(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051759
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】フォトマスクブランク、フォトマスク、フォトマスクの製造方法、および表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/54 20120101AFI20230404BHJP
G03F 1/46 20120101ALI20230404BHJP
G03F 1/80 20120101ALI20230404BHJP
【FI】
G03F1/54
G03F1/46
G03F1/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131956
(22)【出願日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2021162042
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】田辺 勝
(72)【発明者】
【氏名】浅川 敬司
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁美
(72)【発明者】
【氏名】安森 順一
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA12
2H195BB14
2H195BC05
2H195BC14
2H195BC24
(57)【要約】
【課題】高い耐静電破壊特性を有するとともに、従来よりもローディング効果を低減することができる等のフォトマスクブランク、フォトマスク、フォトマスクの製造方法、および表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】例えばFPD製造用のフォトマスクブランクは、透明基板と、該透明基板上に遮光膜とを有し、遮光膜が、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有し、遮光膜のシート抵抗値が40Ω/sq以上であることを特徴とする。これにより、従来のフォトマスクブランクよりも耐静電破壊特性を良好とし、またローディング効果を低減することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、該透明基板上に設けられた遮光膜とを有するフォトマスクブランクであって、
前記遮光膜が、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有し、
前記遮光膜のシート抵抗値が40Ω/sq以上であることを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項2】
前記遮光膜のシート抵抗値が90Ω/sq以下であることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランク。
【請求項3】
前記遮光膜は、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、
前記遮光層のシート抵抗値が40Ω/sq以上であることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランク。
【請求項4】
前記遮光層のシート抵抗値が90Ω/sq以下であることを特徴とする請求項3に記載のフォトマスクブランク。
【請求項5】
前記遮光膜は、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、
前記遮光層が窒素(N)または酸素(O)を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランク。
【請求項6】
前記遮光膜が、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記遮光層上に表面反射防止層を有していることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランク。
【請求項7】
前記表面反射防止層が、チタン(Ti)とケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなり、かつ、窒素(N)または酸素(O)を含有することを特徴とする請求項6に記載のフォトマスクブランク。
【請求項8】
前記遮光膜がチタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記透明基板と前記遮光層との間に裏面反射防止層を有していることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランク。
【請求項9】
前記裏面反射防止層が、チタン(Ti)とケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなり、かつ、窒素(N)または酸素(O)を含有することを特徴とする請求項8に記載のフォトマスクブランク。
【請求項10】
前記遮光膜上に、該遮光膜とはエッチング選択性が異なるエッチングマスク膜を有していることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランク。
【請求項11】
前記エッチングマスク膜がクロム(Cr)を含有することを特徴とする請求項10に記載のフォトマスクブランク。
【請求項12】
前記エッチングマスク膜が、窒素(N)または酸素(O)を含有することを特徴とする請求項11に記載のフォトマスクブランク。
【請求項13】
透明基板と、該透明基板上に設けられた転写用パターンを備える遮光膜とを有するフォトマスクであって、
前記遮光膜が、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有し、
前記遮光膜のシート抵抗値が40Ω/sq以上であることを特徴とするフォトマスク。
【請求項14】
前記遮光膜のシート抵抗値が90Ω/sq以下であることを特徴とする請求項13に記載のフォトマスク。
【請求項15】
前記遮光膜は、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、
前記遮光層のシート抵抗値が40Ω/sq以上であることを特徴とする請求項13に記載のフォトマスク。
【請求項16】
前記遮光層のシート抵抗値が90Ω/sq以下であることを特徴とする請求項15に記載のフォトマスク。
【請求項17】
前記遮光膜は、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、
前記遮光層が窒素(N)または酸素(O)を更に含有することを特徴とする請求項13に記載のフォトマスク。
【請求項18】
前記遮光膜が、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記遮光層上に表面反射防止層を有していることを特徴とする請求項13に記載のフォトマスク。
【請求項19】
前記表面反射防止層が、チタン(Ti)とケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなり、かつ、窒素(N)または酸素(O)を含有することを特徴とする請求項18に記載のフォトマスク。
【請求項20】
前記遮光膜がチタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記透明基板と前記遮光層との間に裏面反射防止層を有していることを特徴とする請求項13に記載のフォトマスク。
【請求項21】
前記裏面反射防止層が、チタン(Ti)とケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなり、かつ、窒素(N)または酸素(O)を含有することを特徴とする請求項20に記載のフォトマスク。
【請求項22】
請求項1に記載のフォトマスクブランクを準備する工程と、
前記遮光膜の上に設けられたレジスト膜パターンをマスクにして前記遮光膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に転写用パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項23】
請求項10に記載のフォトマスクブランクを準備する工程と、
前記エッチングマスク膜の上に設けられたレジスト膜パターンをマスクにして前記エッチングマスク膜をウェットエッチングして、前記遮光膜の上にエッチングマスク膜パターンを形成する工程と、前記エッチングマスク膜パターンをマスクにして、前記遮光膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に転写用パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項24】
請求項22または23に記載のフォトマスクの製造方法により得られたフォトマスクを露光装置のマスクステージに載置し、前記フォトマスク上に形成された前記転写用パターンを、表示装置用の基板上に形成されたレジストに露光転写する露光工程を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項25】
請求項13に記載のフォトマスクを露光装置のマスクステージに載置し、前記フォトマスク上に形成された前記転写用パターンを、表示装置用の基板上に形成されたレジストに露光転写する露光工程を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表示装置製造用のフォトマスクブランク、フォトマスク、フォトマスクの製造方法、および表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCD(Liquid Crystal Display)を代表とするFPD(Flat Panel Display)等の表示装置においては、画面の大型化、広視野角化とともに、高精細化、高速表示化が急速に進んでいる。そのため、FPDを製造する際の露光プロセスに用いるフォトマスクにおいても、大サイズの透明基板上に微細で高精度な転写用パターンが形成されたバイナリマスクまたは位相シフトマスクなどが用いられる。
【0003】
フォトマスクブランクは、フォトマスクの原版である。フォトマスクは、例えば、透明基板と、該透明基板上に、ウェットエッチングによって遮光膜がパターニングされてなる遮光膜パターンとを有する。
【0004】
このようなFPDの製造に用いられるフォトマスクにおいては、露光工程中または搬送等のハンドリング中に静電気を帯び、部分的に転写用パターンに静電破壊を起こすことがある。特にパターンが微細化された高精度なフォトマスクにおいては、微細化されたパターン間での静電破壊が起きることがあり、そのためフォトマスクおよびフォトマスクブランクの高い耐静電破壊特性が求められている。
【0005】
例えば特許文献1には、遮光膜を、Cr系材料に替えて、MoSi系材料、TaSi系材料、ZrSi系材料等で形成することが記載されている。
【0006】
また、例えば特許文献2には、遮光膜のシート抵抗値を10Ω/sq以下にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-140106号公報
【特許文献2】特開2019-168558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、FPDの製造に用いられるフォトマスクにおいては、パターン間での静電破壊を抑制あるいは回避するため、より高い耐静電破壊特性が求められている。
【0009】
また、遮光膜を含む光学膜のエッチングにおいては、パターン密度が高い領域と粗い領域との間でエッチングレートに差が発生するローディング効果が生じることがある。近年の高精細(例えば1000ppi以上)のFPD製造においては、高解像のパターン転写を可能にするために、ホール径で6μm以下、ライン幅で4μm以下、具体的には、径または幅寸法が1.5μm以下の転写用パターンが形成されたフォトマスクが要求されることがある。したがって、微細なパターンを精度よく形成するには、ローディング効果を低減することも有用である。
【0010】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、高い耐静電破壊特性を有するとともに、従来よりもローディング効果を低減することができるフォトマスクブランク、フォトマスク、フォトマスクの製造方法、および表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0012】
(構成1)
本発明の構成1は、透明基板と、該透明基板上に設けられた遮光膜とを有するフォトマスクブランクであって、前記遮光膜が、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有し、前記遮光膜のシート抵抗値が40Ω/sq以上であることを特徴とするフォトマスクブランクである。
【0013】
(構成2)
本発明の構成2は、前記遮光膜のシート抵抗値が90Ω/sq以下であることを特徴とする構成1のフォトマスクブランクである。
【0014】
(構成3)
本発明の構成3は、前記遮光膜は、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記遮光層のシート抵抗値が40Ω/sq以上であることを特徴とする構成1のフォトマスクブランクである。
【0015】
(構成4)
本発明の構成4は、前記遮光層のシート抵抗値が90Ω/sq以下であることを特徴とする構成3のフォトマスクブランクである。
【0016】
(構成5)
本発明の構成5は、前記遮光膜は、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記遮光層が窒素(N)または酸素(O)を更に含有することを特徴とする構成1~4の何れかのフォトマスクブランクである。
【0017】
(構成6)
本発明の構成6は、前記遮光膜が、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記遮光層上に表面反射防止層を有していることを特徴とする構成1~5の何れかのフォトマスクブランクである。
【0018】
(構成7)
本発明の構成7は、前記表面反射防止層が、チタン(Ti)とケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなり、かつ、窒素(N)または酸素(O)を含有することを特徴とする構成6のフォトマスクブランクである。
【0019】
(構成8)
本発明の構成8は、前記遮光膜がチタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記透明基板と前記遮光層との間に裏面反射防止層を有していることを特徴とする構成1~7の何れかのフォトマスクブランクである。
【0020】
(構成9)
本発明の構成9は、前記裏面反射防止層が、チタン(Ti)とケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなり、かつ、窒素(N)または酸素(O)を含有することを特徴とする構成8のフォトマスクブランクである。
【0021】
(構成10)
本発明の構成10は、前記遮光膜上に、該遮光膜とはエッチング選択性が異なるエッチングマスク膜を有していることを特徴とする構成1~9の何れかのフォトマスクブランクである。
【0022】
(構成11)
本発明の構成11は、前記エッチングマスク膜がクロム(Cr)を含有することを特徴とする構成10のフォトマスクブランクである。
【0023】
(構成12)
本発明の構成12は、前記エッチングマスク膜が、窒素(N)または酸素(O)を含有することを特徴とする構成11のフォトマスクブランクである。
【0024】
(構成13)
本発明の構成13は、透明基板と、該透明基板上に設けられた転写用パターンを備える遮光膜とを有するフォトマスクであって、前記遮光膜が、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有し、前記遮光膜のシート抵抗値が40Ω/sq以上であることを特徴とするフォトマスクである。
【0025】
(構成14)
本発明の構成14は、前記遮光膜のシート抵抗値が90Ω/sq以下であることを特徴とする構成13のフォトマスクである。
【0026】
(構成15)
本発明の構成15は、前記遮光膜は、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記遮光層のシート抵抗値が40Ω/sq以上であることを特徴とする構成13のフォトマスクである。
【0027】
(構成16)
本発明の構成16は、前記遮光層のシート抵抗値が90Ω/sq以下であることを特徴とする構成15のフォトマスクである。
【0028】
(構成17)
本発明の構成17は、前記遮光膜は、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記遮光層が窒素(N)または酸素(O)を更に含有することを特徴とする構成13~16の何れかのフォトマスクである。
【0029】
(構成18)
本発明の構成18は、前記遮光膜が、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記遮光層上に表面反射防止層を有していることを特徴とする構成13~17の何れかのフォトマスクである。
【0030】
(構成19)
本発明の構成19は、前記表面反射防止層が、チタン(Ti)とケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなり、かつ、窒素(N)または酸素(O)を含有することを特徴とする構成18のフォトマスクである。
【0031】
(構成20)
本発明の構成20は、前記遮光膜がチタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなる遮光層を含み、前記透明基板と前記遮光層との間に裏面反射防止層を有していることを特徴とする構成13~18の何れかのフォトマスクである。
【0032】
(構成21)
本発明の構成21は、前記裏面反射防止層が、チタン(Ti)とケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなり、かつ、窒素(N)または酸素(O)を含有することを特徴とする構成20のフォトマスクである。
【0033】
(構成22)
本発明の構成22は、構成1~9の何れかのフォトマスクブランクを準備する工程と、前記遮光膜の上に設けられたレジスト膜パターンをマスクにして前記遮光膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に転写用パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法である。
【0034】
(構成23)
本発明の構成23は、構成10~12の何れかのフォトマスクブランクを準備する工程と、前記エッチングマスク膜の上に設けられたレジスト膜パターンをマスクにして前記エッチングマスク膜をウェットエッチングして、前記遮光膜の上にエッチングマスク膜パターンを形成する工程と、前記エッチングマスク膜パターンをマスクにして、前記遮光膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に転写用パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法である。
【0035】
(構成24)
本発明の構成24は、構成22または23のフォトマスクの製造方法により得られたフォトマスクを露光装置のマスクステージに載置し、前記フォトマスク上に形成された前記転写用パターンを、表示装置用の基板上に形成されたレジストに露光転写する露光工程を有することを特徴とする表示装置の製造方法である。
【0036】
(構成25)
本発明の構成25は、構成13~21の何れかのフォトマスクを露光装置のマスクステージに載置し、前記フォトマスク上に形成された前記転写用パターンを、表示装置用の基板上に形成されたレジストに露光転写する露光工程を有することを特徴とする表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、例えばFPD製造用のフォトマスクブランク及びフォトマスクにおいて、従来よりも耐静電破壊特性を高めることができる。また、ローディング効果を低減することができるため、高精度のフォトマスクを安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるフォトマスクブランクの膜構成を示す模式断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態によるフォトマスクブランクの膜構成を示す模式断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態によるフォトマスクブランクの模式断面図であって、特に遮光膜の層構成を詳細に示す断面図である。
【
図4A】第1の実施形態によるフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程を示す模式断面図である。
【
図4B】第1の実施形態によるフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程を更に示す模式断面図である。
【
図4C】第1の実施形態によるフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程を更に示す模式断面図である。
【
図4D】第1の実施形態によるフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程を更に示す模式断面図である。
【
図5A】第2の実施形態によるフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程を示す模式断面図である。
【
図5B】第2の実施形態によるフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程を更に示す模式断面図である。
【
図5C】第2の実施形態によるフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程を更に示す模式断面図である。
【
図6】実施例においてローディング効果の度合いを測定するために用いた遮光膜パターンの模式平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。なお、フォトマスクブランク10は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)を代表とするFPD(Flat Panel Display)等の表示装置をフォトリソグラフィ工程により製造するために用いられるフォトマスク100の原版に相当する。
【0040】
図1は、本発明の第1の実施形態によるフォトマスクブランク10の膜構成を示す模式縦断面図である。本実施形態によるフォトマスクブランク10は、透明基板20と、透明基板20上に形成されたパターン形成用薄膜である遮光膜30と、遮光膜30上に形成されたエッチングマスク膜40とを備える。
【0041】
図2は、本発明の第2の実施形態によるフォトマスクブランク10の膜構成を示す模式図である。本実施形態によるフォトマスクブランク10は、透明基板20と、透明基板20上に形成された遮光膜30とを備える。
【0042】
<透明基板20>
透明基板20は、露光光に対して透明である。透明基板20は、表面反射ロスが無いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を有するものである。透明基板20は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、および低熱膨張ガラス(SiO2-TiO2ガラス等)などのガラス材料で構成することができる。表示装置用途で使用される透明基板20は、一般に矩形状の基板である。具体的には、透明基板20の主表面(遮光膜30が形成される面)の短辺の長さが300mm以上であるものを使用することができる。第1、第2の各実施形態のフォトマスクブランク10では、主表面の短辺の長さが300mm以上の大きなサイズの透明基板20を用いることができる。
【0043】
<遮光膜30>
パターン形成用薄膜である遮光膜30は、遮光層31のみからなる単層構造であってもよい。また、遮光膜30は、遮光層31と、表面反射防止層32および/または裏面反射防止層33とを備える多層構造であってもよい。ここで、
図3は、一例として、遮光膜30が遮光層31、表面反射防止層32および裏面反射防止層33の3層からなるフォトマスクブランク10を模式的に示した縦断面図である。
図3の例によると、表面反射防止層32は、遮光層31の上面(透明基板20がある側とは反対側の面)に設けられ、裏面反射防止層33は、透明基板20と遮光層31との間に設けられる。
【0044】
遮光膜30は、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系の材料で形成することができる。一般に、パターンが微細になるにつれて、パターン密度が高い領域と粗い領域との間でエッチングレートに差が生じるローディング効果を考慮することが有用であるが、本発明者らの検討によれば、遮光膜30にチタンシリサイド系材料を用いることで、クロム系化合物および表示装置製造用のフォトマスクブランクに汎用される他の金属シリサイド系材料と比較してローディング効果が低減することが確認されている。他の金属シリサイド系材料とは、例えば、MoSi(モリブデンシリサイド)系材料やZrSi(ジルコニウムシリサイド)系材料である。
【0045】
また、第1、第2の各実施形態のフォトマスクブランク10によれば、遮光膜30をウェットエッチングして形成される遮光膜パターン(転写用パターン)のエッジ断面形状を透明基板20の主表面に対して略垂直にすることができる。特に第1、第2の各実施形態では、均質で組成傾斜のない材料でパターンの良好なエッジ断面形状を実現できる。そのため、パターン精度やパネル品質保証の精度を向上させつつ、遮光膜30の成膜時の工程制御が容易となる。
【0046】
遮光層31におけるチタン(Ti)とケイ素(Si)との原子比率は、1:1.4から1:3.4までの範囲であることが好ましい。チタンの比率が小さすぎると、十分な遮光性を確保することが困難となる。また、チタンの比率の上限は、耐薬性や耐光性の観点から、上述のとおりとすることが好ましい。
【0047】
遮光膜30を構成する遮光層31は、窒素(N)または酸素(O)をさらに含有することができる。遮光膜30がこれらの元素を含有することにより、ウェットエッチャントに対するエッチングレートを制御してパターンの断面のエッジ形状を良好にすることができる。
【0048】
具体的に、遮光層31において、窒素(N)の含有率は0~10原子%であることが好ましい。また、酸素(O)の含有率は0~5原子%であることが好ましい。遮光層は、窒素(N)または酸素(O)を含まなくてもよい。
【0049】
また、表面反射防止層32および裏面反射防止層33は、それぞれ、チタン(Ti)と、ケイ素(Si)とを含有するチタンシリサイド系材料からなり、かつ、窒素(N)または酸素(O)をさらに含有することができる。これらの元素を含むことにより、露光光または描画光(フォトマスク製造時におけるレジスト膜への描画の際に用いる光)に対する反射率を低下させることができる。表面反射防止層32および裏面反射防止層33において、窒素(N)の含有率は10~55原子%であることが好ましい。また、酸素(O)の含有率は0~10原子%であることが好ましい。表面反射防止層32および裏面反射防止層33は、酸素(O)を含まなくてもよい。
【0050】
また、第1、第2の各実施形態のフォトマスクブランク10において、耐静電破壊特性を高めるために、遮光膜30のシート抵抗値は40Ω/sq以上であることが好ましく、42Ω/sq以上であることがより好ましい。例えば遮光膜30に含まれる窒素(N)またはケイ素(Si)の量を増やすことでシート抵抗値を高くすることができる。一方、窒素(N)やケイ素(Si)の含有量が増えると遮光性の低下(言い換えると透過率が高くなる)を招く。また、ケイ素の含有量が大きい場合には、透明基板とのエッチング選択性が小さくなる。これらのことから、遮光膜30のシート抵抗値は90Ω/sq以下に設定されることが好ましい。遮光膜30が遮光層31のみからなる単層構造の場合には、同様の目的のため、遮光層31のシート抵抗値は40Ω/sq以上であることが好ましく、これに加えて90Ω/sq以下であることがより好ましい。
【0051】
なお、表面反射防止層32および裏面反射防止層33の膜厚は、遮光層31の膜厚に比べて非常に小さい。このため、表面反射防止層32および裏面反射防止層33のシート抵抗値は、無視できるほど小さい。したがって、遮光膜30が表面反射防止層32および/または裏面反射防止層33を含む場合であっても、遮光膜30のシート抵抗値は、遮光層31のシート抵抗値と実質的に同じであると言える。また、表面反射防止層32が非常に薄いことから、シート抵抗値を測定するためのプローブをフォトマスクブランクの遮光膜30に接触させたとき、プローブが表面反射防止層32を突き抜けて遮光層31に接触する。したがって、遮光層31上に表面反射防止層32が形成されている場合であっても、遮光膜30のシート抵抗値は、実質的に遮光層31のシート抵抗値と同じになると言える。上述のとおり、裏面反射防止層33が形成されていても、そのシート抵抗値は、無視できるほどに小さい。
【0052】
発明者らの検討によれば、遮光膜の導電性が高い(すなわちシート抵抗値が小さい)場合、パターニングされた遮光膜の一部(透明基板が露出した領域に外周を囲まれてなる孤立パターンなど)に、一気に放電電流が流れるため、この遮光膜の一部が溶解し、結果的に遮光膜パターンがダメージを受けると考えられる。
【0053】
一方、本発明が提案するように、遮光膜の導電性が低い(すなわちシート抵抗値が大きい)場合には、万が一静電気の放電が生じたとしても、導電性が高い遮光膜のように遮光膜パターンに一気に放電電流が流れるということは生じにくいため、遮光膜パターンが溶解せず、結果的に、高い静電破壊特性を有することができると考えられる。
【0054】
遮光膜30および/または遮光層31が、上記範囲のシート抵抗値を有することにより、例えばFPD製造用の大型で高精細なフォトマスク100およびその原版であるフォトマスクブランク10の静電破壊を効果的に抑制することができる。
【0055】
第1、第2の各実施形態のフォトマスクブランク10の遮光膜30は、露光光に対して、遮光性を有する。具体的には、遮光膜30の光学濃度(OD:Optical Density)は、2以上であることができる。遮光膜30の光学濃度は、好ましくは3以上であり、より好ましくは3.5以上であり、さらに好ましくは4以上である。なお、フォトマスクブランク10が、遮光膜30と透明基板20との間に、該遮光膜30とは異なるその他の膜を備える場合、遮光膜30と該その他の膜との積層状態での光学濃度が上述の範囲となるように、遮光膜30の光学濃度を設定すればよい。光学濃度は、分光光度計またはODメーターなどを用いて測定することができる。
【0056】
遮光膜30の裏面反射率は、365nm~436nmの波長域において15%以下であると好ましく、12%以下であるとより好ましく、10%以下であるとさらに好ましい。あるいは、遮光膜30の裏面反射率は、365nm~436nmの波長域内の代表波長において、15%以下であると好ましく、12%以下であるとより好ましく、10%以下であるとさらに好ましい。また、遮光膜30の裏面反射率は、露光光にj線(波長313nm)が含まれる場合、313nmから436nmの波長域の光に対して15%以下であると好ましく、12%以下であるとより好ましい。遮光膜30の裏面反射率は、さらに好ましくは10%以下であることが望ましい。または、遮光膜30の裏面反射率は、313nmから436nmの波長域内の代表波長において、15%以下であると好ましく、12%以下であるとより好ましく、10%以下であるとさらに好ましい。また、遮光膜30の裏面反射率は、365nm~436nmの波長域において0.2%以上であり、313nmから436nmの波長域の光に対して0.2%以上であると好ましい。遮光膜30の表面反射率も同様である。
【0057】
裏面反射率および表面反射率は、分光光度計などを用いて測定することができる。
【0058】
遮光膜30の膜厚は、60nm以上であることが好ましく、80nm以上であるとより好ましい。一方、遮光膜30の膜厚は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であるとより好ましい。また、遮光層31の膜厚は、50nm以上であることが好ましく、60nm以上であるとより好ましい。一方、遮光層31の膜厚は、120nm以下であることが好ましく、100nm以下であるとより好ましい。また、表面反射防止層32および裏面反射防止層33の膜厚は、10nm以上であることが好ましい。一方、表面反射防止層32および裏面反射防止層33の膜厚は、50nm以下であることが好ましい。
【0059】
遮光膜30が多層構造(表面反射防止層32および裏面反射防止層33のうち少なくともいずれかを有する構造)の場合において、遮光膜30の全体の厚さに対する遮光層31の厚さの比率は、0.5以上であることが好ましく、0.5よりも大きいことがより好ましく、0.6以上であるとさらに好ましい。一方、遮光膜30の全体の厚さに対する遮光層31の厚さの比率は、0.9以下であると好ましい。
【0060】
単層構造の遮光膜30の波長405nmの光における屈折率nは、3.0以上である好ましい。一方、単層構造の遮光膜30の波長405nmの光における屈折率nは、4.5以下であると好ましい。また、単層構造の遮光膜30の波長405nmの光における消衰係数kは、1.5以上である好ましく、2.0以上であるとより好ましい。一方、単層構造の遮光膜30の波長405nmの光における消衰係数kは、3.5以下であると好ましく、3.0以下であるとより好ましい。
【0061】
遮光膜30が多層構造(表面反射防止層32および裏面反射防止層33のうち少なくともいずれかを有する構造)の場合において、遮光層31の波長405nmの光における屈折率nは、3.0以上である好ましい。一方、遮光層31の波長405nmの光における屈折率nは、4.5以下であると好ましい。また、遮光層31の波長405nmの光における消衰係数kは、1.5以上である好ましく、2.0以上であるとより好ましい。一方、遮光層31の波長405nmの光における消衰係数kは、3.5以下であると好ましく、3.0以下であるとより好ましい。
【0062】
表面反射防止層32および裏面反射防止層33の波長405nmの光における屈折率nは、2.0以上である好ましい。一方、表面反射防止層32および裏面反射防止層33の波長405nmの光における屈折率nは、2.8以下であると好ましい。また、表面反射防止層32および裏面反射防止層33の波長405nmの光における消衰係数kは、0.2以上である好ましい。一方、表面反射防止層32および裏面反射防止層33の波長405nmの光における消衰係数kは、0.8以下であると好ましい。
【0063】
遮光膜30は、スパッタリング法などの公知の成膜方法により形成することができる。
【0064】
<エッチングマスク膜40>
第1の実施形態の表示装置製造用フォトマスクブランク10は、遮光膜30の上に、遮光膜30に対してエッチング選択性が異なるエッチングマスク膜40を備えている。
【0065】
エッチングマスク膜40は、遮光膜30の上側(透明基板20とは反対側)に配置され、遮光膜30をエッチングするエッチング液に対してエッチング耐性を有する(遮光膜30とはエッチング選択性が異なる)材料からなる。また、エッチングマスク膜40は、露光光の透過を遮る機能を有することができる。さらにエッチングマスク膜40は、遮光膜30側より入射される光に対する遮光膜30の膜面反射率が350nm~436nmの波長域において15%以下となるように、膜面反射率を低減する機能を有してもよい。
【0066】
エッチングマスク膜40は、クロム(Cr)を含有するクロム系材料から構成されることが好ましい。エッチングマスク膜40は、クロムを含有し、実質的にケイ素を含まない材料から構成されることがより好ましい。実質的にケイ素を含まないとは、ケイ素の含有量が2原子%未満であることを意味する(ただし、遮光膜30とエッチングマスク膜40との界面の組成傾斜領域を除く)。クロム系材料として、より具体的には、クロム(Cr)、または、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つとを含有する材料が挙げられる。また、クロム系材料として、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つとを含み、さらに、フッ素(F)を含む材料が挙げられる。例えば、エッチングマスク膜40を構成する材料として、Cr、CrO、CrN、CrF、CrCO、CrCN、CrON、CrCON、およびCrCONFが挙げられる。
【0067】
エッチングマスク膜40は、スパッタリング法などの公知の成膜方法により形成することができる。
【0068】
エッチングマスク膜40は、機能に応じて組成が均一な単一の膜で構成することができる。また、エッチングマスク膜40は、組成が異なる複数の膜で構成することができる。また、エッチングマスク膜40は、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなることができる。
【0069】
なお、
図1に示す第1の実施形態によるフォトマスクブランク10は、遮光膜30上にエッチングマスク膜40を備えている。第1の実施形態のフォトマスクブランク10は、遮光膜30上にエッチングマスク膜40を備え、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を備える構造のフォトマスクブランク10を含む。
【0070】
<フォトマスクブランク10の製造方法>
次に、フォトマスクブランク10の製造方法について説明する。
図1に示す第1の実施形態によるフォトマスクブランク10は、遮光膜30の形成工程と、エッチングマスク膜40の形成工程によって製造される。
図2に示す第2の実施形態によるフォトマスクブランク10は、遮光膜30の形成工程によって製造される。
【0071】
以下、各工程を詳細に説明する。
【0072】
<<遮光膜形成工程>>
まず、透明基板20を準備する。透明基板20は、露光光に対して透明であれば、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、および低熱膨張ガラス(SiO2-TiO2ガラス等)などから選択されるガラス材料で構成されることができる。
【0073】
次に、透明基板20上に、スパッタリング法により、遮光膜30を形成する。
【0074】
遮光膜30の成膜は、所定のスパッタターゲットを用いて、所定のスパッタガス雰囲気で行うことができる。所定のスパッタターゲットとは、例えば、遮光膜30を構成する材料の主成分となるチタンとケイ素を含むチタンシリサイドターゲット、またはチタンとケイ素と窒素を含むチタンシリサイドターゲットである。所定のスパッタガス雰囲気とは、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、または、上記不活性ガスと、窒素ガスと、場合により、酸素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化窒素ガスおよび二酸化窒素ガスからなる群より選ばれるガスとを含む混合ガスからなるスパッタガス雰囲気である。遮光膜30の形成は、スパッタリングを行う際における成膜室内のガス圧力が、0.3Pa以上3.0Pa以下、好ましくは0.43Pa以上2.0Pa以下になる状態で行うことができる。
【0075】
遮光膜30の組成および厚さは、遮光膜30が上述の光学濃度となるように調整される。遮光膜30の組成は、スパッタターゲットを構成する元素の含有比率(例えば、チタンの含有率とケイ素の含有率との比)、スパッタガスの組成および流量などにより制御することができる。遮光膜30の厚さは、スパッタパワー、およびスパッタリング時間などにより制御することができる。また、遮光膜30は、インライン型スパッタリング装置を使用して形成することが好ましい。スパッタリング装置がインライン型スパッタリング装置の場合、基板の搬送速度によっても、遮光膜30の厚さを制御することができる。
【0076】
遮光膜30が、単一の膜(遮光層31)からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を適宜調整して1回だけ行う。遮光膜30が、遮光層31に加えて、表面反射防止層32および/または裏面反射防止層33を含む場合のように、遮光膜30が組成の異なる複数の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を適宜調整して複数回行う。スパッタターゲットを構成する元素の含有比率が異なるターゲットを使用して遮光膜30を成膜してもよい。成膜プロセスを複数回行う場合、スパッタターゲットに印加するスパッタパワーを成膜プロセス毎に変更してもよい。
【0077】
<<表面処理工程>>
遮光膜30は、チタン、ケイ素および窒素以外に酸素を含有するチタンシリサイド材料(チタンシリサイド酸化窒化物)からなることができる。ただし、酸素の含有量は、0原子%超5原子%以下である。このように遮光膜30が酸素を含む場合、遮光膜30の表面について、チタンの酸化物の存在によるエッチング液による浸み込みを抑制するため、遮光膜30の表面酸化の状態を調整する表面処理工程を行うようにしてもよい。なお、遮光膜30が、チタンと、ケイ素と、窒素を含有するチタンシリサイド窒化物からなる場合、上述の酸素を含有するチタンシリサイド材料と比べて、チタンの酸化物の含有率が小さい。そのため、遮光膜30の材料が、チタンシリサイド窒化物の場合は、上記表面処理工程を行うようにしてもよいし、行わなくてもよい。
【0078】
遮光膜30(遮光層31または表面反射防止層32)の表面酸化の状態を調整する表面処理工程としては、酸性の水溶液で表面処理する方法、アルカリ性の水溶液で表面処理する方法、アッシング等のドライ処理で表面処理する方法などが挙げられる。
【0079】
このようにして、第2の実施形態のフォトマスクブランク10を得ることができる。
【0080】
<<エッチングマスク膜形成工程>>
第1の実施形態のフォトマスクブランク10は、さらに、エッチングマスク膜40を有する。以下のエッチングマスク膜形成工程をさらに行う。なお、エッチングマスク膜40は、クロムを含有し、実質的にケイ素を含まない材料から構成されることが好ましい。
【0081】
遮光膜形成工程の後、遮光膜30(遮光層31または表面反射防止層32)の表面の表面酸化の状態を調整する表面処理を必要に応じて行い、その後、スパッタリング法により、遮光膜30上にエッチングマスク膜40を形成する。エッチングマスク膜40は、インライン型スパッタリング装置を使用して形成することが好ましい。スパッタリング装置がインライン型スパッタリング装置の場合、透明基板20の搬送速度によっても、エッチングマスク膜40の厚さを制御することができる。
【0082】
エッチングマスク膜40の成膜は、クロムまたはクロム化合物(酸化クロム、窒化クロム、炭化クロム、酸化窒化クロム、窒化炭化クロム、および酸化窒化炭化クロム等)を含むスパッタターゲットを使用して、不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、または不活性ガスと、活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行うことができる。不活性ガスは、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことができる。活性ガスは、酸素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、二酸化炭素ガス、炭化水素系ガスおよびフッ素系ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことができる。炭化水素系ガスとしては、例えば、メタンガス、ブタンガス、プロパンガスおよびスチレンガス等が挙げられる。
【0083】
エッチングマスク膜40が、組成の均一な単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を変えずに1回だけ行う。エッチングマスク膜40が、組成の異なる複数の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、成膜プロセス毎にスパッタガスの組成および流量を変えて複数回行う。エッチングマスク膜40が、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を成膜プロセスの経過時間とともに変化させながら1回だけ行う。
【0084】
このようにして、エッチングマスク膜40を有する第1の実施形態のフォトマスクブランク10を得ることができる。
【0085】
なお、
図1に示す第1の実施形態によるフォトマスクブランク10は、遮光膜30上にエッチングマスク膜40を備えているため、フォトマスクブランク10を製造する際に、エッチングマスク膜形成工程を行う。また、遮光膜30上にエッチングマスク膜40を備え、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を備えるフォトマスクブランク10を製造する際は、エッチングマスク膜形成工程後に、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を形成する。また、
図2に示す第2の実施形態によるフォトマスクブランク10において、遮光膜30上にレジスト膜を備えるフォトマスクブランク10を製造する際は、遮光膜形成工程後に、レジスト膜を形成する。
【0086】
<フォトマスク100の製造方法>
次に、フォトマスク100の製造方法について説明する。
【0087】
<第1の実施形態によるフォトマスク100の製造方法>
図4Aから
図4Dは、
図1に示した第1の実施形態によるフォトマスクブランク10を用いてフォトマスク100を製造する方法を説明するための模式図である。第1の実施形態によるフォトマスク100の製造方法は、フォトマスクブランク10を準備する工程と、エッチングマスク膜40の上にレジスト膜を形成し、レジスト膜から形成したレジスト膜パターンをマスクにしてエッチングマスク膜40をウェットエッチングして、遮光膜30の上にエッチングマスク膜パターン40aを形成する工程と、エッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、遮光膜30をウェットエッチングして、透明基板20上に転写用パターン30aを形成する工程と、を有する。
【0088】
なお、本明細書における転写用パターンとは、透明基板20上に形成された少なくとも1つの光学膜をパターニングすることによって、得られるものである。上記の光学膜は、遮光膜30、または、遮光膜30およびエッチングマスク膜40とすることができ、その他の膜(位相シフト膜、半透光膜、導電性の膜など)がさらに含まれてもよい。すなわち、転写用パターンは、パターニングされた遮光膜、またはパターニングされた遮光膜およびエッチングマスク膜を含むことができ、パターニングされたその他の膜がさらに含まれてもよい。
【0089】
図4Aから
図4Dを参照し、第1の実施形態のフォトマスク100の製造方法を、以下、具体的に説明する。
【0090】
まず、
図1に示したフォトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上にレジスト膜を形成する。次に、レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターン50を形成する(
図4A参照、レジスト膜パターン50の形成工程)。次に、該レジスト膜パターン50をマスクにしてエッチングマスク膜40をウェットエッチングして、遮光膜30上にエッチングマスク膜パターン40aを形成する(
図4B参照、エッチングマスク膜パターン40aの形成工程)。次に、上記エッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、遮光膜30をウェットエッチングして透明基板20上に遮光膜パターン30aを形成する(
図4C参照、遮光膜パターン30aの形成工程)。その後、エッチングマスク膜パターン40aを剥離する工程をさらに含むことができる(
図4D参照)。
【0091】
さらに具体的には、レジスト膜パターン50の形成工程では、まず、フォトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。レジスト膜は、例えば、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
【0092】
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、遮光膜30に形成するパターンである。レジスト膜に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンおよびホールパターンが挙げられる。
【0093】
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、
図4Aに示されるように、エッチングマスク膜40上にレジスト膜パターン50を形成する。
【0094】
<<<エッチングマスク膜パターン40aの形成工程>>>
エッチングマスク膜パターン40aの形成工程では、まず、レジスト膜パターン50をマスクにしてエッチングマスク膜40をエッチングして、エッチングマスク膜パターン40aを形成する。エッチングマスク膜40は、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成することができる。エッチングマスク膜40をエッチングするエッチング液は、エッチングマスク膜40を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。具体的には、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
【0095】
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、
図4Bに示されるように、レジスト膜パターン50を剥離する。場合によっては、レジスト膜パターン50を剥離せずに、次の遮光膜パターン30aの形成工程を行ってもよい。
【0096】
<<<遮光膜パターン30aの形成工程>>>
遮光膜パターン30aの形成工程では、エッチングマスク膜パターン40aをマスクにして遮光膜30をウェットエッチングして、
図4Cに示されるように、遮光膜パターン30aを形成する。遮光膜パターン30aとして、ラインアンドスペースパターンおよびホールパターンが挙げられる。遮光膜30をエッチングするエッチング液は、遮光膜30を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、エッチング液A(フッ化水素アンモニウムと過酸化水素とを含むエッチング液など)やエッチング液B(フッ化アンモニウムとリン酸と過酸化水素とを含むエッチング液など)が挙げられる。
【0097】
遮光膜パターン30aの断面形状を良好にするために、ウェットエッチングは、遮光膜パターン30aにおいて透明基板20が露出するまでの時間(ジャストエッチング時間)よりも長い時間(オーバーエッチング時間)で行うことが好ましい。オーバーエッチング時間としては、透明基板20への影響等を考慮すると、ジャストエッチング時間に、そのジャストエッチング時間の20%の時間を加えた時間内とすることが好ましく、ジャストエッチング時間の10%の時間を加えた時間内とすることがより好ましい。
【0098】
その後、必要に応じて、エッチングマスク膜パターン40aを剥離して、フォトマスク100が得られる。なお、レジスト膜パターン50を剥離せずに遮光膜パターン30aの形成工程を行った場合には、エッチングマスク膜パターン40aを剥離する前に、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、レジスト膜パターン50を剥離する。
【0099】
このようにして、フォトマスク100を得ることができる。すなわち、第1の実施形態にかかるフォトマスク100が有する転写用パターンは、遮光膜パターン30aを含むことができ、さらにエッチングマスク膜パターン40aを含んでもよい。なお、エッチングマスク膜40が、クロム(Cr)を含むクロム系材料からなる場合には、耐静電破壊特性を向上させる観点から、エッチングマスク膜40を剥離することが好ましい。
【0100】
第1の実施形態のフォトマスク100の製造方法によれば、
図1に示すフォトマスクブランク10を用いるため、エッジ断面形状が良好な遮光膜パターン30aを形成することができる。
【0101】
また、遮光膜パターン30aの形成工程におけるローディング効果を低減することができる。したがって、高精細な遮光膜パターン30aを含む転写用パターンを精度よく転写可能なフォトマスク100を製造することができる。このように製造されたフォトマスク100は、ラインアンドスペースパターンおよび/またはコンタクトホールの微細化に対応することができる。
【0102】
さらに、後述するように、遮光膜パターン30aのシート抵抗値を40Ω/sq以上にしたことにより、耐静電破壊特性を高めることができる。
【0103】
<<第2の実施形態によるフォトマスク100の製造方法>>
図5Aから
図5Cは、
図2に示したフォトマスクブランク10を用いてフォトマスク100を製造する方法を説明するための模式図である。第2の実施形態によるフォトマスク100の製造方法は、フォトマスクブランク10を準備する工程と、遮光膜30の上にレジスト膜を形成し、レジスト膜から形成したレジスト膜パターンをマスクにして遮光膜30をウェットエッチングして、透明基板20上に転写用パターンを形成する工程とを有する。
【0104】
図5Aから
図5Cを参照し、第2の実施形態によるフォトマスク100の製造方法を、以下、具体的に説明する。
【0105】
まず、
図2に示したフォトマスクブランク10の上にレジスト膜を形成する。次に、レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターン50を形成する(
図5A、レジスト膜パターン50の形成工程)。次に、該レジスト膜パターン50をマスクにして遮光膜30をウェットエッチングして、透明基板20上に遮光膜パターン30aを形成する(
図5Bおよび
図5C、遮光膜パターン30aの形成工程)。
【0106】
さらに具体的には、レジスト膜パターンの形成工程では、まず、
図2に示す第2の実施形態のフォトマスクブランク10の遮光膜30上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、上記で説明したのと同様である。なお、必要に応じてレジスト膜を形成する前に、遮光膜30(遮光層31または表面反射防止層32)とレジスト膜との密着性を良好にするため、遮光膜30に表面改質処理を行うことができる。上述と同様に、レジスト膜を形成した後、例えば350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、
図5Aに示されるように、遮光膜30上にレジスト膜パターン50を形成する。
【0107】
<<<遮光膜パターン30aの形成工程>>>
遮光膜パターン30aの形成工程では、レジスト膜パターンをマスクにして遮光膜30をエッチングして、
図5Bに示されるように、遮光膜パターン30aを形成する。遮光膜30をエッチングするエッチング液およびオーバーエッチング時間は、上述の
図4Cに示した実施形態での説明と同様である。
【0108】
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、レジスト膜パターン50を剥離する(
図5C)。
【0109】
このようにして、フォトマスク100を得ることができる。なお、第2の実施形態にかかるフォトマスク100が有する転写用パターンは、遮光膜パターン30aのみで構成されているが、他の膜パターンをさらに含むこともできる。他の膜としては、例えば、位相シフト膜、半透光膜、導電性の膜などが挙げられる。
【0110】
この第2の実施形態のフォトマスク100の製造方法によれば、
図2に示すフォトマスクブランク10を用いるため、エッジ断面形状が良好な遮光膜パターン30aを形成することができる。
【0111】
また、遮光膜パターン30aの形成工程におけるローディング効果を低減させることができる。したがって、高精細な遮光膜パターン30aを含む転写用パターンを精度よく転写可能なフォトマスク100を製造することができる。このように製造されたフォトマスク100は、ラインアンドスペースパターンおよび/またはコンタクトホールの微細化に対応することができる。
【0112】
さらに、後述するように、遮光膜パターン30aのシート抵抗値を40Ω/sq以上にしたことにより、耐静電破壊特性を高めることができる。
【0113】
<表示装置の製造方法>
第1、第2の実施形態の表示装置の製造方法について説明する。第1、第2の実施形態の表示装置の製造方法は、上述の実施形態のフォトマスク100を露光装置のマスクステージに載置し、フォトマスク100上に形成された転写用パターンを、表示装置用の基板上に形成されたレジスト膜に露光転写する露光工程を有する。
【0114】
具体的には、第1、第2の実施形態の表示装置の製造方法は、上述したフォトマスクブランク10を用いて製造されたフォトマスク100を露光装置のマスクステージに載置する工程(マスク載置工程)と、表示装置用の基板上のレジスト膜に転写用パターンを露光転写する工程(露光工程)とを含む。以下、各工程を詳細に説明する。
【0115】
<<載置工程>>
載置工程では、第1、第2の実施形態のフォトマスク100を露光装置のマスクステージに載置する。ここで、フォトマスク100は、露光装置の投影光学系を介して表示装置用の基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
【0116】
<<パターン転写工程>>
パターン転写工程では、フォトマスク100に露光光を照射して、表示装置用の基板上に形成されたレジスト膜に遮光膜パターン30aを含む転写用パターンを転写する。露光光は、313nm~436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光、または313nm~436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光、または313nm~436nmの波長域を有する光源から発した単色光である。例えば、露光光は、i線、h線およびg線のうち少なくとも1つを含む複合光、またはi線の単色光である。露光光として複合光を用いることにより、露光光強度を高くしてスループットを向上することができる。そのため、表示装置の製造コストを下げることができる。
【0117】
第1、第2の実施形態の表示装置の製造方法によれば、高解像度、微細なラインアンドスペースパターンおよび/またはコンタクトホールを有する、高精細の表示装置を製造することができる。
【実施例0118】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
実施例1.
A.フォトマスクブランクおよびその製造方法
実施例1のフォトブランクを製造するため、まず、透明基板20として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
【0120】
その後、合成石英ガラス基板を、主表面を下側に向けてトレイ(図示せず)に搭載し、インライン型スパッタリング装置のチャンバー内に搬入した。
【0121】
透明基板20の主表面上に遮光膜30としての遮光層31を形成するため、まず、第1チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスを導入した。そして、チタンとケイ素を含む第1スパッタターゲット(チタン:ケイ素=1:3)に所定のスパッタパワーを印加して、スパッタリングすることにより、透明基板20の主表面上にチタンとケイ素からなるチタンシリサイドの遮光膜30(遮光層31)を成膜した。
【0122】
そして、遮光層31が成膜された透明基板20を第2チャンバー内に搬入し、第2チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N2)ガスとで構成される混合ガスを導入した。そして、クロムからなる第2スパッタターゲットに所定のスパッタパワーを印加して、反応性スパッタリングすることにより、遮光層31上にクロムと窒素を含有するクロムの窒化物のエッチングマスク膜40を成膜した。
【0123】
このようにして、透明基板20上に、遮光層31のみからなる遮光膜30とエッチングマスク膜40が形成されたフォトマスクブランク10を得た。
【0124】
得られたフォトマスクブランク10における遮光膜30の諸特性について以下のように測定した。
[光学濃度(OD)]
遮光層31のみからなる遮光膜30の光学濃度(OD)を分光光度計で測定した結果、3.6であった(波長405nm)。遮光膜30の光学濃度の測定には、同一のトレイにセットして作製された、合成石英ガラス基板の主表面上に遮光層31のみからなる遮光膜30が成膜された遮光膜付き基板(ダミー基板)を用いた。遮光膜30の光学濃度は、エッチングマスク膜40を形成する前に遮光膜付き基板(ダミー基板)をチャンバーから取り出し、測定した。
【0125】
[シート抵抗]
また、上記ダミー基板を用いて、4端子法によって、実施例1の遮光膜30のシート抵抗を測定したところ、62.9Ω/sqであった。
【0126】
さらに、遮光膜30に対してX線光電子分光法(XPS)による深さ方向の組成分析を行った。実際の測定には、ダミー基板を用いた。その結果、遮光膜30は、透明基板20と遮光膜30との界面の組成傾斜領域を除いて、深さ方向に向かって、各構成元素の含有率はほぼ一定だった。具体的な膜組成(原子%)は、チタンが38%、ケイ素が55%、窒素が5原子%、酸素が2%であった。
【0127】
B.フォトマスクおよびその製造方法
上述のようにして製造されたフォトマスクブランク10を用いてフォトマスク100を製造するため、まず、フォトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジストを塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、フォトレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、エッチングマスク膜上に、ラインアンドスペースパターンを含むレジスト膜パターン50を形成した。
【0128】
その後、レジスト膜パターン50をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むCrエッチング液によりエッチングマスク膜40をウェットエッチングして、エッチングマスク膜パターン40aを形成した。そして、レジスト膜パターン50を剥離した。次に、エッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したチタンシリサイドエッチング液により遮光膜30をウェットエッチングして、遮光膜パターン30aを形成した。さらに、エッチングマスク膜40を上記Crエッチング液で剥離した。
【0129】
得られたフォトマスク100の製造時におけるローディング効果について、試験を行った。まず、上述の方法により、パターンピッチが4μmの複数のラインアンドスペースパターン、該複数のラインアンドスペースパターンの外周を囲む透光領域(透明基板が露出している領域)および該透光領域の外周を囲む遮光領域を含むフォトマスク100を用意した(
図6参照)。
図6において、白色領域が遮光膜パターン(ラインパターンおよび遮光領域)を示しており、灰色領域が、スペースパターンおよび透光領域を示している。なお、ローディング効果に関する試験においては、遮光膜パターン30a(ラインパターンおよび遮光領域)上には、エッチングマスク膜が存在する状態とした。他の実施例および比較例も同様である。なお、遮光膜30のエッチングの際には、ローディング効果の有無および度合いの差を明確にするため、ジャストエッチング時間に対して200%のオーバーエッチングタイムで行った。
【0130】
本実施例1では、
図6に示すように、パターンが密であるPoint1における遮光膜30のサイドエッチング量P1(遮光膜30からなるラインパターンのエッジの後退量)と、パターンが疎であるPoint3における遮光膜30のサイドエッチング量P3(遮光膜30からなる遮光帯の外枠側のエッジの後退量)との比P1/P3を算出することにより、ローディング効果の度合いを確認した。サイドエッチング量(エッジの後退量)とは、エッチングマスク膜パターン40aのエッジ位置から遮光膜30がどれだけサイドエッチングされたかを意味する。具体的には、フォトマスク100の断面図において、エッチングマスク膜パターン40aのエッジから遮光膜30のエッジまでの距離(寸法)を算出することにより、サイドエッチング量を求めた。
【0131】
P1/P3は、Point3でのエッチングレートに対するPoint1でのエッチングレートの比を意味する。P1/P3が1に近いほど、Point1とPoint3との間でエッチングレートの差が小さいことを意味し、ローディング効果を低減できていると言える。Point1におけるサイドエッチング量は、Point3におけるサイドエッチング量に対して±20%以内であることが望ましい。よって、エッチングレートの比P1/P3が0.8以上1.2以下の範囲内であれば、ローディング効果を良好に低減できており、P1/P3が0.8未満または1.2より大きければ、ローディング効果を良好に低減できていないものとして判断した。
【0132】
実施例1のフォトマスクブランク10を用いたフォトマスク100においては、P1/P3が0.93であった。すなわち、実施例1のフォトマスクブランク10はローディング効果を良好に低減できていることが明らかとなった。また、得られたフォトマスクについて、静電破壊試験を行ったところ、良好な結果が得られた。
【0133】
実施例2.
A.フォトマスクブランクおよびその製造方法
実施例2のフォトマスクブランクを製造するため、実施例1と同様に、透明基板として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
実施例1と同じ方法により、合成石英ガラス基板を、インライン型のスパッタリング装置のチャンバーに搬入した。そして、第1チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスおよび窒素(N2)ガスで構成される混合ガスを導入した。そして、チタンとケイ素を含む第1スパッタターゲット(チタン:ケイ素=1:3)に所定のスパッタパワーを印加して、反応性スパッタリングすることにより、透明基板20の主表面上にチタンとケイ素と窒素とを含有するチタンシリサイドの窒化物の裏面反射防止層33を成膜した。
【0134】
次に、裏面反射防止層33が成膜された透明基板20を第2チャンバー内に搬入した。第2チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスを導入した。そして、チタンとケイ素を含む第2スパッタターゲット(チタン:ケイ素=1:3)に所定のスパッタパワーを印加して、スパッタリングすることにより、裏面反射防止膜33上にチタンとケイ素からなるチタンシリサイドの遮光層31を成膜した。
【0135】
そして、裏面反射防止層33と遮光層31が成膜された透明基板20を第3チャンバー内に搬入した。第3チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスおよび窒素(N2)ガスで構成される混合ガスを導入した。そして、チタンとケイ素を含む第3スパッタターゲット(チタン:ケイ素=1:3)に所定スパッタパワーを印加して、反応性スパッタリングにより、遮光層31上にモリブデンとケイ素と窒素とを含有するチタンシリサイドの窒化物の表面反射防止層32を成膜した。
【0136】
そして、表面反射防止層32が成膜された透明基板20を第4チャンバー内に搬入し、第4チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスと、窒素(N2)ガスで構成される混合ガスを導入した。そして、クロムからなる第4スパッタターゲットに所定のスパッタパワーを印加して、反応性スパッタリングすることにより、表面反射防止層32上にクロムと窒素を含有するクロムの窒化物のエッチングマスク膜40を成膜した。
【0137】
このようにして、透明基板20上に、裏面反射防止層33と遮光層31と表面反射防止層32との積層構造を有する遮光膜30およびエッチングマスク膜40が形成されたフォトマスクブランク10を得た。
【0138】
得られたフォトマスクブランク10における、裏面反射防止層33、遮光層31、および表面反射防止層32の積層構造からなる遮光膜30の光学濃度を分光光度計で測定した結果、4.9であった(波長405nm)。また、実施例2の遮光膜30のシート抵抗を、実施例1と同様の方法で測定したところ、42.8Ω/sqであった。なお、実施例1と同様に、遮光膜30の光学濃度およびシート抵抗の測定には、同一のトレイにセットして作製された、合成石英ガラス基板の主表面上に遮光膜30が成膜された遮光膜付き基板(ダミー基板)を用いた。
【0139】
さらに、遮光膜30に対してX線光電子分光法(XPS)による深さ方向の組成分析を行った。実際の測定には、ダミー基板を用いた。その結果、遮光膜30は、透明基板20と裏面反射防止層33との界面の組成傾斜領域、裏面反射防止層33と遮光層31との界面の組成傾斜領域、および遮光層31と表面反射防止層32との界面の組成傾斜領域を除いて、深さ方向に向かって、それぞれの層における各構成元素の含有率はほぼ一定だった。具体的な膜組成は、遮光層31においては、チタンが37原子%、ケイ素が60原子%、窒素が3原子%であった。表面反射防止層32においては、チタンが10原子%、ケイ素が37原子%、窒素が53原子%であった。裏面反射防止層においては、チタンが10原子%、ケイ素が37原子%、窒素が53原子%であった。
【0140】
さらに、遮光膜30の表面反射率は3.3%(波長405nm)であり、裏面反射率は、4%(波長405nm)であった。すなわち、実施例2のフォトマスクブランク10は、パターン描画時やパターン転写時の精度を向上させることができるものであった。
【0141】
B.フォトマスクおよびその製造方法
上述のようにして製造されたフォトマスクブランク10を用いてフォトマスク100を製造するため、まず、フォトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジスト膜を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、フォトレジストを形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、エッチングマスク膜上に、ラインアンドスペースパターンを含むレジスト膜パターン50を形成した。
【0142】
その後、レジスト膜パターン50をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むCrエッチング液によりエッチングマスク膜40をウェットエッチングして、エッチングマスク膜パターン40aを形成した。そして、レジスト膜パターン50を剥離した。次に、エッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したチタンシリサイドエッチング液により遮光膜30をウェットエッチングして、遮光膜パターン30aを形成した。さらに、エッチングマスク膜パターン40aを上記Crエッチング液で剥離した。
【0143】
得られたフォトマスク100の製造時におけるローディング効果について、実施例1と同様の試験を行ったところ、実施例2のフォトマスクブランク10を用いたフォトマスク100においても、実施例1のフォトマスクブランク10と同等の結果が得られた。また、得られたフォトマスクの耐静電破壊特性についても、実施例1と同等に良好な結果が得られた。したがって、実施例2のフォトマスク100も、ローディング効果を良好に低減できるとともに、高い耐静電破壊特性を有すると言える。
【0144】
比較例1.
A.フォトマスクブランクおよびその製造方法
比較例1のフォトマスクブランクを製造するため、実施例1と同様に、透明基板として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備し、この合成石英ガラス基板を、インライン型のスパッタリング装置のチャンバーに搬入した。
【0145】
スパッタリングターゲットとしては、Cr(クロム)ターゲットを用いた。そして、スパッタリングガスとして、ArガスとN2ガスとの混合ガスをチャンバー内に導入して、CrN(窒化クロム)層を成膜し、次いで、ArガスとCH4ガスとをスパッタリングガスとしてCrC層を成膜し、次いで、ArガスとNOガスとをスパッタリングガスとしてCrON層を25nm、連続成膜した。このようにして、透明基板20上に、遮光膜30が形成されたフォトマスクブランク10を得た。
【0146】
得られたフォトマスクブランク10における遮光膜30の光学濃度を分光光度計で測定した結果、3.0であった(波長405nm)。また、実施例2の遮光膜30のシート抵抗を、実施例1と同様の方法で測定したところ、23Ω/sqであった。なお、実施例1と同様に、遮光膜30の光学濃度およびシート抵抗の測定には、同一のトレイにセットして作製された、合成石英ガラス基板の主表面上に遮光膜30が成膜された遮光膜付き基板(ダミー基板)を用いた。
【0147】
B.フォトマスクおよびその製造方法
上述のようにして製造されたフォトマスクブランク10を用いてフォトマスク100を製造するため、まず、フォトマスクブランク10の遮光膜30上に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジストを塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、フォトレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、遮光膜上に、ラインアンドスペースパターンを含むレジスト膜パターン50を形成した。
【0148】
その後、レジスト膜パターン50をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むCrエッチング液により遮光膜30をウェットエッチングして、遮光膜パターン30aを形成した。さらに、レジスト膜パターン50を剥離した。
【0149】
得られたフォトマスク100の製造時におけるローディング効果について、実施例1と同様の試験を行った。その結果、P1/P3が1.3であった。すなわち、比較例1のフォトマスクブランク10を用いたフォトマスク100においては、ローディング効果を低減できていなかった。したがって、比較例1のフォトマスクブランク10は、微細なパターンを精度よく形成するには十分ではないと言える。
【0150】
また、得られたフォトマスクの耐静電破壊特性についても調べたところ、遮光膜パターンの破壊が見られた。すなわち、比較例1のフォトマスクブランク10およびフォトマスク10は、高い耐静電破壊特性を有するとは言えなかった。
【0151】
比較例2.
A.フォトマスクブランクおよびその製造方法
比較例2のフォトマスクブランクを製造するため、実施例1と同様に、透明基板として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。そして、この合成石英ガラス基板(透明基板20)を、インライン型のスパッタリング装置のチャンバーに搬入した。この合成石英ガラス基板の主表面上に遮光膜30を形成するため、まず、第1チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスとヘリウム(He)ガスとで構成される混合ガスを導入した。そして、モリブデンとケイ素を含む第1スパッタターゲット(モリブデン:ケイ素=1:4)に所定のスパッタパワーを印加して、スパッタリングすることにより、透明基板20の主表面上にモリブデンとケイ素からなるモリブデンシリサイドの遮光層31を成膜した。
【0152】
次に、遮光層31が成膜された透明基板20を第2チャンバー内に搬入し、第2チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスと、一酸化窒素(NO)ガスおよびヘリウム(He)ガスで構成される混合ガスを導入した。そして、モリブデンとケイ素を含む第2スパッタターゲット(モリブデン:ケイ素=1:4)に所定のスパッタパワーを印加して、反応性スパッタリングすることにより、遮光層31上にモリブデンとケイ素と酸素と窒素を含有するモリブデンシリサイドの酸化窒化物の表面反射防止層32を成膜した。
【0153】
そして、遮光層31、表面反射防止層32が成膜された透明基板20を第3チャンバー内に搬入し、第3チャンバー内に、アルゴン(Ar)ガスと、窒素(N2)ガスで構成される混合ガスを導入した。そして、クロムからなる第3スパッタターゲットに所定のスパッタパワーを印加して、反応性スパッタリングすることにより、表面反射防止層32上にクロムと窒素を含有するクロムの窒化物のエッチングマスク膜40を成膜した。
【0154】
このようにして、透明基板上に、遮光膜30およびエッチングマスク膜40が形成されたフォトマスクブランクを得た。
【0155】
実施例1と同様に、ダミー基板を用いて、得られたフォトマスクブランクにおける遮光膜の光学濃度を分光光度計で測定した結果、4.0であった(波長405nm)。また、上記ダミー基板を用いて、比較例2の遮光膜30のシート抵抗を測定したところ、80Ω/sqであった。
【0156】
B.フォトマスクおよびその製造方法
上述のようにして製造されたフォトマスクブランクを用いて、フォトマスクを製造するため、まず、遮光膜の表面(表面反射防止層の表面)に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジストを塗布した。その後、加熱・冷却工程を経て、フォトレジスト膜を形成した。その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、エッチングマスク膜上に、ラインアンドスペースパターンを含むレジスト膜パターン50を形成した。
【0157】
その後、レジスト膜パターン50をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むCrエッチング液によりエッチングマスク膜40をウェットエッチングして、エッチングマスク膜パターン40aを形成した。そして、レジスト膜パターン50を剥離した。次に、エッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング液により遮光膜30をウェットエッチングして、遮光膜パターン30aを形成した。さらに、エッチングマスク膜パターン40aを上記Crエッチング液で剥離した。
【0158】
得られたフォトマスク100の製造時におけるローディング効果について、実施例1と同様の試験を行った。その結果、比較例2のフォトマスクブランク10を用いたフォトマスク100においては、P1/P3が0.25と1.0から大きく乖離した値となり、ローディング効果を低減できていなかった。
【0159】
また、得られたフォトマスクの耐静電破壊特性についても調べたところ、比較例2は、シート抵抗が40Ω/sq以上であったため、実施例1と同等に良好な耐静電破壊耐性を有していた。しかしながら、上述のとおり、比較例2では、P1/P3が1よりもはるかに小さな値となっており、ローディング効果を低減できていないものであった。すなわち、比較例2のフォトマスクブランク10は、微細なパターンを精度よく形成するには十分ではないと言える。