(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051552
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】シュート練習装置
(51)【国際特許分類】
A63B 69/40 20060101AFI20230404BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A63B69/40 501F
A63B69/00 504A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162330
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000138244
【氏名又は名称】株式会社モルテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】相田 靖之
(57)【要約】
【課題】ボールを圧迫することなく、実際のパス・プレイにおけるボールの逆回転を再現するとともに、練習者がレシーブからシュートへのタイミングを習得し易いシュート練習装置を提供する。
【解決手段】シュート練習装置100は、基台1と、基台1の前方に設けられ、練習者に向かってボールを射出するボール射出部2と、ボール射出部2の前方上側に設けられ、射出されたボールの上端に接触してボールに逆回転を付与する回転ローラ5と、を備える。ボール射出部2は、下部が基台1に回動可能に支持され、上部においてボールを射出するアーム22を備え、回転ローラ5は、無動力である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台の前方に設けられ、練習者に向かってボールを射出するボール射出部と、
前記ボール射出部の前方上側に設けられ、射出された前記ボールの上端に接触して前記ボールに逆回転を付与する回転ローラと、を備える、
ことを特徴とするシュート練習装置。
【請求項2】
前記ボール射出部は、下部が前記基台に回動可能に支持され、上部において前記ボールを射出するアームを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシュート練習装置。
【請求項3】
前記回転ローラは、無動力である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシュート練習装置。
【請求項4】
前記基台の後方に設けられ、前記練習者がシュートしたボールを回収するネットが懸吊されたネット支柱を支持するネット支持部と、
前記基台又は前記ネット支持部にゴール支柱が着脱可能に立設され、前記練習者がボールをシュートするゴールと、を更に備える、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシュート練習装置。
【請求項5】
前記ネット支持部は、その背面に、前記ゴール支柱を取り付ける下接続部及び上接続部を備え、前記下接続部に前記ゴール支柱の下部が軸着され、前記上接続部に前記ゴール支柱の対応する部位が止着される、
ことを特徴とする請求項4に記載のシュート練習装置。
【請求項6】
前記ゴール支柱は、前記ネット支持部に立設された際に前記ネット支持部の天板よりも上方となる位置に折畳み部を有する、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のシュート練習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュート練習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バスケットボール競技において、ゴールに向かってシュートしたボールをネットで回収し、そのボールを練習者に射出(パス)して、練習者が続けてシュート練習を行えるようにしたバスケットボールマシン(シューティングマシンなどともいう)が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のバスケットボールマシンでは、ネットで回収したボールは、射出口の先端の上下に設けられた一対のパッシングローラによって練習者のいる前方に向かって射出される。
【0003】
この一対のパッシングローラはそれぞれモータによって駆動されており、ボールに逆回転(バックスピン)をかけるため、上側のパッシングローラは、下側のパッシングローラよりも相対的に緩やかに回転するように制御される。このボールへの逆回転の付与は、典型的にはバスケットボールにおいて行われるパス・プレイの一つであるチェストパスを再現するものであり、逆回転によって生じる揚力(マグヌス効果)を利用して、ゴールから比較的遠くにいる練習者にもボールが極力直線的かつスピーディに到達するようにするためものである。
【0004】
射出されたボールに回転を付与するマシンとしては、バスケットボールマシンのほかにも、例えば野球用のピッチングマシンがよく知られている。ピッチングマシンには、ボールを射出する機構として、投手の腕を疑似的に再現するアーム式と、上記のバスケットボールマシンと同様に一対又は3以上の回転ローラを用いたローラ式(ロータ式、ホイール式)が採用されることが多い。アーム式では球種がストレートに限られる一方、ローラ式では種々の変化球を射出することが可能となるが、両者は、それぞれの用途に応じて選択される。
【0005】
このほか、近年、圧縮空気を用いてボールを射出するエア式(エアガン式)のピッチングマシンが開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2のピッチングマシンでは、圧縮空気で射出された段階のボールは無回転であり、そのままでは空気中でのボールの軌道が不規則となるため、射出口の先端近傍にボールに回転を付与するための球回転手段として、モータによって駆動される回転体と、回転体の対向する位置にボールを押圧する押圧体が設けられている。バスケットボールと野球ではボールの構造が異なり、それぞれのボールに付与される速度も飛距離も異なるが、特許文献1及び2は、ボールを圧迫した状態で回転を付与する点、ボールに回転を付与するパッシングローラも回転体もモータによって駆動される点で共通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5776018号明細書
【特許文献2】特開2019-080684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のバスケットボールマシンでは、モータによって駆動される一対のパッシングローラによりボールを射出すること、また、特許文献2のピッチングマシンでは、エアガン式にボールを射出することから、味方のプレイヤからパスをその動きも見極めつつレシーブしてシュートを行うという実際のプレイにおけるタイミングを習得し難い、という課題がある。また、特許文献1及び2とも、射出されるボールを圧迫して回転を付与することから、それぞれのパッシングローラや回転体及びボール自体へのダメージが蓄積し、相対的に耐久性に難がある、という課題がある。さらに、特許文献1及び2とも、ボールに回転を付与するパッシングローラも回転体もモータによって駆動されることから、機構上、その制御が相対的に複雑なものとなる、という課題がある。
【0008】
本発明は、従来技術にある上記のような課題に鑑み、ボールを圧迫することなく、実際のパス・プレイにおけるボールの逆回転を再現するとともに、練習者がレシーブからシュートへのタイミングを習得し易いシュート練習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の第1の観点は、シュート練習装置であって、基台と、前記基台の前方に設けられ、練習者に向かってボールを射出するボール射出部と、前記ボール射出部の前方上側に設けられ、射出された前記ボールの上端に接触して前記ボールに逆回転を付与する回転ローラと、を備える、ことを特徴とする。
【0010】
(2)上記(1)の構成において、前記ボール射出部は、下部が前記基台に回動可能に支持され、上部において前記ボールを射出するアームを備えてもよい。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記回転ローラは、無動力であってもよい。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つの構成において、前記基台の後方に設けられ、前記練習者がシュートしたボールを回収するネットが懸吊されたネット支柱を支持するネット支持部と、前記基台又は前記ネット支持部にゴール支柱が着脱可能に立設され、前記練習者がボールをシュートするゴールと、を更に備えてもよい。
【0013】
(5)上記(4)の構成において、前記ネット支持部は、その背面に、前記ゴール支柱を取り付ける下接続部及び上接続部を備え、前記下接続部に前記ゴール支柱の下部が軸着され、前記上接続部に前記ゴール支柱の対応する部位が止着されてもよい。
【0014】
(6)上記(4)又は(5)の構成において、前記ゴール支柱は、前記ネット支持部に立設された際に前記ネット支持部の天板よりも上方となる位置に折畳み部を有してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ボールを圧迫することなく、実際のパス・プレイにおけるボールの逆回転を再現するとともに、練習者がレシーブからシュートへのタイミングを習得し易いシュート練習装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るシュート練習装置を、ネットが張られた状態で前方から示す斜視図である。
【
図2】シュート練習装置を、ネットが張られた状態で上方から示す斜視図である。
【
図3】シュート練習装置を、ネットが張られた状態で後方から示す斜視図である。
【
図4】シュート練習装置を、ネットが取り外された状態で前方から示す斜視図である。
【
図5】シュート練習装置のボール射出部の内部を説明する図(その1)である。
【
図6】シュート練習装置のボール射出部の内部を説明する図(その2)である。
【
図7】シュート練習装置のボール射出部から射出されたボールが練習者に届く様子を説明する図である。
【
図8】シュート練習装置を、ネットが取り外され、かつ、ゴールが立設された状態で後方から示す斜視図である。
【
図9】シュート練習装置を、ネットが取り外され、かつ、ゴールが後方に倒された状態で後方から示す斜視図である。
【
図10】シュート練習装置を、ネットが張られ、かつ、ゴールが後方に折り畳まれた状態で後方から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
本発明の実施形態に係るシュート練習装置100について、図面を参照して説明する。以下の説明において、ゴール4の正面側を前方、ゴール4の背面側を後方、ゴール4から見て右側を右方、ゴール4から見て左側を左方という。また、以下の説明では、複数ある同一部材には枝番を付した符号を各別に付与しているが、同一部材に共通の説明を行う際には、枝番を省略している。
【0018】
シュート練習装置100の要旨は、次のとおりである。すなわち、シュート練習装置100は、基台1と、基台1の前方に設けられ、練習者に向かってボールを射出するボール射出部2と、ボール射出部2の前方上側に設けられ、射出されたボールの上端に接触してボールに逆回転を付与する回転ローラ5と、を備える。ボール射出部2は、下部が基台1に回動可能に支持され、上部においてボールを射出するアーム22を備える。回転ローラは、無動力である。
【0019】
なお、シュート練習装置100は、バスケットボールのシュート練習に限られず、バスケットボールから派生したあるいは類似した他のボール競技におけるシュート練習にも適用できる。他のボール競技としては、例えば、バスケットボールと同じように支柱の高所にバスケット又は籠のゴールが設けられているものの、シュートされたボールを跳ね返すバックボードがない、ビーチバスケットボール、ネットボール、コーフボール、セストボールなどを挙げることができる。以下では、バスケットボールに適用した場合を例として、シュート練習装置100を説明する。
【0020】
(シュート練習装置の全体概要)
まず、
図1から
図3を参照して、バスケットボールに係るシュート練習装置100の一例について、その全体概要を説明する。シュート練習装置100は、基台1と、基台1の前方に設けられ、練習者に向かってボールを射出するボール射出部2と、基台1の後方に設けられ、練習者がシュートしたボールを回収するネット32が懸吊されたネット支柱31を支持するネット支持部3と、基台1又はネット支持部3にゴール支柱41が着脱可能に立設され、練習者がボールをシュートするゴール4と、を備える。
【0021】
基台1は、ボール射出部2、ネット支持部3及びゴール4を載置するものであり、キャスタ11(前方左側をキャスタ11a、後方左側をキャスタ11b、前方右側をキャスタ11c、後方右側をキャスタ11dとする。なお、キャスタ11a,11bは
図1及び
図3参照、キャスタ11dは
図3参照、キャスタ11cは後述する
図4参照)が底面に取り付けられた台車状のものが好ましい。これにより、シュート練習装置100を所望の配置可能場所に自由に移動することができる。また、キャスタ11を設けた場合には、これらキャスタ11のいずれか、例えば、後方左側のキャスタ11b及び後方右側のキャスタ11dにストッパ(不図示)を設けることにより、シュート練習装置100を固定するようにしてもよい。
【0022】
ボール射出部2は、基台1の前方に設けられており、前方に向かって開放された開口部21を有している。後述する態様でボールが開口部21に投入されると、ボールは、ボール射出部2の内部に設けられている射出機構としてのアーム22によって前方に射出される。練習者は、射出されたボールをパスとして受ける形となり、ボールが連続して射出されると、練習者はそれに応じて連続してシュート練習を行うことが可能となる。詳しくは後述するが、開口部21の上部には、アーム22によって射出されたボールが接触して逆回転を付与されることとなる回転ローラ5が設けられている。
【0023】
ネット支持部3は、基台1の後方に設けられており、ネット支柱31(前方左側をネット支柱31a、後方左側をネット支柱31b、前方右側をネット支柱31c、後方右側をネット支柱31dとする)と、ネット支柱31に懸吊されたネット32(前方をネット32a、後方をネット32b、左側をネット32c、右側をネット32dとする)を支持する。ネット支持部3は、ネット32を拡開する際のネット支柱31a,31cの傾斜を考慮して、側面視で上部が下部よりも前方に長く形成されている(後述の
図7参照)。
【0024】
ここではバスケットボールに係るシュート練習装置100を例として説明しているため、ネット支柱31はすべてゴール4の前方に展開しており、ネット32は、ゴール4の前方を四面でカバーしてボールを回収するように形成されている。ゴール4の直近に位置する後方のネット32bはゴール4の高さに合わせて他のネット32a,32c,32dよりも低く設定されている。
【0025】
なお、ビーチバスケットボール、ネットボール、コーフボール、セストボールなどのバックボード42のないゴール4に係るシュート練習装置100の場合には、これらのボール競技ではゴール4の周囲360度のどこからでもシュートが可能であることから、例えば、基台1を拡張して、ゴール4の後方にもネット支持部3を設けることにより、ゴール4を2つのネット支持部3で挟むようにして、ゴール4の周囲360度をネット32でカバーするようにしてもよい。
【0026】
ネット支柱31は、ネット支持部3の天板36の貫通穴37を貫通して上方に向かって突出している。ネット支柱31の下端は、後述するように、ネット支持部3の内部に配置されている台座39(
図7から
図9参照)に支持される。ネット支柱31は、ネット支持部3への収納性を考慮して伸縮式とすることが好ましい。ここでは、例として、上段部/中段部/下段部の3段伸縮式のネット支柱31が示されており、1本のネット支柱31に2カ所の伸縮部38が設けられている。伸縮部38が弛緩されると、上段部は中段部に、中段部は下段部に収容される。
【0027】
ネット支持部3の天板36の前方にはネット取付けリム33が立設されており、ネット取付けリム33にはネット32の底部が四方から囲うように取り付けられる。ネット32によって回収されたボールは、ネット取付けリム33から出て、ボール誘導部34を経て、前述したボール射出部2の開口部21に投入される。
【0028】
ゴール4は、ゴール支柱41(左側をゴール支柱41a、右側をゴール支柱41bとする)と、ゴール支柱41の上部に取り付けられたバックボード42と、バックボード42の前面に取り付けられたゴールリング43を備える。ゴール支柱41は、後述するようにネット支持部3に立設されるとともに、ゴール4を支持する。左側のゴール支柱41a及び右側のゴール支柱41bの2本構成ではなく1本構成や3本構成などとしてもよい。
【0029】
ゴールリング43にはボールが通過するバスケットが取り付けられているが、ここでは図示を省略している。バスケットとしては、バスケットボールのほか、ビーチバスケットボール、ネットボール、コーフボール、セストボールなど、それぞれのボール競技に適合したものが取り付けられる。ボール競技によっては、底部に穴の開いていないバスケット又は籠が用いられるが、その場合は、バスケットにゴールしたボールを別途用意された棒で突き出してネット32の中に落下させてもよいし、練習用として底部に穴の開いているバスケット又は籠を取り付けてもよい。
【0030】
なお、ビーチバスケットボール、ネットボール、コーフボール、セストボールなどのバックボード42のないゴール4に係るシュート練習装置100の場合には、ゴールリンク4(及び省略されているバスケット又は籠)はゴール支柱41の上部(又は上端)に取り付けられる。
【0031】
(ボール射出部)
次に、ボール射出部2について、
図4を参照してさらに説明する。
図4は、説明のため、ネット32を取り外すとともに、基台1の外郭及びネット支持部3の天板36を取り外した状態を示している。
【0032】
ボール射出部2は、次のようにして機能する。まず、ネット取付けリム33を経由して回収されたボールは、下に凸に湾曲したボール誘導部34に沿って落下し、ボール射出部2の開口部21の直前で屈曲する屈曲部34aで一旦受け止められる。これにより落下してきた勢いを削がれたボールは、屈曲部34aの下端側の傾斜を転がり、ガイド23(水平のガイド23a,垂直のガイド23b)で案内されて開口部21に投入される。投入されたボールは、開口部21の内側に設けられた射出機構としてのアーム22に支持され、アーム22は、スプリング機構(不図示)によってボールを開口部21から前方に射出する。ボールが回転ローラ5に接触して射出される態様については、
図5から
図7を参照して後述する。
【0033】
ボール射出部2は、機械式で駆動するものであってもよいし、電気式で駆動するこのであってもよい。また、ボールの射出方向や射出速度、射出間隔などは、任意の設定に制御できるようにしたものであってもよい。射出方向については、例えば、バスケットボールに使用する場合には、ボール射出部3をゴール4の前方180度の範囲で回転するようにしてもよいし、ビーチバスケットボールなどに使用する場合には、基台1を拡張してボール射出部3をゴール4の周囲360度の範囲で回転するようにしてもよい。
【0034】
(回転ローラ)
ボールが回転ローラ5に接触してボール射出部2から射出される態様について、
図5から
図7を参照して説明する。
図5及び
図6は、ボール射出部2のカバーを取り外した内部を図示している。前述したように、回収されたボールは、ボール誘導部34に沿って落下し、ボール射出部2の開口部21の直前で屈曲する屈曲部34aで一旦受け止められ、屈曲部34aの下端側の傾斜を転がり、ガイド23(水平のガイド23a,垂直のガイド23b)で案内されて開口部21に投入される。ボールは、水平のガイド23aに保持される。
【0035】
アーム22の下部22bにはボース射出部2の後方に延在するスプリング(不図示)が接続されており、アーム22の上部22aに連接されている支持材22cが上部22aを後方下側に引き下げると、スプリングに逆らってアーム22の下部22bが前方上側に引き上げられ、スプリングが伸長する。そして、支持材22cが上部22aの引き下げを解除することにより、スプリングは収縮し、アーム22の上部22aと下部22bは元の位置に戻る。このスプリングが収縮する力によって、ボールは前方に射出される。
【0036】
ここで、アーム22の上部22aは、ボールに接触した状態でボールを押し出すように射出してもよいし、ボールから離間した状態でボールを打ち出すように射出してもよい。さらに、ボールに与えられる射出方向の射出力をより強くするためには、アーム22の上部22aに突起部(不図示)を設けておき、突起部がボールから離間するまで上部22aを引き下げ、水平のガイド23aに保持された状態のボールを突起部によって打ち出すようにしてもよい。
【0037】
また、支持材22cは、モータ(不図示)によって駆動されてよいが、モータは、一定の時間的間隔で定時的に動作するようにしてもよいし、1個又は2個以上のボールの重みに応じて動作するようにしてもよい。
【0038】
このようにして射出されたボールは、その上端がボール射出部2の前方上側に設けられている回転ローラ5に接触する。ボールは、アーム22によって与えられた射出方向の力と回転ローラ5に接触した衝撃によって、射出方向に対して逆回転が付与される。
【0039】
回転ローラ5は、種々の態様をもって構成することができるが、
図5及び
図6では、ボール射出部2を構成するフレーム材の上部から前方上側に延在するローラ支持部52と、その先端に回転可能に取り付けられたローラ本体51によって構成された例を示している。ローラ本体51は、接触するボールによって自由に回転するものであり、モータによって回転するものではない。すなわち、ローラ本体51ひいては回転ローラ5は、無動力である。
【0040】
射出されたボールの逆回転の程度(回転数、回転速度)や飛距離は、回転ローラ5とボールの接触具合により調節可能である。例えば、アーム22の射出力が同じ場合、ローラ支持部52の角度を射出方向に対して鋭角側に調節してローラ本体51を強めにボールに当てることにより、逆回転の程度を強くし、飛距離も伸ばすことができる。一方、ローラ支持部52の角度を射出方向に対して鈍角側に調節してローラ本体51を弱めにボールに当てることにより、逆回転の程度を弱くし、飛距離も短くすることができる。
【0041】
さらに、回転ローラ5は、シュート練習の内容に応じて、種々の変形を施されてもよい。例えば、ローラ本体51にストッパ(不図示)を設けて、ローラ本体51が回転できないようにしてもよい。ローラ本体51が回転しない場合、射出されたボールは逆ローラ本体51に接触して逆回転するものの飛距離を短くすることができる。また、あえて、無回転のボールに対しても練習を行えるようにしたい場合には、ローラ支持部52を折り畳み式又は伸縮式にしてローラ本体51がボールに当たらないようにしてもよい。
【0042】
図7は
図4の一部を拡大して側方から示すととともに、ボールBが飛んでいく様を模式的に示すものである。ボール射出部2からアーム22によって射出されたボールBは、回転ローラ5に接触することにより逆回転が付与され、練習者Pに向かって飛んでいく。逆回転によって生じる揚力(マグヌス効果)によって、ボールBは、重力に逆らって、極力直線的かつスピーディに到達する。逆回転の程度が弱い、又は、無回転の場合、ボールBは、飛距離が短くなり、練習者の手前で床面に向かって落ちていくこととなる。
【0043】
(ネット支持部)
図4に戻り、ネット支持部3について説明する。ネット支持部3は、4本のネット支柱31を支持しているが、ここでは、ネット支柱31は、その伸縮部38(
図1参照)が弛緩されて上段部/中段部/下段部が短縮された状態で示されている。また、ネット支柱31のうちネット支柱31a,31bについては、上段部/中段部を収容した下段部がネット支持部3の下部に落とし込まれて収納された状態で、一方、ネット支柱31c,31dについては、上段部/中段部を収容した下段部がネット支持部3の内部の所定の位置に設けられている台座39(
図7から
図9を参照して後述する)に支持された状態で、それぞれ示されている。ネット支柱31は、ネット支持部3に収納される際にはネット支柱31a,31bの位置を、ネット32を張る際にはネット支柱31c,31dの位置を取る。
【0044】
次に、ネット支持部3へのゴール4の取付け態様について、
図7から
図9を参照して説明する。
図8及び
図9は
図4を後方から見た場合を示している。
【0045】
ゴール4のゴール支柱41は、
図8に示すように、左側のゴール支柱41a及び右側のゴール支柱41bともに、ネット支持部3の例えば背面351に設けられた上下の接続部35(下接続部35a、上接続部35b)に着脱可能に立設される。具体的には、ネット支持部3は、その背面351に、ゴール支柱41を取り付ける下接続部35a及び上接続部35bを備えており、下接続部35aにゴール支柱41の下部が軸着され、上接続部35bにゴール支柱41の対応する部位が止着される。ゴール支柱41の軸着又は止着には、蝶ボルトなどの固定手段が用いられる。
【0046】
ゴール支柱41の取付け手順としては、
図9に示すように、まず、ゴール4を倒した状態で、下接続部35aにゴール支柱41の下部が回動可能に軸着される。そして、ゴール4を立ち上がらせた後、上接続部35bにゴール支柱41の対応する部位が止着される。
図7は、ネット支持部3の背面351にゴール支柱41を立設した状態を示す。ゴール4を取り外す際には、逆に、上接続部35bからゴール支柱41を外した後、ゴール4を倒した状態で、下接続部35aからゴール支柱41の下部を外す。
【0047】
このように、ゴール支柱41の下部を回動可能に軸着することにより、ゴール4を倒した状態でネット支持部3へ取り付けたり、ネット支持部3から取り外したりすることができるので、取付け作業者が1人であっても、安全にかつ困難なく、ゴール4をネット支持部3の背面351に立設させたり解体させたりすることが可能となる。
【0048】
なお、本実施形態では、ゴール支柱41をネット支持部3の背面351の外側に着脱可能に立設した態様を示しているが、そのほかにも、ゴール支柱41をネット支持部3の背面351の内側や、ネット支持部3の上面(天板37)若しくは側面に、又は基台1に着脱可能に立設するようにしてもよい。このうち、ネット支持部3の上面に立設する場合には、例えば、回動可能な上接続部35bを上面に設けたうえでゴール支柱41を軸着し、立設した後に転倒防止のストッパが掛かるようにしてもよい。また、基台1に立設する場合には、下接続部35aを基台1に設けるとともに上接続部35bをネット支持部3に設けてもよい。このように、ゴール支柱41の配置場所に応じて、下接続部35a及び/又は上接続部35bは、適宜設定することが可能である。
【0049】
ここで、
図7から
図9では、
図3とは異なり、ゴール支柱41又は下接続部35aの下端に、キャスタ45(左側のゴール支柱41aにキャスタ45a、右側のゴール支柱41bにキャスタ45b)が設けられている態様を示している。これは、ゴール4の材質などによって重量が嵩む場合などに、キャスタ45を設けておくことにより、立設されたゴール4の荷重を床面に伝達してネット支持部3への負担を軽くしたり、シュート練習装置100を移動させる際の安定を増したりする効果が期待できる。なお、キャスタ45をゴール支柱41に回動可能にあらかじめ取り付けておくことも可能であり、その場合には、ネット支持部3に取り付けられていない状態のゴール4を倒した状態で取付け作業者1人でも容易に運搬することができる。
【0050】
前述した台座39について、補足する。ネット支持部3の内部には、
図8及び
図9に示すように、ネット支柱41の所望の高さを得ることができる位置にネット支柱41を支持するための台座39が設けられている。これをネット支持部3の側面から見ると、
図7に示すようであり、台座39は、ネット32を張る際に、天板36の貫通穴37に貫通されたネット支柱31(の下段部)の下端を支持する。
図7では、
図8及び
図9と同様に、ネット支柱31a,31bについては、上段部/中段部を収容した下段部がネット支持部3の下部に落とし込まれて収納された状態で、一方、ネット支柱31c,31dについては、上段部/中段部を収容した下段部が台座39に支持された状態で示されている。
【0051】
次に、ネット支柱41の折畳み構造について、
図10を参照して説明する。
図10は
図3の態様においてネット支柱41を後方に折り畳んだ場合を示している。
【0052】
ゴール支柱41は、ネット支持部3に立設された際にネット支持部3の天板36よりも上方となる位置に折畳み部44(左側のゴール支柱41aに折畳み部44a、右側のゴール支柱41bに折畳み部44b)を有する。折畳み部44はヒンジ構造となっており、意図しない折畳みが生じないように、ストッパ付きのものとする。必要時には、このストッパを解除してゴール支柱41を後方に折り畳むことになるが、これにより、バックボード42やゴールリング43(又は図示しないバスケット)に生じた不具合への対応や、高さ制限のある場所の保管や運搬などの維持管理を容易に行うことができる。
【0053】
さらに、
図10では、ゴール支柱41を後方に1回折り畳んだ態様を示しているが、折畳み部44とバックボード42の間にもう1カ所の折畳み部を設けてバックボード4を更に前方に折り畳むようにしてもよい。このようにゴール支柱41をZ字状に折り畳むことにより、ゴール4を取り付けたままでも、シュート練習装置100の保管や運搬が行い易くなる。
【0054】
(シュート練習装置の他の態様)
シュート練習装置100は、前述したとおり、バスケットボール以外の類似のボール競技、例えば、ビーチバスケットボール、ネットボール、コーフボール、セストボールなどのバックボード42のないゴール4が設定されるボール競技にも適用することができる。これらのボール競技では、ゴール4の周囲360度のどこからでもシュートが可能であることから、上記した説明の中では、シュート練習装置100の基台1を拡張して、ゴール4の後方にもネット支持部3を設けることにより、ゴール4を2つのネット支持部3で挟むようにして、ゴール4の周囲360度をネット32でカバーする態様としてもよい旨を述べたが、この他にも、1つの相対的に大きなネット支持部3でゴール4を囲うように構成してもよい。この別の態様では、例えば、ゴール4のゴール支柱41が基台1又はネット支持部3に立設される点を同様として、ゴール支柱41がネット取付けリム33を通過するように配置することにより、4面のネット32でゴール4の周囲全体を囲ってボールを回収することができる。
【0055】
また、シュート練習装置100は、使用時においては、上級者のみならず初心者や子供でもシュートの練習ができるように、ゴール4(ゴールリング43)の高さを調節できるように構成してもよい。例えば、ゴール支柱41の全部又は上部の一部区間をネット支柱31と同様に伸縮式としてもよい。この場合、ネット支柱31の長さや角度の調節を行って、張られたネット32の上辺の高さをゴール4(ゴールリング43)の高さと調和させる。なお、ゴール支柱41を伸縮式とすると、非使用時においても、高さ制限のある場所の保管や運搬などの対応が容易となる。
【0056】
(実施形態の効果)
本実施形態において、以上のように、シュート練習装置100は、基台1と、基台1の前方に設けられ、練習者に向かってボールを射出するボール射出部2と、ボール射出部2の前方上側に設けられ、射出されたボールの上端に接触してボールに逆回転を付与する回転ローラ5と、を備える。ボール射出部2は、下部が基台1に回動可能に支持され、上部においてボールを射出するアーム22を備える。回転ローラは、無動力である。これにより、ボール射出部2は、スプリングによるアーム式の射出であっても、所望に応じて、ボールに逆回転を付与することができる。これにより、ボールを圧迫することなく、実際のパス・プレイにおけるボールの逆回転を再現するとともに、練習者がレシーブからシュートへのタイミングを習得し易いシュート練習装置100を提供することができる。具体的には、練習者は、アーム22の動作のタイミングに合わせて姿勢を取ったり移動したりしながら、実際のゲームにおけるチェストパスと同じように、逆回転しているボールをレシーブして、シュートの練習を行うことができる。
【0057】
また、シュート練習装置100は、基台1の後方に設けられ、練習者がシュートしたボールを回収するネット32が懸吊されたネット支柱31を支持するネット支持部3と、基台1又はネット支持部3にゴール支柱41が着脱可能に立設され、練習者がボールをシュートするゴール4と、を備えるように構成としたことから、既設のゴールが設けられていない場所であっても配置が可能であり、また、バックボード42の有無にかかわらずバスケット又は籠のゴール4に対してシュート練習を行うことが可能なシュート練習装置100を提供することができる。
【0058】
また、ネット支持部3は、その背面351に、ゴール支柱41を取り付ける下接続部35a及び上接続部35bを備えており、下接続部35aにゴール支柱41の下部が軸着され、上接続部35bにゴール支柱41の対応する部位が止着されるように構成としたことから、取付け作業者が1人であっても、安全にかつ困難なく、ゴール4をネット支持部3の背面351に立設させたり解体させたりすることができる。
【0059】
また、ゴール支柱41は、ネット支持部3に立設された際にネット支持部3の天板36よりも上方となる位置に折畳み部44(左側のゴール支柱41aに折畳み部44a、右側のゴール支柱41bに折畳み部44b)を有するように構成としたことから、バックボード42やゴールリング43(又は図示しないバスケット)に生じた不具合への対応や、高さ制限のある場所の保管や運搬などを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
100…シュート練習装置
1…基台
11,11a,11b,11c,11d…キャスタ
2…ボール射出部
21…開口部
22…アーム(射出機構)
23,23a,23b…ガイド
3…ネット支持部
31,31a,31b,31c,31d…ネット支柱
32,32a,32b,32c,32d…ネット
33…ネット取付けリム
34…ボール誘導部
35,35a,35b…ゴール接続部
351…背面
36…天板
37…貫通穴
38…伸縮部
39…台座
4…ゴール
41,41a,41b…ゴール支柱
42…バックボード
43…ゴールリング
44,44a,44b…折畳み部
45,45a,45b…キャスタ
5…回転ローラ
51…ローラ本体
52…ローラ支持部