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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051726
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】表面処理組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/60 20060101AFI20230404BHJP
   C10M 119/28 20060101ALI20230404BHJP
   C10N 40/36 20060101ALN20230404BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
B29C33/60
C10M119/28
C10N40:36
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098527
(22)【出願日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021161452
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】染谷 紀哉
(72)【発明者】
【氏名】市原 豊
【テーマコード(参考)】
4F202
4H104
【Fターム(参考)】
4F202CA30
4F202CM47
4F202CM55
4H104CH09A
4H104LA20
4H104PA48
(57)【要約】
【課題】表面機能性、連続離型性に優れる表面処理組成物を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表されるリン酸エステル化合物を含む表面処理組成物。
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~25である。nは1又は2である。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるリン酸エステル化合物を含む表面処理組成物。
【化1】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~25である。nは1又は2である。]
【請求項2】
前記リン酸エステル化合物の重量平均分子量が1,500~7,000の範囲である、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項3】
前記リン酸エステル化合物の濃度が0.1~10質量%の範囲である、請求項1又は2に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の表面処理組成物を含む離型剤。
【請求項5】
請求項1に記載の表面処理組成物を含む樹脂付着防止剤。
【請求項6】
(i) 式(II)で表される、重量平均分子量1,500~4,000のパーフルオロポリエーテルモノオールをリン酸化し、式(I)で表されるリン酸エステル化合物を合成する工程、
【化2】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~25である。]
【化3】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~25である。nは1又は2である。]
(ii) 前記リン酸エステル化合物を濃度が0.1~10質量%の範囲となるように調整する工程、
を含む表面処理組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂や各種ゴム類等を、金型を用いて成型する際には、成型品と金型とを離しやすくするため、ワックス、シリコーンオイル等を用いた離型剤が一般的に使用されている。
これらを用いた離型剤は良好な離型性を示すが、離型時に離型剤成分が成型品に移行してしまうため、金型への離型剤の一度の塗布で、複数回の成型を行うことが困難であった。
【0003】
このような欠点を解消するため、例えば、パーフルオロアルケニルアリールエーテルのホスホン酸酸性塩を有効成分として用いた離型剤が提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の離型剤は良好な離型性を示し、他の離型剤と比べて離型寿命が長いとされている。しかし、成型品形状の複雑化や生産量の増加に伴い、さらなる離型性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56-53193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、離型性、撥液性等の表面機能性、連続離型性に優れる表面処理組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、パーフルオロポリエーテルリン酸エステルを用いると、良好な表面機能性、連続離型性等を示す表面処理組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す広い態様の発明を含むものである。
【0008】
[項1]
式(I)で表されるリン酸エステル化合物を含む表面処理組成物。
【化1】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~25である。nは1又は2である。]
【0009】
[項2]
前記リン酸エステル化合物の重量平均分子量が1,500~7,000の範囲である、項1に記載の表面処理組成物。
【0010】
[項3]
前記リン酸エステル化合物の濃度が0.1~10質量%の範囲である、項1又は2に記載の表面処理組成物。
【0011】
[項4]
項1~3のいずれか1項に記載の表面処理組成物を含む離型剤。
【0012】
[項5]
項1~3のいずれか1項に記載の表面処理組成物を含む樹脂付着防止剤。
【0013】
[項6]
(i) 式(II)で表される、重量平均分子量1,500~4,000のパーフルオロポリエーテルモノオールをリン酸化し、式(I)で表されるリン酸エステル化合物を合成する工程、
【化2】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~25である。]
【化3】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~25である。nは1又は2である。]
(ii) 前記リン酸エステル化合物を濃度が0.1~10質量%の範囲となるように調整する工程、
を含む表面処理組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のパーフルオロポリエーテルリン酸エステルを用いた表面処理組成物は、離型性、樹脂付着防止性、撥液性等の表面機能性に優れる。特に、離型剤として用いた場合、連続離型性に優れており、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る表面処理組成物は、一般式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステルを含む。
【0016】
【化4】
【0017】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~25である。nは1又は2である。]
【0018】
Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。炭素数1~4のパーフルオロアルキル基としては例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基等が挙げられる。
【0019】
Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基であり、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0020】
Yで表される炭素数1~10の2価の基としては、ヘテロ原子を含んでいてもよく、芳香族基、ヘテロ芳香族基、ヘテロ環基、脂肪族基、脂環式基であってもよい。具体的には、例えば以下の基が挙げられる。
【0021】
-(CHN1- (N1=1~10)
-A-(CHN2- (N2=1~5)
-B-(CHN3- (N3=1~5)
-CHCH(OCHCHN4- (N4=1~4)
-BCO(OCHCHN5- (N5=1~4)
(式中、Aは、-O-CO-、-CO-O-、-CONH-または-NHCO-を示す。Bは、炭素数1~3のアルキル基(メチル、エチル、プロピル)、炭素数1~4のアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I)からなる群から選ばれる置換基を1~3個有していてもよいフェニレンを示す。)
好ましいYで表される炭素数1~10の2価の基としては、以下の構造の二価の基が挙げられる。
【0022】
-(CHN1- (N1=1~10)
-CONH-(CHN2- (N2=1~5)
-CO-O-(CHN2- (N2=1~5)
mは5~25、好ましくは5~22、より好ましくは8~20、最も好ましくは12~16である。
【0023】
nは1又は2である。
【0024】
一般式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物は、重量平均分子量が1,500~7,000の範囲であり、好ましくは2,000~6,000の範囲であり、より好ましくは3,000~6,000の範囲である。重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー等、従来公知の方法で測定することができる。
【0025】
また、一般式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物は、塩基性金属化合物、アミン化合物、アンモニア等と反応させることによって、金属塩、アミン塩、アンモニウム塩等を形成することができ、これらの塩も上記一般式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物と同様の有用性を有する。金属塩の種類としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩等が挙げられる。金属塩を形成する金属原子としては、具体的には、Li、Na、K、Ca、Mg、Cu、Co、Ni、Zn、Mn、Fe、Pb、Hg、Zr等を例示できる。アミン塩又はアンモニウム塩を形成するアミン化合物又はアンモニアとしては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピリジン等が挙げられる。
【0026】
一般式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物の具体例としては、以下が挙げられるが、これに限定されない。
【0027】
【化5】
【0028】
[式中、mは5~25である。]
【0029】
【化6】
【0030】
[式中、mは5~25である。]
【0031】
【化7】
【0032】
[式中、mは5~25である。]
【0033】
【化8】
【0034】
[式中、mは5~25である。]
【0035】
【化9】
【0036】
[式中、mは5~25である。]
【0037】
【化10】
【0038】
[式中、mは5~25である。]
【0039】
一般式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物は、市販品として入手することもでき、また公知の方法により製造することもできる。例えば、下記一般式(II)で表されるパーフルオロポリエーテルモノオールの水酸基をリン酸エステル化することにより得られる。
【0040】
【化11】
【0041】
[式中、Rfは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Yは炭素数1~10の2価の基である。mは5~25である。]
一般式(II)において、Rf、X、Yは、上記一般式(I)と同様のものが用いられる。
mは5~25、好ましくは5~22、より好ましくは8~20、最も好ましくは12~16である。
【0042】
一般式(II)で表されるパーフルオロポリエーテルモノオールは、重量平均分子量が1,500~4,000の範囲であり、好ましくは2,000~4,000の範囲であり、より好ましくは2,500~3,500の範囲である。重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー等、従来公知の方法で測定することができる。
【0043】
一般式(II)で表されるパーフルオロポリエーテルモノオールは、市販品として入手することもでき、また公知の方法により製造することもできる。一般式(II)で表されるパーフルオロポリエーテルモノオールは、例えば米国特許公報3293306号等に開示されている方法に従って合成することができる。
【0044】
また、一般式(II)で表されるパーフルオロポリエーテルモノオールの水酸基をリン酸エステル化する方法についても、公知の方法を用いることができる。例えば、五酸化二リン(P)等を用いることで、得ることができる。
【0045】
本発明の表面処理組成物は、パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物を必須成分として含み、溶媒に溶解させた状態で通常用いられる。
【0046】
表面処理組成物において、パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物の配合量は、表面処理組成物全量に対して通常0.1~10質量%であり、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%であり、最も好ましくは0.2~1質量%である。
【0047】
溶媒は、パーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物を溶解可能な溶媒であれば、特に限定されないが、例えばフッ素系溶媒が挙げられる。好ましいフッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロエーテル、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンが挙げられる。また、表面処理組成物の使用性の観点から、溶媒の沸点は50~140℃程度のものが好ましく、70~140℃程度のものがさらに好ましい。このような好ましい溶媒としては例えば市販品では、ガルデンSV-55、ガルデンSV-70、ガルデンSV-80、ガルデンSV-110、ガルデンSV-135、ガルデンHT-135(以上、ソルベイ社製)、NOVEC-7100、NOVEC-7200、NOVEC-7300(以上、スリーエム社製)、フロリナートFC-40、フロリナートFC-72、フロリナートFC-770、フロリナートFC-3283(以上、スリーエム社製)等が挙げられる。溶媒は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0048】
本発明の表面処理組成物において、一般式(I)で表されるパーフルオロポリエーテルリン酸エステル化合物として、一般式(I)におけるnが、n=1の化合物とn=2の化合物を混合して使用することができる。この場合、n=1の化合物とn=2の化合物の混合比は、10:0~5:5の範囲であることが好ましい。
【0049】
本発明の表面処理組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲内において、防錆剤、触媒、抗菌剤、難燃剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、粘度調節剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、防腐剤、凍結防止剤、湿潤剤、pH調整剤、安定剤、防黴剤、耐光安定剤、耐候安定剤、中和剤、艶消し剤、乾燥促進剤、発泡剤、非粘着剤、劣化防止剤等を適宜配合してもよい。
【0050】
本発明の表面処理組成物は、離型剤、樹脂付着防止剤、撥液剤、フラックス這い上がり防止剤、防汚剤、防潤剤、オイルバリア剤として使用することができる。
【0051】
本発明の表面処理組成物を利用して離型される成形材料、又は樹脂付着防止用途の対象となる樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ウレタンゴム、H-NBR、NBR、シリコーンゴム、EPDM、CR、NR、フッ素ゴム、SBR、BR、IIR及びIR等のゴムや、ウレタンフォーム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂及びFRP(ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP))等の熱硬化性樹脂等、やPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、PA(ポリアミド)、ポリエステル、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、 FRTP(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂(GFRTP)、カーボン繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)、アラミド繊維強化熱可塑性樹脂(AFRTP))等の熱可塑性樹脂等、が挙げられる。特に、ポリウレタン、エポキシ樹脂等の樹脂用の金型の離型剤、ポリウレタンなどの樹脂用の樹脂付着防止剤として有用である。
【0052】
また、本発明の表面処理組成物が塗布される材料としては、特に限定されないが、例えばアルミニウム、SUS,鉄等の金属、PP、PE,エポキシ等の樹脂、ゴム、FRP(繊維強化プラスチック)、石膏性基材、木製基材、複合材料等が挙げられる。
【0053】
本発明の表面処理組成物は、表面処理組成物で処理されるべき部分に対して塗布し、乾燥させておくことにより使用することができる。塗布方法としては、特に制限されず、例えばスプレー塗布、刷毛塗布、ロールコーター塗布、ディッピング塗布などが挙げられる。乾燥方法としては風乾または加熱により溶媒を蒸発させて皮膜を形成する方法が挙げられる。本発明の表面処理組成物を含む皮膜の乾燥厚みは通常、0.1~15μmであり、好ましくは0.2~5.0μmである。
【実施例0054】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
(使用材料)
実施化合物1:パーフルオロポリエーテルリン酸エステル
CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]-CF(CF3)CH2OPO(OH)2(重量平均分子量3000、mは16程度。)
実施化合物2:パーフルオロポリエーテルリン酸エステル
[CF3CF2CF2O-{CF(CF3)CF2O}-CF(CF3)-CONH-CH2CH2O]-PO(OH)3-n(1.5置換体。n=1(重量平均分子量2000)とn=2(重量平均分子量4000)との混合物。mは10程度。)
実施化合物3:パーフルオロポリエーテルリン酸エステル
[CF3CF2CF2O-{CF(CF3)CF2O}-CF(CF3)-CONH-CH2CH2O]-PO(OH)3-n(1.5置換体。n=1(重量平均分子量3000)とn=2の混合物(重量平均分子量6000)との混合物。mは16程度。)
実施例化合物4:パーフルオロポリエーテルリン酸エステル
CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]-CF(CF3)CH2OPO(OH)2(重量平均分子量4000、mは24程度。)
比較化合物1:パーフルオロポリエーテルモノオール
CF3CF2CF2O-[CF(CF3)CF2O]-CF(CF3)CH2OH (重量平均分子量3000)
比較化合物2:パーフルオロポリエーテルリン酸エステル
[CF3CF2CF2O-{CF(CF3)CF2O}-CF(CF3)-CONH-CH2CH2O]-PO(OH)3-n(1.5置換体。n=1(重量平均分子量1000)とn=2(重量平均分子量2000)との混合物。mは4程度。)
比較化合物3:パーフルオロポリエーテルメチルエステル
CF3CF2CF2-[OCF(CF3)CF2]-O-CF(CF3)COOCH3 (重量平均分子量3000)
比較化合物4:カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル
CF3CF2CF2-[OCF(CF3)CF2]-O-CF(CF3)COOCH3 (重量平均分子量3000)
比較化合物5:パーフルオロアルケニルアリールエーテルのホスホン酸酸性塩
[C9F17O-(C6H4)-CH2PO(OH)2]2-Zn
ガルデンSV-135:パーフルオロポリエーテル系溶媒(ソルベイ社製、沸点135℃)
【0056】
(実施例1~4、比較例1~5)
ガルデンSV-135(99.5重量部)に、各種実施例化合物又は比較例化合物(0.5重量部)を溶解させ、表面処理組成物を調製した。使用した各種実施例化合物又は比較例化合物を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
(テープ剥離試験)
大きさが110×30×8(mm)の冷間圧延鋼板SPCC-SB(以下、「テストピース」という)をアセトン及びメチルシクロヘキサンを用いて脱脂した。脱脂後110℃に加熱したテストピースに実施例1の表面処理剤1.0gを、市販のハケを用いて2回塗布し、その後110℃で10分間焼き付けを行った。焼き付け後、室温に戻したテストピースにテープ(日東電工社製 ポリエステル粘着テープ No.31B)を、ローラー(2kg荷重)を用いて圧着した。その後テープの端にクリップを装着し、プッシュプルスケールを用いてクリップを垂直に引っ張り、テープ剥離時の最大荷重をテープ剥離力として測定した。テープ剥離後、新しいテープを再度テストピースに圧着してからテープ剥離力を測定し、この操作をテープ剥離力が1.5Nを超えるまで繰り返した。ただし、最大繰り返し回数は15回とした。なお、表面処理剤を塗工しなかったときのテープ剥離力は5.0Nであった。
【0059】
同様の操作を実施例2~4及び比較例1~5の表面処理剤についても行った。結果を表2に示す。
【0060】
実施例1~4と比較例1,3,4を比較すると、末端基はリン酸エステルが好ましいことがわかる。これは、リン酸エステルがテストピース表面と二座配位により強固に固着するためと考えられる。
【0061】
実施例2,3,4と比較例2から、パーフルオロポリエーテル鎖が短い場合には連続離型性が低下することがわかる。また、実施例1~4と比較例5から、パーフルオロポリエーテル鎖構造も、連続離型性に寄与していることが明らかである。
【0062】
なお、実施例1~4においては、10回以上の剥離試験においても良好な剥離力を示しており、実際の樹脂成型用金型での使用において、作業開始時の塗布のみで1日の離型作業を連続して行うことができるものと期待される。
【0063】
評価基準
A:剥離回数15回でも剥離力が1.5N未満であった
B:剥離回数10~14回で剥離力が1.5N以上となった
C:剥離回数6~9回で剥離力が1.5N以上となった
D:剥離回数1~5回で剥離力が1.5N以上となった
【0064】
【表2】