IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想科学工業株式会社の特許一覧

特開2023-5164捺染印刷用インクセットおよび捺染印刷物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005164
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】捺染印刷用インクセットおよび捺染印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/54 20140101AFI20230111BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20230111BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20230111BHJP
   D06P 5/08 20060101ALI20230111BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20230111BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230111BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230111BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20230111BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C09D11/54
C09D11/30
D06P5/00 104
D06P5/08
D06P5/30
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41M5/00 134
B41M5/00 100
B41M5/00 114
B41J2/01 501
D06M15/263
D06M15/564
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106910
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】林 暁子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴久
(72)【発明者】
【氏名】甲 こころ
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
4L033
【Fターム(参考)】
2C056FB03
2C056FC01
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB09
2H186AB12
2H186AB39
2H186AB41
2H186AB44
2H186AB45
2H186AB47
2H186DA17
2H186FA13
2H186FA14
2H186FB11
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB58
4H157AA01
4H157CB08
4H157CC01
4H157CC03
4H157DA01
4H157GA04
4H157GA06
4H157HA18
4J039AD01
4J039AD09
4J039AE04
4J039BA04
4J039BC09
4J039BC32
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE28
4J039CA06
4J039EA19
4J039EA34
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
4L033AB04
4L033CA18
4L033CA50
(57)【要約】
【課題】堅牢度の高い捺染印刷物を得るための捺染印刷用インクセットおよび捺染印刷物の製造方法を提供する。
【解決手段】カチオン性高分子化合物(a)および水を含む前処理液と、アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびアニオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるアニオン性水分散性樹脂(b)、水および顔料を含み、前記アニオン性水分散性樹脂(b)と前記顔料との質量比が、アニオン性水分散性樹脂(b):顔料=2:1~5:1であるインクと、水分散性(メタ)アクリル樹脂および水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である水分散性樹脂(c)および水を含む後処理液とを含む、捺染印刷用インクセット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性高分子化合物(a)および水を含む前処理液と、
アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびアニオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるアニオン性水分散性樹脂(b)、水および顔料を含み、前記アニオン性水分散性樹脂(b)と前記顔料との質量比が、アニオン性水分散性樹脂(b):顔料=2:1~5:1であるインクと、
水分散性(メタ)アクリル樹脂および水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である水分散性樹脂(c)および水を含む後処理液と
を含む、捺染印刷用インクセット。
【請求項2】
前記カチオン性高分子化合物は、カチオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびカチオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の捺染印刷用インクセット。
【請求項3】
カチオン性高分子化合物(a)および水を含む前処理液を布に付与する第1の工程と、
アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびアニオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるアニオン性水分散性樹脂(b)、水および顔料を含み、前記アニオン性水分散性樹脂(b)と前記顔料との質量比が、アニオン性水分散性樹脂(b):顔料=2:1~5:1であるインクを用いて、前記布に印刷する第2の工程と、
水分散性(メタ)アクリル樹脂および水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である水分散性樹脂(c)および水を含む後処理液を前記布に付与する第3の工程と
を含む、捺染印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記カチオン性高分子化合物は、カチオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびカチオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項3に記載の捺染印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、捺染印刷用インクセットおよび捺染印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
織物、編み物、不織布等の布等に、文字、絵、図柄等の画像を捺染する方法として、スクリーン捺染法やローラー捺染法の他に、近年では、コンピュータで画像処理して実質無版で捺染することができるダイレクト方式の捺染インクジェット方法が注目されている。
【0003】
特許文献1には、車両内装材として、ニードルパンチ不織布の表面上にプリント加工されたものが開示され、プリント加工にはグラビア印刷、スクリーン印刷等を行うことができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-168540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、自動車等の内装材として、座面に不織布の捺染印刷物を用いた場合、着席した人の荷重がかかった状態で摩擦が生じるため、印刷部が擦れてしまい、着席した人の衣類を汚染する場合がある。
本発明の実施形態は、堅牢度の高い捺染印刷物を得るための捺染印刷用インクセットおよび捺染印刷物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、カチオン性高分子化合物(a)および水を含む前処理液と、アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびアニオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるアニオン性水分散性樹脂(b)、水および顔料を含み、前記アニオン性水分散性樹脂(b)と前記顔料との質量比が、アニオン性水分散性樹脂(b):顔料=2:1~5:1であるインクと、水分散性(メタ)アクリル樹脂および水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である水分散性樹脂(c)および水を含む後処理液とを含む捺染印刷用インクセットに関する。
本発明の他の実施形態は、カチオン性高分子化合物(a)および水を含む前処理液を布に付与する第1の工程と、アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびアニオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるアニオン性水分散性樹脂(b)、水および顔料を含み、前記アニオン性水分散性樹脂(b)と前記顔料との質量比が、アニオン性水分散性樹脂(b):顔料=2:1~5:1であるインクを用いて、前記布に印刷する第2の工程と、水分散性(メタ)アクリル樹脂および水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である水分散性樹脂(c)および水を含む後処理液を前記布に付与する第3の工程とを含む、捺染印刷物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施形態によれば、堅牢度の高い捺染印刷物を得るための捺染印刷用インクセットおよび捺染印刷物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明するが、本発明は以下の実施形態に限定
されることはなく、様々な修正や変更が加えられてもよいことはいうまでもない。
【0009】
<捺染印刷用インクセット>
一実施形態の捺染印刷用インクセットは、カチオン性高分子化合物(a)および水を含む前処理液と、アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびアニオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるアニオン性水分散性樹脂(b)、水および顔料を含み、アニオン性水分散性樹脂(b)と顔料との質量比が、アニオン性水分散性樹脂(b):顔料=2:1~5:1であるインクと、水分散性(メタ)アクリル樹脂および水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である水分散性樹脂(c)および水を含む後処理液とを含む。
【0010】
一実施形態の捺染印刷用インクセットを用いると、堅牢度の高い捺染印刷物を得ることができる。この理由は、以下にように考えられるが、以下は本発明を限定するものではない。
カチオン性高分子化合物(a)を含む前処理液付与した布に、アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびアニオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるアニオン性水分散性樹脂(b)を含むインクを用いて印刷すると、インクのアニオン性水分散性樹脂(b)は凝集し、布への浸透が抑制されて布表面に集中して存在しやすくなり得る。また、インク中のアニオン性水分散性樹脂(b)が、質量比で顔料1に対して2以上であると、摩擦堅牢度を向上させ得る。これは、顔料がアニオン性水分散性樹脂(b)から隔離されて存在しにくくなるためと推測される。一方、インク中のアニオン性水分散性樹脂(b)が、質量比で顔料1に対して5以下であると、ドットの状態での凝集が抑制されて、凹凸が生じにくくなり得る。また、インクを用いた印刷後、印刷面に水分散性樹脂を含む後処理液を付与すると、前処理液、及びインクが付着した基材表面の溝に後処理液の樹脂が流れ込むことで、例えば不織布のような隙間の多い基材に対しても凹凸の少ない印刷面を形成することができる。このようにして凹凸が少なくなることで、凹凸による摩擦係数の上昇も抑制されて、摩擦による皮膜の脱落が起りにくくなり、摩擦堅牢度を向上させ得る。
【0011】
以下、前処理液について説明する。
【0012】
前処理液は、カチオン性高分子化合物(a)を含むことができる。
【0013】
カチオン性高分子化合物(a)としては、カチオン性水溶性樹脂及びカチオン性水分散性樹脂のいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0014】
カチオン性水溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン及びその塩、ポリビニルピリジン、カチオン性のアクリルアミドの共重合体等が挙げられる。より具体的には、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド等を用いることができる。
【0015】
カチオン性水溶性樹脂の市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製シャロールシリーズ「シャロールDC-303P」、「シャロールDC-902P」等、センカ株式会社製ユニセンスシリーズ「ユニセンスFCA1000L」、「ユニセンスFPA100L」等、大阪有機化学工業株式会社HCポリマーシリーズ「HCポリマー1S」、「HCポリマー1N」、「HCポリマー1NS」、「HCポリマー2」、「HCポリマー2L」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0016】
また、ポリエチレンイミンの市販品としては、例えば、株式会社日本触媒製エポミンシリーズ「エポミンSP-006」、「エポミンSP-012」、「エポミンSP-018」、「エポミンSP-200」等;BASFジャパン株式会社製「Lupasol FG」、「Lupasol G20 Waterfree」、「Lupasol PR 8515」等が挙げられる(いずれも商品名)。
また、ポリアリルアミンの市販品としては、例えば、日東紡績株式会社製のアリルアミン重合体である「PAA-01」、「PAA-03」、「PAA-05」、アリルアミン塩酸塩重合体である「PAA-HCL-01」、「PAA-HCL-03」、「PAA-HCL-05」、アリルアミンアミド硫酸塩重合体である「PAA-SA」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0017】
カチオン性水分散性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン/(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂、及びこれらの複合樹脂等において、これらの樹脂にカチオン性の官能基を導入するか、又は、カチオン性分散剤等で表面処理して、プラスの表面電荷を与えたものを用いることができる。カチオン性の官能基は、代表的には第1級、第2級又は第3級アミノ基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ピラゾール基、又はベンゾピラゾール基等が挙げられる。カチオン性の分散剤は、1級、2級、3級又は4級アミノ基含有(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリビニルアルコール樹脂、カチオン性水溶性多分岐ポリエステルアミド樹脂等が挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。
【0018】
これらカチオン性水分散性樹脂は、水性樹脂エマルション(O/W型エマルション)の形態のものであってもよい。水性樹脂エマルションは、例えば、上記樹脂1種単独の樹脂エマルションであってもよく、上記樹脂の2種以上からなるハイブリッド型の樹脂エマルションでもよい。
【0019】
カチオン性水分散性樹脂の市販品としては、例えば、Lubrizol社製の「PRINTRITE DP375」等、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス620」、「スーパーフレックス650」等、明成化学工業株式会社製の「PP-15、PP-17」等、昭和電工株式会社製の「ポリゾールAP-1350」等、DIC株式会社製の「ボンコートSFC-55」等、ジャパンコーティングレジン株式会社製の「アクアテックスAC-3100」、「モビニール7800」「モビニール7810」等、三菱ケミカル株式会社製の「リカボンドES-330」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0020】
堅牢度の向上の観点から、カチオン性高分子化合物(a)は、カチオン性水分散性樹脂が好ましく、カチオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびカチオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0021】
前処理液とインクおよび/または後処理液との親和性の向上と、それによる堅牢度の向上の観点から、カチオン性高分子化合物(a)は、インクのアニオン性水分散性樹脂(b)、および/または後処理液の水分散性樹脂(c)と類似する構成を有する水分散性樹脂であることが好ましい。例えば、インクのアニオン性水分散性樹脂(b)および/または後処理液の水分散性樹脂(c)がウレタン樹脂である場合、前処理液のカチオン性高分子化合物も水分散性ウレタン樹脂が好ましい。例えば、インクのアニオン性水分散性樹脂(b)および/または後処理液の水分散性樹脂(c)が(メタ)アクリル樹脂である場合、前処理液のカチオン性高分子化合物も水分散性(メタ)アクリル樹脂が好ましい。カチオン性高分子化合物(a)が、インクのアニオン性水分散性樹脂(b)および/または後処理液の水分散性樹脂(c)と類似の構造を有する水分散性樹脂であると、インクおよび/または後処理液との親和性が高くなり、例えば一体化されるなどして、より高い堅牢度を得ることができると考えられる。
【0022】
カチオン性高分子化合物は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオン性高分子化合物は、有効成分量で、前処理液全量に対し、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。カチオン性高分子化合物は、有効成分量で、前処理液全量に対し、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。カチオン性高分子化合物は、有効成分量で、前処理液全量に対し、0.5~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、2~10質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
前処理液は、水を含むことができる。
水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、超純水、脱イオン水等が挙げられる。
例えば、水は、前処理液全量に対して50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましい。水は、前処理液全量に対して99質量%以下であってよく、95質量%以下であってよい。水は、前処理液全量に対して、例えば、50~99質量%であってよく、65~95質量%であってよい。
【0024】
前処理液は、水溶性有機溶剤を含んでもよい。
【0025】
水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な化合物を使用することができる。水溶性有機溶剤としては、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。
水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0026】
これらの水溶性有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
水溶性有機溶剤は、例えば、前処理液全量に対して、5~90質量%または10~50質量%であってよい。
【0027】
前処理液は界面活性剤を含むことが好ましい。
【0028】
界面活性剤としては、イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤があるが、非イオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0029】
また、界面活性剤は、低分子量系界面活性剤及び高分子量系界面活性剤(一般には分子量が約2000以上のものを指す。)のいずれであってもよいが、高分子量系界面活性剤を好ましく用いることができる。
界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましく、10~18であることがより好ましい。
【0030】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシプロピレン脂肪酸エステル系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤等を挙げることができる。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
これらの中でも、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、又はこれらの組み合わせを好ましく用いることができ、なかでもアセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。
【0032】
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品として、例えば、アセチレングリコールの「オルフィンE1020」(商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0033】
上記した界面活性剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、前処理液全量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに一層好ましい。界面活性剤は、前処理液全量に対し、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤は、例えば、前処理液全量に対し、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましく、1~8質量%であることがさらに一層好ましい。
【0034】
前処理液は、防腐剤等の他の成分を含んでよい。
【0035】
前処理液の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。前処理液は、例えば、水中にカチオン性高分子化合物、及び必要に応じてその他の成分を分散又は溶解することにより得ることができる。カチオン性高分子化合物が水分散性樹脂であり、水性樹脂エマルション(O/W型エマルション)の形態である場合は、これをそのまま又は適当な量の水で希釈して前処理液として用いることもでき、または、例えば、水性樹脂エマルションまたはその希釈物に、必要に応じてその他の成分を分散又は溶解してもよい。
【0036】
以下、インクについて説明する。
【0037】
インクは、顔料を含むことができる。
【0038】
顔料としては、アゾ系、縮合多環系、ニトロ系、ニトロソ系の有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラックなど)、コバルト、鉄、クロム銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、ニッケル等の金属類、金属酸化物及び硫化物、ならびに黄土、群青、紺青などの無機顔料、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック類等が挙げられる。
【0039】
また、顔料として、顔料表面を親水性官能基で修飾した自己分散性顔料を水性溶媒に分散させた顔料分散体を使用することもできる。かかる顔料分散体の市販品としては、例えば、キャボット社製CAB-O-JETシリーズ(CAB-O-JET200、CAB-O-JET300、CAB-O-JET400、CAB-O-JET250C、CAB-O-JET450C、CAB-O-JET260M、CAB-O-JET465M、CAB-O-JET270)、オリヱント化学工業株式会社製BONJET BLACK CW-1、BONJET BLACK CW-2、BONJET BLACK CW-3等が挙げられる。これらの顔料は1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
顔料は、インク全量に対して、有効成分(顔料)として、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。顔料は、インク全量に対して、有効成分(顔料)として、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。顔料は、インク全量に対して、有効成分(顔料)として、0.1~30質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましい。
【0041】
水中に顔料を安定して分散させるために、インクは顔料分散剤をさらに含んでもよい。
【0042】
インクは、アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびアニオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるアニオン性水分散性樹脂(b)を含むことができる。
アニオン性水分散性樹脂(b)としては、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等のアニオン性の官能基を有するアニオン性水分散性樹脂が好ましい。
アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびアニオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるアニオン性水分散性樹脂(b)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらアニオン性水分散性樹脂(b)は、水性樹脂エマルション(O/W型エマルション)の形態のものであってもよい。上記水性樹脂エマルションは、上記樹脂1種単独の樹脂エマルションであってもよく、樹脂の2以上からなるハイブリッド型の樹脂エマルションでもよい。
【0043】
アニオン性水分散性ウレタン樹脂としては、ウレタン骨格を有し水分散性を有し、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等のアニオン性の官能基を有する樹脂を用いることができる。上記のような特性を満たす水分散性ウレタン樹脂の具体例としては、ウレタン骨格を有するアニオン性樹脂が挙げられる。市販品の例としては、具体的には、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス150」、「スーパーフレックス300」、「スーパーフレックス460」、「スーパーフレックス470」、「スーパーフレックス740」、「スーパーフレックス840」等、三井化学ポリウレタン(株)製の「タケラックWS-6021」、「タケラックW-512-A-6」、株式会社アデカ製「アデカボンタイターHUX-370」、「アデカボンタイターHUX-380」、DSM Coating Resins社製「NeoRez R-9660」、「NeoRez R-966」、「NeoRez R-986」、「NeoRez R-2170」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0044】
アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、アニオン性水分散性スチレン(メタ)アクリル樹脂及びアニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。アニオン性水分散性スチレン(メタ)アクリル樹脂及びアニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂は、いずれも特に限定されず、市販のものを用いることができる。
アニオン性水分散性スチレン(メタ)アクリル樹脂又はアニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂の市販品としては、例えばジャパンコーティングレジン株式会社製の「モビニール6485」、「モビニール6718」、「モビニール7955」(いずれも商品名)等、DSM Coating Resins社製の「NeocrylA633」、「NeocrylXK190」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0045】
アニオン性水分散性樹脂(b)の粒径は、記録媒体の隙間の大きさに応じて適宜選択できるが、インクをインクジェット方式で吐出する場合は、0.01~0.50μmが好ましく、0.05~0.30μmがさらに好ましい。アニオン性水分散性樹脂(b)の粒径は、光散乱法(日機装(株)製ナノトラック粒度分布測定装置)による体積基準の累積50%平均粒径(d50)を意味する。
【0046】
アニオン性水分散性樹脂(b)のインク中の含有量(固形分)は、インク全量に対して、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、5.5質量%以上がさらに好ましい。アニオン性水分散性樹脂(b)のインク中の含有量(固形分)は、インク全量に対して、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。アニオン性水分散性樹脂(b)のインク中の含有量(固形分)は、インク全量に対して、0.5~30質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、5~10質量%がさらに好ましく、5.5~10質量%がさらに好ましい。
【0047】
捺染印刷物の堅牢度の向上の観点から、アニオン性水分散性樹脂(b)と顔料との質量比は、アニオン性水分散性樹脂(b):顔料=2:1~5:1であることが好ましく、アニオン性水分散性樹脂(b):顔料=2.5:1~4.5:1であることがより好ましく、3:1~4:1であることがさらに好ましい。
【0048】
インクは、アニオン性水分散性樹脂(b)以外の水分散性樹脂を含んでもよい。アニオン性水分散性樹脂(b)以外の水分散性樹脂としては、例えば、水分散性オレフィン樹脂等が挙げられる。
アニオン性水分散性樹脂(b)は、インクに含まれる水分散性樹脂全量に対して、固形分量で、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
アニオン性水分散性樹脂(b)を含む水分散性樹脂の合計量(固形分)は、インク全量に対し、0.5~30質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましく、6~10質量%であることがさらに好ましい。
【0049】
インクは水を含むことができる。
水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、超純水、脱イオン水等が挙げられる。
水は、インク全量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。水は、インク全量に対して、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。例えば、水は、インク全量に対して、10~90質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、40~80質量%であることがさらに好ましい。
【0050】
インクは、水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。
【0051】
水溶性有機溶剤としては、例えば、上記した前処理液に配合可能な水溶性有機溶剤を用いることができる。水溶性有機溶剤は、1種、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水溶性有機溶剤は、インク全量に対し、5~50質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
【0052】
インクは、界面活性剤を含むことが好ましい。
【0053】
界面活性剤としては、例えば、上記した前処理液に配合可能な界面活性剤を用いることができる。なかでも、非イオン性界面活性剤が好ましい。
また、界面活性剤は、低分子量系界面活性剤及び高分子量系界面活性剤(一般には分子量が約2000以上のものを指す。)のいずれであってもよいが、高分子量系界面活性剤を好ましく用いることができる。界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましく、10~18であることがより好ましい。
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、又はこれらの組み合わせが好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。
【0054】
界面活性剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、インク全量に対し、0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~2質量%であることがより好ましい。
【0055】
インクは、防腐剤等の他の成分を含んでよい。
【0056】
インクの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。インクは、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより得ることができる。
【0057】
インクの粘度は適宜調節することができるが、たとえば吐出性の観点から、23℃における粘度が1~30mPa・sであることが好ましい。
【0058】
インクは、好ましくは、インクジェットインクである。インクが用いられるインクジェット方式としては、例えば、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式であってもよい。
インクは、捺染印刷用インクとして好ましく用いることができる。
【0059】
以下、後処理液について説明する。
【0060】
後処理液は、水分散性(メタ)アクリル樹脂および水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である水分散性樹脂(c)を含むことができる。
【0061】
印刷面の凹凸を効果的に軽減させる観点から、後処理液の水分散性樹脂(c)は、アニオン性またはノニオン性であることが好ましい。インクのアニオン性水分散性樹脂(b)がアニオン性であるため、後処理液の水分散性樹脂(c)が、アニオン性またはノニオン性であると、凝集が起りにくく、レベリングしやすくなり、凹凸が解消されやすくなる。凹凸が少ないと摩擦抵抗も少なくなるため、インク皮膜の脱離が抑制され、堅牢度をさらに向上させることができる。水分散性樹脂(c)は、例えば、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等のアニオン性の官能基を有する、アニオン性水分散性樹脂であってよい。
【0062】
水分散性ウレタン樹脂としては、ウレタン骨格を有し水分散性を有する樹脂であれば特に限定はされない。
アニオン性水分散性ウレタン樹脂としては、例えば、上記したインクのアニオン性水分散性樹脂(b)としてインクに配合可能なアニオン性水分散性ウレタン樹脂を用いることができる。水分散性ウレタン樹脂は、1種、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0063】
水分散性(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、スチレン(メタ)アクリル樹脂及び水分散性(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。スチレン(メタ)アクリル樹脂及び水分散性(メタ)アクリル樹脂は、いずれも特に限定されず、市販のものを用いることができる。アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、上記したインクのアニオン性水分散性樹脂(b)としてインクに配合可能なアニオン性水分散性ウレタン樹脂を用いることができる。水分散性(メタ)アクリル樹脂は、1種、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0064】
水分散性樹脂(c)の後処理液中の含有量(固形分)は、後処理液全量に対し、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。一方、水分散性樹脂(c)の含有量(固形分)は、後処理液全量に対し、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。水分散性樹脂(c)の含有量(固形分)は、後処理液全量に対し、0.5~30質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることがさらに好ましい。
【0065】
後処理液は、水分散性樹脂(c)以外の水分散性樹脂を含んでもよい。水分散性樹脂(c)以外の水分散性樹脂としては、例えば、水分散性オレフィン樹脂等が挙げられる。
水分散性樹脂(c)は、後処理液に含まれる水分散性樹脂全量に対して、固形分量で、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
水分散性樹脂(c)を含む水分散性樹脂の合計量(固形分)は、後処理液全量に対し、0.5~30質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることがさらに好ましい。
【0066】
後処理液は、水を含むことが好ましい。
【0067】
水としては、特に制限されないが、例えば、水道水、イオン交換水、蒸留水、超純水、脱イオン水等が挙げられる。
水は、後処理液全量に対し、40~95質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましい。
【0068】
後処理液は、水溶性有機溶剤を含んでもよい。
【0069】
水溶性有機溶剤としては、例えば、上記した前処理液に配合可能な水溶性有機溶剤を用いることができる。水溶性有機溶剤は、1種、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水溶性有機溶剤は、後処理液全量に対し、例えば、1~40質量%、又は5~30質量%であってよい。
【0070】
後処理液は、界面活性剤を含むことが好ましい。
【0071】
界面活性剤としては、例えば、上記した前処理液に配合可能な界面活性剤を用いることができる。なかでも、非イオン性界面活性剤が好ましい。
また、界面活性剤は、低分子量系界面活性剤及び高分子量系界面活性剤(一般には分子量が約2000以上のものを指す。)のいずれであってもよいが、高分子量系界面活性剤を好ましく用いることができる。界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましく、10~18であることがより好ましい。
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、又はこれらの組み合わせが好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。
【0072】
界面活性剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤は、後処理液全量に対し、0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~2質量%であることがより好ましい。
【0073】
後処理液は、防腐剤等の他の成分を含んでよい。
【0074】
後処理液の製造方法はとくに限定されず、公知の方法で適宜製造することができる。後処理液は、例えば、水中に水分散性樹脂、及び必要に応じてその他の成分を分散又は溶解することにより得ることができる。水分散性樹脂が水性樹脂エマルション(O/W型エマルション)の形態である場合は、これをそのまま又は適当な量の水で希釈して後処理液として用いることもでき、または、例えば、水性樹脂エマルションまたはその希釈物に、必要に応じてその他の成分を分散又は溶解してもよい。
【0075】
捺染印刷用インクセットは、上記した前処理液と、上記したインクと、上記した後処理液とを含むことができる。捺染印刷用インクセットは、その他のインク、及び/又はその他の前処理液、及び/又はその他の後処理液をさらに組み合わせて含んでもよい。
【0076】
捺染印刷用インクセットは、布への印刷に好ましく用いることができる。
布としては、例えば、綿、絹、羊毛、麻等の天然繊維;ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ナイロン、レーヨン、キュプラ、アセテート等の化学繊維;又はこれらの混紡繊維等を挙げることができる。また、布としては、織物、編物、又は不織布等であってよい。一実施形態による捺染印刷用インクセットを用いることで、不織布に対しても、良好な堅牢度の捺染印刷物を得ることができる。
【0077】
一実施形態の捺染印刷用インクセットは、例えば、自動車内装用シート材等の自動車内装用不織布に用いることができる。
一実施形態の捺染印刷用インクセットと不織布とを用いて得られた捺染印刷物は、例えば、自動車内装用シート材として好適に使用することができる。堅牢度が高いため、自動車内装用シート材として使用した場合、座席に着席した人の衣類等を汚しにくい。
【0078】
<捺染印刷物の製造方法>
一実施形態の捺染印刷物の製造方法は、カチオン性高分子化合物(a)および水を含む前処理液を布に付与する第1の工程と、アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびアニオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるアニオン性水分散性樹脂(b)、水および顔料を含み、アニオン性水分散性樹脂(b)と顔料との質量比が、アニオン性水分散性樹脂(b):顔料=2:1~5:1であるインクを用いて、布に印刷する第2の工程と、水分散性(メタ)アクリル樹脂および水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である水分散性樹脂(c)および水を含む後処理液を布に付与する第3の工程とを含むことができる。
前処理液、インク、及び後処理液には、それぞれ上記の一実施形態による捺染印刷用インクセットで説明した前処理液、インク及び後処理液を用いることができる。布としては、例えば、上述の捺染印刷用インクセットを用いることができるものとして説明した布を用いることができる。
捺染印刷物の製造方法は、第1の工程、第2の工程及び第3の工程を、この順で実施することができる。
【0079】
一実施形態による捺染印刷物の製造方法は、例えば、布として不織布を用いた場合にも、良好な捺染印刷物の堅牢度を得ることができる。一実施形態の捺染印刷用インクセットは、例えば、自動車内装用シート材等の自動車内装用不織布の捺染印刷物の製造にも用いることができる。
【0080】
第1の工程において、前処理液の付与領域は、第2の工程においてインクを用いて印刷を行う印刷領域に対応する領域であってもよいし、布の部分的又は全体的な領域であってもよい。前処理液は、少なくとも、第2の工程においてインクを用いて印刷を行う印刷領域に付与することが好ましい。
第1の工程において、前処理液を布に付与する方法は特に限定されない。前処理液の付与は、例えば、エアスプレー等を用いるスプレー法、浸漬法、パッド法、コーティング法、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法等を用いて行うことができる。
インクジェット印刷法によって前処理液を付与する場合のインクジェット方式は特に限定されず、例えば、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式等のいずれの方式であってもよい。
前処理液の付与量は特に限定されないが、例えば、付与面積あたり、10~1000g/mが好ましく、50~500g/mがより好ましく、50~200g/mがさらに好ましい。
【0081】
第2の工程において、インクを用いて布に印刷する方法はとくに限定されない。例えば、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等を用いることができるが、インクジェット印刷法がより好ましい。
インクジェット印刷法のインクジェット方式は特に限定されず、例えば、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式等のいずれの方式であってもよい。デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドからインク等の液滴を吐出させ、吐出されたインク等の液滴を布に付着させて画像を印刷することが好ましい。
【0082】
インクの布への付与量は、布の付与面積当たり、1~500g/mが好ましく、3~100g/mがより好ましく、5~50g/mがさらに好ましい。
【0083】
第3の工程において、後処理液の付与領域は、第2の工程においてインクを用いて印刷を行う印刷領域に対応する領域であってもよいし、布の部分的又は全体的な領域であってもよい。後処理液は、少なくとも、第2の工程においてインクを用いて印刷を行う印刷領域に付与することが好ましい。
第3の工程において、後処理液を布に付与する方法は特に限定されない。後処理液の付与は、例えば、上記した前処理液の付与に用いることができる方法等を用いて行うことができる。
後処理液の付与量は特に限定されないが、例えば、付与面積あたり、10~1000g/mが好ましく、50~500g/mがより好ましく、100~500g/mがさらに好ましくい。
【0084】
捺染印刷物の製造方法は、布を加熱する工程をさらに含んでもよい。
捺染印刷物の製造方法は、例えば、前処理液を布に付与したのちに、インクを用いて布に印刷する前に、布を加熱する工程(以下、「加熱工程X」という場合もある。)、インクを用いて布に印刷したのちに、後処理液を布に付与する前に、布を加熱する工程(以下、「加熱工程Y」という場合もある。)、及び後処理液を布に付与した後、布を加熱する工程(以下、「加熱工程Z」という場合もある。)からなる群から選択される1つ以上の加熱工程を含むことが好ましく、加熱工程X、加熱工程Yおよび加熱工程Zを含むことがより好ましい。
【0085】
1つ以上の加熱工程が含まれる場合、各加熱工程の加熱処理方法は、特に限定されないが、例えば、ホットプレートでの加熱、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、及びサーモフィックス法が挙げられる。加熱工程が2つ以上含まれる場合、加熱方法は、同一であっても異なってもよい。
1つ以上の加熱工程が含まれる場合、各加熱工程の加熱処理時の温度は、例えば、それぞれ独立に50℃~250℃が好ましく、100~200℃程度がより好ましい。1つ以上の加熱工程が含まれる場合、各加熱工程の加熱時間は、例えば、それぞれ独立に10秒~10分が好ましく、30秒~3分程度がより好ましい。
【実施例0086】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断らない限り、「%」は「質量%」である。表中の各成分の配合量も「質量%」で示す。
【0087】
<試験片>
試験片として、東洋紡株式会社製のポリエステル製白色不織布ハイムスパンボンドを使用した。
【0088】
<前処理液>
表1に前処理液1~3の処方を示す。表1に記載の配合比で原材料を混合し、孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過し、前処理液1~3を得た。
【0089】
【表1】
【0090】
表1に記載の材料の詳細は以下の通りである。
【0091】
(カチオン性高分子化合物)
シャロールDC-303P:水溶性カチオン性樹脂、第一工業製薬株式会社製、有効成分40質量%
スーパーフレックス620:カチオン性水分散性ウレタン樹脂(水性樹脂エマルション)、第一工業製薬株式会社製、有効成分30質量%
リカボンドES-330:カチオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂(水性樹脂エマルション)、三菱ケミカル株式会社製、有効成分40質量%
(界面活性剤)
オルフィンE1020:アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製
【0092】
<インク>
表2にインク1~5の処方を示す。表2に記載の配合比で原材料を混合し、孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過し、インク1~5を得た。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に記載の材料の詳細は以下の通りである。
【0095】
(顔料分散体)
CAB-O-JET300:自己分散性顔料分散体(カーボンブラック)、キャボットジャパン株式会社製、顔料分15質量%
(水分散性樹脂)
スーパーフレックス740:アニオン性水分散性ウレタン樹脂(水性樹脂エマルション)、第一工業製薬株式会社製、有効成分40質量%
アローベースDC1010:水分散性オレフィン樹脂(水性樹脂エマルション)、ユニチカ株式会社製、有効成分26質量%
モビニール6718:アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂(水性樹脂エマルション)、ジャパンコーティングレジン株式会社製、有効成分45質量%
(界面活性剤)
オルフィンE1020:アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製
(水溶性有機溶剤)
ジエチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
グリセリン:関東化学株式会社製
【0096】
<後処理液>
表3に後処理液1~4の処方を示す。表3に記載の配合比で原材料を混合し、孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過し後処理液1~4を得た。
【0097】
【表3】
【0098】
表3に記載の材料の詳細は以下の通りである。
【0099】
(水分散性樹脂)
Neocryl XK-190:水分散性(メタ)アクリル樹脂(水性樹脂エマルション)、DSM Coating Resins社製、有効成分45質量%
ハイドリンL700:水分散性オレフィン樹脂(水性樹脂エマルション)、中京油脂株式会社製、有効成分30質量%
ポリロンL618:水分散性オレフィン樹脂(水性樹脂エマルション)、中京油脂株式会社製、有効成分30質量%
スーパーフレックス470:水分散性ウレタン樹脂(水性樹脂エマルション)、第一工業製薬株式会社製、有効成分38質量%
(界面活性剤)
オルフィンE1020:アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製
【0100】
<捺染印刷物の作製>
以下の(i)~(iii)の手順で実施例1~14および比較例1~4の捺染印刷物を得た。なお、比較例1では、(iii)は行われなかった。表4~6に、各実施例及び比較例について、用いた前処理液、インク、及び後処理液、並びにそれらの付与量を示す。
【0101】
(i) 試験片に、上記で作製した前処理液をエアスプレーで塗工し、塗工後HotronixFusionヒートプレスを用いて150℃で60秒間加熱した。
(ii)上記で作製したインクをマスターマインド社製インクジェットプリンターMMP813BT-Cに充填し、(i)の処理が行われた試験片に黒ベタ画像を印刷した。印刷後、HotronixFusionヒートプレスを用いて150℃で60秒間加熱した。
(iii)上記で作製した後処理液を、(ii)の処理が行われた試験片にエアスプレーで塗工し、塗工後HotronixFusionヒートプレスを用いて150℃で60秒間加熱し、捺染印刷物を得た。
【0102】
<評価>
得られた捺染印刷物について、以下の堅牢度の評価を行った。結果を表4~6に示す。
【0103】
堅牢度試験には学振試験機RT-200(大栄科学精器製作所)を使用した。試験機の摩擦子に摩擦用白布を取り付け、300gの重りを載せた状態で摩擦子を印刷領域に置き、4.9Nの負荷荷重で100往復擦過した。摩擦用白布は、綿100%カナキン3号とした。堅牢度はカナキン3号の汚染(着色度合い)をグレースケールと対比し以下の判定基準で評価した。
A :グレースケールで4級以上
B :グレースケールで3-4級
C :フレースケールで3級以下
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
実施例1~14は、負荷荷重が大きい状態での摩擦に対しても優れた堅牢度を示した。
【0108】
後処理液を使用していない比較例1は、十分な堅牢度を得ることができなかった。
アニオン性水分散性(メタ)アクリル樹脂およびアニオン性水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるアニオン性水分散性樹脂(b)と顔料との質量比が1:1である比較例2は、十分な堅牢度を得ることができなかった。
後処理液の樹脂に、水分散性(メタ)アクリル樹脂および水分散性ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が含まれていない比較例3、比較例4は、いずれも十分な堅牢度を得ることができなかった。