(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051475
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/337 20060101AFI20230404BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20230404BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230404BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20230404BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H01L29/80 C
H01L29/80 H
H01L21/28 301B
H01L29/44 Y
H01L29/44 S
H01L29/58 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162182
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲
【テーマコード(参考)】
4M104
5F102
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB02
4M104BB14
4M104BB30
4M104CC01
4M104EE06
4M104EE16
4M104EE17
4M104FF10
4M104FF13
4M104FF17
4M104FF18
5F102FA01
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD04
5F102GL04
5F102GM04
5F102GQ01
5F102GS02
5F102GS04
5F102GT03
5F102GV05
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゲートリーク、コラプス現象のばらつきを抑制する高電子移動度トランジスタ(HEMT)を提供する。
【解決手段】HEMT100は、GaNからなる電子走行層1上に、AlGaNからなる電子供給層2を、電子供給層2上にGaNキャップ層3を、GaNキャップ層3上に酸化膜4を備え、ソース電極とドレイン電極に挟まれるようにゲート電極6が設けられている。p型金属酸化物半導体膜5の部分からドレイン電極に向かって酸化膜の厚みが、一部分において薄くなるように、酸化膜の凹部7が設けられている。酸化膜は、電子供給層と接続されたp型金属酸化物半導体膜の部分Aから徐々に厚みが増し、ドレイン電極側では酸化膜の厚みは略一定となっている。凹部の底面は、略一定の厚みの部分よりも薄くなっており、酸化膜の厚みは徐々に厚みが増している。p型金属酸化物半導体膜上のゲート電極は、凹部を越えて更にドレイン電極側まで延伸している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子走行層上の電子供給層と、
前記電子供給層上の絶縁膜と、
ドレイン電極とソース電極とその間のゲート電極とを備える構造の高電子移動度トランジスタにおいて、
前記絶縁膜は
前記ドレイン電極に向かって徐々に厚くなる第1の部分と、
前記第1の部分より前記ドレイン電極側であって、上面に凹部を含む第2の部分と、
前記第2の部分より前記ドレイン電極側であって、前記ドレイン電極に向かって徐々に厚くなる第3の部分と、を備え、
前記ゲート電極は第1の部分よりも前記ソース電極側から、前記第1の部分、第2の部分、第3の部分に至るまで延伸し、前記凹部上で落ち込んでいることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極と前記前記電子供給層との間に挟まれたp型金属酸化物半導体層を備え、
前記p型金属酸化物半導体層は前記第1の部分並びに前記第2の部分上にあって、
前記p型金属酸化物半導体層の前記ドレイン電極側の端は前記凹部上まで延びていないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記凹部下の前記電子供給層の表面における電界強度は、前記第1の部分の前記ソース電極側の端の前記電子供給層の表面における電界強度よりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の部分において、前記凹部より前記ソース電極側に前記絶縁膜の厚みが一定の部分が設けられ、そこから前記ドレイン電極側に向かって前記凹部へと続いていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールドプレート効果を用い、緩やかに電界を緩和した高電子移動度トランジスタ(HEMT)に関する。
【背景技術】
【0002】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)においてはリーク電流を減らし高い耐圧を得るため、フィールドプレートを有効に活用し、電界を緩和する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、電子走行層と、電子供給層と、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、シリコン酸化物から成る絶縁膜と、p型金属酸化物半導体膜を有するヘテロ接合型電界効果半導体装置が記載されている。p型金属酸化物半導体膜とその上のゲート電極は絶縁膜の無い電子供給層上、並びに、そこから絶縁膜上にも延びている。絶縁膜上のp型金属酸化物半導体膜とゲート電極はフィールドプレートを構成し、ゲート電極並びにその近傍の電界集中を緩和している。
しかしながら、特許文献1の半導体装置では、絶縁膜の無い電子供給層上から絶縁膜上に持ち上げられるp型金属酸化物半導体膜のコーナー(
図1のA)において電界強度が最大となっており、電解集中する箇所となっている。このため絶縁膜の傾斜角度、p型金属酸化物半導体の成膜状態(結晶性)のばらつきなどによりゲートリーク特性や電流コラプス特性がばらつく要因となっていた。
【0005】
本発明は上記問題点を解決し、ゲート電極によるフィールドプレートを効果的に利用して、電界強度分布を制御することで、ゲートリーク、コラプス現象のばらつきを抑制し、高い動作安定性を持つHEMTを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の実施例に係る第1の特徴は、電子走行層上に電子供給層を備え、電子供給層上に絶縁膜を備え、ドレイン電極とソース電極とその間のゲート電極を備える構造の高電子移動度トランジスタ(HEMT)において、絶縁膜はドレイン電極に向かって徐々に厚くなる第1の部分と、第1の部分よりドレイン電極側であって、上面に凹部を含む第2の部分と、第2の部分よりドレイン電極側であって、ドレイン電極に向かって徐々に厚くなる第3の部分と、を備え、ゲート電極は第1の部分よりもソース電極側から、第1の部分、第2の部分、第3の部分に至るまで延伸し、凹部上で落ち込んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によればフィールドプレートの効果を活用でき、ゲートリーク、コラプス現象のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】従来品のHEMTのゲート電極部分の断面図である。
【
図2】本発明のHEMTのゲート電極部分の断面図である
【
図3】従来品のHEMTのゲート電極部分からドレイン電極側にむかっての電界分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図4】本発明のHEMTのゲート電極部分からドレイン電極側にむかっての電界分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図5】従来品と本発明のHEMTのゲート電極部分からドレイン電極側にむかっての電界分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態となる構造について説明する。
【実施例0010】
図2は実施例1に係る高電子移動度トランジスタ(HEMT)100のゲート電極部分の断面図である。実施例1に係るHEMT100は、GaNからなる電子走行層1上に、AlGaNからなる電子供給層2を備え、電子供給層2上にGaNキャップ層3を備え、GaNキャップ層3上に酸化膜4を備える。HEMT100は図示しないソース電極とドレイン電極に挟まれるようにゲート電極6が設けられている。HEMT100において、ゲート電極6の下部に電子供給層2との間に挟まれたp型金属酸化物半導体膜5を具備し、且つ、ゲート電極6よりp型金属酸化物半導体膜5の長さが短い構造になっている。このようにp型金属酸化物半導体膜5の長さを短くし、部分的にゲート電極6下にp型金属酸化物半導体膜5のない領域を作り、ゲート電極6が酸化膜4に接する領域を設けることでフィールドプレート効果が得られ、効果的に電界緩和を行うことができる。また、ゲート電極6が酸化膜4に接している部分と接していない部分を設けることで段階的に緩やかに電界緩和を行うことができる効果が得られる。また、ゲート電極5が酸化膜4に接している部分において、酸化膜4の厚みを変化させることでも段階的に緩やかに電界緩和効果を得ることができる。
ここで、電子供給層2と接続されたp型金属酸化物半導体膜5の部分からドレイン電極に向かって酸化膜4の厚みが、一定又は厚くなるのではなく、一部分において薄くなるように、酸化膜4の凹部7が設けられている。HEMT100では、酸化膜4は、電子供給層2と接続されたp型金属酸化物半導体膜5の部分(
図2のA)から徐々に厚みが増している(絶縁膜の第1の部分)。更にドレイン電極側では、酸化膜4の厚みはほぼ一定となっている。更にドレイン電極側では、凹部7が設けられており、凹部7の底面は前述のほぼ一定の厚みの部分よりも薄くなっている(絶縁膜の第2の部分)。更にドレイン電極側では、酸化膜4の厚みは徐々に厚みが増している(絶縁膜の第3の部分)。この酸化膜4の上のp型金属酸化物半導体膜5は凹部7の手前まで延伸しているが、酸化膜4の凹部7を超えて更にドレイン電極側まで延伸してもよい。p型金属酸化物半導体膜5上のゲート電極6は凹部7を越えて更にドレイン電極側まで延伸しており、p型金属酸化物半導体膜5の先端よりもドレイン電極側まで延伸していることが望ましい。
HEMT100によれば、
図5で示すように、電子供給層2と接続されたp型金属酸化物半導体膜5の部分のドレイン電極側の端(
図5のA)よりもドレイン電極側にある酸化膜4の凹部7下の電子供給層2の部分(
図5のB)で電界集中を高めることによって、電子供給層2と接続されたp型金属酸化物半導体膜5の部分のドレイン電極側の端における電界を効果的に緩和でき、酸化膜4の立ち上がり角度、p型金属酸化物半導体膜5の成膜状態(結晶性)のばらつきにより、ゲートリーク特性や電流コラプス特性がばらつくことを抑制することができる。
特にp型金属酸化物半導体膜5はスパッタ法等で形成され多結晶の状態で用いられることが多いが、酸化膜4はCVD法で形成されるので、p型金属酸化物半導体膜5に比べて膜質が安定に形成できるとともに、半導体層との界面準位の発生を抑制する効果が期待できる。なお、
図5において、実線が
図1の従来品のHEMTのゲート電極部分からドレイン電極側にむかっての電界分布のシミュレーション結果を示し、点線が
図2の本発明のHEMTのゲート電極部分からドレイン電極側にむかっての電界分布のシミュレーション結果を示す。
【0011】
p型金属酸化物半導体膜5は、酸化ニッケルNiOから成り、ゲート電極はチタンTi上に、アルミ銅AlCu、窒化チタンTiNの金属を積層した三層構造からなる。P型金属酸化物半導体膜、ゲート電極の材料は上記以外の材料を用いてもよい。また酸化膜(シリコン酸化膜)4のかわりに、酸化アルミ膜、シリコン窒化膜、窒化アルミ膜などの絶縁膜を用いてもよい。また、凹部7よりもp型金属酸化物半導体膜5がドレイン電極側まで延伸していてもよい。また、凹部7が複数形成されており、それぞれの凹部7の深さは異なっていてもよい。さらに、凹部7が複数形成されているとき、ドレイン電極に近い側の凹部7よりもp型金属酸化物半導体膜5がドレイン電極側まで延伸していてもよい。p型金属酸化物半導体膜5が凹部7を越えて形成されているとき、凹部7内にp型金属酸化物半導体膜5が落ち込んでいることは言うまでもない。