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特開2023-51769ミスト装置及びそれを備えるミストシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051769
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ミスト装置及びそれを備えるミストシステム
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/10 20060101AFI20230404BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20230404BHJP
   A47K 4/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A61H33/10 A
A61H33/10 G
A47K3/00 Z
A47K4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138319
(22)【出願日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021160615
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】大江 俊春
(72)【発明者】
【氏名】原島 立成
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 元太
(72)【発明者】
【氏名】碇 洋平
(72)【発明者】
【氏名】牧 愛子
【テーマコード(参考)】
2D005
2D132
4C094
【Fターム(参考)】
2D005FA06
2D132GA00
4C094AA01
4C094BA24
4C094BB18
4C094DD09
4C094EE02
4C094FF02
(57)【要約】
【課題】ミスト除去装置により視界を向上させることができるミスト装置を提供する。
【解決手段】本発明のミスト装置1は、水からミストを生成するミスト生成部8と、上方が開放された滞留空間を形成する滞留部内に、ミスト生成部により生成されたミストを供給するミスト供給部10と、を備え、ミスト供給部から供給されたミストが滞留空間4内に滞留されるように構成され、ミスト装置は、さらに、滞留空間外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去するミスト除去装置80を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽、浴室、又はシャワールームに用いられるミスト装置であって、
水からミストを生成するミスト生成部と、
上方が開放された滞留空間を形成する滞留部内に、上記ミスト生成部により生成されたミストを供給するミスト供給部と、を備え、
上記ミスト供給部から供給されたミストが上記滞留空間内に滞留されるように構成され、
上記ミスト装置は、さらに上記滞留空間外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去するミスト除去装置を備える、ミスト装置。
【請求項2】
上記ミスト装置の上記ミスト除去装置は、上記滞留部の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風を送出する温風送風機である、請求項1に記載のミスト装置。
【請求項3】
上記温風送風機は、浴室空調機である、請求項2に記載のミスト装置。
【請求項4】
上記ミスト装置は、さらに、上記ミスト除去装置のミスト除去動作を実行させるための使用者の手動操作入力を受け付ける除去操作入力部を備える、請求項3に記載のミスト装置。
【請求項5】
上記ミスト装置の上記除去操作入力部は、上記浴槽内にいる使用者、上記浴室内の洗い場にいる使用者、又は上記シャワールーム内にいる使用者が、上記浴槽、上記洗い場、又は上記シャワールームから出ることなく操作入力できる位置に設けられている、請求項4に記載のミスト装置。
【請求項6】
上記ミスト装置は、さらに、上記ミスト生成部及び上記ミスト除去装置を制御する制御部を備え、
上記制御部は、
上記ミスト生成部によりミストを生成させるミスト生成モードと、
上記ミスト除去装置により滞留空間外に浮遊したミストを除去させるミスト除去モードと、を備え、
上記ミスト除去モードは、上記ミスト生成モードの実行中に実行可能とされる、請求項2に記載のミスト装置。
【請求項7】
上記ミスト除去装置は、温風を上記滞留部の上記滞留空間外に向けて送出するように構成される、請求項2に記載のミスト装置。
【請求項8】
上記ミスト装置が上記浴槽に用いられる場合において、上記ミスト除去装置は、温風を上記浴槽外に向けて送出するように構成される、請求項7に記載のミスト装置。
【請求項9】
さらに、上記ミスト生成部及び上記ミスト除去装置を制御する制御部を備え、この制御部は、所定の条件が成立すると、自動的に上記ミスト除去装置を作動させる、請求項1に記載のミスト装置。
【請求項10】
さらに、浴槽、浴室、又はシャワールーム内の温度を検出する温度センサを有し、上記制御部は、上記温度センサにより検出された温度が所定温度以下になると、上記ミスト除去装置を自動的に作動させる、請求項9に記載のミスト装置。
【請求項11】
上記ミスト除去装置は、上記滞留部の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風を送出する温風送風機であり、上記制御部は、上記温風送風機が作動していない状態で、上記ミスト生成部により所定時間以上連続してミストが生成されると、上記ミスト除去装置を自動的に作動させる、請求項9に記載のミスト装置。
【請求項12】
浴槽、浴室、又はシャワールームに用いられるミストシステムであって、
請求項1乃至11の何れか1項に記載の上記ミスト装置と、
上記ミスト装置の上記ミスト供給部から供給されるミストを受け入れる上記滞留空間を形成する上記滞留部と、を備えるミストシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト装置に係り、特に、浴槽、浴室、又はシャワールームに用いられるミスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、サウナ浴をするための浴槽サウナ装置が知られており、このような浴槽サウナ装置は、ミストを用いたサウナ空間を形成するために浴槽本体の上部に設けられる浴槽蓋を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-018130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような浴槽サウナ装置においては、サウナ空間を形成するために浴槽蓋が必要であることから、使用者の位置が拘束されてしまい快適性が損なわれると共に、使用者の利便性に欠けるという問題があった。
【0005】
これに対し、本発明の発明者らは、浴槽蓋を省略した状態で浴槽内にミストを滞留させることを研究した。浴槽蓋を省略した状態で浴槽内にミストを滞留させようとする場合、使用者の動作等によりミストが舞い上がって空中に浮遊し、視界不良となる新たな問題が生じた。また、いったんミストが浮遊してしまうと、使用者の意図により簡単に除去しにくいという新たな課題も生じた。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ミスト除去装置により視界を向上させることができるミスト装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態は、浴槽、浴室、又はシャワールームに用いられるミスト装置であって、水からミストを生成するミスト生成部と、上方が開放された滞留空間を形成する滞留部内に、上記ミスト生成部により生成されたミストを供給するミスト供給部と、を備え、上記ミスト供給部から供給されたミストが上記滞留空間内に滞留されるように構成され、上記ミスト装置は、さらに上記滞留空間外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去するミスト除去装置を備えることを特徴としている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ミスト装置は、さらに上記滞留空間外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去するミスト除去装置を備える。これにより、滞留空間外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去することができ、滞留空間外に浮遊することとなったミストにより浴室又はシャワールーム内の視界が低減する場合に、ミスト除去装置により視界を向上させることができる。
【0008】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト装置の上記ミスト除去装置は、上記滞留部の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風を送出する温風送風機である。
このように構成された本発明の一実施形態においては、温風送風機は滞留部の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風を送出するので、比較的簡易な装置構成により、滞留空間外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去することができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記温風送風機は、浴室空調機である。
このように構成された本発明の一実施形態においては、温風送風機を浴室空調機により比較的簡単に構成できる。浴室に既に浴室空調機が設けられている場合には新たに装置を追加することなく既存の装置構成により、滞留空間外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去することができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト装置は、さらに、上記ミスト除去装置のミスト除去動作を実行させるための使用者の手動操作入力を受け付ける除去操作入力部を備える。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置は、さらに、上記ミスト除去装置のミスト除去動作を実行させるための使用者の手動操作入力を受け付けるミスト除去操作入力部を備える。これにより、使用者が、任意のタイミングでミスト除去装置のミスト除去動作を実行できる。例えば、滞留空間外に浮遊したミストをしばらくそのままにして、滞留空間外に浮遊したミストによる幻想的な視覚効果を感じる、又は滞留空間外に浮遊したミストによる肌へのうるおい付与効果を感じる等の後に、使用者が意図するタイミングでミストを除去でき、視界を向上できる。また、例えば、滞留空間外に浮遊したミストの量が少なかったり、ミストの浮遊開始直後であったとしても、滞留空間外に浮遊したミストを除去して使用者が視界を向上させたいと思う場合には、使用者が意図するタイミングでミストを除去でき、視界を向上できる。また、例えばミスト装置が自動で動作して滞留空間外に浮遊したミストを除去することを待つことなく、使用者が、任意のタイミングでミスト除去装置のミスト除去動作を実行できる。よって、使用者がミスト除去装置のミスト除去動作を実行するタイミングを選択でき、滞留空間外に浮遊したミストを利用することを可能にする。
【0011】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト装置の上記除去操作入力部は、上記浴槽内にいる使用者、上記浴室内の洗い場にいる使用者、又は上記シャワールーム内にいる使用者が、上記浴槽、上記洗い場、又は上記シャワールームから出ることなく操作入力できる位置に設けられている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ミスト装置の上記操作入力部は、上記浴槽内にいる使用者、上記浴室内の洗い場にいる使用者、又は上記シャワールーム内にいる使用者が、上記浴槽、上記洗い場、又は上記シャワールームから出ることなく操作入力できる位置に設けられている。これにより、滞留空間外に浮遊したミストにより視界が低減する場合にも、使用者が、比較的安全にミスト除去装置のミスト除去動作を実行できる。
【0012】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト装置は、さらに、上記ミスト生成部及び上記ミスト除去装置を制御する制御部を備え、上記制御部は、上記ミスト生成部によりミストを生成させるミスト生成モードと、上記ミスト除去装置により滞留空間外に浮遊したミストを除去させるミスト除去モードと、を備え、上記ミスト除去モードは、上記ミスト生成モードの実行中に実行可能とされる。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト除去モードは、上記ミスト生成モードの実行中に実行可能とされる。これにより、ミスト生成部により生成されたミストを滞留空間内に滞留させながらも、滞留空間外に浮遊したミストをミスト除去装置により除去させることができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト除去装置は、温風を上記滞留部の上記滞留空間外に向けて送出するように構成される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ミスト除去装置は、温風を上記滞留部の上記滞留空間外に向けて送出するように構成される。これにより、ミスト除去装置により送出された温風により、滞留空間内のミストの滞留が妨げられることを抑制しつつ滞留空間外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去することができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト装置が上記浴槽に用いられる場合において、上記ミスト除去装置は、温風を上記浴槽外に向けて送出するように構成される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ミスト除去装置は、温風を上記浴槽外に向けて送出するように構成される。これにより、ミスト除去装置により送出された温風により、浴槽の滞留空間内のミストの滞留が妨げられることを抑制しつつ滞留空間外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去することができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、好ましくは、さらに、ミスト生成部及びミスト除去装置を制御する制御部を備え、この制御部は、所定の条件が成立すると、自動的にミスト除去装置を作動させる。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、制御部がミスト除去装置を自動的に作動させるので、使用者が操作を行うことなくミスト除去装置を作動させることができ、意図せずに浴室内等が視界不良となるのを防止することができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、好ましくは、さらに、浴槽、浴室、又はシャワールーム内の温度を検出する温度センサを有し、制御部は、温度センサにより検出された温度が所定温度以下になると、ミスト除去装置を自動的に作動させる。
滞留空間内に供給されたミストは、ミストの温度と滞留空間内の温度の差が大きくなると、滞留空間の外へ浮遊しやすくなる。上記のように構成された本発明の一実施形態によれば、温度センサにより検出された温度に基づいてミスト除去装置を自動的に作動させるので、供給されたミストが滞留空間の外へ拡散し、視界不良となるタイミングを適確に把握することができ、適切な時期にミスト除去装置を作動させることができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、好ましくは、ミスト除去装置は、滞留部の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風を送出する温風送風機であり、制御部は、温風送風機が作動していない状態で、ミスト生成部により所定時間以上連続してミストが生成されると、ミスト除去装置を自動的に作動させる。
滞留空間内へのミストの供給を継続していると、ミストが少しずつ滞留空間の外へ浮遊し、視界不良になりやすい。上記のように構成された本発明の一実施形態によれば、ミスト生成部により所定時間以上連続してミストが生成されると、ミスト除去装置を自動的に作動させるので、視界不良が発生するのを確実に防止することができる。
【0018】
また、本発明の一実施形態は、好ましくは、浴槽、浴室、又はシャワールームに用いられるミストシステムであって、本発明の一実施形態のミスト装置と、上記ミスト装置の上記ミスト供給部から供給されるミストを受け入れる上記滞留空間を形成する上記滞留部とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明のミスト装置によれば、ミスト除去装置により視界を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムの概略斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムの概略構成図である。
図3】本発明の第1実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムを浴槽本体の長辺方向に沿って切った概略断面図である。
図4】本発明の第1実施形態によるミスト装置の内部構成を示す概略構成図である。
図5】本発明の第1実施形態によるミスト装置の内部構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第1実施形態によるミスト装置からのミスト供給動作を説明する図である。
図7】本発明の第1実施形態によるミスト装置からのミスト供給動作を説明する図である。
図8】本発明の第1実施形態によるミスト装置からのミスト供給動作を説明する図である。
図9】本発明の第1実施形態によるミスト装置からのミスト供給動作を説明する図である。
図10】本発明の第1実施形態によるミスト装置からのミスト供給動作を説明する図である。
図11】本発明の第1実施形態によるミスト装置のミスト除去装置によるミスト除去動作を説明する図である。
図12】本発明の第1実施形態によるミスト装置のミスト除去装置によるミスト除去動作を説明する図である。
図13】本発明の第1実施形態によるミスト装置のミスト除去装置によるミスト除去動作を説明する図である。
図14】本発明の第1実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムにおいて浴槽本体内の水温と浴室の室温との温度差と、ミストの供給流量とに関して、滞留空間内に滞留状態を形成するか否かを示す図である。
図15】本発明の第1実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムにおいて浴槽本体内の水温と浴室の室温との温度差と、ミストの供給流量とに関して、滞留空間内に滞留状態を形成するか否かを示す図である。
図16】本発明の第1実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムにおけるミストの雰囲気温度の測定方法、水温の測定方法及び浴室内の室温の測定方法を説明する図である。
図17】本発明の第1実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムにおけるミストの流量の計測装置及び計測方法を説明する図である。
図18】本発明の第1実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムにおけるミストの粒径の計測装置の斜視図である。
図19】本発明の第1実施形態によるミスト装置のミスト供給部から供給されるミストの粒径の計測装置の上面図である。
図20】本発明の第1実施形態によるミスト装置のミスト供給部から供給されるミストの粒径を、粒子径分布測定装置により測定した粒子径分布データの一例を示す図である。
図21】本発明の第1実施形態によるミスト装置のミスト供給部から供給されるミストが滞留しているかの判定に用いる透過率の測定装置を示す図である。
図22】本発明の第1実施形態によるミスト装置において、ミスト装置制御部により実行される制御の一例を示すフローチャートである。
図23】本発明の第2実施形態によるミスト装置を備えた洗い場床装置の斜視図である。
図24】本発明の第3実施形態によるミスト装置を備えたシャワールーム装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本明細書に開示する本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下の説明から、当業者にとって、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、以下の説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更することができる。
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の第1実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムについて説明する。
図1は本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムの概略斜視図であり、図2は本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムの概略構成図であり、図3は本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムを浴槽本体の長辺方向に沿って切った概略断面図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態によるミスト装置1を備えたミストシステム2は、浴室3に設けられる。ミストシステム2は、吐水された水を受ける水受け部分を有する水受け機器である。また、ミストシステム2は、水を使う場所の機器として使用されるいわゆる水回り機器として機能する。水受け機器は、浴室、浴室の洗い場床、シャワールーム、トイレ、手洗い機器、洗面台、キッチン等で吐水された水を受ける水受け部分を有している機器である。浴室3は、浴槽本体6のみが配置される部屋に限られず、トイレ、手洗い機器、洗面台、又はこれらの組合せを備えていてもよい。
【0023】
ミスト装置1は浴槽本体6に用いられる。浴室3は、箱型の空間であり、内部で水を使用するため一定程度密閉された室内空間5を形成している。水には、外気温(常温)より温度の高い水、加熱された水(いわゆる湯)も含まれる。ミストシステム2は、ミスト装置1の後述するミスト供給部から供給されるミストを受け入れる滞留空間4を形成する浴槽本体6を備えている。ミストシステム2には、水の供給を行う供給装置7が設けられている。ミストシステム2は、後述するように、浴槽本体6内に、室温よりも加温された温水層X(図2参照)と、温水層の上方の滞留空間4内において加温されているミストにより形成されたミストの滞留層Cと、が形成されるように構成されている。
【0024】
浴槽本体6は、ミストシステム2の浴槽本体6が配置される室内空間5に向けて上方が開放された滞留空間4を形成する。浴槽本体6は、浴槽であり、内側の滞留空間4内に水が貯水できるようになっている。浴槽本体6は、上面視で長方形に形成され、長方形の長辺側に長辺側部分6dが形成され、短辺側に短辺側部分6eが形成されている。短辺側部分6eは、長辺側部分6dに比べて浴槽の幅が短くなっている。浴槽本体6のミスト供給部10と対向する短辺側側壁6f(図3参照)は、上方が外側に傾斜するように形成されている。浴槽本体6は、例えば200L~500Lの範囲内の容積を有している。例えば、浴槽本体6は、300Lの容積であり、浴槽本体6の温水層Xの容積は、130Lであり、滞留空間4の容積は170L(水が貯水されていない場合は例えば300L)である。
【0025】
滞留空間4は、浴槽本体6の内側において概ね直方体形状に形成される空間である。図3に示すように使用者Aが入浴する際には、滞留空間4の下部側に34℃乃至45℃の水Bが貯水され(温水層Xが形成され)、使用者Aが座った状態で入浴することができる。なお、後述するように、図3においては、滞留空間4内の水Bの上方にはミストが滞留した状態(ミストの滞留層Cが形成されている状態)となっている。滞留空間4は、浴槽本体6の上端部6aまで形成され、天面側が開口されている。浴槽本体6は、滞留空間4の天面を覆うような蓋を省略した状態で、後述するようにミストが滞留空間4内に滞留されるようになっている。なお、滞留空間4内に水Bが貯水されずにミストが滞留されていてもよい。浴槽本体6の形状は実施形態のような箱状に限定されず、滞留空間を形成できる形状であればよい。例えば、浴槽本体6が上面視で円形や楕円形に形成され、内側にボウル状の滞留空間が形成されていてもよい。浴槽本体6の底面は使用者が寝浴姿勢や座り姿勢に近い姿勢をとれるように斜めに形成されていてもよく、底面に段部が形成されていてもよく又は形成されていなくてもよい。浴槽本体6の壁部の頂辺部が、一定の高さで水平に形成されている必要はなく高さが変化するように形成されていてもよい。例えば、浴槽本体6の壁部の頂辺部が、側面視で、斜め上方又は下方に延びる形状、一部が下方に凹む弓状に延びる形状や、略直角を形成するような凹凸形状とされてもよい。ミストシステム2は、ミスト供給部から供給されたミストが滞留空間4内に滞留するように構成されている。
【0026】
供給装置7は、浴槽本体6や洗い場側の水栓装置等に水を供給する供給装置である。供給装置7は、例えば給湯機であり、水道等の供給源から供給され加温されていない水や、加熱された水(いわゆる湯)を供給することができる。供給装置7は、浴槽本体6に形成された給水口6gと接続され、給水口6gから浴槽本体6内に水を供給できるように構成されている。供給装置7は、給水路14を介してミスト装置1とも接続され、水をミスト装置1にも供給できる。なお、ミスト装置1は、供給装置7を介さずに、水道等の給水源と直接に接続されていてもよい。また、ミスト装置1には、供給装置7と給水源の両方が接続されていてもよい。供給装置7には、水道等の給水源から水が供給される。供給装置7は、給水制御部25と電気的に接続されている。本実施形態の供給装置7は、浴槽本体6内の水を取水口である給水口6gから取込んだ上で内部でこの水を加熱して浴槽本体6内に戻す追い焚き装置としての機能を有している。追い焚き装置は、浴槽本体6内にすでに貯水されている水を再加熱する。なお、供給装置7は、追い焚き装置としての機能を有していなくともよい。なお、供給装置7は、給水口6gから浴槽本体6内に水を供給しているが、変形例として、供給装置7は、浴槽本体6に設けられた浴槽本体への給水用の水栓装置と接続され、この水栓装置から浴槽本体6内に水を供給してもよい。なお、浴槽本体6への給水用の水栓装置は、供給装置7を介さずに、給水源と直接接続されていてもよい。また、水栓装置には、供給装置7と給水源の両方が接続されていてもよい。
【0027】
次に、図1乃至図5により、上述した本発明の第1実施形態によるミスト装置をより詳細に説明する。
ミストシステム2は、ミスト装置1を備える。図3に示すように、ミスト装置1は、貯水された水からミストを生成するミスト生成部8と、ミストを浴槽本体6内に供給するミスト供給部10と、滞留空間4外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去するミスト除去装置80と、ミスト除去装置80のミスト除去動作を実行させるための使用者の操作入力を受け付けるミスト除去操作入力部82と、使用者の操作入力を受け付けるミスト装置操作部28と、ミスト生成部8におけるミストの生成やミスト供給部10によるミストの供給を制御するミスト装置制御部26と、を備えている。ミスト装置1は、横長の箱型のケーシング9(図4参照)内にミスト生成部8が設けられ、ミスト生成部8と接続されたミスト供給部10がケーシング9の正面側から下方に延びるように形成されている。
【0028】
ミスト生成部8は、加熱された水から加温されたミストを生成する、又は、水から生成されたミストを加熱することで加温されたミストを生成する。よって、ミスト生成部8は、浴室内の室温よりも加温されているミストを生成する。よって、加温されているミストにはミスト生成後に加温されたものも含まれる。ミスト生成部8は、ミスト入浴中の使用者を温めるためのミストを生成する。ミスト生成部8は、浴槽本体6の短辺側の短辺側部分6eの上方において壁Wに取付けられている。
【0029】
図5に示すように、ミスト生成部8は、内部に水を貯める貯水部12と、水を給水源から貯水部12に給水する給水路14と、水を貯水部12から排水管に排水する排水路16と、貯水部12の内側の底部に設けられた超音波振動子18と、貯水部12の内側の底部に設けられたヒータ20と、貯水部12の内側に設けられた水温検知手段である水温計測器22と、貯水部12の外側に設けられた気温検知手段である室内温度計測器24(図3参照)と、貯水部12内の水の水位の上昇により、フロートが軸部上を給水規定水位まで上昇したときに給水停止信号を発信するフロートスイッチ29と、貯水部12内の水の水位が給水規定水位Q1を超えてさらに上昇し、水が上端開口部の高さ位置を上回ってオーバーフローした際には、水が上端開口部から排水管側に排水されるようになっているオーバーフロー管31と、を備えている。
【0030】
貯水部12は、直方体形状のミスト生成部8の内部の貯水空間として形成されている。貯水部12の上部に給水路14が接続され、貯水部12の下部に排水路16が接続されている。貯水部12の中央近傍の側壁にミスト供給部10が接続されている。給水路14には、給水路14を開閉する給水路電磁弁30が設けられている。給水路14は、供給装置7に接続されている。給水路電磁弁30は、給水部としてミスト生成部8内の水の温度よりも低い温度の水をミスト生成部8に供給する機能を有する。なお、供給装置7は、ミスト生成部8内の水の温度(例えば約60℃)よりも低い温度(例えば約38℃)の水をミスト生成部8に供給するようになっている。排水路16には、排水路16を開閉する排水路電磁弁32が設けられている。また、排水路16には、貯水部12から水を排水させるための排水ポンプ33が設けられている。また、オーバーフロー管31は、貯水部12内の給水側部12aに設けられている。オーバーフロー管31の上端は、給水規定水位Q1よりわずかに上方に位置し、貯水部12内の水が溢れ出ないように構成されている。貯水部12の下部には、故障等による漏水を排出する排出弁41が設けられている。
【0031】
超音波振動子18は、貯水部12内の水に超音波を発振して、液面の水を振動させ、液面に生じた水柱から水を微粒子状に分離させ、所定の粒径のミスト(霧)を生じさせることができる。超音波振動子18は、ミスト装置制御部26と電気的に接続され、超音波振動子18の超音波の発振出力、周波数等を調整することにより、発生させるミストの粒径を変更できるようになっている。超音波振動子18は、所定の発振出力によりザウタ―平均粒径が3.1μm以上且つ10μm以下となるミストを生じさせるようになっている。超音波振動子18は、所定の粒径のミストを生じさせる他の装置、例えばスチームによるミスト装置、圧力噴霧によるミスト装置、アーク放電によるミスト装置等に変更されてもよい。また、本実施形態においては、超音波振動子18は、貯水部12内に複数並んで設けられている。超音波振動子18は、ミスト装置1のケーシング内において超音波振動子18を駆動させる発振器19(図4参照)と接続されている。
【0032】
ヒータ20は、ミスト生成部8内の貯水部12の内側の水中の底部に設けられている。ヒータ20は、貯水部12内の水を加熱するように構成されている。ヒータ20は、ミスト生成部8内の貯水部12内に限られず、貯水部12内の空中に設けられてもよく、ミスト供給部10に設けられてもよい。よって、ヒータ20は、貯水部12内のミスト又は空気を加熱するように構成されていてもよい。例えば、ヒータ20は、供給装置7から供給された水(例えば40℃程度まで加温された水)を60℃以上まで加熱することができる。なお、貯水部12に設けられたヒータ20の温度をミスト装置制御部26により制御して、貯水部12内の水の温度を調整し、生成されるミストの温度(ミストの雰囲気温度)を調整することもできる。
【0033】
水温計測器22は、貯水部12内の水の水温を検知する。ミスト装置制御部26は、水温計測器22と電気的に接続され、ミスト装置制御部26が貯水部12内の水の水温を認識できる。水温計測器22は、例えばサーミスタである。室内温度計測器24は、浴槽本体6が配置される室内空間5の貯水部12の外側の空気の温度を検知する。ミスト装置制御部26は、室内温度計測器24と電気的に接続され、ミスト装置制御部26が室内空間5の空気の温度を認識できる。なお、ミストの供給開始前(ミスト生成部8が駆動される前)の状態においては、室内空間5の空気の温度と、滞留空間4内の空気の温度とはほぼ等しい又は比較的近い温度であると仮定されるので、ミスト装置制御部26は、室内温度計測器24が測定した室内空間5の空気の温度を、滞留空間4内の空気の温度と推定できる。
【0034】
フロートスイッチ29は、水位と連動して上下動できるフロートを有している。フロートスイッチ29は、水位がフロート上端の給水規定水位Q1に到達したことを検知できる。また、フロートスイッチ29は、水位がフロート下端の下端水位に到達したことも検知できる。このような給水規定水位の検知と、下端水位の検知は別々のフロートにより行われていてもよい。フロートスイッチ29は、ミスト装置制御部26と電気的に接続されている。
【0035】
ミスト供給部10は、ミスト生成部8により生成されたミストを、浴槽本体6が配置される室内に向けて上方が開放された滞留空間4を形成する滞留部である浴槽本体6内に供給する。ミスト供給部10は、浴槽本体6の短辺側の短辺側部分6eの上方に配置されている。ミスト供給部10は浴槽本体内の水の溢れ部より上方に配置される。ミスト供給部10は、図3に示す流路の断面により示されるように、ミスト生成部8から滞留空間4の一端の上部まで横向きに延びるミスト供給流路11と、ミスト供給流路11の下流端と接続され下方向きに開口する出口であるミスト供給口部13を備える。ミスト供給流路11は、正面から(滞留空間4側から)見て、横長の長方形の流路(例えば流路断面)を形成している。ミスト供給口部13は、ミスト供給流路11の下流端から下方向に延びている。ミスト供給口部13は、下方側に延びるダクト状の流路を形成している。ミスト供給口部13は、下方向きに開口する開口部を形成している。ミスト供給口部13は、その開口部の正面から見た場合(ミスト供給口部113の下方から上方を見た場合)、横長の長方形の流路(例えば流路断面)を形成している。ミスト供給口部13の下端13aは、浴槽本体6内の水の溢れ部6cより上方に配置される。よって、浴槽本体6内の水が汚水の流れとしてミスト供給口部13から上流側に侵入することを抑制できる。変形例として溢れ部6cは、浴槽本体6内に設けられたオーバーフロー口でもよい。
【0036】
ミスト供給部10は、例えば、0.03mL/min・L~1.5mL/min・Lの範囲の単位時間あたりの供給量のミストを供給できる。ミスト供給部10は、例えば、浴槽本体6の体積330Lの滞留空間4に11mL/minの単位時間あたりの供給量のミストを供給できる。また、例えば、ミスト供給部10は、他の水受け機器等の体積4.32Lの滞留空間4に6mL/minの単位時間あたりの供給量のミストを供給できる。
【0037】
ミストシステム2のミスト装置1は、滞留空間4内に滞留状態を形成するミストを滞留空間4内に供給する。ミスト装置1は、ミスト供給部10から供給されたミストが浴槽本体6の滞留空間4内に滞留されるように構成される。また、ミスト装置1は、ミスト供給部10から供給されたミストが浴槽本体6内から上方に向かう上昇気流の力を利用しながら、滞留状態と近い密度状態を有するミストの立上雲状体(例えば図21に示すような浴槽本体6の上縁である溢れ面6bを超えてさらに上昇する所定の密度のミストの集合体)を上記浴槽本体の溢れ部より上方まで立ち上がるように形成した後、供給されたミストがミストの滞留層Cを上記浴槽本体6の滞留空間4内に形成するように構成される。なお、ミスト装置1は、ミストの立上雲状体を形成せずにミストの滞留層Cを形成してもよい。
【0038】
ミスト除去装置80は、温風の主流を滞留部である浴槽本体6外に向けて送出するように構成される。ミスト除去装置80は、例えば、滞留部の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風を送出する温風送風機84である。温風送風機84は、例えば、浴室空調機である。温風送風機84は、矢印F21により示すように、温風を浴槽本体6の滞留空間4外の洗い場床や壁面に向けて送出するように構成されている。温風の温度は、滞留部の設けられた空間内の温度よりも高ければよいが、温風の温度が高すぎると、使用者が不快に感じるため、温風の温度は、80度以下が好ましい。温風の温度は、温風送風機84の送風口において測定される。温風送風機84は、温風を滞留空間4外の所定方向に向けて継続的に送出できるように構成される。なお、ミスト除去装置80は、滞留空間4外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を空気と共に吸引して除去する吸引除去装置や、滞留空間4外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を空気と共に室外に排出する排出装置であってもよい。
【0039】
ミスト除去操作入力部82は、ミスト装置操作部28上に設けられた操作ボタンにより構成されている。ミスト除去操作入力部82は、使用者の操作入力を受け付ける他の方式の入力装置、例えば、音声を認識して使用者の操作入力を受け付ける音声入力装置により構成されてもよく、使用者の手指等を離れた位置で認識して使用者の操作入力を受け付ける入力装置(例えばジェスチャー入力装置、手かざし入力装置等)により構成されてもよい。ミスト除去操作入力部82は、手動式の操作入力部を構成している。ミスト除去操作入力部82は、手動式の操作入力部として構成されることにより、画一的なミスト除去を行うのではなく、使用者が意図するタイミングでミストを除去できるようになっている。ミスト除去操作入力部82は、ミスト装置操作部28とは別に壁面等に設けられていてもよい。ミスト除去操作入力部82は、ミスト装置制御部26と電気的に接続されている。ミスト除去操作入力部82は、浴槽本体6内にいる使用者が、浴槽本体6から出ることなく操作入力できる位置に設けられている。ミスト除去操作入力部82は、例えば、浴槽本体6の頂部から約1mの範囲内、より好ましくは約30cmの範囲内に配置されている。ミスト除去操作入力部82は、浴槽本体6の頂部から約30cmの範囲内に配置されている場合には、使用者は浴槽本体6内に座ったまま手を延ばしてミスト装置1を作動させることができる。なお、ミスト装置1は、ミスト除去操作入力部82を省略し、ミスト装置制御部26の判断によりミスト除去装置80を動作させて、自動的にミスト除去を行うように構成されていてもよい。ミスト装置1が自動制御によりミスト除去を行う場合は、例えば、浴室内の室内温度に応じて温風の吐出を開始するタイミングを変更する。このとき、温風の吐出時間は一定でも変化させてもよい。例えば、室内温度が30度以上の場合は、ミスト開始から15分経過後に温風を2分間吐出する。一旦温風の吐出を停止させ、さらに15分経過後に再度温風を2分間吐出する。以降、これを繰り返す。また、室内温度が25度以上30度未満の場合は、ミスト開始から温風を吐出するまでの経過時間を5分間とする。すなわち、ミスト開始から5分経過後に、温風を2分間吐出する。以降これを繰り返す。また、室内温度が25度未満である場合は、ミスト開始から温風を吐出するまでの時間を3分間とする。すなわち、ミスト開始から3分経過後に温風を2分間吐出する。以降これを繰り返す。
【0040】
給水制御部25は、浴槽本体6や洗い場側の水栓装置への水の供給を制御する。給水制御部25は、CPU及びメモリ等を内蔵し、メモリ等に記録された所定の制御プログラムに基づいて水の給水、後述する所定のモード等を実行するように接続された機器を制御する。給水制御部25は、供給装置7、操作部27、ミスト装置制御部26、浴室空調機80等と電気的に接続されている。これらの電気的な接続は、無線通信等により行われてもよい。給水制御部25とミスト装置制御部26及び/又は操作部27等との電気的な接続は、無線通信等により行われてもよい。例えば、給水制御部25とミスト装置制御部26及び/又は操作部27等とは、無線通信により制御されてもよい。
【0041】
給水制御部25は、ミスト装置1の動作とは独立して、浴槽本体6に水を供給するように動作できる。なお、給水制御部25は、ミスト装置制御部26と連携することにより、ミスト装置1の動作と関係して動作することも可能となっている。給水制御部25と、ミスト装置制御部26とは、相互に通信しており一つの制御部として機能している。このように、給水制御部25と、ミスト装置制御部26とは、本実施形態においては別の制御部として説明されているが、一つに統合された形態の制御部であってもよく、又はさらに細分化される等の異なる形態の制御部として存在していてもよい。
【0042】
操作部27は、浴室内の浴槽本体6の周囲の壁面に設けられている浴室操作部27aと、さらに浴室外の壁面に設けられている浴室外操作部27bとを備えている。浴室外操作部27bは例えばキッチンや廊下等に設けられている。操作部27は、無線通信等により遠隔操作可能な操作部で構成されてもよい。例えば、操作部27は、所定のプログラムを使用することにより使用者のスマートフォン等により構成されてもよい。
【0043】
ミスト装置操作部28は、使用者の操作入力をミスト装置制御部26に伝達する。ミスト装置操作部28は、浴室内の浴槽本体6の周囲の壁面に設けられている浴室操作部28aと、さらに浴室外の壁面に設けられている浴室外操作部28bとを備えている。浴室外操作部28bは例えば浴室の手前の部屋や廊下等に設けられている。ミスト装置操作部28は、無線通信等により遠隔操作可能な操作部で構成されてもよい。例えば、ミスト装置操作部28は、所定のプログラムを使用することにより使用者のスマートフォン等により構成され、インターネットを介してミスト装置制御部26と接続されてもよい。ミスト装置操作部28は、ミストを供給する場合のミストシステム2への水の貯水操作、水の温度設定等も行うことができる。ミスト装置操作部28は、供給されるミストの温度を設定できる操作機能、供給されるミストの粒径を設定できる操作機能等を有していてもよい。
【0044】
ミスト装置制御部26は、CPU及びメモリ等を内蔵し、メモリ等に記録された所定の制御プログラムに基づいてミストの生成、後述する所定のモード等を実行するように接続された機器を制御する。ミスト装置制御部26は、超音波振動子18、ヒータ20、水温計測器22、室内温度計測器24、ミスト装置操作部28、ミスト除去装置80等と電気的に接続されている。ミスト装置制御部26は、さらに、給水路14に設けられた給水路電磁弁30と、排水路に設けられた排水路電磁弁32とも電気的に接続され、これらを制御できる。
【0045】
ミスト装置制御部26は、制御部として、ミスト生成部を制御する機能と、ミスト除去装置80を制御する機能とを備えている。ミスト装置制御部26は、ミスト生成部8によりミストを生成させるミスト生成モード26aと、ミスト除去装置80により滞留空間4外に浮遊したミストを除去させるミスト除去モード26bと、を備えている。ミスト装置制御部26は、これらのモードを記憶装置に記憶されたプログラムにより実行できる。ミスト生成モード26aは、本実施形態において開示されているミスト生成部8の動作の全てを実行するものである必要は無く、動作のうち少なくともミストを生成させる動作を実行させるものであればよい。ミスト除去モード26bは、ミスト生成モード26aの実行中に実行可能とされている。すなわち、ミスト装置制御部26は、ミスト除去モード26bと、ミスト生成モード26aとを独立して並列的に実行できる。ミスト除去モード26bの開始時期や終了時期は、ミスト生成モード26aの開始時期や終了時期と一致していなくともよい。ミスト装置制御部26は、ミスト除去モード26bにおいては、ミスト除去装置80である温風送風機84から温風の主流を滞留空間4外の所定方向に向けて送出させる。ミスト装置制御部26は、ミスト除去モード26bにおいては、送出される温風の主流が滞留空間4内に届きにくいような向きで温風を送出する。また、ミスト装置制御部26は、ミスト除去モード26bにおいて、送出される温風の主流が滞留空間4内に流入しにくいような風量で温風を送出する。
【0046】
次に、図3図6乃至図10により、上述した本発明の第1実施形態によるミスト装置の動作を説明する。
図3に示すように、ミスト装置1の動作の開始前の待機状態においては、浴槽本体6の滞留空間4の下半分には約38℃の水が貯溜された状態となっている。浴室3内の室内空間5の空気の温度と滞留空間4内の空気の温度とはほぼ等しい温度となっている。給水路電磁弁30及び排水路電磁弁32は閉弁されている。貯水部12内には水が無い状態となっている。超音波振動子18及びヒータ20は停止された状態である。
【0047】
使用者がミスト装置操作部28を操作しミスト装置1のミストの供給制御を開始させる。ミストの供給開始前に、室内温度計測器24は、室内空間5の空気の温度を測定し、ミスト装置制御部26は、室内空間5の空気の温度を認識する。ミスト装置制御部26は、給水路電磁弁30を開弁し、水を給水路14から貯水部12内に供給する。排水路電磁弁32は閉弁されたままである。貯水部12内に予め決められた水量の水が貯溜されると、給水路電磁弁30は閉弁される。次に、ミスト装置制御部26は、ヒータ20を作動させ、水を給水された水の水温から60℃以上まで加熱する。ミスト装置制御部26は、水が60℃以上まで加熱された後、所定の温度のミストを供給するようにミストの温度を調整する。次いで、ミスト装置制御部26は、ミスト生成モード26aを実行して、超音波振動子18を作動させ、貯水部12内にミストを生じさせる。
【0048】
図6においては、ミスト供給部10から滞留空間4内へのミストの供給が開始された直後の状態が示される。
貯水部12内に生じたミストは、ミスト供給部10から浴槽本体6内の滞留空間4に供給される。ミストは、矢印F1に示すように、ミスト供給部10から、ミストの自重により自由落下しながら滞留空間4内に供給される。このように、ミストが下方への移動速度以外の他の方向への移動速度を持つことが抑制されている。従って、ミストが滞留空間4内において、撹拌、拡散、上昇等の移動をしにくくされている。
【0049】
図7においては、ミストの供給開始から約数秒経過後の状態が示される。
ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。供給されたミストは、水Bの水面の上方且つ滞留空間4内の低い部分に滞留を開始している。上昇気流によってミストを上昇させようとする力が、ミスト供給部10から供給されたミストの重さを超えないことによりミストが滞留空間4内に滞留しやすくなっている。よって、ミストは、滞留空間4内の比較的低い部分に滞留する。ミストは、ミスト供給部10側から徐々に供給及び追加され、滞留空間4内の水面上又は底部上においてミスト供給部10側から反対側の短辺に向けて徐々に進む。
【0050】
図8においては、図7の状態から、ミストが浴槽本体6の反対側の短辺まで到達した状態が示される。ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。図9に示すように、ミストが浴槽本体6の反対側の短辺まで到達した図8の状態からさらにミストが供給され滞留空間4内にミストが充填される。
【0051】
図10に示すように、ミストがさらに供給されると、増加されたミストが滞留空間4内の徐々に高い部分まで滞留されるようになる。ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。滞留空間4内に供給されたミストが、さらに増加し、ミストが滞留空間4内の頂部(浴槽本体6の上端部6a)に近い部分まで滞留されている。ミストは、主に滞留空間4内において水Bの水面より上方且つ滞留空間4内の頂部より下方の領域に滞留している。ミストは水Bに落下して吸収されることにより消失する、又は浴槽本体6の壁面に水滴となって付着されることにより消失する、又は浴槽本体6の上端部6aの縁を超えて拡散する。消失するまでの時間はミストの粒径によって異なる。このようにミストは消失又は拡散されるものの、消失や拡散するまでに新しいミストが供給されることにより、滞留空間4内にミストの滞留層を形成できる。すなわち、ミストは滞留空間4内において緩やかに流動しつつも滞留空間4から拡散するには至らず安定的な滞留層Cを形成する。滞留層Cは、水Bの水面より上方において、一定以上の密度のミストが単位空間内に存在することにより形成される。滞留層は、白い雲状に認識される。滞留空間4の頂部までミストが満たされているように滞留層Cが視認される。滞留層Cは、滞留空間4から放散して室内空間全体に広がるミストとは区別される。
【0052】
滞留されたミストの上部側の滞留境界面66は、浴槽本体6の溢れ面6bの高さ(高さ位置M0(図3参照))に、上記浴槽本体6の深さL1に相当する高さを加えた高さ位置M1よりも下方に形成される。滞留境界面66はミストが空気中に一定以上の濃度となっている滞留層Cと、ミストが空気中に一定未満の濃度となっている空気層Jとの間の境界領域を示している。滞留境界面66は、ミストが滞留しながらある程度動いているため、上下方向にやや高さを持った領域として規定される。なお、浴槽本体6の溢れ部である溢れ面6bは、浴槽本体6の側壁のうち最も高さが低い部分、すなわち水が浴槽本体6の上限まで溜まると最初に溢れ出す部分である。
【0053】
例えば、滞留されたミストの上部側の滞留境界面66は、浴槽本体6の溢れ面6bの高さ位置M0よりも上方に形成されている。このとき例えば、滞留されたミストの上部側の滞留境界面66は、浴槽本体6の溢れ部である溢れ面6bの高さ(高さ位置M0)の200mm上方の高さ位置よりも下方に形成されてもよく、また例えば、浴槽本体6の溢れ面6bの高さ(高さ位置M0)の100mm上方の高さ位置よりも下方に形成されてもよい。このように、滞留境界面66が浴槽本体6の溢れ面6bの高さよりも高い位置となる場合には、使用者は浴槽を越える位置までのミスト入浴効果、すなわち湯船より高い高さまでの温浴効果を得ることができる。ミスト生成部8を駆動(使用)している間は、ミストが浴槽本体6内に供給されミストの滞留が継続されている。ミスト装置1は、滞留境界面66の高さ位置が、上述のような所定の高さ位置になるような、浴槽本体6内の水温と室温との温度差、ミストの粒径、ミストの供給量等を規定するように構成されている。使用者がミスト装置1の使用を終了する場合には、使用者はミスト装置操作部28を操作し、ミスト装置制御部26のミスト生成モード26aの実行が終了される。
【0054】
次に、図11乃至図13により、上述した本発明の第1実施形態によるミスト装置1のミスト除去装置80によるミスト除去動作を説明する。
図11に示すように、ミストがミスト供給部10から滞留空間4内に供給されている状態となっている。図11においては、ミストが滞留空間4内に滞留された状態となっているが、ミストを除去するシチュエーションとしては、必ずしもミストが滞留空間4内に滞留された状態でなくてもよく、例えばミストが滞留される前の状態や、滞留された後に人の動きにより乱されて滞留が形成されていないような状態であってもよい。
【0055】
図12に示すように、様々な要因によりミストが滞留空間4外に比較的多く浮遊することとなる場合がある。例えば、ミストが滞留空間4内において滞留状態を形成できずに滞留空間4外に浮遊する場合、滞留空間4内に滞留していたミストが人の動作(例えば浴槽本体6から出入りする人の動作等)により滞留空間4外に舞い上がる場合、ミストが滞留空間4内において滞留状態となっていたがその後の浴室内の温度変化等によりミストが上昇気流により滞留空間4外に比較的多く浮遊することとなる場合等がある。このようにミストが滞留空間4外に比較的多く浮遊すると、図12に示すように、ミストにより浴槽本体6の周囲が見えにくくなり、視界が低減される。
【0056】
このようにミストが滞留空間4外に浮遊する状態において、使用者がミスト除去操作入力部82を操作して、ミスト除去装置80を作動させる。図1に示すように、ミスト除去装置80は、矢印F21で示すような温風を浴槽本体6の滞留空間4外の洗い場床に向けて送出する。ミスト除去装置80から送出された温風が空中に浮遊するミストに当たることによりミストが気化されて消滅する。よって、ミストが気化されることにより視界が向上する。ミスト除去装置80により、滞留空間4外の空間領域においてミストを消失させて視界を向上させることができる。一方で、ミスト除去装置80は滞留空間4内の滞留しているミストを消失させてしまうことを抑制するように、当初の送出方向を滞留空間4外に向けている。滞留空間4外に浮遊するミストが気化されて減少されることにより、図13に示すように、浴室内の視界が向上される。よって、使用者がより安全に移動可能とできる。なお、ミストがミスト供給部10から滞留空間4内に供給されている状態が継続しているので、ミストは滞留空間4内において滞留状態を継続している。
【0057】
図10に示すように、ミストシステム2のミスト装置1による供給されるミストは、滞留空間4内に滞留状態を形成できる。このメカニズムについて説明する。
基本的なメカニズムとしては、浴槽本体6内の水温と浴室の室温との温度差ΔTによって生じる上昇気流によってミストを上昇させようとする力が、ミスト供給部10から供給されたミストの重さを超えないことによりミストが滞留空間4内に滞留される。すなわち、ミストの重さがミストを上昇させようとする力よりも大きいことにより、ミストが滞留状態を形成する。従って、ミストシステム2のミスト装置1は、このような条件を満たすミストを供給することにより、滞留空間4内にミストの滞留状態を形成でしやすくできる。上昇気流は、浴槽本体6内の水温と浴室の室温との温度差ΔTによって生じるが、ミストの温度(ミストの雰囲気温度)とミストの滞留層を形成している状態における浴室の室温との温度差によっても生じる。また、ミストの重さには、ミストの粒径とミストの密度が影響する。ミストの供給量が多くなるとミストの密度が高まる及び/又はミスト同士が結合してミストの粒径が大きくなる等してミストの集合体の重さが重くなる。従って、ミストの供給量が多くなるとミストが滞留状態を形成しやすくなる。一方で、ミストの供給量が少なくなるとミストが滞留状態を形成しにくくなる。また、供給されるミストの粒径が大きくなるとミストが滞留状態を形成しやすくなる。また、滞留空間4内にミストの滞留状態を形成するためには、滞留空間4が大きいほど、ミストの供給量が多く必要となる。滞留空間4が比較的小さい場合には、ミストの供給量が少なくとも、より少ない供給量でミストを満たされやすくなり、ミストの密度が高まりやすくなるため、より少ない供給量で滞留空間4内にミストの滞留状態を形成できる。また、ミスト供給時にミストが有している運動エネルギーが大きい場合にはミストが放散しやすくなるので、ミストが滞留状態を形成しにくくなる。ミストの供給量が比較的少ない場合には、ミストが気化されやすくなるため、ミストが滞留状態を形成しにくくなる。本発明の発明者らは、このような知見を基にして、以下のように、ミストが滞留空間4内に滞留されやすくなる状態の知見を得た。
【0058】
次に、図14を参照して、ミストが滞留空間4内に滞留やすくなる状態を説明する。
図14に示すように、浴槽本体6内の水温と浴室内の室温との温度差ΔT[℃]に対する、ミストの供給流量[ml/min]を変えて、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留されるか、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成されることなくミストが滞留空間4内に滞留されるか、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となるかの評価をおこなった。このとき、ミスト供給部10の下端の溢れ面6b(上部リム部)からの高さは50mmであり、ミストのザウタ―平均粒径は、3.1μm以上且つ10μm以下となっている。なお、浴槽本体6内に水が貯水されない場合には、浴槽本体6内の水温は、浴槽本体6の温度、すなわち室温として評価される。
【0059】
図14において、ミストの供給流量[ml/min]に対し、浴槽本体6内の水温と浴室内の室温との温度差ΔT[℃]を変えて、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となるか、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留されるかの境となるポイントとなる温度差ΔT[℃]が0[℃]、7.9[℃]、11.5[℃]、17.0[℃]、22.0[℃]と見出されている。この複数の温度を通る仮想境界線P1は、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となる領域と、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域との境を示す。同様に、ミストの立上雲状体が浴槽本体6の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留されるか、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成されることなくミストが滞留空間4内に滞留されるかの境となるポイントとなる温度差ΔT[℃]が0[℃]、4.0[℃]、4.3[℃]、7.6[℃]、8.2[℃]、7.5[℃]と見出されている。この複数の温度を通る仮想境界線P2は、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域と、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域との境を示す。
【0060】
図14において、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となる領域N1においては、水温と室温との差異から生じる上昇気流が比較的強い領域であり、滞留空間4内においてミストの重さ(重力)が、上昇気流がミストに作用する力よりも小さくなっているため、ミストが上昇気流により滞留空間4より上方に浮遊及び放散されている。
ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成されることなくミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域N2においては、水温と室温との差異から生じる上昇気流が比較的弱い領域であり、滞留空間4内におけるミストの重さ(重力)が、上昇気流がミストに作用する力よりも大きくなっているため、ミストが上昇気流により上昇されにくく、滞留空間4内且つ溢れ面6bより下方の位置においてミストが滞留状態となっている。
ミストの立上雲状体が浴槽本体6の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域N3においては、水温と室温との差異から生じる上昇気流が一定程度生じる領域であり、滞留空間4内におけるミストの重さ(重力)が、上昇気流がミストに作用する力よりも大きいものの、ミストの重さと上昇気流により作用される力が比較的近くなっているため、ミストが上昇気流により一旦溢れ面6bより上方の位置まで立ち上るように上昇し、立上雲状体を形成した後、徐々にミストが滞留空間4に向けて下降して、滞留空間4内且つ溢れ面6bより下方の位置においてミストの滞留状態を形成する。
【0061】
なお、図15に示すように、ミスト供給部10の下端の溢れ面6b(上部リム部)からの高さを110mmと変更し、図14と同様の測定が行われた。すなわち、図15におけるミスト供給部10の下端の溢れ面6bからの高さが、図14における高さよりもより高くなっている。図15においては、ミスト供給部10の下端の高さ以外のパラメータについては、図14と同様に設定されている。
【0062】
図15においては、ミストの供給流量[ml/min]に対し、浴槽本体6内の水温と浴室内の室温との温度差ΔT[℃]を変えて、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となるか、ミストの立上雲状体が浴槽本体6の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留されるかの境となるポイントとなる温度差ΔT[℃]が0[℃]、2[℃]、7.2[℃]、10.1[℃]、15.5[℃]、17.2[℃]、20.5[℃]と見出されている。仮想境界線P3は、この複数の温度を通るように算出され、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となる領域と、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域との境を示す。
また、ミストの立上雲状体が浴槽本体6の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留されるか、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成されることなくミストが滞留空間4内に滞留されるかの境となるポイントとなる温度差ΔT[℃]が0[℃]、2.5[℃]、3.3[℃]と見出されている。仮想境界線P4は、この複数の温度を通るように算出され、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域と、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域との境を示す。よって、図15においても、図14と同様に、領域N1、N2、N3が示される。
【0063】
図15においては、ミスト供給部10から滞留空間4内に供給されるミストが水面まで落下する高さが、図14における落下する高さよりも高くなり、ミストが下降中に拡散してミストの密度が下がりやすくなる。よって、滞留空間4内等にミストの重さが軽くなりミストが浮遊及び放散しやすくなる。また、図15においてミスト供給部10から滞留空間4内に供給されるミストが水面まで落下する高さが、図14における落下する高さよりも高くなり、ミストはより速い速度を有する。従って、ミストの速度が予め低い場合と比べて、ミストの速度が比較的速い場合には、ミストの運動エネルギーが高くなり、ミストが浮遊及び放散しやすくなる。また、ミストがミストの供給側と反対側の短辺側部分6eに到達した場合に、壁面に沿って上昇しやすくなる。従って、仮想境界線P3は、仮想境界線P1よりも低い温度となり、水温と室温との差異から生じる上昇気流がより弱い場合(ΔTが小さい場合)であっても、ミストが上昇気流により滞留空間4より上方に浮遊及び放散することが分かる。また、仮想境界線P4は、仮想境界線P2よりも低い温度となり、水温と室温との差異から生じる上昇気流がより弱い場合(ΔTが小さい場合)であっても、ミストの立上雲状体が浴槽本体6の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となることを示している。
【0064】
図14及び図15に示すような浴槽本体6内の水温と浴室内の室温との温度差ΔT[℃]に対する、ミストの供給流量[ml/min]の関係は、浴槽本体6に対して示されている。本発明者らは、同様の関係の傾向が浴槽本体6のみならず浴槽本体6よりも滞留空間4の容積が異なる他の水受け機器、例えば浴室の洗い場床、シャワールーム、手洗いボウル、洗面台ボウル、キッチンシンク、トイレ等にも成立することを確認した。例えば、これらの各機器においては、滞留空間4の容積が浴槽本体6内の容積と比べて比較的小さくなる。
図14に示すような浴槽本体6の滞留空間4の容積に比べて、滞留空間の容積が小さくなる場合には、ミストの密度が高まりやすくなり、ミストが滞留状態を形成しやすくなるので、図14中の仮想境界線P1の位置が上方に移動される(例えば仮想境界線P5により示す)。図14中の仮想境界線P2の位置も上方に移動される(例えば仮想境界線P6により示す)。逆に、図14に示すような浴槽本体6の滞留空間4の容積に比べて、滞留空間の容積が大きくなる場合には、ミストの密度が低くなりやすくなり、ミストが滞留状態を形成しにくくなるので、図14中の仮想境界線P1の位置が下方に移動される(例えば仮想境界線P7により示す)。図14中の仮想境界線P2の位置も下方に移動される(例えば仮想境界線P8により示す)。
【0065】
図14及び図15においては、超音波振動子18により生成されるミストの粒径は所定の粒径となっているが、ミストの生成の手段(遠心分離機等)や超音波振動子の周波数等を変更することによりミストの粒径を変更することも可能である。図14において用いられているミストの粒径に比べて、ミストの粒径が大きくなる場合には、ミストの重さが重くなり、ミストが滞留状態を形成しやすくなるので、図14中の仮想境界線P1の位置が上方に移動される(例えば仮想境界線P5により示す)。また、図14中の仮想境界線P2の位置も上方に移動される(例えば仮想境界線P6により示す)。逆に、図14において用いられているミストの粒径に比べて、ミストの粒径が小さくなる場合には、ミストの重さが軽くなり、ミストが滞留状態を形成しにくくなるので、図14中の仮想境界線P1の位置が下方に移動される(例えば仮想境界線P7により示す)。また、図14中の仮想境界線P2の位置も下方に移動される(例えば仮想境界線P8により示す)。
このようにして、滞留空間4の容積が変わった場合や、ミストの粒径が変わった場合についても図14及び図15等に基づいてミストが滞留空間4内に滞留される状態と滞留されない状態との関係を理解可能である。
【0066】
次に、図16を参照して、浴槽本体6内のミストの雰囲気温度の測定方法について説明する。空気の温度を計測できる温度測定装置、例えばサーミスタ95を用いて浴槽本体6内のミストの雰囲気温度[℃]を測定する。浴槽本体6内のミストの雰囲気温度を測定したいときにサーミスタ95を配置して測定を行う。サーミスタ95の温度測定部は、浴槽本体6の長辺の中央部且つ短辺の中央部且つ浴槽本体6内に貯水されている水の表面から溢れ面6bまでの高さの中央部に配置され、ミストの温度の測定を行うようになっている。例えば、浴槽本体6内のミストの雰囲気温度は、ミスト供給を開始した後、十分に時間が経過(例えば2500[s]経過)し、温度上昇がほぼ止まった温度により測定される。測定時には測定対象の温度に極端な勾配が生じないように留意している。
【0067】
次に、図16を参照して、浴槽本体6内の水温(湯温)の測定方法について説明する。水温を計測できる温度測定装置、例えばサーミスタ99を用いて浴槽本体6内の水温[℃]を測定する。浴槽本体6内の水温を測定したいときにサーミスタ99を浴槽本体内の所定位置に配置して水温の測定を行う。サーミスタ99の温度測定部は、浴槽本体6の長辺の中央部且つ短辺の中央部且つ浴槽本体6内に貯水されている水の深さの中央部に配置され、水温の測定を行うようになっている。測定時には測定対象の温度に極端な勾配が生じないように留意している。
【0068】
次に、図16を参照して、浴槽本体6の設けられた浴室内の室温の測定方法について説明する。ミスト生成部8は、室内温度計測器24を備えるので、室温は基本的に室内温度計測器24により測定される。ミスト生成部8が、室内温度計測器24を備えていない場合や、室内温度計測器24により室温が測定できない(又はしにくい)場合には、サーミスタ86を浴室空間内の浴槽本体近傍の所定位置に配置して室温の測定を行う。このサーミスタ86の温度測定部は、例えば、浴槽本体6の側方側に200mmの位置且つ浴槽本体の長辺方向に沿って紙面奥側の壁から200mm手前側の位置、且つ床面より1000mm上方の位置に配置され、室温の測定を行うようになっている。測定時には測定対象の温度に極端な勾配が生じないように留意している。
【0069】
次に、図17を参照して、ミスト供給部10から供給されるミストの流量の計測装置及び計測方法について説明する。
ミストの流量の流量計測装置90は、ミスト生成部8と、ミスト供給部10と、ミスト生成部8とミスト供給部10とを貯水タンク上に支持する支持構造体91と、水を貯水する貯水タンク92と、貯水タンク92から水をミスト生成部8に供給する給水ポンプ94と、ミスト供給部10から供給されるミストを流量計測装置90の外方に送り出すファン96と、重量を測定する電子天秤98と、を備えている。ミスト生成部8の超音波振動子18は支持構造体91に取付けられた発振回路93により駆動される。給水ポンプ94及びファン96は、支持構造体91により支持されている。すなわち、流量計測装置90は、ミスト生成に用いられる水及びミスト生成に用いるミスト生成部8等が電子天秤98上に載せられた状態で構成されている。電子天秤98には、A&D社製GF-32Kを用いる。
【0070】
流量計測装置90において、ミスト生成前の状態において、ミスト生成部8、ミスト供給部10、支持構造体91、水の貯水されている貯水タンク92、給水ポンプ94、及びファン96の重量(以下、ミスト生成部8等の重量と称する)を、電子天秤98に載せた状態で測定する。以後、これらのミスト生成部8等を電子天秤98上に載せた状態のままミストの生成を行う。このような流量計測装置90において、給水ポンプ94によりミスト生成部8に給水を行うと共に、オーバーフロー管31から水を排水することで水位をほぼ固定する。超音波振動子18を駆動することによりミストを生成し、ミスト供給部10から流出したミストをファン96により流量計測装置90の外方に送り出す。超音波振動子18の駆動開始後、1分の経過時点において、超音波振動子18の駆動を停止させ、電子天秤98により、ミスト生成部8等の重量を測定する。よって、以下の式、「ミスト生成時減少量=ミストの生成前のミスト生成部8等の重量-ミストの生成後のミスト生成部8等の重量」、によりミスト生成時減少量を求めることができる。その上で、以下の式、「ミスト供給流量[ml/min]=ミスト生成時減少量-蒸発量」、によりミストの供給流量を求めることができる。このようにして得られるミスト供給流量[ml/min]は、同様の一連の3回のミスト供給流量[ml/min]の測定を行い、測定結果の平均を行って、最終的なミスト供給流量[ml/min]を決定する。また、蒸発量は、測定中の自らの自然蒸発量を考慮するものである。従って、流量計測装置90において、超音波振動子18を駆動せず、1分間経過後の重量減少量を測定する。同様の3回の重量減少量の測定を行い、測定結果の平均を行って、最終的な重量減少量を蒸発量として決定し、上述のミスト供給流量の算定に用いる。
【0071】
流量計測装置90においては、ミスト以外の水(例えば超音波振動子により生じる水柱の水滴等)が流量計測装置90の外部に飛び出さないように測定を行っている。また、生成されたミストがミスト供給部10において一部水に戻った場合にもこの水が貯水タンク92等に戻るように流量計測装置90が構成される。ファン96はミストがミスト供給部10及びミスト生成部8内に淀むことなく外方に流れることができる程度の風量及び向きで設定される。
【0072】
次に、図18乃至図20を参照して、ミスト供給部10から供給されるミストの粒径の計測装置及び計測方法について説明する。
ミストの粒径の計測装置37は、前述と同じ大きさ及び形状の仮想滞留空間34を設定する箱状装置39と、粒子径分布測定装置53とを備えている。この箱状装置39の側壁、すなわち仮想滞留空間34の側方の壁の中央近傍に、20mm×20mmの正方形の開口52を形成し、この開口52に蓋57が取り付けられている。ミストの粒径を測定しようとする場合には、ミストの粒径の計測装置37を浴槽本体6の代わりに配置するようにしてミストの粒径の測定を行う。ミスト供給部10と計測装置37との位置関係は、ミスト供給部10の下端と浴槽本体6との位置関係とほぼ同様となるように計測装置37が配置され、ミスト供給部10から浴槽本体6へのミストの供給と同様に、ミスト供給部10から計測装置37へのミストの供給が行われる。
【0073】
図19に示すように、粒子径分布測定装置53は、開口52の近傍且つ正面に粒径計測レーザーの計測領域Eが位置するように配置された粒径計測レーザー54を備えている。上面視で、粒径計測レーザー54のレーザー光が仮想滞留空間34の長辺と平行になるように粒径計測レーザー54が配置されている。粒径計測レーザー54から発信されるレーザー光が通過する計測領域Eが開口52の正面に位置している。計測領域Eは、開口52から150mmの距離に位置する。粒子径分布測定装置53は、さらに、このレーザー光の回折・散乱光を検出するように計測レンズ56を備えている。
【0074】
この開口に蓋57を取付けた状態で、仮想滞留空間34内にミストの供給を開始する。ミスト供給部10からのミストの供給口は図示を省略している。ミストの供給開始から1分後に蓋57を開放し、ミストを粒径計測レーザー54の計測領域Eに向けて漏出させる。粒径計測レーザー54の透過率60%~90%の状態で計測レンズ56により散乱光分布を計測する。例えば、粒径計測レーザー54及び計測レンズ56は、マイクロトラック・ベル株式会社製のスプレー粒子径分布測定装置のエアロトラック LDSA-SPRシリーズのLDSA-SPR1500Aを使用する。粒子径分布データを10回測定し、この粒子径分布データをPCに記録する。PCにおいて10回の粒子径分布データを平均化する。図20には、粒子径分布測定装置53により測定された粒子径分布データの一例を示す。図20においては、左側縦軸において頻度[%]を示し、右側縦軸において累積[%]を示し、横軸において粒径[μm]を示している。例えば、PCは、このように得られた粒子径分布データを分析し、例えば粒子径分布データの20%タイル値粒径Gを粒径データとして取得し、又は例えばザウター平均粒径Hを粒径データとして取得してもよい。ザウター平均粒径は、全粒子の全表面積に対する全粒子の全体積と同じ表面積対体積率を有する粒径を示す。ザウター平均粒径により平均粒径をもとめることにより少ない数の大粒径を有する粒子による測定値への影響を抑制できる。このようにしてミスト供給部10から供給されるミストの主な(例えば半分以上の)粒径が計測できる。本実施形態におけるミスト装置から供給されるミストのザウター平均粒径Hは、3.1μm以上且つ10μm以下となっている。
【0075】
ミスト生成部8の超音波振動子18の出力を変更する、超音波振動子18の振動周波数を変更する又はミスト生成手段を遠心分離装置等に変更すること等により、ミストのザウター平均粒径Hを変更することができる。例えばミスト供給部10から供給されるミストのザウター平均粒径Hを、3.1μm以上且つ40μm以下の範囲内で変更して設定することも可能である。
【0076】
次に、図21を参照して、浴槽本体6内の滞留空間4において、ミストが滞留状態となっているか(ミストの滞留層Cを形成しているか)否かの判定装置及びその判定方法について説明する。
図21に示すように、透過率の測定装置68を用いて浴槽本体6内の滞留空間4内部において測定された内部透過率と、滞留空間4外部において測定された外部透過率と、を比較し、外部透過率よりも内部透過率が低い場合に、滞留空間4内部にミストが滞留していると判定できる。より具体的には、内部透過率/外部透過率<1となることにより滞留空間4内部にミストが滞留していると判定される。
【0077】
例えば、図8に示すように、滞留空間4内部にミストが滞留している状態では、内部透過率が低下する。一方で、ミストは主に滞留空間4内部に留まっており、滞留境界面66より上方において測定される外部透過率は、比較的高い値となっている。よって、内部透過率/外部透過率<1となり、滞留空間4内部にミストが滞留していると判定される。なお、内部透過率が15%以下の範囲内にあることによって、滞留空間4内部にミストが滞留していると判定してもよい。
【0078】
次に、図21を参照して、透過率の測定装置68について説明する。
滞留状態が形成されているかについては、透過率の測定装置68を浴槽本体6に取付けることにより判定可能である。
透過率の測定装置68は、滞留空間4内部に測定部が配置された第1レーザー装置70と、レーザーを受ける第1透過率計測装置72とを備えている。第1レーザー装置70と、第1透過率計測装置72とは、滞留空間4の上端より下方側に150mmの位置(例えば滞留空間4の深さに対して3割程度の深さ位置)において水平方向に150mm離れて配置されている。第1レーザー装置70と、第1透過率計測装置72とは、上面視で滞留空間4の中央近傍に配置される。第1レーザー装置70から発振されるレーザー光の強度に対し、第1透過率計測装置72で測定したレーザー光の強度を測定し、内部透過率を測定する。
透過率の測定装置68は、さらに、滞留空間4外部に配置された第2レーザー装置74と、レーザーを受ける第2透過率計測装置76とを備えている。第2レーザー装置74と、第2透過率計測装置76とは、滞留空間4の上端より上方側に150mmの位置(例えば滞留層Cの上端の滞留境界面66よりも上方となると想定される位置)において水平方向に離れて配置されている。第1レーザー装置70と、第1透過率計測装置72とは、上面視で滞留空間4の中央近傍に配置される。第2レーザー装置74から発振されるレーザー光の強度に対し、第2透過率計測装置76で測定したレーザー光の強度を測定し、外部透過率を測定する。このようにして滞留空間4内の内部透過率と、外部透過率とをそれぞれ測定できる。
測定装置68のより具体的な装置構成としては、キーエンス社製デジタルファイバアンプFS-N11MNから発せられたレーザー光を同社製FU-77TZ(第1レーザー装置70又は第2レーザー装置74)を通して発振し、同社製FU-77TZ(第1透過率計測装置72又は第2透過率計測装置76)にて受光する。受光した光はファイバアンプFS-N11MNへと返され、光量に応じて例えば1-5Vの電圧出力を行う。光量は、例えば1500~4500で行う。出力された電圧は、同社製NR-500シリーズNR-HA08にて計測し、PC上で0~100%の値にスケーリングする。透過率のデータは例えばサンプリング周期100msにて計測される。例えば、ミストをほぼ定量で供給開始してから滞留層Cが形成されて以後、例えば30秒間の透過率のデータを平均して算出する。例えば、ミストの立上雲状態の判定測定を行う場合は平均算出は行わず、時間経過のデータにより判定する。
【0079】
次に、図22を参照して、ミスト除去装置80の自動モードを説明する。
本実施形態においては、制御部であるミスト装置制御部26において、自動モードが設定されている場合には、使用者によるミスト除去操作入力部82の操作に関わらず、自動的にミスト除去装置80が作動され、ミストの除去が行われる。図22は、自動モードが設定されている場合において、ミスト装置制御部26により実行される制御の一例を示すフローチャートである。なお、自動モードの設定は、ミスト装置操作部28上に設けられた操作ボタン(図示せず)の操作により設定することができる。また、図22に示すフローチャートは、自動モードが設定されている間、繰り返し実行される。
【0080】
まず、図22のステップS1においては、第1の所定条件が成立しているか否かが判断される。具体的には、温度センサである室内温度計測器24によって検出された浴室内の温度が所定温度以下であるか否かが判断される。所定温度以下である場合には、第1の所定条件が成立した判断し、ステップS6に進む。なお、本実施形態においては、所定温度として、25℃が設定されている。
【0081】
ステップS6においては、ミスト装置制御部26により、ミスト除去装置80の運転が自動的に開始される。本実施形態において、ミスト除去装置80は温風送風機84により構成されており、ミスト装置制御部26は温風送風機84を作動させ、浴室内に温風を送風する。即ち、浴室内の温度が所定温度(25℃)以下である場合には、滞留空間4である浴槽本体6内の温度と、浴室内の気温の温度差が大きくなる。この温度差により、滞留空間4内から上昇する上昇気流が強くなり、滞留空間4内で滞留しているミストが滞留空間4の外に拡散しやすくなる。この状態が続くと、滞留空間4の外に浮遊するミストが多くなり、浴室内の視界が悪くなる。
【0082】
これを抑制するために、ミスト装置制御部26は自動的に温風送風機84(ミスト除去装置80)を作動させ、ミストを除去する。即ち、温風送風機84を作動させ、浴室内の気温が高くなると、浮遊しているミストが気化され、消失する。また、浴室内の気温が高くなると、浴槽本体6内の温度と、浴室内の気温の温度差が小さくなり、ミストを拡散させる上昇気流も弱くなる。なお、温風送風機84は、浴室内の洗い場床や、壁面に向けて温風を送出する。これにより、滞留空間4内のミストに温風が当たり、ミストを滞留させるべき滞留空間4内のミストが消失するのを抑制することができる。
【0083】
次いで、ステップS7においては、浴室内の温度が上記の所定温度(25℃)よりも高い所定の上限温度以上に上昇したか否かが判断される。浴室内の温度が上限温度以上に上昇した場合には、ステップS8に進み、上昇していない場合には、ステップS7の処理が繰り返し実行される。これにより、温風送風機84は、浴室内の温度が上限温度以上に上昇するまで運転される。なお、本実施形態において、所定の上限温度は27℃に設定されている。
【0084】
浴室内の温度が上限温度以上に上昇するとステップS8に進み、ステップS8において、ミスト装置制御部26は、温風送風機84の作動を自動的に停止させる。即ち、温風送風機84の作動により浴室内の温度が上昇しすぎると、使用者(入浴者)が不快に感じる場合があり、これを防止するために、上限温度以上に温度が上昇すると温風送風機84を停止させる。ステップS8の後、フローチャートにおける処理は、ステップS1に戻る。
【0085】
従って、外気温が低く、温風送風機84の作動を停止させると比較的短時間で浴室内の温度が所定温度(25℃)以下に低下する状態では、ミスト装置制御部26は、浴室内が所定温度以下になると温風送風機84を作動させ、上限温度(27℃)以上になると温風送風機84を停止させる処理を繰り返す。これにより、本実施形態においては、浴室内の温度が25℃から27℃の間に維持される。このように温度を維持する範囲は、20℃~30℃の範囲にあるのが良く、好ましくは、浴室内の温度を24℃から28℃の範囲に維持し、より好ましくは、25℃から27℃の範囲に維持する。
【0086】
一方、ステップS1において、第1の所定条件が成立していないと判断された場合には、ステップS2に進み、ここでは第2の所定条件が成立しているか否かが判断される。具体的には、第2の所定条件として、温風送風機84が作動していない状態で、ミスト装置1が連続して所定時間以上作動されているか否かが判断される。温風送風機84が作動していない状態で、ミスト装置1が連続して所定時間以上作動されている場合には、第2の所定条件が成立したと判断され、ステップS2に進む。また、第2の所定条件が成立していない場合にはステップS1に戻る。なお、本実施形態において、所定時間は5分に設定されている。好ましくは、所定時間は10分以下に設定する。
【0087】
次いで、ステップS3においては、ミスト装置制御部26により、ミスト除去装置80である温風送風機84の運転が自動的に開始される。即ち、温風送風機84を停止させた状態で、ミスト装置1を連続して所定時間以上作動させていると、供給されたミストが少しずつ滞留空間4の外へ拡散して、滞留空間4外に浮遊するミストが多くなり、浴室内の視界が悪くなる。
【0088】
これを抑制するために、ミスト装置制御部26は自動的に温風送風機84(ミスト除去装置80)を作動させ、ミストを除去する。即ち、温風送風機84を作動させ、浴室内の気温が高くなると、浮遊しているミストが気化され、消失する。なお、温風送風機84は、浴室内の洗い場床や、壁面に向けて温風を送出し、ミストを滞留させるべき滞留空間4内のミストが消失するのを抑制している。
【0089】
次いで、ステップS4においては、ステップS3における温風送風機84の運転開始から所定のミスト除去時間が経過したか否かが判断される。所定のミスト除去時間が経過した場合には、ステップS5に進み、経過していない場合には、ステップS4の処理が繰り返し実行される。これにより、温風送風機84が所定のミスト除去時間運転される。なお、本実施形態において、所定のミスト除去時間は3分に設定されている。好ましくは、ミスト除去時間は1分以上に設定する。
【0090】
ミスト除去時間が経過するとステップS5に進み、ステップS5において、ミスト装置制御部26は、温風送風機84の作動を自動的に停止させる。即ち、温風送風機84を長時間運転すると、使用者(入浴者)の意に反して浴室内の温度が大きく上昇してしまうので、これを防止するために、所定のミスト除去時間が経過すると温風送風機84を停止させる。ステップS5の後、フローチャートにおける処理は、ステップS1に戻る。
【0091】
従って、外気温が高く、温風送風機84の作動を停止させても浴室内の温度が所定温度(25℃)以上になる状態では、ミスト装置1を連続して所定時間(5分)運転すると、ミスト装置制御部26が温風送風機84を自動的に作動させ、所定のミスト除去時間(3分)が経過すると温風送風機84を停止させる処理が繰り返される。これにより、本実施形態において、連続してミスト装置1を作動させている状態では、所定時間毎に、所定のミスト除去時間、温風送風機84が作動される。なお、温風送風機84をミスト除去時間作動させることにより、浴室内の気温が上限温度(27℃)を超える場合もあるが、本実施形態においては浴室内の視界の確保を優先し、上限温度を超えた場合でも、温風送風機84が運転される。
【0092】
次に、本実施形態の構成による効果を説明する。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置1は、さらに滞留空間4外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去するミスト除去装置80を備える。これにより、滞留空間4外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去することができ、滞留空間4外に浮遊することとなったミストにより浴室又はシャワールーム内の視界が低減する場合に、ミスト除去装置80により視界を向上させることができる。また、いったん浮遊したミストであっても、使用者が浴槽から移動することなく、使用者の意図により簡単且つ安全に除去できる。
【0093】
このように構成された本発明の一実施形態においては、温風送風機84は滞留部の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風を送出するので、比較的簡易な装置構成により、滞留空間4外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去することができる。
【0094】
このように構成された本発明の一実施形態においては、温風送風機84を浴室空調機により比較的簡単に構成できる。浴室に既に浴室空調機が設けられている場合には新たに装置を追加することなく既存の装置構成により、滞留空間4外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去することができる。
【0095】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置1は、さらに、ミスト除去装置80のミスト除去動作を実行させるための使用者の手動操作入力を受け付けるミスト除去操作入力部82を備える。これにより、使用者が、任意のタイミングでミスト除去装置80のミスト除去動作を実行できる。例えば、滞留空間4外に浮遊したミストをしばらくそのままにして、滞留空間4外に浮遊したミストによる幻想的な視覚効果を感じる、又は滞留空間4外に浮遊したミストによる肌へのうるおい付与効果を感じる等の後に、使用者が意図するタイミングでミストを除去でき、視界を向上できる。また、例えば、滞留空間4外に浮遊したミストの量が少なかったり、ミストの浮遊開始直後であったとしても、滞留空間4外に浮遊したミストを除去して使用者が視界を向上させたいと思う場合には、使用者が意図するタイミングでミストを除去でき、視界を向上できる。また、例えばミスト装置1が自動で動作して滞留空間4外に浮遊したミストを除去することを待つことなく、使用者が、任意のタイミングでミスト除去装置80のミスト除去動作を実行できる。よって、使用者がミスト除去装置80のミスト除去動作を実行するタイミングを選択でき、滞留空間4外に浮遊したミストを利用することを可能にする。
【0096】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置1のミスト除去操作入力部82は、浴槽内にいる使用者、浴室内の洗い場にいる使用者、又はシャワールーム内にいる使用者が、浴槽、洗い場、又はシャワールームから出ることなく手動操作入力できる位置に設けられている。これにより、滞留空間4外に浮遊したミストにより視界が低減する場合にも、使用者が、比較的安全にミスト除去装置80のミスト除去動作を実行できる。
【0097】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト除去モード26bは、ミスト生成モード26aの実行中に実行可能とされる。これにより、ミスト生成部8により生成されたミストを滞留空間4内に滞留させながらも、滞留空間4外に浮遊したミストをミスト除去装置80により除去させることができる。
【0098】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト除去装置80は、温風を滞留部の上記滞留空間4外に向けて送出するように構成される。これにより、ミスト除去装置80により送出された温風により、滞留空間4内のミストの滞留が妨げられることを抑制しつつ滞留空間4外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去することができる。
【0099】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト除去装置80は、温風を浴槽外に向けて送出するように構成される。これにより、ミスト除去装置80により送出された温風により、浴槽の滞留空間4内のミストの滞留が妨げられることを抑制しつつ滞留空間4外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去することができる。
【0100】
このように構成された本発明の一実施形態においては、所定の条件(図22のステップS1、S2)が成立するとミスト装置制御部26がミスト除去装置80を自動的に作動させるので、使用者が操作を行うことなくミスト除去装置80を作動させることができ、意図せずに浴室内等が視界不良となるのを防止することができる。即ち、例えば、入浴者が浴槽本体6内でうたた寝をした場合でも、自動的にミスト除去装置80が作動され、浴室内の視界が確保される。
【0101】
このように構成された本発明の一実施形態においては、室内温度計測器24により検出された温度に基づいてミスト除去装置80を自動的に作動させる(図22のステップS1→S6)ので、供給されたミストが滞留空間4の外へ拡散し、視界不良となるタイミングを適確に把握することができ、適切な時期にミスト除去装置を作動させることができる。
【0102】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト生成部8により所定時間以上連続してミストが生成されると、ミスト除去装置を自動的に作動させる(図22のステップS2→S3)ので、視界不良が発生するのを確実に防止することができる。
【0103】
また、本発明の一実施形態は、浴槽、浴室、又はシャワールームに用いられるミストシステム2であって、本発明の一実施形態のミスト装置1と、ミスト装置1のミスト供給部10から供給されるミストを受け入れる滞留空間4を形成する浴槽本体6とを備えることを特徴としている。
【0104】
次に、図23により、本発明の第2実施形態によるミスト装置を備えた水受け機器(水回り機器)である洗い場床装置を説明する。第2実施形態は、本発明によるミスト装置を浴室の洗い場床に適用した例である。図23は本発明の第2実施形態によるミスト装置を備えた洗い場床装置の斜視図である。
【0105】
第2実施形態によるミスト装置は、上述した第1実施形態によるミスト装置と基本構造が類似しているため、本発明の第2実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については図面に同じ参照符号を付する又は図示を省略して説明を省略する。本発明の第2実施形態による洗い場床装置の動作(作用)や各測定方法等については、第1実施形態によるミストシステムの動作(作用)や各測定方法等と同様であるので説明を省略する。
【0106】
図23に示すように、本発明の第2実施形態によるミスト装置1を備えたミストシステムである洗い場床装置102は、浴室3に設けられる。洗い場床装置102には、水の供給を行う供給装置107が設けられている。洗い場床装置102は、さらに、ミスト装置1の後述するミスト供給部10から供給されるミストを受け入れる滞留空間104を形成する洗い場床本体106を備えている。洗い場床装置102は、吐水された水を受ける水受け部分を有する水受け機器である。ミスト装置1の構成は第1実施形態と同様であるので、ミスト装置1の内部構造等は図示を省略されている。
【0107】
洗い場床本体106は、洗い場床装置102が使用される室内空間5に向けて上方が開放された滞留空間104を形成する。洗い場床本体106は、浴室の壁面、浴槽本体の外壁、浴室のドア等により形成され、内側の滞留空間104内に水が流れることができるようになっている。このような構造により、洗い場床本体106は、ミストが滞留空間104内に滞留されるようになっている。洗い場床本体106の容積は、浴槽本体6の容積よりも大きくなっている。滞留空間104は、例えば洗い場床本体106の壁を規定するような浴槽本体6の上端部まで形成されている。
【0108】
ミスト装置1は、水受け機器である洗い場床装置102に用いられる。ミスト装置1は、ミスト生成部8と、ミスト供給部10と、滞留空間104外(例えば浴槽本体6の上端部より上方の空間又は洗い場床本体106側から見て浴槽本体6内の空間)に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去するミスト除去装置80と、ミスト除去装置80のミスト除去動作を実行させるための使用者の操作入力を受け付けるミスト除去操作入力部82と、を備えている。ミスト装置1を用いた洗い場床装置102において、ミスト供給部10から供給されたミストが洗い場床本体106の滞留空間104内に滞留されるように構成される。図23において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層Cを例示している。
【0109】
このように構成された第2実施形態の構造によれば、加熱されたミストが洗い場床本体106の滞留空間104内に滞留される。例えば、加熱されたミストにより洗い場床本体106を温めて洗い場床や滞留空間104を暖房できる。また、加熱されたミストにより、使用者が滞留空間104においてミスト浴をすることもできる。また例えば、加熱されたミストにより、洗い場床本体106を温めるとともに洗い場床本体106に付着した汚れを比較的高い洗浄性能で洗浄又は汚れを落としやすくすることができる。
【0110】
ミスト装置1は、ミスト除去装置80として、滞留部である洗い場床本体106の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風を送出する温風送風機84を備えている。温風送風機84は、洗い場床本体106の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風を送出可能な浴室空調機である。ミスト装置1が洗い場床本体106に用いられる場合において、ミスト除去装置80は、温風の主流を洗い場床本体106外に向けて送出するように構成される。ミスト除去装置80は、矢印F21により示すように、温風を洗い場床本体106の滞留空間104外の浴槽本体や壁面に向けて送出するように構成されている。
ミスト除去装置80である温風送風機84は、温風を滞留空間104外の所定方向に向けて継続的に送出できるように構成される。なお、ミスト除去装置80は、滞留空間104外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を空気と共に吸引して除去する吸引除去装置や、滞留空間104外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を空気と共に室外に排出する排出装置であってもよい。
【0111】
ミスト除去操作入力部82は、浴室内の洗い場床本体106にいる使用者が、洗い場床本体106から出ることなく操作入力できる位置に設けられている。ミスト除去操作入力部82は、例えば、洗い場床本体106から約1mの範囲内、より好ましくは約30cmの範囲内に配置されている。ミスト除去操作入力部82は、洗い場床本体106から約30cmの範囲内に配置されている場合には、使用者は洗い場床本体106内に座ったまま(いる状態のまま)手を延ばしてミスト装置1を作動させることができる。
【0112】
ミスト装置制御部26は、ミスト生成部を制御する機能と、ミスト除去装置80を制御する機能とを備えている。ミスト装置制御部26は、ミスト生成部8によりミストを生成させるミスト生成モード26aと、ミスト除去装置80により滞留空間4外に浮遊したミストを除去させるミスト除去モード26bと、を備えている。ミスト装置制御部26は、ミスト除去モード26bにおいては、ミスト除去装置80である温風送風機84から温風の主流を滞留空間104外の所定方向に向けて送出させる。ミスト装置制御部26は、ミスト除去モード26bにおいては、送出される温風の主流が滞留空間104内に届きにくいような向きで温風を送出する。また、ミスト装置制御部26は、ミスト除去モード26bにおいて、送出される温風の主流が滞留空間104内に流入しにくいような風量で温風を送出する。
【0113】
次に、図24により、本発明の第3実施形態によるミスト装置を備えた水受け機器(水回り機器)であるシャワールーム装置を説明する。第3実施形態は、本発明によるミスト装置をシャワールームに適用した例である。図24は本発明の第3実施形態によるミスト装置を備えたシャワールーム装置の斜視図である。
【0114】
第3実施形態によるミスト装置は、上述した第1実施形態によるミスト装置と基本構造が類似しているため、本発明の第3実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については図面に同じ参照符号を付する又は図示を省略して説明を省略する。本発明の第3実施形態によるシャワールーム装置の動作(作用)や各測定方法等については、第1実施形態によるミストシステムの動作(作用)や各測定方法等と同様であるので説明を省略する。
【0115】
図24に示すように、本発明の第3実施形態によるミスト装置1を備えたミストシステムであるシャワールーム装置202は、シャワールーム203に設けられる。シャワールーム203は、上面視で一辺が0.8m~2m程度の長方形の領域に、半円径の領域が追加された形状に形成され、比較的狭いスペースの室内を形成する。シャワールーム装置202には、水の供給を行う供給装置207が設けられている。シャワールーム装置202は、さらに、ミスト装置1の後述するミスト供給部10から供給されるミストを受け入れる滞留空間204を形成するシャワールーム本体206を備えている。シャワールーム装置202は、吐水された水を受ける水受け部分を有する水受け機器である。ミスト装置1の構成は第1実施形態と同様であるので、ミスト装置1の内部構造等は図示を省略されている。シャワールーム203は、シャワー用の供給装置207のみが配置される部屋に限られず、トイレ、手洗い機器、洗面台、又はこれらの組合せを備えていてもよい。
【0116】
シャワールーム本体206は、シャワールーム装置202が使用される室内空間205に向けて上方が開放された滞留空間204を形成する。シャワールーム本体206は、シャワールームの壁面、シャワールームのドア等により形成され、内側の滞留空間204内に水が流れることができるようになっている。このような構造により、シャワールーム本体206は、ミストが滞留空間204内に滞留されるようになっている。なお、本実施形態によれば、シャワールーム203の室内空間205と滞留空間204との境が構造により明確に区画されていなくても、滞留空間204が規定できることを示している。室内空間205と滞留空間204との境は、ミスト装置1のミスト供給能力を考慮して異なる位置に設定される。滞留空間204は、ミスト装置1のミスト供給能力を考慮してミストを溜めようとする空間として任意に設定できる。このような滞留空間204は、室内空間205に向けて上方が開放された滞留空間である。なお、本実施形態に限られず、室内空間205と滞留空間204との境が構造により明確に区画されていなくても、滞留空間204は、同様の趣旨により設定可能である。滞留空間204は、例えば座っている使用者の顔程度の高さ(或いは例えばシャワールームの内部空間の全体の高さのうち3分の1程度の高さ)まで形成されている。
【0117】
ミスト装置1は、シャワールーム装置202に用いられる。ミスト装置1は、ミスト生成部8と、ミスト供給部10と、滞留空間204外(例えば座っている使用者の顔程度の高さより上方の空間)に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を除去するミスト除去装置80と、ミスト除去装置80のミスト除去動作を実行させるための使用者の操作入力を受け付けるミスト除去操作入力部82と、を備えている。ミスト生成部8及びミスト供給部10は、ミスト供給部10から滞留空間204に供給されたミストの温度とミストの供給開始前の水回り機器が使用される室内の温度との温度差が、0℃以上とされ、ミスト供給部10から供給されたミストがシャワールーム本体206の滞留空間204内に滞留されるように構成される。図24において上面に滞留境界面66を形成するようなミストの滞留層Cを例示している。
【0118】
このように構成された第3実施形態の構造によれば、加熱されたミストがシャワールーム本体206の滞留空間204内に滞留される。例えば、加熱されたミストによりシャワールーム本体206を温めてシャワールームの床や滞留空間204を暖房できる。また、加熱されたミストにより、使用者が滞留空間204においてミスト浴をすることもできる。また、加熱されたミストが比較的高い位置まで滞留されることにより、使用者が滞留空間204内において内部の椅子208に座った状態や立った状態でもミスト浴をできる。また例えば、加熱されたミストにより、シャワールーム本体206を温めるとともにシャワールーム本体206に付着した汚れを比較的高い洗浄性能で洗浄又は汚れを落としやすくできる。
【0119】
ミスト装置1は、ミスト除去装置80として、滞留部であるシャワールーム本体206の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風を送出する温風送風機84を備えている。温風送風機84は、シャワールーム本体206の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風を送出可能な浴室空調機である。ミスト装置1がシャワールーム本体206に用いられる場合において、ミスト除去装置80は、温風の主流をシャワールーム本体206外に向けて送出するように構成される。ミスト除去装置80は、矢印F21により示すように、温風をシャワールーム本体206の滞留空間204外の壁面(滞留空間204より上方の壁面)に向けて送出するように構成されている。
ミスト除去装置80である温風送風機84は、温風を滞留空間204外の所定方向に向けて継続的に送出できるように構成される。なお、ミスト除去装置80は、滞留空間204外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を空気と共に吸引して除去する吸引除去装置や、滞留空間204外に浮遊することとなったミストの少なくとも一部を空気と共に室外に排出する排出装置であってもよい。
【0120】
ミスト除去操作入力部82は、シャワールーム本体206内にいる使用者が、シャワールーム本体206から出ることなく操作入力できる位置に設けられている。ミスト除去操作入力部82は、例えば、シャワールーム本体206内の吐水装置の前の所定位置或いは座る椅子等がある場合にはその椅子の所定位置から約1mの範囲内、より好ましくは約30cmの範囲内に配置されている。ミスト除去操作入力部82は、シャワールーム本体206内の所定位置から約30cmの範囲内に配置されている場合には、使用者はシャワールーム本体206内に座ったまま(いる状態のまま)手を延ばしてミスト装置1を作動させることができる。
【0121】
ミスト装置制御部26は、ミスト生成部を制御する機能と、ミスト除去装置80を制御する機能とを備えている。ミスト装置制御部26は、ミスト生成部8によりミストを生成させるミスト生成モード26aと、ミスト除去装置80により滞留空間4外に浮遊したミストを除去させるミスト除去モード26bと、を備えている。ミスト装置制御部26は、ミスト除去モード26bにおいては、ミスト除去装置80である温風送風機84から温風の主流を滞留空間204外の所定方向に向けて送出させる。ミスト装置制御部26は、ミスト除去モード26bにおいては、送出される温風の主流が滞留空間204内に届きにくいような向きで温風を送出する。また、ミスト装置制御部26は、ミスト除去モード26bにおいて、送出される温風の主流が滞留空間204内に流入しにくいような風量で温風を送出する。
【符号の説明】
【0122】
1 :ミスト装置
2 :ミストシステム
3 :浴室
4 :滞留空間
6 :浴槽本体
8 :ミスト生成部
10 :ミスト供給部
26 :ミスト装置制御部
80 :ミスト除去装置
82 :ミスト除去操作入力部
84 :温風送風機
102 :洗い場床装置
104 :滞留空間
202 :シャワールーム装置
203 :シャワールーム
204 :滞留空間
A :使用者
B :水
C :滞留層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図19
図20
図21
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図23
図24