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特開2023-51812光多入力多出力(MIMO)デマルチプレクサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051812
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】光多入力多出力(MIMO)デマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/67 20130101AFI20230404BHJP
   H04J 14/06 20060101ALI20230404BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20230404BHJP
   G02F 2/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H04B10/67
H04J14/06
G02F1/01 C
G02F2/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022152587
(22)【出願日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】17/485,215
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】522361696
【氏名又は名称】アロエ セミコンダクター インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー アール. ドエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マルチステージ光MIMOデマルチプレクサを提供する。
【解決手段】光偏波デマルチプレクサ200は、偏光スプリッタ・ローテータ(PBSR)202、2つの50/50カプラ204、206及び2つの位相シフタ208、210からなる。2つの位相シフタ208、210は、別の制御信号Φ212及びΦ214によって制御される。2つの位相シフタ208、210のそれぞれは、差動位相シフタである。位相シフタ208は、干渉計の一方のアームで一方向に光位相を調整し、他方のアームで反対方向に光位相を調整する2つの個別の位相シフト素子208a、208bを有する干渉計として実装される。位相シフタ210についても同様の構造を示している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の1対の光伝送路に光を入力するように構成された1対のMIMO入力;
該第1の1対の光伝送路の間に第1の相対位相シフトを適用するように構成された第1の光位相シフタ;
該第1の1対の光伝送路を結合し、第2の1対の光伝送路を出力するように構成された第1の2x2光カプラ;
該第2の1対の光伝送路の間に第2の相対位相シフトを適用するように構成された第2の光位相シフタ;
該第2の1対の光伝送路を結合し、第3の1対の光伝送路を出力するように構成された第2の2x2光カプラ;
該第3の1対の光伝送路の間に第3の相対位相シフトを適用するように構成された第3の光位相シフタ;
該第3の1対の光伝送路を結合し、第4の1対の光伝送路を出力するように構成された第3の2x2光カプラ;および
該第4の1対の光伝送路を出力するように構成された1対のMIMO出力
を備える、2x2光多入力多出力(MIMO)デマルチプレクサ。
【請求項2】
前記第1の光位相シフタは、2進数である、前記第1の相対位相シフトの値を適用するように構成される、請求項1に記載の2x2光MIMOデマルチプレクサ。
【請求項3】
前記第1の相対位相シフトの値は、c+π/2とc-π/2(cは実数)の間の2進数である、請求項2に記載の2x2光MIMOデマルチプレクサ。
【請求項4】
前記第2の光位相シフタは、-nπと+nπ(nは整数)を含む有限の範囲内で前記第2の相対位相シフトの値を適用するように構成される、請求項1に記載の2x2光MIMOデマルチプレクサ。
【請求項5】
前記第2の光位相シフタは、範囲(-nπ、+nπ)内でアナログ動作するように構成される、請求項4に記載の2x2光MIMOデマルチプレクサ。
【請求項6】
前記第3の光位相シフタは、前記第1の相対位相シフトの値によって決まる有限の範囲内で前記第3の相対位相シフトの値を適用するように構成される、請求項1に記載の2x2光MIMOデマルチプレクサ。
【請求項7】
前記第3の光位相シフタは、前記第1の相対位相シフトの値がc-π/2であることに基づいて、0と+nπ(nは整数)の間で動作するように構成され、前記第1の相対位相シフトの値がc+π/2であることに基づいて、-nπと0の間で動作するように構成される、請求項6に記載の2x2光MIMOデマルチプレクサ。
【請求項8】
前記第3の光位相シフタは、範囲(0、+nπ)内または範囲(-nπ、0)内でアナログ動作するように構成される、請求項6に記載の2x2光MIMOデマルチプレクサ。
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサ;および
該少なくとも1つのプロセッサによって実行されることに基づいて、前記第1の相対位相シフト、前記第2の相対位相シフト、および前記第3の相対位相シフトの値を制御するための動作を実行する命令を格納する少なくとも1つのメモリ、
をさらに備える、請求項1に記載の2x2光MIMOデマルチプレクサ。
【請求項10】
前記第1の1対の光伝送路間に第1の相対減衰を適用するように構成された第1の光減衰器をさらに備える、請求項1に記載の2x2光MIMOデマルチプレクサ。
【請求項11】
前記第3の1対の光伝送路間に第2の相対減衰を適用するように構成された第2の光減衰器をさらに備える、請求項10に記載の2x2光MIMOデマルチプレクサ。
【請求項12】
前記第1の光位相シフタ、前記第2の光位相シフタ、および前記第3の光位相シフタのそれぞれは、2π以下の位相シフト範囲を有する、請求項1に記載の2x2光MIMOデマルチプレクサ。
【請求項13】
入力光を受け取るように構成された入力ポート;
該入力光に対して、3ステージの光位相シフトを用いて適応型2×2光MIMO偏波多重分離を行い、第1の光信号と第2の光信号とを出力する手段;および
前記第1の光信号と前記第2の光信号とを検出するように構成された少なくとも1つの光検出器、
を備える、光多入力多出力(MIMO)レシーバ。
【請求項14】
2x2光多入力多出力(MIMO)多重分離を実行する方法であって、該方法は、
1対のMIMO入力を介して、第1の1対の光伝送路に光を受け取ること;
該第1の1対の光伝送路の間に第1の相対位相シフトを適用する第1の光位相シフタを制御すること;
該第1の1対の光伝送路を第1の2x2光カプラと結合し、第2の1対の光伝送路を出力すること;
該第2の1対の光伝送路の間に第2の相対位相シフトを適用する第2の光位相シフタを制御すること;
該第2の1対の光伝送路を第2の2x2光カプラと結合し、第3の1対の光伝送路を出力すること;
該第3の1対の光伝送路の間に第3の相対位相シフトを適用する第3の光位相シフタを制御すること;
該第3の1対の光伝送路を第3の2x2光カプラと結合し、第4の1対の光伝送路を出力すること;および
該第4の1対の光伝送路を1対のMIMO出力を介して出力すること、
を含む、前記方法。
【請求項15】
前記第1の光位相シフタを制御することは、2進数である、前記第1の相対位相シフトの値を適用することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の位相シフトの値は、c+π/2とc-π/2(cは実数)の間の2進数である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の光位相シフタを制御することは、-nπと+nπ(nは整数)を含む有限の範囲内で前記第2の相対位相シフトの値を適用することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の光位相シフタを制御することは、範囲(-nπ、+nπ)内のアナログ動作によって実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第3の光位相シフタを制御することは、前記第1の相対位相シフトの値によって決まる有限の範囲内で前記第3の相対位相シフトの値を適用することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記第3の光位相シフタを制御することは、
前記第1の相対位相シフトの値がc-π/2であることに基づいて、0と+nπ(nは整数)の間で動作し、前記第1の相対位相シフトの値がc+π/2であることに基づいて、-nπと0の間で動作するように、前記第3の光位相シフタを制御すること、
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第3の光位相シフタを制御することは、前記第1の相対位相シフトの値に応じて、範囲(0、+nπ)内または範囲(-nπ、0)内のアナログ動作によって実行される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記1対のMIMO出力のうちの第1のMIMO出力において、第1の偏波チャネル上の第1の基準信号を検出すること、
前記1対のMIMO出力のうちの第2のMIMO出力において、第2の偏波チャネル上の第2の基準信号を検出すること、
該第1の基準信号と該第2の基準信号から測定された前記多重分離における誤差量を決定すること、および
該第1の基準信号と該第2の基準信号から測定された該誤差量に基づいて、前記第1の光位相シフタ、前記第2の光位相シフタ、または前記第3の光位相シフタのうちの少なくとも1つを制御すること、
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記2x2光MIMO多重分離は、動作中に、前記第1の光位相シフタ、前記第2の光位相シフタ、または前記第3の光位相シフタのいずれもリセットすることなく、エンドレスに実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
光MIMO偏波多重分離を実行するように構成された光多入力多出力(MIMO)レシーバであって、
入力光を受け取るように構成された入力ポート;
該入力光を1対の光伝送路に分割するように構成された偏光ビームスプリッタ・ローテータ(PBSR);
該1対の光伝送路の間に相対位相シフトを適用するように構成された光位相シフタ;
該1対の光伝送路を結合するように構成された2x2光カプラ;および
該1対の光伝送路間に適用される相対位相シフトのための、2つの動作状態を有するバイナリ制御を用いて該光位相シフタを制御するように構成されたコントローラ、
を備える、前記光多入力多出力(MIMO)レシーバ。
【請求項25】
光MIMO偏波多重分離を実行するように構成された光多入力多出力(MIMO)レシーバであって、
入力光を受け取るように構成された入力ポート;
該入力光を1対の光伝送路に分割するように構成された偏光ビームスプリッタ・ローテータ(PBSR);
該1対の光伝送路間に相対減衰を適用するように構成された光減衰器;
該1対の光伝送路を結合するように構成された2x2光カプラ;および
該光減衰器によって適用される該相対減衰を制御するように構成されたコントローラ、
を備える、前記光多入力多出力(MIMO)レシーバ。
【請求項26】
前記光減衰器は、(i)前記1対の光伝送路の一方に第1の減衰を適用し、(ii)前記1対の光伝送路の他方に第2の減衰を適用するように構成された差動光減衰器であり、該第1の減衰と該第2の減衰は、デシベルの大きさが等しく、デシベルの符号が反対である、請求項25に記載の光多入力多出力(MIMO)レシーバ。
【請求項27】
第2の1対の光伝送路間に第2の相対減衰を適用するように構成された第2の光減衰器をさらに備え、
該第2の1対の光伝送路は、該光減衰器によって減衰された光を含み、
前記コントローラは、該第2の光減衰器によって適用される該第2の相対減衰を制御するようにさらに構成される、請求項25に記載の光多入力多出力(MIMO)レシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、光デマルチプレクサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信システムでは、多重化技術(偏波分割多重化(polarization-division multiplexing:PDM)など)によって、異なる信号を異なるチャネル(例えば、同じ搬送周波数の異なる偏波モード)で多重化し、単一のファイバを介して同時に伝送することで通信容量および/または光子効率を向上させることができる。しかしながら、PDMを使用する際の課題は、偏波モードが光通信システム内を伝播するときに、例えば、ガラスファイバの応力(曲げおよびねじれ)、周囲の温度変化、またはその他の通信システムの非理想的性質によって、ランダムで予測できない回転および損失を受ける傾向があることである。その結果、偏波モードの異なる信号同士が、それらが受信される時に混在することとなる。このようなシナリオでは、多入力多出力(multiple-input-multiple-output:MIMO)多重分離を介して、レシーバで信号を分離する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の実装は、一般に、光偏波デマルチプレクサなどの光デマルチプレクサを対象とする。
【0004】
1つの一般的な態様は、第1の1対の光伝送路に光を入力するように構成された1対のMIMO入力;該第1の1対の光伝送路の間に第1の相対位相シフトを適用するように構成された第1の光位相シフタ;該第1の1対の光伝送路を結合し、第2の1対の光伝送路を出力するように構成された第1の2x2光カプラ;該第2の1対の光伝送路の間に第2の相対位相シフトを適用するように構成された第2の光位相シフタ;該第2の1対の光伝送路を結合し、第3の1対の光伝送路を出力するように構成された第2の2x2光カプラ;該第3の1対の光伝送路の間に第3の相対位相シフトを適用するように構成された第3の光位相シフタ;該第3の1対の光伝送路を結合し、第4の1対の光伝送路を出力するように構成された第3の2x2光カプラ;および該第4の1対の光伝送路を出力するように構成された1対のMIMO出力を含む、2x2光多入力多出力(MIMO)デマルチプレクサを含む。この態様の他の実施形態は、各々が方法の動作を実行するように構成された、1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録された、対応するコンピュータシステム、デバイス、およびコンピュータプログラムを含む。
【0005】
実装には、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。第1の光位相シフタは、2進数である、第1の相対位相シフトの値を適用するように構成される、2x2光MIMOデマルチプレクサ。第1の相対位相シフトの値は、c+π/2とc-π/2(cは実数)の間の2進数である、2x2光MIMOデマルチプレクサ。第2の光位相シフタは、-nπと+nπ(nは整数)を含む有限の範囲内で第2の相対位相シフトの値を適用するように構成される、2x2光MIMOデマルチプレクサ。第2の光位相シフタは、範囲(-nπ、+nπ)内でアナログ動作するように構成される、2x2光MIMOデマルチプレクサ。第3光位相シフタは、第1の相対位相シフトの値によって決まる有限の範囲内で第3の相対位相シフトの値を適用するように構成される、2x2光MIMOデマルチプレクサ。第3の光位相シフタは、第1の相対位相シフトの値がc-π/2であることに基づいて、0と+nπ(nは整数)の間で動作するように構成され、第1の相対位相シフトの値がc+π/2であることに基づいて、-nπと0の間で動作するように構成される、2x2光MIMOデマルチプレクサ。第3の光位相シフタは、範囲(0、+nπ)内または範囲(-nπ、0)内でアナログ動作するように構成される、2x2光MIMOデマルチプレクサ。少なくとも1つのプロセッサと、該少なくとも1つのプロセッサによって実行されることに基づいて、第1の相対位相シフト、第2の相対位相シフト、および第3の相対位相シフトの値を制御するための動作を実行する命令を格納する少なくとも1つのメモリと、をさらに含む、2x2光MIMOデマルチプレクサ。第1の1対の光伝送路間に第1の相対減衰を適用するように構成された第1の光減衰器をさらに含む、2x2光MIMOデマルチプレクサ。第3の1対の光伝送路間に第2の相対減衰を適用するように構成された第2の光減衰器をさらに含む、2x2光MIMOデマルチプレクサ。第1の光位相シフタ、第2の光位相シフタ、および第3の光位相シフタのそれぞれは、2π以下の位相シフト範囲を有する、2x2光MIMOデマルチプレクサ。記載された技術の実装は、ハードウェア、方法またはプロセス、またはコンピュータアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含み得る。
【0006】
別の一般的な態様は、入力光を受け取るように構成された入力ポート;該入力光に対して、3ステージの光位相シフトを用いて適応型2×2光MIMO偏波多重分離を行い、第1の光信号と第2の光信号とを出力する手段;および第1の光信号と第2の光信号とを検出するように構成された少なくとも1つの光検出器を含む、光多入力多出力(MIMO)レシーバを含む。この態様の他の実施形態は、各々が方法の動作を実行するように構成された、1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録された、対応するコンピュータシステム、デバイス、およびコンピュータプログラムを含む。
【0007】
実装には、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。3ステージの光位相シフトの各ステージが、2π以下の範囲を有する光MIMOレシーバ。記載された技術の実装は、ハードウェア、方法またはプロセス、またはコンピュータアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含み得る。
【0008】
別の一般的な態様は、2x2光多入力多出力(MIMO)多重分離を実行する方法を含み、該方法は、1対のMIMO入力を介して、第1の1対の光伝送路に光を受け取ること;該第1の1対の光伝送路の間に第1の相対位相シフトを適用する第1の光位相シフタを制御すること;該第1の1対の光伝送路を第1の2x2光カプラと結合し、第2の1対の光伝送路を出力すること;該第2の1対の光伝送路の間に第2の相対位相シフトを適用する第2の光位相シフタを制御すること;該第2の1対の光伝送路を第2の2x2光カプラと結合し、第3の1対の光伝送路を出力すること;該第3の1対の光伝送路の間に第3の相対位相シフトを適用する第3の光位相シフタを制御すること;該第3の1対の光伝送路を第3の2x2光カプラと結合し、第4の1対の光伝送路を出力すること;および該第4の1対の光伝送路を1対のMIMO出力を介して出力すること、を含む。この態様の他の実施形態は、各々が方法の動作を実行するように構成された、1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録された、対応するコンピュータシステム、デバイス、およびコンピュータプログラムを含む。
【0009】
実装には、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。第1の光位相シフタを制御することは、2進数である、第1の相対位相シフトの値を適用することを含む方法。第1の位相シフトの値は、c+π/2とc-π/2(cは実数)の間の2進数である方法。第2の光位相シフタを制御することは、-nπと+nπ(nは整数)を含む有限の範囲内で第2の相対位相シフトの値を適用することを含む方法。第2の光位相シフタを制御することは、範囲(-nπ、+nπ)内のアナログ動作によって実行される方法。第3の光位相シフタを制御することは、第1の相対位相シフトの値によって決まる有限の範囲内で第3の相対位相シフトの値を適用することを含む方法。第3の光位相シフタを制御することは、第1の相対位相シフトの値がc-π/2であることに基づいて、0と+nπ(nは整数)の間で動作し、第1の相対位相シフトの値がc+π/2であることに基づいて、-nπと0の間で動作するように、第3の光位相シフタを制御することをさらに含む方法。第3の光位相シフタを制御することは、第1の相対位相シフトの値に応じて、範囲(0、+nπ)内または範囲(-nπ、0)内のアナログ動作によって実行される方法。1対のMIMO出力のうちの第1のMIMO出力において、第1の偏波チャネル上の第1の基準信号を検出すること、1対のMIMO出力のうちの第2のMIMO出力において、第2の偏波チャネル上の第2の基準信号を検出すること、該第1の基準信号と該第2の基準信号から測定された誤差量を決定すること、および該第1の基準信号と該第2の基準信号から測定された該誤差量に基づいて、第1の光位相シフタ、第2の光位相シフタ、または第3の光位相シフタのうちの少なくとも1つを制御すること、をさらに含む方法。2x2光MIMO多重分離は、動作中に、第1の光位相シフタ、第2の光位相シフタ、または第3の光位相シフタのいずれもリセットすることなく、エンドレスに実行される方法。記載された技術の実装は、ハードウェア、方法またはプロセス、またはコンピュータアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含み得る。
【0010】
別の一般的な態様は、光MIMO偏波多重分離を実行するように構成された光多入力多出力(MIMO)レシーバを含む。光MIMOレシーバは、入力光を受け取るように構成された入力ポート;該入力光を1対の光伝送路に分割するように構成された偏光ビームスプリッタ・ローテータ(PBSR);該1対の光伝送路の間に相対位相シフトを適用するように構成された光位相シフタ;該1対の光伝送路を結合するように構成された2x2光カプラ;および該1対の光伝送路間に適用される相対位相シフトのための、2つの動作状態を有するバイナリ制御を用いて該光位相シフタを制御するように構成されたコントローラ、を含む。この態様の他の実施形態は、各々が方法の動作を実行するように構成された、1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録された、対応するコンピュータシステム、デバイス、およびコンピュータプログラムを含む。
【0011】
別の一般的な態様は、光MIMO偏波多重分離を実行するように構成された光多入力多出力(MIMO)レシーバを含む。光MIMOレシーバは、入力光を受け取るように構成された入力ポート;該入力光を1対の光伝送路に分割するように構成された偏光ビームスプリッタ・ローテータ(PBSR);該1対の光伝送路間に相対減衰を適用するように構成された光減衰器;該1対の光伝送路を結合するように構成された2x2光カプラ;および該光減衰器によって適用される該相対減衰を制御するように構成されたコントローラ、を含む。この態様の他の実施形態は、各々が方法の動作を実行するように構成された、1つ以上のコンピュータ記憶装置に記録された、対応するコンピュータシステム、デバイス、およびコンピュータプログラムを含む。
【0012】
実装には、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。光減衰器は、(i)1対の光伝送路の一方に第1の減衰を適用し、(ii)1対の光伝送路の他方に第2の減衰を適用するように構成された差動光減衰器であり、該第1の減衰と該第2の減衰は、デシベルの大きさが等しく、符号が反対である、光MIMOレシーバ。第2の1対の光伝送路間に第2の相対減衰を適用するように構成された第2の光減衰器をさらに含み、第2の1対の光伝送路は光減衰器によって減衰された光を含み、コントローラは第2の光減衰器によって適用される第2の相対減衰を制御するようにさらに構成される、光MIMOレシーバ。記載された技術の実装は、ハードウェア、方法またはプロセス、またはコンピュータアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含み得る。
【0013】
いくつかの実装では、光MIMO偏波多重分離について本明細書に記載された技術は、一般的な2x2光MIMO多重分離に適用することができる。例えば、いくつかの実装では、本明細書に記載された技術は、PBSRとは別に、またはPBSRなしで実装することができる。
【0014】
本開示の主題の1つ以上の実装の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。主題の他の特徴、態様および利点は、詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1Aおよび図1Bは、コヒーレント検波と直接検波(IMDD)を利用した2重偏波通信システムの例を示す図である。
【0016】
図2図2は、2つの制御信号を有する光偏波デマルチプレクサの一例を示す図である。
【0017】
図3図3は、本開示の実施形態に係る光偏波デマルチプレクサの一例を示す図である。
【0018】
図4図4は、本開示の実施形態に係る光偏波デマルチプレクサの別の例を示す図である。
【0019】
図5図5Aおよび5Bは、基準信号(例えば、パイロットトーン)を送信するように構成されたトランスミッタの例を示す図である。
【0020】
図6図6は、フィードバック情報を生成するために基準信号(例えば、パイロットトーン)を受信するように構成された、本開示の実施形態に係るデマルチプレクサの一例を示す図である。
【0021】
図7図7Aおよび7Bは、基準信号(例えば、パイロットトーン)を受信して処理するように構成された、本開示の実施形態に係るデマルチプレクサの例を示す図である。
【0022】
図8図8は、本開示の実施形態に係る光偏波デマルチプレクサを制御する一例を示すフローチャートである。
【0023】
図9図9は、本開示の実施形態に係る光偏波デマルチプレクサにおける相対位相シフト値を制御する一例を示すフローチャートである。
【0024】
図10図10は、本開示の実施形態に係る光偏波デマルチプレクサにおける相対減衰値を制御する一例を示すフローチャートである。
【0025】
図11図11は、本開示の実施形態に係る光偏波デマルチプレクサのシミュレーション結果の例を示す図である。
【0026】
図12図12は、光偏波デマルチプレクサの適応制御を実行するシステムの1つ以上のコンポーネントを実装するために使用することができる、コンピューティングシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(詳細な説明)
本明細書では、より低いデータ損失率で大幅に改善された効率および速度を達成することができる新規なマルチステージ光MIMOデマルチプレクサ(例えば、光MIMO偏波デマルチプレクサ)を提供するシステムおよび技術が開示されている。これは、データ受信の中断のリセットを必要とせずに、適応型多重分離の「エンドレス」特性を可能にする新しい実装によって達成される。いくつかの実施形態では、これは適応型3ステージ位相シフトデマルチプレクサ構造によって達成され、第1のステージの位相シフタはバイナリ値を適用するように制御され、第2および第3のステージの位相シフトは位相シフト値の有限範囲(例えば、連続範囲)で動作するように制御される。3つのステージの位相シフトの制御は、信号受信を中断する位相シフトのリセットを必要とせずに、受信した偏波のランダムで予測できない回転および損失に適応するように調整されており、デマルチプレクサの「エンドレス」動作と呼ばれる特性になっている。
【0028】
一般に、多偏波検出は、光波形が通信システムを通過するときに偏波状態がドリフトする傾向があるため(例えば、ファイバ伝送線の複屈折がランダムに変化するため)、困難とされている。長距離システムでは、このようなランダムな偏波のドリフトが際限なく徐々に蓄積される。偏波分割多重化(polarization division multiplexing:PDM)を用いて2つの偏波モードで異なる信号を送信する光通信システムでは、ランダムで未知の偏波ドリフトにより、レシーバで2つの偏波モードの適切な方向を正確に検出することが難しく、結果としてレシーバで異なる信号が混在(「クロストーク」と呼ばれることもある)してしまうことになる。したがって、信号が1つの偏波モードで送信されたとしても、信号は実際にはレシーバで両方の偏波モードで受信される場合がある。光通信システムでは、偏波ドリフトに加えて、異なる偏波モードを異なる方法で増幅または減衰させる偏波依存損失(polarization dependent loss:PDL)などの他の非理想性がパフォーマンスを低下させる可能性がある。
【0029】
偏波ドリフトおよびその他の非理想性を補償するために、多偏波レシーバは、2つの偏波モードで送信される信号を分離および混合解除するために、一定の適応型MIMO多重分離を行う必要がある。このようなMIMO多重化は、光位相シフタを使用する光領域で、またはデジタル信号処理(digital signal processing:DSP)によるエレクトロニクス領域で実行することができる。光MIMO多重分離は、DSPベースのMIMO多重分離と比較して様々な利点がある。例えば、光多重分離は、消費電力、複雑さ、およびシンボルレートに対する感度を低減することができる。一方、DSPベースの多重分離は、通常、高い消費電力を必要とし、高いシンボルレートまたは大きなモード数のシステムでは非常に複雑になる可能性がある。
【0030】
さらに、光偏波多重分離は、パルス振幅変調(Pulse Amplitude Modulation:PAM)などの、強度変調・直接検波(Intensity Modulation and Direct Detection:IMDD)伝送方式(光電界の大きさの2乗のみで情報を送信する)と組み合わせて使用することができる。これは、光の2つの偏波モードを分離する光学素子を用いて、光に対して光検出が実行される前に光多重分離が実行できるためである。一方、IMDDでは光直接検波の非線形性により、DSP技術だけでは復元できない情報の損失が発生するため、DSPベースの偏波多重分離ではIMDDを組み合わせて使用することができない。代わりに、DSPベースの多重分離では通常、コヒーレントな受信が必要となる。このようなシステムでは、まず光の2つの偏波モードがコヒーレント検出によって分離され、次に各偏波の全フィールドが検出されるため、DSPは2つの偏波モードで受信した信号に対して処理を実行することができる。この区別の一例について、以下、図1Aおよび1Bを参照して説明する。
【0031】
図1Aおよび1Bは、それぞれ、コヒーレント検波と直接検波(IMDD)を利用した2重偏波通信システム100および150の例を示す図である。トランスミッタ(102および152)は、まずレーザ入力光(104および154)を2つの変調器(つまり、第1の変調器(106および156)と第2の変調器(108および158))に導く2つの光伝送路に分割することによって、偏波分割多重化を実行する。第1の変調器(106および156)は、一方の光伝送路の光を第1のデータストリームxまたはX(110および160)で変調し、第2の変調器(108および128)は、他方の光伝送路の光を第2のデータストリームyまたはY(112および162)で変調する。コヒーレントな場合、xとyは光波場(optical field)を表す複素数であるが、IMDDの場合、XとYは光パワー(optical power)を表す実数である。本開示では、小文字で複素数(フィールド)、大文字で実数(パワー)を表す。一方がx(X)で変調され、他方がy(Y)で変調された2つの変調された光波形は、偏光ビームスプリッタ・ローテータ(PBSR)(114および164)で合成され、一方の光波形を直交偏波に変換する。PBSRの後、x(X)とy(Y)を搬送する2つの光波形は、同じ光伝送路内に共存するが、直交する偏波を有している。
【0032】
この2重偏波(DP)光波形は、ファイバリンク(116および166)を通過する。DP波形がファイバ内を通過すると、ファイバ内の様々な未知の複屈折とねじれによって、2つの波形の偏波が変化することがある。ファイバリンク(116および166)に大きな偏波依存損失(PDL)がない場合、2つの偏波は直交したままである。例えば、x(X)は直線水平偏波から右回りの円偏波に変化することがあり、これはy(Y)が直線垂直偏波から左回りの円偏波に変化することを意味する。しかしながら、PDLが存在すると、DP光波形の偏波の直交性が低下し、x(X)とy(Y)の多重分離が複雑になる。
【0033】
レシーバ(118および168)では、DP波形がPBSR(120および162)に入り、DP波形を、直交する偏波を有するhとvの2つの波形に分割する。光通信システムの非理想性により、PBSRの出力hとvは、それぞれxとyの線形直交結合となる(より正確には、受信した信号はシステム内の加法的なノイズにより、xとyのノイズの多いバージョンとなるが、この説明ではノイズのないシナリオを仮定する)。特に、hはxとyの線形結合であり、同様にvはxとyの線形結合である。例えば、h=(x-y)/sqrt(2)であり、v=(x+y)/sqrt(2)である。MIMO多重分離の目的は、受信したhとvから元の信号xとyを抽出することである。これは、DSPベースの多重分離(コヒーレント検出のための図1Aのように)、または光多重分離(直接検波/IMDDのための図1Bのように)を介して行うことができる。
【0034】
図1Aのコヒーレントな場合では、2つの光90度ハイブリッド(124および126)において、hとvが干渉されるローカルオシレータ(LO)レーザ(122)が存在する。ハイブリッド126からの出力波形は、光検出器128によって光検出され、得られた電気信号は、MIMO信号処理を使用して信号x'とy'を分離する多重分離を実行する、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)(130)に供給される。このように、図1Aのコヒーレント受信の例では、光波場の大きさと位相の両方がレシーバ118によって検出されるため、MIMO多重分離は、光検出器128による検出後にDSP130によって行われる必要がある。
【0035】
これに対し、図1BのIMDD受信の例では、レシーバ168は、光パワーを検出する。この非線形性により、情報の損失が発生する。つまり、IMDDシステムでは、光検出の前に光学系でMIMO多重分離を行う必要がある。これは、IMDDの場合、光検出で光位相情報が失われるため、いくら電気信号処理を行っても、常にxとyを復元することはできないからである。図1Bの例では、hとvはそれぞれ、xとyの線形直交結合である。したがって、最初に多重分離を行わずに、IMDDを使用してhとvを直接検出すると、基本的な情報が損失する可能性がある。しかしながら、光検出の前に、hとvがxとyに光学的に多重分離されていれば、情報の損失はない。
【0036】
直交する2つの偏波状態の場合、PDM光通信システムは、2x2光多入力多出力(MIMO)チャネルとして表すことができる。したがって、光伝送は、2×2の行列Fとしてモデル化できる。行列Fは、トランスミッタからレシーバまでの通信の偏波の影響および色分散を表す伝達関数である。例えば、行列Fは、トランスミッタとレシーバを接続するファイバの影響、およびトランスミッタとレシーバ自体の光学部品の影響をモデル化することができる。本開示の目的のために、行列Fは、「チャネル」が、例えば、ファイバ伝送線およびトランスミッタおよび/またはレシーバのコンポーネントのような光通信システムの様々な影響を表すことができるという理解の下に、「チャネル行列F」と呼ばれる。
【0037】
【数1】
【0038】
受信した信号hとvから原信号xとyを推定するために、光デマルチプレクサDがレシーバに適用され、推定値x′とy′を生成する。
【0039】
【数2】
【0040】
そして、x′=ax、かつy′=bx(「a」、「b」は複素定数)であれば、レシーバは偏波を正常に多重分離する。
【0041】
ほとんどの短い光ファイバリンクにほぼ当てはまる、ロスレスシステム(光チャネル行列Fがユニタリである)の単純な場合を考えてみる。このようなシナリオでは、ファイバの損失、特にファイバの偏波依存損失(PDL)は無視できる。そして、チャネル行列Fは、4つの実数で特徴付けることができる。レシーバは、正常に多重分離を行うために、x′=ax、かつy′=bxを達成するだけでよいため、多重分離行列Dは、2つの実数で特徴付けることができる。したがって、ロスレスシナリオでは、チャネル行列Fの4つの実数は、多重分離行列Dによって補償されるべき、独立して制御される2つの実数パラメータとしてのみ表すことができる。
【0042】
したがって、ユニタリシステム(ロスレスシナリオ)の場合、光デマルチプレクサ(すなわち、上記の行列D)は、チャネル行列Fの影響を逆転させて多重分離するために、少なくとも2つの位相制御信号の理論上の最小値を必要とする。以下、図2を参照して、2ステージデマルチプレクサの一例を説明する。しかしながら、デマルチプレクサで2つの位相制御信号のみを使用すると、「エンドレス」特性を実現するために多重分離で無限の範囲の位相シフトが必要となり、実用的な位相シフタを使用して実現できないという問題があった。代わりに、実用的な位相シフタは、位相シフトの範囲に有限の極限を有している。したがって、ファイバ内のランダムに変化する位相歪みを通過した光信号を多重分離する際に、2ステージデマルチプレクサ内の位相シフタがその実用範囲の境界に達し、データ受信の中断および/または遅延を引き起こす可能性がある「リセット」をする必要がある。この問題の一例を、図2を参照して後述する。
【0043】
図2は、2つの制御信号を有する光偏波デマルチプレクサ200の一例を示す図である。デマルチプレクサ200は、偏光スプリッタ・ローテータ(PBSR)202、2つの50/50カプラ204および206、ならびに2つの位相シフタ208および210(例えば、差動位相シフタ)からなる。2つの位相シフタ208および210は、別個の制御信号φ1(212)およびφ2(214)によって制御される。図2の例では、位相シフタ208および210のそれぞれは、差動位相シフタである。例えば、位相シフタ208は、干渉計の一方のアームで一方向に光位相を調整し、他方のアームで反対方向に光位相を調整する2つの個別の位相シフト素子(208aおよび208b)を有する干渉計として実装される。位相シフタ210についても同様の構造を示している。あるいは、いくつかの実施形態では、位相シフタ208および210のそれぞれは、単一のアームに1つの位相シフト素子だけを有する非差動位相シフタとして実装することができる。図2に示される差動実装は、非差動実装と比較していくつかの利点がある。例えば、差動実装には、位相シフタごとに必要な範囲が小さくなるという利点がある。さらに、熱光学位相シフタの場合、差動位相シフタは単相位相シフタと比較して、最悪の場合の消費電力が半分になり、さらに総消費電力が一定になり、熱過渡を軽減するという利点もある。本開示の目的のために、差動位相シフタ(例えば、位相シフタ208)は、2つの位相シフタ(例えば、位相シフタ素子208aおよび208b)で実装されているが、1つの制御信号(例えば、φ1、212)であるという理解の下に、1つの位相シフタと見なされる。
【0044】
この構造により、デマルチプレクサ200は、行列D(偏波のためのミューラー表記を使用)で表すことができる。
【0045】
【数3】
【0046】
しかしながら、上述したように、図2のデマルチプレクサ200の構成では、「エンドレス」特性を達成するために、多重分離がφ1(212)に対して無限の範囲の位相シフトを必要とするという大きな問題がある。実用的なシステムでは、これは、デマルチプレクサ200がランダムに変化するファイバを介して受信した信号を多重分離するときに、位相シフト制御φ1(212)が最終的にその実用範囲の境界に到達することを意味する。例えば、位相シフタ208および210を熱光学位相シフタとして実装する場合、入力電流量に実用上の制限がある。チャネルFに起因するランダムにドリフトする位相が、φ1が連続的に増加させることを必要とする場合、φ1の入力制限により、ある時点で位相シフタ208を2πだけ減少する必要がある(いわゆる「リセット」)。しかしながら、このリセット中は信号の受信を中断しなければならないため、データの損失が発生する可能性があり、高速通信において重大なエラーバーストが発生する可能性がある。
【0047】
この問題に対処するため、デマルチプレクサは2ステージ以上の位相シフタを実装することができる。しかしながら、位相シフトのステージ数が多くなると(ユニタリデマルチプレクサを使用するロスレスシナリオの場合)、アルゴリズムと制御が複雑になり、多数の位相シフト変数の制御速度が低下する。さらに、任意の入力に対して、位相シフト制御が動作中に特定の状態に「トラップ」されない(および、位相シフタがその限界を超えない限りトラップ状態から抜け出せない)ことを保証することは困難な場合がある。加えて、より複雑な制御システムでは、望ましい(例えば、最適でない)多重化動作ではない局所的な状態に収束するリスクの増加に直面する可能性がある。この複雑さと不確実性のため、2重偏波IMDDシステムの設計が困難な場合がある。
【0048】
さらに、偏波依存損失(PDL)が存在する場合、これが課題を複雑にする場合がある。PDLとは、異なって減衰される2つの直交偏波を指し、その結果、非ユニタリチャネル行列Fが生成される。PDLはファイバでは無視できる場合もあるが、PDLは増幅器や波長分割マルチプレクサなどのディスクリートデバイスでは重要な場合がある。非ユニタリ光デマルチプレクサを設計することは困難である。一般に、非ユニタリデマルチプレクサは、4つの実数で特徴付けることができ、理論上の最小制御セットは、2つの光位相シフタと2つの光減衰器から構成される。
【0049】
本明細書では、PDLなしのロスレスシナリオのために、有限範囲位相シフトのわずか3つのステージを使用して光MIMO偏波多重分離の「エンドレス」特性を実現する実装が開示されており、その一例が、以下の図3を参照して説明される。加えて、PDLのシナリオのために、本明細書では、わずか3つのステージの有限範囲位相シフトと2つのステージの光減衰を使用して「エンドレス」特性を実現する実装が開示されており、その一例が、以下の図4を参照して説明される。
【0050】
図3は、本開示の実施形態に係る光偏波デマルチプレクサ300の一例を示す図である。デマルチプレクサ300は、直接検波レシーバ(例えば、図1のレシーバ168)の一部として実装することができる。いくつかの実施形態では、デマルチプレクサ300は、バルク光学系と比較してコストを削減することができる集積フォトニクスを介して実装される。
【0051】
デマルチプレクサ300は、位相シフトの3つのステージ(302、304、および306)を含む。各ステージは位相シフト制御信号で制御される。例えば、第1のステージ302は第1の制御信号308によって制御され、第2のステージ304は第2の制御信号310によって制御され、第3のステージ306は第3の制御信号312によって制御される。各制御信号は、それぞれの位相シフトステージで実施される位相シフトの量を制御する。
【0052】
図3の例では、各ステージは、1対の光伝送路で動作する位相シフタと、2x2カプラと、を有している。例えば、第1のステージ302は、1対の伝送路314および316、光位相シフト素子318および320(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ322を有する。同様に、第2ステージ304は、1対の伝送路324および326、光位相シフト素子328および330(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ332を有する。最後に、第3ステージ306は、1対の伝送路334および336、光位相シフト素子338および340(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ342を有する。
【0053】
図3の例では、位相シフタの差動実装を示しているが、いくつかの実施形態では、ステージ内にただ1つの光位相シフト素子(1つの伝送路内に)を有する非差動実装を使用してもよい。本開示を通じて、位相シフトが差動位相シフタ(すなわち、図3の例に示すように、+/-φ/2でシフトするように設計された差動ペアの各位相シフト素子)によって実装されるか、または非差動位相シフタ(一方の伝送路だけの光の位相を他方の伝送路の光に対して+/-φの量だけシフトする)によって実装されるかにかかわらず、(ステージ内の)2つの光伝送路間の位相差は、単に「φ」と呼ばれる。このように、「位相シフタ」という用語は、差動位相シフタまたは非差動位相シフタに適用できる。
【0054】
位相シフタには、熱光学式(熱光学位相シフタ、TOPS)、電気光学式(電気光学位相シフタ、EOPS)、または他のタイプがあり得る。TOPSは、一般的に最も応答速度が遅いが、金属で覆う、および/またはヒートシンクまでの距離を短くすることで高速化することができる。光伝送路が加熱された領域を複数回通過することで、TOPSの消費電力を低減することができる。EOPSは、例えば、電流注入、キャリア枯渇、またはポッケルス効果で動作させることができる。各位相シフタは、応答速度は速いが消費電力が大きいタイプの位相シフタのセクションと、応答速度は遅いが消費電力を抑えたタイプの位相シフタのセクションなど、複数のセクションで構成できる。
【0055】
2x2カプラは、例えば、方向性カプラ、マルチモード干渉カプラ、または断熱カプラによって実装することができる。
【0056】
上述のように、デマルチプレクサ300の3つのステージ(302、304、306)は、デマルチプレクサ300がいずれの位相シフタのリセットも必要とせずに、多重分離の「エンドレス」特性を達成できるように、特定の範囲または動作値内で協調して制御される。特に、図3の例では、第1のステージ302の第1の制御信号φ1は、-π/2または+π/2のいずれかの値を有するデジタル信号である。第2のステージ304の第2の制御信号φ2は、-πと+πの間の連続的または離散的な値のセットで動作する、アナログまたはデジタル信号である。第3のステージ306の第3の制御信号φ3は、第1の制御信号φ1に依存する範囲内の連続的または離散的な値のセットで動作する、すなわちφ1が-π/2のとき、0と+πの間で動作し、φ1が+π/2のとき、-πと0の間で動作する、アナログまたはデジタル信号である。
【0057】
デマルチプレクサ300の動作中、ファイバを通過した光は、まず、入力光を2つの光伝送路314および316に分割する、PBSR346などのスプリッタに入る。PBSRは、入力光を2つの偏波に分割し、PBSRの両出力が同じ偏波になるように、一方の偏波を回転させる。したがって、光伝送路314は、PBSRに入射したときに一方の偏波であった光を含み、光伝送路316は、PBSRに入射したときに直交偏波であった光を含むが、光伝送路314および316に一旦入ると、両光伝送路314および316の光は同じ偏波になる。図3の例では、PBSR346によって実装されたスプリッタを示しているが、偏光分離型グレーティングカプラ(polarization splitting grating coupler:PSGC)などの受動光集積デバイスを含む、他のタイプのスプリッタを使用することができる。
【0058】
分割された入力光は、第1のステージ302の2つの光伝送路314および316に入り、一方の光伝送路の光が他方の光伝送路の光に対してφ1の量だけ位相シフトするように、位相シフト素子318および320を介して、相対的な位相シフトを受ける。この相対位相シフト量φ1は、制御信号308によって制御される。次に、2つの光伝送路内の位相シフトされた光は、相対的に位相シフトされた光を結合する2x2カプラ322に入る。このプロセスは、制御信号φ2(310)およびφ3(312)によって制御される異なる位相シフトを受けながら、第2のステージ304および第3のステージ306を介して繰り返される。
【0059】
コントローラ344は、制御信号308、310、および312を介して、3つのステージ302、304、および306の相対位相シフト量を制御する。閉ループフィードバックのシナリオでは、この制御は、例えば、受信した信号内の誤差の測定であるフィードバック情報348に基づくことができる。制御信号308、310、および312を制御および調整するために、コントローラ344によって使用される特定のアルゴリズムについて、以下の図8~10を参照して説明する。図3は、デマルチプレクサ300の一部としてコントローラ344を示しているが、いくつかの実施形態では、コントローラ344は、レシーバに別々に実装されてもよい(図1のレシーバ168の別の構成要素として)。
【0060】
上述したように、デマルチプレクサ300は、光通信システムによってもたらされる歪みによって引き起こされる、光の偏波を回転させるランダムな複屈折の変化を補償する。位相シフトの補償に加えて、デマルチプレクサは、偏波依存損失(PDL)などの他の非理想性を補償するように設計することもできる。ほとんどの短い光ファイバリンクでは、PDLは無視できる程度かもしれないが、ファイバーの長さが長くなると、PDLは光信号の適切な受信に、より大きな影響を与える可能性がある。
【0061】
偏波依存損失(PDL)のシナリオでは、光の2つの偏波モードのそれぞれで発生する損失の量が異なる場合があり、例えば、横磁気(TM)モードでの損失は横電気(TE)モードでの損失よりも大きい/小さい場合がある。この結果、非ユニタリであるチャネル行列Fが得られる。この場合、位相シフト制御による多重分離だけでは、2つの偏波モードが混在した信号を完全に分離するには不十分である場合がある。代わりに、以下で図4を参照して説明するように、光位相シフタと光減衰器の組み合わせがデマルチプレクサに実装される。一般に、PDLは、ファイバ線自体によって、またはファイバコネクタ、アイソレータ、増幅器、スプリッタ、ファイバカプラ、PBSRなどの通信システムの他の要素によって引き起こされる可能性がある。
【0062】
図4は、本開示の実施形態に係る光偏波デマルチプレクサ400の一例を示す図である。デマルチプレクサ400は、直接検波レシーバ(例えば、図1のレシーバ168)の一部として実装することができる。いくつかの実施形態では、デマルチプレクサ400は、バルク光学系と比較してコストを削減することができる集積フォトニクスを介して実装される。デマルチプレクサ400は、受信した光波形のPDLを補償するために、2つの偏波モード間の相対減衰制御と相対位相シフト制御の両方を提供する。
【0063】
デマルチプレクサ400は、相対位相シフト制御および/または光減衰制御の3つのステージ(402、404、および406)を含む。各ステージは、1つ以上の制御信号によって制御される。例えば、第1のステージ402は、第1の減衰制御信号408と、第1の位相シフト制御信号410とによって制御される。第2のステージ404は、第2の位相シフト制御信号412で制御される。第3のステージ406は、第2の減衰制御信号414と、第3の位相シフト制御信号416とによって制御される。各制御信号は、それぞれのステージで実装される位相シフトまたは光減衰の量を制御する。
【0064】
図4の例では、第1のステージ402は、第1および第2の光伝送路418および420、第1および第2の光減衰器422および424(共に差動減衰器を形成する)、第1および第2の位相シフト素子426および428(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ430を有している。同様に、第2のステージ404は、第1および第2の光伝送路432および434、第1および第2の位相シフト素子436および438(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ440を有する。最後に、第3のステージ406は、第1および第2の光伝送路442および444、第1および第2の光減衰器446および448(共に差動減衰器を形成する)、第1および第2の位相シフト素子450および452(共に差動位相シフタを形成する)、および2x2カプラ454を有している。
【0065】
図4の例では、光減衰器と光位相シフタの差動実装を示しているが、いくつかの実施形態では、1つのステージに、1つの光減衰器(1つの光伝送路内の)と1つの位相シフト素子(1つの光伝送路内の)のみを有する非差動実装を使用してもよい。本開示を通じて、減衰が差動減衰器(すなわち、図4の例に示すように、差動ペアの各減衰器が、+/-a/2だけ光を減衰するように設計されている)、または単一の光減衰器(一方の光伝送路だけの光を他方の光伝送路の光に対して+/-aの量だけ減衰する)によって実装されるかどうかにかかわらず、2つの光伝送路間の相対光学減衰は単に「a」と呼ばれる。光減衰器の減衰量「a」は、光の透過に対する実際の影響が「a」において指数関数的である指数損失など、減衰の任意の適切な尺度を表す(例えば、フィールドがφ/2と記された位相シフタを通過するときにexp{-iφ/2}によって乗算されるのと同様に、a/2と記された光減衰器を通過するときにexp{-a/2}によって乗算される)。
【0066】
同様に、相対位相シフトが差動位相シフタ(すなわち、図3の例に示すように、+/-φ/2でシフトするように設計された差動ペアの各位相シフト素子)によって実装されるか、または非差動位相シフタ(一方の光伝送路だけの光の位相を他方の光伝送路の光に対して+/-φの量だけシフトする)によって実装されるかにかかわらず、2つの光伝送路間の相対位相差は、単に「φ」と呼ばれる。
【0067】
上述のように、デマルチプレクサ400の3つのステージは、デマルチプレクサ400がいずれの位相シフタのリセットも必要とせずに、多重分離の「エンドレス」特性を達成できるように、特定の範囲または動作値内で協調して制御される。位相シフト制御については、図4の例では、第1のステージ402の第1の位相シフト制御信号φ1(410)は、-π/2または+π/2のいずれかの値を有するデジタル信号である。第2のステージ404の第2の位相シフト制御信号φ2(412)は、-πと+πの間の連続的または離散的な値のセットで動作する、アナログまたはデジタル信号である。第3のステージ406の第3の位相シフト制御信号φ3(416)は、第1の制御信号φ1(410)に依存する範囲内の連続的または離散的な値のセットで動作する、すなわちφ1が-π/2のとき、0と+πの間で動作し、φ1が+π/2のとき、-πと0の間で動作する、アナログまたはデジタル信号である。減衰制御については、第1の減衰制御信号a1(408)と第2の減衰制御信号a2(414)のそれぞれは、範囲内の連続的または離散的な値のセットで動作する。例えば、範囲は、(-3,+3)であってもよい。例えば、範囲は、(-1,+1)であってもよい。さらに別の例として、範囲は、約-5.2dBから+5.2dBに相当する、(-0.6,+0.6)であってもよい。他の適切な範囲が使用されてもよい。
【0068】
デマルチプレクサ400の動作中、ファイバを通過した光は、まず、入力光を2つの光伝送路418および420に分割する、PBSR458などのスプリッタに入る。図4の例では、PBSR458によって実装されたスプリッタを示しているが、偏光分離型グレーティングカプラ(polarization splitting grating coupler:PSGC)などの受動光集積デバイスを含む、他のタイプのスプリッタを使用することができる。分割された入力光は、第1のステージ402の2つの光伝送路418および420に入り、一方の光伝送路の光が他方の光伝送路の光に対して減衰するように、光減衰器422および424を介して、相対的な減衰を受ける。この相対減衰量a1は、減衰量制御信号408によって制御される。
【0069】
そして、2つの光伝送路内の相対的に減衰した光は、一方の光伝送路の光の位相が他方の光伝送路の光の位相に対してシフトするように、位相シフト素子426および428(差動位相シフタを形成する)を介して、相対的な位相シフトを受ける。この相対位相シフト量φ1は、制御信号410によって制御される。次に、2つの光伝送路内の位相シフトされた光は、相対的に位相シフトされた光を結合する2x2カプラ430に入る。このプロセスは、光の2つの偏波が、位相制御信号412および416、ならびに減衰制御信号414によって制御される相対的な位相シフトおよび/または相対的な減衰を受けるように、第2のステージ404および第3のステージ406を通って継続される。
【0070】
コントローラ456は、制御信号408、410、412、414、および416を介して、異なるステージ402、404、および406の相対減衰量および相対位相シフト量を制御する。光の2つの偏波間の相対減衰と相対位相シフトの両方を制御することにより、デマルチプレクサ400は、ランダム位相シフトとPDL(非ユニタリチャネル行列F)の両方を補償することができる。閉ループフィードバックのシナリオでは、この制御は、例えば、受信した信号内の誤差の測定であるフィードバック情報460に基づくことができる。制御信号408、410、412、414、および416を制御および調整するために、コントローラ456によって使用される特定のアルゴリズムについて、以下の図8~10を参照して説明する。図4は、デマルチプレクサ400の一部としてコントローラ456を示しているが、いくつかの実施形態では、コントローラ456は、レシーバに別々に実装されてもよい(図1のレシーバ168の別の構成要素として)。
【0071】
一般に、制御(例えば、図3のコントローラ344または図4の456による)は、光波形の2つの偏波モードで受信される信号間のクロストーク量を低減するように設計される。フィードバック制御のシナリオでは、コントローラは、フィードバック情報(例えば、図3のフィードバック348および図4のフィードバック460)に基づいて制御を調整することができる。フィードバック情報には、例えば、受信した波形内の誤差の測定を含めることができる。コントローラは、制御信号を調整して測定された誤差を減らすように設計され得る。誤差の測定は、さまざまな方法で実装できる。例えば、誤差の測定は、光の2つの偏波モードの信号間のクロストーク量を反映することができる。
【0072】
クロストーク量を測定するために、いくつかの実施形態では、通信システムは、情報を搬送する信号に加えて送信される基準信号(例えば、パイロットトーンまたはパイロット信号)を利用することができる。基準信号は、トランスミッタとレシーバの両方に既知の波形特性を有しており、レシーバは通信チャネルのランダムな影響を推定し補償することができる。
【0073】
図5Aおよび5Bは、基準信号(例えば、パイロットトーン)を送信するように構成された、本開示の実施形態に係るトランスミッタ500および520の例を示す図である。図5Aのトランスミッタ500は、パイロットトーン502(A)および504(B)を、レーザ入力のそれぞれの光偏波モードで送信する。いくつかの実施形態では、パイロットトーン502および504は低周波トーンであり、2つの偏波に対して異なるトーン周波数を有することができる。例えば、第1のパイロットトーン502は、1MHzの周波数で送信することができ、第2のパイロットトーン504は、2MHzの周波数で送信することができる。パイロットトーン502および504の変調度は、信号平均パワーの割合であり、例えば、パイロットトーン502および504の変調度は、信号平均パワーの2%であり得る。
【0074】
図5Aの例では、パイロットトーン502(A)および504(B)は、各導波路のレーザ入力を変調する前に、それぞれ電気信号506(X)および508(Y)に付加される。例えば、パイロットトーン502(A)および504(B)は、デジタル/アナログコンバータ(DAC)出力にデジタル的にトーンを付加することによって適用することができる。あるいは、パイロットトーン502(A)および504(B)は、変調器510および512のドライバの入力に、または変調器510および512のドライバの内部に、または変調器510および512のドライバの出力にアナログ的にそれらを付加することによって適用することができる。
【0075】
図5Bは、変調およびパイロットトーンのさらなる詳細を示すトランスミッタ520の一例を示している。この例では、パイロットトーン522(A)および524(B)は、それぞれ、変調器530および532のドライバ534および536の出力で、それぞれアナログ方式で変調信号526(X)および528(Y)に付加することによって適用される。図5Bの例では、変調器530および532は、マッハツェンダー干渉計(MZI)変調器として実装されて示されているが、他の適切な光変調器が使用されてもよい。
【0076】
したがって、図5Aおよび5Bのトランスミッタ500および520では、パイロットトーンAおよびBがそれぞれ入力信号XおよびYに付加され、ファイバを介した送信のためにPBSR514および538で結合される。特に、パイロットトーンAおよび信号Xは、光の一方の偏波モードで送信され、パイロットトーンBと信号Yは、光の他方の偏波モードで送信される。結合された光PDM波形は、通信システムを介してレシーバに向かって伝搬するが、この間、システム内の様々な非理想性により、2つの偏波モードのランダムで予測不可能な回転ドリフトと、偏波依存損失(PDL)が発生する。これらの非理想性は、各偏波モードで伝搬するパイロットトーンと信号の両方に影響を与える。パイロットトーン(AおよびB)は既知であるため、レシーバは元のパイロットトーン(AおよびB)と比較して受信したパイロットトーンの偏差(または誤差)を測定することができ、これによりレシーバは信号XおよびY自体の誤差を推定することができる。そして、誤差推定に基づいて、レシーバは偏波ドリフトとPDLを補償することができ、信号XおよびYをより正確に復元する。
【0077】
パイロットトーンを検出し、受信したパイロットトーンの誤差を測定するためのレシーバ構造の例について、以下、図6、7A、および7Bを参照して説明する。相対位相シフトおよび/または相対減衰のフィードバック制御においてこのような誤差測定を使用する例について、以下、図9および10を参照して説明する。
【0078】
図6は、フィードバック情報を生成するためにパイロットトーンを受信するように構成された、本開示の実施形態に係るデマルチプレクサ600の一例を示す図である。レシーバ600では、受信した光の2つの偏波の受信波形614および616がパイロットトーン検出器602で処理され、各偏波モード614および616の受信したパイロットトーンのパワーを検出する。次いで、パイロットトーン検出器602は、1つ以上のパイロットトーン測定値604をフィードバック情報として(例えば、図3のフィードバック348および図4のフィードバック460として)コントローラ606に提供する。コントローラ606は、これらのパイロットトーン測定値604を使用して、受信した光信号に相対位相シフトおよび/または相対減衰を適用する制御信号(608、610、612)を適合させる。
【0079】
図6は、デマルチプレクサ600の一部としてコントローラ606およびパイロットトーン検出器602を示しているが、いくつかの実施形態では、コントローラ606および/またはパイロットトーン検出器602は、レシーバに別々に実装されてもよい(図1のレシーバ168の別の構成要素として)。さらに、図6は、コントローラ606およびパイロットトーン検出器602を別個のモジュールとして示しているが、いくつかの実施形態では、コントローラ606およびパイロットトーン検出器602は、別個のモジュールに分離されることなく、集積回路によって実装されてもよい。さらに、図6の例では、制御信号608、610、および612を介して相対位相シフトのみを適応させるシナリオを示しているが(例えば、図3のデマルチプレクサ300のように)、これらの技術は、相対位相シフトおよび相対減衰の両方を適応させるために適用することもできる(例えば、図4のデマルチプレクサ400のように)。
【0080】
図6の例では、第1のパイロットトーン(A)が第1の偏波モード(Xとする)で送信され、第2のパイロットトーン(B)が第2の偏波モード(Yとする)で送信されたと仮定している。レシーバでは、受信した偏波モード(H、V)が、H=X、およびV=Yを満たすことが望まれる。しかしながら、光波形が通信システムを通過するとき、偏波ドリフトおよびPDLにより、2つのパイロットトーン(AおよびB)を搬送する2つの偏波モードがランダムで予測不可能な回転を受ける可能性がある。したがって、これらのランダムに回転した偏波モードを受信すると、デマルチプレクサ600がパイロットトーンAおよびBを検出しようとするとき、デマルチプレクサ600は、実際には各偏波モードHおよびVでパイロットトーンAおよびBの相互混合を検出することができる。
【0081】
この相互混合の影響を推定するために、レシーバは2つの偏波モード(HおよびV)のそれぞれで各パイロットトーン(AおよびB)のパワーを検出することができる。例えば、図6では、パイロットトーン検出器602は、偏波モードHにおけるトーンAのパワー(PHAとする)、偏波モードHにおけるトーンBのパワー(PHBとする)、偏波モードVにおけるトーンAのパワー(PVAとする)、および偏波モードVにおけるトーンBのパワー(PVBとする)の4つの異なる量を検出することができる。これらの4つの量のうち、PHBおよびPVAは、2つの偏波モードHおよびVにおけるパイロットトーンAとBの間のクロストーク量を表している。
【0082】
次に、コントローラ610は、これらの受信したパイロットトーン成分に基づいて誤差信号を計算し、通信システムの非理想性によって引き起こされた2つの偏波モード間のクロストーク量を推定する。例えば、いくつかの実施形態では、誤差は次のように計算することができる。
【0083】
【数4】
【0084】
しかしながら、2つの偏波モード(HおよびV)におけるパイロットトーン(AおよびB)間のクロストーク量を推定するために、誤差の他の尺度を使用することができる。一般に、誤差の尺度は、PHBおよび/またはPVAの値が増加するにつれて大きくなるはずである。誤差の尺度は、コントローラ606が制御信号(例えば、608、610、および612)をどの程度うまく適合させて、2つの偏波モードHおよびV間の相対位相シフトおよび/または相対減衰を調整し、ランダムな偏波ドリフトおよびPDLを補償するかの推定を提供する。したがって、コントローラ606は、フィードバック制御ループにおいてこの誤差測定を使用して、制御信号(例えば、608、610、および612)を動的に調整し、誤差をさらに低減させることができる。例示的なフィードバックアルゴリズムの詳細について、以下、図9および10を参照して説明する。
【0085】
パイロットトーンAおよびBは、受信プロセスの様々なポイントで受信した波形から検出することができ、その例については、以下、図7Aおよび図7Bを参照して説明する。
【0086】
図7Aおよび7Bは、パイロットトーンを受信して処理するように構成された、本開示の実施形態に係るデマルチプレクサの異なる実施形態の例を示す図である。具体的には、図7Aおよび7Bは、受信プロセスの異なるポイントでパイロットトーン(AおよびB)を検出する例を示している。上述したように、2つの偏波モード(HおよびV)のそれぞれにおける各パイロットトーンAおよびBのパワーが検出される必要がある。図7Aのデマルチプレクサ700の例では、トランスインピーダンスアンプ(transimpedance amplifier:TIA)704およびTIA706の出力で受信波形からパイロットトーン(AおよびB)が検出される。あるいは、図7Bのデマルチプレクサ720の例に示されるように、パイロットトーン(AおよびB)は、光領域で受信した波形から(具体的には、光カプラを介して受信した光信号に結合される別個のフォトダイオード724および726の出力で)検出される。
【0087】
図7Aおよび7Bの両方の例において、パイロットトーン成分の様々な受信パワーは、例えば、受信した信号にパイロットトーン周波数でサインおよび/またはコサインを乗算し、結果を合計するか、または狭帯域電気フィルタで結果をフィルタリングするなど、フーリエ変換技術を使用することによって検出することができる。
【0088】
次に、相対位相シフトおよび/または相対減衰のフィードバック制御において誤差測定を使用する例について、以下、図8~10を参照して説明する。制御システムは、受信した光波形で測定された誤差を最小化するように機能する。誤差が最小化されると、PDM信号のそれぞれは、最小のクロストークでそれぞれの偏波モードで受信される(例えば、信号Xは偏波モードHで受信され、信号Yは偏波モードVで受信される)。
【0089】
図8は、本開示の実施形態に係る光偏波デマルチプレクサを制御する方法800の一例を示すフローチャートである。方法800は、図3のデマルチプレクサ300などのデマルチプレクサにおける相対位相シフトを制御するために使用することができる。
【0090】
ステップ802では、光が、1対のMIMO入力を介して、第1の1対の光伝送路(314、316)に受信される。ステップ804では、第1の光位相シフタ(例えば、318および320によって形成される差動位相シフタ)が、第1の1対の光伝送路(314、316)の間に第1の相対位相シフトを適用するように制御される。いくつかの実施形態では、第1の光位相シフタは、例えば、値(c+π/2)および(c-π/2)のバイナリ方式で制御することができ、ここで「c」は、オフセットを反映する実数である。この制御は、フィードバック情報(例えば、パイロットトーンを使用して)に基づくことができる。
【0091】
ステップ806では、第1の1対の光伝送路(314、316)が第1の2x2光カプラ(322)と結合して、第2の1対の光伝送路(324、326)を出力する。
【0092】
ステップ808では、第2の光位相シフタ(例えば、328および330によって形成される差動位相シフタ)が、第2の1対の光伝送路(324、326)の間に第2の相対位相シフトを適用するように制御される。いくつかの実施形態では、第2の光位相シフタは、-nπと+nπを含む有限の値の範囲内で制御することができ、ここで「n」は整数である。例えば、これは、範囲(-nπ,+nπ)内でのアナログ動作によって可能である。この制御は、フィードバック情報(例えば、パイロットトーンを使用して)に基づくことができる。
【0093】
ステップ810では、第2の1対の光伝送路(324、326)が第2の2x2光カプラ(332)と結合して、第3の1対の光伝送路(334、336)を出力する。
【0094】
ステップ812では、第3の光位相シフタ(例えば、338および340によって形成される差動位相シフタ)が、第3の1対の光伝送路(334、336)の間に第3の相対位相シフトを適用するように制御される。いくつかの実施形態では、第3の光位相シフタは、第1の相対位相シフトの値に依存する有限の範囲内で制御することができる。例えば、上述したように、第3の光位相シフタは、第1の相対位相シフトが(c-π/2)に等しい場合、0と+nπの間で動作し、第1の相対位相シフトが(c+π/2)に等しい場合、-nπと0の間で動作するよう制御することができ、ここで「n」は整数である。これは、範囲(0,+nπ)および(-nπ,0)内でのアナログ動作によって実行できる。この制御は、フィードバック情報(例えば、パイロットトーンを使用して)に基づくことができる。
【0095】
ステップ814では、第3の1対の光伝送路(334、336)が第3の2x2光カプラ(342)と結合して、第4の1対の光伝送路(350、352)を出力する。ステップ816では、第4の1対の光伝送路(350、352)が1対のMIMO出力を介して出力される。
【0096】
図8の例示的な方法800は、ステップの特定の順序を示しているが、これらのステップの1つ以上は、異なる順序で実行することができる。例えば、第1、第2、第3の光位相シフタの制御は、異なる順序で実行することができる。3つの位相シフタを制御および調整する特定の例について、図9を参照して説明する。
【0097】
図9は、本開示の実施形態に係る光偏波デマルチプレクサにおける相対位相シフト値を制御する方法900の一例を示すフローチャートである。方法900は、第1、第2、第3の位相シフタを調整して、有限範囲位相シフトの3つのステージだけを使用して光MIMO偏波多重分離の「エンドレス」特性を達成する、特定の方法を示すものである(PDLがないロスレスシナリオの場合)。説明の目的のため、方法900の説明は、図3のデマルチプレクサ300を参照して提供される。
【0098】
方法900は、相対位相シフト制御信号308、310、および312を適応させて、測定されたフィードバック誤差(例えば、図3のフィードバック348、または図6のフィードバック604)を徐々に減少させる反復プロセスである。
【0099】
ステップ902では、反復の開始時に、デマルチプレクサは、3つの制御信号308、310、および312の相対位相シフト値を初期化する。例えば、いくつかの実施形態では、第1の制御信号φ1(308)は、バイナリ(デジタル)値であり、最初に-π/2または+π/2のいずれかに設定される。第2の制御信号φ2(310)は、連続値(アナログ)または離散値(デジタル)であり、最初に-πと+πの間のいずれかの値に設定される。第3の制御信号φ3(312)も連続値(アナログ)または離散値(デジタル)であり、第1の制御信号φ1(308)が-π/2に設定されていた場合、0と+πの間のいずれかの値に設定され、それ以外の場合、第3の制御信号φ3(312)は、第1制御信号φ1(308)が+π/2に設定されていた場合、-πと0との間のいずれかの値に設定される。第3の制御信号φ3(312)と第1の制御信号φ1(308)との間のこの関係は、方法900の制御プロセスを通して維持される。
【0100】
ステップ904では、第3の制御信号φ3(312)が、フィードバック(例えば、図3のフィードバック348)における測定された誤差を低減するように(その現在の範囲内で)調整される。第3の制御信号φ3(312)の調整は、測定された誤差を最小化または低減しようとする最適化または疑似最適化アルゴリズム(例えば、勾配降下アルゴリズム)によって実行することができる。例えば、第3の制御信号φ3(312)の調整は、第3の制御信号φ3(312)の現在値の局所近傍内で検索して、測定された誤差を低減する新しい値を見つけることによって実行することができる。具体例として、第3の制御信号φ3(312)を+/-Δφ3ステップで調整し、測定された誤差を小さくする値を求める場合について説明する。ステップサイズΔφ3は、各反復において動的に調整することができる。第3の制御φ3(312)の値がその範囲の境界からΔφ3以内(すなわち、0、+π、または-πのいずれかのΔφ3以内)にある場合、第3の制御信号φ3(312)は変化しない。そうでなければ、第3の制御信号φ3(312)は、まずΔφ3だけ増加され、フィードバック348の結果として生じる誤差が測定される。次に、第3の制御信号f3(312)を2Δφ3だけ減少させ(すなわち、元の値からΔφ3だけ減少させ)、フィードバック348の結果として生じる誤差を再び測定する。誤差が小さくなった第3の制御信号φ3(312)の値が、第3の制御信号φ3(312)の新たな調整された値として割り当てられる。
【0101】
ステップ906では、第2の制御信号φ2(310)が、測定された誤差を低減するように調整される。第2の制御信号φ2(310)の調整は、測定された誤差を最小化または低減しようとする最適化または疑似最適化アルゴリズム(例えば、勾配降下アルゴリズム)によって実行することができる。例えば、第2の制御信号φ2(310)の調整は、第2の制御信号φ2(310)の現在値の局所近傍内で探索して、測定された誤差を低減する新しい値を見つけることによって実行することができる。具体例として、第2の制御信号φ2(310)を+/-Δφ2ステップで調整し、測定された誤差を小さくする値を求める場合について説明する。ステップサイズΔφ2は、各反復において動的に調整することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ステップサイズΔφ2は、(第3の制御信号312の)値sin2(φ3)が小さくなるにつれて増加するように構成され得る。ステップ906の探索プロセスでは、第2の制御信号φ2(310)は、まずΔφ2だけ増加され、フィードバック348の結果として生じる誤差が測定される。次に、第2の制御信号φ2(310)を2Δφ2だけ減少させ(すなわち、元の値からΔφ2だけ減少させ)、フィードバック348の結果として生じる誤差を再び測定する。誤差が小さくなった第2の制御信号φ2(310)の値は、(この説明の目的のため)φ2′として示される。
【0102】
ステップ908では、デマルチプレクサは、値φ2′<-π(すなわち、下限外)であるか否かを判定する。そうである場合、ステップ910において、第2の制御信号φ2(310)の新たな調整された値が-2π-φ2′に設定される。さらに、ステップ912では、第1の制御信号φ1(308)と第3の制御信号φ3(312)の値が反転される。すなわち、第1の制御信号(308)の値がφ1=-π/2(第3の制御信号312が0と+πの範囲内にあることを意味する)である場合、次に、πの値が同時に第1の制御信号φ1(308)に加算され、第3の制御信号φ3(312)から減算される。あるいは、第1の制御信号(308)の値がφ1=+π/2(第3の制御信号312が-πと0の範囲内にあることを意味する)である場合、次に、πの値が同時に第1の制御信号φ1(308)から減算され、第3の制御信号φ3(312)に加算される。この同時加算と同時減算の間、制御ループは一時停止する必要がある。いくつかの実施形態では、πの同時加算および減算は、順次実行されてもよい(例えば、第1の制御信号φ1(308)を調整し、次に第3の制御信号φ3(312)を調整する、またはその逆も同様)。それにもかかわらず、上述した第1の制御信号φ1(308)と第3の制御信号φ3(312)を調整する手順は、制御システムに長い停止時間および制御遅れが生じないように、迅速に実行される必要がある。
【0103】
ステップ908で、φ2′が下限外でないと判定されると、ステップ914で、デマルチプレクサは、φ2′>+π(すなわち、上限外)か否かをチェックする。そうである場合、ステップ916において、第2の制御信号φ2(310)の新たな調整された値が+2π-φ2′に設定される。さらに、ステップ912では(上述のように)、第1の制御信号φ1(308)と第3の制御信号φ3(312)の値が反転される。
【0104】
ステップ914において、φ2′が上限外ではないと判定された場合(φ2′が-π~+πの範囲内にあることを意味する)、ステップ918において、第2の制御信号φ2(310)の新しい調整された値がφ2′に設定される。この場合、第1の制御信号φ1(308)と第3の制御信号φ3(312)は反転されない。次に、ステップ904に戻り、制御信号を調整する次の反復が実行される。
【0105】
方法900の制御プロセスは、データ受信のリセットまたは中断を必要とせずに、多重分離の「エンドレス」動作を達成することができる。この特性は、第2の制御信号φ2(310)が境界点(+πまたは-π)のいずれかに到達すると、第2のステージの位相シフト(図3の304)がパススルーとして動作することによって可能となる。このとき、第2の制御信号φ2(310)がその範囲の境界点にあるときは、πが第1の制御信号φ1(308)と第3の制御信号φ3(312)に同時に加算または減算される(ステップ912で上述したように)。このように、データ受信のリセットまたは中断を必要とせずに、偏波多重分離の「エンドレス」動作が実現される。
【0106】
図9の例示的な方法900は、ステップの特定の順序を示しているが、これらのステップの1つ以上は、異なる順序で実行することができる。例えば、ステップ908および914、すなわち第2の制御信号φ2(310)が範囲-π~+πの下限および上限内にあるかどうかをチェックすることは、逆にすることができる。
【0107】
さらに、ステップ902で説明した具体的な数値の範囲は変更することができる。例えば、第1の制御信号φ1(308)の取り得る値は、(-π/2+c)または(+π/2+c)のシフトしたバイナリ値となるように、固定オフセットを有することができる。第2の制御信号φ2(310)の取り得る値は、その範囲の境界点が上述したパススルー特性を可能にする限り、2πの整数倍だけシフトすることができる。また、第3の制御信号φ3(312)の取り得る値も、2πの整数倍だけシフトすることができる。
【0108】
図10は、本開示の実施形態に係る光偏波デマルチプレクサにおける相対減衰値を制御する方法1000の一例を示すフローチャートである。方法1000は、図4のデマルチプレクサ400における相対減衰制御信号a1(408)およびa2(414)などの相対減衰信号を制御するために使用することができる。説明の目的のため、方法1000の説明は、図4のデマルチプレクサ400を参照して提供される。
【0109】
例示的な方法1000は、相対減衰制御信号a1(408)およびa2(414)の両方の制御を示しているが、いくつかのシナリオでは、信号のうちの1つだけが実装される。例えば、いくつかの実施形態では、第1の制御信号a1のみが実装される。これは、例えば、PDLレベルが中程度のシナリオ(例えば、PDLの唯一の発生源がファイバ伝送線自体ではなく、レシーバにあるシナリオ)において適切な場合がある。さらに、PDL値が経時的に大きく変化しないことが予想される場合、制御値a1は、動作の開始時(例えば、工場内で)に一度設定し、変更されないままにすることもできる。
【0110】
あるいは、方法1000に示すように、光減衰制御信号a1およびa2の両方を、例えば可変光減衰器(VOA)を使用して(例えば、連続的に)調整することができる。これは、例えば、PDLレベルがより重要であるシナリオ(例えば、PDLがレシーバとファイバ伝送線の両方で発生するシナリオ)において適切な場合がある。
【0111】
一般に、相対減衰信号a1(408)およびa2(414)は、フィードバック(例えば、図4のフィードバック460、または図6のフィードバック604)の測定された誤差を低減または最小化するように設計された最適化または疑似最適化プロセスを使用して制御することができる。例えば、いくつかの実施形態では、相対減衰制御信号a1(408)およびa2(414)は、同時最適化によって同時に制御することができる。図10の方法1000に示される別の例として、反復プロセスを実装し、相対減衰制御信号a1(408)およびa2(414)を適応させて、測定されたフィードバック誤差を徐々に減少させることができる。
【0112】
ステップ1002では、反復の開始時に、デマルチプレクサは、2つのVOA制御信号a1(408)およびa2(414)を初期値、例えば、ゼロ値に初期化する。
【0113】
ステップ1004では、第1のVOA制御信号a1(408)が(-3~+3などのその許容範囲内で)調整されて、フィードバックにおける測定された誤差を低減させる。第1のVOA制御信号a1(408)の調整は、測定された誤差を最小化または低減しようとする最適化または疑似最適化アルゴリズム(例えば、勾配降下アルゴリズム)によって実行することができる。例えば、第1のVOA制御信号a1(408)の調整は、第1のVOA制御信号a1(408)の現在値の局所近傍内で探索して、測定された誤差を低減する新しい値を見つけることによって実行することができる。具体例として、第1のVOA制御信号a1(408)を+/- Δa1ステップで調整し、測定された誤差を小さくする値を求める場合について説明する。ステップサイズΔa1は、各反復において動的に調整することができる。第1のVOA制御信号a1(408)は、まずΔa1だけ増加され、フィードバック460の結果として生じる誤差が測定される。次に、第1のVOA制御信号a1(408)を2Δa1だけ減少させ(すなわち、元の値からΔa1だけ減少させ)、フィードバック460の結果として生じる誤差を再び測定する。誤差が小さくなった第1のVOA制御信号a1(408)の値が、第1のVOA制御信号a1(408)の新たな調整された値として割り当てられる。
【0114】
ステップ1006では、第2のVOA制御信号a2(414)が(-3~+3などのその許容範囲内で)調整されて、測定された誤差を低減させる。第2のVOA制御信号a2(414)の調整は、測定された誤差を最小化または低減しようとする最適化または疑似最適化アルゴリズム(例えば、勾配降下アルゴリズム)によって実行することができる。例えば、第2のVOA制御信号a2(414)の調整は、第2のVOA制御信号a2(414)の現在値の局所近傍内で探索して、測定された誤差を低減する新しい値を見つけることによって実行することができる。具体例として、第2のVOA制御信号a2(414)を+/- Δa2ステップで調整し、測定された誤差を小さくする値を求める場合について説明する。ステップサイズΔa2は、各反復において動的に調整することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ステップサイズΔa2は、(第1のVOA制御信号408の)値sin2(a1)が小さくなるにつれて増加するように構成され得る(逆もまた同様)。ステップ1006の探索プロセスでは、第2のVOA制御信号a2(414)は、まずΔa2だけ増加され、フィードバック460の結果として生じる誤差が測定される。次に、第2のVOA制御信号a2(414)を2Δa2だけ減少させ(すなわち、元の値からΔa2だけ減少させ)、フィードバック460の結果として生じる誤差を再び測定する。誤差が小さくなった第2のVOA制御信号a2(414)の値が、第2のVOA制御信号a2(414)の新たな調整された値として割り当てられる。次に、ステップ1004に戻り、制御信号を調整する次の反復が実行される。
【0115】
図10の例示的な方法1000は、ステップの特定の順序を示しているが、これらのステップの1つ以上は、異なる順序で実行することができる。例えば、ステップ1004と1006は逆にすることができる。さらに、具体的な数値の範囲も変更することができる。例えば、第1および第2のVOA制御信号の、-3~+3の値の範囲を異なる値の範囲に変更することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、光MIMO偏波多重分離について本明細書に記載された技術は、一般的な2x2光MIMO多重分離に適用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載された技術は、PBSRとは別に、またはPBSRなしで実装することができる。
【0117】
図11は、本開示の実施形態に係るPDM MIMOデマルチプレクサの動作を示すシミュレーション結果の例を示す図である。図11のシミュレーション結果において、デマルチプレクサに入力される光(ファイバ伝送線から受信される擬似光)は、連続的かつランダムに偏波スクランブルされる。次いで、デマルチプレクサ(例えば、図3のデマルチプレクサ300)は、受信した信号を連続的に多重分離するように制御される。
【0118】
グラフ1102は、3つの制御信号φ1(308)、φ2(310)、およびφ3(312)が制御アルゴリズムによって調整されるときの経時変化の一例を示している。グラフ1100は、その結果得られるクロストーク量、すなわち上述した誤差「e」の一例を示している。
【0119】
図12は、光偏波デマルチプレクサの適応制御を実行するシステムの1つ以上のコンポーネントを実装するために使用することができる、コンピューティングシステム1200の一例を示す図である。コンピューティングシステム1200は、本明細書に記載された技術を実装するために使用することができる。たとえば、コントローラ(たとえば、図3のコントローラ344、図4のコントローラ456、図6のコントローラ606)および/またはパイロットトーン検出器(たとえば、図6のパイロットトーン検出器602)の1つ以上の部分は、ここで説明されるコンピューティングシステム1200の構成要素によって実装され得る。
【0120】
コンピューティングシステム1200は、ラップトップ、デスクトップ、ワークステーション、パーソナルデジタルアシスタント、サーバ、ブレードサーバ、メインフレーム、および他の適切なコンピュータなどのデジタルコンピュータを含む様々なシステムを表すことを意図している。ここに示した構成要素、それらの接続および関係、および機能は単なる例であり、限定することを意図したものではない。
【0121】
コンピューティングシステム1200は、プロセッサ1202、メモリ1204、記憶装置1206、メモリ1204および複数の高速拡張ポート1210に接続する高速インタフェース1208、並びに、低速拡張ポート1214および記憶装置1206に接続する低速インタフェース1212を含む。プロセッサ1202、メモリ1204、記憶装置1206、高速インタフェース1208、高速拡張ポート1210、低速インタフェース1212のそれぞれは、様々なバスを使用して相互に接続されており、共通のマザーボードに搭載されてもよいし、必要に応じてその他の態様で搭載されてもよい。プロセッサ1202は、メモリ1204またはストレージデバイス1206に格納された命令を含む、コンピューティングシステム1200内で実行するための命令を処理して、高速インターフェース1208に結合されたディスプレイ1216などの外部入出力デバイスにGUI用のグラフィック情報を表示することができる。他の実施形態では、複数のプロセッサおよび/または複数のバスが、必要に応じて複数のメモリおよび各種メモリとともに使用され得る。さらに、複数のコンピューティングデバイスが接続され、各デバイスが動作の一部を提供することもできる(例えば、サーバーバンク、ブレードサーバー群、またはマルチプロセッサーシステムとして)。いくつかの実施形態では、プロセッサ1202は、シングルスレッドプロセッサである。いくつかの実施形態では、プロセッサ1202は、マルチスレッドプロセッサである。いくつかの実施形態では、プロセッサ1202は、量子コンピュータである。
【0122】
メモリ1204は、コンピューティングシステム1200内の情報を格納する。いくつかの実施形態では、メモリ1204は、1つまたは複数の揮発性メモリユニットである。いくつかの実施形態では、メモリ1204は、1つまたは複数の不揮発性メモリユニットである。また、メモリ1204は、磁気ディスクまたは光ディスクなどの、コンピュータ可読媒体の別の形態であってもよい。
【0123】
記憶装置1206は、コンピューティングシステム1200に大容量記憶装置を提供することができる。いくつかの実施形態では、記憶装置1206は、フロッピーディスク装置、ハードディスク装置、光ディスク装置、またはテープ装置、フラッシュメモリまたは他の同様の固体メモリ装置、またはストレージエリアネットワークまたは他の構成における装置を含むデバイスアレイなどのコンピュータ可読媒体であってもよいし、それらを含んでもよい。命令は、情報媒体に格納され得る。命令は、1つ以上の処理装置(例えば、プロセッサ1202)によって実行されるとき、上述したような1つ以上の方法を実行する。命令は、コンピュータ可読媒体または機械可読媒体(例えば、メモリ1204、記憶装置1206、またはプロセッサ1202上のメモリ)などの1つ以上の記憶装置によって格納され得る。高速インターフェース1208は、コンピューティングシステム1200の帯域幅集約型の動作を管理し、低速インターフェース1212はより低い帯域幅集約型の動作を管理する。このような機能の割り当ては一例にすぎない。いくつかの実施形態では、高速インターフェース1208は、メモリ1204、ディスプレイ1216(例えば、グラフィックプロセッサまたはアクセラレータを介して)、および様々な拡張カード(図示せず)を受け入れることができる高速拡張ポート1210に結合される。本実施形態では、低速インタフェース1212は、ストレージデバイス1206および低速拡張ポート1214に結合される。様々な通信ポート(例えば、USB、Bluetooth、イーサネット、無線イーサネット)を含むことができる低速拡張ポート1214は、キーボード、ポインティングデバイス、スキャナ、またはスイッチもしくはルータなどのネットワーキングデバイス(例えば、ネットワークアダプタを介して)などの1つ以上の入力/出力装置に結合されてもよい。
【0124】
コンピューティングシステム1200は、図に示すように、いくつかの異なる形態で実装され得る。例えば、それは、標準的なサーバ1220として、またはそのようなサーバ群を複数回に分けて実装されてもよい。さらに、それは、ノートパソコン1222などのパーソナルコンピュータに実装されてもよい。また、それは、ラックサーバシステム1224の一部として実装されてもよい。
【0125】
本開示で使用される「システム」という用語は、例として、プログラマブルプロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータを含む、データを処理するためのすべての装置、デバイス、および機械を包含し得る。処理システムは、ハードウェアに加えて、当該コンピュータ・プログラムの実行環境を構築するコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはそれらの1つ以上の組合せを構成するコードを含むことができる。
【0126】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェア・アプリケーション、スクリプト、実行可能ロジック、またはコードとも呼ばれる)は、コンパイル言語またはインタープリター言語、あるいは宣言型言語または手続き型言語を含む、任意の形式のプログラミング言語で記述でき、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、またはコンピュータ環境での使用に適した他のユニットとして、任意の形式で展開することが可能である。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルシステム内のファイルに対応するとは限らない。プログラムは、他のプログラムやデータを保持するファイルの一部(例えば、マークアップ言語の文書に格納された1つ以上のスクリプト)、当該プログラム専用の単一のファイル、または複数の連携ファイル(例えば、1つ以上のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を格納するファイル)に格納することができる。コンピュータプログラムは、1台のコンピュータ、または1つのサイトに配置された、または複数のサイトに分散して配置され、通信ネットワークによって相互に接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することもできる。
【0127】
コンピュータプログラム命令およびデータを格納するのに適したコンピュータ可読媒体には、全ての形態の不揮発性または揮発性のメモリ、媒体、およびメモリデバイスが含まれ、例として、例えばEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス;例えば内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスクまたは磁気テープなどの磁気ディスク;光磁気ディスク;ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクが含まれる。プロセッサおよびメモリは、特定用途論理回路によって補完されてもよいし、またはその内部に組み込まれてもよい。サーバーは、汎用コンピュータの場合もあれば、特注の特殊用途の電子デバイスの場合もあり、これらの組み合わせである場合もある。
【0128】
実装は、バックエンドコンポーネント(例えば、データサーバ)、またはミドルウェアコンポーネント(例えば、アプリケーションサーバ)、またはフロントエンドコンポーネント(例えば、ユーザがこの明細書に記載されている主題の実装と対話できるグラフィカルユーザインターフェースまたはWebブラウザを有するクライアントコンピュータ)、または1つ以上のそのようなバックエンド、ミドルウェア、またはフロントエンドコンポーネントの任意の組み合わせ、を含むことができる。システムのコンポーネントは、デジタルデータ通信の任意の形式または媒体(例えば、通信ネットワーク)によって相互接続されてもよい。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(LAN)およびワイドエリアネットワーク(WAN)(例えば、インターネット)が含まれる。
【0129】
記載されている機能は、デジタル電子回路、またはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせで実装することができる。本装置は、プログラマブルプロセッサによる実行のために、例えば機械可読記憶装置などの情報担体に有形に具現化されたコンピュータプログラム製品で実装することができ、方法ステップは、命令のプログラムを実行して、入力データを操作し、出力を生成することによって、説明した実装の機能を実行するプログラム可能なプロセッサによって実行することができる。記載された機能は、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスからデータおよび命令を受信し、データおよび命令を送信するように結合された少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行可能な1つ以上のコンピュータプログラムにおいて有利に実装することが可能である。コンピュータプログラムは、特定のアクティビティを実行したり、特定の結果をもたらすために、コンピュータ内で直接的または間接的に使用される命令のセットである。コンピュータプログラムは、コンパイル言語またはインタプリタ言語を含む任意の形式のプログラミング言語で記述することができ、スタンドアロンプログラムまたはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、またはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットを含む任意の形式で展開することができる。
【0130】
本開示には多くの具体的な実装の詳細が含まれているが、これらは、発明の範囲または特許請求の範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の発明の特定の実装に固有の特徴の説明として解釈されるべきである。本開示において、個別の実施形態の文脈で説明されている特定の特徴は、単一の実施形態で組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で説明されている様々な特徴は、複数の実施形態で別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上述され、当初はそのように主張されることさえあるが、主張された組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては組み合わせから削除され、主張された組み合わせが、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションのバリエーションを対象とする場合がある。
【0131】
同様に、図面には特定の順序で動作が描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順序、または順次実行されること、または図示されたすべての動作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】