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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051627
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】水中油型乳化物
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/005 20060101AFI20230404BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230404BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20230404BHJP
【FI】
A23D7/005
A23L5/00 L
A23L27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021175954
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 優一
【テーマコード(参考)】
4B026
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG09
4B026DL02
4B026DL03
4B026DL04
4B026DL06
4B026DX04
4B026DX08
4B035LC01
4B035LE01
4B035LG04
4B035LG06
4B035LG12
4B035LG15
4B035LG31
4B035LG33
4B035LP21
4B035LP24
4B047LB05
4B047LB09
4B047LE03
4B047LG06
4B047LG08
4B047LG10
4B047LG11
4B047LG19
4B047LG21
4B047LG23
4B047LG37
4B047LG40
4B047LP01
4B047LP03
4B047LP07
(57)【要約】
【課題】 本発明は、タンパク質加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善された水中油型乳化物及び乳化粉末等を提供することを課題とする。
【解決手段】 タンパク質加水分解物を含む乳化物にポリフェノールを含有させることでタンパク質加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善されることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂、タンパク質、ポリフェノール及び糖質を含む水中油型乳化物であって、タンパク質が植物性タンパク質加水分解物であって、ポリフェノールを、タンパク質100重量%に対して3.0~85重量%、油脂100重量%に対して0.6~20重量%含む、水中油型乳化物。
【請求項2】
タンパク質100重量%に対し、茶抽出物を15~350重量%含む、請求項1記載の水中油型乳化物。
【請求項3】
乳化物のpHが5.0~8.0である、請求項1又は2記載の水中油型乳化物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の水中油型乳化物を乾燥してなる乳化粉末。
【請求項5】
乳化粉末を100重量%とした場合に、油脂を10~70重量%、タンパク質を2~40重量%、ポリフェノールを0.2~3.4重量%、糖質を10~90重量%含む、請求項4記載の乳化粉末。
【請求項6】
請求項4又は5記載の乳化粉末を含む飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化物及び乳化粉末等に関する。
【背景技術】
【0002】
植物性タンパク質は、動物性タンパク質の代替品として利用が進んでおり、乳化の安定化等の目的で利用されている。
【0003】
特許文献1には、エンドウ豆タンパク質、油脂、および、デンプン加水分解物を含む粉末油脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-3101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タンパク質加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善された水中油型乳化物及び乳化粉末等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、タンパク質加水分解物を含む乳化物にポリフェノールを含有させることでタンパク質加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善されることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]の態様に関する。
[1]油脂、タンパク質、ポリフェノール及び糖質を含む水中油型乳化物であって、タンパク質が植物性タンパク質加水分解物であって、ポリフェノールを、タンパク質100重量%に対して3.0~85重量%、油脂100重量%に対して0.6~20重量%含む、水中油型乳化物。
[2]タンパク質100重量%に対し、茶抽出物を15~350重量%含む、[1]記載の水中油型乳化物。
[3]乳化物のpHが5.0~8.0である、[1]又は[2]記載の水中油型乳化物。
[4][1]~[3]の何れかに記載の水中油型乳化物を乾燥してなる乳化粉末。
[5]乳化粉末を100重量%とした場合に、油脂を10~70重量%、タンパク質を2~40重量%、ポリフェノールを0.2~3.4重量%、糖質を10~90重量%含む、[4]記載の乳化粉末。
[6][4]又は[5]記載の乳化粉末を含む飲食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、タンパク質加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善された水中油型乳化物及び乳化粉末を提供することができ、風味が改善されることで、乳アレルギーフリーやアニマルフリーの乳化物として、広く利用することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水中油型乳化物は、油脂、タンパク質、ポリフェノール及び糖質を含む水中油型乳化物であって、油脂、タンパク質、ポリフェノール及び糖質を乳化処理することで得られ、さらに、該水中油型乳化物を噴霧乾燥することで、本発明の乳化粉末が得られる。
【0010】
本発明に記載の油脂は、食用であれば特に限定されず、パーム油、パーム核油、ヤシ油、大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ゴマ油、米ぬか油、サフラワー油、綿実油、落花生油、アマニ油、エゴマ油、ブドウ種子油、シソ油、藻類油等の植物性油脂、魚油、豚脂、鶏油、牛脂、乳脂等の動物性油脂及びこれらの加工油脂(硬化、分別、エステル交換等)が例示でき、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。油脂の含有量は、乳化粉末100重量%に対して10~70重量%が好ましく、15~65重量%がより好ましく、20~60重量%がさらに好ましい。
【0011】
本発明に記載のタンパク質は、植物由来のタンパク質であれば特に限定されず、大豆タンパク質、エンドウタンパク質、ソラマメ蛋白質、ヒヨコマメタンパク質、インゲンマメタンパク質等の豆類タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質等の穀類タンパク質、ゴマタンパク質等の種実類タンパク質等が例示でき、二種類以上の植物性タンパク質を組み合わせて用いてもよい。植物性タンパク質は、酵素、熱、アルカリ等により処理して得られた植物性タンパク質加水分解物であるのが好ましく、市販品を使用できるが、アルカリ加水分解処理したタンパク質が好ましい。アルカリ加水分解に使用する塩基としては、水酸化ナトリウム、重曹、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が例示でき、加水分解後にクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、ギ酸、酢酸等の酸で、pH5.0~8.0程度、好ましくはpH5.5~7.5に中和すればよい。タンパク質の含有量は、油脂100重量%に対して5~70重量%が好ましく、10~60重量%がより好ましく、15~50重量%がさらに好ましく、油脂とタンパク質と糖質との合計量100重量%に対して2~40重量%が好ましく、3~30重量%がより好ましく、4~20重量%がさらに好ましく、10重量%未満が特に好ましく、また、乳化粉末100重量%に対して2~40重量%が好ましく、3~30重量%がより好ましく、4~20重量%がさらに好ましい。植物性タンパク質加水分解物を使用することで、高い乳化効果が得られ、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤を含まなくても、乳化安定性が高く、油脂の経時的な酸化劣化を抑制することができ、各種製品として利用可能な乳化粉末を提供することができる。
【0012】
本発明では、ポリフェノールを乳化物中に含んでいればよく、ポリフェノールの含有量は、タンパク質100重量%に対して3.0~85重量%であり、3.5~80重量%が好ましく、4.0~70重量%がより好ましく、また、油脂100重量%に対して0.60~20重量%が好ましく、0.70~18重量%がより好ましく、0.80~15重量%がさらに好ましく、また、タンパク質と糖質との合計量100重量%に対して10重量%未満が好ましく、0.10~9.0重量%がより好ましく、0.20~8.0重量%がさらに好ましく、0.30~7.0重量%が特に好ましく、また、乳化粉末100重量%に対して0.20~3.4重量%が好ましく、0.22~3.3重量%がより好ましく、0.25~3.2重量%がさらに好ましい。乳化物中にポリフェノールを含ませることで、ポリフェノールを含まない乳化物に比べて、乳化物中の不快臭、特にタンパク質加水分解物に由来する不快な臭いを抑えることができる。
【0013】
ポリフェノールは、カテキン、タンニン酸、クロロゲン酸等及びそれらの類縁体、並びにそれらの混合物が例示でき、ポリフェノールを好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上含むポリフェノール含有物を使用できるが、緑茶、ほうじ茶、烏龍茶、紅茶等の茶抽出物を使用するのが好ましい。
【0014】
茶抽出物は、水性溶媒を用いて、一般的な抽出方法でポリフェノールを含む茶由来成分を抽出したものであれば特に限定されず、水性溶媒は、無機塩、エタノール等を含有する水溶液でもよいが、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上の水を含む溶媒がよく、水が特に好ましい。抽出後に、不織布によるろ過、遠心分離等により茶原料を含む混合物から液体を回収でき、さらに濃縮又は乾燥した抽出物を使用してもよく、市販の茶抽出物を使用できる。茶抽出物を使用する場合は、茶抽出物固形分として、タンパク質に対して好ましくは15~350重量%、より好ましくは18~300重量%、さらに好ましくは20~250重量%、特に好ましくは55重量%以上含み、また、油脂100重量%に対して好ましくは3.0~90重量%、より好ましくは3.5~80重量%、さらに好ましくは4.0~70重量%含み、また、乳化粉末100重量%に対して好ましくは0.80~14.5重量%、より好ましくは0.90~14.0重量%、さらに好ましくは1.0~13.5重量%、特に好ましくは1.2重量%以上含む。
【0015】
本発明に記載の糖質は、乳糖、トレハロース等の二糖類、還元水あめ、マルチトール等の糖アルコール、アラビアガム、キサンタンガム等の増粘多糖類、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ等の澱粉、加工澱粉、水あめ、デキストリン等が例示でき、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。糖質の含有量は、油脂100重量%に対して30~400重量%が好ましく、40~350重量%がより好ましく、50~300重量%がさらに好ましく、また、油脂とタンパク質と糖質との合計量100重量%に対して10~80重量%が好ましく、20~75重量%がより好ましく、30~70重量%がさらに好ましく、42重量%以上が特に好ましく、また、乳化粉末100重量%に対して10~90重量%が好ましく、20~80重量%がより好ましく、25~75重量%がさらに好ましい。
【0016】
本発明に記載の乳化処理は、油脂、タンパク質、ポリフェノール、糖質及び水を混合し、均質化すればよく、加熱してもよく、一般的な乳化方法で行うことができる。詳細には、乳化装置を用いて行うことができ、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機、ホモミキサー、ホモディスパー等を例示でき、二種類以上の装置を組み合わせてもよい。乳化処理して得られる水中油型乳化物を100重量%とした場合に、水を20~97重量%含むのが好ましく、30~95重量%含むのがより好ましく、40~92重量%含むのがさらに好ましく、また、油脂を0.5~25重量%含むのが好ましく、1.0~20重量%含むのがより好ましく、1.5~15重量%含むのがさらに好ましく、また、タンパク質を0.1~10重量%含むのが好ましく、0.2~5.0重量%含むのがより好ましく、0.3~3.0重量%含むのがさらに好ましく、1.0重量%未満が特に好ましく、また、糖質を0.5~40重量%含むのが好ましく、1.0~30重量%含むのがより好ましく、2.0~20重量%含むのがさらに好ましく、また、ポリフェノールを0.020~0.33重量%含むのが好ましく、0.025~0.30重量%含むのがより好ましく、0.028~0.28重量%含むのがさらに好ましく、また、茶抽出物を0.08~1.4重量%含むのが好ましく、0.09~1.3重量%含むのがより好ましく、0.10~1.2重量%含むのがさらに好ましい。水中油型乳化物を、乾燥することによって、乳化粉末を得ることができる。乾燥は、本発明の粉末が得られれば特に限定されないが、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、フリーズドライヤー等による乾燥が例示でき、スプレードライヤーによる噴霧乾燥が好ましい。
【0017】
本発明の水中油型乳化物及び乳化粉末は、上記のとおり、乳化物中にポリフェノールを含むことで、乳化物中の不快臭、特にタンパク質加水分解物に由来する不快な臭いを抑えることができるため、飲料、食品、調味料、機能性食品、サプリメント等の各種飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、飼料等に幅広く利用できる。添加量は特に限定されないが、好ましくは0.01~50%、より好ましくは0.1~30%、さらに好ましくは0.5~10%である。
【実施例0018】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
【0019】
[調製1]
水酸化ナトリウムによる加水分解後にクエン酸で中和処理したエンドウタンパク質、エゴマ油、水あめ(ハローデックス(登録商標)、株式会社林原社製)及び水を乳化し、噴霧乾燥して得られた、エゴマ油乳化粉末(エゴマ油含有量:30%、水あめ含有量:61%、エンドウタンパク質含有量:7.5%)5gに水45gを添加することで水中油型乳化物を調製した。
【0020】
[調製2]
緑茶の茶葉10gに80℃の熱水90gを添加し、80℃の条件下で10分間抽出後、室温になるまで冷却することで緑茶抽出液(緑茶抽出物固形分:3.0%、ポリフェノール含有量:0.7%)を調製した。
【0021】
[試験例1]
調製1の水中油型乳化物と調製2の緑茶抽出液とを重量比で2:1(実施例1-1)、4:1(実施例1-2)、8:1(実施例1-3)又は1:1(比較例1)で混合し、緑茶抽出物含有水中油型乳化物(実施品1-1~1-3及び比較品1)を得た。各緑茶抽出物含有水中油型乳化物を噴霧乾燥することで、各乳化粉末が得られた。各乳化粉末中の割合を表1に示した。
【0022】
[評価試験1]
実施品1-1~1-3及び比較品1の緑茶抽出物含有水中油型乳化物について、専門パネラー3名で官能評価を行い、アルカリ加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善されたものを○、緑茶抽出物の風味が強過ぎるため、乳化物の風味が好ましくないものを×として、結果を表1に示した。また、植物性タンパク質又は油脂を100%とした場合の緑茶抽出物固形分又はポリフェノールの割合も表1に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
表1に示したとおり、実施品1-1~1-3は、何れもアルカリ加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善されていたが、比較品1は、緑茶抽出物の風味が強過ぎるため、乳化物の風味が好ましくなかった。
【0025】
よって、アルカリ加水分解処理した植物性タンパク質を乳化剤とした乳化物中に、ポリフェノールを含む緑茶抽出物を含むことで、アルカリ加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善されるが、植物性タンパク質に対して400%以上添加すると、緑茶抽出物の風味が乳化物全体に悪影響を与え、好ましくないことが分かった。
【0026】
[調製3]
ほうじ茶抽出物粉末(ほうじ茶抽出物含有量:30%、デキストリン含有量70%)5gに水45gを添加することでほうじ茶抽出液(ほうじ茶抽出物固形分:3.0%、ポリフェノール含有量:0.7%)を調製した。
【0027】
[試験例2]
調製1の水中油型乳化物と調製3のほうじ茶抽出液とを重量比で5:1(実施例2-1)、10:1(実施例2-2)、20:1(実施例2-3)、1:1(比較例2-1)又は40:1(比較例2-2)で混合し、ほうじ茶抽出物含有水中油型乳化物(実施品2-1~2-3、並びに比較品2-1及び2-2)を得た。各ほうじ茶抽出物含有水中油型乳化物を噴霧乾燥することで、各乳化粉末が得られた。各乳化粉末中の割合を表2に示した。
【0028】
[評価試験2]
実施品2-1~2-3、並びに比較品2-1及び2-2のほうじ茶抽出物含有水中油型乳化物について、専門パネラー3名で官能評価を行い、アルカリ加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善されたものを○とし、ほうじ茶抽出物の風味が強過ぎるため、乳化物の風味が好ましくなかった比較品2-1及びアルカリ加水分解物由来の不快な風味が抑えられておらず、乳化物全体の風味が改善されなかった比較品2-2を何れも×として、結果を表2に示した。また、植物性タンパク質又は油脂を100%とした場合のほうじ茶抽出物固形分又はポリフェノールの割合も表2に示した。尚、水あめとデキストリンの合計を糖質として示した。
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示したとおり、実施品2-1~2-3は、何れもアルカリ加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善されていたが、比較品2-1は、ほうじ茶抽出物の風味が強過ぎるため、乳化物の風味が好ましくなく、比較品2-2は、アルカリ加水分解物由来の不快な風味が抑えられておらず、乳化物全体の風味が改善されなかった。
【0031】
よって、アルカリ加水分解処理した植物性タンパク質を乳化剤とした乳化物中に、ポリフェノールを含むほうじ茶抽出物を含むことで、アルカリ加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善されるが、植物性タンパク質に対して10%以下の添加では風味改善効果がみられず、また、400%以上添加すると、ほうじ茶抽出物の風味が乳化物全体に悪影響を与え、好ましくないことが分かった。
【0032】
[調製3]
緑茶の茶葉150gに80℃の熱水1,350gを添加し、80℃の条件下で10分間抽出後、室温になるまで冷却することで緑茶抽出液(緑茶抽出物固形分:3.4%、ポリフェノール含有量:0.7%)を調製した。
【0033】
[試験例3]
水300gにソラマメタンパク質(実施例3-1)又はヒヨコマメタンパク質(実施例3-2)18.8gを加え、分散させた後、48%水酸化ナトリウム水溶液3.0gを添加した。これを90℃まで加熱し、各植物性タンパク質を加水分解処理した後、冷却し、50%クエン酸水溶液でpH7.2に中和した。中和後、水あめ(ハローデックス(登録商標))62.2g、藻類油(DHA30%含有)(実施例3-1)又はアマニ油(実施例3-2)75g、調製3の緑茶抽出液275.7g、水63.4gを添加し、高圧ホモジナイザーで乳化処理して、緑茶抽出物含有水中油型乳化物(実施品3-1及び3-2)を得た。また、実施例3-1又は3-2の緑茶抽出液の代わりに水を添加し、水あめの配合量を75.5gに変更する以外は実施例3-1又は3-2と同様に調製し、水中油型乳化物(比較品3-1及び3-2)を得た。各水中油型乳化物を噴霧乾燥することで、各乳化粉末が得られた。尚、実施例3-1及び3-2で得られた乳化粉末中の各成分の割合は、何れも、油脂:50.0%、糖質:29.0%、植物性タンパク質:12.5%、クエン酸:1.3%、水酸化ナトリウム:1.0%、緑茶抽出物固形分:6.3%(ポリフェノール:1.29%)だった。
【0034】
[評価試験3]
実施品3-1及び3-2、並びに比較品3-1及び3-2の水中油型乳化物について、専門パネラー3名で官能評価を行い、アルカリ加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善されたものを○、アルカリ加水分解物由来の不快な風味があり、乳化物全体の風味が好ましくなかったものを×として、結果を表3に示した。また、豆類タンパク質又は油脂を100%とした場合の緑茶抽出物固形分又はポリフェノールの割合も表3に示した。また、豆類タンパク質又は油脂を100%とした場合の緑茶抽出物固形分又はポリフェノールの割合も表3に示した。
【0035】
【表3】
【0036】
表3に示したとおり、ポリフェノールを含む緑茶抽出物を添加した実施品3-1及び3-2は、何れもアルカリ加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善されていたが、緑茶抽出物を添加しなかった比較品3-1及び3-2は、アルカリ加水分解物由来の不快な風味があり、乳化物全体の風味が好ましくなかった。
【0037】
よって、各種植物性タンパク質をアルカリ加水分解物処理したタンパク質を乳化剤とした乳化物についても、ポリフェノールを含む緑茶抽出物を含むことで、アルカリ加水分解物由来の不快な風味が抑えられ、乳化物全体の風味が改善されることが分かった。