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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005148
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】建築用板成形機
(51)【国際特許分類】
   B21D 13/04 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B21D13/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106888
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】柿沢 隆之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】中島 佑樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長手方向に沿って断面略三角形状の山形状部が連続すると共に、長手方向及び水平面上に沿って弧状となる建築用板を簡易、且つ迅速に成形する建築用板成形機を提供する。
【解決手段】長手方向に沿って断面三角形状のリブ91が多数連続すると共に、長手方向及び水平面上に沿って弧状となる建築用板を成形する建築用板成形機である。円周方向に沿って断面三角形状の山形状歯11aを有する上部成形ロール1と、該上部成形ロール1と噛み合う下部成形ロール5とを備え、上部成形ロール1の軸方向一端側は、上下方向に不動である固定側支持部2にすると共に、上部成形ロール1の軸方向他端側は、上下調整可能とした可動側支持部3としてなる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って断面三角形状のリブが多数連続すると共に、長手方向及び水平面上に沿って弧状となる建築用板を成形する建築用板成形機であって、円周方向に沿って断面三角形状の山形状歯を有する上部成形ロールと、該上部成形ロールと噛み合う下部成形ロールとを備え、前記上部成形ロールの軸方向一端側は、上下方向に不動である固定側支持部にすると共に、前記上部成形ロールの軸方向他端側は、上下調整可能とした可動側支持部としてなることを特徴とする建築用板成形機。
【請求項2】
請求項1において、前記固定側支持部では前記上部成形ロールと前記下部成形ロールとは所定深さの噛合い状態が保持されると共に、前記可動側支持部では前記上部成形ロールと前記下部成形ロールとの噛合い深さを調整可能としてなることを特徴とする建築用板成形機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建築用板成形機において、前記固定側支持部は、前記上部成形ロールと前記下部成形ロールとの噛合い深さを最大としてなることを特徴とする建築用板成形機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の建築用板成形機において、前記固定側支持部は、前記上部成形ロールと前記下部成形ロールとの噛合い深さを最小としてなることを特徴とする建築用板成形機。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載の建築用板成形機において、前記下部成形ロールと前記上部成形ロールの前方側には原材送りベッドが設けられ、該原材送りベッドには、原材の幅方向の一端側に当接すると共に該原材を送り方向に案内する仕切り規制部が具備されてなることを特徴とする建築用板成形機。
【請求項6】
請求項1,2,3,4又は5の何れか1項に記載の建築用板成形機において、前記下部成形ロールの回転軸を支持する下軸受ブロックは固定され、前記固定側支持部では、前記上部成形ロールの回転軸を支持する軸受ブロックが不動に固定され、前記可動側支持部では、前記回転軸を支持する前記軸受ブロックは上下方向に移動且つ固定自在としてなることを特徴とする建築用板成形機。
【請求項7】
請求項6に記載の建築用板成形機において、前記可動側支持部では、前記軸受ブロックと、前記下部成形ロールの前記下軸受ブロックとの間には圧縮バネが配置されると共に前記軸受ブロックの上部には荷重計が設置され該荷重計の受圧部に押圧機構部が設置されてなることを特徴とする建築用板成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に沿って断面略三角形状の山形状部が連続すると共に、長手方向及び水平面上に沿って弧状となる建築用板を簡易且つ迅速に成形する建築用板成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主板の長手方向に直交し且つ幅方向に沿う断面三角山形状のリブが連続形成された建築用板が、大型商業施設,工場又は体育館等の建造物における屋根又は壁等の外囲体を構成する部材として使用されている。このような建築用板は、長手方向において、通常、数メートルから数十メートルの平坦状な主板部を有する帯状とした長尺材である。
【0003】
さらに、このような建築用板は、長手方向且つ上下(垂直)面上に沿って適宜の量のキャンバ又は曲率半径にて弧状にさせたものが存在し、緩やかなカーブを有する屋根や、軒先付近にカーブを有する屋根等を施工することがある。そして、このように長手方向に沿って、上下(垂直)面上に弧状又は部分的に弧状箇所を有する建築用板を成形するための成形機も種々存在している。
【0004】
しかし、近年では、建築物の外観(デザイン)がより一層、独特且つ複雑となるものが増加している。そこで、多数のリブが連続してさざなみ状を構成する波形部を有する建築用板で、長手方向且つ水平面上に沿って弧状又は湾曲状に形成された建築用板に対する要望が増えている。つまり、屋根,壁等の外囲体において水平面上で緩やかな弧(カーブ)を描いて施工することができる建築用板の出現が要望される状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-30016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような、水平面上に沿って緩やかな弧(カーブ)状に形成された建築用板は、数十メートル以上の極めて長尺のものであれば、長手方向且つ水平面上で人為的に撓ませることは極めて容易にできる。そのため、このような水平面上に弧状となる建築用板は、通常のさざなみ成形ができる建築用板の成形機で、長手方向に長尺材として製造すればよいものである。
【0007】
そして、近年では、大規模のみならず、中規模以下の建築物の屋根,壁等の外囲体においても、水平面上に沿って弧状となる建築用板の使用が要望されている。しかし、中規模以下の建造物では、屋根,壁等の外囲体の施工範囲は小さくなり、このような外囲体に使用される建築用板は長手方向において長尺ではなく、約5メートル程度の短めの建築用板が使用されることになる。このような約10メートル程度以下の数メートルの建築用板においては、成形機により直線状に成形した後に人為的に弧状のくせを付加し難く、その様な成形は、困難である。したがって、水平面上にて弧状となる建築用板の成形機の出現が要望されている。
【0008】
建築用板の成形機において前述したように、上下面(垂直面)上に沿って弧状となるようにくせを付加する成形機は、種々存在しているが、水平面上に沿って弧状となるようにくせを付加する成形機は存在せず、その出現が渇望されている。そこで、本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的)は、長手方向且つ水平面上に沿って弧状となる建築用板を簡易且つ迅速に成形することができる建築用板成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、長手方向に沿って断面三角形状のリブが多数連続すると共に、長手方向及び水平面上に沿って弧状となる建築用板を成形する建築用板成形機であって、円周方向に沿って断面三角形状の山形状歯を有する上部成形ロールと、該上部成形ロールと噛み合う下部成形ロールとを備え、前記上部成形ロールの軸方向一端側は、上下方向に不動である固定側支持部にすると共に、前記上部成形ロールの軸方向他端側は、上下調整可能とした可動側支持部としてなる建築用板成形機としたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項2の発明を、請求項1において、前記固定側支持部では前記上部成形ロールと前記下部成形ロールとは所定深さの噛合い状態が保持されると共に、前記可動側支持部では前記上部成形ロールと前記下部成形ロールとの噛合い深さを調整可能としてなる建築用板成形機としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項3の発明を、請求項1又は2に記載の建築用板成形機において、前記固定側支持部は、前記上部成形ロールと前記下部成形ロールとの噛合い深さを最大としてなる建築用板成形機としたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項1又は2に記載の建築用板成形機において、前記固定側支持部は、前記上部成形ロールと前記下部成形ロールとの噛合い深さを最小としてなる建築用板成形機としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載の建築用板成形機において、前記下部成形ロールと前記上部成形ロールの前方側には原材送りベッドが設けられ、該原材送りベッドには、原材の幅方向の一端側に当接すると共に該原材を送り方向に案内する仕切り規制部が具備されてなる建築用板成形機としたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項6の発明を、請求項1,2,3,4又は5の何れか1項に記載の建築用板成形機において、前記下部成形ロールの回転軸を支持する下軸受ブロックは固定され、前記固定側支持部では、前記上部成形ロールの回転軸を支持する軸受ブロックが不動に固定され、前記可動側支持部では、前記回転軸を支持する前記軸受ブロックは上下方向に移動且つ固定自在としてなる建築用板成形機としたことにより、上記課題を解決した。
【0014】
請求項7の発明を、請求項6に記載の建築用板成形機において、前記可動側支持部では、前記軸受ブロックと、前記下部成形ロールの前記下軸受ブロックとの間には圧縮バネが配置されると共に前記軸受ブロックの上部には荷重計が設置されてなる建築用板成形機としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、長手方向に沿って断面三角形状の山形状部が連続すると共に、長手方向及び水平面上に沿って弧状となる建築用板を簡易且つ迅速に成形することができる。具体的には、建築用板成形機では、円周方向に沿って断面三角形状の山形リブを有する上部成形ロールと、該上部成形ロールと噛み合う下部成形ロールとを備えており、前記上部成形ロールの軸方向一端側は、上下方向に不動である固定側支持部にすると共に、前記上部成形ロールの軸方向他端側は、上下調整可能とした可動側支持部を設けている。
【0016】
成形機において、可動側支持部は、前記上部成形ロールの軸方向他端側を、上下方向に調整することにより、一端側のさざなみの高さに対して他端側の高さ寸法が大きく又は小さくなり、長手方向に沿って断面三角形状の山形状部が連続すると共に、長手方向及び水平面上に沿って弧状となるさざなみ面を設けた建築用板を簡易且つ迅速に成形することができる。また、可動側支持部において、高さ(上下)調整が行われることにより、弧のおおよその略曲率半径を変化させることができ、種々のキャンバ又はおおよその略曲率半径を有する弧状の建築用板を成形することができる。
【0017】
請求項2の発明では、前記固定側支持部では前記上部成形ロールと前記下部成形ロールとは所定深さの噛合い状態が保持されると共に、前記可動側支持部では前記上部成形ロールと前記下部成形ロールとの噛合い深さを調整可能としてなる建築用板成形機としたことにより、一端側のさざなみの高さに対して他端側の高さ寸法が大きく又は小さくなり、長手方向に沿って断面三角形状の山形状部が連続すると共に、長手方向及び水平面上に沿って弧状となるさざなみ面を設けた建築用板を簡易且つ迅速に成形することができる。請求項3及び請求項4の発明では、可動側支持部において、高さ(上下)調整が行われることにより、弧のキャンバの量又は曲率半径を簡単な調整にて変化させることができ、種々のキャンバの量又は曲率半径を有する弧状の建築用板を成形することができる。
【0018】
請求項5の発明では、前記下部成形ロールと前記上部成形ロールの前方側には原材送りベッドが設けられ、該原材送りベッドには、原材の幅方向の一端側に当接すると共に該原材を送り方向に案内する仕切り規制部が具備されてなる建築用板成形機としたことにより、種々の幅方向寸法に対応する成形機にすることができる。請求項6の発明では、成形機の構成を簡単にすることができる。請求項7では、成形機の可動側支持部における高さ(上下)調整作業が簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)は本発明の側面図、(B)は平面図、(C)は(A)の(α)部拡大図、(D)は可動側支持部における別の実施形態の要部拡大図、(E)は(C)のX1-X1拡大矢視断面図である。
図2】(A)は本発明の機枠の一部を省略した正面図、(B)は(A)における上部成形ロールと下部成形ロールの拡大正面図である。
図3】(A)は上部成形ロールがと下部成形ロールに対して傾斜角度を調整する構成を示す一部省略した正面図、(B)は固定側支持部において原材から建築用板の成形状態を示す拡大図、(C)は可動側支持部において原材から建築用板の成形状態を示す拡大図、(D)は(C)の(β)部拡大図である。
図4】(A)は本発明の成形機によって原材から成形された形成された建築用板の平面図、(B)は建築用板の形状を示す平面図である。
図5】(A)は建築用板の要部拡大平面図、(B)は(A)のY1-Y1拡大矢視、(C)は(A)のY2-Y2拡大矢視、(D)は(A)のX2-X2拡大断面図である。
図6】(A)は本発明の成形機にて成形可能なS字状建築用板を備えたからなる外囲体の略示斜視図、(B)は(A)のS字状の建築用板の平面図、(C)はS字状の建築用板にて形成された屋根を備えた建造物の略示斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。まず、本発明による建築用板成形機によって成形される建築用板9は、薄平帯板状の金属板の原材Pに、その長手方向に沿って断面三角形状の山形状部が略ジグザグ状に連続すると共に、その帯状金属板の長手方向及び水平面上に沿って弧状となるように形成されたものである(図5参照)。なお、弧状は、湾曲状或いは半月状と称しても構わない。
【0021】
原材Pは、数メートル(約10メートル未満)から数十メートルの金属製の帯板であって、建築用板9として成形される前の状態はロール状に巻き付けられている。本発明の建築用板成形機によって、原材Pから成形された建築用板9は、その長手方向に沿って断面三角形状の山形状部が略ジグザグ状に連続すると共に、長手方向及び水平面上に沿って弧状となるように形成されたものである。図4(B)は、建築用板9の全体形状を示すものであり、該建築用板9の長さをLとし、水平上面における弧による撓み量(キャンバ)がsであることを示している。
【0022】
そして、建築用板9のジグザグ状に連続する断面三角形状の山形状部分をリブ91と称し、該リブの連続する群体を「さざなみ」と称する。建築用板9は、実際に屋根,壁等の外囲体の施工に使用されるときには、幅方向(Y方向)両側に略垂直状の立ち上がり部が形成される。このように加工された建築用板9が、下地部上に複数並列状に配置され、隣接する建築用板9の立上り部92,92同士が当接され、両立上り部92,92同士がシーム溶接等の固着手段にて固着され、屋根,壁等の外囲体が施工される〔図6(D)参照〕。
【0023】
また、建築用板9の幅方向(Y方向)両側の両立上り部92において、一方が他方よりも高さが僅かに高く形成されることがある。両立上り部92,92において、一方が他方よりも高く形成された部分は、下方に折り返されて、他方の立上り部92の上端を被覆すると共に、連結された立上り部92の上端が鋭利にならないようにする役目を有するものである〔図6(D)参照〕。
【0024】
本発明における建築用板成形機は、原材Pに前記さざなみを成形すると共に、長手方向且つ水平面上に沿って弧状に形成し、キャンバsを設けるものである〔図4(A)参照〕。そして、原材Pには、複数のリブ91が連続形成されさざなみが構成されて建築用板9が成形される。該建築用板9は、長手方向且つ水平上において弧状に形成されるものであるが、ここで、建築用板9の小径側の辺と、大径側の辺が存在し、小径側の辺を小径辺Maと称し、大径側の辺を大径辺Mbと称する(図5参照)。
【0025】
原材Pから水平上面に弧状とする建築用板9を成形するときに、小径辺Ma側では、リブ91の高さ寸法Haは最大であり、隣接するリブ91同士のピッチ寸法Kaは最小である〔図5(A),(B),(D)参照〕。また、大径辺Mb側では、リブ91の高さ寸法Hbは最小であり、隣接するリブ91同士のピッチ寸法Kbは最大である。なお、リブ91のピッチ寸法は、建築用板9の長手方向におけるリブ91の幅寸法に等しいこともある〔図5(B),(C)参照〕。このような状態で、原材Pからリブ91が形成された建築用板9は、長手方向で且つ水平面上で弧状となるように形成される〔図4図5(A)参照〕。
【0026】
また、本発明における建築用板成形機の説明において、方向を示す文言としてX方向及びY方向が存在する。X方向は、本発明における建築用板成形機に原材Pを送り込み、原材Pが成形過程で移動する方向のことである。また原材P及び建築用板9が建築用板成形機に配置されている状態で、原材P及び建築用板9の長手方向はX方向となる。この状態で建築用板成形機のX方向も原材P及び建築用板9のX方向と同一となる(図1参照)。
【0027】
Y方向は、建築用板成形機に原材Pが適正に設置されたときの原材Pの幅方向のことであり、この状態で建築用板成形機のY方向も原材PのY方向と同一となる。また、建築用板成形機のX方向において、原材Pが送り込まれる側を前方側とし、原材Pが成形されて建築用板9として送り出される側を後方側とする。
【0028】
建築用成形機は、主に、図1に示すように、上部成形ロール1と、下部成形ロール5と、駆動モータ7と、機枠8とから構成される。上部成形ロール1及び下部成形ロール5は、機枠8に装着され、下部成形ロール5上に上部成形ロール1が位置するように配置されている〔図1(A),(C),図2参照〕。
【0029】
上部成形ロール1は、その軸方向(軸芯線La)が水平線に対して僅かに角度θで傾斜している。上部成形ロール1の軸方向(軸芯線La)の傾斜角度θは、後述するように可変である。下部成形ロール5は、その軸方向(軸芯線Lb)は、水平であり、この水平状態は不動(固定)である。そして、上部成形ロール1の傾斜角度は後述するように適宜調整可能な構成としている。これによって、上部成形ロール1と下部成形ロール5は、軸方向において、それぞれの山形状歯11aと山形状歯51aとの噛合い深さTが変化するように構成されている(図2図3参照)。上部成形ロール1の軸方向における傾斜角度θの調整については、後述する。
【0030】
上部成形ロール1は、円筒状で且つ断面が略歯車状に形成されており、そのロール部11の外周側面に断面略三角形状の山形状歯11a,11a,…が所定間隔をおいて連続的且つ等間隔に形成されたものである〔図3(B),(C)参照〕。該山形状歯11aは、扁平三角山形で、略富士山形状である。したがって、上部成形ロール1によって原材Pに形成されるリブ91の断面形状も、略扁平三角山形状である〔図5(B),(C)参照〕。上部成形ロール1の軸方向両端には回転軸部12,12が形成され、後述する固定側支持部2と可動側支持部3によって機枠8に支持される(図1図2参照)。
【0031】
下部成形ロール5は、上部成形ロール1と略同一の構成であり、円筒状で且つ断面が略歯車状に形成されており、そのロール部51の外周側面に断面略三角形状の山形状歯51a,51a,…が所定間隔をおいて連続的且つ等間隔に形成されたものである。下部成形ロール5の山形状歯51aと、上部成形ロール1の山形状歯11aは、同一形状である〔図3(B),(C)参照〕。
【0032】
下部成形ロール5の軸方向両端には回転軸部52,52が形成され、両回転軸部52,52は後述する下部固定側支持部6,6によって機枠8に上下方向に不動に支持される(図1図2参照)。下部固定側支持部6は、固定側支持部2及び可動側支持部3と略同様に、下軸受ブロック61及び軸受62を有している。下部固定側支持部6は、機枠8の軸受ブロック装着部81に対して不動に固定される〔図1(A),(C)参照〕。
【0033】
上部成形ロール1の山形状歯11a,11a,…と、下部成形ロール5の山形状歯51a,51a,…は、噛合う構成となっており、上部成形ロール1と下部成形ロール5とが同一速度で回転し、複数の山形状歯11a,11a,…と、複数の山形状歯51a,51a,…との間を原材Pが挿入されることによって、原材Pの長手方向に沿って、リブ91が連続形成されて、これら多数のリブ91,91,…の連続により、さざなみが形成され、所定長さの建築用板9が形成されるものである〔図3(B),(C),(D)参照〕。上部成形ロール1と下部成形ロール5の成形動作時における回転方向及び原材Pの送り方向は、矢印にて図3に記載されている。
【0034】
上部成形ロール1は、固定側支持部2と可動側支持部3とによって支持される。固定側支持部2は、上部成形ロール1の軸方向一端側を上下方向に固定支持するものである。また、可動側支持部3は、上部成形ロール1の軸方向他端側を上下方向に位置調整可能となるように不動に支持する。固定側支持部2及び可動側支持部3は、それぞれが後述するように、軸受及び軸受ブロックを有している。
【0035】
固定側支持部2の軸受ブロック21及び軸受22は、機枠8の所定の位置に対して上下方向に不動となるように固定設置されたものである〔図1(E)参照〕。可動側支持部3の軸受ブロック31及び軸受32は、機枠8の所定位置に対して上下方向に移動可能となるように可動設置されている〔図1(C)参照〕。可動側支持部3の軸受ブロック31は、幅方向両側に案内溝31a,31aが形成されている。機枠8には、凹溝状の軸受ブロック装着部81が設けられている〔図1(A),(C)参照〕。該軸受ブロック装着部81は、X方向に沿って平行に対向する垂直縁状の案内レール81a,81aが形成されている〔図1(C),(D),(E)参照〕。
【0036】
固定側支持部2の軸受ブロック21は、軸受ブロック装着部81に不動状態で固定されている。固定側支持部2は、可動側支持部3と実質的に同一であり、案内溝21a,21aを有しており、軸受ブロック装着部81の案内レール81a,81aに嵌合状態で配置される。固定側支持部2の軸受ブロック21は、機枠8又は後述する下固定側支持部6の下軸受ブロック61等に、ブラケット及びボルト・ナット等の固着具を介して固着され、不動状態となる。
【0037】
可動側支持部3の軸受ブロック3は、その案内溝31a,31aに軸受ブロック装着部81の案内レール81a,81aが挿入され、軸受ブロック31が案内レール81a,81aに沿って上下方向に移動することができるようになっている〔図1(C),(D)参照〕。そして、可動側支持部3の軸受ブロック31の上部に、高さ調整軸33が連結されている。該高さ調整軸33は、外ネジ部33aを有している。
【0038】
機枠8の軸受ブロック装着部81の頂部には、頂部軸支部34が設けられ、該頂部軸支部34には垂直方向にネジ孔が形成されている。該ネジ孔に前記高さ調整軸33の外ネジ部33aが螺合し、高さ調整軸33が頂部軸支部34に対して上下方向に移動するように構成されている。
【0039】
高さ調整軸33は、外ネジ部33aの頂部に直方体状の調整部33bが具備されており、該調整部33bをスパナ等の工具等によって回転させることにより、昇降軸33が軸周方向に回転し、垂直方向に上下動して、軸受ブロック31を上下方向に移動させ、高さ(上下)位置調整することができる。また、外ネジ33aには、ロックナット33cが設け
られており、高さ調整軸33を頂部軸支部34に固定するときに、ロックナット33cにより固定することができる。軸受32は、軸受ブロック31に収納されている。また、軸受32は、軸受ブロック31に対して軸方向が僅かに回転可能でフレキシブルな構成であることが好ましい。
【0040】
建築用板成形機の可動側支持部3側では、軸受ブロック31と、下部成形ロール5の下軸受ブロック61との間には圧縮バネ42が配置されている〔図1(C),(D)参照〕。該圧縮バネ42によって、軸受ブロック31は、下部成形ロール5から上方に向かって弾性付勢されている。そして、前記高さ調整軸33を下げることによって、軸受ブロック31を圧縮バネ42の弾性力に抗して押し下げたり、或いは高さ調整軸33を上昇させることにより、軸受ブロック31は圧縮バネ42の弾性力によって上昇することができ、軸受ブロック31の高さ位置調整ができる。
【0041】
軸受ブロック31の頂部と高さ調整軸33との間には、荷重計41が設置されることもある〔図1(C)参照〕。該荷重計41は、圧力計が使用され、前記圧縮バネ42と共に使用される。高さ調整軸33を下げることにより、軸受ブロック31には圧縮バネ42の弾性力がかかり、そのときの数値(圧力)が荷重計41に表示される。この数値は、圧縮バネ42の弾性係数(バネ定数)が一定であることにより、上部成形ロール1と下部成形ロール5との噛合い深さTに置き換えて、噛合い寸法を設定することができる。
【0042】
また、前記荷重計41が設けられない実施形態も存在する。この実施形態では、軸受ブロック31と高さ調整軸33との間に荷重計41が設けられず、高さ調整軸33の軸端と、軸受ブロック31の頂部とが直接当接又は連結されるものである〔図1(D)参照〕。そして、高さ調整軸33による上下移動の調節により、軸受ブロック31の高さ調整が行われる。この実施形態は、作業に当たる作業員が熟練作業員の場合に好適であり、上部成形ロール1の軸芯線Laの傾斜角度θを目測と作業経験にて、適正値に設定できる場合に適用される。
【0043】
下部成形ロール5は、軸方向両端が下部固定側支持部6によって支持される。下部固定側支持部6は、下軸受ブロック61及び軸受62によって構成され、下軸受ブロック61及び軸受62は、前記固定側支持部2と同一構成である。下軸受ブロック61は、軸受ブロック31と同様に案内溝61aが形成されており、案内レール81aの下端位置に配置され、機枠8に対して不動となる構成である〔図1(C),(E)参照〕。
【0044】
上部成形ロール1の軸方向(Y方向)に沿う軸芯線Laは、可動側支持部3の上下方向の調整により、固定側支持部2を角度の中心として、水平線Loから適宜の角度θを有する傾斜とすることができる。角度θは、任意に設定できる。そして、可動側支持部3による軸受ブロック31の上下方向における高さ調整によって、軸芯線Laの水平線Loに対する傾斜角度θを適宜変化させ、調整することができる(図3参照)。
【0045】
これによって、可動側支持部3側における上部成形ロール1と下部成形ロール5との山形状歯11aと山形状歯51との噛合い深さTを任意に調整することができる。固定側支持部2では、上下方向に不動のため上部成形ロール1の山形状歯11aと、下部成形ロール5の山形状歯51aとの噛合い深さTは、常時一定である(図2図3参照)。ここで、上部成形ロール1と下部成形ロール5の噛合い深さTは、上部成形ロール1の山形状歯11a,11a,…同士を結ぶ包絡線Q1と、下部成形ロール5の山形状歯51a,51a,…同士を結ぶ包絡線Q2との重なる部分の量とする。そして、固定側支持部2側における噛合い深さの量をTaとし、可動側支持部3側における噛合い深さの量をTbとする(図2参照)。
【0046】
そして、固定側支持部2側における上部成形ロール1の山形状歯11aと、下部成形ロール5の山形状歯51との噛合い深さTaを最大となるように設定した場合には、可動側支持部3側における軸受ブロック31の高さ位置調整によって、上部成形ロール1と下部成形ロール5との噛合い深さTbは固定側支持部2側の噛合い深さTaよりも小さくなる(浅くなる)ように設定されることとなる。
【0047】
これによって、建築用板成形機に送り込まれる原材Pに上部成形ロール1と下部成形ロール5とによってさざなみを構成するリブ91が形成される工程において、固定側支持部2側では、リブ91の高さ寸法は最大となり、可動側支持部3側では、リブ91の高さ寸法は最小となる〔図3(B),(C),(D),図5参照〕。
【0048】
繰り返し述べるが、上部成形ロール1と下部成形ロール5とによって原材Pにリブ91が形成される過程で、固定側支持部2側でリブ91の高さ寸法が最大でリブ91幅(又は
ピッチ)が最小に設定されて小径弧状の小径辺Maとなり、可動側支持部3側でリブ91
の高さ寸法が最小でリブ91幅(又はピッチ)が最大に設定されて大径辺Mbとなる。そして、建築用板成形機より送り出されるさざなみが形成された建築用板9は、固定側支持部2側寄りの端辺が小径辺Ma側となり、可動側支持部3側寄りの端辺が大径辺Mb側となる(図3図5参照)。
【0049】
このように、固定側支持部2において、上部成形ロール1と下部成形ロール5との噛合い深さTaを最大に設定した場合においては、可動側支持部3において、上部成形ロール1の軸芯線Laの水平線Loに対する傾斜角度θを変更することで、上部成形ロール1と下部成形ロール5との可動側支持部3側における噛合い深さTbの寸法を所望のものに変化させ、最小寸法を任意に設定することができる。これによって、原材Pから建築用板9を成形する過程で、大径辺Mb側のリブ91のX方向における幅方向寸法(又はピッチ)を変化させることができ、建築用板9の撓み量(キャンバ)sを種々設定することができ、多様な弧状(湾曲状)の建築用板9にできる。
【0050】
また、固定側支持部2側での上部成形ロール1と下部成形ロール5との噛合い深さTaを最小に設定した場合では、可動側支持部3における高さ位置調整で上部成形ロール1と下部成形ロール5との噛合い深さTbは、固定側支持部2側よりも大きく(深く)なるように調整されることとなる。
【0051】
これによって、原材Pから成形される建築用板9は、固定側支持部2側において、さざなみを構成するリブ91の高さ寸法は最小となり、可動側支持部3側においてさざなみを構成するリブ91の高さ寸法は最大となる。そして成形機より送り出される建築用板9は固定側支持部2側寄りの端辺が大径辺Mbとなり、可動側支持部3側寄りの端辺が小径辺Maとなる。
【0052】
そして、固定側支持部2において、上部成形ロール1と下部成形ロール5との噛合い深さTaを最小とした場合には、可動側支持部3において、上部成形ロール1の軸芯線Laの水平線Loに対する傾斜角度θを変更することで、上部成形ロール1と下部成形ロール5との最大の噛合い深さTbの寸法を変化させることができる。これによって、原材Pから成形された建築用板9の撓み量(キャンバ)sを種々設定することができ、多様な弧状の建築用板9にできる。
【0053】
機枠8には、上部枠部8aと下部枠部8bとを有している。上部枠部8aには、下部成形ロール5と上部成形ロール1の前方側には原材送りベッド82及び補助送りロール83が設けられている。該原材送りベッド82は、原材Pが載置され、該原材Pが上部成形ロール1と下部成形ロール5との間に送り込む役目をなすものである〔図1(A),(B)参照〕。補助送りロール83は、ロール状に巻き付けられた原材Pを原材送りベッド82上に送り出す役目をなす。
【0054】
また、原材送りベッド82上には原材Pの幅方向の一端側に当接すると共に該原材Pを送り方向に適正に案内する仕切り規制部84が具備されている〔図1(B)参照〕。該仕切り規制部84は、原材送りベッド82上でY方向に移動可能であり、仕切り板84aがハンドル84bのロック解除にてY方向に移動し、ハンドル84bのロックにて仕切り板84aがロックされる。仕切り規制部84は、2つ具備され、その仕切り板84aによって原材Pの幅方向の寸法に合わせてハンドル84bにて固定し、種々の幅寸法の原材Pの送りに適応できるようになっている。下部枠部8bには、電動モータ7を中心とするとチェーン駆動部等の伝動手段が配置されている。
【0055】
また、上部成形ロール1を支持する固定側支持部2は、可動側支持部3と同等の構造とし、軸受ブロック21が上下方向に高さ位置調整可能とすることもできる。この場合、可動側支持部3と同様に、固定側支持部2について、軸受ブロック21には、幅方向両側に案内溝21a,21aを有し、昇降軸23,外ネジ軸23a,調整部23b,ロックナット33c,頂部軸支部24を具備し、荷重計41及び圧縮バネ42を備えている。なお、固定側支持部2の軸受ブロック21は、可動側支持部3の軸受ブロック31と同一であるため、固定側支持部2側の軸受ブロック21については、図1(E)の括弧内の符号を参照されたい。
【0056】
本発明における建築用板成形機は、電動モータ7とチェーン駆動71等の伝動手段によって下部成形ロール5を回転させ、該下部成形ロール5の回転軸52に設けられた伝動歯車53と、上部成形ロール1の回転軸12に設けられた伝動歯車13によって、下部成形ロール5の回転が上部成形ロール1に伝達される〔図2(A)参照〕。下部成形ロール5と上部成形ロール1との回転速度は等しく、上部成形ロール1と下部成形ロール5との間に原材Pを送り込むことで、上部成形ロール1の山形状歯11aと、下部成形ロール5の山形状歯51によって原材Pにさざなみが成形され、建築用板9を成形することができる。
【0057】
また、本発明によって原材Pから成形される建築用板9は、半月状の弧状としたもの以外に、凸状と、凹状の二つの弧状領域が連続する略S字カーブ状としたものが存在する〔図6(A),(B)参照〕。このS字状とした建築用板9を成形する場合には、まず、建築用板成形機によって原材Pの長手方向中間位置まで、さざなみを形成して、凸状の弧状領域を形成する。そして、原材Pを建築用板成形機成形から一旦、取り外して、さざなみが形成されていない領域を再度、建築用板成形機にて、さざなみ形成を行い凹状の弧状部を形成する。図6(A)は、1つの弧状からなる建築用板9と、二つの弧状を有するS字状の建築用板9とからなる屋根であり、図9(C)はこの屋根を使用した工場,倉庫又は商業施設等の家屋である。
【符号の説明】
【0058】
1…上部成形ロール、2…固定側支持部、3…可動側支持部、82…原材送りベッド、
83…仕切り規制部、42…圧縮バネ、41…荷重計、11a,51a…山形状歯、
5…下部成形ロール、9…建築用板、91…リブ、P…原材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6