(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051437
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】通信システム、基地局、端末、および通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 88/04 20090101AFI20230404BHJP
H04W 40/02 20090101ALI20230404BHJP
H04W 52/04 20090101ALI20230404BHJP
H04J 99/00 20090101ALI20230404BHJP
【FI】
H04W88/04
H04W40/02
H04W52/04
H04J99/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162104
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
(72)【発明者】
【氏名】森山 雅文
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA13
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067EE22
5K067GG08
(57)【要約】
【課題】非直交多元接続による無線通信ネットワークにおいて、伝搬損失が比較的高い環境で通信する端末の通信効率を改善する。
【解決手段】通信システムは、複数の端末が基地局に非直交多元接続される。本通信システムの複数の端末は、上り通信データを基地局に中継する中継端末と中継端末を介して基地局に上り通信データを送信する被中継端末とを含む。また、中継端末は、この中継端末で発生した通信要求に基づく上り通信データに、被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データを基地局に送信する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末が基地局に非直交多元接続される通信システムであって、
前記複数の端末は、上り通信データを前記基地局に中継する中継端末と前記中継端末を介して前記基地局に上り通信データを送信する被中継端末とを含み、
前記中継端末は、前記中継端末で発生した通信要求に基づく上り通信データに前記被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データを前記基地局に送信する通信システム。
【請求項2】
前記基地局は、前記複数の端末それぞれとの間の伝搬路の伝搬損失を取得し、前記伝搬路の伝搬損失が第1の基準値未満の端末を前記中継端末の候補とし、前記伝搬路の伝搬損失が前記第1の基準値より大きい第2の基準値以上の端末を前記被中継端末の候補とし、前記中継端末の候補と前記被中継端末の候補から前記中継端末と、前記被中継端末と、を選択する請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記基地局は、前記被中継端末の候補が前記中継端末の候補に中継されて前記基地局と通信するときの伝搬損失が、前記被中継端末の候補が前記中継端末の候補によって中継されないで前記基地局と通信するときの伝搬損失よりも第3の基準値以上改善する場合に、前記被中継端末の候補と前記中継端末の候補とを前記被中継端末と前記中継端末に選択する請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記中継端末は複数の前記被中継端末と非直交多元接続する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記中継端末は、前記被中継端末からの上り通信データを中継するときに、前記中継端末で発生した上り通信データを送信するときの送信電力より少なくとも第4の基準値だけ小さい送信電力で前記被中継端末からの上り通信データを前記基地局に送信する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記中継端末は、前記被中継端末の上り通信データの中継を完了する前に、前記中継端末で発生した上り通信データの送信が完了した場合には、前記被中継端末の上り通信データを送信するときの送信電力を増加させる請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記中継端末で中継される複数の前記被中継端末のうちのいずれかの被中継端末の上り通信データの中継が完了した場合には、前記中継端末は、前記中継が完了した前記被中継端末よりも低い送信電力が設定された被中継端末の上り通信データの中継における送信電力を増加させる請求項5または6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記被中継端末は、基地局が提供するセル外に位置する端末を含む請求項1乃至7のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項9】
複数の端末が基地局に非直交多元接続される基地局であって、
前記複数の端末から、上り通信データを前記基地局に中継する中継端末と前記中継端末を介して前記基地局に上り通信データを送信する被中継端末とを選択することと、
前記中継端末から、前記中継端末で発生した通信要求に基づく上り通信データに前記被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データを受信することと、を実行する制御部を備える基地局。
【請求項10】
前記制御部は、前記複数の端末それぞれとの間の伝搬路の伝搬損失を取得し、前記伝搬路の伝搬損失が第1の基準値未満の端末を前記中継端末の候補とし、前記伝搬路の伝搬損
失が前記第1の基準値より大きい第2の基準値以上の端末を前記被中継端末の候補として、前記中継端末の候補と前記被中継端末の候補から前記中継端末と、前記被中継端末と、を選択する請求項9に記載の基地局。
【請求項11】
前記制御部は、前記被中継端末の候補が前記中継端末の候補に中継されて前記基地局と通信するときの伝搬損失が、前記被中継端末の候補が前記中継端末の候補によって中継されないで前記基地局と通信するときの伝搬損失よりも第3の基準値以上改善する場合に、前記被中継端末の候補と前記中継端末の候補とを前記被中継端末と前記中継端末に選択する請求項10に記載の基地局。
【請求項12】
前記制御部は、前記中継端末が前記被中継端末からの上り通信データを中継するときの送信電力として、前記中継端末で発生した上り通信データを送信するときの送信電力より少なくとも第4の基準値だけ小さい送信電力を前記中継端末に指示する請求項9乃至11のいずれか1項に記載の基地局。
【請求項13】
前記制御部は、前記被中継端末の上り通信データの中継を完了する前に、前記中継端末で発生した上り通信データの送信が完了した場合には、前記中継端末に、前記被中継端末の上り通信データを送信するときの送信電力を増加させる請求項12に記載の基地局。
【請求項14】
前記制御部は、前記中継端末で中継される複数の前記被中継端末のうちのいずれかの被中継端末の上り通信データの中継が完了した場合には、前記中継端末に、前記中継が完了した前記被中継端末よりも低い送信電力が設定された被中継端末の上り通信データの中継における送信電力を増加させる請求項12または13に記載の基地局。
【請求項15】
前記制御部は、前記中継端末に、基地局が提供するセル外に位置する端末を探索させ、探索できた端末からの通信データを中継させる請求項9乃至14のいずれか1項に記載の基地局。
【請求項16】
複数の端末が基地局に非直交多元接続される通信システムにおける端末であって、
前記端末は、上り通信データを前記基地局に中継する中継端末または前記中継端末を介して前記基地局に上り通信データを送信する被中継端末として前記基地局と通信することと、
前記中継端末として通信するときには、前記中継端末で発生した通信要求に基づく上り通信データに前記被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データを前記基地局に送信することと、
を実行する制御部を備える端末。
【請求項17】
複数の端末が基地局に非直交多元接続される、前記基地局の通信方法であって、
前記複数の端末から、上り通信データを前記基地局に中継する中継端末と前記中継端末を介して前記基地局に上り通信データを送信する被中継端末とを選択することと、
前記中継端末から、前記中継端末で発生した通信要求に基づく上り通信データに前記被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データを受信することと、を有する通信方法。
【請求項18】
前記複数の端末それぞれとの間の伝搬路の伝搬損失を取得し、前記伝搬路の伝搬損失が第1の基準値未満の端末を前記中継端末の候補とし、前記伝搬路の伝搬損失が前記第1の基準値より大きい第2の基準値以上の端末を前記被中継端末の候補とし、前記中継端末の候補と前記被中継端末の候補から前記中継端末と、前記被中継端末と、を選択することをさらに有する請求項17に記載の通信方法。
【請求項19】
前記被中継端末の候補が前記中継端末の候補に中継されて前記基地局と通信するときの伝搬損失が、前記被中継端末の候補が前記中継端末の候補によって中継されないで前記基地局と通信するときの伝搬損失よりも第3の基準値以上改善する場合に、前記被中継端末の候補と前記中継端末の候補とを前記被中継端末と前記中継端末に選択することをさらに有する請求項18に記載の通信方法。
【請求項20】
複数の端末が基地局に非直交多元接続される、前記端末の通信方法であって、
前記端末が、上り通信データを前記基地局に中継する中継端末または前記中継端末を介して前記基地局に上り通信データを送信する被中継端末として前記基地局と通信することと、
前記中継端末として通信するときには、中継端末で発生した通信要求に基づく上り通信データに前記被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データを前記基地局に送信することと、
を有する通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、基地局、端末、および通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低遅延と多数接続を両立させる無線アクセス技術が求められている。このうち、基地局に接続できる端末数を増加させることを目的として、無線信号の直交性が緩和された技術の利用が期待されている。この技術は、非直交多元接続(Non-Orthogonal
Multiple Access:NOMA)と呼ばれる。ところで、無線によるネットワークでは、基地局に接続できる複数の端末のうちの少なくとも一部の端末と基地局との間での伝搬損失が比較的高くなる場合が生じ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP TR 38.830、Study on NR coverage enhancements (Release 17)、2020年12月
【非特許文献2】Moriyama,et al. “Experimental Evaluation of a Novel Up-Link NOMA System for IoT Communication Equipping Repetition Transmission and Receive Diversity” IEICE TRANS. COMMUN. Aug. 2019 Vol.E102-B, No.8. p.1467-1476
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の実施の形態の課題は、非直交多元接続による無線通信ネットワークにおいて、伝搬損失が比較的高い環境で通信する端末の通信効率を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の実施形態の1つの側面は、通信システム、基地局、無線端末、および通信方法によって例示される。本通信システムは、複数の端末が基地局に非直交多元接続される。本通信システムにおいて、複数の端末は、上り通信データを前記基地局に中継する中継端末と前記中継端末を介して前記基地局に上り通信データを送信する被中継端末とを含む。また、中継端末は、この中継端末で発生した通信要求に基づく上り通信データに前記被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データを前記基地局に送信する。ただし、開示の実施形態の他の側面は、この通信システムに含まれる基地局によっても例示される。また、開示の実施形態の他の側面は、この通信システムに含まれる端末によっても例示される。さらに、開示の実施形態の他の側面は、この通信システムに含まれる基地局における方法、または、端末おける方法によっても例示される。
【発明の効果】
【0006】
本情報処理装置によれば、非直交多元接続による無線通信ネットワークにおいて、伝搬損失が比較的高い環境で通信する端末の通信効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態の通信システムを例示する図である。
【
図2】
図2は、基地局のハードウェア構成を例示する図である。
【
図3】
図3は、中継局による中継処理を説明する図である。
【
図4】
図4は、中継局を用いることによる効果を説明する図である。
【
図5】
図5は、基地局と端末との間の上り回線と下り回線のデータフロー例示する図である。
【
図6】
図6は、被中継局および中継局を含む第1の通信方法を例示する図である。
【
図7】
図7は、被中継局から中継局への第2の通信方法を例示する図である。
【
図8】
図8は、中継局以外の端末の処理のブロック図である。
【
図9】
図9は、被中継局と非直交多元接続しない中継局の処理のブロック図である。
【
図11】
図11は、被中継局と非直交多元接続する中継局の処理のブロック図である。
【
図12】
図12は、基地局の制御手順を例示するフローチャートである。
【
図13】
図13は、中継局の候補および被中継局の候補の選定、中継局の候補および被中継局の候補間の伝搬損失の測定、中継局及び被中継局の選定処理を例示する図である。
【
図14】
図14は、中継局の候補と被中継局の候補を選定する処理の例である。
【
図15】
図15は、中継局と被中継局との間に伝搬損失を設定する処理の第1の例である。
【
図16】
図16は、中継局と被中継局との間の伝搬損失を設定する処理の第2の例である。
【
図17】
図17は、被中継局から中継局への送信での基地局による送信電力の設定を例示する図である。
【
図18】
図18は、各端末から基地局への送信での基地局による送信電力の設定を例示する図である。
【
図19】
図19は、中継局における送信電力の更新方法を例示する図である。
【
図20】
図20は、中継局で自局の上り回線のデータ送信が終了した場合の基地局による中継局に対する送信電力設定処理を例示する図である。
【
図21】
図21は、中継局が中継するいずれかの被中継局の上り回線のデータ送信が終了した場合の基地局の処理を例示する図である。
【
図22】
図22は、第2の実施形態における基地局と端末との間の上り回線と下り回線のデータフロー例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本実施形態の通信システム、基地局、端末、および通信方法を説明する。本通信システムでは、複数の端末が基地局に非直交多元接続される。また、複数の端末は、自端末以外からの上り通信データを基地局に中継する中継端末と中継端末を介して基地局に上り通信データを送信する被中継端末とを含む。そして、中継端末は、中継端末で発生した通信要求に基づく上り通信データに上記被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データを基地局に送信する。
【0009】
<第1実施形態>(システム構成)
図1は、第1実施形態の通信システム100を例示する図である。通信システム100は、基地局1と、基地局1が提供する無線ネットワークRNにアクセスして通信する装置A、B、C等を含む。
【0010】
無線ネットワークRNは、例えば、Long Term Evolution(LTE)、5th Generation Mobile Communication System(5G)、6th Generation Mobile Communication System(6G)等と呼ばれる通信ネットワークである。装置A等は、例えば、無線ネットワークR
Nにアクセスする端末である。装置A等は、携帯電話、スマートフォン、車載通信装置の
他、ドローン、工作機械、各種センサ等に搭載された通信装置である。
【0011】
装置A等は、無線ネットワークRNにおいて非直交多元接続で基地局1に接続する。例えば、装置A、B、C等のうち、複数の装置からの上り通信データが時間と周波数で定義される物理リソース上で重複して送信される。ただし、重複して送信される、複数の装置からの上り通信データそれぞれの基地局1における受信電力には、ある限度以上の差が存在する。すなわち、したがって、
図1は、複数の端末が基地局に非直交多元接続される通信システム100を例示すると言える。
【0012】
基地局1は、非直交多元接続で重複して受信される上り通信データに逐次型干渉キャンセラ(Successive Interference Canceller、SIC)の処理を繰り返す。これにより、基地局1は、複数の装置A、B、C等のそれぞれから上り通信データを分離する。
図1の例で
は、基地局1は、同じ周波数領域で同一のタイムスロットにおいて複数の装置A、B、C等のそれぞれから上り通信データを受信する。ただし、装置Aからの受信信号の受信電力が最大であり、装置Bからの受信信号の受信電力が2番目に大きく、装置Cからの受信信号の受信電力が最も小さいとする。
【0013】
基地局1は、まず、受信電力が最大の装置Aからの信号をMinimum Mean Square Error
(MMSE)規範等の等化処理を行う。さらに、基地局1は、等化した信号から装置Aからの受信データを復調し、復号する。基地局1は、復調し、復号した装置Aからの受信データを基に、受信アンテナで受信される装置Aからの信号のレプリカを生成する。基地局1は、上記重複して送信される上り通信データからレプリカを減算することで、装置Aを除く装置B、C等から重複して受信される上り通信データを取得する。基地局1は、このような処理を繰り返すことで、複数の装置A、B、C等のそれぞれからの上り通信データを分離する。なお、以下の実施形態では、複数の装置A、B、C等を端末2と呼ぶ。以下の実施形態では、複数の装置A、B、C等を端末2-1、2-2、2-3等と呼ぶ。また、端末2-1等を総称する場合には、端末2と呼ぶ。なお、端末2の数は、3台に限定される訳ではない。
【0014】
図2は、本実施の形態の基地局1のハードウェア構成を例示する図である。基地局1は、プロセッサ101と、メモリ102と、内部インターフェース103と、他の基地局等と通信するためのネットワークインターフェース104と、無線処理装置105とを有する。
【0015】
プロセッサ101はCentral Processing Unit(CPU)、Microprocessor Unit(MPU)とも呼ばれる。プロセッサ101は、単一のプロセッサに限定される訳ではなく、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、プロセッサ101は単一のソケットで接続される単一の物理CPUがマルチコア構成を有していても良い。さらにまた、プロセッサ101は、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)等の様
々な回路構成の演算装置を含んでも良い。また、プロセッサ101は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路、またはアナログ回路と連携するものでもよい。集積回路は、LSI、 Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)を含むものでもよい。PLDは、例えば、Field-Programmable Gate Array(FPGA)を含むものでもよい。したがって、プロセッサ101は、例えば、マイクロコントローラ(MCU)、System-on-a-chip(SoC)、システムLSI、
チップセットなどと呼ばれるものでもよい。
【0016】
メモリ102は、プロセッサ101が実行する命令列(コンピュータプログラム)、または、プロセッサ101が処理するデータ等を記憶する。プロセッサ101とメモリ102とは、ベースバンド装置(BBU)とも呼ばれることがある。ベースバンド装置は、制
御部ということもできる。内部インターフェース103は、種々の周辺装置をプロセッサ101に接続する回路である。
【0017】
ネットワークインターフェース104は、他の基地局が接続されるネットワークに基地局1がアクセスするための通信装置である。他の基地局が接続されるネットワークは、バックホールとも呼ばれる。バックホールは例えば、光通信による有線ネットワークである。
【0018】
無線処理装置105は、無線信号を送信するトランスミッタおよび無線信号を受信するレシーバ等を含み、アンテナに接続される。無線処理装置105においては、アンテナ、トランンスミッタおよびレシーバは1系統に限定されない。無線処理装置105は、これらをN系統有してもよい。無線処理装置105は、遠隔無線ヘッド(RRH)と呼ばれ、ベースバンド装置とは例えば光通信による有線ネットワークで接続して、遠隔に設置される構成とすることもできる。また、1つのベースバンド装置に、複数の遠隔無線ヘッドが接続される構成であってもよい。なお、ベースバンド装置と遠隔無線ヘッドを接続するネットワークは、フロントホールとも呼ばれる。
【0019】
また、端末2のハードウェア構成は、
図2の基地局1と類似した構成要素を有する。すなわち、端末2は、プロセッサ101と、メモリ102と、内部インターフェース103と、無線処理装置105とを有する。そこで、端末2のハードウェア構成は、
図2と同様であるのでその説明を省略する。ただし、端末2では、ネットワークインターフェース104は他の基地局が接続されるネットワークに接続するものではない。例えば、端末2は、基地局1以外の装置に接続するために無線Local Area Network(LAN)、Bluetooth
(登録商標)、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)等による通信装置を有してもよい。
【0020】
(端末の中継機能)
図3は、中継局2Rによる中継処理を説明する図である。ここでは、端末2-1乃至2-5が基地局1の無線ネットワークRNに接続されているものとする。
図2の左上のグラフG1で例示される棒グラフは端末2-1乃至2-5のノイズフロア(またはノイズレベル)に対する基地局1での受信電力を例示している。ただし、端末2-1乃至2-5の間においても、それぞれの受信信号に対して、他の端末2からの受信信号が干渉信号となる。
【0021】
グラフG1では、端末2-1、2-2が他の端末2-4等からの干渉信号に対して高いSignal-to-interference Ratio(SIR)を示している。また、当然、端末2-1、2-2はノイズフロアに対して高いSignal-to-Noise Ratio(SNR)を示している。一
方、端末2-4、2-5は、ノイズフロアに対しても低いSNRしか有していない。端末2-4、2-5は、例えば、無線ネットワークRNのセル端部またはトンネル内など、パスロス(伝搬損失)が大きな環境にあると想定できる。
【0022】
一方、右上のグラフG2は、例えば、端末2-3における端末2-4、端末2-5からの受信信号の受信電力を例示している。基地局1においては、低いSNRしか有していない端末2-4、端末2-5からの送信信号も、端末2-3においては、ある程度のSNRを有している。
【0023】
本実施形態では、このような通信環境における伝送効率の向上を図る。そのため、通信システム100は、
図3において、パスロス(伝搬損失)が大きな環境とは言えない端末2-3等を中継局2R(中継端末ともいう)として利用する。すなわち、通信システム100は、複数の端末2から中継局2Rを選択し、選択された中継局2Rを介した伝送を行
う。なお、基地局1と通信する端末2のうち、中継局2Rを介して基地局1と通信する端末2を被中継局2Sという。被中継局2Sは、被中継端末ともいう。
【0024】
本実施形態では、中継局2Rは自身の送信信号(自局で送信要求が生じた送信信号)に被中継局2Sの送信信号を重畳して送信する。この場合、中継局2Rは自身の送信信号よりも所定限度ΔPだけ送信電力を低下させて被中継局2Sの送信信号を自身の送信信号に重畳する。中継対象となる被中継局2Sが複数ある場合には、中継局2Rは、順次、ΔPずつ送信電力を低下させてそれぞれの被中継局2Sの送信信号を自身の送信信号に重畳する。このような中継により、基地局1は、端末2-1、2-2、2-3からの受信信号に加えて、端末2-4、端末2-5からの受信信号を受信できる。すなわち、
図2のグラフG3のように、基地局1は、非直交多元接続で、複数の端末2間のSIRを確保し、かつ、十分なSNRで、各端末2と通信可能となる。また、本実施形態の中継では、符号語長を変えることなく中継が可能となる。
【0025】
図4は、中継局2Rを用いることによる効果を説明する図である。SNRが十分ではない無線通信環境では、送信局から受信局に同一の信号(例えば、パケット)を繰り返して送信する連送が実施される。例えば、送信局は、同一の信号を複数のタイムスロットで繰返し送信する。これによって、通信システム100は、SNRを改善する。しかし、連送回数が多いとそれだけ伝送効率が低下する。
【0026】
図4は、中継局2Rを採用しない場合のタイムスロット数(連送回数)と、中継局2Rを採用した場合のタイムスロット数(中継回数及び連送回数)を比較する図である。これらのタイムスロット数はいずれもシミュレーションで得ることができる。
【0027】
図4の2つのグラフは、いずれも、横軸が端末2の端末ID(user IDともいう)であ
り、縦軸が1つの通信データの連送に要したタイムスロット数である。また、グラフで、黒丸がシミュレーションで得られた連送回数の最小値、白丸が最大値、三角のマークが平均値である。また、
図4の2つのグラフうち、左側は中継局がない場合のシミュレーション結果であり、右側は中継局がある場合のシミュレーション結果である。
【0028】
図4のシミュレーションでは、user IDが1乃至4の端末2には、十分なSNRが設定
されている。また、user IDが5、6の端末2は、
図3の端末2-4、2-5と同様に、
セルの端部に位置することが想定され、低いSNRが設定されている。図から明らかなように、中継局2Rを採用することで、望ましいSNRを得るための所望のタイムスロット数が大幅に削減されることが分かる。
【0029】
図5は、基地局1と端末2との間の上り回線と下り回線のデータフローを例示する図である。上り回線はアップリンクチャネルともいう。また、下り回線はダウンリンクチャネルともいう。
図5は、サーバが、センサ等からデータを収集するシステムを例示する図である。このシステムは、基地局1に接続されるサーバと、端末局2N、中継局2R、被中継局2S等に接続されるセンサとを有している。
【0030】
図5において、基地局1、端末局2N等の構成は簡略化して例示されている。
図5において、基地局1の無線機、端末局2N等の無線機は、
図2の無線処理装置105に対応する。また、基地局1の制御装置、端末局2N等の制御装置等は、
図2のプロセッサ101およびメモリ102に対応する。このシステムでは、センサ等が端末局2N、中継局2R、被中継局2S等により基地局1を介して、基地局1にネットワークで接続されるサーバに情報を送信する。
【0031】
端末局2Nは、端末2のうち、中継局2Rとしても、被中継局2Sとしても動作してい
ない通常の処理を実行する端末2をいう。中継局2Rは、被中継局2Sの上り回線のデータを基地局1に中継する端末2をいう。被中継局2Sは中継局2Rによって基地局1への上り回線のデータを中継される端末2をいう。
図5では、端末2の総数がKであり、中継局2Rの数はKrであり、被中継局2Sの数はKsであり、端末局2Nの数は、K-Kr-Ksである。
【0032】
図5は、被中継局2Sが基地局1のセル内に存在し、被中継局2Sと基地局1との間で少なくとも中継なしに、上り制御チャネルと、下り制御チャネル(制御回線ともいう)による通信が可能である場合を例示する。一方、被中継局2Sから送信される上りデータチャネル(データ回線ともいう)のデータは、一旦、中継局2Rで受信される。そして、中継局2Rは、自局で発生した上りデータチャネルのデータの送信信号に、被中継局2Sから受信した上りデータチャネルのデータの送信信号を重畳して基地局1に送信する。また、端末局Nは、自局で発生した上りデータチャネルのデータの送信信号を通常通り、基地局1に送信する。
【0033】
したがって、
図5では、周波数と時間で定義される物理リソースは、複数の端末2によって重複して使用されることになる。ただし、基地局1は、少なくとも1つのタイムスロットを被中継局2Sから中継局2Rへの上りデータチャネルに割り当てる。
【0034】
中継局2Rは、被中継局2Sの上りデータチャネルの信号の中継時、自身の送信信号と被中継局の送信信号を重畳して送信する。これは、データ信号およびレファレンス信号とも同様である。中継局2Rから送信されるレファレンス信号xRS,relayは、以下の式で表
すことができる。
【0035】
【数1】
また、中継局2Rから送信されるデータ信号x
DS,relayは、以下の式で表すことができる
。
【0036】
【数2】
ここでa
Krおよびa
Kr+i(i=1~K-Kr)は、基地局1の制御装置が、中継局2Nおよび各被中継局2S(1~K-Kr))から基地局1へ送信する上りデータチャネルの送信に割り当てた送信電力Pkから求めた送信信号の振幅値である。また、x
RS,Kr, x
RS,r(i)、x
DS,Kr, x
DS,r(i)は、デジタル変調された送信信号の振幅の平均値を1に規格化した信号を示す。
【0037】
図6は、被中継局2S、中継局2Rおよび基地局1(BS)を含む第1の通信方法を例示する図である。
図6では、被中継局2Sから中継局2Rへの上り回線のデータは、非直交多元接続することなく、個別に送信される。
図6は、この場合のタイムストットの割り当てを例示する。
図6で、RSはレファレンス信号の送信を示し、DSはデータ信号の送信を示す。また、矢印の前後で示される番号N->Mは、端末2-Nから、端末2-Mのものへの送信を例示する。また、この場合の番号N、Mは端末IDである。さらに、
図6で、「上り(中継)」の欄は、被中継局2Sから中継局2Rへの上り回線の送信データの割り当てを例示する。したがって、RS4->3は、被中継局2Sである端末2-4から、中継局2Rである端末2-3へのレファレンス信号の送信を例示する。また、DS4->3は、被中継局2Sである端末2-4から、中継局2Rである端末2-3へのデータ信号の送信を例示する。
図6の例では、被中継局2Sから中継局2Rへの上り回線の送信データの割り当てでは、1つのタイムスロットに1組の被中継局2Sと中継局2Rとが割り当てられ、重複がない。
【0038】
一方、
図6で「上り」は、中継局2Rから基地局1への送信を例示する。この場合、複数の端末2-1、2-2、2-3から基地局1へのレファレンス信号またはデータ信号の送信が同一のタイムスロットに重複して割り当てられる。
図6で、RS1~3->BSは、端末2-1、2-2、2-3から基地局1へのレファレンス信号の送信が同一タイムスロットで実行されることを示す。また、DS1~3->BSは、端末2-1、2-2、2-3から基地局1へのデータ信号の送信が同一タイムスロットで実行されることを示す。すなわち、複数の端末2-1、2-2、2-3等が基地局1と非直交多元接続する。
【0039】
図7は、被中継局2Sから中継局2Rへの第2の通信方法を例示する図である。なお、
図7において、中継局2Rから基地局1(BS)への通信方法は、
図6と同様である。第2の通信方法においては、被中継局2Sから中継局2Rへの上り回線の割り当てが複数の端末2の間で重複する。すなわち、被中継局2Sが中継局2Rと非直交多元接続する。
図7では、被中継局2Sである端末2-4および端末2-5から、中継局2Rである端末2-3へのレファレンス信号およびデータ信号のデータ送信が同一のタイムスロットにおいて重複している。この場合には、中継局2Rは、非直交多元接続した複数の被中継局2Sからの受信信号をSICによって分離する。そして、分離した複数の被中継局2Sからの受信信号に所定の送信電力を割り当て、自局で発生した送信データに重畳して基地局1に送信する。
図7の構成は、複数の前記被中継端末と非直交多元接続する中継端末による中継処理の一例ということができる。
【0040】
図8は、中継局2R以外の端末2(端末局2Nまたは被中継局2S)の処理のブロック図である。中継局2Rのプロセッサ101は、メモリ102に実行可能に展開されたコンピュータプログラムにより、
図8の各構成要素として処理を実行する。このようなコンピュータプログラムによる処理は、
図9乃至
図11においても同様である。
図8のように、端末局2Nまたは被中継局2Sとして動作する端末2は、RS(レファレンス信号)処理部21、DS(データ信号)処理部22、受信処理部23およびアンテナ24を有する。
【0041】
RS処理部21は、レファレンス信号を生成し、アンテナ24から基地局1に送信する。RS処理部21は、例えば、系列生成部211、振幅調整部212およびcyclic prefix(CP)挿入部213を有している。系列生成部211は、例えば、Zadoff-C
hu系列等の直交系列を用いて、信号系列を生成する。系列生成部211で生成される信号系列は、同時に送信を行う複数の端末2間で共通した系列である。そのため、この信号系列をそのまま用いると、複数の端末2間でレファレンス信号が干渉しあってしまうので、各端末2は、使用する信号系列を異ならせる。そのため、各端末2は、端末2に応じて、信号系列を巡回シフトすることで、信号系列の開始点を所定サンプル数ずらす。端末2ごとに信号系列の開始点が異なることによって、各端末2でレファレンス信号に用いられ
る系列が異なることになる。
【0042】
振幅調整部212は、基地局1から指示された送信電力でレファレンス信号を送信するため、レファレンス信号の振幅を調整する。基地局1は、各端末2からの受信電力間に所定の電力差が生じるように、各端末2に対して、送信電力を指示する。CP挿入部213は、各レファレンス信号にサイクリックプレフィックスと呼ばれる信号区間を設定する。これにより、信号の遅延によるレファレンス信号間の干渉が抑制される。
【0043】
DS処理部22は、Cyclic Redundancy Check(CRC)符号化部221、誤り訂正符号化部222、変調部223、振幅調整部224およびCP挿入部225を有している。CRC符号化部221は、端末2から送信されるデータにCRCの誤り検出符号を付加する。誤り訂正符号化部222は、データをさらに誤り訂正符号化する。誤り訂正符号は、ブロック符号でもたたみこみ符号でもよく、符号化の種類に制限はない。変調部223は、誤り訂正符号化されたデータを変調する。変調は、例えば、デジタル変調であり、変調方式に限定はない。変調方式は、例えば、Quadrature Amplitude
Modulation (QAM)、Phase Shift Keying (PSK)等である。振幅調整部224およびCP
挿入部225の処理は、RS処理部21の振幅調整部212およびCP挿入部213の処理と同様である。なお、RS処理部21とDS処理部22は、スイッチSW1により、例えば時分割でアンテナ24に接続される。すなわち、スイッチSW1は、RS処理部21からの信号とDS処理部22からの信号を多重化する。スイッチSW2および
図9乃至
図11に記載のスイッチSW3~SW8の機能も、同様に、信号の多重化ということができる。
【0044】
受信処理部23は、CP除去部231、伝搬路推定部232、CP除去部233、復調部234、誤り訂正復号部235、および誤り検出部236を有している。アンテナ24で受信される無線信号はスイッチSW2により、例えば時分割でCP除去部231またはCP除去部233に接続される。
【0045】
CP除去部231および伝搬路推定部232は、アンテナ24で受信された受信信号のうち、レファレンス信号を処理する。CP除去部231はレファレンス信号からCPを除去する。伝搬路推定部232は、CPを除去されたレファレンス信号を基に、基地局1から端末2までの伝搬路の伝搬路推定値を算出する。伝搬路推定値は、それぞれの基地局1から端末2のアンテナ24に至る伝搬路での無線信号の振幅および位相の変動量ということができる。
【0046】
CP除去部233乃至誤り検出部236は、受信信号のうちデータ信号を処理する。CP除去部233は、アンテナ24で受信されたデータ信号からCPを除去する。復調部234は、CPが除去されたデータ信号を基に送信されたデータを復調する。誤り訂正復号部235は、復調されたデータを誤り訂正復号する。誤り検出部236は、復号されたデータに対して、例えば、CRCによる誤り検出を実行する。
【0047】
なお、本実施形態では、端末2は、基地局1までの伝搬損失がある閾値より大きければ被中継局の候補となり、基地局1により被中継局2Sとして選択される。被中継局2Sは、中継局2Rを介して基地局1に上り回線のデータ(上り通信データともいう)を送信する。
【0048】
図9は、被中継局2Sと非直交多元接続しない中継局2RAの処理のブロック図である。したがって、
図8では、中継局2RAはSICの処理を実行しない。つまり、
図9の中継局2Rは、複数の被中継局2Sから同一のスロットでデータを受信することを前提としていない。
【0049】
図9のように、中継局2RAは、RS処理部21A、DS処理部22A、受信処理部23、スイッチSW3、SW4およびアンテナ24を有する。このうち、受信処理部23、スイッチSW4およびアンテナ24の作用は、
図8の受信処理部23、スイッチSW2およびアンテナ24と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
RS処理部21Aは、例えば、系列生成部211、振幅調整部212の系列を複数有している。この複数の系列の後段には、信号合成部214とCP挿入部213が接続される。上記複数の系列のうち、第1の系列は、自局用のレファレンス信号を生成し、信号合成部214に出力する。第2の系列は、1以上設けられ、1以上の被中継局のレファレンス信号を生成し、信号合成部214に出力する。信号合成部214は、第1の系列および第2の系列で生成されたレファレンス信号を時間軸上で加算し、CP挿入部225に出力する。CP挿入部213は、信号合成部214で合成された上記複数の系列からのレファレンス信号にサイクリックプレフィックスを設定する。そして、サイクリックプレフィックスが設定された信号は、スイッチSW3により無線処理装置105(
図2)のトランスミッタに引き渡され、アンテナ24から基地局1に送信される。
【0051】
このようにして、信号合成部214によって合成された複数の系列からのレファレンス信号は、アンテナ24から基地局1に至る伝搬路を通り、基地局1に達する。本実施形態の通信システム100は、第2の系列により、基地局1において被中継局2Sを識別できるようにするために、被中継局2Sごとに異なるレファレンス信号を送信する。これにより、レファレンス信号が中継局2RAによって中継される場合でも、基地局1は、どの被中継局2Sからの信号を受信しているのか、何台の端末2からの信号を受信しているのかを判断する。すなわち、基地局1は、中継局2RAから送信するレファレンス信号であっても、中継局2RAおよび被中継局2Sを識別するためにレファレンス信号を使用できる。
【0052】
DS処理部22Aは、例えば、CRC符号化部221、誤り訂正符号化部222、変調部223および振幅調整部224を複数系列有している。この複数の系列の後段には、信号合成部226とCP挿入部225が接続される。上記複数の系列のうち、第1の系列は、自局用のデータ信号を生成し、信号合成部226に出力する。第2の系列は、1以上設けられ、1以上の被中継局2Sからのデータ信号を処理し、信号合成部226に出力する。信号合成部226は、第1の系列および第2の系列からのデータ信号を時間軸上で加算し、CP挿入部225に出力する。CP挿入部225は、信号合成部226で合成された上記複数の系列からのデータ信号にサイクリックプレフィックスを設定する。そして、サイクリックプレフィックスが設定されたデータ信号は、スイッチSW3により無線処理装置105(
図2)のトランシーバに引き渡され、アンテナ24から基地局1に送信される。
【0053】
このようにして、信号合成部226によって合成された複数の系列からのデータ信号は、アンテナ24から基地局1に至る伝搬路を通り、基地局1に達する。信号合成部226によって合成された複数の系列からのデータ信号は、中継端末2Rで発生した通信要求に基づく上り通信データに被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データの一例ということができる。すなわち、
図9の中継局2RAは、上り通信データを基地局1に中継する中継端末の一例ということができる。すなわち、中継端末の一例として、中継局2RAは、中継局2RAで発生した通信要求に基づく上り通信データに被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データを基地局1に送信する。
【0054】
図10は、基地局1の処理のブロック図である。
図10のように、基地局1は、RS処理部11、DS処理部12、受信処理部13、スイッチSW5、SW6およびアンテナ1
4を有する。RS処理部11は、例えば、系列生成部111およびCP挿入部113を有している。RS処理部11の系列生成部111およびCP挿入部113は、
図8に例示した端末2の系列生成部211、CP挿入部213と同様である。すなわち、基地局1のRS処理部11は、振幅調整部212を有しないが、その処理は、端末2のRS処理部21と同様であるので、その説明を省略する。
【0055】
DS処理部12は、CRC符号化部121、誤り訂正符号化部122、変調部123、およびCP挿入部125を有している。CRC符号化部121、誤り訂正符号化部122、変調部123、およびCP挿入部125は、
図8に例示した端末2の誤り訂正符号化部222、変調部223、およびCP挿入部225と同様である。すなわち、基地局1のDS処理部12は、振幅調整部224を有しないが、その処理は、端末2のDS処理部22と同様であるので、その説明を省略する。また、スイッチSW5の処理は、
図8のスイッチSW1と同様であるので、その説明を省略する。
【0056】
受信処理部13は、CP除去部131、伝搬路推定部132、CP除去部133、復調部134、誤り訂正復号部135、誤り検出部136、レプリカ作成部137およびレプリカ除去部138を有している。また、アンテナ14で受信される無線信号はスイッチSW6により、例えば時分割でCP除去部131またはCP除去部133に接続される。CP除去部131、伝搬路推定部132、CP除去部133は、
図8の端末2のCP除去部231、伝搬路推定部232、CP除去部233と同様である。一方、基地局1の復調部134、誤り訂正復号部135、誤り検出部136、レプリカ作成部137およびレプリカ除去部138は、SIC法を実行するSICループを形成する。すなわち、基地局1の受信処理部13は、レプリカ作成部137およびレプリカ除去部138を有している点で
図8の端末2とは異なる。
【0057】
復調部134は、アンテナ14で受信された受信信号に等化処理を実行し、それぞれの端末2からの受信信号を抽出する。すなわち、復調部134は、伝搬路推定部132で生成された、それぞれの端末2との間の伝搬路推定値により、特定の端末2からの受信信号を等化処理により抽出し、復調する。等化処理では、それぞれの端末2との間の伝搬路推定値により、対応する端末2からの受信信号が抽出され、他の無線端末からの受信信号が抑圧される。
【0058】
誤り訂正復号部135、誤り検出部136の処理は、
図8の端末2の誤り訂正復号部235、誤り検出部236と同様である。レプリカ作成部137は、復調し復号されたデータを基にして伝搬路推定部132が生成した伝搬路推定値により、端末2からの受信信号のレプリカを生成する。レプリカは、アンテナ14で受信される最大電力の受信信号を模擬した模擬信号である。すなわち、レプリカは、ある1つの端末2からアンテナ14に到来する変調信号であって、信号対干渉雑音電力比 (SINR)が最も高い信号を模擬し
たものである。
【0059】
レプリカ除去部138は、アンテナ14で受信された無線信号から、レプリカ作成部137で作成されたレプリカを除去する。その結果、
図10の例では、SICのループにより、受信された無線信号から、最大電力の変調信号に相当する模擬信号が除去される。
図10のように、SICのループにより、受信された無線信号から、最大電力の変調信号に相当する模擬信号が除去された信号は、再度SICのループに戻される
受信処理部13は、SICのループを実行することにより、
図10または
図1の上段に例示したように、信号対干渉雑音電力比 (SINR)が最も高い信号から順に受信信号
を分離する。すなわち、受信処理部13は、複数の端末2からの非直交多元接続で送信された受信信号から、個々の端末2から送信された受信信号を分離する。受信処理部13は、受信信号から、誤り検出部136による誤り検出でエラーのないデータが取得できなく
なるまでSICのループを繰り返す。このようにして、受信処理部13は、複数の端末2からの受信信号が混在した信号から、個々の端末2からの受信信号を復調する。受信処理部13の処理は、基地局の制御部が中継端末から中継端末で発生した通信要求に基づく上り通信データに被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データを受信することの一例である。
【0060】
図11は、被中継局2Sと非直交多元接続する中継局2RBの処理のブロック図である。したがって、中継局2RBはSICの処理を実行する。
図11のように、中継局2RBは、RS処理部21A、DS処理部22A、受信処理部23A、スイッチSW7、SW8およびアンテナ24を有している。このうち、RS処理部21A、DS処理部22A、スイッチSW7は、
図9のRS処理部21A、DS処理部22AおよびSW3と同一の構成であるので、その説明を省略する。なお、
図11の中継局2RBも、上り通信データを基地局1に中継する中継端末の一例ということができる。また、
図11の中継局2RBの処理は、中継端末で発生した通信要求に基づく上り通信データに被中継端末からの上り通信データを重畳した重畳データを基地局1に送信することの一例でもある。
【0061】
受信処理部23Aは、CP除去部231、伝搬路推定部232、CP除去部233、復調部234、誤り訂正復号部235、誤り検出部236、レプリカ作成部237およびレプリカ除去部238を有している。アンテナ24で受信される無線信号はスイッチSW8により、例えば時分割でCP除去部231またはCP除去部233に接続される。
【0062】
このうち、CP除去部231、伝搬路推定部232およびCP除去部233は、
図8の端末2と同様の構成であるので、その説明を省略する。一方、受信処理部23Aは、復調部234、誤り訂正復号部235、誤り検出部236、レプリカ作成部237およびレプリカ除去部238により、
図10の基地局1と同様、SICのループを実行する。すなわち、中継局2RBは、複数の被中継局2Sと非直交多重接続する。そして、中継局2RBは、複数の被中継局2Sからの受信信号が混在した無線信号から、個々の複数の被中継局2Sからの受信信号を復調する。すなわち、
図11の中継局2Rの構成は、複数の前記被中継端末と非直交多元接続する中継端末の一例ということができる。
【0063】
(処理フロー)
図12は、基地局1の制御手順を例示するフローチャートである。基地局1のプロセッサ101は、メモリ102に実行可能に展開されたコンピュータプログラムにより以下の処理を実行する。なお、以下の説明では、端末2に設定可能な最大送信電力をPmax,UEとする。また、中継局2Rの候補を選択する基準となる伝搬損失閾値をLth,0とし、被中継局2Sの候補を選択する基準となる伝搬損失閾値をLth,1とする。ここで、Lth,0は、Lth,1より小さな値である。さらに、中継局2Rの候補と被中継局2Sの候補の組み合わせから、中継局2Rと被中継局2Sの組を決定するための中継利得閾値をΔとする。また、非直交多元接続において、基地局1が各端末2から受信する受信電力間に設定される電力差をΔPとする。
【0064】
本実施形態の処理では、基地局1は、各端末2から送信されたレファレンス信号から、各端末2から基地局1に至る経路の伝搬損失Lkを測定する(S1)。ここで、kは、端
末2の端末IDであり、1乃至Kの範囲の値とする。ただし、基地局1は、基地局1から送信されたレファレンス信号を基に、各端末2-kにおいて伝搬損失Lkを測定させ、その結果を各端末2-kから取得してもよい。
【0065】
次に、基地局1は、中継局2Rの候補および被中継局2Sの候補の選定、中継局2Rの候補および被中継局2Sの候補間の伝搬損失L
r,sの測定、中継局2R及び被中継局2Sの選定処理を実行する(S2)。S2の詳細は、別途、
図13にしたがって説明する。
そして、基地局1は、各端末2-k(それぞれの端末IDがk=1~K)の送信電力Pkを設定する(S3)。
【0066】
図13は、中継局2Rの候補および被中継局2Sの候補の選定、中継局2Rの候補および被中継局2Sの候補間の伝搬損失L
r,sの測定、中継局2R及び被中継局2Sの選定処理を例示する図である。
【0067】
この処理では、まず、基地局1は、端末2-k(端末ID:k)から基地局1までの伝搬損失Lkが伝搬損失の閾値Lth,0より低ければ、端末2-kを中継局2Rの候補に設定する。また、この伝搬損失Lkが閾値Lth,1より大きければ、端末2-kを被中継局2Sの候補として選定する(S21)。S21の処理は、基地局1の制御部が複数の端末2それぞれとの間の伝搬路の伝搬損失を取得し、伝搬路の伝搬損失が第1の基準値未満の端末2を中継端末の候補とすることの一例ということができる。また、S21の処理は、基地局1が伝搬路の伝搬損失が第1の基準値より大きい第2の基準値以上の端末2を被中継端末の候補とすることの一例ということもできる。また、閾値Lth,0は、第1の基準値の一例であり、閾値Lth,1は第2の基準値の一例である。
【0068】
次に、基地局1は、中継局候補の端末2-r(端末ID:r)及び被中継局候補の端末2-s(端末ID:s)に対して、端末2-sから端末2-rを中継局2Rとして基地局1に至る経路の伝搬損失Lr、sの測定を指示する(S22)。そして、基地局1は、中継局候補である端末2-rを中継局2Rとして介した伝搬損失Lr、sが、端末2-rを介さない伝搬損失Ls対して中継利得閾値ΔdB以上改善(すなわち低下)するか否かを判定する。そして、伝搬損失Lr、sが伝搬損失Ls対して中継利得閾値ΔdB以上改善する場合、基地局1は、端末2-rを中継局2Rとし、端末2-sを被中継局2Sとして選定する(S23)。ただし、複数の端末2-rがこの基準(中継局2Rを介した伝搬損失Lr、sが中継局2Rを介しない伝搬損失Ls対して中継利得閾値ΔdB以上改善)を満たす場合、基地局1は、伝搬損失の軽減効果が大きい端末2-rを中継局2Rとして選択する。S23の処理は、基地局1の制御部が中継端末の候補と被中継端末の候補から中継端末と、被中継端末と、を選択することの一例ということができる。また、S23の処理では、基地局1の制御部が被中継端末の候補が中継端末の候補に中継されて基地局1と通信するときの第1の伝搬損失を計算することの一例である。また、S23の処理は、基地局1の制御部が被中継端末の候補が中継端末の候補によって中継されないで基地局1と通信するときの第2の伝搬損失を計算することの一例でもある。そして、S23の処理では、基地局1の制御部は、第1の伝搬損失が第2の伝搬損失よりも第3の基準値以上改善する場合に、被中継端末の候補と中継端末の候補とを被中継端末と中継端末に選択する。また、中継利得閾値ΔdBは、第3の基準値の一例である。
【0069】
次に、基地局1は、中継局rの伝搬損失L
rに要求電力差ΔPを加算した値に被中継局2Sの伝搬損失L
sを更新する。ただし、被中継局が複数ある場合、被中継局2Sと中継局2Rとの間の伝搬損失L
r,sの昇順にΔPの整数倍を付与する(S24)。すなわち、基地局1は、被中継局2Sから基地局1までの経路の伝搬損失として、実際の測定値ではなく、基地局1が被中継局2Sの昇順にΔPずつ差をつけて算出した値を設定する。そして、基地局1は、設定した値を
図18の各端末2(端末局2N、中継局2Rおよび被中継局2Sを含む)に対する送信電力設定処理で使用する。基地局1は、被中継局2Sから基地局1までの経路の伝搬損失としてこのような設定値を用いることで、すべての端末2(端末局2N、中継局2Rおよび被中継局2Sを含む)に対して、同一の手順で送信電力の設定を実行できる。
【0070】
図14は、中継局2Rの候補と被中継局2Sの候補を選定する処理(
図13のS21乃至S23)の例である。
図14の例では、中継局2Rが1局、被端末局2Sが2局選定さ
れる。
図14の各グラフで横軸は端末2の端末IDであり、縦軸は、伝搬損失の測定値の事例である。
図14のグラフG11は、各端末2-k(端末ID:k=1乃至5)から基地局1に至る経路の伝搬損失L
k(k=1乃至5)を例示する。
【0071】
グラフG11のように、端末2-1、2-2、2-3の伝搬損失L1、L2、L3は、
伝搬損失閾値Lth,0未満である。したがって、基地局1は、端末2-1、2-2、2
-3を中継局2Rの候補とする。一方、端末2-4、2-5の伝搬損失L4、L5は、伝搬損失閾値Lth,1を超える値である。したがって、基地局1は、端末2-4、2-5を被中継局2Sの候補とする。
【0072】
グラフG12は、端末2-1を中継局2Rとして端末2-4、2-5の上り回線のデー
タを中継した場合の伝搬損失Lr=1,sを例示する。なお、以下では、伝搬損失Lr=i,s=jを単に、Li,jとも記載する。グラフG11とG12との比較から、端末2-4からの上り回線のデータを端末2-1によって中継した場合の伝搬損失L1,4は、中継なしの場合の伝搬損失L4よりも悪化する。また、端末2-5からの上り回線を端末2-1によって中継した場合の伝搬損失L1,5は、中継なしの場合の伝搬損失L5より
も低下する。しかし、その低下の程度、すなわち、改善の程度は、中継利得閾値ΔdBには達しない。そこで、基地局1は、端末2-1を中継局2Rの候補とし、端末2-4、2-5を被中継局2Sの候補とする組み合わせを採用しない。
【0073】
グラフG13は、端末2-2を中継局2Rとして端末2-4、2-5の上り回線のデータを中継した場合の伝搬損失Lr=2,sを例示する。グラフG11とG13との比較から、端末2-4からの上り回線のデータを端末2-2によって中継した場合の伝搬損失L2,4は、中継なしの場合の伝搬損失L4よりも中継利得閾値ΔdB以上低下し、改善する。一方、端末2-5からの上り回線のデータを端末2-2によって中継した場合の伝搬損失L2,5は、中継なしの場合の伝搬損失L5とほぼ変わらない。つまり、その低下の程度、すなわち、改善の程度は、中継利得閾値ΔdBには達しない。そこで、基地局1は、端末2-2を中継局2Rの候補とし、端末2-4を被中継局2Sの候補とする組み合わせだけを採用する。一方、基地局1は、端末2-2を中継局2Rの候補とし、端末2-5を被中継局2Sの候補とする組み合わせを採用しない。
【0074】
グラフG14は、端末2-3を中継局2Rとして端末2-4、2-5の上り回線を中継した場合の伝搬損失Lr=3,sを例示する。グラフG11とG14との比較から、端末2-4からの上り回線を端末2-3によって中継した場合の伝搬損失L3,4は、中継なしの場合の伝搬損失L4よりも中継利得閾値ΔdB以上低下し、改善する。また、端末2-5からの上り回線を端末2-3によって中継した場合の伝搬損失L3,5も、中継なしの場合の伝搬損失L5よりも中継利得閾値ΔdB以上低下し、改善する。そこで、基地局1は、端末2-3を中継局2Rの候補とし、端末2-4および端末2-5を被中継局2Sの候補とする組み合わせの両方を採用する。
【0075】
ここでは、伝搬損失L2,4と伝搬損失L3,4の2つが、中継利得閾値ΔdB以上大きい軽減効果を有し、伝搬損失の軽減効果の条件を充足する。伝搬損失L3,4の方が伝搬損失L2,4よりも伝搬損失の軽減効果が大きい。そこで、本実施形態では、例えば、基地局1は、伝搬損失L3,4の組、すなわち、端末2-3を中継局2Rとし、端末2-4を被中継局2Sとして選択する。この場合には、中継局が1局(端末2-4)であり、1つの中継局2Rによって被中継局Sが2局(端末2-4、2-5)中継される構成となる。
【0076】
図15は、中継局2Rと被中継局2Sとの間に伝搬損失を設定する処理(
図13のS24)の第1の例である。第1の例としては、中継局2Rが1局、被中継局2Sが2局選択
される場合である。この場合には、基地局1は、中継局2Rの伝搬損失L
rに要求電力差ΔPを加算した値を1つめの被中継局2Sである端末2-4に設定する。さらに、2つ目の被中継局2Sである端末2-5があるので、基地局1は、被中継局・中継局間伝搬損失L
r,4、L
r,5の昇順にΔPの整数倍を付与していく。したがって、L
r,4=L
3+ΔP、L
r,5=L
3+2ΔPとなる。ここで、要求電力差ΔPは、第4の基準値の一例である。また、
図15は、中継端末が被中継端末からの上り通信データを中継するときに、中継端末で発生した上り通信データを送信するときの送信電力より少なくとも第4の基準値だけ小さい送信電力で被中継端末からの上り通信データを基地局に送信させることの一例である。
【0077】
図16は、中継局2Rと被中継局2Sとの間の伝搬損失を設定する処理(
図13のS24)の第2の例である。第2の例としては、中継局2Rが2局、被中継局2Sが各中継局2Rに対してそれぞれ1局選択される場合である。これは、例えば、
図14で、伝搬損失L
2,4の方が、L
3,4よりも低い場合に相当する。この場合には、基地局1は、1つ目の中継局2Rである端末2-2の伝搬損失L
2に要求電力差ΔPを加算した値を被中継局2Sである端末2-4に設定する。同様に、基地局1は、2つ目の中継局2Rである端末2-3の伝搬損失L
3に要求電力差ΔPを加算した値を被中継局2Sである端末2-5に設定する。したがって、L
2,4=L
2+ΔP、L
3,5=L
3+ΔPとなる。
図16も、中継端末が被中継端末からの上り通信データを中継するときに、中継端末で発生した上り通信データを送信するときの送信電力より少なくとも第4の基準値だけ小さい送信電力で被中継端末からの上り通信データを基地局に送信させることの一例である。
【0078】
図17は、基地局1が端末2-kに対して送信電力Pkを設定する処理(
図12のS3)のうち、被中継局2Sから中継局2Rへ送信での送信電力Pkの設定を例示する図である。基地局1は、中継局2Rの数Krだけ処理を繰り返し実行する(S37)。
図17で中継局2Rを示すインデックスはiである。
【0079】
この処理では、基地局1は、現在処理中の中継局2R(インデックスi)が複数の被中継局2Sからの同時送信を受信するか否かを判定する。同時送信とは、非直交多元接続による送信をいい、複数の被中継局2Sが同一のタイムスロットで上り回線のデータを送信する場合をいう。
【0080】
S31の判定が同時送信の場合、基地局1は、複数の被中継局2S(インデックスj)のうち、1つ目の被中継局2S(インデックスj=1)に対して、端末2の最大送信電力をPmax,UEに設定する(S34)。すなわち、Pr(i),s(i,j)=Pmax,UEとする。また、基地局1は、2つ目以降の被中継局2S(インデックスj)に対して、1つ前の被中継局2S(インデックスj-1)の送信電力から、各被中継局2Sから中継局2Rまでの伝搬損失差を調整した上で、要求電力差ΔPを減算した値を設定する(S35)。すなわち、Pr(i),s(i,j)=Pr(i),s(i,j-1)-Lr(i),s(i,j-1)+Lr(i),s(i,j)-ΔPに設定する。ここで、Pr(i),s(i,j-1)は1つ前に設定した被中継局2Sの送信電力である。-Lr(i),s(i,j-1)+Lr(i),s(i,j)は、1つ前に設定した被中継局2Sの送信電力で用いた伝搬損失Lr(i)),s(i,j-1)を一旦キャンセルし、現在処理中の被中継局2S(インデックスj)から中継局までの伝搬損失Lr(i),s(i,j)を送信電力Pr(i),s(i,j)に加算するための項である。この処理によって、中継局2S(インデックスi)は、伝搬損失Lr(i),s(i,j)が削減された受信電力で受信するので、各被中継局2S(インデックスj)からの受信電力には、ΔPの差が生じることになる。なお、S35では、min[]の演算により、計算した送信電力
Pr(i),s(i,j)が、最大送信電力をPmax,UEを超えないように設定される。
【0081】
基地局1は、S32からS35までの処理を被中継局の数Kr,sだけ繰り返す(S3
6)。ここで、Kr,sは、現在処理中の中継局2Rが中継する被中継局2Sの数である
。また、S31の判定が個別の場合、すなわち、1つの中継局2Rが同時には1つの被中継局2Sだけに接続して上り回線のデータを受信する。この場合(S31でN)、基地局1は、被中継局2Sの送信電力を最大送信電力Pmax,UEに設定する(S38)。以上の処理を基地局1は、中継局2Rの数Krだけ繰返し(S37)、処理を終了する。
【0082】
図18は、基地局1が端末2-kに対して送信電力Pkを設定する処理(
図12のS3)のうち、各端末2-kから基地局1への送信電力Pkの設定を例示する図である。ただし、この処理のうち、被中継局2Sについては、上り送信回線のデータが中継局2Rまで達していると想定すればよい。したがって、被中継局2Sの上り回線データについては、中継局2Rにおいて、中継局2R自身の上り回線のデータに重畳される被中継局2Sの上り回線のデータの送信電力が設定される。
【0083】
この処理では、基地局1は、1つ目の端末2-1に対して(S3Aでk=1の場合)、最大送信電力Pmax,UEを設定する(S3B)。また、基地局1は、2つ目以降の端末2-kに対しては、当該端末2-kが被中継局2Sであるか否かを判定する(S3C)。当該端末2-kが被中継局2Sでない場合(S3CでN)、基地局1は、1つ前の端末2-k-1の送信電力から、各端末2-kから基地局1までの伝搬損失差を調整した上で、要求電力差ΔPを減算した値を設定する(S3D)。すなわち、Pk=Pk-1- L
k-1 + Lk-ΔPに設定する。ここで、Pk-1は1つ前に設定した端末2-k-1の送信電力である。- Lk-1 + Lkは、1つ前に設定した端末2-k-1の送信電
力で用いた伝搬損失Lk-1を一旦キャンセルし、現在処理中の端末2-kから基地局1までの伝搬損失Lkを送信電力Pkに加算するための項である。この処理によって、基地局1は、伝搬損失Lkが削減された受信電力で受信するので、各端末2-kからの受信電力には、ΔPの差が生じることになる。
【0084】
一方、S3Cの判定で、当該端末2-kが被中継局2Sである場合(S3CでY)、基地局1は、1つ前の端末2-k-1の送信電力から、各端末2-kから基地局1までの伝搬損失差を調整した値を設定する(S3E)。この場合には、S3Dのように、要求電力差ΔPを減算することはしない。すなわち、Pk=Pk-1- Lk-1 + Lkに設定
する。上述のように、- Lk-1 + Lkは、1つ前に設定した端末2-k-1の送信
電力で用いた伝搬損失Lk-1を一旦キャンセルし、現在処理中の端末2-kから基地局1までの伝搬損失Lkを送信電力Pkに加算するための項である。
【0085】
ただし、被中継局2Sに対しては、
図13のS24の処理により、基地局1は、被中継局2Sの伝搬損失Lsとして、中継局2Rの伝搬損失L
rに要求電力差ΔPを加算した値を設定している。また、被中継局2Sが複数ある場合、基地局1は、被中継局2Sから中継局2Rを介した基地局1との間の伝搬損失L
sには、ΔPの整数倍(被中継局sと中継局rとの間の伝搬損失L
r,sの昇順)を付与している。しかしながら、実際には、被中継局2Sの上り回線のデータが中継局2Rで中継される場合、中継されるデータの伝搬損失L
sは、中継局2Rと基地局1との間の伝搬損失によって定まる。したがって、基地局1は、S3Eにしたがって、1つ前の端末2-k-1の送信電力から、各端末2-kから基地局1までの伝搬損失差を調整した値を設定する。これによって中継局2Rで中継された基地局1での受信電力は、中継局2Sと最初の被中継局との間、および被中継局2S間で、ΔPの送信電力差が生じることなる。その結果、中継局2Rは、ΔPの送信電力差で被中継局2Sからの上り回線の送信データを中継する。すなわち、S3Eの処理は、中継端末が被中継端末からの上り通信データを中継するときに、中継端末で発生した上り通信データを送信するときの送信電力より少なくとも第4の基準値だけ小さい送信電力で被中
継端末からの上り通信データを基地局1に送信することの一例である。また、S3Eの処理は、基地局1の制御部が第4の基準値だけ小さい送信電力を中継端末に指示することの一例でもある。基地局1は、すべての端末2の数Kだけ、S3AからS3Eの処理を繰り返す(S3F)。
【0086】
なお、
図18の処理において、中継局2Rで中継される被中継局2S(複数の場合も同様)の伝搬損失としては、被中継局2Sに依らず、中継局2Rの伝搬損失L
r(固定値)を用いてもよい。すなわち、基地局1は、中継局2Rに対して、基地局1において受信電力P
rで受信できるように送信電力をP
r+L
rを設定した場合、中継局2Rで中継される1つ目の被中継局2Sに対しては、送信電力P
r+L
r-ΔPを設定すればよい。これにより、基地局1は、受信電力P
r-ΔPで受信できる。同様に、基地局1は、この中継局2Sにおける2つ目の被中継局2Sに対しては、受信電力P
r-2ΔPで基地局1において受信できるように送信電力P
r+L
r-2ΔPを設定すればよい。一般に、基地局1は、この中継局2Sにおけるs番目の被中継局2Sに対しては、受信電力Pr-sΔPで基地局1において受信できるように送信電力P
r+L
r-sΔPを設定すればよい。ここで、L
rは、中継局2Rから基地局1までの経路の伝搬損失である。
【0087】
基地局1が中継局2Rで中継される被中継局2Sの伝搬損失としては、被中継局2Sに依らず、中継局2Rの伝搬損失L
r(固定値)を用いる場合、
図18において、S3Cの判定およびS3Eの処理は不要となる。この場合、基地局1は、S3Dの処理によって、中継を実施ない通常の端末2、中継局2Rおよび被中継局2Sを含むすべての端末2に対して、送信電力を設定できる。
【0088】
すなわち、被中継局2Sとなる端末2-kからのデータが中継局2Rで中継される場合、伝搬損失L
kは、中継局2Rから基地局1までの伝搬路に対応し、被中継局2Sによらず同一の値である。すなわち、中継局2Rで中継される被中継局2Sについては、中継局2Rから基地局1までの伝搬損失を用いることで、他の端末2と同様に、
図18のS3Dの処理により、送信電力Pkを設定できる。
【0089】
図19は、中継局2Rにおける送信電力の更新方法を例示する図である。中継局2Rが自局のデータ送信を終えたときに、まだ、被中継局2Sのデータ送信が未完了で残っている場合、
図19の処理が実行される。この場合、基地局1は中継局2Rに送信電力を指示する。中継局2Rは基地局1からの指示にしたがって被中継局2Sのうち最も送信電力が高いものを中継局2Sの送信電力へ更新する。すなわち、中継局2Rは当該中継局2Sから基地局1への送信電力を最大電力へ更新する。さらに、送信未完了の被中継局2Sが他にある場合、その他の被中継局2Sの送信電力についても送信電力をそれぞれ上げるよう更新する。
【0090】
図19でグラフG14は、中継局2Rが自局のデータ送信を終える前の基地局1の受信電力を例示する図である。理想的には、基地局1においては、中継局2Rである端末2-3、被中継局2Sである端末2-4、2-5において、送信電力ΔPの電力差で受信される。例えば、端末2-3、端末2-4、2-5の基地局1での受信電力をP3、P4、P5とすると、P3-P4=P4-P5=ΔPとなる。
【0091】
図19でグラフG5は、中継局2Rが自局のデータ送信を終えた後の基地局1の受信電力を例示する図である。この場合、基地局1は、中継局2Rに対して、端末2-4、2-5の送信電力をそれぞれΔPだけ増加させるように指示する。すなわち、基地局1での端末2-4、2-5からの受信電力がそれぞれP4=P3、P5=P4となるように、中継局2Rは、被中継局2Sである端末2-4、2-5からの上り回線のデータの送信電力を増加させる。
【0092】
図20は、中継局2Rで自局の上り回線のデータ送信が終了した場合の基地局1による中継局2Rに対する送信電力設定処理を例示する図である。ここでは、例えば、中継局2Rでは、連送回数Nが初期設定されることを想定する。しかしながら、初期設定された連送回数Nが実行される前に、中継局2Rで自局の上り回線のデータ送信が終了する場合がある。
図20は、そのような場合における基地局1による中継局2Rに対する送信電力の設定処理を例示する。今、
図20で、複数の中継局2Rのそれぞれを中継局2R(i)で表す。iは中継局数のインデックスであり、1乃至中継局数の値である。また、中継局2R(i)で中継される複数の被中継局2Sのそれぞれを被中継局2S(i,j)で表す。jは被中継局のインデックスであり、1乃至被中継局数Kr,sの値である。
【0093】
この処理では、基地局1は、中継局2R(i)がすべての被中継局S(i,:)の上り回線のデータ送信が終了したか否かを判定する(S41)。ここで、コロン(:)は、すべての被中継局2Sを示す。中継局2R(i)がすべての被中継局S(i,:)の上り回線のデータ送信が終了した場合には(S41でY)、基地局1は、
図21の処理を終了する。
【0094】
一方、すべての被中継局S(i,:)の上り回線のデータ送信が終了していない場合(S41でN)、基地局1は、被中継局2S(i,j)のうち、最も上り回線の送信電力が大きい被中継局2S(i,1)を特定する。そして、基地局1は、特定した被中継局2S(i,1)の上り回線の送信電力を中継局2R(i)の上り回線の送信電力P
r(i)に設定する(S42、S43、S44)。また、基地局1は、上り回線の送信電力が2番目以降の被中継局2S(i,j)の上り回線の送信電力P
s(i,j)をそれぞれ1段階上の送信電力のP
s(i,j-1)に増加させる(S45)。基地局1は、S43、S44の処理を中継局2R(i)が中継する被中継局数Kr、sだけ繰返し(S46)、1段階ずつ、各被中継局2S(i,j)の送信電力を増加させる。なお、その後、いずれかの被中継局2S(i,j)の上り回線のデータ送信が終了した場合には、基地局1は、送信が終了した被中継局2S(i,j)よりも送信電力が下位の被中継局2S(i,j+1)以下の送信電力を1段階ずつ増加させればよい。
図20の処理は、継端末が、被中継端末の上り通信データの中継を完了する前に、中継端末で発生した上り通信データの送信が完了した場合の処理の一例である。そして、S45の処理は、中継端末が被中継端末の上り通信データを送信するときの送信電力を増加させることの一例である。S45の処理は、基地局1の制御部が被中継端末の上り通信データを送信するときの送信電力を増加させることの一例でもある。
【0095】
このような処理によって、中継局2Rが自局の上り回線のデータ送信が完了すると、基地局1は、被中継局2Sの送信電力を増加させ、伝送誤り率を低下させ、効率よくデータを中継できる。また、基地局1は、いずれの被中継局2S(i,j)の上り回線のデータ送信が終了した場合も、下位の被中継局2S(i,j+1)以下の送信電力を増加させ、伝送誤り率を低下させ、効率よくデータを中継できる。なお、初期設定された連送回数Nの実行前に、中継局2Rでの自局の上り回線のデータ送信が終了した場合には、
図20処理に代えて、基地局1は、中継局2Rに対して、そのまま、当初の連送回数Nだけのデータの送信を継続させてもよい。
【0096】
図21は、中継局2R(i)が中継するいずれかの被中継局S(i,j)の上り回線のデータ送信が終了した場合の基地局1の処理を例示する図である。この処理では、基地局1は、データ送信が終了した被中継局S(i,j)の次の被中継局S(i,j+1)が存在するか否かを判定する。すなわち、基地局1は、データ送信が終了した被中継局S(i,j)がKr、s番目の最後の被中継局2Sであるか否かを判定する(S47、S48)。そして、次の被中継局S(i,j+1)が存在する場合(S48でN)、基地局1は下
位の被中継局2S(i,j+1)以下の送信電力を1段階ずつ増加させる(S49)。
図21は、中継端末で中継される複数の被中継端末のうちのいずれかの被中継端末の上り通信データの中継が完了した場合の処理の一例である。そして、S49の処理は、中継端末は、中継が完了した被中継端末よりも低い送信電力が設定された被中継端末の上り通信データの中継における送信電力を増加させることの一例である。また、S49の処理は、基地局1の制御部が中継端末に、中継が完了した被中継端末よりも低い送信電力が設定された被中継端末の上り通信データの中継における送信電力を増加させることの一例でもある。そして、次の被中継局S(i,j+1)が存在しない場合(S48でY)、基地局1は処理を終了する。
【0097】
(実施形態の効果)
以上述べたように、本実施形態によれば、複数の端末2が基地局1に非直交多元接続される通信システム100において、中継局2Rとして動作する端末2と、被中継局2Sとして動作する端末2が設けられる。そして、中継局2Rは、中継局2Rで発生した通信要求に基づく上り通信データに被中継局2Sからの上り通信データを重畳した重畳データを基地局1に送信する。このため、基地局1が被中継局2Sから直接受信する受信信号が、低いSNRしか有していない場合であっても、基地局1による効率的な受信が可能になる。すなわち、被中継局2Sからの受信信号が中継局2Rで中継されることで、基地局1は、中継局2Rよりも所定値ΔPだけ低い程度の受信電力で、被中継局2Sからの信号の受信が可能となる。その結果、実効的に、被中継局2Sからの受信信号のSNRを高め、伝送誤り率を改善できる。したがって、本通信システム100では、例えば、無線ネットワークRNのセル端部またはトンネル内など、パスロス(伝搬損失)が大きな環境にある被中継局2Sであっても、効率良く、基地局1に上り回線のデータを送信できる。
【0098】
本実施形態では、基地局1がこのような中継局2Rと、被中継局2Sを選択する。すなわち、本実施形態では、端末2からの受信電力の状況を把握できる基地局1が適正に中継局2Rと、被中継局2Sを選択できる。
【0099】
また、本実施形態では、基地局1は、端末2-k(端末ID:k)から基地局1までの伝搬損失Lkが伝搬損失の閾値Lth,0より低ければ、端末2-k(ID:k)を中継局2Rの候補に設定する。また、この伝搬損失Lkが閾値Lth,1より大きければ、端末2-k(ID:k)を被中継局2Sの候補として選定する。したがって、基地局1は、伝搬路の伝搬損失Lkから望ましい、中継局2Rの候補と被中継局2Sの候補を選択できる。
【0100】
また、基地局1は、中継局2Rの候補である端末2-rを介した伝搬損失Lr、sが、中継局を介さない伝搬損失Ls対して中継利得閾値ΔdB以上大きいか否かを判定する。そして、伝搬損失Lr、sが伝搬損失Ls対して中継利得閾値ΔdB以上大きい場合、基地局1は、端末2-rを中継局2Rとし、端末2-sを被中継局2Sとして選定する。したがって、基地局1は、中継することで、伝搬損失が改善する中継局2Rの候補と被中継局2Sの候補を特定し、中継局2Rと、被中継局2Sを選択できる。
【0101】
また、本実施形態では、中継局2Rは複数の被中継局2Sと非直交多元接続可能である。すなわち、本通信システム100では、中継局2Rは複数の被中継局2Sに対して、同時通信で中継できる。
【0102】
また、本実施形態では、基地局1は、中継局2Rに対して、基地局1において受信電力Prで受信できるように送信電力をPr+Lrを設定した場合、1つ目の被中継局2Sに対しては、送信電力Pr+Lr-ΔPを設定する。これにより、基地局1は、受信電力Pr-ΔPで基地局1において受信できる。一般に、基地局1は、この中継局2Sにおける
s番目の被中継局2Sに対しては、受信電力Pr-sΔPで基地局1において受信できるように送信電力Pr+Lr-sΔPを設定できる。すなわち、基地局1は、中継局2Rが被中継局2Sからの上り通信データを中継するときの電力は中継端末で発生した上り通信データを送信するときの電力より第4の基準値ΔPだけ小さい値で指示する。このため、基地局1は、中継局2Rの自局から受信電力と、中継局2Rで中継される被中継局2Sからの受信電力に第4の基準値ΔPだけ電力差を設け、非直交多元接続での中継を可能とする。さらに、この中継局2Sで複数の被中継局2Sからの上り回線の電力が中継される場合も、段階的に、第4の基準値ΔPだけ電力差を設け、非直交多元接続での中継を可能とする。
【0103】
また、中継局2Rが自局の上り回線のデータ送信が終了すると、基地局1は、中継局2Rに被中継局2Sのうち、最も上り回線の送信電力が大きい被中継局2Sの上り回線の送信電力を中継局2Rの上り回線の送信電力Prに設定させる。したがって、本通信システム100では、中継局2Rは、自局の上り回線のデータ送信が完了すると、被中継局2Sの送信電力を増加させ、伝送誤り率を低下させ、効率よくデータを中継できる。
【0104】
また、中継局2Rがいずれかの被中継局2S(i,j)の上り回線のデータ送信が終了した場合も、基地局1は、上記と同様に指示する。すなわち、基地局1は、中継局2S(i)に、送信が終了した被中継局2S(i,j)よりも送信電力が下位の被中継局2S(i,j+1)以下の送信電力を1段階ずつ増加するように指示すればよい。したがって、本通信システム100では、いずれかの被中継局2S(i,j)の上り回線のデータ送信が完了すると、それよりも送信電力が低く設定されて中継されている被中継局2S(i,j+1)の上り回線の中継における送信電力が増加する。これにより、本通信システム100は、被中継局2S(i,j+1)の伝送誤り率を低下させ、効率よくデータを中継できる。
【0105】
(変形例)
図13では、基地局1は、中継局候補である端末2-rを中継局2Sとして介した伝搬損失L
r、sが、端末2-rを介さない伝搬損失L
s対して中継利得閾値ΔdB以上大きいか否かを判定する。このような判断に代えて、基地局1が端末2の位置情報を収集できる場合、被中継距離Dを設定してもよい。すなわち、基地局1は、被中継距離Dを設定することで、中継局候補である端末2-rの位置から半径D以内に被中継局候補2-sがある場合、これによって中継局2Rと被中継局2Sを選定するようにすればよい。
【0106】
<第2実施形態>
以下、
図22、
図23を参照して、第2実施形態の通信システム100を説明する。上記第1の実施の形態では、被中継局2Sが基地局1のセル内に存在する非直交多元接続の通信システム100において、中継局2Rが被中継局2Sの上り回線データを中継する処理を例示した。本実施形態では、基地局1のセル内に存在しない端末2を被中継局2Sとして、中継局2Rが中継する通信システム100を説明する。少なくとも一部の被中継局2Sが基地局1のセル内に存在しないこと以外の第2の実施形態の構成および作用は第1の実施形態と同様である。そこで、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、本実施形態の通信システム100の処理は、上記第1の実施形態の処理と競合するものではなく、上記第1の実施形態の処理と組み合わせて実行できる。
【0107】
図22は、第2の実施形態における基地局1と端末2との間の上り回線と下り回線のデータフロー例示する図である。
図22は、被中継局2Sが基地局1のセル内に存在しないので、上りデータチャネルの他、上り制御チャネルと、下り制御チャネルによる通信も、中継局2Rにより中継される。
【0108】
したがって、本実施形態においても、第1の実施形態と同様、周波数と時間で定義される物理リソースは、重複して使用されることになる。基地局1は、少なくとも1つのタイムスロットを中継局2Rから被中継局2Sへの下り制御チャネルに割り当てる。また、基地局1は、少なくとも1つのタイムスロットを被中継局2Sから中継局2Rへの上り制御チャネルに割り当てる。
【0109】
図23は、被中継局2Sの探索方法を例示する図である。この処理では、まず、基地局1は各端末2に対して、中継局2Rとして動作することを希望する端末2を募集するメッセージを送信する(S51)。すると、中継局2Rとして動作することを希望する端末2は基地局1へ応答を送信する。端末2がすでに中継対象の被中継局2Sの端末IDを持っている場合にはその端末IDを合わせて通知する(S52)。なお、端末2は、中継対象の被中継局2Sの端末IDを他の通信方式等を介して取得すればよい。ここで、他の通信方式は、例えば、複数の端末2の間のローカルな通信方式である。ローカルな通信方式は、例えば、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BL
E)、5Gのサイドリンク通信等が例示される。
中継局2Rの候補となる端末2が被中継局2Sの探索をこれから行う場合には、基地局1は中継局2Rの候補となる端末2に対して、セル外に位置する端末2の探索に用いる周波数とタイムスロットを指示する(S53)。中継局2Rの候補となる端末2は被中継局2Sとなるセル外の端末2を探索するため、指定された周波数・時間で被中継局2Sを募集する旨の報知信号を送信する(S54)。
【0110】
被中継局2Sとなることを希望する端末2-sは、中継局2Rの候補となる端末2-rからの報知信号に対する応答を自身の端末ID(被中継局IDという)とともに送信する(S55)。被中継局2Sとなることを希望する端末2-sの端末IDを得た中継局2Rの候補端末2-rは、被中継局IDとその受信信号強度を基地局1へ回答する(S56)。
【0111】
基地局1は被中継局IDを登録する。被中継局2Sの候補が複数の中継局2Rの候補端末2-r間で複数重複する場合には、基地局1は受信信号強度がより高い中継局2Rの候補端末2-rのみを残す(S57)。以降、基地局1は被中継局2Sに対する制御情報を送る場合、該当する中継局2Rに対して中継制御CH用の周波数・スロットを制御情報と併せて送信する(S58)。
【0112】
以上の処理によって、中継局2Rは、セル外の端末2に対して、下り制御チャネル、上り制御チャネルおよび上りデータチャネルを中継できる。
図22の構成、
図23の処理は、被中継端末が、基地局1が提供するセル外に位置する端末2を含むことの一例である。
図22の構成、
図23の処理は、基地局1の制御部が、中継端末に、基地局が提供するセル外に位置する端末を探索させ、探索できた端末からの通信データを中継させることの一例でもある。
【0113】
<その他の実施形態>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0114】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 基地局
2 端末
2N 端末局
2R、2RA、2RB 中継局
2S 被中継局
11 プロセッサ
12 メモリ
15 無線処理装置
11、21、21A RS処理部
12、22、22A DS処理部
13、23、23A 受信処理部