(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051695
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】補助金具及び壁材の取り付け方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
E04B2/56 631J
E04B2/56 631C
E04B2/56 631K
E04B2/56 642C
E04B2/56 621A
E04B2/56 621J
E04B2/56 621K
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062868
(22)【出願日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2021160773
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517269057
【氏名又は名称】株式会社福栄
(71)【出願人】
【識別番号】000133135
【氏名又は名称】株式会社タナカ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(72)【発明者】
【氏名】福▲崎▼ 國久
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002FA02
2E002FA03
2E002FB02
2E002FB08
2E002GA02
2E002GA03
2E002JC03
2E002JD02
2E002JD03
2E002MA04
(57)【要約】
【課題】建築物の構造躯体に壁材を取り付ける際の位置決めに使用される補助金具であって、補助金具の構造躯体に対する位置決めが容易な補助金具を提供する。
【解決手段】補助金具1Aは、建築物の構造躯体に壁材を取り付ける際に使用される補助金具であって、構造躯体の構成部材の側面に当接する垂直面材3と、構成部材から離隔する方向に、垂直面材3から延びて、支持対象物を支持する下部水平面材4とを備える。また、補助金具1Aは、垂直面材3の上縁から構成部材に向かって延びて、構成部材の上面に当接する上部水平面材2を備えても良い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の構造躯体に壁材を取り付ける際に使用される補助金具であって、
前記構造躯体の構成部材の側面に当接する垂直面材と、
前記構成部材から離隔する方向に、前記垂直面材から延びて、支持対象物を支持する支持部材と、を備える、
補助金具。
【請求項2】
前記支持部材は、前記垂直面材の下縁から延びる下部水平面材である、
請求項1に記載の補助金具。
【請求項3】
前記支持部材は、前記垂直面材の左右の側縁から左右に延びる面材を折り曲げて形成された支持腕である、
請求項1に記載の補助金具。
【請求項4】
前記構成部材に向かう方向に、前記垂直面材から突出する爪部材を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の補助金具。
【請求項5】
前記垂直面材の上縁から前記構成部材に向かって延びて、前記構成部材の上面に当接する上部水平面材を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の補助金具。
【請求項6】
前記構成部材に向かう方向に、前記垂直面材から突出する爪部材を備える、
請求項5に記載の補助金具。
【請求項7】
前記構成部材に向かう方向に、前記上部水平面材から突出する爪部材を備える、
請求項5に記載の補助金具。
【請求項8】
建築物の構造躯体が備える耐力面材の外側に壁材を取り付ける方法であって、
前記耐力面材の下端を基準にして、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の補助金具を前記耐力面材に対して位置決めして、その後に、前記補助金具を前記耐力面材に固定する工程と、
前記補助金具の前記支持部材の上面に、前記壁材の下端面を当接させて、前記壁材を前記構造躯体に対して位置決めする工程と、
前記壁材を前記構造躯体に固定する工程と、を有する、
壁材の取り付け方法。
【請求項9】
建築物の構造躯体が備える耐力面材の外側に壁材を取り付ける方法であって、
前記耐力面材の下端を基準にして、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の補助金具を前記耐力面材に対して位置決めして、その後に、前記補助金具を前記耐力面材に固定する工程と、
前記補助金具の前記支持部材に、スタータ金具を当接させて、前記スタータ金具を前記構造躯体に対して位置決めする工程と、
前記スタータ金具を前記構造躯体に固定する工程と、
前記壁材の下端を前記スタータ金具に係合させて、前記壁材を前記構造躯体に対して位置決めする工程と、
前記壁材を前記構造躯体に固定する工程と、を有する、
壁材の取り付け方法。
【請求項10】
建築物の構造躯体に壁材を取り付ける方法であって、
前記構造躯体が備える横架材の上面に、請求項5に記載の補助金具の前記上部水平面材を当接させるとともに、前記横架材の側面に前記補助金具の前記垂直面材を当接させて、その後に、前記補助金具を前記横架材に固定する工程と、
前記補助金具の前記支持部材の上面に、前記壁材の下端面を当接させて、前記壁材を前記構造躯体に対して位置決めする工程と、
前記壁材を前記構造躯体に固定する工程と、を有する、
壁材の取り付け方法。
【請求項11】
建築物の構造躯体に壁材を取り付ける方法であって、
前記構造躯体が備える横架材の上面に、請求項5に記載の補助金具の前記上部水平面材を当接させるとともに、前記横架材の側面に前記補助金具の前記垂直面材を当接させて、その後に、前記補助金具を前記横架材に固定する工程と、
前記補助金具の前記支持部材に、スタータ金具を当接させて、前記スタータ金具を前記構造躯体に対して位置決めする工程と、
前記スタータ金具を前記構造躯体に固定する工程と、
前記壁材の下端を前記スタータ金具に係合させて、前記壁材を前記構造躯体に対して位置決めする工程と、
前記壁材を前記構造躯体に固定する工程と、を有する、
壁材の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物の構造躯体に壁材を取り付ける際に使用される補助金具、及び建築物の構造躯体に壁材を取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物、特に住宅建築において、構造躯体の外側に工場で製作された外壁材を留め付けて、外壁を構成することが行われている。なお、構造躯体は建築構造を支える骨組みにあたる部分であり、内装材及び外装材と対立する概念である。外壁材はセメントや金属などを原料とした板状の部材であって、一般に、サイディングと呼ばれている。
【0003】
外壁材を構造躯体に留め付ける際に、それに先立ってスタータ金具と呼ばれる部品を構造躯体に取り付けることが知られている(例えば、特許文献1)。スタータ金具は、略L字形の断面形を有する金属製の部品であって、構造躯体に固定される基板部と外壁材の下端に係合されて当該外壁材を支承する支承部とを備えている。外壁材は、その下端をスタータ金具の支承部と係合させることによって、スタータ金具に対して位置決めされる。そのため、スタータ金具を構造躯体に対して正確に位置決めして取り付ければ、外壁材を構造躯体に対して正確に位置決めすることができる。なお、外壁材はスタータ金具によって構造躯体に留め付けられた後で、釘あるいはビス等を用いて構造躯体に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、スタータ金具を使用して外壁材を構造躯体に留め付ける構造においては、スタータ金具が構造躯体に対して正確に位置決めされる必要がある。また、複数のスタータ金具を、その取り付け高さを揃えて構造躯体に取り付ける必要がある。そのために、構造躯体の表面にスタータ金具の取り付け位置の基準となる基準線を描く必要がある。
【0006】
また、スタータ金具を使用しない場合においても、外壁材を構造躯体に対して位置決めするための基準線を構造躯体の表面に描く必要がある。
【0007】
かかる基準線は、構造躯体の表面で墨糸を弾くことによって、あるいはレーザ墨出し器が発するレーザ光を構造躯体の表面に投影することによって描かれる。しかしながら、いずれの方法によっても、基準線の形成には手間がかかるという問題がある。また、基準線に合わせて、目視と手作業によって、スタータ金具あるいは外壁材を構造躯体に取り付けるのにも手間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、建築物の構造躯体に壁材を取り付ける際の位置決めに使用される補助金具であって、構造躯体に対する補助金具の位置決めが容易な補助金具を提供するものである。また、本発明は、建築物の構造躯体に壁材を取り付ける方法であって、構造躯体に対する壁材の位置決めが容易な取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係る補助金具は、建築物の構造躯体に壁材を取り付ける際に使用される補助金具であって、構造躯体の構成部材の側面に当接する垂直面材と、構成部材から離隔する方向に、垂直面材から延びて、支持対象物を支持する支持部材と、を備える。
【0010】
上記の支持部材は、垂直面材の下縁から延びる下部水平面材であっても良い。
【0011】
上記の支持部材は、垂直面材の左右の側縁から左右に延びる面材を折り曲げて形成された支持腕であっても良い。
【0012】
上記の補助金具において、構成部材に向かう方向に、垂直面材から突出する爪部材を備えても良い。
【0013】
上記の補助金具において、垂直面材の上縁から構成部材に向かって延びて、構成部材の上面に当接する上部水平面材を備えても良い。
【0014】
上記の補助金具において、構成部材に向かう方向に、垂直面材から突出する爪部材を備えても良い。
【0015】
上記の補助金具において、構成部材に向かう方向に、上部水平面材から突出する爪部材を備えても良い。
【0016】
本発明の第2の観点に係る壁材の取り付け方法は、建築物の構造躯体が備える耐力面材の外側に壁材を取り付ける方法であって、耐力面材の下端を基準にして、上記の補助金具を耐力面材に対して位置決めして、その後に、補助金具を耐力面材に固定する工程と、補助金具の支持部材の上面に、壁材の下端面を当接させて、壁材を構造躯体に対して位置決めする工程と、壁材を構造躯体に固定する工程と、を有する。
【0017】
本発明の第3の観点に係る壁材の取り付け方法は、建築物の構造躯体が備える耐力面材の外側に壁材を取り付ける方法であって、耐力面材の下端を基準にして、上記の補助金具を耐力面材に対して位置決めして、その後に、補助金具を耐力面材に固定する工程と、補助金具の支持部材に、スタータ金具を当接させて、スタータ金具を構造躯体に対して位置決めする工程と、スタータ金具を構造躯体に固定する工程と、壁材の下端をスタータ金具に係合させて、壁材を構造躯体に対して位置決めする工程と、壁材を構造躯体に固定する工程と、を有する。
【0018】
本発明の第4の観点に係る壁材の取り付け方法は、建築物の構造躯体に壁材を取り付ける方法であって、構造躯体が備える横架材の上面に、上記の補助金具の上部水平面材を当接させるとともに、横架材の側面に補助金具の垂直面材を当接させて、その後に、補助金具を横架材に固定する工程と、補助金具の支持部材の上面に、壁材の下端面を当接させて、壁材を構造躯体に対して位置決めする工程と、壁材を構造躯体に固定する工程と、を有する。
【0019】
本発明の第5の観点に係る壁材の取り付け方法は、建築物の構造躯体に壁材を取り付ける方法であって、構造躯体が備える横架材の上面に、上記の補助金具の上部水平面材を当接させるとともに、横架材の側面に補助金具の垂直面材を当接させて、その後に、補助金具を横架材に固定する工程と、補助金具の支持部材に、スタータ金具を当接させて、スタータ金具を構造躯体に対して位置決めする工程と、スタータ金具を構造躯体に固定する工程と、壁材の下端をスタータ金具に係合させて、壁材を構造躯体に対して位置決めする工程と、壁材を構造躯体に固定する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る補助金具は、構造躯体の構成部材に取り付けるだけで、構造躯体に対して位置決めされる。そして、壁材は補助金具を基準にして位置決めされる。そのため、本発明によれば、補助金具の構造躯体に対する位置決めと、壁材の構造躯体に対する位置決めが、容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る補助金具の外形図であって、(A)は補助金具の斜視図であり、(B)は補助金具を(A)において矢印Aで示す方向から見る矢視図であり、(C)は補助金具の一部を(B)において矢印Bで示す方向から見る矢視図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係る補助金具の外形図であって、(A)は補助金具の斜視図であり、(B)は補助金具を(A)において矢印Aで示す方向から見る矢視図である。
【
図3】本発明の第3の実施の形態に係る補助金具の外形図であって、(A)は補助金具の斜視図であり、(B)は補助金具を(A)において矢印Aで示す方向から見る矢視図である。
【
図4】本発明の第4の実施の形態に係る補助金具の外形を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第5の実施の形態に係る補助金具の外形図であって、(A)は補助金具の斜視図であり、(B)は補助金具の正面図であり、(C)は補助金具の側面図である。
【
図6】(A)は第5の実施の形態に係る補助金具の第1の変形例の側面図であり、(B)は第2の変形例の側面図である。
【
図7】第1の実施の形態に係る補助金具を使用して、真壁構造を備える構造躯体に外壁材を取り付けた状態を示す説明図である。
【
図8】第2及び第3の実施の形態に係る補助金具を使用して、大壁構造を備える構造躯体に外壁材を取り付けた状態を示す説明図である。
【
図9】第5の実施の形態に係る補助金具を使用して、真壁構造を備える構造躯体に外壁材を取り付けた状態を示す説明図である。
【
図10】第5の実施の形態の変形例に係る補助金具を使用して、大壁構造を備える構造躯体に外壁材を取り付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態にについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付している。また、本明細書において、「水平」、「垂直」及び「上下」は、補助金具を構造躯体に取り付けた状態での「水平」、「垂直」及び「上下」を指すものである。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る補助金具1Aの外形図であって、
図1(A)は補助金具1Aの斜視図であり、
図1(B)は補助金具1Aを
図1(A)において矢印Aで示す方向から見る矢視図であり、
図1(C)は補助金具1Aの一部を
図1(B)において矢印Bで示す方向から見る矢視図である。
【0024】
補助金具1Aは薄鋼板で構成された金具であって、
図1(A)及び
図1(B)に示すように、上部水平面材2を備えている。上部水平面材2の先端において、補助金具1Aは直角に折り曲げられて、下方に向かって延びている。このように、補助金具1Aの上部水平面材2の端部から下方に向かって延びる部分を、本明細書においては、垂直面材3と呼ぶことにする。また、垂直面材3の下縁において、補助金具1Aは直角に折り曲げられて、上部水平面材2から離隔する方向に延びている。このように、補助金具1Aの垂直面材3の下縁から、上部水平面材2から離隔する方向に延びる部分を、本明細書においては、下部水平面材4と呼ぶことにする。一方、前述したように、上部水平面材2は、垂直面材3の上縁から、下部水平面材4から離隔する方向に延びている。要するに、補助金具1Aは上部水平面材2と垂直面材3と下部水平面材4とを備えて、略Z字形の外形を有している。
【0025】
なお、補助金具1Aの下部水平面材4は、本願発明に係る支持部材の例示である。後述するように、補助金具1Aの下部水平面材4は、支持対象物であるスタータを一時的に支持して、その重量の一部を荷重として受ける。
【0026】
また、
図1(B)に示すように、補助金具1Aは、上部水平面材2の下方に突出する爪部材5を備えている。爪部材5は上部水平面材2の一部に切れ目を入れて、折り曲げて形成されている。そして、
図1(C)に現れる形状において、爪部材5は先端が尖った三角形の平面形を有している。
【0027】
なお、
図1(A)に示すように、補助金具1Aの垂直面材3には、釘穴6が開けられている。また、垂直面材3の表面には、刻印線7がレーザ加工によって形成されている。
【0028】
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る補助金具1Bの外形図であって、
図2(A)は補助金具1Bの斜視図であり、
図2(B)は補助金具1Bを
図2(A)において矢印Aで示す方向から見る矢視図である。
【0029】
補助金具1Bも、補助金具1Aと同様に、薄鋼板で構成されていて、上部水平面材2と垂直面材3と下部水平面材4とを備えて、略Z字形の外形を有している。補助金具1Bは下部水平面材4の寸法のみが、補助金具1Aと相違する。
【0030】
なお、補助金具1Bの下部水平面材4も、本願発明に係る支持部材の例示である。後述するように、補助金具1Bの下部水平面材4は、支持対象物である壁部材を一時的に支持して、その重量の一部を荷重として受ける。
【0031】
また、
図2(B)に示すように、補助金具1Bも、補助金具1Aと同様に、上部水平面材2の下方に突出する爪部材5を備えている。そして、
図2(A)に示すように、補助金具1Bの垂直面材3にも、釘穴6が開けられている。補助金具1Bの垂直面材3の表面にも、刻印線7がレーザ加工によって形成されている。
【0032】
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る補助金具1Cの外形図であって、
図3(A)は補助金具1Cの斜視図であり、
図3(B)は補助金具1Cを
図3(A)において矢印Aで示す方向から見る矢視図である。
【0033】
補助金具1Cは、補助金具1A及び補助金具1Bと同様に、薄鋼板で構成されている。
図3(A)及び
図3(B)に示すように、補助金具1Cは、上部水平面材2を備えない点で、補助金具1A及び補助金具1Bと相違する。補助金具1Cは垂直面材3と下部水平面材4とを備えて、略L字形の外形を有している。
【0034】
図3(B)に示すように、補助金具1Cは、垂直面材3から突出する爪部材5を備えている。また、補助金具1Cの垂直面材3には、釘穴6が開けられている。また、垂直面材3の表面には、刻印線7がレーザ加工によって形成されている。
【0035】
なお、補助金具1Cの下部水平面材4も、本願発明に係る支持部材の例示である。後述するように、補助金具1Cの下部水平面材4は、支持対象物であるスタータを一時的に支持して、その重量の一部を荷重として受ける。
【0036】
図4は、本発明の第4の実施の形態に係る補助金具1Dの外形を示す斜視図である。補助金具1Dの基本的な構成は、第1の実施の形態に係る補助金具1Aと同一であるが、
図4に示すように、補助金具1Dは、爪部材5に代えて、釘穴6を上部水平面材2に備える点で、補助金具1Aと相違する。
【0037】
図5は、本発明の第5の実施の形態に係る補助金具1Eの外形図である。
図5(A)は補助金具1Eの斜視図を、
図5(B)は補助金具1Eの正面図を、
図5(C)は補助金具1Eの側面図を、それぞれ示す。
【0038】
図5(A)と
図5(C)に示すように、補助金具1Eは、補助金具1Aと同様に、上部水平面材2と垂直面材3を備えている。また、
図5(A)と
図5(B)に示すように、補助金具1Eは、補助金具1Aと同様に、垂直面材3に釘穴6と刻印線7を備えている。また、
図5(A)に示すように、補助金具1Aの上部水平面材2には釘穴6が開けられている。また、
図5(C)に示すように、垂直面材3の背面には、プレス加工によって突起19が形成されている。補助金具1Eは釘穴6に挿入される図示しない釘によって、取り付け対象の部材に固定される。補助金具1Eは、刻印線7を基準にして、取り付け対象の部材に対して位置決めされる。また、補助金具1Eは、垂直面材3の背面に突起19を備えるので、垂直面材3と取り付け対象の部材の間に必要な隙間を形成することができる。
【0039】
さて、
図5(A)~
図5(C)に示すように、補助金具1Eは、下部水平面材4に代えて、支持腕20を備える点で、補助金具1Aと相違する。支持腕20は、垂直面材3の左右の側縁から左右に延びる面材を、上下方向に延びる折り線(図示なし)回りに、直角に折り曲げて形成されている。そして、支持腕20の先端は、上部水平面材2から離隔する方向に延びている。そのため、補助金具1Aの下部水平面材4と同様に、支持腕20は、支持対象、つまり支持対象物であるスタータあるいは壁材を一時的に支持して、その重量の一部を荷重として受けることができる。つまり、支持腕20は本願発明に係る支持部材として機能する。
【0040】
なお、下部水平面材4においては、壁材の重量が下部水平面材4の面外方向に作用するのに対して、支持腕20においては、壁材の重量が支持腕20の面内方向に作用する。そのため、支持腕20は下部水平面材4に比べて撓み難い。つまり、支持腕20は下部水平面材4に比べて剛性が高い。したがって、補助金具1Eで壁材を支持すれば、補助金具1Aで壁材を支持する場合に比べて変位が生じ難いので、壁材の位置決め精度が向上する。
【0041】
図6(A)は第5の実施の形態に係る補助金具の第1の変形例の側面図であり、
図6(B)は第2の変形例の側面図である。補助金具1Eは、
図6(A)に示すように、垂直面材3の下端に支持腕20を備えるものであっても良い。補助金具1Eは、
図6(B)に示すように、上部水平面材2を備えないものであっても良い。
【0042】
図7は、補助金具1Aを使用して、真壁構造を備える構造躯体Sに壁材を取り付けた状態を示す説明図である。
図7に示すように、構造躯体Sは、図示しない地盤に打設されたコンクリート製の基礎10と、基礎10の上に敷かれた樹脂製の基礎パッキン11と、基礎パッキン11の上に置かれた土台12とを備えている。土台12は、
図7において、紙面の表裏方向に延びる木質の構造部材であって、本発明に係る横架材の例示である。また、土台12は、図示しないボルトとナットによって基礎10に固定されている。そして、構造躯体Sの室外側、つまり
図7において、構造躯体Sの左側には外壁材14が取り付けられている。なお、土台12は文字通り、構造躯体Sの土台となる構成部材であって、土台12の加工と据え付けには十分な注意が払われている。そのため、土台12の上面と側面は、他の部材の位置決めの基準として十分な精度を備えている。つまり、土台12の上面と側面は十分な平面度を有している。土台12の側面は上面に対して直角になるように仕上げられている。土台12は図示しない地盤に対して平行に据え付けられている。
【0043】
次に、構造躯体Sに外壁材14を取り付ける手順を説明する。なお、
図7に示した構造において、外壁材14は、本発明に係る壁材の例示である。構造躯体Sに外壁材14を取り付ける場合には、まず、補助金具1Aを土台12に対して位置決めする。すなわち、補助金具1Aの垂直面材3の背面を土台12の側面に当接させて、その後、補助金具1Aの爪部材5を土台12に食い込ませて、上部水平面材2の下面を土台12の上面に当接させる。その結果、補助金具1Aが土台12に対して位置決めされる。
【0044】
補助金具1Aが土台12に対して位置決めされたら、土台水切16を補助金具1Aと土台12の間に差し込む。土台水切16は、外壁材14を伝って流れる雨水を、基礎10の室外側に導いて、構造躯体Sの水濡れを防ぐ部材である。なお、土台水切16の高さ方向の位置決めは、刻印線7(
図7において、図示なし)を基準にして行う。すなわち、土台水切16の上端が刻印線7と同じ高さになるように、土台水切16を高さ方向において位置決めする。土台水切16が高さ方向において位置決めされたら、2本の釘17を土台12に打ち込んで、補助金具1Aと土台水切16を土台12に固定する。
【0045】
補助金具1Aが土台12に固定されたら、補助金具1Aの下部水平面材4の上にスタータ金具15を載置する。つまり、支持対象物であるスタータ金具15を下部水平面材4に一時的に支持させる。その結果、スタータ金具15は土台12に対して位置決めされる。スタータ金具15が土台12に対して位置決めされたら、ビス18を使って、スタータ金具15を土台12に固定する。スタータ金具15が土台12に固定されたら、スタータ金具15の先端15aを外壁材14の下端にある溝14aに嵌合させる。その結果、外壁材14が構造躯体Sに対して位置決めされる。その後、図示しない釘あるいはビス、または専用の止付け金具を使用して、外壁材14を構造躯体Sに固定する。
【0046】
このように、補助金具1Aを土台12に取り付けるだけで、補助金具1Aは土台12に位置決めされる。そして、補助金具1Aの下部水平面材4の上にスタータ金具15を載置するだけで、スタータ金具15は土台12に位置決めされる。そのため、外壁材14あるいはスタータ金具15を位置決めするための基準線を構造躯体Sに形成する必要がない。
【0047】
なお、
図7に示した構成において、補助金具1Aに代えて、補助金具1Dを用いることもできる。
【0048】
図8は、補助金具1Bと補助金具1Cを使用して、大壁構造を備える構造躯体S’に壁材を取り付けた状態を示す説明図である。
図8に示すように、構造躯体S’は、図示しない地盤に打設されたコンクリート製の基礎10と、基礎10の上に敷かれた樹脂製の基礎パッキン11と、基礎パッキン11の上に置かれた土台12とを備えている。土台12は、
図8において、紙面の表裏方向に延びる木質の構造部材であって、本発明に係る横架材の例示である。また、土台12は、図示しないボルトとナットによって基礎10に固定されている。また、構造躯体S’の室外側、つまり
図8において、構造躯体S’の左側には耐力面材13と外壁材14が取り付けられている。なお、
図8に示した構造において、耐力面材13は構造躯体S’の構成部材である。外壁材14は、本発明に係る壁材の例示である。
【0049】
次に、構造躯体S’に耐力面材13と外壁材14を取り付ける手順を説明する。構造躯体S’に耐力面材13と外壁材14を取り付ける場合には、まず、補助金具1Bを土台12に対して位置決めする。すなわち、補助金具1Bの垂直面材3の背面を土台12の側面に当接させて、その後、補助金具1Bの爪部材5を土台に食い込ませて、上部水平面材2の下面を土台12の上面に当接させる。その結果、補助金具1Bが土台12に対して位置決めされる。
【0050】
補助金具1Bが土台12に対して位置決めされたら、耐力面材13の下端面を補助金具1Bの下部水平面材4の上面に当接させて、耐力面材13を土台12に対して位置決めする。耐力面材13が土台12に対して位置決めされたら、耐力面材13を構造躯体S’に固定する。
【0051】
耐力面材13が構造躯体S’に固定されたら、耐力面材13の下端を基準にして補助金具1Cを耐力面材13に対して位置決めする。すなわち、補助金具1Cの下端が耐力面材13の下端と同じ高さになるように、補助金具1Cを耐力面材13に対して位置決めする。そして、補助金具1Cの爪部材5を耐力面材13に食い込ませる。その後で、土台水切16を補助金具1Cと耐力面材13の間に差し込む。なお、土台水切16の高さ方向の位置決めは、補助金具1Cに形成された刻印線7(
図8において、図示なし)を基準にして行う。そして、釘17を土台12に打ち込んで、補助金具1Cと土台水切16と耐力面材13と補助金具1Bを土台12に固定する。
【0052】
補助金具1C等が土台12に固定されたら、補助金具1Cの下部水平面材4の上にスタータ金具15を載置する。つまり、支持対象物であるスタータ金具15を下部水平面材4に一時的に支持させる。その結果、スタータ金具15は土台12に対して位置決めされる。スタータ金具15が土台12に対して位置決めされたら、ビス18を土台12にねじ込んで、スタータ金具15を土台12に固定する。
【0053】
スタータ金具15が土台12に固定されたら、スタータ金具15の先端15aを外壁材14の下端にある溝14aに嵌合させる。その結果、外壁材14が構造躯体S’に対して位置決めされる。その後、図示しない釘あるいはビスを使用して、外壁材14を構造躯体S’に固定する。
【0054】
このように、補助金具1Bを土台12に取り付けるだけで、補助金具1Bは土台12に位置決めされる。そして、補助金具1Aの下部水平面材4の上に耐力面材13を載置するだけで、耐力面材13は土台12に対して位置決めされる。土台12に対して位置決めされた耐力面材13を基準にして、補助金具1Cを位置決めするだけで、補助金具1Cは土台12に対して位置決めされる。そして、補助金具1Cの下部水平面材4の上にスタータ金具15を載置するだけで、スタータ金具15は土台12に対して位置決めされる。スタータ金具15が土台12に対して位置決めされていれば、外壁材14は構造躯体S’に対して位置決めされる。そのため、耐力面材13あるいは外壁材14あるいはスタータ金具15を構造躯体S’に対して位置決めするための基準線を構造躯体S’に形成する必要がない。
【0055】
図9は
図5に記載の補助金具1Eを使用して、真壁構造を備える構造躯体Sに外壁材14を取り付けた状態を示す説明図である。
図9に記載の構造躯体Sは、
図7に記載の構造躯体Sと同様に、図示しない地盤に打設されたコンクリート製の基礎10と、基礎10の上に敷かれた樹脂製の基礎パッキン11と、基礎パッキン11の上に置かれた土台12と、土台水切16と、を備えている。
【0056】
図9に示すように、補助金具1Eは、上部水平面材2の下面を土台12の上面に、垂直面材3の背面を土台12の側面に、それぞれ当接させることによって、土台12に対して位置決めされている。そして、補助金具1Eは釘17aによって土台12に固定されている。補助金具1Eの外側には胴縁21が取りつけられていて、胴縁21は釘17bによって土台12に固定されている。
【0057】
スタータ金具15は、その上端を補助金具1Eの支持腕20に当接させることによって、土台12に対して位置決めされている。そして、スタータ金具15はビス18によって、胴縁21と土台12に固定されている。
【0058】
外壁材14は、その下端をスタータ金具15に当接させることによって、土台12に対して位置決めされている。また、胴縁2には、外壁材14と噛み合って、外壁材14を係止する留め金具22が固定されている。
【0059】
図10は
図6(A)に記載の補助金具1Eを使用して、大壁構造を備える構造躯体S’に外壁材14を取り付けた状態を示す説明図である。
図10に記載の構造躯体S’は、
図7に記載の構造躯体S’と同様に、図示しない地盤に打設されたコンクリート製の基礎10と、基礎10の上に敷かれた樹脂製の基礎パッキン11と、基礎パッキン11の上に置かれた土台12と、土台水切16と、を備えている。また、構造躯体S’には耐力面材13と外壁材14が取り付けられている。
【0060】
図10に示すように、補助金具1Eは、上部水平面材2の下面を土台12の上面に、垂直面材3の背面を土台12の側面に、それぞれ当接させることによって、土台12に対して位置決めされている。そして、補助金具1Eは3本の釘17によって土台12に固定されている。補助金具1Eを土台12に固定した後で、耐力面材13が土台12に取りつけられて、固定されている。なお、補助金具1Eの支持腕20の長さは耐力面材13の厚さより大きくされていて、
図10に示すように、支持腕20の先端は耐力面材13の外側に突出している。
【0061】
図10に示すように、補助金具1Eの支持腕20の耐力面材13の外側に突出している部分には、スタータ金具15が載置されている。その結果、スタータ金具15は土台12に対して位置決めされている。スタータ金具15はビス18によって、耐力面材13と土台12に固定されている。また、スタータ金具15の先端15aは、外壁材14の下端に形成された溝14aと係合している。その結果、外壁材14は土台12に対して位置決めされている。
【0062】
このように構成されているので、補助金具1Eを土台12に取り付けるだけで、補助金具1Eは土台12に位置決めされる。そして、補助金具1Eの支持腕20にスタータ金具15を当接させるだけで、スタータ金具15は土台12に対して位置決めされる。そのため、外壁材14あるいはスタータ金具15を位置決めするための基準線を構造躯体S’に形成する必要がない。
【0063】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、耐力面材13あるいは外壁材14あるいはスタータ金具15を構造躯体Sあるいは構造躯体S’に対して位置決めするための基準線を構造躯体Sあるいは構造躯体S’に形成する必要がない。そのため、補助金具1A,1B,1C,1D,1Eの構造躯体Sあるいは構造躯体S’に対する位置決めと、耐力面材13あるいは外壁材14の構造躯体Sあるいは構造躯体S’に対する位置決めが、容易になる。
【0064】
しかしながら、本発明の技術的範囲は上記の実施形態によっては限定されない。本発明
は、本発明は特許請求の範囲に記載の技術的思想の限りにおいて、自由に、応用、変形、
あるいは改良して実施することができる。
【0065】
本発明に係る補助金具はスタータ金具と組み合わせて使用されるものには、限定されない。本発明に係る補助金具は、上記の補助金具1Cのように、壁材(耐力面材13)の下端を下部水平面材4に直接に当接させるものであっても良い。
【0066】
上記において、薄鋼板を曲げ加工して補助金具を製造する例を示したが、補助金具は曲げ加工によって製造されるものには限定されない。補助金具は鋳造あるいは鍛造あるいはプレス加工によって製造されても良い。また、上記において、刻印線7がレーザ加工によって形成されると説明したが、刻印線7はプレス加工によって形成されても良い。
【0067】
補助金具と組み合わせて使用されるスタータ金具の形状は、
図7~10において図示されたものには限定されない。スタータ金具の形状は任意である。また、本発明に係る補助金具はスタータ金具と一体に構成されていても良い。
【0068】
上記において、横架材の具体例として土台12を例示したが、横架材は土台12には限定されない。横架材は建築物の構造躯体を構成する構造部材であって、水平方向に架け渡された部材であれば十分であり、その名称、あるいは構造躯体における取り付け位置によっては限定されない。
【0069】
上記において、土台12すなわち横架材が木材で構成される例を示したが、横架材は木質の材料で構成されるものには限定されない。横架材は、例えば、軽量鉄骨で構成されても良い。横架材が軽量鉄骨で構成される場合に、補助金具を接着あるいは溶接によって横架材に固定するようにしても良い。
【0070】
本出願は、2021年9月30日に出願された、日本国特許出願2021-160773に基づく。本明細書中に日本国特許出願2021-160773の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【符号の説明】
【0071】
1A,1B,1C,1D,1E 補助金具、2 上部水平面材、3 垂直面材、4 下部水平面材、5 爪部材、6 釘穴、7 刻印線、10 基礎、11 基礎パッキン、12 土台、13 耐力面材、14 外壁材、14a 溝、15 スタータ金具、15a 先端、16 土台水切、17,17a,17b 釘、18 ビス、19 突起、20 支持腕、21 胴縁、22 留め金具、S,S’ 構造躯体