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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051746
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20230404BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20230404BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20230404BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20230404BHJP
   G02F 1/141 20060101ALI20230404BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 641E
G09G3/20 670L
G09G3/20 621K
G09G3/34 J
G09G3/20 642E
G02F1/133 580
G02F1/133 535
G02F1/141
G02F1/13 505
G09G3/20 611A
G09G3/20 611J
G09G3/20 621A
G09G3/20 621F
G09G3/20 631U
G09G3/20 670E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121209
(22)【出願日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2021162205
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金森 裕太
【テーマコード(参考)】
2H088
2H193
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H088EA10
2H088EA12
2H088EA22
2H088HA01
2H088HA06
2H088HA28
2H088JA17
2H088MA20
2H193ZG14
2H193ZG34
2H193ZH18
2H193ZH34
2H193ZH35
2H193ZH54
2H193ZH56
2H193ZP01
2H193ZQ22
2H193ZR02
2H193ZR20
5C006AA22
5C006AF13
5C006AF44
5C006BA12
5C006BF38
5C006EA01
5C006FA04
5C006FA19
5C006FA54
5C080AA10
5C080CC03
5C080DD20
5C080JJ04
5C080JJ05
5C080JJ06
(57)【要約】
【課題】光学特性の変化を抑制することが可能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】フィールドシーケンシャル駆動により1フレーム期間単位で1つの画像を表示する液晶パネルと、液晶パネルに光を供給する光源と、を有する液晶表示装置であって、液晶パネルの駆動モードは、1フレーム期間に含まれるフィールド期間の数が第一の数である第一の駆動モードと、1フレーム期間に含まれるフィールド期間の数が第一の数とは異なる第二の数である第二の駆動モードと、を有し、第一の駆動モードと第二の駆動モードは、液晶パネルの温度に応じて互いに切り替わる、液晶表示装置である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールドシーケンシャル駆動により1フレーム期間単位で1つの画像を表示する液晶パネルと、前記液晶パネルに光を供給する光源と、を有する液晶表示装置であって、
前記液晶パネルの駆動モードは、前記1フレーム期間に含まれるフィールド期間の数が第一の数である第一の駆動モードと、前記1フレーム期間に含まれるフィールド期間の数が前記第一の数とは異なる第二の数である第二の駆動モードと、を有し、
前記第一の駆動モードと前記第二の駆動モードは、前記液晶パネルの温度に応じて互いに切り替わる、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第二の数は、前記第一の数よりも多く、前記液晶パネルの駆動モードは、前記液晶パネルの温度が所定の温度よりも低くなった場合に、前記第一の駆動モードから前記第二の駆動モードへ切り替わることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記所定の温度は、前記液晶パネルの動作保証温度範囲の下限の温度であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶パネルが前記第二の駆動モードで駆動している間、前記光源は、消灯することを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記液晶パネルが前記第二の駆動モードで駆動している間、前記液晶パネルは、チェッカーパターンの画像を表示することを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第二の駆動モードのフレームレートは、前記第一の駆動モードのフレームレートよりも高いことを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第二の数は、前記第一の数よりも少なく、前記液晶パネルの駆動モードは、前記液晶パネルの温度が所定の温度よりも高くなった場合に、前記第一の駆動モードから前記第二の駆動モードへ切り替わることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記所定の温度は、前記液晶パネルの動作保証温度範囲の上限の温度であることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶パネルが前記第二の駆動モードで駆動している間、前記光源は、消灯することを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型化、小型化が可能であり、低消費電力で駆動できること等々の利点があることから、近年ではモバイル機器やプロジェクター、ビューファインダー、HMD、HUD等の小型電子機器の分野で画像表示装置として広く使用されている。
【0003】
フィールドシーケンシャル駆動により画像を表示する液晶表示装置では、赤色(R色)、緑色(G色)及び青色(B色)の異なる波長の3つの光源を順次選択して発光させ、それに同期するように液晶パネルの動作を制御して、カラー画像を表示する。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
具体的には、例えば、光源がR色、G色、B色の順に一定時間ずつ各色の光を液晶パネルに照射し、液晶パネルは、それに同期して、照射された光を透過させるON状態と照射された光を遮断するOFF状態との間で適宜切り替わることで、カラー画像を表示する。
【0005】
液晶パネルとしては、印加された電圧に応じて光学特性が高速で切り替わる強誘電性液晶を用いた液晶パネルがフィールドシーケンシャル駆動に適している。
【0006】
図1は、液晶パネルの例を示す断面図である。図1に示す液晶パネルは、透明なガラス基板1と、ITO膜2と、ITO膜2上に形成された有機配向膜3と、シリコン基板4と、画素電極5と、画素電極5上に形成された有機配向膜6と、ガラス基板1とシリコン基板4との間に充填された液晶7とを備えている。
【0007】
この液晶パネルでは、液晶7に電圧を印加する前の状態において、液晶分子の向きが有機配向膜3と有機配向膜6の配向規制力によって一方向に揃えられている。通常、液晶7に電圧が印加されると、液晶分子の向きは変化(スイッチング)し、液晶7に電圧が印加されなくなると、液晶分子の向きは一方向へ揃えられた状態に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-182157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
液晶パネルでは、温度に応じて輝度やコントラストなどの光学特性が変化する傾向がある。特に、低温時においては、液晶の応答速度が顕著に遅くなるため、フィールドシーケンシャル駆動の高速駆動に順応できず、コントラストや輝度が変化する。すなわち、液晶パネルでは、温度に応じて輝度やコントラストなどの光学特性が変化してしまうという問題が発生する。
【0010】
本発明は、光学特性の変化を抑制することが可能な液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
フィールドシーケンシャル駆動により1フレーム期間単位で1つの画像を表示する液晶パネルと、前記液晶パネルに光を供給する光源と、を有する液晶表示装置であって、前記液晶パネルの駆動モードは、前記1フレーム期間に含まれるフィールド期間の数が第一の数である第一の駆動モードと、前記1フレーム期間に含まれるフィールド期間の数が前記第一の数とは異なる第二の数である第二の駆動モードと、を有し、前記第一の駆動モードと前記第二の駆動モードは、前記液晶パネルの温度に応じて互いに切り替わる、ことを特徴とする液晶表示装置。
【0012】
前記第二の数は、前記第一の数よりも多く、前記液晶パネルの駆動モードは、前記液晶パネルの温度が所定の温度よりも低くなった場合に、前記第一の駆動モードから前記第二の駆動モードへ切り替わる液晶表示装置であっても良い。
【0013】
前記所定の温度は、前記液晶パネルの動作保証温度範囲の下限の温度である液晶表示装置であっても良い。
【0014】
前記液晶パネルが前記第二の駆動モードで駆動している間、前記光源は、消灯する液晶表示装置であっても良い。
【0015】
前記液晶パネルが前記第二の駆動モードで駆動している間、前記液晶パネルは、チェッカーパターンの画像を表示する液晶表示装置であっても良い。
【0016】
前記第二の駆動モードのフレームレートは、前記第一の駆動モードのフレームレートよりも高い液晶表示装置であっても良い。
【0017】
前記第二の数は、前記第一の数よりも少なく、前記液晶パネルの駆動モードは、前記液晶パネルの温度が所定の温度よりも高くなった場合に、前記第一の駆動モードから前記第二の駆動モードへ切り替わる液晶表示装置であっても良い。
【0018】
前記所定の温度は、前記液晶パネルの動作保証温度範囲の上限の温度である液晶表示装置であっても良い。
【0019】
前記液晶パネルが前記第二の駆動モードで駆動している間、前記光源は、消灯する液晶表示装置であっても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学特性の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】液晶パネルの例を示す断面図
図2】フィールドシーケンシャル駆動の1フレーム期間の駆動波形を示すタイミングチャート
図3】液晶パネルの温度に対するコントラストの変化を示す図
図4】本発明の実施例1におけるフィールドシーケンシャル駆動の駆動波形を示すタイミングチャート
図5】フィールドシーケンシャル駆動の駆動モード毎の液晶パネルの温度変化を示す図
図6】本発明の実施例2におけるフィールドシーケンシャル駆動の駆動波形を示すタイミングチャート
図7】フレームレートと液晶パネルの温度との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態における液晶表示装置は、LEDなどの光源と、強誘電性液晶を用いた液晶パネルと、光源と液晶パネルを駆動させる駆動回路とを備え、液晶パネルをフィールドシーケンシャル方式により駆動して1フレーム期間単位で1つの画像を表示するように構成されている。カラー画像を表示する場合には、RGBの各色に対応する画像を表示する3つのフィールド期間が1フレーム期間内に設けられ、それら3つのフィールド期間で1つのカラー画像が表示される。具体的には、RGBの各色の光を発する3つの光源を設け、これら3つの光源から発せられた各色の光により液晶パネルを前方又は後方から順次照明する。例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の順にそれぞれの色の光を液晶パネルに照射し、このサイクルを同様に繰り返す。液晶パネルは、このサイクルに同期して液晶の光変調状態を変化させる。液晶パネルとしては、例えば、前述の図1に示した液晶パネルと同様のものが用いられるが、これには限定されない。
【0023】
図2は、フィールドシーケンシャル駆動の1フレーム期間の駆動波形を示すタイミングチャートである。図2に示すフィールドシーケンシャル駆動では、Active期間「R」、Passive期間「r」、Active期間「G」、Passive期間「g」、Active期間「B」、Passive期間「b」の6つのフィールド期間で1フレーム期間が構成されている。
【0024】
図2において、「R」と記された期間は、R色光源の点灯期間に対応するActive期間を表し、「G」と記された期間は、G色光源の点灯期間に対応するActive期間を表し、「B」と記された期間は、B色光源の点灯期間に対応するActive期間を表し、「r」と記された期間は、R色光源の消灯期間に対応するPassive期間を表し、「g」と記された期間は、G色光源の消灯期間に対応するPassive期間を表し、「b」と記された期間は、B色光源の消灯期間に対応するPassive期間を表している。「R」、「G」、「B」の各期間では、液晶パネルに所定の電圧を印加することで画像を表示させる表示駆動が行われ、「r」、「g」、「b」の各期間では、液晶パネルにそれぞれ直前のActive期間で液晶に印加された電圧の反転電圧を印加する非表示駆動(反転駆動)が行われる。また、「R」、「G」、「B」の各期間に含まれる「Blanking(+)」と記された期間では、液晶に正(+)のリセット電圧が印加され、「r」、「g」、「b」の各期間に含まれる「Blanking(-)」と記された期間では、液晶に負(-)のリセット電圧が印加される。
【0025】
図3は、液晶パネルの温度に対するコントラストの変化を示す図である。横軸は液晶パネルの温度を示し、縦軸は画像のコントラストを示している。強誘電性液晶を用いた液晶パネルにおいて図2に示したようなフィールドシーケンシャル駆動を行うと、画像のコントラストは、液晶パネルの温度が約30℃~60℃の範囲内では、高い状態に維持されるが、液晶パネルの温度が約30℃以下の範囲では、液晶分子のスイッチングスピードが遅くなることにより、コントラストが低下する傾向がある。また、液晶パネルの温度が約60℃以上の範囲では、液晶材料の性質などにより、コントラストが低下する傾向がある。なお、図3に示すコトントラストの変化は、あくまで一例であり、必ずしもこのように変化するとは限らない。
【0026】
図3に示すように温度に応じてコントラストが変化する液晶パネルに対し、本発明の実施例においては、以下のようなフィールドシーケンシャル駆動を行う。
【実施例0027】
図4は、本発明の実施例1におけるフィールドシーケンシャル駆動の駆動波形を示すタイミングチャートである。前述の図3に示したように液晶パネルの温度が低くなるとコントラストが大きく低下する傾向がある場合には、例えば、図4に示すようなフィールドシーケンシャル駆動を行う。具体的には、まず、液晶パネルの駆動回路に内蔵されたメモリに、予め、図4の左側に示す第一の駆動モードの駆動シーケンスと図4の右側に示す第二の駆動モードの駆動シーケンスを記憶させておく。第一の駆動モードは、1フレーム期間が「R」「r」「G」「g」「B」「b」の6個のフィールド期間で構成された駆動モードである。これに対し、第二の駆動モードは、1フレーム期間が「R」「G」「B」「r」「R」「G」「B」「g」「R」「G」「B」「b」の12個のフィールド期間で構成された駆動モードである。なお、各フィールド期間での駆動は、図2に示した各フィールド期間での駆動と同様である。そして、液晶パネルの温度が、例えば、30℃よりも低くなった場合には、液晶パネルの駆動モードが第一の駆動モードから第二の駆動モードへ自動的に切り替わる。より具体的には、以下の通りである。
【0028】
例えば、液晶パネルが30℃以上の温度状態において第一の駆動モードで駆動を行っている際に(図4に示すn番目のフレーム)、液晶パネルの温度が30℃よりも低くなった場合には、まず、液晶パネルに搭載された温度センサーが液晶パネルの温度を検知し、検知結果を電気信号として液晶パネルの駆動回路へ出力する。駆動回路は、その電気信号に基づいて液晶パネルの温度を認識し、メモリから第二の駆動モードの駆動シーケンスを読み出し、液晶パネルを第二の駆動モードで駆動する(図4に示すn+1番目のフレーム)。そして、駆動回路は、そのまま液晶パネルを第二の駆動モードで駆動し続け(図示しないn+2番目以降のフレーム)、液晶パネルの温度が再び30℃以上になったら、メモリから第一の駆動モードの駆動シーケンスを読み出し、液晶パネルを再び第一の駆動モードで駆動する。
【0029】
液晶パネルの駆動モードが第一の駆動モードから第二の駆動モードに切り替わると、1フレーム期間に含まれるフィールド期間の数が6個から12個へ増えることとなり、フィールド期間の数が増えた分だけ液晶パネルの駆動回路における電気的な処理負荷が増加し、液晶パネルの自己発熱による熱量が増加する。つまり、液晶パネルの温度が低下した際に液晶パネルの駆動モードが第一の駆動モードから第二の駆動モードへ切り替わることで、液晶パネルの自己発熱による熱量が増加し、液晶の温度低下が抑制される。これにより、液晶の温度低下に起因するコントラストの低下が抑制される。
【0030】
図5は、フィールドシーケンシャル駆動の駆動モード毎の液晶パネルの温度変化を示す図である。横軸は電源投入後の経過時間を示し、縦軸は液晶パネルの温度を示している。図5に示すように、1フレーム期間が9個のフィールド期間で構成されている駆動モード(「9Phase」と表記)と、1フレーム期間が12個のフィールド期間で構成されている駆動モード(「12Phase」と表記)と、1フレーム期間が15個のフィールド期間で構成されている駆動モード(「15Phase」と表記)との間で液晶パネルの自己発熱による温度変化を比較したところ、フィールド期間の数が3個増える毎に600s経過した時の液晶パネルの温度が約3℃ずつ相対的に高くなることを確認することができた。このことから、液晶パネルの温度が低下した際に液晶パネルの駆動モードを切り替え、1フレーム期間に含まれるフィールド期間の数を増加させることで、液晶パネルの温度の低下を抑制することができることが分かる。
【実施例0031】
図6は、本発明の実施例2におけるフィールドシーケンシャル駆動の駆動波形を示すタイミングチャートである。前述の図3に示したように液晶パネルの温度が高くなるとコントラストが大きく低下する傾向が場合には、例えば、図6に示すようなフィールドシーケンシャル駆動を行う。具体的には、まず、液晶パネルの駆動回路に内蔵されたメモリに、予め、図6の左側に示す第一の駆動モードの駆動シーケンスと図6の右側に示す第二の駆動モードの駆動シーケンスを記憶させておく。第一の駆動モードは、1フレーム期間が「R」「G」「r」「B」「R」「g」「G」「B」「b」の9個のフィールド期間で構成された駆動モードである。これに対し、第二の駆動モードは、1フレーム期間が「R」「r」「G」「g」「B」「b」の6個のフィールド期間で構成された駆動モードである。なお、各フィールド期間での駆動は、図2に示した各フィールド期間での駆動と同様である。そして、液晶パネルの温度が、例えば、60℃よりも高くなった場合には、液晶パネルの駆動モードが第一の駆動モードから第二の駆動モードへ自動的に切り替わる。より具体的には、以下の通りである。
【0032】
例えば、液晶パネルが60℃以下の温度状態において第一の駆動モードで駆動を行っている際に(図6に示すn番目のフレーム)、液晶パネルの温度が60℃よりも高くなった場合には、まず、液晶パネルに搭載された温度センサーが液晶パネルの温度を検知し、検知結果を電気信号として液晶パネルの駆動回路へ出力する。駆動回路は、その電気信号に基づいて液晶パネルの温度を認識し、メモリから第二の駆動モードの駆動シーケンスを読み出し、液晶パネルを第二の駆動モードで駆動する(図6に示すn+1番目のフレーム)。そして、駆動回路は、そのまま液晶パネルを第二の駆動モードで駆動し続け(図示しないn+2番目以降のフレーム)、液晶パネルの温度が再び60℃以下になったら、メモリから第一の駆動モードの駆動シーケンスを読み出し、液晶パネルを再び第一の駆動モードで駆動する。
【0033】
液晶パネルの駆動モードが第一の駆動モードから第二の駆動モードに切り替わると、1フレーム期間に含まれるフィールド期間の数が9個から6個へ減ることとなり、フィールド期間の数が減った分だけ液晶パネルの駆動回路における電気的な処理負荷が減少し、液晶パネルの自己発熱による熱量が減少する。つまり、液晶パネルの温度が上昇した際に液晶パネルの駆動モードが第一の駆動モードから第二の駆動モードへ切り替わることで、液晶パネルの自己発熱による熱量が減少し、液晶の温度上昇が抑制される。これにより、液晶の温度上昇に起因するコントラストの低下が抑制される。
【実施例0034】
前述の図4に示した実施例1は、例えば、以下のように変形することが可能である。すなわち、この変形例(実施例3)では、液晶パネルの電源がOFFからONになった時(液晶パネルが起動した時)に、液晶パネルの温度がその動作保証温度範囲の下限の温度(例えば、-10℃)よりも低かった場合には、液晶パネルの駆動モードは、図4の左側に示すような第一の駆動モードから図4の右側に示すような第二の駆動モードへ瞬時に切り替わり、液晶パネルは、第二の駆動モードで駆動する。但し、この時の第二の駆動モードにおいては、各フレーム期間にわたって光源が消灯することで、各フレーム期間が光源の消灯期間(画像の非表示期間)となり、使用者は、液晶パネルの画像を視認することができなくなる。この第二の駆動モードでの駆動は、液晶パネルの温度が上昇してその動作保証温度範囲の下限の温度に到達するまで継続し、その温度に到達した時点で、光源が点灯するとともに、液晶パネルの駆動モードが第二の駆動モードから第一の駆動モードへ切り替わり、使用者は、液晶パネルの画像を視認することができるようになる。
【0035】
この実施例では、液晶パネルが第二の駆動モードで動作する期間が光源の消灯期間(画像の非表示期間)とされているため、使用者は、液晶パネルの温度が低い期間中のコントラストが低い画像を視認することなく、違和感なく画像を視認することができる。
【0036】
なお、この実施例においては、液晶パネルが第二の駆動モードで駆動している際に、液晶パネルの画面外に「準備中」等のランプ(インジケータ)による表示を行っても良い。
【0037】
また、この実施例においては、液晶パネルが第二の駆動モードで駆動する際に液晶パネルが表示する画像は、外部機器(電子カメラ等)から入力される画像データに基づく画像ではなく、液晶パネルの駆動回路に内蔵されたメモリに予め記憶されている所定の画像データに基づく画像であっても良い。この場合、液晶パネルが表示する画像は、例えば、チェッカーパターン(市松模様)、全面白塗り、全面黒塗りのいずれか一つの画像であり、特に、液晶パネルの自己発熱量が多い画像として、チェッカーパターンの画像が好適である。但し、液晶パネルが表示する画像は、これらには限定されない。
【0038】
また、この実施例においては、第二の駆動モードのフレームレート(fps:frames per second)は、第一の駆動モードのフレームレートよりも高くなるように設定されていても良い。一般的に、フレームレートが高いほど液晶パネルの自己発熱量は多くなるため、第二の駆動モードのフレームレートが第一の駆動モードのフレームレートよりも高ければ、低温環境下において液晶パネルの温度を素早く上昇させることができる。なお、この場合、第一の駆動モードのフレームレートは、例えば、60fpsであり、第二の駆動モードのフレームレートは、例えば、80fpsであるが、フレームレートは、これらに限定されない。
【0039】
図7は、フレームレートと液晶パネルの温度との関係を示す図である。この図において、横軸は電源投入後の経過時間(s)を示し、縦軸は液晶パネルの温度(℃)を示している。なお、このときの液晶パネルの駆動条件としては、1フレーム期間に含まれるフィールド期間の数は18個、フレームレートは60fps又は80fps、液晶パネルが表示する画像はチェッカーパターンであった。図7に示すように、フレームレートが60fpsである場合と80fpsである場合との間で液晶パネルの温度変化を比較すると、液晶パネルに電源を投入(電源ON)してから約50s経過した時の液晶パネルの温度は、フレームレートが80fpsである場合の方が60fpsである場合よりも数℃ほど高い。このことから、フレームレートを高くすることで液晶パネルの温度をより早く上昇させることができることが分かる。
【0040】
なお、以上の実施例3の技術的思想は、図6に示した実施例2にも適用することができる。例えば、液晶パネルの電源がOFFからONになった時(液晶パネルが起動した時)に、液晶パネルの温度がその動作保証温度範囲の上限の温度(例えば、70℃)よりも高かった場合には、液晶パネルの駆動モードが図6の左側に示すような第一の駆動モードから図6の右側に示すような第二の駆動モードへ瞬時に切り替わり、液晶パネルが第二の駆動モードで駆動し、この時の第二の駆動モードにおいては、光源が消灯し、使用者が液晶パネルの画像を視認できないようにしても良い。この場合にも、実施例3と同様の効果を得ることができる。
【0041】
一般的に、液晶パネルの温度低下を抑制する手段としては、ヒーター等が用いられ、液晶パネルの温度上昇を抑制する手段としては、ヒートシンク等が用いられるが、これらを用いた場合には、ヒーターによる電力の消耗や液晶表示装置の大型化などが生じるが、本発明では、液晶パネルの駆動モードを切り替えるだけで液晶パネルの温度を制御することができるため、本発明は、それらに対して有利である。
【0042】
本発明は、以上の実施形態には限定されず、その他種々の実施形態を取り得る。実施例1と実施例2は、互いに組み合わせて実施することが可能である。例えば、液晶パネルの温度が30℃~60℃の時には、液晶パネルを実施例2の第一の駆動モードで駆動させ、液晶パネルの温度が60℃よりも高くなった時には、液晶パネルを実施例2の第二の駆動モードで駆動させ、液晶パネルの温度が30℃よりも低くなった時には、液晶パネルを実施例1の第二の駆動モード(第三の駆動モードと呼ぶことができる)で駆動させるようなことも可能である。第一の駆動モードと第二の駆動モードの駆動シーケンス(フィールド期間の数や順序)は、前述の実施例に示したものには限定されない。液晶パネルの駆動モードを切り替える温度は、前述の実施例に示した温度(30℃、60℃、他)には限定されない。
【符号の説明】
【0043】
1 ガラス基板
2 ITO膜
3 有機配向膜
4 シリコン基板
5 画素電極
6 有機配向膜
7 液晶
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7