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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051579
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】車両検出システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/065 20060101AFI20230404BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G08G1/065 A
G08G1/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162387
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 浩
(72)【発明者】
【氏名】小泉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小杉 明史
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181DD02
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】少ないデータ量で効率良く複数のセンサ装置を同期させて、車両が橋梁を通過したことを精度良く検出する。
【解決手段】車両検出システムは、複数のセンサ装置と、端末装置と、情報処理部とを備える。複数のセンサ装置のそれぞれは、橋梁に設けられ、車両の走行方向における橋梁の変位を表す観測値を検出する。端末装置は、複数のセンサ装置のそれぞれから観測値を収集する。情報処理部は、端末装置により収集された複数のセンサ装置のそれぞれの観測値の時系列データに基づき、車両が橋梁を通過したことを検出する。端末装置は、複数のセンサ装置に対して、定期的に検出要求を送信する。複数のセンサ装置のそれぞれは、検出要求を取得した場合、所定時間間隔毎に観測値を検出し、検出した所定時間間隔毎の観測値を端末装置に送信する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁に設けられ、車両の走行方向における前記橋梁の変位を表す観測値を検出する複数のセンサ装置と、
前記複数のセンサ装置のそれぞれから前記観測値を収集する端末装置と、
前記端末装置により収集された前記複数のセンサ装置のそれぞれの前記観測値の時系列データに基づき、前記車両が前記橋梁を通過したことを検出する情報処理部と、
を備え、
前記端末装置は、前記複数のセンサ装置に対して、定期的に検出要求を送信し、
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、前記検出要求を取得した場合、所定時間間隔毎に前記観測値を検出し、検出した所定時間間隔毎の前記観測値を前記端末装置に送信する
車両検出システム。
【請求項2】
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、前記走行方向の変位として、前記橋梁におけるセンサ装置が設けられた位置の前記走行方向の伸縮量を検出する
請求項1に記載の車両検出システム。
【請求項3】
前記情報処理部は、
前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、前記観測値の時系列データを取得する取得部と、
前記観測値の時系列データにおけるピーク波形の大きさに応じた特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量に基づき、前記車両が前記橋梁を通過したことを検出する判定部と、
を有する請求項1または2に記載の車両検出システム。
【請求項4】
前記特徴量算出部は、
前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、前記観測値の時系列データに対して予め設定された時間窓を用いた移動平均をした移動平均値の時系列データを算出する移動平均部と、
前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、前記観測値と前記移動平均値との差分を表す差分値の時系列データを算出する差算出部と、
前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、前記差分値の時系列データにおけるピーク波形のピーク点の前記観測値であるピーク値を検出し、検出した前記ピーク値を前記特徴量として出力するピーク値検出部と、
を有する請求項3に記載の車両検出システム。
【請求項5】
前記特徴量算出部は、
前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、前記観測値の時系列データに対して予め設定された時間窓を用いた移動平均をした移動平均値の時系列データを算出する移動平均部と、
前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、前記観測値の時系列データにおけるピーク波形のピーク点を検出するピーク点検出部と、
前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、横軸に時刻、縦軸に前記観測値を表すグラフにおいて、前記ピーク点と、前記ピーク点より前であって前記観測値の時系列データが前記移動平均値の時系列データと交差する直近の点と、前記ピーク点より後であって前記観測値の時系列データが前記移動平均値の時系列データと交差する直近の点とを結ぶ三角形に面積を算出し、算出した前記面積を前記特徴量として出力する面積算出部と、
を有する請求項3に記載の車両検出システム。
【請求項6】
前記特徴量算出部は、
前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、前記観測値の時系列データに対して予め設定された時間窓を用いた移動平均をした移動平均値の時系列データを算出する移動平均部と、
前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、前記観測値と前記移動平均値との差分を表す差分値の時系列データを算出する差算出部と、
前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、前記差分値の時系列データにおけるピーク波形のピーク点を検出するピーク点検出部と、
前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、横軸に時刻、縦軸に前記差分値を表すグラフにおいて、前記ピーク点と、前記ピーク点より前であって前記差分値の時系列データが前記移動平均値の時系列データと交差する直近の点と、前記ピーク点より後であって前記差分値の時系列データが前記移動平均値の時系列データと交差する直近の点とを結ぶ三角形に面積を算出し、算出した前記面積を前記特徴量として出力する面積算出部と、
を有する請求項3に記載の車両検出システム。
【請求項7】
前記判定部は、前記複数のセンサ装置の何れかについて前記特徴量が閾値より大きい場合、前記車両が前記橋梁を通過したと判定する
請求項3から6の何れか1項に記載の車両検出システム。
【請求項8】
前記橋梁は、複数の車線を有し、
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、前記複数の車線のうちの何れかの車線に設けられ、
前記判定部は、前記複数のセンサ装置の何れかについて前記特徴量が前記閾値より大きい場合、前記複数のセンサ装置のそれぞれについての前記特徴量のうち最も大きい最大特徴量を特定し、特定した前記最大特徴量が得られたセンサ装置が設けられた車線を前記車両が通過したと判定する
請求項7に記載の車両検出システム。
【請求項9】
前記車両が前記橋梁を通過したと判定された場合、前記最大特徴量の大きさに応じて、前記車両の重量を判別する重量判定部
をさらに備える請求項8に記載の車両検出システム。
【請求項10】
前記情報処理部は、前記端末装置により実現される
請求項1から9の何れか1項に記載の車両検出システム。
【請求項11】
前記端末装置と外部ネットワークを介して接続される情報処理装置をさらに備え、
前記端末装置は、前記情報処理部による検出結果を、前記情報処理装置に前記外部ネットワークを介して送信する
請求項10に記載の車両検出システム。
【請求項12】
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、ネットワーク上において識別可能な固有の物理アドレスと、前記端末装置において識別される識別情報であるセンサ識別情報とが割り当てられ、
前記端末装置は、
オペレーティングシステム上においてセンサ管理アプリケーションプログラムを実行することにより、センサ管理部として機能し、
前記オペレーティングシステムを実行することにより、ネットワークインターフェイス層の処理を実行するネットワークインターフェイス部と、前記ネットワークインターフェイス部と前記センサ管理アプリケーションプログラムとの間の情報のやり取りを仲介するトランスポート/インターネット部として機能し、
前記センサ管理部は、前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、前記センサ識別情報と前記物理アドレスとの対応関係を格納する変換テーブルを管理する
請求項1から11の何れか1項に記載の車両検出システム。
【請求項13】
前記端末装置が前記複数のセンサ装置のうちの何れかの第1センサ装置に対して情報を送信する場合、
前記センサ管理部は、前記第1センサ装置を識別する前記センサ識別情報を宛先とするメッセージを生成し、
前記センサ管理部は、生成した前記メッセージにおける前記宛先を、前記変換テーブルを参照して前記第1センサ装置の前記物理アドレスに置き換えて、前記トランスポート/インターネット部に渡し、
前記トランスポート/インターネット部は、ヘッダに前記第1センサ装置の前記物理アドレスを含み、ペイロードに前記センサ管理部から取得した前記メッセージを含むパケットを生成し、生成した前記パケットを前記トランスポート/インターネット部に渡し、
前記ネットワークインターフェイス部は、ヘッダに前記第1センサ装置を識別する前記物理アドレスを含み、ペイロードに前記トランスポート/インターネット部から取得した前記パケットを含むフレームを生成し、生成した前記フレームを前記複数のセンサ装置のそれぞれに送信する
請求項12に記載の車両検出システム。
【請求項14】
前記端末装置が前記第1センサ装置から情報を受信する場合、
前記ネットワークインターフェイス部は、前記第1センサ装置から前記フレームを受信し、受信した前記フレームのペイロードに含まれる前記パケットを前記トランスポート/インターネット部に渡し、
前記トランスポート/インターネット部は、前記ネットワークインターフェイス部から前記パケットを取得し、取得した前記パケットのペイロードに含まれる前記メッセージを前記センサ管理部に渡し、
前記センサ管理部は、前記メッセージに含まれる送信元の前記物理アドレスを、前記変換テーブルを参照して前記第1センサ装置の前記識別情報に置き換え、
前記センサ管理部は、送信元を置き換えた前記メッセージに応じた処理を実行する
請求項13に記載の車両検出システム。
【請求項15】
橋梁に設けられ、車両の走行方向における前記橋梁の変位を表す観測値を検出する複数のセンサ装置と、
前記複数のセンサ装置のそれぞれから前記観測値を収集する端末装置と、
前記端末装置により収集された前記複数のセンサ装置のそれぞれの前記観測値の時系列データに基づき、前記車両が前記橋梁を通過したことを検出する情報処理部と、
を備え、
前記複数のセンサ装置のそれぞれは、ネットワーク上において識別可能な固有の物理アドレスと、前記端末装置において識別される識別情報であるセンサ識別情報とが割り当てられ、
前記端末装置は、
オペレーティングシステム上においてセンサ管理アプリケーションプログラムを実行することにより、センサ管理部として機能し、
前記オペレーティングシステムを実行することにより、ネットワークインターフェイス層の処理を実行するネットワークインターフェイス部と、前記ネットワークインターフェイス部と前記センサ管理アプリケーションプログラムとの間の情報のやり取りを仲介するトランスポート/インターネット部として機能し、
前記センサ管理部は、前記複数のセンサ装置のそれぞれについて、前記センサ識別情報と前記物理アドレスとの対応関係を格納する変換テーブルを管理する
車両検出システム。
【請求項16】
前記端末装置が前記複数のセンサ装置のうちの何れかの第1センサ装置に対して情報を送信する場合、
前記センサ管理部は、前記第1センサ装置を識別する前記センサ識別情報を宛先とするメッセージを生成し、
前記センサ管理部は、生成した前記メッセージにおける前記宛先を、前記変換テーブルを参照して前記第1センサ装置の前記物理アドレスに置き換えて、前記トランスポート/インターネット部に渡し、
前記トランスポート/インターネット部は、ヘッダに前記第1センサ装置の前記物理アドレスを含み、ペイロードに前記センサ管理部から取得した前記メッセージを含むパケットを生成し、生成した前記パケットを前記トランスポート/インターネット部に渡し、
前記ネットワークインターフェイス部は、ヘッダに前記第1センサ装置を識別する前記物理アドレスを含み、ペイロードに前記トランスポート/インターネット部から取得した前記パケットを含むフレームを生成し、生成した前記フレームを前記複数のセンサ装置のそれぞれに送信する
請求項15に記載の車両検出システム。
【請求項17】
前記端末装置が前記第1センサ装置から情報を受信する場合、
前記ネットワークインターフェイス部は、前記第1センサ装置から前記フレームを受信し、受信した前記フレームのペイロードに含まれる前記パケットを前記トランスポート/インターネット部に渡し、
前記トランスポート/インターネット部は、前記ネットワークインターフェイス部から前記パケットを取得し、取得した前記パケットのペイロードに含まれる前記メッセージを前記センサ管理部に渡し、
前記センサ管理部は、前記メッセージに含まれる送信元の前記物理アドレスを、前記変換テーブルを参照して前記第1センサ装置の前記識別情報に置き換え、
前記センサ管理部は、送信元を置き換えた前記メッセージに応じた処理を実行する
請求項16に記載の車両検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エッジコンピュータが複数のセンサからセンサデータを収集するシステムが知られている。このようなシステムは、エッジコンピュータと複数のセンサとの間の通信プロトコルとして、一般に、イーサネットおよびTCP(Transmission Control Protcol)/IP(Internet Protocol)が用いられる。TCP/IPは、最大で、イーサネットのパケット長の10%程度がヘッダ等の冗長なデータに割り当てられる。このため、例えば、複数のセンサから大量のセンサデータを収集するシステムは、通信プロトコルにTCP/IPを用いた場合、通信帯域が逼迫してデータ欠損が発生する可能性があった。
【0003】
また、橋梁を通過する車両を複数のセンサを用いて検出する車両検出システムが知られている(例えば特許文献1)。このような車両検出システムは、短い周期でセンシングをしなければならなく、大量のセンサデータを端末装置に送信しなければならない。また、このような車両計測システムは、複数のセンサにより精度良く車両の通過を検出するために、検出タイミングを同期させることが好ましい。
【0004】
特許文献2および特許文献3には、ネットワークのプロトコルについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/031405号
【特許文献2】特開2006-229977号公報
【特許文献3】特開2004-005661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、少ないデータ量で効率良く複数のセンサ装置を同期させて、車両が橋梁を通過したことを精度良く検出することができる車両検出システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両検出システムは、橋梁に設けられ、車両の走行方向における前記橋梁の変位を表す観測値を検出する複数のセンサ装置と、前記複数のセンサ装置のそれぞれから前記観測値を収集する端末装置と、前記端末装置により収集された前記複数のセンサ装置のそれぞれの前記観測値の時系列データに基づき、前記車両が前記橋梁を通過したことを検出する情報処理部と、を備え、前記端末装置は、前記複数のセンサ装置に対して、定期的に検出要求を送信し、前記複数のセンサ装置のそれぞれは、前記検出要求を取得した場合、所定時間間隔毎に前記観測値を検出し、検出した所定時間間隔毎の前記観測値を前記端末装置に送信する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少ないデータ量で効率良く複数のセンサ装置を同期させて、車両が橋梁を通過したことを精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、車両検出システムの構成を示す図である。
図2図2は、橋梁を横から見たときのセンサ装置の配置を示す図である。
図3図3は、橋梁を上から見たときのセンサ装置の配置を示す図である。
図4図4は、センサ装置および端末装置の機能構成を示す図である。
図5図5は、端末装置と複数のセンサ装置のそれぞれとの間の情報のやり取りを示すシーケンス図である。
図6図6は、情報処理部の機能構成の第1例を示す図である。
図7図7は、橋梁が上り車線と下り車線の2車線を有する場合の観測値の時系列データの一例を示す図である。
図8図8は、複数のセンサ装置のそれぞれから検出される観測値の時系列データの一例を示す図である。
図9図9は、情報処理部の機能構成の第2例を示す図である。
図10図10は、横軸に時刻、縦軸に観測値を表すグラフを示す図である。
図11図11は、情報処理部の機能構成の第3例を示す図である。
図12図12は、端末装置の機能構成を示す図である。
図13図13は、センサ装置と端末装置との間の通信プロトコルの階層構造を示す図である。
図14図14は、情報処理部のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る車両検出システム10の構成を示す図である。車両検出システム10は、車両が橋梁を通過したことを検出する。さらに、車両検出システム10は、橋梁を通過した車両の重量を検出する。また、車両検出システム10は、橋梁を通過した車両の通過時刻を特定する。
【0012】
車両検出システム10は、複数のセンサ装置20と、端末装置22と、情報処理装置24とを備える。
【0013】
複数のセンサ装置20のそれぞれは、橋梁における、互いに異なる所定の対象部分に設けられる。センサ装置20は、橋梁のセンサ装置20が設けられた対象部分における走行方向または橋梁に対して垂直方向の変位を表す観測値を検出する。本実施形態において、センサ装置20は、橋梁の対象部分における、走行方向の伸縮量を測定する。伸縮量は、例えば、数10センチメートル程度の距離の2点間における、数ナノメートルから数100ナノメートル程度の距離の変化である。
【0014】
なお、センサ装置20は、走行方向または垂直方向の変位を表す観測値を検出することができれば、走行方向の伸縮量でなく、他の物理量を検出してもよい。例えば、センサ装置20は、橋梁の対象部分における走行方向のひずみを検出する歪計であってもよい。また、例えば、センサ装置20は、橋梁の対象部分における走行方向の伸縮加速度の大きさまたは橋梁の対象部分における垂直方向の伸縮加速度の大きさを検出する加速度計であってもよい。また、ボックス橋梁等の垂直方向の厚みがある橋梁である場合、センサ装置20は、対象部分における垂直方向の伸縮量を検出してもよい。
【0015】
複数のセンサ装置20のそれぞれは、橋梁の対象部分における走行方向または垂直方向の変位を表す観測値を、端末装置22から検出要求を受信したことに応じて、所定時間間隔毎に連続的に検出する。例えば、センサ装置20は、端末装置22から検出要求を受信したことに応じて、観測値を数ミリ秒毎に検出する。例えば、センサ装置20は、観測値を所定時間間隔毎に、予め定められた回数または予め定められた期間、連続的に検出する。センサ装置20は、検出して得られた観測値群を端末装置22へと送信する。
【0016】
端末装置22は、複数のセンサ装置20のそれぞれとネットワークを介して接続されるエッジコンピュータである。例えば、端末装置22は、LAN(Local Area Network)を介して有線で接続される。端末装置22および複数のセンサ装置20のそれぞれは、ネットワーク上において識別可能な固有の物理アドレスであるMACアドレス(Media Access Control address)が割り当てられる。端末装置22は、複数のセンサ装置20のそれぞれと、MACアドレスを用いてイーサーネットプロトコルによりフレームを送受信する。
【0017】
端末装置22は、複数のセンサ装置20のそれぞれに対して、検出要求を定期的に送信する。例えば、端末装置22は、複数のセンサ装置20に対して、検出要求を定期的にブロードキャスト送信する。端末装置22は、複数のセンサ装置20のそれぞれから、検出要求に応じて検出された観測値群を取得する。そして、端末装置22は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、観測値群に含まれる各観測値に対して検出時刻を対応付けたデータ群である、観測値の時系列データを生成する。
【0018】
さらに、端末装置22は、受信した複数のセンサ装置20のそれぞれの観測値の時系列データに基づき、車両が橋梁を通過したか否かを検出する。また、端末装置22は、通過した車両の重量を判定する。端末装置22は、例えば、通過した車両が小型車か中型車かまたは大型車等の重量による車両種別を特定してもよい。また、さらに、端末装置22は、車両が橋梁を通過した時刻を特定する。
【0019】
端末装置22は、車両が橋梁を通過したか否かの検出結果、通過した車両の重量の判定結果および車両が橋梁を通過した時刻を、情報処理装置24に外部ネットワークを介して送信する。これにより、端末装置22は、情報処理結果のみを情報処理装置24に通知すればよいので、通信量を削減することができる。外部ネットワークは、有線であっても、無線であっても、有線と無線とが混在していてもよい。外部ネットワークは、例えば、LAN、PAN(Personal Area Network)またはWAN(Wide Area Network)、もしくは、PAN、LANおよびWANの混在ネットワークである。また、外部ネットワークは、LTE(Long Term Evolution)等のセルラ通信回線等を含んでいてもよい。
【0020】
情報処理装置24は、外部ネットワークに接続可能なサーバ装置等のコンピュータである。情報処理装置24は、1台のコンピュータであってもよいし、クラウドシステムのように複数台のコンピュータにより構成されていてもよい。
【0021】
情報処理装置24は、端末装置22から外部ネットワークを介して、車両が橋梁を通過したか否かの検出結果を受信する。さらに、情報処理装置24は、端末装置22から外部ネットワークを介して、通過した車両の重量の判定結果を受信する。情報処理装置24は、例えば、通過した車両が小型車か中型車かまたは大型車等の重量による車両種別の特定結果を受信してもよい。また、さらに、情報処理装置24は、端末装置22から外部ネットワークを介して、車両が橋梁を通過した時刻を受信する。
【0022】
なお、情報処理装置24は、端末装置22から外部ネットワークを介して、複数のセンサ装置20のそれぞれについての、橋梁の対象部分における走行方向または垂直方向の変位を表す観測値の時系列データを受信してもよい。この場合、情報処理装置24は、端末装置22に代わり、車両が橋梁を通過したか否かを検出する処理、車両種別を特定処理および車両が橋梁を通過した時刻を特定する処理を実行する。
【0023】
図2は、橋梁を横から見たときのセンサ装置20の配置を示す図である。複数のセンサ装置20は、例えば、橋梁における走行方向の中心よりも端部側に取り付けられる。複数のセンサ装置20は、例えば、橋梁における下側の面であって、橋台の近傍に取り付けられる。これにより、作業者は、橋梁が完成した後であっても、複数のセンサ装置20を橋梁に容易に取り付けることができる。なお、複数のセンサ装置20は、橋梁における走行方向の何れの位置に取り付けられてもよい。例えば、複数のセンサ装置20の一部は、作業者により取り付けが難しくはなる場合もあるが、橋梁における走行方向の中央部に取り付けられてもよい。また、複数のセンサ装置20の一部は、橋梁における側面に取り付けられてもよい。この場合、複数のセンサ装置20の一部は、橋梁の垂直方向の伸縮量を測定することが可能となる。
【0024】
図3は、橋梁を上から見たときの複数のセンサ装置20の配置を示す図である。複数のセンサ装置20のそれぞれは、橋梁の幅員方向における車線の略中心に設けられる。また、複数のセンサ装置20は、走行方向における同一位置に、幅員方向に直線状に並んで設けられる。橋梁が複数の車線を有する場合、複数のセンサ装置20のそれぞれは、複数の車線のうちの何れかの車線に設けられる。例えば、橋梁が4つの車線を有する場合、4個のセンサ装置20が4個の車線の何れかの車線に設けられる。
【0025】
図4は、センサ装置20および端末装置22の機能構成を示す図である。複数のセンサ装置20のそれぞれは、変位検出部32と、センサ制御部34と、センサ通信部36とを有する。
【0026】
変位検出部32は、例えば光学スケールを用いて、橋梁における幅員方向に対して同一、走行方向に対して異なる2点間の距離の変化量を検出する。センサ制御部34は、変位検出部32に設けられる発光素子の制御および受光素子からの信号取得をする。そして、センサ制御部34は、観測値の検出タイミングの制御処理、観測値の取得処理、および、観測値の記憶をする。センサ通信部36は、ネットワークを介して端末装置22と通信をする。本実施形態において、センサ通信部36は、端末装置22とMACアドレスを用いてイーサーネットプロトコルによりフレームを送受信する。
【0027】
端末装置22は、下位側通信部42と、情報処理部44と、上位側通信部46とを有する。
【0028】
下位側通信部42は、ネットワークを介して複数の端末装置22と通信をする。本実施形態において、下位側通信部42は、複数のセンサ装置20のそれぞれとMACアドレスを用いてイーサーネットプロトコルによりフレームを送受信する。
【0029】
情報処理部44は、プロセッサおよびメモリを有し、所定のオペレーティングシステムを実行して端末装置22の全体の管理をする。さらに、情報処理部44は、オペレーティングシステム上においてセンサ管理アプリケーションプログラムを実行することにより、複数のセンサ装置20のそれぞれを制御する。さらに、情報処理部44は、複数のセンサ装置20のそれぞれからの観測値群の取得制御、複数のセンサ装置20のそれぞれについての観測値の時系列データの生成処理、車両が橋梁を通過したか否かの検出処理、通過した車両の重量の判定処理、車両が橋梁を通過した時刻を特定処理、および、処理結果の情報処理装置24への送信制御をする。
【0030】
上位側通信部46は、情報処理装置24と外部ネットワークを介して通信をする。本実施形態において、上位側通信部46は、LTE等のセルラ通信回線の外部ネットワークを介して情報処理装置24と通信をする。
【0031】
図5は、端末装置22と複数のセンサ装置20のそれぞれとの間の情報のやり取りを示すシーケンス図である。
【0032】
端末装置22は、橋梁における走行方向または垂直方向の変位の観測をする場合、複数のセンサ装置20のそれぞれに対して、定期的に、検出要求を送信する(S11、S13、S15)。例えば、端末装置22は、検出要求を含むメッセージを生成し、生成したメッセージを含むパケットを生成し、生成したパケットを含むフレームを複数のセンサ装置20に対してブロードキャストを送信する。
【0033】
複数のセンサ装置20のそれぞれは、検出要求を受信した場合、検出要求を受信したことを示す応答を、端末装置22に送信する(S12、S14、S16)。さらに、複数のセンサ装置20のそれぞれは、検出要求を受信した場合、所定時間間隔毎に観測値を検出し、検出した観測値群を記憶する。
【0034】
例えば、端末装置22は、1秒毎に、複数のセンサ装置20のそれぞれに検出要求を送信する。この場合、複数のセンサ装置20のそれぞれは、検出要求を受信したタイミングから、5ミリ秒毎に、200回、観測値を検出する。
【0035】
なお、検出要求の送信間隔をT秒、観測値の検出間隔をΔt秒とし、1回の検出要求による観測値の検出回数をN回とした場合、端末装置22は、T=N×Δtとなるように設定する。これにより、複数のセンサ装置20のそれぞれは、Δt秒間隔で継続して観測値を検出することができる。
【0036】
また、端末装置22は、複数のセンサ装置20のそれぞれに対して、定期的に、読出要求を送信する。複数のセンサ装置20のそれぞれは、読出要求を受信した場合、記憶している観測値群を端末装置22にネットワークを介して送信する(S14、S16)。
【0037】
例えば、端末装置22は、2回目の検出要求以後、検出要求および読出要求を含むメッセージを複数のセンサ装置20に対して送信する(S13、S15)。複数のセンサ装置20のそれぞれは、読出要求を受信した場合、直前の検出要求に応じて検出された観測値群を、端末装置22に送信する(S14、S16)。
【0038】
このような車両検出システム10は、複数のセンサ装置20のそれぞれを、端末装置22から送信された検出要求に同期して動作させることができる。これにより、車両検出システム10は、複数のセンサ装置20についての複数の観測値の時系列データを、時間ずれの無いデータとすることができる。これにより、車両検出システム10は、複数のセンサ装置20についての複数の観測値の時系列データに基づき、車両が橋梁を通過したことを精度良く検出することができる。
【0039】
さらに、このような車両検出システム10は、端末装置22から定期的に送信される検出要求により複数のセンサ装置20を同期して動作させることができる。従って、車両検出システム10は、少ないデータ量で、効率良く複数のセンサ装置20を同期して動作させることができる。さらに、車両検出システム10は、データ転送プロトコルとして、TCPを用いずに独自のプロトコルを用いる。これにより、車両検出システム10は、パケットのヘッダ等に含まれる冗長データを少なくすることができる。従って、車両検出システム10は、通信帯域の逼迫を無くし、複数のセンサ装置20のそれぞれに、確実に、且つ、短時間で検出要求を送信することができる。なお、独自のプロトコルについては、図12および図13を参照して後述する。
【0040】
図6は、端末装置22の情報処理部44における車両が橋梁を通過したか否かの検出処理等を実行するための機能構成の第1例を示す図である。情報処理部44は、取得部62と、記憶部64と、特徴量算出部66と、判定部68と、時刻特定部70と、重量判定部72と、出力部74とを備える。
【0041】
取得部62は、収集された複数のセンサ装置20のそれぞれについての、橋梁の対象部分における走行方向または垂直方向の変位を表す観測値の時系列データを取得する。本実施形態において、観測値は、対象部分における走行方向の伸縮量である。
【0042】
観測値の時系列データに含まれる複数の観測値のそれぞれは、検出した時刻が対応付けられている。例えば、観測値の時系列データは、複数の観測値と、複数の観測値に一対一で対応付けられた複数の時刻データとを含んでいてもよい。複数の時刻データのそれぞれは、対応する観測値を検出した時刻を表す。観測値の時系列データは、サンプルとサンプルとの間の時間間隔であるサンプル間隔が予め定められている。従って、観測値の時系列データは、複数の観測値と、先頭の観測値の時刻データとを含んでもよい。この場合、複数の観測値のそれぞれの検出時刻は、先頭の観測値の時刻データと、対応する観測値の順序と、サンプル時間間隔とに基づき算出される。
【0043】
記憶部64は、取得部62により取得された、複数のセンサ装置20のそれぞれについての観測値の時系列データを記憶する。
【0044】
特徴量算出部66は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、記憶部64に記憶された観測値の時系列データを予め定められた時間単位毎に抽出する。そして、特徴量算出部66は、抽出した時間単位毎に、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、観測値の時系列データにおけるピーク波形の大きさに応じた特徴量を算出する。
【0045】
抽出する観測値の時系列データの時間単位は、少なくとも、車両が通過することによって橋梁の測定対象の部分の走行方向の伸縮量の変化が開始する時点から、変化が終了する時点までの時間より長い。なお、特徴量算出部66は、隣接する2つの時間単位を時間的にオーバラップさせてもよい。例えば、特徴量算出部66は、第1時間単位の後半部分と、第1時間単位の次の第2時間単位の前半部分とをオーバラップさせて、時間単位毎に、複数のセンサ装置20のそれぞれについて特徴量を算出してもよい。
【0046】
なお、特徴量算出部66は、時系列データに含まれる上側に凸となる波形、または、下側に凸となる波形の何れか一方を、ピーク波形として検出する。本実施形態においては、上側に凸であるピーク波形を検出する場合には、上側の値の方が下側の値より大きいとし、下側に凸であるピーク波形を検出する場合には、下側の値の方が上側の値よりも大きいとする。
【0047】
例えば、特徴量算出部66は、移動平均部80と、差算出部82と、ピーク値検出部84とを有する。
【0048】
移動平均部80は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、観測値の時系列データに対して、予め設定された時間窓を用いた移動平均をした移動平均値の時系列データを算出する。時間窓は、移動平均をする連続する観測値の個数により表されてもよい。また、時間窓は、時間により表されてもよい。時間窓が時間により表される場合、移動平均部80は、時間窓をサンプル間隔で除算した個数の観測値を用いて移動平均値を算出する。
【0049】
移動平均部80は、観測値の時系列データに対して単純移動平均をした移動平均値の時系列データを算出してもよい。すなわち、移動平均部80は、時間窓に含まれる個数、例えばN個の観測値を全て加算し、加算結果をNで除算した値を、移動平均値として算出してもよい。
【0050】
また、移動平均部80は、観測値の時系列データに対して加重移動平均をした移動平均値の時系列データを算出してもよい。すなわち、移動平均部80は、時間窓に含まれる個数の観測値のそれぞれに予め定められた重みを乗算し、重みを乗算したN個の観測値を全て加算し、加算結果をNで除算した値を、移動平均値として算出してもよい。
【0051】
また、移動平均部80は、FIR(Finite Implse Response)フィルタにより、観測値の時系列データに対して移動平均をした移動平均値の時系列データを算出してもよい。また、移動平均部80は、観測値の時系列データに対して、時間窓に対応する時間長の時系列の窓関数データとの畳み込み演算をすることにより、移動平均値の時系列データを算出してもよい。
【0052】
差算出部82は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、観測値の時系列データと、移動平均部80により算出された移動平均値の時系列データとを取得する。差算出部82は、サンプル毎に観測値と移動平均値との差分を算出することにより、観測値と移動平均値との差分を表す差分値の時系列データを算出する。例えば、差算出部82は、観測値から移動平均値を減算することにより、差分値の時系列データを算出する。
【0053】
ピーク値検出部84は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、差分値の時系列データにおけるピーク波形を検出する。さらに、ピーク値検出部84は、検出したピーク波形のピーク点の差分値であるピーク値を検出する。例えば、ピーク値検出部84は、差分値の時系列データのうち、予め定められた値より大きい連続範囲を、ピーク波形として検出する。そして、ピーク値検出部84は、予め定められた値より大きい連続範囲内における最大の観測値が得られる点をピーク点として検出する。
【0054】
このような特徴量算出部66は、時間単位毎に、複数のセンサ装置20のそれぞれについて算出したピーク値を、特徴量として出力する。なお、特徴量算出部66は、ピーク波形が検出できなかった場合には、特徴量を、0、マイナスの値または予め定められた値として出力してもよい。
【0055】
判定部68は、複数のセンサ装置20のそれぞれについての特徴量を取得する。判定部68は、予め閾値が設定されている。また、判定部68は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、特徴量と、予め設定された閾値とを比較する。そして、判定部68は、複数のセンサ装置20の何れかの特徴量が閾値より大きい場合、対応する時間単位において車両が橋梁を通過したと判定する。
【0056】
なお、橋梁が複数の車線を有しており、複数のセンサ装置20のそれぞれが、複数の車線のうちの何れかの車線に設けられていてもよい。対応する時間単位において車両が橋梁を通過したと判断した場合、判定部68は、複数のセンサ装置20のそれぞれの特徴量のうち、最も大きい最大特徴量を特定する。そして、判定部68は、特定した最大特徴量が得られたセンサ装置20が設けられた車線を車両が通過したと判定する。
【0057】
時刻特定部70は、判定部68により車両が橋梁を通過したと判定された場合、車両が橋梁を通過した時刻を特定する。例えば、時刻特定部70は、ピーク波形におけるピーク点の時刻を特定する。
【0058】
重量判定部72は、対応する時間単位において車両が橋梁を通過したと判断した場合、最大特徴量の大きさに応じて車両の重量を判別する。例えば、重量判定部72は、最大特徴量の大きさに応じて、小型車か、中型車かまたは大型車かを判別する。例えば、重量判定部72は、最大特徴量が第1判定値より小さければ小型車、第1判定値以上第2判定値より小さければ中型車、および、第2判定値以上であれば大型車と判別する。
【0059】
出力部74は、単位時間毎の判定部68による車両通過の判定結果、時刻特定部70により特定された車両が橋梁を通過した時刻、および、重量判定部72による車両の重量の判定結果を、外部ネットワークを介して情報処理装置24に送信する。
【0060】
図7は、橋梁が上り車線と下り車線の2車線を有する場合の観測値の時系列データの一例を示す図である。
【0061】
図7の例では、情報処理部44は、時刻t1、時刻t2、および時刻t3において、ピーク波形を検出している。情報処理部44は、時刻t1および時刻t2においては、下り車線の特徴量の方が上り車線の特徴量より大きいので、下り車線を車両が通過したと判定し、下り車線の特徴量に基づき車両の重量を判定する。また、情報処理部44は、時刻t3においては、上り車線の特徴量の方が下り車線の特徴量より大きいので、上り車線を車両が通過したと判定し、上り車線の特徴量に基づき車両の重量を判定する。
【0062】
図8は、複数のセンサ装置20のそれぞれから検出される観測値の時系列データの一例を示す図である。
【0063】
1台の車両が橋梁を通過した場合、橋梁における複数のセンサ装置20のそれぞれが設けられた位置は、車両の走行方向に伸縮する。車両が通過した車線が最も下に沈み込むので、車両が通過した車線の伸縮量の振幅が最も大きく、車両が通過した車線よりも遠くなるに従って伸縮量の振幅が小さくなる。従って、情報処理部44は、ほぼ同時に検出される伸縮量の振幅の大きさを車線毎に比較することにより、車両が何れの車線を通過したかを判断することができる。ただし、複数のセンサ装置20が異なるタイミングで橋梁の伸縮量を検出している場合、情報処理部44は、車両が何れの車線を通過したかを判断することができない。
【0064】
これに対して、本実施形態に係る端末装置22は、定期的に、複数のセンサ装置20に対して検出要求を送信する。そして、複数のセンサ装置20のそれぞれは、検出要求を取得した場合、所定時間間隔毎に観測値を検出し、検出した所定時間間隔毎の観測値を端末装置22に送信する。これにより、複数のセンサ装置20は、端末装置22により管理されている時刻のタイミングで動作する。従って、情報処理部44は、車両の通過タイミングおよび車両が何れの車線を通過したかを精度良く判断することができる。
【0065】
図9は、端末装置22の情報処理部44における車両が橋梁を通過したか否かの検出処理等を実行するための機能構成の第2例を示す図である。特徴量算出部66は、図6に示した構成に代えて、図9に示す構成であってもよい。すなわち、特徴量算出部66は、移動平均部80と、ピーク点検出部86と、面積算出部88とを有する構成であってもよい。
【0066】
移動平均部80は、図6に示す構成と同様の処理を実行する。
【0067】
ピーク点検出部86は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、観測値の時系列データにおけるピーク波形のピーク点を検出する。例えば、ピーク点検出部86は、観測値の時系列データのうち、予め定められた値より大きい連続範囲を、ピーク波形として検出してもよい。そして、ピーク点検出部86は、予め定められた値より大きい連続範囲内における最大の観測値が得られる点をピーク点として検出する。
【0068】
面積算出部88は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、横軸に時刻、縦軸に観測値を表すグラフにおいて、ピーク点と、ピーク点より前であって観測値の時系列データが移動平均値の時系列データと交差する直近の点と、ピーク点より後であって観測値の時系列データが移動平均値の時系列データと交差する直近の点とを結ぶ三角形に面積を算出する。そして、面積算出部88は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、算出した面積を特徴量として出力する。
【0069】
図10は、横軸に時刻、縦軸に観測値を表すグラフを示す図である。
【0070】
面積算出部88は、ピーク波形について、図10に示すようなグラフ上の三角形の面積を算出する。三角形は、ピーク点と、第1点と、第2点との3つの頂点を有する。第1点は、観測値の時系列データと移動平均値の時系列データとが交差する点のうち、ピーク点より時間的に前の直近の点である。第2点は、観測値の時系列データと移動平均値の時系列データとが交差する点のうち、ピーク点より時間的に後の直近の点である。
【0071】
このような三角形の面積は、橋梁を車両が通過した場合の橋梁の伸縮量を表す。車両が比較的に低速で通過した場合、伸縮量の変動の時間は、長くなるが、伸縮量の振幅は小さくなる。一方、車両が比較的に高速で通過した場合、伸縮量の振幅が大きくなるが、伸縮量の変動の時間は短くなる。
【0072】
従って、特徴量算出部66は、このような三角形の面積を特徴量として算出することにより、車両の通過速度に関わらず、安定して車両の通過の有無および車両の重量を検出することができる。ただし、短い時間間隔で複数の車両が橋梁を通過した場合、三角形の波形が重複する可能性がある。従って、特徴量算出部66は、図6に示した構成のように、三角形の面積では無く、ピーク値を特徴量として算出することにより、短い時間間隔で複数の車両が橋梁を通過した場合であっても、ピーク波形が時間的に分離するので、車両毎に通過を有無および重量を精度良く検出することができる。
【0073】
図11は、端末装置22の情報処理部44における車両が橋梁を通過したか否かの検出処理等を実行するための機能構成の第3例を示す図である。特徴量算出部66は、図11に示すように、移動平均部80と、差算出部82と、ピーク点検出部86と、面積算出部88とを有する構成であってもよい。
【0074】
移動平均部80および差算出部82は、図6に示す構成と同様の処理を実行する。
【0075】
ピーク点検出部86は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、差分値の時系列データにおけるピーク波形のピーク点を検出する。例えば、ピーク点検出部86は、差分値の時系列データのうち、予め定められた値より大きい連続範囲を、ピーク波形として検出してもよい。そして、ピーク点検出部86は、予め定められた値より大きい連続範囲内における最大の差分値が得られる点をピーク点として検出する。
【0076】
面積算出部88は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、横軸に時刻、縦軸に差分値を表すグラフにおいて、ピーク点と、ピーク点より前であって差分値の時系列データが移動平均値の時系列データと交差する直近の点と、ピーク点より後であって差分値の時系列データが移動平均値の時系列データと交差する直近の点とを結ぶ三角形に面積を算出する。そして、面積算出部88は、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、算出した面積を特徴量として出力する。
【0077】
第3例に係る三角形の面積も、第2例と同様に、橋梁を車両が通過した場合の橋梁の伸縮量を表す。従って、特徴量算出部66は、このような三角形の面積を特徴量として算出することにより、車両の通過速度に関わらず、安定して車両の通過の有無および車両の重量を検出することができる。
【0078】
図12は、端末装置22の観測値の時系列データを生成するための機能構成を示す図である。
【0079】
端末装置22は、プロセッサおよびメモリを有し、所定のオペレーティングシステムを実行する。また、端末装置22は、オペレーティングシステム上においてセンサ管理アプリケーションプログラムを実行する。
【0080】
端末装置22は、オペレーティングシステム上においてセンサ管理アプリケーションプログラムを実行することにより、センサ管理部92として機能する。また、端末装置22は、オペレーティングシステムを実行することにより、ネットワークインターフェイス部94と、トランスポート/インターネット部96として機能する。
【0081】
センサ管理部92は、複数のセンサ装置20のそれぞれに対してメッセージを送信することにより、複数のセンサ装置20のそれぞれの動作を制御する。また、センサ管理部92は、複数のセンサ装置20のそれぞれから観測値群を取得し、複数のセンサ装置20のそれぞれについての観測値の時系列データを生成する。そして、生成された複数のセンサ装置20のそれぞれについての観測値の時系列データは、図6図9および図11に示した取得部62に取得される。
【0082】
また、センサ管理部92は、変換テーブルを管理する。変換テーブルは、複数のセンサ装置20のそれぞれについて、センサ識別情報と物理アドレスとの対応関係を格納する。センサ識別情報は、車両検出システム10において複数のセンサ装置20のそれぞれを識別するための情報である。物理アドレスは、ネットワーク上において複数のセンサ装置20のそれぞれを物理的に識別する情報であり、例えばMACアドレスである。
【0083】
ネットワークインターフェイス部94は、複数のセンサ装置20と端末装置22との間を接続するネットワークにおける情報のやり取りを制御するための機能ブロックであり、TCP/IPの通信プロトコルの階層構造におけるネットワークインターフェイス層の処理を実行する。ネットワークインターフェイス層は、物理層に最も近い通信プロトコルである。
【0084】
トランスポート/インターネット部96は、ネットワークインターフェイス部94とセンサ管理アプリケーションプログラムとの間の情報のやり取りを仲介する機能ブロックである。トランスポート/インターネット部96は、TCP/IPの通信プロトコルの階層構造におけるインターネット層およびトランスポート層の処理を実行する。ただし、トランスポート/インターネット部96は、インターネット層とトランスポート層と合成した独自のセンサネットワークトランスポートプロトコルを実行し、TCP/IPの通信プロトコルとは異なる。
【0085】
図13は、センサ装置20と端末装置22との間の通信プロトコルの階層構造を示す図である。
【0086】
センサ装置20と端末装置22との間の通信プロトコルは、イーサーネットプロトコルと、センサネットワークトランスポートプロトコルと、センサ管理アプリケーションとにより規定される。
【0087】
イーサーネットプロトコルは、TCP/IPプロトコルにおけるネットワークインターフェイス層の規定と同様である。イーサーネットプロトコルに対応する処理は、ネットワークインターフェイス部94により実行される。
【0088】
センサネットワークトランスポートプロトコルは、本実施形態において独自に規定されるプロトコルである。センサネットワークトランスポートプロトコルに対応する処理は、トランスポート/インターネット部96により実行される。
【0089】
センサ管理アプリケーションは、センサ装置20との間の情報のやり取りのために規定されるプロトコルであり、センサ管理部92により実現される。
【0090】
センサ管理アプリケーションの通信プロトコルは、メッセージ内容を規定する。メッセージ内容は、センサ装置20に対する要求、および、センサ装置20からの応答および観測値群等を含む。
【0091】
また、センサ管理アプリケーションの通信プロトコルは、メッセージのデータ構成を規定する。メッセージは、センサ識別情報、データサイズ、メッセージ内容およびCRCを含む。センサ識別情報は、メッセージを送るセンサ装置20またはメッセージを生成したセンサ装置20を識別する情報である。CRCは、エラー訂正コードである。
【0092】
センサネットワークトランスポートプロトコルは、パケットのデータ構成を規定する。パケットは、物理アドレス、データサイズ、メッセージ内容およびCRCを含む。物理アドレスは、パケットを送るセンサ装置20またはパケットを生成したセンサ装置20に割り当てられたアドレスである。パケットは、TCP/IPにより規定されるIPパケットと同様である。
【0093】
イーサーネットプロトコルは、フレームのデータ構成を規定する。フレームは、DstMACAddr、SrcMACAddr、Type、PayloadおよびFCSを含む。DstMACAddrは、宛先の物理アドレスを示す。SrcMACAddrは、送信元の物理アドレスを示す。Typeは、フレームのタイプを示す。Payloadは、パケット等の情報内容を含む。FCSは、エラー訂正コードである。
【0094】
端末装置22が複数のセンサ装置20のうちの何れか1つのセンサ装置20である第1センサ装置20-1に対して情報を送信する場合、次のように処理が実行される。
【0095】
まず、センサ管理部92は、第1センサ装置20-1を識別するセンサ識別情報を宛先とするメッセージを生成する。続いて、センサ管理部92は、生成したメッセージにおける宛先を、変換テーブルを参照して第1センサ装置20-1の物理アドレスに置き換えて、トランスポート/インターネット部96に渡す。
【0096】
続いて、トランスポート/インターネット部96は、ヘッダに第1センサ装置20-1の物理アドレスを含み、ペイロードにセンサ管理部92から取得したメッセージを含むパケットを生成する。続いて、トランスポート/インターネット部96は、生成したパケットをネットワークインターフェイス部94に渡す。
【0097】
続いて、ネットワークインターフェイス部94は、ヘッダに第1センサ装置20-1を識別する物理アドレスを含み、ペイロードにトランスポート/インターネット部96から取得したパケットを含むフレームを生成する。そして、ネットワークインターフェイス部94は、生成したフレームを複数のセンサ装置20のそれぞれに送信する。
【0098】
また、端末装置22が第1センサ装置20-1から情報を受信する場合、次のように処理が実行される。
【0099】
まず、ネットワークインターフェイス部94は、第1センサ装置20-1からフレームを受信する。続いて、ネットワークインターフェイス部94は、受信したフレームのペイロードに含まれるパケットをトランスポート/インターネット部96に渡す。
【0100】
続いて、トランスポート/インターネット部96は、ネットワークインターフェイス部94からパケットを取得する。続いて、トランスポート/インターネット部96は、取得したパケットのペイロードに含まれるメッセージをセンサ管理部92に渡す。
【0101】
続いて、センサ管理部92は、メッセージに含まれる送信元の物理アドレスを、変換テーブルを参照して第1センサ装置20-1の識別情報に置き換える。そして、センサ管理部92は、送信元を置き換えたメッセージに応じた処理を実行する。
【0102】
このような処理を実行する複数のセンサ装置20および端末装置22は、センサ管理部92が変換テーブルを用いてセンサ識別情報と物理アドレスとの変換処理を実行する。これにより、複数のセンサ装置20および端末装置22は、例えばIPアドレス等をパケットに含めなくてよいので、パケットに含める冗長データを少なくすることができる。また、トランスポート/インターネット部96は、オペレーティングシステム上で動作するセンサ管理アプリケーションとの間でのやり取りを実行しない。従って、トランスポート/インターネット部96は、パケットにTCP/IPのトランスポート層等で管理されるアプリケーションを識別するための番号等を含めたり、関連する情報を管理したりしなくてよいので、パケットに含める冗長データを少なくすることができる。
【0103】
このように、車両検出システム10は、パケットのヘッダ等に含まれる冗長データを少なくすることができる。これにより、車両検出システム10は、通信帯域の逼迫を無くし、複数のセンサ装置20のそれぞれに、確実に、且つ、短時間で検出要求を送信することができる。
【0104】
図14は、情報処理部44のハードウェア構成を示す図である。情報処理部44は、一例として、一般のコンピュータと同様のハードウェア構成の装置により実現される。なお、端末装置22も、図14と同様のハードウェア構成であってもよい。情報処理部44は、CPU(Central Processing Unit)301と、操作装置302と、表示装置303と、主記憶装置305と、補助記憶装置306と、通信装置307と、バス309とを備える。各部は、バス309により接続される。
【0105】
CPU301は、主記憶装置305の所定領域を作業領域として補助記憶装置306等に予め記憶された各種プログラムとの協働により各種処理を実行し、情報処理部44を構成する各部の動作を統括的に制御する。また、CPU301は、プログラムとの協働により、操作装置302、表示装置303および通信装置307等を動作させる。
【0106】
操作装置302は、タッチパネル、マウスやキーボード等の入力デバイスであって、ユーザから操作入力された情報を指示信号として受け付け、その指示信号をCPU301に出力する。
【0107】
表示装置303は、LCD(Liqid Crystal Display)等の表示部である。表示装置303は、CPU301からの表示信号に基づいて、各種情報を表示する。
【0108】
主記憶装置305は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶媒体である。主記憶装置305は、CPU301の作業領域として機能する。
【0109】
補助記憶装置306は、フラッシュメモリ等の半導体による記憶媒体、磁気的または光学的に記録可能な記憶媒体等の書き換え可能な記録装置である。補助記憶装置306は、情報処理部44の制御に用いられるプログラムを記憶する。
【0110】
通信装置307は、他の装置とデータの送受信をする。また、通信装置307は、ネットワークを介してサーバ等とデータの送受信をしてもよい。
【0111】
情報処理部44で実行されるプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供される。また、情報処理部44で実行されるプログラムは、持ち運び可能な記憶媒体等に予め組み込んで提供されてもよい。
【0112】
情報処理部44で実行されるプログラムは、取得モジュールと、特徴量算出モジュールと、判定モジュールと、時刻特定モジュールと、重量判定モジュールと、出力モジュールと、を含むモジュール構成となっている。CPU301は、記憶媒体等からこのようなプログラムを読み出して、上記各モジュールを主記憶装置305にロードする。そして、CPU301は、このようなプログラムを実行することにより、取得部62、特徴量算出部66、判定部68、時刻特定部70、重量判定部72および出力部74として機能する。また、CPU301は、このようなプログラムを実行することにより、主記憶装置305または補助記憶装置306を記憶部64として機能させる。なお、取得部62、特徴量算出部66、判定部68、時刻特定部70、重量判定部72および出力部74の一部または全部がハードウェアにより構成されていてもよい。
【0113】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0114】
10 車両検出システム
20 センサ装置
22 端末装置
24 情報処理装置
32 変位検出部
34 センサ制御部
36 センサ通信部
42 下位側通信部
44 情報処理部
46 上位側通信部
62 取得部
64 記憶部
66 特徴量算出部
68 判定部
70 時刻特定部
72 重量判定部
74 出力部
80 移動平均部
82 差算出部
84 ピーク値検出部
86 ピーク点検出部
88 面積算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14