わん蒸し、シュウマイ、餃子、肉まん、春巻き等の様々な料理に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】繊維様の形状の小麦たんぱくを示した図である。
図2】魚介類代用肉(実施例品I)の外観を示した図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の「魚介類代用肉」とは、魚介類由来の食肉と同等の物性を有し、調理した場合、魚介類由来の食肉を用いた場合と同様の食品が製造できるもののことをいう。
このような本発明の「魚介類代用肉」は、植物由来原料を含み、かつ、動物由来原料を含まないものであればよい。
【0013】
ここで、植物由来原料は「小麦たんぱく」であることが好ましい。
「小麦たんぱく」は食品として使用できるものであればよく、独自に調製したものや、市販のものを用いることができる。
本発明の「小麦たんぱく」は、さらに、膨化・組織化された小麦たんぱくであることが好ましい。「膨化・組織化された小麦たんぱく」とは、内部に含まれる気体の体積を増加させたり、内部に気体を発生させたりすることによって膨らませた小麦たんぱくを、組み合わせてまとめたもののことをいう。
【0014】
「膨化・組織化された小麦たんぱく」は、従来知られているいずれの方法や機器を用いても製造することができ、例えば、高温高圧処理によって製造することができる。二軸エクストルーダーを用いて高温高圧処理する場合は、温度が30~220℃、好ましくは80~120℃、より好ましくは97~110℃の範囲であり、圧力が1~10MPa、好ましくは4.5~10MPaの範囲である条件で処理することが好ましい。
このような「膨化・組織化された小麦たんぱく」は、魚介類の筋繊維と同様に、繊維様の形状(繊維状)の小麦たんぱくであることが好ましい。繊維様の形状とは、筋繊維を模して成型された、繊維が絡まりあったような形状(図1)のことをいい、少なくとも1cm~3cm程度の長さを有するものを指す。
また、本発明の「膨化・組織化された小麦たんぱく」は、二軸エクストルーダーを用いて高温高圧処理することで得られた2cm~5cm程度の膨化・組織化された小麦たんぱくの塊を割いて調製することもできる。
市販の「膨化・組織化された小麦たんぱく」としては、例えば、LORY(登録商標) TEX FIBRES SCM 110(Loryma GmbH社)等が挙げられる。
【0015】
これらの「小麦たんぱく」は液体と混合することによって膨潤することができる。
本発明の「魚介類代用肉」は、元の重量の2.5倍以上に膨潤された小麦たんぱくを含むことが好ましく、2.5倍以上3.8倍以下に膨潤された小麦たんぱくを含むことがより好ましい。
小麦たんぱくの膨潤にあたり、混合する液体の温度はいずれの温度であってもよいが、温度が高いほど膨潤速度が上昇する。例えば、小麦たんぱくを膨潤する場合には、90℃以上の液体であれば1分以内、20℃前後の液体であれば10分で2.5倍以上の膨潤が可能である。
【0016】
膨潤に使用する液体は食品に使用できるものであればいずれのものであっても良い。例えば、水や金属塩を含む溶液が挙げられ、1価又は2価の金属塩を含む溶液を使用するのが特に好ましい。小麦たんぱくを膨潤する際に金属塩を含む溶液に浸漬したり、小麦たんぱくと金属塩を含む材料を調製し、液体に浸漬したりすることで小麦たんぱくの食感を調節することができる。
金属塩は食品に対して使用できるものであればよく、1価又は2価の金属塩であればいずれのものであってもよいが、例えば塩化カリウム、塩化ナトリウム、水酸化カリウム、クエン酸ナトリウム又は乳酸カルシウム等が挙げられる。これらの金属塩は独自に調製したものであってもよく、塩化カリウムとしてスーパーカリ(赤穂化成株式会社)等の市販のものを用いることもできる。
【0017】
このように水や、金属塩を含む溶液等の液体によって、元の重量の2.5倍以上に膨潤された小麦たんぱくは、膨潤された段階で、代用の対象となる魚介類と同等のほぐれ感や弾力感を有するものであることが好ましい。また、調味や調理された後でも同様にほぐれ感や弾力感を有するものであることが好ましい。
弾力感は例えば、次の測定機器及び測定条件により、応力が1000gに達した際の歪みを弾力感(歪%)として測定することができる。
〔弾力感の測定〕
測定機器:Texture Analyser TA XT Plus (Stable Micro Systems社)
測定冶具:P/20(20 mm円柱治具)
測定温度:常温
ターゲットモード:応力1000g
圧縮速度:1 mm/sec
【0018】
本発明の「魚介類代用肉」は、さらに大豆たんぱく、エンドウ豆たんぱく等のその他の植物由来原料を含むことができる。これらは独自に調製したものであってもよく、大豆たんぱくとしてニューフジニック52S(不二製油株式会社)、Arcon T(株式会社ADMJAPAN)等の市販のものを用いることもできる。
【0019】
本発明の「魚介類代用肉」は、小麦たんぱく以外に植物由来原料であるその他の材料を含むものであってもよい。その他の材料としては、例えば、調味用の植物油、グルタミン酸ナトリウム、料理酒、酢、醤油、砂糖、昆布エキス、シイタケエキス、野菜ブイヨン又は食塩等が挙げられる。
このような本発明の「魚介類代用肉」として、魚肉、カニのほぐし身又はホタテの貝柱、ふかひれ等に替わり得る魚介類代用肉が挙げられる。
【0020】
本発明の「魚介類代用肉の製造方法」は、小麦たんぱくを含む植物性原料を混合する工程を含むものであればよく、本発明の魚介類代用肉の製造にあたり有用なその他の工程を含むものであってもよい。
さらに小麦たんぱくを元の重量の2.5倍以上に膨潤する工程を含む魚介類代用肉の製造方法であることが好ましい。
また、小麦たんぱくを含む植物性原料を混合する工程を経たのち、混合した材料を加熱殺菌する工程や、冷凍する工程を含むものであっても良い。
【0021】
本発明の「魚介類代用肉食品の製造方法」は、魚介類代用肉を加工する工程を含む製造方法であればよく、魚介類代用肉食品の製造に有用なその他の工程を含むものであってもよい。ここで「加工」とは、焼く、蒸す、煮る、揚げる、揚げ焼きする等の加熱処理が挙げられる。
このようにして製造される「魚介類代用肉食品」としては、例えば、ツナ、カニのほぐし身、ホタテの貝柱等の魚介類代用肉を用いたサラダ、炒め物、煮もの、卵焼き、グラタン、コロッケ、フライ、天ぷら、かき揚げ、餡かけ、茶わん蒸し、シュウマイ、餃子、肉まん、春巻き等が挙げられる。また、本発明の「魚介類代用肉」を具として用いた麺類、カレー、シチュー、スープ等も本発明の「魚介類代用肉食品」に該当する。
【0022】
以下に実施例を挙げて本発明の具体的な実施態様について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0023】
本願明細書の実施例において、別途、記載がない限りは次の試料をそれぞれ使用した。
[試料]
1)小麦たんぱく
LORY(登録商標) TEX FIBRES SCM 110(Loryma GmbH製)
2)大豆たんぱく
粒状大豆たんぱく:ニューフジニック52S(不二製油株式会社製)
【0024】
[実施例1]
魚介類代用肉の製造(1)
表1の配合となるように、植物性たんぱく、金属塩溶液(全量)、水(全量)を混合した。これを90℃の恒温槽で10分間静置して、元の重量の2.0倍以上に膨潤させ、ツナ様の魚介類代用肉を得た。これを10分間水冷し、次の測定機器及び測定条件により、応力が1000gに達した際の歪みを弾力感(歪%)として測定した。また、同様の方法により調製した比較品aと、コントロールとして缶詰から取り出した市販のツナ(ノンオイルツナフレーク)について、それぞれ同様に弾力感(歪%)を測定した。
〔弾力感の測定〕
測定機器:Texture Analyser TA XT Plus (Stable Micro Systems社)
測定冶具:P/20(20 mm円柱治具)
測定温度:常温
ターゲットモード:応力1000g
圧縮速度:1 mm/sec
【0025】
【表1】
【0026】
表1に示されるように、元の重量の2.5倍以上に膨潤した小麦たんぱくを含む魚介類代用肉(実施例品A、B)は、コントロール(ツナ)の弾力感 75.6(歪%)と同等又はより優れた弾力感を有することが確認できた。一方、大豆たんぱくの場合、2.5倍以上に膨潤したものであっても弾力感が低かった(比較品b)。
従って、魚介類代用肉に含まれる植物由来原料として、小麦たんぱくがより優れていることが示された。
【0027】
[実施例2]
魚介類代用肉の製造(2)
表2の配合となるように、植物性たんぱく、水(全量)を混合した。これを90℃の恒温槽で10分間静置して元の重量の2.5倍以上に膨潤させ、ツナ様の魚介類代用肉を得た。また、比較品を同様の方法により膨潤させて得た。各魚介類代用肉及び比較品の膨潤率は表2に示した。
これらにマヨネーズ以外のその他の材料をそれぞれ混合し、10分間水冷した後、さらにマヨネーズと混合し調味した。基準としてツナ(ノンオイルツナフレーク)にその他の材料を全て混合したツナマヨネーズ(コントロールa)を調製した。
【0028】
【表2】
【0029】
各魚介類代用肉及び比較品と、対照のツナマヨネーズ(コントロールa)を8名のパネラーできっ食し、各魚介類代用肉や比較品がツナの代用品として使用可能かそれぞれ評価し、評価結果を表3に示した。
【0030】
【表3】
【0031】
表3に示されるように、元の重量の2.5倍以上3.8倍以下に膨潤させた小麦たんぱくを用いて製造した魚介類代用肉(実施例品C~F)はいずれもツナの代用品として使用できるものであった。一方、膨潤度合いの少ない小麦たんぱくを用いたもの(比較品c~e)はツナより劣るか、ツナと比べて違和感がある、又はツナと異なり、ツナの代用品には向かないものであった。また、3倍に膨潤させた大豆たんぱく(比較品e)は大豆臭が独特であり、ツナと比べて違和感があるか、ツナとは異なり、代用品には向かないという評価が半数以上を占めていた。
従って、この結果より、魚介類代用肉の製造において元の重量の2.5倍以上3.8倍以下に膨潤させた小麦たんぱくを用いることが重要であることが確認できた。なお、調味前の魚介類代用肉はいずれもツナと同等のほぐれ感、弾力感を示すものであった。
【0032】
[実施例3]
魚介類代用肉の製造(3)
表4の配合となるように、小麦たんぱく、金属塩溶液(全量)、水(全量)を混合した。これを90℃の恒温槽で10分間静置して元の重量の2.5倍以上に膨潤させ、ツナ様の魚介類代用肉を得た。各魚介類代用肉の膨潤率は表4に示した。これにその他の材料をそれぞれ混合し、10分間水冷して調味した。
基準としてツナ(ノンオイルツナフレーク)にその他の材料を全て混合したもの(コントロールb)を調製した。
【0033】
【表4】
【0034】
各魚介類代用肉を用いて調製したものとコントロールのものを8名のパネラーできっ食し、ほぐれ感及び弾力感ついて官能評価を行った。
ほぐれ感は「ほぐれない」と感じる程点数が低く(1点)、「ほぐれる」と感じる程点数を高くし(5点)、弾力感は「弾力がない」と感じる程点数が低く(1点)、「弾力がある」と感じる程点数を高く(5点)して5段階で評価し、平均を評価結果とした。この際、ツナを用いて調製したもの(コントロールb)はいずれも3点として比較基準とした。
【0035】
【表5】
【0036】
表5に示されるように、小麦たんぱくを金属塩溶液で膨潤させて製造した魚介類代用肉を用いて調製したもの(実施例品G~I)はいずれもほぐれ感及び弾力がツナを用いて調製したもの(コントロールb)と同等又はより優れており、ツナの代用品として使用できるものであることが確認できた。また、図2に実施例品Iのものの外観を示したが、ツナと同様の外観を示すものであり、実施例品G、Hのものも同様であった。なお、これらの魚介類代用肉は調味前であってもツナと同等のほぐれ感、弾力感を示すものであった。
これらの結果から、10% KCl溶液の添加量が多く、KCl濃度が高い金属塩溶液で膨潤させた小麦たんぱくを用いる程、得られる魚介類代用肉のほぐれ感と弾力感が向上することも確認できた。また水で膨潤させた小麦たんぱくと比較しても金属塩溶液で膨潤させたものは、得られる魚介類代用肉のほぐれ感と弾力感が強く感じられた。
【0037】
[実施例4]
魚介類代用肉の製造(4)
表6の配合となるように、小麦たんぱく、金属塩溶液(全量)を混合した。これを90℃の恒温槽で10分間静置して、元の重量の2.5倍以上に膨潤させ、ツナ様の魚介類代用肉を得た。各魚介類代用肉の膨潤率は表7に示した。これらにその他の材料をそれぞれ混合し、10分間水冷して調味した。
基準としてツナ(ノンオイルツナフレーク)にその他の材料を全て混合したもの(コントロールb)を調製した。
これらについて実施例3と同様に8名のパネラーで官能評価を行い、評価結果を表7に示した。
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】
表7に示されるように小麦たんぱくを金属塩溶液で膨潤させて製造した魚介類代用肉を用いて調製したもの(実施例品J~L)はいずれもほぐれ感及び弾力感がツナを用いて調製したもの(コントロールb)と同等又はより優れており、ツナの代用品として使用できるものであることが確認できた。
また、KCl及びクエン酸Na等の1価の金属塩を用いた場合、弾力感やほぐれ感をさらに増強させることができ、代用したい魚介類の種類に応じて食感の調整が容易であることが示された。
【0041】
[実施例5]
魚介類代用肉の製造(5)
表8の配合となるように、小麦たんぱく以外のその他の材料を混合して沸騰させ、沸騰した段階で小麦たんぱくを添加し、5分間煮て、小麦たんぱくの膨潤と調味を行い、ホタテ貝柱様の魚介類代用肉を製造した。このホタテ貝柱様の魚介類代用肉に含まれる小麦たんぱくの膨潤率を表8に示した。その後、100gに重量調整したものをレトルトパックに充填し、121℃で10分間レトルト殺菌した後、10分間水冷した。
基準としてホタテ貝柱のほぐし身を使用して小麦たんぱくと同様にその他の材料と混合した後、レトルト殺菌したもの(コントロールc)を調製した。
【0042】
各魚介類代用肉を用いて調製したものと、ホタテ貝柱のほぐし身を使用したもの(コントロールc)を8名のパネラーできっ食し、各魚介類代用肉のものがホタテの代用品として使用可能か否かをそれぞれ評価し、評価結果を表9に示した。
【0043】
【表8】
【0044】
【表9】
【0045】
表9に示されるように、小麦たんぱくを用いたいずれの魚介類代用肉もホタテと同等か、ホタテには劣るがホタテの代用品として使用できるとするパネラーが過半数を占めており、金属塩を添加して調製したものが、よりホタテと同等の食感を示すことが確認できた(実施例品N)。
また、小麦たんぱくを用いてカニ様の魚介類代用肉を調製したところ、カニのほぐし身を用いて調製したものと同等の食感を示したことから、小麦たんぱくを用いて、カニの代用肉の製造も可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によって、植物由来原料を含み、かつ、動物由来原料を含まない魚介類代用肉の製造が可能となった。本発明の魚介類代用肉は、魚介類と同等の食感を示すため、ツナ、カニのほぐし身又はホタテの貝柱等に替わり得る魚介類代用肉となり得る。このような本発明の魚介類代用肉は、サラダ、炒め物、煮もの、卵焼き、グラタン、コロッケ、フライ、天ぷら、かき揚げ、餡かけ等の様々な料理に利用できる。
図1
図2