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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005171
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】遮熱塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/02 20060101AFI20230111BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20230111BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230111BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230111BHJP
   C09K 21/04 20060101ALI20230111BHJP
   C09K 21/06 20060101ALI20230111BHJP
   C09K 21/14 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C09D175/02
C09D5/33
C09D7/61
C09D7/63
C09K21/04
C09K21/06
C09K21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106922
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】517046115
【氏名又は名称】株式会社ジャストフレーム
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 浩
(72)【発明者】
【氏名】田仲 恭子
【テーマコード(参考)】
4H028
4J038
【Fターム(参考)】
4H028AA07
4H028AA24
4H028AA44
4H028BA03
4H028BA04
4J038HA166
4J038HA386
4J038HA446
4J038JA21
4J038JA33
4J038JB34
4J038JC27
4J038KA06
4J038KA12
4J038KA21
4J038MA14
4J038NA15
4J038NA19
4J038PB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐用年数の長い遮熱塗膜を形成することのできる遮熱塗料組成物を提供する。
【解決手段】遮熱材と、ポリウレアまたはその原料とを含む遮熱塗料組成物。前記遮熱剤が中空セラミック粒子および白色顔料からなる群から選択される少なくとも1種である前記遮熱塗料組成物。ポリリン酸アンモニウム粉末が樹脂により被覆されてなるマイクロカプセル、メラミン化合物粉末およびペンタエリスリトール化合物粉末の混合物からなる耐火剤をさらに含む、前記遮熱塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮熱剤と、ポリウレアまたはその原料とを含む遮熱塗料組成物。
【請求項2】
2液型または1液型である請求項1に記載の遮熱塗料組成物。
【請求項3】
前記遮熱剤が中空セラミック粒子および白色顔料からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の遮熱塗料組成物。
【請求項4】
さらに溶媒を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の遮熱塗料組成物。
【請求項5】
さらに耐火剤を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の遮熱塗料組成物。
【請求項6】
前記耐火剤が白色の耐火材である請求項5に記載の遮熱塗料組成物。
【請求項7】
前記耐火剤が、少なくともポリリン酸アンモニウム粉末が樹脂により被覆されてなるマイクロカプセル、メラミン化合物粉末およびペンタエリスリトール化合物粉末の混合物からなる、請求項6に記載の遮熱塗料組成物。
【請求項8】
膨張黒鉛を実質的に含まない請求項1~7のいずれか一項に記載の遮熱塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮熱塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バインダー樹脂に白色顔料等を配合した遮熱塗料で建築物、構造物等の外壁、屋根等を塗装することによって、太陽からの近赤外線(熱線)を反射して、屋内の温度上昇を抑えることが実施されている。
【0003】
このような遮熱塗料として、たとえば特許文献1には、アクリル樹脂等のバインダー樹脂に、酸化チタン等の白色顔料、中空のガラスバルーン等を配合した熱反射塗料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-155026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の遮熱塗料には、耐用年数の長い遮熱塗膜を形成する観点から改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、たとえば以下の[1]~[8]に関する。
[1]
遮熱剤と、ポリウレアまたはその原料とを含む遮熱塗料組成物。
【0007】
[2]
2液型または1液型である前記[1]の遮熱塗料組成物。
[3]
前記遮熱剤が中空セラミック粒子および白色顔料からなる群から選択される少なくとも1種である前記[1]または[2]の遮熱塗料組成物。
【0008】
[4]
さらに溶媒を含む前記[1]~[3]の遮熱塗料組成物。
[5]
さらに耐火剤を含む前記[1]~[4]の遮熱塗料組成物。
【0009】
[6]
前記耐火剤が白色の耐火材である前記[5]の遮熱塗料組成物。
[7]
前記耐火剤が、少なくともポリリン酸アンモニウム粉末が樹脂により被覆されてなるマイクロカプセル、メラミン化合物粉末およびペンタエリスリトール化合物粉末の混合物からなる、前記[6]の遮熱塗料組成物。
【0010】
[8]
膨張黒鉛を実質的に含まない前記[1]~[7]の遮熱塗料組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の遮熱塗料組成物によれば、耐用年数の長い遮熱塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[遮熱塗料組成物]
本発明の遮熱塗料組成物は、ポリウレアまたはその原料と遮熱剤とを含むことを特徴としている。
【0013】
<ポリウレアまたはその原料>
本発明の遮熱塗料組成物は、ポリウレアまたはその原料を含む。
通常は、本発明の遮熱塗料組成物はポリウレアの原料であるイソシアネート成分とアミン成分とを含み、これらは塗装中または塗装後に反応してポリウレアが形成される。
【0014】
ポリウレアの例としては、脂肪族ポリウレア、変性脂肪族ポリウレア、芳香族ポリウレア、が挙げられる。
ポリウレアの原料を含む塗料としては、2液型の塗料(イソシアネート成分とアミン成分とを分けて貯蔵し、塗工直前に混合するタイプの塗料)、および1液型の塗料イソシアネート成分と潜在性硬化剤としてのアミン成分とを含む塗料)が挙げられるが、取り扱いが容易であることなどから、塗工時は1液型として使用できる塗料が好ましい。
これらの原料には、溶媒が含まれていてもよい。
【0015】
1液型の塗料は、イソシアネートと潜在的な硬化剤で構成される特殊ポリマー系の一種である一液型ポリウレアコーティング材として、伸び率450%と温度差により膨張と収縮を繰り返す、屋根や外壁の遮熱に適した塗料である。
【0016】
<遮熱材>
前記遮熱剤としては、遮熱塗料に使用される従来公知の遮熱剤を用いることができ、その例としては、中空セラミックビーズ(シリカなど)、白色顔料、低融点ガラスが挙げられる。
【0017】
前記中空セラミック粒子を構成するセラミックの例としては、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミナが挙げられ、これらの中でも太陽光エネルギーの反射・放射、運動エネルギーへの変換という観点からシリカが好ましい。
【0018】
前記白色顔料を構成する成分の例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウムが挙げられ、これらの中でも環境への負荷が低く、かつ高い光触媒機能を持つことから酸化チタンが好ましい。
【0019】
これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよく、中空セラミック粒子と白色顔料とを併用することが好ましい。中空セラミック粒子と白色顔料を併用する場合、これらの質量比(中空セラミック粒子の質量:白色顔料の質量)は、好ましくは20:1~10である。
ポリウレア(または前記原料から形成されるポリウレア)100質量部に対して、好ましくは20~80質量部、より好ましくは40~70質量部である。
【0020】
<耐火剤>
本発明の遮熱塗料組成物は、好ましくは、さらに耐火剤を含む。
本発明の遮熱塗料組成物から形成される塗膜は、ポリウレアを含むため比較的燃えやすいが、耐火剤を含むことにより不燃性が高まる。
耐火剤としては、遮熱性の観点からは、白色の耐火剤が好ましい。
【0021】
耐火剤としては、ポリリン酸アンモニウム粉末が樹脂により被覆されてなるマイクロカプセル、メラミン化合物粉末およびペンタエリスリトール化合物粉末の混合物(以下「耐火剤混合物1」とも記載する。)が挙げられ、これらの中でも、耐火性および遮熱性の両方に優れることから、耐火剤混合物1が好ましい。
【0022】
ポリリン酸アンモニウムは、加熱環境下において、有機物を脱水、炭化し、防火炭化層を形成させるとともに、自らも防火性の無機質リン酸膜を形成する。また、加熱により分解してアンモニアガスを発生し、有機物を膨張させる発泡剤としての作用も兼ね備えている。
【0023】
ポリリン酸アンモニウムをマイクロカプセル化する方法としては、特に限定はされないが、たとえば、特許第4809924号の段落[0011]に記載の方法を採用することができる。
【0024】
ポリリン酸アンモニウムを被覆する樹脂としては、特に制限はないが、水が透過しにくく耐水性に優れた被膜を形成するものが好ましく、たとえば、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0025】
これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記マイクロカプセルの平均粒子径(レーザー回折/散乱法により測定される平均粒子径。以下も同様。)は、特に制限はないが、好ましくは60~120μmである。
【0026】
ポリリン酸アンモニウムは、(NH4n+2n3n+1(式中、nは2以上の整数)で表される。
前記メラミン化合物としては、メラミン、その誘導体、及びそれらの樹脂を包含し、メラミン誘導体としては、メラム、メレム、メロン、ベンゾグアナミン、硫酸メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミン等を挙げることができる。
【0027】
また、メラミン樹脂は、アルデヒド、特にホルムアルデヒドと、メラミンまたはその誘導体との縮合生成物である。メラミン樹脂は1~6個の炭素原子を含むアルカノールで完全にまたは部分的にエーテル化されてよい。
【0028】
前記メラミン化合物粉末の平均粒子径は、好ましくは60~120μmである。
前記ペンタエリスリトール化合物としては、ペンタエリスリトール、及びその縮合物であるポリペンタエリスリトール(ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなど)が挙げられる。
【0029】
前記ペンタエリスリトール化合物粉末の平均粒子径は、好ましくは60~120μmである。
耐火剤混合物1における各成分の質量比(ポリリン酸アンモニウムの質量:メラミン化合物粉末の質量:ペンタエリスリトール化合物粉末の質量)は、好ましくは1:0.1~1.0:0.1~0.8である。
【0030】
また、耐火剤としては白色の耐火剤が好ましい。耐火剤として白色の耐火材を含む遮熱塗膜は、黒色の耐火剤である膨張黒鉛を含む遮熱塗膜と比べて、多くの太陽光を反射することができる。
【0031】
本発明の遮熱塗料組成物は、膨張黒鉛を実質的に含まない。すなわち本発明の遮熱塗料組成物は、膨張黒鉛を含まないか、遮熱塗料組成物の固形分(すなわち、溶媒を除いた成分)100質量%に対し5質量%以下、好ましくは1質量%以下の割合で含む。
【0032】
本発明の遮熱塗料組成物が耐火剤を含む場合、耐火剤の含有量は、ポリウレア(または前記原料から形成されるポリウレア)100質量部に対して、好ましくは20~60質量部、より好ましくは30~50質量部である。
【0033】
<添加剤>
本発明の遮熱塗料組成物は、必要に応じて、各種添加剤を含んでいてもよい。
添加剤の例としては、分散剤、稀釈剤が挙げられる。
【0034】
<溶媒>
本発明の遮熱塗料組成物は、好ましくは溶媒を含む。溶媒としては、メチルエチルケトンが好ましい。
【0035】
(遮熱塗料組成物の製造方法)
本発明の遮熱塗料組成物は、上述した各成分、すなわち、ポリウレア、遮熱剤、および必要に応じて耐火剤、溶媒等の任意成分を混合することにより、調製することができる。
【0036】
本発明の遮熱塗料組成物によれば、耐用年数の長い遮熱塗膜を形成することができる。
特に、遮熱性能に優れるので空調等の光熱費削減、CO2削減に貢献する。
さらに、耐火剤を配合することにより火災に強い建築物、構造物をはじめとし、あらゆる産業の製品に耐火性能を長期に渡り付与することを可能とする。
【0037】
[遮熱塗膜の製造方法]
本発明の遮熱塗料組成物を基材上に塗布し、硬化させることにより、基材上に遮熱塗膜を形成することができる。
【0038】
基材の例としては、建築物、構造物等の外壁、折半屋根、スレート屋根、車両をはじめとするあらゆる産業製品が挙げられる。
本発明の遮熱塗料組成物を塗布する方法としては、従来公知の方法、たとえば、刷毛、ローラー、エアースプレー、エアレススプレーを用いた塗布方法を採用することができる。
【0039】
塗布された遮熱塗料組成物からなる塗膜は、溶媒を除去することにより硬化することができる。溶媒の除去の方法としては、従来公知の方法、たとえば自然乾燥、加熱による乾燥などを採用することができる。
【0040】
このようにして形成された遮熱塗膜は、本発明の遮熱塗料組成物の成分のうちの溶媒以外の成分からなるものであり、遮熱性に優れ、耐用年数が長いほか、好ましくは耐火性、耐衝撃性、防水性、耐薬品腐食性、耐摩耗性、耐熱性にも優れている。
【実施例0041】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
[実施例1]
まず、表1に示す成分を混合し、塗料組成物1を調製した。
【0043】
【表1】
次に、塗料組成物1を屋根の遮熱塗装工事用に塗工した。
【0044】
[実施例2]
原料成分を表1に記載のものから表2に記載のものに変更したこと以外は実施例1と同様にして、塗料組成物2を得て、次いで塗工した。
【0045】
【表2】
【0046】
[実施例3]
原料成分を表1に記載のものから表3に記載のものに変更したこと以外は実施例1と同様にして、塗料組成物3を得て、次いで塗工した。
【0047】
【表3】
【0048】
<遮熱性能試験>
金属製屋根の表面に、実施例1~3で製造された塗料組成物を平均厚さ0.5mmになる様にローラー及び刷毛で塗布し、晴天下に於いて屋根の表面と裏面の温度を測定した。
また比較として同じ屋根に、ポリウレア以外の成分を何も配合しない一液性ポリウレアを平均厚さ0.5mmになる様にローラー及び刷毛で塗布した場所、及び無も塗布しない場所で、実施例と同じ時刻に表面と裏面の温度を測定した。結果を表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
<コーンカロリーメーター試験>
実施例2の塗料組成物を塗布した試験片と、実施例3の塗料組成物を塗布した試験片と、ポリウレア以外の成分を何も配合しない比較例1の一液性ポリウレアを塗布した試験片に対し、コーンカロリーメーター試験を行った。結果を表5に示す。
【0051】
その結果、実施例2、実施例3では、(1)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下あり、(2)加熱開始後20分間の発熱速度が10秒以上継続して200Kw
/mを超えておらず、(3)加熱開始後20分間に裏面に達する割れや防火上有害な変
形は認められず、不燃レベルの結果を得た。
これに対し、比較例1の無配合の1液性ポリウレアでは何れの項目にも達せず、難燃レベル未満との結果となった。
【0052】
【表5】
【0053】
<耐火性能試験>
A4サイズで厚さ0.5mmのアルミ板の片面に本発明の実施例2で製造された塗料組成物2を平均厚さ0.5mmとなる様にローラーで塗布した試験片(イ)、同じアルミ板の片面に実施例3で製造された塗料組成物3を平均厚さ0.5mmとなる様にローラーで塗布した試験片(ロ)、更に同じアルミ板の片面に、ポリウレア以外の成分を何も配合しない一液性ポリウレアを平均厚さ0.5mmとなる様にローラーで塗布した試験片(ハ)を用意した。
【0054】
次いで、試験片(イ)、(ロ)、(ハ)の塗装面にガスバーナーで1100℃の炎を直接当てて変化を観察した。結果を表6に示す。
その結果、試験片(イ)及び(ロ)は20分を経過してもアルミ板には何の変化も無かったが、試験片(ハ)は直ぐに発火し、15秒後にはアルミ板まで溶けた。
これは本発明の塗料組成物の内部から耐火物質が発生し、試験片の表面で延焼をくい止める効果によるものである。
【0055】
【表6】
【0056】
<耐候性試験>
キセノンランプ照射による耐候性試験を本発明による実施例1、実施例2、実施例3で得られた塗料組成物に対し行ったところ、何れも良好な結果を得た。結果を表7に示す。
【0057】
【表7】