(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051776
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】コイルユニットおよび非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20230404BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20230404BHJP
H01F 27/36 20060101ALI20230404BHJP
H01F 1/153 20060101ALI20230404BHJP
H02J 50/70 20160101ALI20230404BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F5/00 F
H01F27/36 150
H01F1/153 166
H02J50/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022141950
(22)【出願日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021160267
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100144130
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 実
(72)【発明者】
【氏名】水野 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光秀
【テーマコード(参考)】
5E041
5E058
【Fターム(参考)】
5E041AA11
5E041BD03
5E041CA06
5E041NN14
5E058CC13
5E058CC15
(57)【要約】
【課題】送電コイルや受電コイルを備えるコイルユニットにおいて、導電性シールドの渦電流損による温度上昇を抑制すること、および当該導電性シールドの温度上昇を抑えた非接触給電システムを提供すること。
【解決手段】スパイラル状に巻回されたコイルと、コイルに対向して設けられた磁性シールドと、導電性シールドとを備え、磁性シールドは、コイルに対向するように設けられた磁性シールド底面部を有し、導電性シールドは、磁性シールド底面部のコイルに対向する面とは反対側の面に沿って設けられる導電性シールド底面部と、導電性シールド底面部からコイルの周縁部を囲むように構成された導電性シールド側面部とを有し、コイルの磁性シールド底面部に対向する面とは反対側の面に沿って磁性シートを設ける、非接触給電用のコイルユニット。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル状に巻回されたコイルと、前記コイルに対向して設けられた磁性シールドと、導電性シールドとを備えた非接触給電用のコイルユニットであって、
前記磁性シールドは、前記コイルに対向するように設けられた磁性シールド底面部を有し、
前記導電性シールドは、前記磁性シールド底面部の前記コイルに対向する面とは反対側の面に沿って設けられる導電性シールド底面部と、前記導電性シールド底面部から前記コイルの周縁部を囲むように構成された導電性シールド側面部とを有し、
前記コイルの前記磁性シールド底面部に対向する面とは反対側の面に沿って磁性シートを設けることを特徴とするコイルユニット。
【請求項2】
前記磁性シートは、前記コイルの外周側の表面を覆い、前記コイルの内周側の表面は覆わないように、開口部を有する形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
前記磁性シートは、前記コイルの最外周から最内周までの幅をコイル幅としたときに、前記コイルの最外周から前記コイル幅の1/4以上4/4以下までの範囲の前記コイルの外周側の表面を覆う形状になるような前記開口部を有することを特徴とする請求項2に記載のコイルユニット。
【請求項4】
前記磁性シートは、前記コイルの最外周から前記コイル幅のおよそ1/2までの範囲の前記コイルの外周側の表面を覆う形状になるような前記開口部を有することを特徴とする請求項3に記載のコイルユニット。
【請求項5】
前記磁性シートは、前記磁性シートを備えていない状態で、電力伝送時に磁束が鎖交する範囲の前記コイルの外周側の表面を覆う形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のコイルユニット。
【請求項6】
前記磁性シートは、磁性粉とマトリックス材とを含む混合物からなる磁性コンポジット材のシートであることを特徴とする請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項7】
前記磁性シートは、使用周波数における比透磁率が5~50であることを特徴とする請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項8】
前記コイルがリッツ線で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項9】
前記磁性シールドは、前記導電性シールド側面部と前記コイルの周縁部との間に前記磁性シールド底面部に連結された磁性シールド周縁部を有することを特徴する請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のコイルユニットを送電側および受電側の少なくともいずれか一方に備える非接触給電システム。
【請求項11】
請求項9に記載のコイルユニットを受電側に備える非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
工場などで使用されている自動搬送車の充電システムとして非接触で給電を行うシステムが採用され、生産効率の向上や安全性の確保が図られている。送電コイルに高周波の交流電流を通電し、送電コイルから発生する磁界を受電コイルが受け取ることで電力の伝送が行われる。しかし、このように非接触による電力送電を行った場合、送電コイルから発生する放射電磁界がコイルユニット外部の空間中に漏れ周辺の電子機器に影響を及ぼすという問題があった。
【0002】
この問題を解決するため、例えば、特許文献1では、磁性体部と導電体部を備えるシールドでコイルを囲う技術が提案されている。コイル装置から外部に漏れた磁束が導電体部に鎖交する際に生じる渦電流効果を利用して放射電磁界を吸収していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示される技術では、渦電流損によって導電体部が発熱するため取り扱い時にやけどなどの危険性があるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、送電用コイルや受電用コイルを備えるコイルユニットにおいて、特許文献1の導電部に相当する導電性シールドの渦電流損による温度上昇を抑制すること、および当該導電性シールドの温度上昇を抑えた非接触給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る請求項1に記載のコイルユニットは、スパイラル状に巻回されたコイルと、前記コイルに対向して設けられた磁性シールドと、導電性シールドとを備えた非接触給電用のコイルユニットであって、前記磁性シールドは、前記コイルに対向するように設けられた磁性シールド底面部を有し、前記導電性シールドは、前記磁性シールド底面部の前記コイルに対向する面とは反対側の面に沿って設けられる導電性シールド底面部と、前記導電性シールド底面部から前記コイルの周縁部を囲むように構成された導電性シールド側面部とを有し、前記コイルの前記磁性シールド底面部に対向する面とは反対側の面に沿って磁性シートを設けることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載のコイルユニットは、請求項1に記載のものであり、前記磁性シートは、前記コイルの外周側の表面を覆い、前記コイルの内周側の表面は覆わないように、開口部を有する形状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載のコイルユニットは、請求項2に記載のものであり、前記磁性シートは、前記コイルの最外周から最内周までの幅をコイル幅としたときに、前記コイルの最外周から前記コイル幅の1/4以上4/4以下までの範囲の前記コイルの外周側の表面を覆う形状になるような前記開口部を有することを特徴とする
【0009】
請求項4に記載のコイルユニットは、請求項3に記載のものであり、前記磁性シートは、前記コイルの最外周から前記コイル幅のおよそ1/2までの範囲の前記コイルの外周側の表面を覆う形状になるような前記開口部を有することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載のコイルユニットは、請求項2に記載のものであり、前記磁性シートは、前記磁性シートを備えていない状態で、電力伝送時に磁束が鎖交する範囲の前記コイルの外周側の表面を覆う形状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載のコイルユニットは、請求項1に記載のものであり、前記磁性シートは、磁性粉とマトリックス材とを含む混合物からなる磁性コンポジット材のシートであることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載のコイルユニットは、請求項1に記載のものであり、前記磁性シートは、使用周波数における比透磁率が5~50であることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載のコイルユニットは、請求項1に記載のものであり、前記コイルがリッツ線で形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載のコイルユニットは、請求項1に記載のものであり、前記磁性シールドは、前記導電性シールド側面部と前記コイルの周縁部との間に前記磁性シールド底面部に連結された磁性シールド周縁部を有することを特徴する。
【0015】
請求項10に記載の非接触給電システムは、請求項1~8のいずれか一項に記載のコイルユニットを送電側および受電側の少なくともいずれか一方に備える。
【0016】
請求項11に記載の非接触給電システムは、請求項9に記載のコイルユニットを受電側に備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、導電性シールドの渦電流損による温度上昇を抑制することができるとともに、導電性シールドの温度上昇を抑えた非接触給電システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施の形態に係る送電用および受電用のコイルユニットの構成図である。
【
図2】一実施の形態に係る非接触給電システムを説明する回路ブロック図である。
【
図5】FeSiBCrC合金磁性シートの概観写真である。
【
図6】FeSiBCrC合金磁性シートを設けたコイルユニットの概観写真である。
【
図9】導電性シールドの表面における磁束密度の測定ポイントを示す図である。
【
図10】実施例に係る送電用コイルユニットの導電性シールド表面の温度上昇の測定結果である。
【
図11】実施例に係る受電用コイルユニットの導電性シールド表面の温度上昇の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分については、同一のまたは対応する符号を付して説明を省略する場合がある。
【0020】
A.コイルユニット
図1は、一実施の形態に係る送電用および受電用のコイルユニットの構成図である。
【0021】
送電用コイルユニット10は、スパイラル状(渦巻状)に巻回されたコイル20と、磁性シールド底面部31を有する磁性シールド30と、導電性シールド底面部41および導電性シールド側面部42を有する導電性シールド40と、磁性シート50とを備える。また、受電用コイルユニット110も、スパイラル状に巻回されたコイル120と、磁性シールド底面部131を有する磁性シールド130と、導電性シールド底面部141および導電性シールド側面部142を有する導電性シールド140と、磁性シート150とを備える。
【0022】
図1は、送電用および受電用のコイルの半径方向の断面概略図であり、電力の送電・受電のため、送電用コイルユニット10と受電用コイルユニット110は、コイル20とコイル120が互いに対向するように配置されている。
【0023】
送電用コイルユニット10において、磁性シールド底面部31は、コイル20のコイル120に対向する面とは反対側の面に沿って配置されている。また、受電用コイルユニット110においても、磁性シールド底面部131は、コイル120のコイル20に対向する面とは反対側の面に沿って配置されている。
【0024】
さらに、送電用コイルユニット10において、磁性シールド底面部31のコイル20に対向する面とは反対側の面に沿って導電性シールド底面部41が設けられている。導電性シールド40は、この導電性シールド底面部41と、コイル20の周縁部を囲むように設けられた導電性シールド側面部42とを備える。導電性シールド40は、コイル20と磁性シールド30を囲む構造となっている。このとき、導電性シールド側面部42は、導電性シールド底面部41に連結されていてもよい。
【0025】
また、受電用コイルユニット110においても、磁性シールド底面部131のコイル120に対向する面とは反対側の面に沿って導電性シールド底面部141が設けられている。導電性シールド140は、この導電性シールド底面部141と、コイル120の周縁部を囲むように設けられた導電性シールド側面部142とを備える。導電性シールド140は、コイル120と磁性シールド130を囲む構造となっている。このとき、導電性シールド側面部142は、導電性シールド底面部141に連結されていてもよい。
【0026】
磁性シールド30および130は、コイルからの磁束の漏れを防止する磁気シールド材としての役割と電力伝送中にコイルで発生した磁束を還流させるヨーク部材として作用する役割をなしている。また、導電性シールド40および140は、コイルから外部に漏れた磁束が導電性シールドに鎖交する際に生じる渦電流効果を利用して放射電磁界を吸収し磁束の漏洩を抑制する役割をなしている。
【0027】
さらに、送電用コイルユニット10において、磁性シート50は、コイル20の磁性シールド底面部31に対向する面とは反対側の面に沿って設けられている。そして、磁性シート50は、コイル20の外周側の表面を覆う(コイル20の外周側の表面に対向する)ように設けられていることが好ましく、さらに、コイル20の内周側の表面は覆わない(コイル20の内周側の表面に対向しない)ようコイル面上に開口部を有することがより好ましい。これにより、コイル20から発生した磁束をコイルの内側に引き寄せ、導電性シールド40において特に導電性シールド側面部42に鎖交する磁束を減少させることができ、送電用コイルユニット10において導電性シールド40の渦電流損を小さくし発熱を抑えることができる。
【0028】
また、受電用コイルユニット110においても、磁性シート150は、コイル120の磁性シールド底面部131に対向する面とは反対側の面に沿って設けられている。そして、磁性シート150は、コイル120の外周側の表面を覆う(コイル120の外周側の表面に対向する)ように設けられていることが好ましく、さらに、コイル120の内周側の表面は覆わない(コイル120の内周側の表面に対向しない)ようコイル面上に開口部を有することがより好ましい。これにより、コイル120から発生した磁束をコイルの内側に引き寄せ、導電性シールド140において特に導電性シールド側面部142に鎖交する磁束を減少させることができる。これにより、送電用コイルユニット10と同様に、受電用コイルユニット110において導電性シールド140における渦電流損を小さくし発熱を抑えることができる。
【0029】
さらに、受電用コイルユニット110において、磁性シールド130の一部として、導電性シールド側面部142とコイル120の周縁部との間に磁性シールド底面部131に連結された磁性シールド周縁部132を設けてもよい。この構成は、受電用のコイル120が送電用のコイル20より小さい場合、すなわち、受電用のコイル120の長径および短径が送電用のコイル20の長径および短径より短い場合、好ましい。送電用のコイル20から発生する磁束を効率よく受電用のコイル120に引き寄せ磁束をコイルに鎖交できるからである。
【0030】
コイル20および120には、例えば、銅またはマンガニン(登録商標)(銅、マンガン及びニッケルの合金)等の導電性の高い金属材料を用いることができる。また、コイル線材としては、平角線を用いることが好ましく、さらにリッツ線を用いることがより好ましい。リッツ線は、エナメル線を多本数撚り合わせた電線であり、高周波特有の表皮効果および近接効果による交流抵抗の増大を抑制し、コイル自身の温度上昇を防ぐことができるからである。
【0031】
磁性シールド30(31を含む)および130(131、132を含む)には、例えば、NiZn系フェライト焼結体、MnZn系フェライト焼結体等の各種のフェライト材料を用いることができるが、抵抗率の高いNiZn系フェライト焼結体が好ましい。導電性シールド40(41、42を含む)および140(141、142を含む)には、例えば、アルミニウムまたは銅等の導電性の高い金属材料を用いることができる。
【0032】
磁性シート50および150は、使用周波数における比透磁率が、5~50の範囲が好ましく、より好ましは5~20の範囲である。比透磁率が50より大きいと送電用のコイル20と受電用のコイル120の間の結合係数が小さく、伝送効率が悪くなるからである。
【0033】
また、比透磁率が5~50の範囲のとき、磁性シートの膜厚は、3mm以下が好ましく、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。膜厚が3mmを超えると送電用のコイル20と受電用のコイル120の間の結合係数が小さくなり、伝送効率が悪くなるからである。
【0034】
磁性シート50および150には、公知の磁性材を用いることができるが、磁性粉とマトリックス材とを混合した混合物からなる磁性コンポジット材のシートを用いることが好ましい。磁性粉は、前述の比透磁率を比較的得やすい点から、例えば、鉄系アモルファス磁性粉が好ましく、中でもFeSiBCrC、FeBCu、FeSiBCuまたはFeSiBNbCuなどの合金の磁性粉がより好ましい。マトリックス材の成分は、特に限定されないが、例えば、シリコーン、エポキシ、アクリル等の樹脂材料、水ガラス等の無機材料を用いることができる。これらの中でも、機械的強度を向上させる点で、樹脂材料が好ましく、シリコーンがより好ましく、主剤と硬化剤とを混合する二液型のシリコーンゴム系のバインダがさらに好ましい。
【0035】
なお、磁性シート50(150)は、磁性シート50(150)を備えていない状態で、送電用のコイル20に通電した電力伝送時(非接触給電時)に、磁束が鎖交する範囲のコイル20(120)の表面を覆うように設けられていることが好ましく、さらに、好ましくは磁束が鎖交しない範囲のコイル20(120)の表面には設けられていない(コイルの表面を覆わない)ことである。
【0036】
ここで、磁束が鎖交する範囲とは、理想的には、磁束の100%が鎖交する範囲であるが、現実的には、磁束のほとんどが鎖交する範囲のことであり、好ましくは磁束の97%以上が鎖交する範囲であり、より好ましくは磁束の98%以上が鎖交する範囲であり、さらにより好ましくは磁束の99%以上が鎖交する範囲である。逆に言うと、磁束が鎖交しない範囲とは、理想的には、磁束の0%が鎖交する範囲であるが、現実的には、磁束のほとんどが鎖交しない範囲のことであり、好ましくは磁束の3%以下が鎖交する範囲であり、より好ましくは磁束の2%以下が鎖交する範囲であり、さらにより好ましくは磁束の1%以下が鎖交する範囲である。
【0037】
電力伝送時に磁束が鎖交する部位は、コイル20および120の外周側の表面であり、磁束が鎖交しない部位は、コイル20および120の内周側の表面である。つまり、磁性シート50(150)は、コイル20(120)の外周側の表面を覆い、コイル20(120)の内周側の表面は覆わないように、開口部を有する形状に形成されていることが好ましい。磁性シートが、磁束が鎖交するコイルの表面上に設けられることよって、コイルから発生した磁束をコイルの内側に引き寄せ、磁束が導電性シールドに漏れるのを抑制できるからであり、また、磁束が鎖交しないコイルの表面上にまで設けると送電用のコイル20と受電用のコイル120の間の結合係数が小さくなり、伝送効率が下がるからである。
【0038】
このため、コイル20(120)の半径方向において、コイル20(120)の最外周から最内周までの幅を「コイル幅」としたときに、例えば、磁性シート50(150)は、コイル20(120)の最外周からコイル幅の1/4以上4/4以下(4/4未満)までの範囲の表面を覆う形状になるような開口部を有する形状に形成されていることが好ましい。逆に言うと、例えば、磁性シート50(150)は、コイル20(120)の最内周からコイル幅の3/4以下までの範囲の表面を覆わないような開口部を有する形状に形成されていることが好ましい。
【0039】
また、後述の実験から、コイルの半径方向において、コイルの最外周から内周に向かってコイル幅のおよそ1/2までの範囲のコイルの外周側で磁束はほぼコイルに鎖交し、最内周から外周に向かってコイル幅のおよそ1/2までの範囲の内周側では磁束はコイルにほぼ鎖交しないといえる。そこで、コイルの半径方向の磁性シート50および150の長さは、コイル20および120の半径方向のコイル幅(すなわち、コイルの最外周から最内周までコイルを横切る長さ)のおよそ半分とすることができる。そして、コイルの最外周から内周に向かってコイルの幅のおよそ1/2までの範囲のコイルの外周側で磁束がコイルに鎖交することから、磁性シート50および150は、コイルが楕円形状(円形状を含む)の場合、コイルの内周側の中央部にほぼ楕円形状(円形状を含む)の大きな穴が空いた(開口部がある)構造となる。つまり、磁性シート50(150)は、コイル20(120)の最外周からコイル幅のおよそ1/2までの範囲のコイルの外周側の表面を覆う形状になるような開口部を有する形状になる。
【0040】
なお、磁性シート50(150)がコイル20(120)の外周側の表面を覆う範囲は任意であり、形状、構造、磁気的特性、電気的特性などの必要性に応じて適宜設定できる。逆に言うと、磁性シート50(150)がコイル20(120)の内周側の表面を覆わない範囲は任意であり、形状、構造、磁気的特性、電気的特性などの必要性に応じて適宜設定できる。つまり、磁性シート50(150)に形成される開口部の形状は任意であり、形状、構造、磁気的特性、電気的特性などの必要性に応じて適宜設定できる。
【0041】
B.非接触給電システム
図2は、一実施の形態に係る非接触給電システムを説明する回路ブロック図である。この例では、無人搬送車(Automatic Guided Vehicle)に適用したものである。この非接触給電システムは、充電器として機能する送電装置60と無人搬送車本体74の電源となるバッテリー73を含む受電装置70とを備えている。送電装置60と受電装置70は、電磁的に結合することにより、非接触で電力送電を行う非接触給電システムを形成するようになっている。
【0042】
送電装置60は、電源61と整流回路62と送電回路63と送電用コイルユニット210とを備えている。電源61は、例えば200Vまたは400V等の三相交流電圧あるいは100Vの単相交流電圧を供給する系統電源である。整流回路62は、入力端が電源61に接続されるとともに出力端が送電回路63に接続されており、電源61から供給される交流電圧を整流して直流電圧に変換し、変換した直流電圧を送電回路63に出力する。送電回路63は、入力端が整流回路62に接続されるとともに出力端が送電用コイルユニット210の両端に接続されており、整流回路62からの直流電圧を使用して所定の周波数の交流を生成する回路であり、その生成した交流電圧を送電用コイルユニット210に供給するようになっている。
【0043】
受電装置70は、受電用コイルユニット310と受電回路71と充放電制御回路72とバッテリー73とを備えている。受電用コイルユニット310は、送電装置60の送電用コイルユニット210と接近させて対向させ使用する場合に、両コイルユニット210と310が電磁結合して両者の間で変圧器を形成するようになっている。この電磁誘導により受電用コイルユニット310に誘起される交流電圧は、受電回路71に供給され、受電回路71において整流されて直流電圧に変換される。そして、受電回路71から出力される直流電圧は、充放電制御回路72を介してバッテリー73に供給され、バッテリー73を充電するようになっている。充放電制御回路72は、受電回路71からの出力によりバッテリー73を充電する場合にはその充電の制御を行い、バッテリー73で負荷である無人搬送車本体74を動作させる場合には放電の制御を行う回路である。バッテリー73は、放電後に充電により繰り返して使用できる再充電が可能な二次電池(例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等)である。
【0044】
本実施の形態に係る非接触給電システムにおいては、送電用コイルユニット210に、前述した本発明に係るコイルユニットを用いることができる。これにより、導電性シールドの渦電流損による発熱を低減できるコイルユニットを使用しているので、導電性シールドの温度上昇を抑えた非接触給電システムを提供できる。また、受電用コイルユニット310にも、前述した本発明に係るコイルユニットを用いることができる。これにより、さらに導電性シールドの発熱を低減し温度上昇を抑制できる非接触給電システムを提供できる。
【0045】
本実施の形態に係る非接触給電システムは、無人搬送車用に限定されるものではない。自動車や携帯電話やスマートフォン、タブレットなどの電子機器の電力給電に用いられてもよい。また、本発明に係るコイルユニットは、誘導式加熱装置などにも適用されてもよい。さらに、本発明に係るコイルユニットは、電磁誘導方式の非接触給電システムにおける使用に限定されない。磁界共鳴方式の非接触給電システムにも適用されてもよい。
【実施例0046】
以下、本発明の実施形態について、さらに実施例を用いて説明する。ただし、本発明はここで述べられる適用例に限定されるものではない。
【0047】
A.コイルユニットの作製
図3および
図4は、作製した非接触給電用コイルユニットの外観図である。
図3は送電用コイルユニット、
図4は受電用コイルユニットである。
図3、
図4ともに、(a)は上面図、(b)は(a)のA-A’線断面図であり、(c)は、(a)において磁性シート50および150を除いてコイル20および120を露出させた状態の上面図である。各図には外形寸法を表す数値が記されている。単位は「ミリメートル(mm)」である。
【0048】
A-1.コイル、磁性シールド、導電性シールド
送電用のコイル20および受電用のコイル120は、何れもスパイラル状に巻回されており上から見ると楕円形状となっている。コイル20の長軸の長さ(長径)は160mm、短軸の長さ(短径)は120mmである。コイル巻数は20.5巻である。また、コイル120の長径は150mm、短径は80mmである。また、コイル巻数は9.5巻である。線材には、送電用、受電用ともに素線数4200本、素線径φ0.06mmの銅リッツ線を用いた。
【0049】
送電用コイルユニットの磁性シールド30は、コイル20の底面の全面に対向して配置された磁性シールド底面部31を備える。また、受電用コイルユニットの磁性シールド130は、コイル120の底面の全面に対向して配置された磁性シールド底面部131と、これに連結して配置された磁性シールド周縁部132を備える。磁性シールドの厚さは、何れも1mmである。磁性シールド30(31を含む)および130(131、132を含む)には、MnZn系フェライト焼結体(TDK製、型番PC40)を用いた。
【0050】
送電用コイルユニットにおいて、導電性シールド40は、導電性シールド底面部41と導電性シールド側面部42で構成される箱型であり、コイル20と磁性シールド30を囲む構造となっている。導電性シールド40の外形は、縦190mm×横150mm×高さ42mmであり、厚さは1mmである。
【0051】
また、受電用コイルユニットにおいても、導電性シールド140は、導電性シールド底面部141と導電性シールド側面部142で構成される箱型であり、コイル120と磁性シールド130を囲む構造となっている。導電性シールド140の外形は、縦170mm×横100mm×高さ42mmであり、厚さは1mmである。導電性シールド40、140共に、材質は、アルミニウムである。
【0052】
A-2.磁性シート
(鉄系アモルファス合金による磁性シート)
磁性シートは、鉄系アモルファス合金粉とシリコーン系のバインダを混合し撹拌したものを圧延機で成形し、その後加熱して焼結を行い、作製した。磁性シート1枚の厚さは1mmである。鉄系アモルファス合金粉には、球形状平均粒径2.6μmのFe87.83Si6.59B2.54Cr2.53C0.51合金(エプソンアトミックス製、鋼種:AW2-08)を使用した(本明細書において、Fe87.83Si6.59B2.54Cr2.53C0.51合金の鉄系アモルファス合金粉を用いた磁性シートを「FeSiBCrC合金磁性シート」という。)。FeSiBCrC合金磁性シートの磁気特性は、飽和磁束密度が0.8T(テスラ)、80kHzおよび85kHz(無人搬送車で使用されている周波数)で測定した複素比透磁率は、実部μ’:10.3、虚部μ’’:0.044であった。また、バインダには、二液型液状シリコーンゴムKE-1031-A/B(信越化学工業製)を用いた。バインダ体積比は57Vol%であった。
【0053】
図3において、送電用コイルユニットの磁性シート50は、外形が縦188mm×横148mmの長方形である。また、
図4において、受電用コイルユニットの磁性シート150は、外形が縦168mm×横98mmの長方形である。磁性シート50および150は、導電性シールド40と140のボックスにすっぽりと入る形状となっている。
【0054】
磁性シート50および150は、何れも中央部に開口している部分(開口部)があり、フレームの幅が広い額縁のような形状となっている。これにより、コイルの外周側の表面に磁性シートが配置され(付され)、コイルの内周側の表面には磁性シートが配置され(付され)ないような構造となっている。開口部の大きさは、磁性シート50が、コイルの長径方向に120mm、コイルの短径方向に90mmである。また、磁性シート150は、コイルの長径方向に130mm、コイルの短径方向に66mmである。なお、開口部の四隅は、磁性シート50、150共に巻回されたコイルの形状に沿って概ね楕円形状のラインとなっている。
【0055】
コイルの表面を覆う磁性シートの配置領域は、磁束測定用サーチコイルを用いて、磁性シートを備えない状態で、電力伝送中に送電用のコイル20および受電用のコイル120の表面の磁束を測定し、決定した。すなわち、送電用コイルユニットにおいては、電力伝送時にコイルから磁束が発生しているコイル20の表面部分に磁性シートを配置し、磁束が発生していないコイル20の表面部分には磁性シートを配置しないよう磁性シート50の外形、開口部の大きさ・形状を設計した。また、受電用コイルユニットについては、電力伝送時に送電用のコイル20からの磁束が鎖交しているコイル120の表面部分に磁性シートを配置し、磁束が鎖交しないコイルの表面部分には磁性シートを配置しないよう磁性シート150の外形、開口部の大きさ・形状を設計した。
【0056】
送電用コイル20からの磁束発生の部分と受電用コイル120の磁束鎖交部分は、例えば、送電用コイル20の表面がN極の場合、受電用コイル120の表面が逆極性のS極となるような関係にある。このとき、磁性シート50および150のコイルの長径方向および短径方向の幅(額縁のフレームのコイルの長径方向および短径方向の幅)は、それぞれコイルの長径方向および短径方向の幅のおよそ半分であった。
【0057】
図5は、作製したFeSiBCrC合金磁性シートの概観写真である。左が送電用のコイルユニット用、右が受電用のコイルユニット用のFeSiBCrC合金磁性シートである。前述したように、それぞれ中央部には開口部がある。
【0058】
図6は、当該FeSiBCrC合金磁性シートをコイル表面上に設けたコイルユニットの概観写真である。左が送電用コイルユニット、右が受電用コイルユニットである。FeSiBCrC合金磁性シートはカプトン(登録商標)テープでコイル表面を覆うように固定した。送電用コイルユニット、受電用コイルユニットの何れも、FeSiBCrC合金磁性シートの中央部に開口部があるので、コイルの内周側の表面にはFeSiBCrC合金磁性シートが無くコイルが露出し、コイルの外周側にのみFeSiBCrC合金磁性シートが覆われている。
【0059】
(実施例1~4)
ここで、送電用コイルユニット、受電用コイルユニット共に、FeSiBCrC合金磁性シート(厚さ1mm)1枚をコイル表面に配置した場合を「実施例1」、当該FeSiBCrC合金磁性シート2枚をコイル表面に配置した場合を「実施例2」とする。したがって、実施例1の磁性シート50および150の厚さは1mm、実施例1の磁性シート50および150の厚さは2mmである。また、当該FeSiBCrC合金磁性シート(厚さ1mm)1枚を、送信用コイルユニットのみに配置した場合を「実施例3」、受信用コイルユニットのみに配置した場合を「実施例4」とする。
【0060】
(MnZnフェライトシートによる磁性シート)
また、市販のMnZnフェライトシート(戸田工業製、PM12プレート)の複数枚をカプトン(登録商標)テープで張り合わせた磁性シート(本明細書において、「MnZn磁性シート」という。)も作製した。
図7は、このMnZn磁性シートの概観写真である。左が送電用のコイルユニット用、右が受電用のコイルユニット用である。MnZn磁性シートの形状は、送電用コイルユニット、受電用コイルユニット共に、FeSiBCrC0合金磁性シートの形状とほぼ同じとした。MnZn磁性シートの厚さは1mmで、80kHzの周波数で測定した複素比透磁率の実部μ’は3200であった。
【0061】
(実施例5)
MnZn磁性シート(厚さ1mm)1枚を、送電用コイルユニットおよび受電用コイルユニットの両方に適用しそれぞれのコイルの表面全体を覆うように配置した場合を「実施例5」とする。実施例5の磁性シートは、開口部を有していない。
【0062】
(比較例)
また、送電用コイルユニットおよび受電用コイルユニットの両方とも磁性シートを備えない場合を「比較例」とする。
【0063】
B.インピーダンスおよび結合係数の測定
コイルのインピーダンス測定には、インピーダンスアナライザ(Agilent Technologies社製、4294A)を用いた。送電用のコイルのインダクタンスL1および受電用のコイルのL2を測定した。また、コイル間距離(伝送距離)=30mmの条件で、コイルの同相直列接続でのインダクタンスLaおよび逆相接続でのインダクタンスLbを測定した。相互インダクタンスM、結合係数kは、式(1)および(2)を用いて算出した。
【0064】
【0065】
【0066】
また、Q値は、式(3)より算出した。ここで、ω=2πf(f:周波数)、i=1、2で、L1およびL2はそれぞれ送電用および受電用のコイルのインダクタンス、R1およびR2はそれぞれ送電用および受電用のコイルの抵抗であり、Q1およびQ2はそれぞれ送電用および受電用のコイルのQ値である。
【0067】
【数3】
さらに、結合係数kおよびコイルのQ値から、式(4)を用いてコイルの性能指標Uを算出した。そして、性能指標Uから式(5)を用いてコイル間効率ηcを算出した。
【0068】
【0069】
【0070】
表1は、伝送距離30mmの条件の下、周波数80kHzで測定した受電用のコイルと送電用のコイルの結合係数kおよびコイル間効率ηCである。実施例1、2および5、ならびに比較例の場合について測定した結果である。
【0071】
【0072】
磁性シートが無い比較例に比べ、実施例1および2の結合係数kは小さくコイル間効率ηCは僅かに低かった。しかし、比較例に比べると、結合係数kは大きくコイル間効率ηCは高かった。実施例5では、MnZnフェライトの比透磁率が高すぎるため、送電用のコイルから発生した磁束がMnZn磁性シートに引き寄せられて受電用のコイルに鎖交しなくなったためと考えられる。一方、実施例1および2の場合は、比透磁率が10程度小さく、結合係数kやコイル間効率ηCへの影響は実施例5に比べて小さかったと考えられる。
【0073】
さらに、表2は、伝送距離30mmの条件の下、周波数85kHzで測定した受電用のコイルと送電用のコイルの結合係数kおよびコイル間効率ηCである。実施例1、3および4ならびに比較例の場合について測定した結果である。
【0074】
【0075】
比較例に比べ、実施例3および4の結合係数kは、実施例1と同様、小さくなり、コイル間効率ηCも低くなった。磁性シートに送電用のコイルから発生した磁束が引き寄せられてコイル間の結合が小さくなったためと考えられるが、例えば、コイル間効率ηCの減少は僅かであり、磁性シートの影響は小さいといえる。
【0076】
C.電力伝送特性
図8は、作製した本発明のコイルユニットの電力伝送実験に用いた回路の回路図である。送電用コイルユニットと受電用コイルユニットのコイル間隔を30mmに固定し、電力伝送の実験を行った。入力電力Pi=800W(入力電力Vi=57V、入力電流Ii=14A)、出力電圧が600W(出力電圧V0=30V、出力電流I0=20A)となるよう調整した。この電力は無人搬送車を想定している。
【0077】
C-1.磁束密度測定
上記条件の下で、導電性シールドに鎖交する磁束の磁束密度を測定した。
図9は、導電性シールド表面における測定ポイントを示す図である。黒丸で表した点A~CおよびA’~C’が磁束密度の測定ポイントである。x軸方向がコイル厚み方向、y軸方向がコイルの長径方向、z軸方向がコイルの短径方向である。磁束密度の測定には、磁界測定器(HIOKI製、FT3470-55)を用い、x、yおよびzの3方向のベクトルを合成して磁束密度を計算した。
【0078】
表3は、
図9の各測定点で測定した磁束密度の結果である。実施例1、3および4、ならびに比較例の場合について測定した。磁性シートが無い比較例に比べて、受電用または送電用のコイルユニットの何れかに磁性シートを適用した実施例1、3および4の場合、点A~CおよびA’~C’の全ての点で導電性シールド表面の磁束密度は減少した。そして、受電用および送電用のコイルユニットの両方に磁性シートを適用した実施例1が、最も磁束密度が減少し、このとき、磁束密度は、比較例に比べて、11.6%~21.1%減少した。
【0079】
【0080】
C-2.電力伝送効率
電力の測定にはパワーアナライザ(YOKOGAWA製、WT1800)を用いた。一次整流後(送電側直流電源後)の電力Piと二次整流後(受電側直流電源後)の電力Poから式(6)を用いて電力の伝送効率ηDCを算出した。
【0081】
【0082】
79~90kHzにおいて電力伝送を行ったところ80kHzで最大効率となった。そこで、80kHzにおいて伝送効率ηDCを評価し、磁性シートの有無で比較した。その結果、比較例の場合、伝送効率ηDCは75.3%であったのに対し、実施例1の伝送効率ηDCは75.1%であった。したがって、磁性シートの適用により、伝送効率は0.2%(=75.3%-75.1%)低下することが分かった。これは、磁性シートによって結合係数が低下しコイル間効率が低下したためであると考えられる。
【0083】
C-3.温度上昇特性
図10および
図11は、それぞれ送電用および受電用のコイルユニットについて、電力伝送開始から導電性シールド表面の温度を測定し、室温からの温度上昇ΔTの時間依存の結果である。実施例1と比較例、すなわち磁性シートの適用の有無で比較した。温度は、サーモグラフィ(testo社製、0563 0885)を用いて測定した。
【0084】
実施例1において時間ゼロでの温度は20℃(室温)、比較例において時間ゼロでの温度は21℃(室温)であった。したがって、実施例1についての温度上昇ΔTは、20℃からの温度上昇であり、比較例についての温度上昇ΔTは、21℃からの温度上昇である。
【0085】
図10および
図11において、実施例1および比較例の何れの場合も、電力伝送の開始から約180分で導電性シールドの温度上昇はほぼ一定となり温度は平衡に達した。
【0086】
180分後の導電性シールドの温度上昇ΔTで評価すると、
図10の送電用コイルユニットでは、比較例については45.2℃であったが、実施例1については38.1℃で7.1℃低くなっていることが分かった。また、
図11の受電用コイルユニットについても、比較例については59.2℃であったが、実施例1については47.9℃となり11.3℃低くなっているのが分かった。実施例1については、磁性シートを適用することにより導電性シールドに鎖交する磁束が減少し、渦電流損が減少して導電性シールドの発熱が抑制され温度上昇が抑えられたためと考えられる。
【0087】
以上から、磁性シートによる導電性シールドの温度上昇の抑制の効果を確認することができた。