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特開2023-51510トンネルの壁面タイル加熱装置およびトンネルの壁面タイル加熱除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051510
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】トンネルの壁面タイル加熱装置およびトンネルの壁面タイル加熱除去方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
E21D11/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162252
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】501497264
【氏名又は名称】西日本高速道路エンジニアリング四国株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521429993
【氏名又は名称】株式会社南建
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】一円 信作
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 剛
(72)【発明者】
【氏名】川西 宏典
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155CA04
2D155LA16
(57)【要約】
【課題】トンネルの壁面タイルを、上下にわたって均等に加熱しやすくできるトンネルの壁面加熱装置を提供する。
【解決手段】道路に沿ったコンクリート躯体の内側壁面に、接着剤3を介して多数枚の磁器タイル4を貼ってあるトンネルにおいて、前記多数枚の磁器タイル4を貼ってあるタイル貼り壁面に、その表面側から赤外線を照射して加熱する赤外線照射装置6を設け、前記赤外線照射装置6を前記タイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整可能な高さ調整機構7を設けてあるトンネルの壁面タイル加熱装置であって、前記赤外線照射装置6を前記タイル貼り壁面に対して遠近移動操作可能にする遠近移動機構8を、前記高さ調整機構7とは別個に設けてある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に沿ったコンクリート躯体の内側壁面に、接着剤を介して多数枚の磁器タイルを貼ってあるトンネルにおいて、
前記多数枚の磁器タイルを貼ってあるタイル貼り壁面に、その表面側から赤外線を照射して加熱する赤外線照射装置を設け、
前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整可能な高さ調整機構を設けてあるトンネルの壁面タイル加熱装置であって、
前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に対して遠近移動操作可能にする遠近移動機構を、前記高さ調整機構とは別個に設けてあるトンネルの壁面タイル加熱装置。
【請求項2】
前記赤外線照射装置を上下に移動自在に取り付ける縦スライドフレームを設けて前記高さ調整機構に構成し、
前記縦スライドフレームを、前記タイル貼り壁面に対して遠近移動自在に支持する伸縮アームを介して支柱に取り付けて前記遠近移動機構を構成し、
前記支柱を基台に立設させてある請求項1記載のトンネルの壁面タイル加熱装置。
【請求項3】
基台に立設させた支柱を設け、
前記赤外線照射装置を、前記タイル貼り壁面に対して遠近移動自在に支持する伸縮アームを介して前記支柱の上部に取り付けて前記遠近移動機構に構成し、
前記支柱を上下伸縮操作自在に構成して前記高さ調整機構に構成してある請求項1に記載のトンネルの壁面タイル加熱装置。
【請求項4】
前記赤外線照射装置を支持する支柱を基台に立設させ、
走行移動可能な走行車体の荷台上に前記基台を載置可能に設け、
前記支柱の基部をタイル貼り壁面に対して遠近移動自在に前記基台に取り付けて前記遠近移動機構に形成してある請求項1に記載のトンネルの壁面タイル加熱装置。
【請求項5】
走行移動可能な走行車体の荷台上に前記基台を載置可能に設け、
前記支柱の基部を前記走行車体の走行方向に固定位置変更自在に前記基台に取り付ける走行方向変位機構を設けてある請求項2~4のいずれか1項に記載のトンネルの壁面タイル加熱装置。
【請求項6】
前記基台には、前記タイル貼り壁面に対する遠近方向に出退自在な作業用ステージを内蔵してある請求項2~5のいずれか1項に記載のトンネルの壁面タイル加熱装置。
【請求項7】
道路に沿ったコンクリート躯体の内側壁面に、接着剤を介して多数枚の磁器タイルを貼ってあるトンネルにおいて、前記多数枚の磁器タイルを貼ってあるタイル貼り壁面に、その表面側から赤外線を照射して加熱する赤外線照射装置と、前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整可能な高さ調整機構とを走行移動可能な走行車体の荷台上に有するトンネルの壁面タイル加熱装置を用いて前記タイルを除去するトンネルの壁面タイル加熱除去方法であって、
前記高さ調整機構を前記走行車体の走行方向に変位可能な走行方向変位機構を設け、
前記高さ調整機構を利用して前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整してタイルを除去し、走行方向変位機構を利用して前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に沿って前後移動させ、これらを繰り返すことで走行車両の停車状態において前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に沿って上下及び前後移動させてタイルを除去するトンネルの壁面タイル加熱除去方法。
【請求項8】
前記走行方向変位機構を原位置から終端位置まで移動させるとともに前記高さ調整機構を利用して第一の1単位の壁面のタイルを除去し、次の第二の1単位の壁面まで走行車両を移動させて、第二の1単位の壁面のタイルを除去する請求項7記載のトンネルの壁面タイル加熱除去方法。
【請求項9】
前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に対して遠近移動操作可能にする遠近移動機構を前記高さ調整機構とは別個に前記赤外線照射装置と走行方向変位機構との間に設け、少なくとも前記走行車両の移動時に遠近移動機構を利用して前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に対して離隔及び近接させる請求項8記載のトンネルの壁面タイル加熱除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に沿ったコンクリート躯体の内側壁面に、接着剤を介して多数枚の磁器タイルを貼ってあるトンネルにおいて、前記多数枚の磁器タイルを貼ってあるタイル貼り壁面に、その表面側から赤外線を照射して加熱する赤外線照射装置を設け、前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整可能な高さ調整機構を設けてあるトンネルの壁面タイル加熱装置であって、前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に対して遠近移動操作可能にする遠近移動機構を、前記高さ調整機構とは別個に設けてあるトンネルの壁面タイル加熱装置及びトンネルの壁面タイル加熱除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に沿ったコンクリート躯体の内側壁面に、接着剤を介して多数枚の磁器タイルを貼ってあるトンネルにおいては、トンネルの内壁面は、タイル、接着剤、コンクリート躯体から成る積層構造をしており、これらの材料が外部から温湿度変化を受けると、材料の温湿度による膨張係数の違いにより、各構成材に異なった伸縮が発生し、しかも、タイル周囲目地から遊離石灰、漏水に伴う部分的な浮き上がりが発生して、経年劣化により、磁器タイルの剥離、剥落が発生してきている箇所がある。
特に、コンクリート躯体の接着拘束は、タイル貼り壁面の端部よりも中央部が大きく、前述の伸縮の発生に基づいて、端部から剥離が発生しやすいということが確認されている。
これに対し、最近、トンネルのコンクリート内壁面に貼られた磁器タイルを、コンクリート躯体から取り外して、それらの磁器タイルを撤去したコンクリート躯体の内側壁面を、再び内装できる様にするトンネルのタイル撤去が考えられている。その上、多数の箇所や、多数枚に亘って剥離、剥落が発生している長いトンネルにおいては、今後の安全のためにも、広範囲又は全面的に磁器タイルを撤去しなければならない。
そこで、経年劣化に対する補修のために、トンネルの壁面タイルを加熱して磁器タイルをコンクリート躯体から撤去するのに、トンネルの壁面タイル加熱装置として、基台に立設させた支柱に上下揺動アームを設け、その上下揺動アームの先端部に赤外線照射装置を取り付けて高さ調整機構を構成してあるトンネルの壁面加熱装置が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-2748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のトンネルの壁面タイル加熱装置は、支柱に取り付けた上下揺動アームの上下動により赤外線照射装置の上下高さ位置を変更して、トンネルの壁面に接着された多数枚の内の所定高さに位置する磁器タイルを加熱するものである。
しかし、その上下揺動アーム先端部は、上下に円弧を描いて高さが変わるもので、必ずしもトンネルの内側壁面の円弧曲面に沿った動きをしないことが多い。
つまり、トンネルの壁面の曲率は、トンネルの大きさによっても異なるばかりか、上下揺動アーム先端部の上下円弧動する曲率半径よりもトンネルの曲率半径の方が大きいことが多い。
そこで、上下揺動アームの先端部の上下動に伴って、赤外線照射装置と壁面タイルとの近接距離が変わり、結局、多数枚の上下に位置する壁面タイルを均等に加熱するのは困難であるという問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、トンネルの壁面タイルを、上下にわたって均等に加熱しやすくできるトンネルの壁面加熱装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、道路に沿ったコンクリート躯体の内側壁面に、接着剤を介して多数枚の磁器タイルを貼ってあるトンネルにおいて、前記多数枚の磁器タイルを貼ってあるタイル貼り壁面に、その表面側から赤外線を照射して加熱する赤外線照射装置を設け、前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整可能な高さ調整機構を設けてあるトンネルの壁面タイル加熱装置であって、前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に対して遠近移動操作可能にする遠近移動機構を、前記高さ調整機構とは別個に設けてある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に対して遠近移動操作可能にする遠近移動機構を、前記高さ調整機構とは別個に設けてあることにより、例え、トンネルのタイル張り壁面の曲面が、トンネルによって異なっていたり、トンネルの高さ位置によって異なっていても、赤外線照射装置を高さ調整機構によって所定の高さ位置に設置する際に、タイルとの近接位置をも遠近移動機構で調整することで、多数のタイルとの離間距離を適切に調整でき、トンネルの壁面タイルを、上下にわたって均等に加熱しやすくできる。
従って、トンネルのタイル撤去作業を、簡単に且つ、確実に行うことができる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記赤外線照射装置を上下に移動自在に取り付ける縦スライドフレームを設けて前記高さ調整機構に構成し、前記縦スライドフレームを、前記タイル貼り壁面に対して遠近移動自在に支持する伸縮アームを介して支柱に取り付けて前記遠近移動機構を構成し、前記支柱を基台に立設させたところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、本発明の第1の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、縦スライドフレームと伸縮アームとを設けることによって、赤外線照射装置を、基台に立設させた支柱側から所定の高さのトンネルのタイル貼り壁面に対して、基台を設置させた箇所から移動させることなく簡単に近接配置して加熱できる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、基台に立設させた支柱を設け、前記赤外線照射装置を、前記タイル貼り壁面に対して遠近移動自在に支持する伸縮アームを介して前記支柱の上部に取り付けて前記遠近移動機構に構成し、前記支柱を上下伸縮操作自在に構成して前記高さ調整機構に構成したところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、高さ調整機構を構成するのに、赤外線照射装置を支持する伸縮アームを取り付ける支柱を上下伸縮調整自在に構成してあることで、全体の重心が、基台上で支柱の取り付け位置側により近づくので、伸縮アームにより赤外線照射装置をトンネル壁面に近接させる位置調整操作を、安定させやすくなる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記赤外線照射装置を支持する支柱を基台に立設させ、走行移動可能な走行車体の荷台上に前記基台を載置可能に設け、前記支柱の基部をタイル貼り壁面に対して遠近移動自在に前記基台に取り付けて前記遠近移動機構に形成したところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、前記遠近移動機構は、前記支柱の基部をタイル貼り壁面に対して遠近移動自在に前記基台に取り付けて構成してあることにより、遠近移動機構の重心位置は、常に支柱の上下軸心の下方に位置するために、赤外線照射装置の支持を安定して行うことができる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、走行移動可能な走行車体の荷台上に前記基台を載置可能に設け、前記支柱の基部を前記走行車体の走行方向に固定位置変更自在に前記基台に取り付ける走行方向変位機構を設けたところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、前記支柱の基部を前記走行車体の走行方向に固定位置変更自在に前記基台に取り付ける走行方向変位機構を設けることにより、支柱に支持させる赤外線照射装置により加熱するタイル貼り壁面に対して、走行車体の停車位置を変えずに、走行方向に異なった位置のタイルを加熱でき、作業効率を上げやすくなる。
【0016】
本発明の第6の特徴構成は、前記基台には、前記タイル貼り壁面に対する遠近方向に出退自在な作業用ステージを内蔵したところにある。
【0017】
本発明の第6の特徴構成によれば、赤外線照射装置をタイル貼り壁面に近接させて加熱しながらタイルの剥離作業を行う際に、作業用ステージをタイル貼り壁面に近づくように、基台から突出させておけば、その作業用ステージに作業員が乗って作業ができ、作業能率が向上する。
【0018】
本発明の第7のトンネルの壁面タイル加熱除去方法の特徴構成は、道路に沿ったコンクリート躯体の内側壁面に、接着剤を介して多数枚の磁器タイルを貼ってあるトンネルにおいて、前記多数枚の磁器タイルを貼ってあるタイル貼り壁面に、その表面側から赤外線を照射して加熱する赤外線照射装置と、前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整可能な高さ調整機構とを走行移動可能な走行車体の荷台上に有するトンネルの壁面タイル加熱装置を用いて前記タイルを除去するトンネルの壁面タイル加熱除去方法であって、前記高さ調整機構を前記走行車体の走行方向に変位可能な走行方向変位機構を設け、前記高さ調整機構を利用して前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整してタイルを除去し、走行方向変位機構を利用して前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に沿って前後移動させ、これらを繰り返すことで走行車両の停車状態において前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に沿って上下及び前後移動させてタイルを除去することにある。
【0019】
本発明の第7の特徴構成によれば、走行方向変位機構で前後させるだけなので、ヒーターの位置ずれが起こりにくく迅速に作業をできる。
【0020】
本発明の第8の特徴構成は、前記走行方向変位機構を原位置から終端位置まで移動させるとともに前記高さ調整機構を利用して第一の1単位の壁面のタイルを除去し、次の第二の1単位の壁面まで走行車両を移動させて、第二の1単位の壁面のタイルを除去することにある。
【0021】
本発明の第8の特徴構成によれば、走行方向変位機構で第一の1単位の壁面を除去したら、走行車を動かして、次の第二の1単位を除去することで、ヒーターの位置合わせの時間を減らして合理的にタイルを除去できる。
【0022】
本発明の第9の特徴構成は、前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に対して遠近移動操作可能にする遠近移動機構を前記高さ調整機構とは別個に前記赤外線照射装置と走行方向変位機構との間に設け、少なくとも前記走行車両の移動時に遠近移動機構を利用して前記赤外線照射装置を前記タイル貼り壁面に対して離隔及び近接させることにある。
【0023】
本発明の第9の特徴構成によれば、少なくとも走行車の移動時にヒーターがタイル面にあたることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の壁面タイル加熱装置の左側面図である。
図2】本発明の壁面タイル加熱装置において(a)は平面図、(b)は右側面図である。
図3】本発明の使用説明を示す作用図で、(a)は最下部の壁面タイルの加熱状態、(b)は中間位置での壁面タイルの加熱状態、(c)は最上部の壁面タイルの加熱状態を示す右側面図である。
図4】本発明の使用説明の平面図で、(a)は最後部位置での使用状態、(b)は中間位置での使用状態、(c)は最前部位置での使用状態を示す図である。
図5】本発明の使用説明の平面図で、(a)は走行車体を道路の所定位置に停車した状態を示し、(b)は赤外線パネルヒーターを上部に上昇させた状態を示し、(c)は支柱に取り付けた伸縮アームを壁面タイルに近づけるべく旋回させた状態を示し、(d)は赤外線パネルヒーターを下降させた状態を示し、(e)は赤外線パネルヒーターを上方に揺動させて壁面に沿わせた状態を示す図である。
図6】別実施形態の左側面図で、(a)は道路の所定位置で赤外線パネルヒーターを監査路側に近づけた状態を示し、(b)は支柱を上方に伸長させた状態を示し、(c)は伸縮アームを伸長させた状態を示し、(d)は支柱を下方に伸縮させて赤外線パネルヒーターを監査路上の壁面パネルに近接させた状態を示す。
図7】別実施形態の左側面図で、(a)は道路の所定位置で赤外線パネルヒーターを監査路側に近づけた状態を示し、(b)は赤外線パネルヒーターの高さ位置を上昇させた状態を示し、(c)は赤外線パネルヒーターを壁面側に近接させるべく支柱を移動させた状態を示し、(d)は赤外線パネルヒーターを監査路上の最下部の壁面タイルに近づけるべく加工させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[壁面タイル加熱装置]
図1図2(a)、(b)に、 道路1に沿ったコンクリート躯体2の内側壁面の内、特に横側面に、ポルトランドセメント、珪砂、に加えて、エチレン酢酸ビニル系再乳化形粉末樹脂を混入したり、セメントと骨材が強固に結合するために、セメント及び珪砂にエチレン酢酸ビニル共重合体エマルジョンを混入させる、いわゆるポリマーセメントモルタルと称する物等のタイル接着用モルタルや、エポキシ樹脂系の合成樹脂接着剤などの接着剤3を介して多数枚の磁器タイル4を直接貼ってある磁器タイル直貼りトンネルを示してある。
そのトンネルの左右横側面の内の少なくとも一側方のコンクリート躯体2の一部には、道路1に沿った所定間隔置きに火災検知器を取り付けると共に、消火栓、消火器の設置部(図外)を設けてあり、且つ、道路1に沿って交通監視員の通行用の段部となる監査路5が設けてあり、前記通行用の監査路5には、道路1に沿った所定間隔置きにハンドホール(図外)が形成してある。
因みに、タイル用の接着剤3は、前記トンネルにおけるタイル貼り壁面において、温湿度変化、遊離石灰、漏水等の環境の変化や経年劣化によって、磁器タイル4の剥離や剥落が多数発生している現場においては、道路交通上の安全の確保のために、磁器タイル4の剥離箇所以外に接着剤3によるタイル貼り付き維持箇所も含めて磁器タイル4の広範囲、又は、全面的に磁器タイル4を撤去しなければならない。
そこで 、経年劣化に対する補修のために、トンネルの壁面タイルを加熱して磁器タイル4をコンクリート躯体から撤去することが提案されており、その壁面タイルの加熱のために、次に示す壁面タイル加熱装置を示す。
【0026】
図1に示すように、多数枚の磁器タイル4を貼ってあるタイル貼り壁面に、その表面側から赤外線を照射して加熱する赤外線照射装置6を設け、赤外線照射装置6をタイル貼り壁面に沿って上下位置変更調整可能な高さ調整機構7を設け、赤外線照射装置6をタイル貼り壁面に対して遠近移動操作可能にする遠近移動機構8を、高さ調整機構7とは別個に設けてトンネルの壁面タイル加熱装置を構成してある。
【0027】
前記赤外線照射装置6は、大きな熱量が必要なためにガス燃焼によるバーナーを設けた赤外線パネルヒーター9で、その赤外線照射装置6を上下に移動自在に取り付ける縦スライドフレーム10を設けて高さ調整機構7に構成され、基台11に立設させた支柱12の上端部に、縦スライドフレーム10がタイル貼り壁面に対して遠近移動自在に支持する伸縮アーム13を介して取り付けて遠近移動機構8に構成してある。
【0028】
尚、縦スライドフレーム10は、図2(b)では、上下に4分割されたフレームを、互いに嵌合させて、上下伸縮自在に構成してある。
【0029】
図1図2図4に示すように、基台11は、走行移動可能なトラック等の走行車体14の荷台15上に載置可能に設け、支柱12の基部を、走行車体14の走行方向に固定位置変更自在な第1台車16を介して基台11に取り付けて、走行方向変位機構17に構成してある。
従って、支柱12に支持させる赤外線照射装置6により、加熱するタイル貼り壁面に対して、走行車体14の停車位置を変えずに、走行方向に異なった位置のタイルを加熱でき、作業効率を上げやすくなる(図4(a)、(b)、(c))。
【0030】
また、支柱12には、図2(a)、図5(a)~(c)に示すように、伸縮アーム13を、平面視で走行車体14上でその走行方向に沿う収納姿勢位置Aから、伸縮アーム13の先端をタイル貼り壁面に近づけて赤外線照射装置6を多数のタイルに対向させるタイル加熱姿勢位置Bになるように、縦軸心18回りに左右回動可能に取り付けてある。
【0031】
前記赤外線パネルヒーター9は、図1図3(a)~(c)に示すように、縦スライドフレーム10に上下スライド自在に第2台車19を介して案内支持されると共に、その縦スライドフレーム10の上端部に取り付けたワイヤー巻取式モータ20のワイヤー21により、上下位置変更操作自在に第2台車19が吊り下げ支持される。
また、赤外線パネルヒーター9は、上下揺動自在に枢支軸28を介して第2台車19に取り付けられ、赤外線パネルヒーター9の表面がタイル貼り壁面に平行に沿うようにその揺動角度を設定変更可能なターンバックル22又はコイルバネを設けてある。
尚、上記ターンバックル22に代えてコイルを取り付ける場合は、赤外線パネルヒーター9をタイル貼り壁面に押し付けることにより、赤外線パネルヒーター9の姿勢がタイル貼り壁面の傾きに倣って沿わせることができ、ターンバックルなどの調整が不要になって、作業性を向上させることができる。
【0032】
前記伸縮アーム13は、図1図5(d)、(e)に示すように、支柱12に取り付ける基部側の第1アーム部材13Aに対して先端側の第2アーム部材13Bを出退自在に内嵌させ、第1アーム部材13Aに取り付けたネジ式電動シリンダー23の出退駆動によって伸縮操作可能に構成されている。
【0033】
前記基台11には、図1図5に示すように、前記タイル貼り壁面に対する遠近方向に出退自在な作業用ステージ24を、走行車体14の走行方向の3か所に各別に内蔵してある。
作業用ステージ24には、先端側に安全柵25及びその横サイドにチェーン柵26が着脱自在に取り付けてある。
従って、必要に応じてそれぞれの作業用ステージ24を、基台11から突出させて、その作業用ステージ24に作業員が乗って、壁面に近づいた状態で赤外線パネルヒーター9の上下角度調整や、壁面体の磁器タイル4の撤去作業ができる。
【0034】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
なお、以下の他の実施形態において、上記実施形態と同様の部材には同一の符号を附してある。
〈1〉 前記高さ調整機構7を構成するのに、図6(a)~(d)に示すように、基台11に立設させた支柱12を設け、赤外線照射装置6を、タイル貼り壁面に対して遠近移動自在に支持する伸縮アーム13を介して支柱12の上部に取り付けて遠近移動機構8に構成し、支柱12を上下伸縮操作自在に構成してあってもよい。この場合は、全体の重心が、基台11上で支柱12の取り付け位置側により近づくので、伸縮アーム13により赤外線照射装置6をトンネル壁面に近接させる位置調整操作を、安定させやすくなる。
〈2〉 前記遠近移動機構8は、先の実施形態で説明した伸縮アーム13の伸縮構造に限らず、例えば、図7(a)~(d)に示すように、赤外線照射装置6を支持する支柱12を基台11に立設させ、走行移動可能な走行車体14の荷台15上に基台11を載置可能に設け、支柱12の基部をタイル貼り壁面に対して遠近移動自在に基台11に取り付けて形成してあってもよい。この場合、伸縮アーム13が不要か、もしくは、軽量化でき、壁面タイル加熱装置の重心位置は、平面視で、より一層支柱12側に近づき、安定になり、支柱12に取り付ける部材の軽量化を図れる。
〈3〉 縦スライドフレーム10は、図2(b)では、互いに嵌合する4部材のフレームから成っているが、1部材又は、2~5分割の部材を互いに嵌合するものになっていてもよい。
【0035】
次にトンネルの壁面タイル加熱除去方法について説明する。
トンネルの左右側壁の下側には、図1図5に示すように、一方側に段部(高さ約80~90cm)のある監査路5があり(図1)、他方側の追い越し車線側は、監査路5が設けられていない(図2(b)、図3(a)~(c)、図4(a)~(c))。
【0036】
[壁面タイルの加熱方法]
1、第1段階
例えば、図5(a)~(e)に示すように、監査路5側の壁面の場合を例にとって説明すると、トラックなどの走行車体14の荷台15上に載置した壁面タイル加熱装置において、赤外線照射装置6を先端側に設けた伸縮アーム13を、収納姿勢位置Aからタイル加熱姿勢位置Bになるように縦軸心18周りに旋回させ(図5(a)→(b)→(c))、この時、監査路5の手摺27に赤外線パネルヒーター9が当たらないように、ワイヤー巻取式モータ20の巻取駆動によりワイヤー21を巻き取って高い位置に保持すると共に、縦スライドフレーム10を最小長さに縮小させる必要がある。
赤外線パネルヒーター9が壁面タイルに近づいたら、上側の壁面タイル群又は下側の壁面タイル群のいずれか(どちらか一方側を優先させて加熱)の面に沿うように(図1図5(c)、(d)、(e))、ターンバックル22又はコイルバネにより赤外線パネルヒーター9を上下揺動させてその傾きを調整し、加熱工程に入る。
【0037】
2、第2段階
次に、図4(a)~(c)に示すように、走行車体14を移動させずに、走行方向変位機構17によって、支柱12の位置を走行方向に移動させて(図4(a)→(b)→(c))、赤外線照射装置6を壁面タイルに沿って走行方向に変位させ、未加熱の壁面タイルを加熱する。
【0038】
尚、追い越し車線側の壁面タイルの場合も、上記と同様に操作するが、特に、図3(a)~(c)に示すように、縦スライドフレーム10を下方に伸長させて赤外線パネルヒーター9を最下位の位置に下げて、最下部の壁面タイル群の位置(図3(a))から順に高い位置に変位させて(図3(b)→(c))加熱処理するか、もしくは、その逆に最上位の位置(図3(c))から最下部の位置に変位させて加熱処理する。
【0039】
また、作業用ステージ24は、図1図3に示すように、基台11から壁面までの離間距離や赤外線パネルヒーター9の位置に応じて作業者が作業しやすいように出退調整すればよい。
【0040】
尚、夫々の壁面タイルの加熱後には、タイルの除去作業を行う。
タイルの除去は、図4(a)、(c)の符号U1、U2で示す1単位を塊として、1つの停車位置で行う。
【0041】
第一の1単位U1では、前記走行方向変位機構17を原位置から終端位置まで移動させるとともに高さ調整機構7を利用して1単位の壁面のタイルを除去し、次に第二の1単位U2の壁面まで走行車体14を移動させて、第二の1単位U2の壁面のタイルを除去する。
【0042】
前記赤外線照射装置6をタイル貼り壁面に対して遠近移動操作可能にする遠近移動機構8を、高さ調整機構7とは別個に赤外線照射装置6と走行方向変位機構17との間に設け、少なくとも走行車体14の移動時に遠近移動機構8を利用して赤外線照射装置6をタイル貼り壁面に対して離隔及び近接させる。
【0043】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
3 接着剤
4 磁器タイル
6 赤外線照射装置
7 高さ調整機構
8 遠近移動機構
10 縦スライドフレーム
11 基台
12 支柱
13 伸縮アーム
14 走行車体
15 荷台
24 作業用ステージ
U1 第一の1単位
U2 第二の1単位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7