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特開2023-51504導電フィルム、接続構造体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051504
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】導電フィルム、接続構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20230404BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20230404BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H01R11/01 501E
H01R43/00 H
H01B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162240
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柄木田 充宏
(72)【発明者】
【氏名】工藤 克哉
【テーマコード(参考)】
5E051
5G307
【Fターム(参考)】
5E051CA03
5G307HA02
5G307HB03
5G307HC01
(57)【要約】
【課題】導電接続もしくは異方性導電接続の際に、樹脂流動に伴う導電粒子の移動を抑制することによってショートの発生を抑制し、接続構造体の信頼性を高めることが可能な導電フィルムもしくは異方性導電フィルムを提供する。
【解決手段】異方性導電フィルム100は、第1樹脂層10と、第2樹脂層20と、第3樹脂層30とがこの順に積層された絶縁樹脂層を有する。各層の最低溶融粘度は、第2樹脂層20、第1樹脂層10、第3樹脂層30の順に高い。複数の導電粒子40は、絶縁樹脂層中に分散され、少なくとも、第1樹脂層10及び第2樹脂層20によって保持されている。導電フィルム100は、第1樹脂層10の厚みをTt、第2樹脂層20の厚みをTc、導電粒子40の平均粒子径をDとしたとき、式(1):
【数1】
の関係を満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂層と第2樹脂層と第3樹脂層とがこの順に積層された積層構造を有する絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層中に分散された導電粒子と、を備えた導電フィルムであって、
絶縁樹脂層における各層の最低溶融粘度が第2樹脂層>第1樹脂層>第3樹脂層の順に高く、かつ、第2樹脂層の最低溶融粘度が1500Pa・s以上80000Pa・s以下の範囲内であり、
導電粒子は、少なくとも、第1樹脂層及び第2樹脂層によって保持されており、第1樹脂層の厚みをTt、第2樹脂層の厚みをTc、導電粒子の平均粒子径をDとしたとき、下記式(1):
【数1】
の関係を満たす導電フィルム。
【請求項2】
第2樹脂層の最低溶融粘度をVc、第1樹脂層の最低溶融粘度をVtとしたとき、VcがVtの1.5倍以上である請求項1に記載の導電フィルム。
【請求項3】
第2樹脂層の最低溶融粘度をVc、第1樹脂層の最低溶融粘度をVtとしたとき、VcがVtの40倍以上である請求項1に記載の導電フィルム。
【請求項4】
第3樹脂層の厚みをTnとしたとき、Tn>Tc+Ttの関係である請求項1に記載の導電フィルム。
【請求項5】
第1樹脂層及び第2樹脂層を構成する樹脂が、熱重合性樹脂である請求項1に記載の導電フィルム。
【請求項6】
導電粒子が格子状に規則配列している請求項1に記載の導電フィルム。
【請求項7】
異方性導電フィルムとして用いられる請求項1~6のいずれかに記載の導電フィルム。
【請求項8】
第1電子部品と第2電子部品とが導電接続されている接続構造体を製造する方法であって、
第1電子部品と第2電子部品を、請求項1~6のいずれかに記載の導電フィルムを介して圧着して導電接続することを特徴とする接続構造体の製造方法。
【請求項9】
導電接続が異方性導電接続である請求項8記載の接続構造体を製造する方法であって、
第1電子部品と第2電子部品を、請求項7記載の導電フィルムを介して圧着して異方性導電接続する、接続構造体の製造方法。
【請求項10】
第1電子部品と第2電子部品とが導電接続されている接続構造体であって、
第1電子部品と第2電子部品を、請求項1~6のいずれかに記載の導電フィルムを介して導電接続したことを特徴とする接続構造体。
【請求項11】
導電接続が異方性導電接続である請求項10記載の接続構造体であって、
第1電子部品と第2電子部品を、請求項7記載の導電フィルムを介して圧着して異方性導電接続した、接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電フィルム、それを用いる接続構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップやマイクロLEDなどの電子部品の実装に、多数の導電粒子を絶縁性樹脂層中に分散させた導電フィルムが広く使用されており、このような導電フィルムには、導電方向が特定の方向に限定されないものと、導電方向が一定の方向に限定されるものが含まれており、後者の導電方向が一定の方向に限定されるものは、異方性導電フィルムとして知られている。導電フィルムでは、高実装密度に対応できるように、絶縁性樹脂層に導電粒子を高密度に分散させることが行われている。しかしながら、導電粒子の個数密度を高めることは、特に異方性導電フィルムの場合にはショートの発生要因となる。
【0003】
異方性導電接続による接続信頼性の確保とショートの発生を抑制するため、多層に積層した構造の絶縁樹脂層中に導電粒子を担持させることが提案されている。例えば、光重合性樹脂層の片面に導電粒子を単層で配置し、紫外線を照射することにより光重合樹脂に導電粒子を固定化し、更に固定化した導電粒子の周囲に、導電粒子に加わる応力の緩和層として中間絶縁性樹脂層を設け、その上に、熱又は光により重合する重合性樹脂層が積層している異方性導電フィルムが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、絶縁ベース層と中間層と粘着層とを積層して構成し、粘着層又は中間層のいずれかに導電粒子を保持させ、絶縁ベース層の溶融粘度よりも、中間層及び粘着層のそれぞれの溶融粘度を高くし、熱重合後の異方性導電フィルム全体の弾性率を所定の数値より高くした異方性導電フィルムも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-147823号公報
【特許文献2】特開2017-22017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
導電フィルムを用いる導電接続時には、加熱加圧により、絶縁性樹脂層に比較的大きな樹脂流れが生じ、その流れに沿って導電粒子が移動しやすくなり、接続構造体の接続信頼性が低下しかねない。異方性導電フィルムの状態で導電粒子が整列配置されている場合であっても、樹脂流動により配列が乱れてしまう。また、樹脂流動に伴って導電粒子が隣接する突起状電極(以下、「バンプ」と記すことがある)の間に入り込んでショート発生の原因となり、接続構造体の信頼性が低下するという問題があった。
【0007】
従来技術である特許文献1及び特許文献2では、異方性導電接続時の樹脂流動の影響についても一応の注意が払われている。しかし、特許文献1の中間絶縁性樹脂層は、導電粒子への応力緩和を主目的とするものであり、特許文献2の中間層についても、導電粒子が隣接するバンプの間に入り込んでしまう現象を抑制し得るような機能については十分に検討されていない。
【0008】
また、近年では接続が多様化し、端子レイアウトが異方性導電接続とは言えなくなる場合もある。例えば、端子一つに導電フィルムを貼り付ける場合であるが、端子間の距離は極めて近い場合もあるので、この場合でも、端子間のショートや導通不良といった異方性導電フィルムと同様の課題が懸念される。
【0009】
従って、本発明の目的は、導電接続の際に、樹脂流動に伴う導電粒子の移動を抑制することによってショートの発生を抑制し、接続構造体の信頼性を高めることが可能な導電フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、絶縁樹脂層を、第1樹脂層と第2樹脂層と第3樹脂層を有する少なくとも3層以上の積層構造とし、かつ、中間に介在する第2樹脂層を最低溶融粘度が相対的に高い高粘度の層とし、さらに、第1樹脂層と第2樹脂層の合計厚み(Tt+Tc)を、導電粒子の平均粒子径との関係で特定の範囲内にすることによって、導電接続時に樹脂流動が発生しても第2樹脂層によって樹脂流動の影響が緩和され、導電粒子の移動を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、第1樹脂層と第2樹脂層と第3樹脂層とがこの順に積層された積層構造を有する絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層中に分散された導電粒子と、を備えた導電フィルムおよび異方性導電フィルムを提供する。なお、本発明において、導電フィルムは異方性導電フィルムを包含するものであるが、同じ導電フィルムであっても、接続対象によって、等方導電性を示す導電フィルムとして見なされ得る場合や、異方導電性を示す異方性導電フィルムとして見なされ得る場合があり、また、近年の電子部品の電極構成やレイアウト等の複雑化という技術の進歩という観点からも、それらの峻別が困難になる場合があることに留意されたい。
【0012】
本発明の導電フィルムは、絶縁樹脂層における各層の最低溶融粘度が、第2樹脂層>第1樹脂層>第3樹脂層の順に高く、かつ、第2樹脂層の最低溶融粘度が1500Pa・s以上80000Pa・s以下の範囲内である。第2樹脂層の最低溶融粘度を最も高くすることで、圧着時の第2接続層および第1接続層側に存在する導電粒子が、最低溶融粘度が最も低い第3接続層へ流動することや巻き込まれことを防止することが可能となる。
【0013】
また、本発明の導電フィルムにおいて、導電粒子は、少なくとも、第1樹脂層及び第2樹脂層によって保持されており、第1樹脂層の厚みをTt、第2樹脂層の厚みをTc、導電粒子の平均粒子径をDとしたとき、下記式(1)の関係を満たす。
【0014】
【数1】
【0015】
さらに、本発明は、第1電子部品と第2電子部品とが導電接続されている接続構造体を製造する方法であって、
第1電子部品と第2電子部品を、上記導電フィルムを介して圧着して導電接続することを特徴とする接続構造体の製造方法、特に、導電接続が異方性導電接続であり、導電フィルムが異方性導電フィルムである、接続構造体の製造方法、並びに、第1電子部品と第2電子部品とが導電接続されている接続構造体であって、第1電子部品と第2電子部品を、上記導電フィルムを介して導電接続したことを特徴とする接続構造体、特に、導電接続が異方性導電接続であり、導電フィルムが異方性導電フィルムである、接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の導電フィルムによれば、導電接続の際の樹脂流動に伴う導電粒子の移動、特に導電粒子が隣接するバンプの間に入り込んでしまう現象、を効果的に抑制することが可能である。従って、本発明の導電フィルムを用いて導電接続した接続構造体において、ショートの発生を抑制することが可能となり、信頼性を高めることができる。この発明の効果は、導電フィルムを異方性導電フィルムとして使用して異方性導電接続した接続構造体において特に好ましいものである。導電フィルムであっても、圧着する際に不要な流動が生じないことから電極内での粒子の位置制御を高精度で行い得るという利点が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る導電(異方性導電)フィルムの断面図である。
図2】本発明の別の実施の形態に係る導電(異方性導電)フィルムの断面図である。
図3】本発明のさらに別の実施の形態に係る導電(異方性導電)フィルムの断面図である。
図4】本発明のさらに別の実施の形態に係る導電(異方性導電)フィルムの断面図である。
図5】従来の異方性導電フィルムを用いて異方性導電接続する直前の状態を説明する断面図である。
図6】従来の異方性導電フィルムを用いて接続した接続構造体の断面図である。
図7】本発明の異方性導電フィルムを用いて異方性導電接続する直前の状態を説明する断面図である。
図8】本発明の異方性導電フィルムを用いて接続した接続構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。異方性導電フィルムとして説明しているが導電フィルムにも同様に適用できるものとする。
【0019】
[異方性導電フィルム]
図1は、本発明の導電フィルムの一実施の形態に係る異方性導電フィルムの断面図である。図2図4は、本発明の別の実施の形態に係る異方性導電フィルムの断面図である。図1図4に例示する異方性導電フィルム100は、第1樹脂層10と、第2樹脂層20と、第3樹脂層30とがこの順に積層された構造の絶縁樹脂層を有する。複数の導電粒子40は、絶縁樹脂層中に分散された状態で担持されている。具体的には、導電粒子40は、少なくとも、第1樹脂層10及び第2樹脂層20によって保持されている。
【0020】
<導電粒子の位置>
第1樹脂層10の厚み方向における導電粒子40の位置は、第1樹脂層10又は第2樹脂層20のいずれか片方に埋没している状態ではなく、図1~4に例示するように、第1樹脂層10及び第2樹脂層20の両方に担持されていることが好ましい。つまり、導電粒子40が第1樹脂層10及び第2樹脂層20の両方に食い込んだ状態となっていることが好ましい。導電粒子40が第1樹脂層10又は第2樹脂層20のいずれか片方の層中に埋没していると、電子部品を異方性導電接続した接続構造体の導通抵抗が高くなる場合があり、特に、導電粒子40が第1樹脂層10に埋包された状態にあると、後述するように高粘度の第2樹脂層20によって異方性導電接続後の接続信頼性が低下する場合がある。
【0021】
一方、第2樹脂層20中への導電粒子40の食い込みの程度が大きすぎると、第2樹脂層20による導電粒子40の不動化作用が弱まり、異方性導電接続時の樹脂流動に伴って導電粒子40が移動し、バンプによる導電粒子40の捕捉率が低くなったり、導電粒子が隣接するバンプ間に入り込んでショートの発生原因となったりすることが懸念される。そのため、第2樹脂層20への導電粒子40の食い込みの程度は、好ましくは導電粒子40の平均粒子径Dの10%以上50%以下の範囲内、より好ましくは20%以上40%以下の範囲内である。
【0022】
従って、導電粒子40は、例えば図1に示すように、第1樹脂層10及び第2樹脂層20に埋入し保持されていてもよい。なお、図1では、導電粒子40が第1樹脂層10と第2樹脂層20に略均等に食い込んだ状態で担持されているが、第1樹脂層10及び第2樹脂層20への食い込みの程度は異なっていてもよい。
【0023】
また、導電粒子40は、例えば図2に示すように、第1樹脂層10を貫通していてもよい。この場合、導電粒子40は、第1樹脂層10の露出面(第2樹脂層20と接している面と反対側の面)から突出していてもよい。
【0024】
さらに、例えば図3に示すように、導電粒子40が第2樹脂層20を貫通し、導電粒子40の一部分が第3樹脂層30中に食い込んでいてもよい。ただし、第3樹脂層30への導電粒子40の食い込みの程度が大きすぎると、異方性導電接続時の樹脂流動に伴って導電粒子40が移動し、バンプによる導電粒子40の捕捉率が低くなったり、ショートの発生原因となったりすることが懸念される。そのため、導電粒子40の第3樹脂層30中への埋入の程度は、例えば、導電粒子40の平均粒子径の0(埋入せず)%以上10%以下の範囲内、より好ましくは0%以上5%以下の範囲内である。ここで、第1接続層と第2接続層の界面までに、導電粒子の平均粒子径の50%以上が存在していることが好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上が更により好ましい。
【0025】
なお、図示は省略するが、導電粒子40は第1樹脂層10及び第2樹脂層20の両方を貫通していてもよい。即ち、第1接続層10から導電粒子が露出している状態になる。
【0026】
また、導電粒子40は、例えば図4に示すように、第2樹脂層20と第3樹脂層30との界面に達していなくてもよい。この場合、導電粒子40の平均粒子径Dは、第1樹脂層10の厚みと第2樹脂層20の厚みの合計未満であってもよい。導電粒子40の平均粒子径と各層の厚みとの関係については、以下のとおりである。
【0027】
<導電粒子の平均粒子径と層厚みとの関係>
異方性導電フィルム100は、第1樹脂層10の厚みをTt、第2樹脂層20の厚みをTc、導電粒子40の平均粒子径をDとしたとき、下記式(1)の関係を満たすものである。
【0028】
【数2】
【0029】
式(1)の関係を満たさず、第1樹脂層10と第2樹脂層20との厚みの和(Tt+Tc)が、Dの4/3倍以上である場合は、異方性導電接続後の導通が不確実となり、接続信頼性が低下するおそれがある。同様の観点から、下記式(2)の関係を満たすことがより好ましく、下記式(3)の関係を満たすことが特に好ましい。
【0030】
【数3】
【0031】
なお、第1樹脂層10と第2樹脂層20との厚みの和(Tt+Tc)が小さすぎる場合は、第1樹脂層10と第2樹脂層20による導電粒子40の保持力が弱まり、第3樹脂層30の樹脂流動に伴う導電粒子40の位置変動を抑制する効果が十分に得られなくなることがある。そのため、導電粒子40の平均粒子径Dを基準にしたときの第1樹脂層10と第2樹脂層20との厚みの和(Tt+Tc)の下限は、第2樹脂層20の最低溶融粘度の幅や、導電粒子40の平均粒子径Dの幅を考慮にいれても、樹脂流動による導電粒子40の位置変動を抑制する効果を発現するための最低限の合計厚みとして、例えば導電粒子40の平均粒子径Dの0.8倍以上とすることが好ましい。つまり、下記式(4)の関係を満たすことが好ましい。
【0032】
【数4】
【0033】
第1樹脂層10の厚みTtは、異方性導電フィルム100の状態で導電粒子40を確実に保持しておくため、導電粒子40の平均粒子径Dとの比[(Tt/D)×100]が50%以上90%以下の範囲内であることが好ましく、50%以上80%以下の範囲内であることがより好ましい。この場合、第1樹脂層10の厚みTtに導電粒子が半分以上埋め込まれていることが好ましい。
【0034】
第2樹脂層20の厚みTcは、導電粒子40の平均粒子径Dとの比[(Tc/D)×100]が、10%以上50%以下の範囲内であることが好ましく、20%以上50%以下の範囲内であることがより好ましく、15%以上40%以下の範囲内が特に好ましい。この比[(Tc/D)×100]が10%より小さいと、樹脂流動による導電粒子40の位置変動を抑制する効果が十分に発揮できない場合があり、50%より大きくなると、導電粒子の押し込みが不十分になり、高粘度の第2樹脂層20によって、異方性導電接続後の導通性が損なわれる場合がある。
【0035】
また、第1樹脂層10の厚みTtと第2樹脂層20の厚みTcとの関係は、Tt≧Tcであればよく、Tt>Tcであることが好ましい。第1樹脂層10の厚みTtが第2樹脂層20の厚みTcよりも小さくなると、導電粒子40を保持する機能が低下したり、高粘度の第2樹脂層20によって異方性導電接続後の導通性が損なわれたりする場合がある。
【0036】
なお、第2樹脂層20の厚みTcの下限は、第2樹脂層20の最低溶融粘度の幅や、導電粒子40の平均粒子径Dの幅を考慮にいれても、樹脂流動による導電粒子40の位置変動を抑制する効果を発現するための最低限の厚みとして、好ましくは0.1μm以上あればよく、より好ましくは1.2μm以上、特に好ましくは2.0μm以上である。これらは、粒子径との関係から定義されるものであり、粒子径によっては粒子の頂点部のみを覆う形態になる場合もある。上述した粒子径と厚みの関係で定義したものと、必ずしも一致する必要はない。粒子径と第3接続層の厚みや最低溶融粘度といった樹脂流動の影響によっては粒子の頂点部を覆うだけで発明の効果が得られることもある。
【0037】
さらに、第3樹脂層30の厚みをTnとしたとき、異方性導電接続時におけるバンプ間への充填性と接続後の絶縁性を確保するため、TnはTt及びTcのそれぞれよりも十分に大きいことが好ましく、例えば、Tn>Tc+Ttの関係が成り立つことがより好ましい。
【0038】
<最低溶融粘度>
絶縁樹脂層における各層の最低溶融粘度の関係は、第1樹脂層10の最低溶融粘度をVtとし、第2樹脂層20の最低溶融粘度をVcとし、第3樹脂層30の最低溶融粘度をVnとしたとき、Vc>Vt>Vnとなる。つまり、各層の最低溶融粘度は、第2樹脂層20が最も高く、次に第1樹脂層10が高く、第3樹脂層30が最も低い。第2樹脂層20の最低溶融粘度Vcを最も高くすることによって、異方性導電接続時の第3樹脂層30の樹脂流動に伴う導電粒子40の位置変動への影響を効果的に抑制できる。
【0039】
すなわち、異方性導電接続時に最低溶融粘度が最も低い第3樹脂層30に樹脂流動が生じた場合でも、高粘度の第2樹脂層20が存在することによって、導電粒子40が不動化されやすくなり、移動が抑制される。このように、異方性導電接続時の樹脂流動による導電粒子40への影響を抑制する観点から、第2樹脂層20の最低溶融粘度Vcは、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは20000Pa・s以上、特に好ましくは40000Pa・s以上であり、好ましくは80000Pa・s以下の範囲内である。Vcが1500Pa・sを下回ると、異方性導電接続時の導電粒子40の移動を抑制する効果が十分に発揮できない場合があり、一方、Vcが80000Pa・sを上回ると、異方性導電接続後の導通性が損なわれる場合がある。
【0040】
また、第2樹脂層20の最低溶融粘度Vcは第1樹脂層10の最低溶融粘度Vtの1.5倍以上であること(Vc≧1.5×Vt)が好ましく、20倍以上であること(Vc≧20×Vt)がより好ましく、40倍以上であること(Vc≧40×Vt)がさらに好ましく、40倍を超えること(Vc>40×Vt)が最も好ましい。このようにVcをVtに対して十分に高くすることによって、異方性導電接続時の第3樹脂層30の樹脂流動に伴う導電粒子40の位置変動を効果的に抑制できる。Vtに対するVcの比の上限は特に限定されるべきではないが、実用上、80倍以下であること(Vc≦80×Vt)が好ましい。なお、VcがVtの40倍未満である場合、Vcを40000Pa・s以上とすることが好ましく、40000Pa・sを超えることがより好ましい。
【0041】
第1樹脂層10の最低溶融粘度Vtは、例えば800Pa・s以上2000Pa・s以下の範囲内であることが好ましく、1000Pa・s以上1500Pa・s以下の範囲内であることがより好ましい。
【0042】
第3樹脂層30の最低溶融粘度Vnは、異方性導電接続時におけるバンプ間への充填性を確保するため、例えば300Pa・s以上800Pa・s以下の範囲内であることが好ましく、300Pa・s以上500Pa・s以下の範囲内であることがより好ましい。
【0043】
また、第1樹脂層10、第2樹脂層20及び第3樹脂層30の最低溶融粘度到達温度は、異方性導電接続時に加熱を伴う場合は、そのときの加熱温度より低いことが好ましい。なお、最低溶融粘度到達温度は、回転式レオメータ(TA Instruments社)を用い、昇温速度10℃/分、測定圧力5g一定、使用測定プレート直径8mm、測定温度は、例えば30℃以上250℃以下の測定範囲内にあることがより好ましい。測定温度の範囲は、バインダーの条件によって適宜調整してもよい。
【0044】
<第1樹脂層>
第1樹脂層10は、硬化性樹脂組成物から形成することができる。例えば、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有する熱重合性組成物から形成することが好ましい。
【0045】
熱重合性組成物の例としては、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性アクリレート系組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物等が挙げられる。熱カチオン重合開始剤を含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物に代えて、熱アニオン重合開始剤を含む熱アニオン重合性エポキシ系組成物を使用してもよい。また、特に支障を来さなければ、複数種の重合性組成物を併用してもよい。併用例としては、熱カチオン重合性組成物と熱ラジカル重合性組成物の併用などが挙げられる。
【0046】
ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の熱重合型(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。
【0047】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0048】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2質量部以上60質量部以下、より好ましくは5質量部以上40質量部以下である。
【0049】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。また、エポキシ化合物に加えてオキセタン化合物を併用してもよい。
【0050】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができる。特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0051】
熱カチオン重合開始剤の使用量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2質量部以上60質量部以下、より好ましくは5質量部以上40質量部以下である。
【0052】
熱重合性組成物は、膜形成樹脂やシランカップリング剤を含有することが好ましい。膜形成樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。これらは2種以上を併用することができる。これらの中でも、成膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。膜形成樹脂の重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0053】
熱重合性組成物には、溶融粘度調整のために、絶縁フィラを含有させてもよい。絶縁フィラとしては、例えばシリカ粉やアルミナ粉などが挙げられる。絶縁フィラの大きさは粒径20nm以上1000nm以下が好ましく、また、絶縁フィラの配合量は、粘度の幅によっても異なるが、エポキシ化合物等の熱重合性化合物100質量部に対して5質量部以上50質量部以下の範囲内とすることが好ましい。
【0054】
更に、熱重合性組成物に、上述の絶縁フィラとは異なる充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい。
【0055】
<第2樹脂層>
第2樹脂層20は、高粘度の樹脂層であり、異方性導電接続時に生じる第3樹脂層30の樹脂流動による導電粒子40の位置変動への影響を抑制する機能を有する。すなわち、異方性導電接続時に第3樹脂層30の樹脂流動が生じた場合でも、高粘度の第2樹脂層20によって、導電粒子40が不動化され、その移動が抑制される。
【0056】
第2樹脂層20は、第1樹脂層10を構成する熱重合性組成物と同様の組成物から構成することができる。本発明の異方性導電フィルム100では、第1樹脂層10、第2樹脂層20及び第3樹脂層30を構成する樹脂が、いずれも熱重合性樹脂であることが好ましい。
【0057】
なお、このような第2樹脂層20は、第1樹脂層10又は後述する第3樹脂層30の表面を所定の厚みで光硬化させることによって形成してもよい。この場合、第1樹脂層10又は第3樹脂層30のいずれかを形成するための熱重合性組成物に、光重合開始剤を含有させることが好ましい。熱重合開始剤と光重合開始剤を併用するにあたっては、熱重合性化合物と光重合性化合物の両方の機能するものを使用してもよく、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させてもよいが、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させることが好ましい。例えば、熱重合開始剤として熱カチオン重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ化合物を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用することが可能である。
【0058】
アクリレート単位となるアクリレート化合物としては、従来公知の光重合性アクリレートを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート(ここで、(メタ)アクリレートにはアクリレートとメタクリレートとが包含される)、二官能以上の多官能(メタ)アクリレートを使用することができる。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤等を使用することができる。より具体的には、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、リン系光重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤の使用量は、少なすぎると光重合が十分に進行せず、多すぎると剛性低下の原因となるので、アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上25質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上15質量部以下である。
【0059】
<第3樹脂層>
第3樹脂層30は、異方性導電フィルム100に良好な粘着性を付与するための層である。このような第3樹脂層30は、第1樹脂層10を構成する熱重合性組成物と同様の組成物の層から構成することができる。
【0060】
<導電粒子>
導電粒子40は、公知の導電フィルムや異方性導電フィルムに用いられている導電粒子40の中から適宜選択して使用することができる。導電粒子40の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。これらは2種以上を併用することもできる。これらの中でも、金属被覆樹脂粒子は、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。なお、導電粒子40の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来さない絶縁処理が施されていてもよい。
【0061】
導電粒子40の平均粒子径Dは、接続対象物の種類に応じて適宜選択できるが、小さすぎると配線の高さのばらつきを吸収できず抵抗が高くなる傾向があり、大きすぎてもショートの原因となる傾向がある。そこで、配線高さのばらつきに対応できるようにし、また、導通抵抗の上昇を抑制し、且つショートの発生を抑制するために、平均粒子径Dは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2.5μm以上、好ましくは30μm以下、より好ましくは9μm以下である。絶縁性樹脂層に分散させる前の導電粒子40の粒子径は、一般的な粒度分布測定装置により測定することができ、また、平均粒子径Dも粒度分布測定装置を用いて求めることができる。測定装置としては、一例としてFPIA-3000(マルバーン・パナリティカル社)を挙げることができる。N数は1000以上、好ましくは5000以上が好ましい。異方性導電フィルム100における導電粒子40の粒子径は、SEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。この場合、導電粒子40の粒子径を測定するサンプル数を200以上とすることが望ましい。
【0062】
本発明の異方性導電フィルム100を構成する導電粒子40の粒子径のバラツキは、CV値(標準偏差/平均)20%以下であることが好ましい。CV値を20%以下とすることにより、挟持される際に均等に押圧され易くなり、特に配列している場合には押圧力が局所的に集中することを防止でき、導通の安定性に寄与できる。また接続後に圧痕による接続状態の評価を高精度に行うことができる。具体的には、端子サイズが大きいもの(FOGなど)についても、小さいもの(COGなど)についても、圧痕による接続状態の確認を精確に行うことができる。従って、異方性導電接続後の検査が容易になり、接続工程の生産性を向上させることが期待できる。
【0063】
ここで、導電粒子40の粒子径のバラツキは画像型粒度分析装置などにより算出することができる。異方性導電フィルム100中に配置されていない状態の、異方性導電フィルム100の原料粒子としての導電粒子40の粒子径は、一例として、湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン・パナリティカル社)を用いて求めることができる。この場合、導電粒子40の個数は1000個以上、好ましくは3000個以上、より好ましくは5000個以上を測定すれば精確に導電粒子40単体のバラツキを把握することができる。導電粒子40が異方性導電フィルム100に配置されている場合は、平面画像又は断面画像により求めることができる。
【0064】
また、導電粒子40は、略真球であることが好ましい。導電粒子40として略真球のものを使用することにより、例えば、転写型を用いて導電粒子40を配列させた異方性導電フィルム100を製造するにあたり、転写型上で導電粒子40が滑らかに転がるので、導電粒子40を転写型上の所定の位置へ高精度に充填することができる。したがって、導電粒子40を精確に配置することができる。ここで、略真球とは、次式で算出される真球度が70~100の範囲内であることをいう。
【0065】
【数5】
【0066】
式中、Soは導電粒子40の平面画像における該導電粒子40の外接円の面積であり、Siは導電粒子40の平面画像における該導電粒子40の内接円の面積である。
【0067】
この算出方法では、導電粒子40の平面画像を異方性導電フィルム100の面視野および断面で撮り、それぞれの平面画像において任意の導電粒子40について、100個以上(好ましくは200個以上)の外接円の面積と内接円の面積を計測し、外接円の面積の平均値と内接円の面積の平均値を求め、上述のSo、Siとすることが好ましい。また、面視野及び断面のいずれにおいても、真球度が上記の範囲内であることが好ましい。面視野および断面の真球度の差は20以内であることが好ましく、より好ましくは10以内である。異方性導電フィルム100の生産時の検査は主に面視野であり、異方性導電接続後の詳細な良否判定は面視野と断面の両方で行うため、真球度の差は小さい方が好ましい。この真球度は単体であるなら、上述の湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン・パナリティカル社)を用いて求めることもできる。
【0068】
導電粒子40の分散状態は、導電粒子40がランダムに分散している状態でもよいし、規則的に配置されて分散している状態でもよい。どちらの場合においても、異方性導電フィルム100のフィルム厚方向の位置が揃っていることがバンプによる導電粒子40の捕捉安定性の点から好ましい。
【0069】
また、バンプによる導電粒子40の捕捉性とショートの抑制とを両立させる点から、導電粒子40は異方性導電フィルム100の平面視にて規則的に配列していることが好ましい。配列の態様は、端子およびバンプのレイアウトによるため、特に限定はない。例えば、フィルムの平面視にて正方格子配列とすることができる。この他、導電粒子40の規則的な配列の態様としては、長方格子、斜方格子、6方格子、3角格子等の格子配列を挙げることができる。異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよい。規則的な配列は、上述したような格子配列に限定されるものではなく、例えば、導電粒子40が所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させてもよい。導電粒子40を互いに非接触とし、格子状等の規則的な配列にすることにより、異方性導電接続時に各導電粒子40に圧力を均等に加え、導通抵抗のばらつきを低減させることができる。規則的な配列は、例えば異方性導電フィルム100の長手方向に所定の粒子配置が繰り返されている否かを観察することで確認できる。導電粒子40を規則的に配列させる場合に、その配列の格子軸又は配列軸がある場合は、異方性導電フィルム100の長手方向や長手方向と直行する方向に対して平行でもよく、異方性導電フィルム100の長手方向と交叉してもよく、接続する端子幅、端子ピッチ、レイアウトなどに応じて定めることができる。さらに、導電粒子40が、異方性導電フィルム100の平面視にて規則的に配列し、かつフィルム厚方向の位置が揃っていることが捕捉安定性とショート抑制の両立のためにより好ましい。
【0070】
なお、接続する電子部品の端子間スペースが広くショートが発生しにくい場合には、導電粒子40を規則的に配列させることなく導通に支障を来さない程度に導電粒子40があればランダムに分散させていてもよい。
【0071】
導電粒子40の粒子間距離は、異方性導電フィルム100で接続する端子の大きさや端子ピッチに応じて適宜定めることができる。例えば、異方性導電フィルム100をファインピッチのCOG(Chip On Glass)に対応させる場合、ショートの発生を防止する点から最近接粒子間距離を導電粒子40の平均粒子径Dの0.5倍以上にすることが好ましく、0.7倍より大きくすることがより好ましい。一方、導電粒子40の捕捉性の点から、最近接粒子間距離を導電粒子40の平均粒子径Dの4倍以下とすることが好ましく、3倍以下とすることがより好ましい。
【0072】
また、導電粒子40の面積占有率は、好ましくは35%以下、より好ましくは0.3%以上30%以下である。この面積占有率は、異方性導電フィルム100において、以下式により算出することができる。
【0073】
【数6】
【0074】
なお、面積占有率が上述の範囲内であれば個数密度の値には特に制限はないが、実用上、個数密度が小さすぎるとバンプによる導電粒子40の捕捉数が低下してマイクロLED等の導電接続やICチップ等の異方性導電接続が難しくなり、多すぎるとショートすることが懸念されるので、個数密度は、好ましくは50個/mm以上、より好ましくは150個/mm以上、更により好ましくは200個/mm、特に好ましくは6000個/mm以上、である。上限は360000個/mm2以下であればよく、250000個/mm2以下であることが好ましく、100000個/mm2以下がより好ましい。COGやCOPの場合には、12000~30000個/mmであることが好ましい。
【0075】
ここで、導電粒子40の個数密度の測定は、顕微鏡観察により行うことができる。例えば、観察領域として異方性導電フィルム100において、1辺が100μm以上の矩形領域を任意に複数箇所(好ましくは5箇所以上、より好ましくは10箇所以上)設定し、測定領域の合計面積を2mm以上とすることで好ましく行うことができる。個々の領域の大きさや数は、個数密度の状態によって適宜調整すればよい。ファインピッチ用途の比較的個数密度が大きい場合の一例として、異方性導電フィルム100から任意に選択した面積100μm×100μmの領域の200箇所(2mm)について、金属顕微鏡などによる観測画像を用いて個数密度を測定し、それを平均することにより上述の式中の「平面視における導電粒子の個数密度」を得ることができる。面積100μm×100μmの領域は、バンプ間スペース50μm以下の接続対象物において、1個以上のバンプが存在する領域になる。
【0076】
導電粒子40の個数密度は、上述のように金属顕微鏡を用いて観察して求める他、画像解析ソフト(例えば、WinROOF、三谷商事株式会社製など)により観察画像を計測して求めてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0077】
また、導電粒子40の1個の平面視面積の平均は、フィルム面の金属顕微鏡やSEMなどの電子顕微鏡などによる観測画像の計測により求められる。画像解析ソフトを用いてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0078】
[異方性導電フィルム100の製造方法]
本発明の導電フィルムの一態様である図1図4に示す異方性導電フィルム100は、例えば、表面に導電粒子40を保持している熱重合性組成物からなる第1樹脂層10の片面に、別途作製した第2樹脂層20を配置し、さらに、第2樹脂層20における第1樹脂層10に接する面とは反対側の面に、別途作製した第3樹脂層30を配置し、全体を貼り合わせることにより製造することができる。
【0079】
ここで、第1樹脂層10に導電粒子40を保持させる手法としては、従来公知の手法を利用することができる。例えば、第1樹脂層10となるフィルムに導電粒子40を直接散布することにより、第1樹脂層10中に導電粒子40を保持させることができる。あるいは延伸用の粘着フィルムに導電粒子40を単層で付着させた後に二軸延伸させ、その延伸させたフィルムに第1樹脂層10を押圧して導電粒子40を第1樹脂層10に転写することにより、第1樹脂層10に導電粒子40を保持させることができる。また、転写型を使用して第1樹脂層10に導電粒子40を保持させることもできる。ここでは、転写型を使用して本発明の異方性導電フィルム100を製造する例を挙げて説明する。
【0080】
転写型を使用する場合、例えば以下の工程A~工程Eにより、異方性導電フィルム100を得ることができる。
【0081】
(工程A)
まず、複数の凹部が形成された転写型の凹部に導電粒子40を入れる。
【0082】
(工程B)
続いて、転写型内の導電粒子40に、熱重合性化合物と熱重合開始剤と必要に応じて絶縁フィラとを含有する熱重合性組成物を押圧することにより導電粒子40が転写された第1樹脂層10を形成する。
【0083】
(工程C)
次に第1樹脂層10とは別に、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有する熱重合性組成物を成膜することにより第2樹脂層20を形成する。
【0084】
(工程D)
同様にして、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有する熱重合性組成物を成膜することにより第3樹脂層30を形成する。
【0085】
(工程E)
次に、第1樹脂層10における導電粒子40の転写面に第2樹脂層20を配置し、さらに第2樹脂層20の上に第3樹脂層30を配置し、全体を圧着させることにより異方性導電フィルム100を得ることができる。
【0086】
なお、工程Bの押圧力を調整することにより、導電粒子40の第1樹脂層10への埋入の程度を変化させることができる。押圧の程度を大きくすることにより、導電粒子40の第1樹脂層10中への埋入の程度を大きくすることができる。
【0087】
工程Eの圧着の際の圧力を調整することにより、導電粒子40の第2樹脂層20への埋入の程度を変化させることができる。圧力の程度を大きくすることにより、導電粒子40の第2樹脂層20中への埋入の程度を大きくすることができる。
【0088】
使用する転写型としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料などに対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したものを使用することができる。また、転写型は、板状、ロール状等の形状をとることができる。
【0089】
転写型の凹部の形状としては、円柱状、四角柱等の柱形状、円錐台、角錐台、円錐形、四角錐形等の錐体形状等を例示することができる。凹部の配列としては、導電粒子40にとらせる配列に応じて格子状、千鳥状等に適宜設定することができる。凹部の深さに対する導電粒子40の平均粒子径Dの比(=導電粒子40の平均粒子径D/凹部の深さ)は、転写性向上と導電粒子保持性とのバランスから、好ましくは0.4~3.0、より好ましくは0.5~1.5である。なお、転写型の凹部の径と深さは、レーザー顕微鏡で測定することができる。
【0090】
凹部の開口径の導電粒子40の平均粒子径Dに対する比(=凹部の開口径/導電粒子40の平均粒子径D)は、導電粒子40の収容のしやすさ、絶縁性樹脂の押し込みやすさ等のバランスから、好ましくは1.1~2.0、より好ましくは1.3~1.8である。なお、凹部の開口径よりもその底径が小さい場合には、底径は導電粒子40の粒子径の1.1倍以上2倍未満とし、開口径を導電粒子40の粒子径の1.3倍以上3倍未満とすることが好ましい。
【0091】
なお、上記製造方法では、第1樹脂層10に複数の導電粒子40を担持させてから第2樹脂層20及び第3樹脂層30を積層する方法を例に挙げたが、第2樹脂層20に複数の導電粒子40を担持させてから、第1樹脂層10及び第3樹脂層30を積層してもよい。この場合は、第2樹脂層20における導電粒子40の転写面に第1樹脂層10を配置し、さらに第2樹脂層20のもう片側の面に第3樹脂層30を配置し、全体を圧着させることにより異方性導電フィルム100を得ることができる。積層の条件は、特許第6187665号記載の条件に準じて行うことができる。
【0092】
次に、図5図8を参照しながら、本発明の異方性導電フィルム100における第2樹脂層20の作用効果について説明する。図5は、従来の2層構造の異方性導電フィルムを用いて第1電子部品300と第2電子部品400とを異方性導電接続する前の状態を示しており、図6は異方性導電接続後の接続構造体の要部断面を示している。一方、図7は、本発明の異方性導電フィルム100を用いて第1電子部品300と第2電子部品400とを異方性導電接続する前の状態を示しており、図8は異方性導電接続後の接続構造体の要部断面を示している。なお、図5図8中、異方性導電フィルムの面方向を、互いに直交するX軸方向及びY軸方向によるX-Y平面とし、このX-Y平面に垂直な第1電子部品と第2電子部品の圧着方向(突起状電極であるバンプ310の移動方向)をZ軸方向とする。
【0093】
まず、従来の異方性導電フィルム200は、図5に示すように、同一平面上に配列された複数の導電粒子40を担持する粒子担持層110と、この粒子担持層110に積層され、導電粒子40を担持していない絶縁ベース層120とが積層された構造である。
【0094】
異方性導電接続時には、粘度の低い絶縁ベース層120に樹脂流動が発生する。すなわち、第1電子部品300のバンプ310が異方性導電フィルム200の絶縁ベース層120に挿入されることによって、絶縁ベース層120での樹脂がバンプ310によって周囲に押し出され、X-Y平面方向に流動する。特に、加熱を伴う熱圧着の場合、異方性導電フィルム200を構成する絶縁ベース層120には、加熱によって大きな樹脂流動が生じる。
【0095】
また、第1電子部品300と第2電子部品400の圧着によって、バンプ310の圧接面310aと第2電子部品400の間の樹脂にはZ軸方向の力が加わるため、粒子担持層110を構成する樹脂がバンプ310の圧接面310aによって押し出され、絶縁ベース層120側へ流動する。つまり、図6中、矢印で示すように斜め上方向(X-Y平面方向とZ軸方向とが合成された方向)に向かう樹脂流動も生じる。このような粒子担持層110の樹脂流動に伴い、粒子担持層110に担持されていた導電粒子40も、図6中、矢印で示す斜め上方向へ向けて移動しやすくなる。その結果、本来ならばバンプ310と第2電子部品400の電極410との間で押しつぶされるように挟持されて導通を確保するはずの導電粒子40の一部分が、第1電子部品300側の絶縁ベース層120中(ただし、絶縁ベース層120と粒子担持層110の界面では双方の樹脂が溶融混合していることもある)の隣接するバンプ310間へ移動する。このように隣接するバンプ310間に入り込んだ導電粒子40(図6において、符号40Aで表す)は、第1電子部品300と第2電子部品400の導通に寄与しないばかりでなく、隣接するバンプ310間での電気的短絡(ショート)の原因となる。
【0096】
また、本来ならばバンプ310の圧接面310aと第2電子部品400との間に捕捉されるべき導電粒子40の他の一部(図6において、符号40Bで表す)が、バンプ310の圧接面310aから外れて不十分な捕捉状態となることがあり、導通の安定性を低下させる。
【0097】
以上の従来の問題点は、絶縁樹脂層が3層以上からなる積層構造において、各層の粘度と厚みについて考慮されていない場合においても同様である。
【0098】
一方、本発明の異方性導電フィルム100は、図7に示すように、第1樹脂層10と第3樹脂層30との間に、相対的に高粘度の第2樹脂層20を介在させて第1樹脂層10と第2樹脂層20の両方によって導電粒子40を担持する構造である。そのため、異方性導電接続時に、粘度の低い第3樹脂層30に大きな樹脂流動が発生しても、粘度が高く、導電粒子40を不動化させる作用を有する第2樹脂層20によって樹脂流動の影響が緩和され、導電粒子40の移動が制限される。
【0099】
すなわち、本発明の導電フィルムの一態様である異方性導電フィルム100では、導電粒子40が高粘度の第2樹脂層20の開口もしくは凹部にはめ込まれた状態とも言える特有の構造的特徴を有することから、導電粒子40のX-Y平面方向及びZ軸方向へ移動が生じにくく、導電粒子40が隣接するバンプ310間へ移動したり、バンプ310の圧接面310aから外れた位置に移動して不十分な捕捉状態となったりする確率を大幅に低減できる。
【0100】
また、本発明の異方性導電フィルム100は、第1樹脂層10と第2樹脂層20の合計厚み(Tt+Tc)が導電粒子40の平均粒子径Dに対して前述の式(1)の関係にあることによって、高粘度の第2樹脂層20によって導電粒子40による導通が妨げられることがない。
【0101】
従って、図8に示すように、複数の導電粒子40が整列配置をほぼ維持した状態でバンプ310と接続することが可能になり、ショートの発生を抑制しながら、第1電子部品300と第2電子部品400の異方性導電接続の信頼性を高めることができる。
【0102】
なお、図7では、図1に類似した構造の異方性導電フィルム100を例示して説明したが、図2図4に示す異方性導電フィルム100を用いる場合も同様である。
【0103】
[接続構造体]
本発明の導電フィルムは、マイクロLEDを基板に搭載する場合や、異方性導電フィルムとして使用する場合に好ましく適用することができる。例えば、異方性導電フィルム100は、公知の半導体素子、ICチップ、ICモジュール、光学半導体素子やFPCなどの第1電子部品300と、FPC、ガラス基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品400とを異方性導電接続する際に好ましく適用することができる。
【0104】
異方性導電フィルム100を用いた電子部品の接続方法としては、例えば、図7に示すように、各種基板などの第2電子部品400に対し、異方性導電フィルム100を第1樹脂層10側から仮貼りし、仮貼りされた異方性導電フィルム100に対し、ICチップ等の第1電子部品300を搭載し、圧着する。すなわち、第1電子部品300と第2電子部品400とを、異方性導電フィルム100を介して圧着する。圧着は、加熱を伴う熱圧着が好ましい。このようにして、図8に例示する本発明の接続構造体を製造することができる。
【0105】
製造された本発明の接続構造体500は、第1電子部品300と、この第1電子部品300に異方性導電接続されている第2電子部品400と、第1電子部品300と第2電子部品400との間に介在し、複数の導電粒子40が分散された絶縁樹脂層510と、を備えている。なお、絶縁樹脂層510は、第1樹脂層10、第2樹脂層20及び第3樹脂層30に由来する樹脂層である。
【0106】
第1電子部品300は、第2電子部品400に対向して複数の平面視が略長方形(短冊型)をなす突起状電極であるバンプ310を有している。複数のバンプ310は、例えば、その短手方向に所定間隔で互いに平行に配列されていることが好ましい。この場合、短手方向に所定間隔で放射状に配列されることも含む。また、バンプの組が点在している場合もある。接続構造体500では、第1電子部品300のバンプ310と第2電子部品400の電極410とが導電粒子40を介して電気的に接続されている。
【0107】
ここで、接続構造体500において、バンプ310が第1電子部品300から突出している高さをバンプ高さHとする。また、第1電子部品300と第2電子部品400との間において、複数のバンプ310の高さHを結ぶ仮想の平面(つまり、バンプ310の圧接面310aを通る平面)を接続面Pとする。
【0108】
そして、接続構造体500について、接続面Pに対して直交する断面であって、互いに隣接する任意の2つのバンプ310の短手方向に平行で、かつ、バンプ310の長手方向の長さの中点を通る断面を観察したときに、隣り合うバンプ310間において、導電粒子40の全体が接続面Pよりも第1電子部品300側に位置している導電粒子40(図6の符号40Aを参照;以下、「バンプ間侵入粒子」と記すことがある)の存在個数が2個以下であることが好ましい。
【0109】
なお、断面観察は、接続構造体500から、SEM(走査型電子顕微鏡)などの電子顕微鏡等を用いた観察手法を用いて、複数箇所(例えば任意の20箇所)の断面を観察し、各観察で得られたバンプ間侵入粒子の存在個数の平均値をとった場合に、該平均値が2個以下であることがより好ましい。
【実施例0110】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、溶融粘度は、回転式レオメータ(TA Instruments社)を用い、昇温速度10℃/分、測定圧力5g一定、使用測定プレート直径8mm、測定温度80℃という条件で測定した。
【0111】
[実施例1]
(第1樹脂層の形成)
正方もしくは六方格子パターンに対応した凸部の配列パターンを有する金型を作成し、その金型に、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させたものを流し込み、冷やして固めることで、導電粒子40の粒子密度28000個/mmとなるような格子パターンの凹部を有する樹脂製の転写型を作製した。この転写型の凹部に導電粒子(積水化学工業(株)、平均粒子径3.2μm)を充填した。
【0112】
一方、フェノキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル(株)、YP-50)、シリカフィラ(アエロジルR805、日本アエロジル(株))、液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)、jER828)、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI-60L)及びシランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM-403)を、表1に示す配合組成(単位は質量部)で含有する熱重合性組成物を調製した。この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmのPETフィルム上にバーコータを用いて塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表2に示す厚みの粘着性の第1樹脂層を形成した。この第1樹脂層を、弾性ローラーを用いて、押圧時温度50℃、押圧0.5MPaという条件で転写型の導電粒子収容面に押圧することにより、導電粒子が転写された第1樹脂層を形成し、転写型から剥離した。この第1樹脂層の最低溶融粘度も表2に示した。
【0113】
(第2樹脂層の形成)
フェノキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル(株)、YP-50)、シリカフィラ(アエロジルR805、日本アエロジル(株))、液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)、jER828)、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI-60L)及びシランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM-403)を、表1に示す配合組成(単位は質量部)で含有する熱重合性組成物を調製した。この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmのPETフィルム上にバーコータを用いて塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表2に示す厚みの高粘度の第2樹脂層を形成した。この第2樹脂層の最低溶融粘度も表2に示した。
【0114】
(第3樹脂層の形成)
フェノキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル(株)、YP-50)、シリカフィラ(アエロジルR805、日本アエロジル(株))、液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)、jER828)、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI-60L)及びシランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM-403)を、表1に示す配合組成(単位は質量部)で含有する熱重合性組成物を調製した。この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmのPETフィルム上にバーコータを用いて塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表2に示す厚みの粘着性の第3樹脂層を形成した。この第3樹脂層の最低溶融粘度も表2に示した。第3樹脂層は、層全体の厚みが約13~14μmとなるように、厚みを調整した。
【0115】
(第1樹脂層と第2樹脂層と第3樹脂層の積層)
第1樹脂層の導電粒子転写面に、第2樹脂層を対向させ、さらに第2樹脂層における第1樹脂層と対向する面とは反対側の面に第3樹脂層を対向させ、これらを押圧時温度50℃、押圧0.2MPaという条件で貼り合わせることで異方性導電フィルムを製造した。
【0116】
[実施例2~7]
表1に示す配合組成の熱重合組成物を使用し、表2に示す厚みと最低溶融粘度の第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層を形成した以外は実施例1と同様にして異方性導電フィルムを製造した。
【0117】
[比較例1~3、参考例1~3]
表1に示す配合組成の熱重合組成物を使用し、表2に示す厚みと最低溶融粘度の第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層を形成した以外は実施例1と同様にして異方性導電フィルムを製造した。
【0118】
実施例、参考例及び比較例の異方性導電フィルムを構成する各層の配合組成を表1に示し、異方性導電フィルムの各層の構造、厚み、物性及び特性の評価結果を表2に示した。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
<特性評価>
実施例1~7、比較例1~3及び参考例1~3で作製した異方性導電フィルムを用い、評価用ICとガラス基板を熱圧着により異方性導電接続して評価用接続構造体を作成した。
【0122】
評価用IC:
外形=1.8mm×20mm×0.2mm、金バンプ仕様=12μm(高)×15μm(幅)×100μm(長)(バンプ間ギャップ15μm)
【0123】
ITOコーティング配線付ガラス基板:
外形=30mm×50mm×0.5mm
【0124】
熱圧着接続条件:
ICチップ側から、150℃で80MPa、5秒間の熱圧着。
【0125】
作製した評価用接続構造体について、(a)導電粒子の不動性、(b)導通性、(c)接着性を、それぞれ以下に説明する方法で評価した。得られた結果を表2に示した。
【0126】
(a)導電粒子の不動性
評価用接続構造体から切片を作製し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、樹脂流動によって移動した導電粒子の数をカウントすることで粒子の不動性を判定した。断面観察は、バンプが評価用ICから突出している高さをバンプ高さHとし、評価用ICとガラス基板との間において、複数のバンプの高さHを結ぶ仮想の平面(つまり、バンプの圧接面を通る平面)を接続面Pとしたときに(図8参照)、接続面Pに対して直交する断面であって、互いに隣接する任意の2つのバンプの短手方向に平行で、かつ、バンプの長手方向の長さの中点を通る断面について行った。断面観察の結果、隣り合うバンプ間において、導電粒子の全体が接続面Pよりも評価用IC側に位置している導電粒子を「バンプ間侵入粒子」として、その存在個数をカウントし、任意の20箇所の断面の観察を行ったときの平均値を求めた。評価基準を以下に示す。
【0127】
(評価基準)
A(非常に良好) :バンプ間侵入粒子 0個(なし)
B(良好) :バンプ間侵入粒子 1個以上2個以下
C(不良) :バンプ間侵入粒子 2個を超え3個未満
D(極めて不良) :バンプ間侵入粒子 3個以上
【0128】
(b)導通性
得られた評価用接続構造体の導通抵抗(初期導通抵抗)を、デジタルマルチメータを用いて4端子法で2mAの電流を通電したときの値を測定した。実用上、測定抵抗値が2Ω以下であることが望まれるため、測定抵抗値が1.5Ω未満をA(良好)、1.5~2ΩをB(可)、2Ωを超える場合をC(不良)と判定した。
【0129】
(c)接着性
市販のACF貼り付け装置(型番TTO-1794M、芝浦メカトロニクス(株))を用いて異方性導電フィルムをサイズ2mm×5cmでガラス基板に貼り付け、1秒後の到達温度が60~80℃になるよう、圧力1MPaで仮貼りした。ガラス基板を裏返した場合に、異方性導電フィルムがガラス基板から剥がれたり浮いたりしないかを目視し、以下の基準で評価した。
【0130】
(評価基準)
A(良好):60℃で仮貼りできた場合
B(普通):60℃では仮貼りできないが、80℃で仮貼りできた場合
C(不良):80℃では仮貼りできない場合
【0131】
表2より、実施例1~7の異方性導電フィルムは、第1樹脂層と第3樹脂層との間に、相対的に高粘度の第2樹脂層を介在させており、かつ、第1樹脂層と第2樹脂層の合計厚み(Tt+Tc)が、導電粒子40の平均粒子径Dに対して式(1)の関係を満たすことによって、(a)導電粒子の不動性、(b)導通抵抗、(c)接着性のいずれの評価項目も良好な結果を示した。それに対して、各層の最低溶融粘度の大小関係が適切でない比較例1や第2樹脂層の最低溶融粘度が1500Pa・sを下回る比較例2では、いずれも導電粒子40の不動性が「不良」もしくは「極めて不良」であった。また、第1樹脂層と第2樹脂層の合計厚み(Tt+Tc)が、導電粒子40の平均粒子径Dに対して式(1)の関係を満たしていない比較例3では、導電粒子40の不動性が「不良」であるとともに、導通性も「不良」であった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の導電フィルムは、ICチップやマイクロLEDなどの電子部品の配線基板への導電接続あるいは異方性導電接続に有用である。
【0133】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。
【符号の説明】
【0134】
10…第1樹脂層
20…第2樹脂層
30…第3樹脂層
40,40A,40B…導電粒子
100…導電(異方性導電)フィルム
110…粒子担持層
120…絶縁ベース層
200…異方性導電フィルム(従来)
300…第1電子部品
310…バンプ(突起状電極)
310a…圧接面
400…第2電子部品
410…電極
500…接続構造体
510…絶縁樹脂層
H…バンプ高さ
P…仮想の接続面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
また、導電粒子40の面積占有率は、特に限定されるものではないが、好ましくは35%以下、より好ましくは0.3%以上30%以下である。この面積占有率は、異方性導電フィルム100において、以下式により算出することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
【数6】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
また、導電粒子の個数密度も、特に制限されるものではないが、実用上、個数密度が小さすぎるとバンプによる導電粒子40の捕捉数が低下してマイクロLED等の導電接続やICチップ等の異方性導電接続が難しくなり、多すぎるとショートすることが懸念されるので、個数密度は、好ましくは50個/mm以上、より好ましくは150個/mm以上、更により好ましくは200個/mm、特に好ましくは6000個/mm以上、である。上限は360000個/mm2以下であればよく、250000個/mm2以下であることが好ましく、100000個/mm2以下がより好ましい。COGやCOPの場合には、12000~30000個/mmであることが好ましい。